(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
物を保管又は移動等させるための包装箱として、
図13に示すような段ボールシート100を組み立てて製造される段ボール箱が知られている。この段ボール箱の上蓋及び底板は、段ボールシート100の一部にスリット101,102を形成して切り離された部分を互いに重なり合うように折り畳んで形成される。
【0003】
このスリット101,102の形成に際して、溝切り装置が用いられるのが一般的であり、この溝切り装置には、
図14に示すような切断加工用刃物60がよく用いられる。
【0004】
この切断加工用刃物60は、扇形状に形成された刃物本体61に切込生成刃62と溝切り刃63とが一体形成されている。切込生成刃62は、刃物本体61の外周面の一端から径方向外方に、刃物本体61の端面と面一になるように突出しており、端面の幅方向両側に角部64を備えている。溝切り刃63は、刃物本体61の外周面に沿って、刃物本体61の厚み方向両側にそれぞれ設けられている。
【0005】
切断加工用刃物60は、
図15及び
図16に示すような溝切り装置70に取り付けられる。
図15は溝切り装置の概略構成を示す側面図であり、
図16は正面図である。この溝切り装置70には、上述した切断加工用刃物60が2枚取り付けられるが、それぞれの刃物を切断加工用刃物60a,60bとして、溝切り装置70の構成について以下説明する。
【0006】
溝切り装置70は、上側回転軸71及び下側回転軸72を備えている。上側回転軸71及び下側回転軸72は、互いに平行に、シート給送ラインLを挟んで対向するように配置されており、それぞれ円盤状の一対の上側回転ホルダ73,73及び一対の下側回転ホルダ74,74を備えている。
【0007】
一対の上側回転ホルダ73,73には、2枚の切断加工用刃物60a,60bがそれぞれボルト等の締結具(図示せず)により挟持されている。これら切断加工用刃物60a、60bは、一対の回転ホルダ73,73の外周に沿って所定の間隔を空けて、かつ、それぞれの切込生成刃62a,62bが、外周方向に沿って向き合うように取り付けられる。これに対し、一対の下側回転ホルダ74,74のそれぞれの対向面には、2枚の受刃75,75が、切断加工用刃物60a及び60bの厚み寸法に対応した所定間隔をあけて取り付けられる。
【0008】
次に、以上の構成を備えた溝切り装置70を用いて、段ボールシート100にスリットを形成する方法を説明する。
図15に示すように、上側回転ホルダ73,73及び下側回転ホルダ74,74を回転させた状態で、溝切り装置70のシート給送ラインL上に沿って、段ボールシート100を
図15の右側から溝切り装置70に給送する。これにより、切断加工用刃物60aが、受刃75,75の隙間に挟み込まれて、段ボールシート100が切断され、
図13に示すような終端部103を終点とした前方スリット101が形成される。同様に、他方の切断加工用刃物60bが、受刃75,75の隙間に挟み込まれて、段ボールシート100が切断され、始端部104を起点とした後方スリット102が形成される。
【0009】
ここで、
図14に示すような切断加工用刃物を用いて段ボールシートを切断する場合、スリット端部(終端部103、始端部104)を形成する切込生成刃62が、スリット側縁を形成する溝切り刃よりも早く摩耗してしまい、溝切り刃63がまだ使用できるにもかかわらず、切込生成刃62の摩耗に起因して、切断加工用刃物60を交換しなければならないという問題があった。
【0010】
このような問題に対応するために、切込生成刃62を刃物本体61に対して着脱自在となるように構成された切断加工用刃物が知られている。具体的には、下記特許文献1には、切込生成刃をボルト等の締結具を介して扇状に形成される刃物本体の一端側に固定されるものが開示されており、また、特許文献2には、刃物本体に取り付けられる切込生成刃に関し、その刃先部の刃物本体からの突出量を調整可能に構成されたものが開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る切断加工用刃物の平面図である。
【
図3】
図1に示す切断加工用刃物における溝切り刃の変形例を示す要部拡大平面図である。
【
図4】
図1に示す切断加工用刃物における溝切り刃の変形例を示す要部拡大平面図である。
【
図5】(a)は、
図1に示す切断加工用刃物が備える切込生成刃の平面図であり、(b)は、(a)における矢視B方向から見た場合の側面図であり、(c)は、(a)における矢視C方向から見た場合の底面図であり、(d)は、(a)における矢視D方向から見た場合の側面図であり、(e)は、(a)における矢視E方向から見た場合の側面図である。
【
図6】刃物本体が有する刃物本体粗面部を説明するための説明図である。
【
図7】
図1に示す切断加工用刃物の効果を説明するための説明図である。
【
図8】
図1に示す切断加工用刃物の変形例を示す要部拡大図である。
【
図9】
図8に示す切断加工用刃物の効果を説明するための説明図である。
【
図10】
図1に示す切断加工用刃物が備える切込生成刃の変形例を示す図であり、(a)は、切断加工用刃物が備える切込生成刃の平面図であり、(b)は、(a)における矢視F方向から見た場合の側面図であり、(c)は、(a)における矢視G方向から見た場合の側面図であり、(d)は、(a)における矢視H方向から見た場合の側面図である。
【
図11】(a)は、
図5に示す切込生成刃の変形例を示す平面図であり、(b)は、
図10に示す切込生成刃の変形例を示す平面図である。
【
図12】
図1に示す切断加工用刃物が備える刃物本体の変形例を示す平面図である。
【
図13】スリットが形成された後の段ボールシートの概略平面図である。
【
図15】
図13に示す切断加工用刃物が取り付けられた溝切り装置の概略構成を示す側面図である。
【
図16】
図13に示す切断加工用刃物が取り付けられた溝切り装置の概略構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。
図1は、本発明の一実施形態にかかる切断加工用刃物を示す平面図であり、
図2は、そのA−A断面における拡大図である。切断加工用刃物1は、回転しながら段ボールシートや合成樹脂製シート等のシート材にスリットを形成するための刃物であり、
図1及び
図2に示すように、刃物本体2と、溝切り刃3と、切込生成刃4とを備えている。
【0021】
刃物本体2は、ステンレスや鉄、工具鋼等の金属材料により形成されており、
図1に示すように、平面視において扇形状に形成されている。この刃物本体2は、その一端側(刃物本体2の一方の側面側)に二つのボルト孔21を備えている。ボルト孔21は、刃物本体2に切込生成刃4をボルト50により取り付けるための孔である。なお、二つのボルト孔21は、刃物本体2の径方向に沿って並んで形成されている。
【0022】
溝切り刃3は、従来の切断加工用刃物60(
図14参照)と同様に、刃物本体2の外周部に沿って配置されている。本実施形態における溝切り刃3は、シート材にスリット加工を施すように構成されているため、
図2に示すように、刃物本体2の厚み方向両側縁にそれぞれ設けられている。この溝切り刃3の具体的形態は特に限定されず、例えば、
図3の要部拡大平面図に示すように、ノコ歯状に形成してもよい。溝切り刃3をノコ歯状に形成する場合、互いに隣接する各ノコ歯3の各頂点3a間距離Sが、例えば、2.0mm〜4.0mmとなるように形成し、各ノコ歯3の最大高さHが、例えば、2.0mm〜3.5mmとなるように形成することが好ましい。また、溝切り刃3をノコ歯状に形成する場合、
図3に示すように、各ノコ歯3の各頂点3a間に介在するノコ歯3の輪郭形状3bが平面視V字状となるように形成してもよく、
図4(a)に示すように、輪郭形状3bが、平面視湾曲状となるように形成してもよい。更に、
図4(b)に示すように、輪郭形状3bが、平面視において一方側に傾斜するV字状となるように形成してもよい。
【0023】
切込生成刃4は、切断加工用刃物1によりスリット加工されるときに出る屑片の一端を段ボールシート等のシート材から切り落とし、スリットの端部を形成するための刃部である。この切込生成刃4は、
図1や
図5(a)〜(e)に示すように、刃物本体2の一端側に着脱自在に取り付けられる平板状の取付部41と、取付部41の一端部に形成される刃先部42とを備えている。刃先部42は、平刃として構成されている。取付部41の厚みは、例えば、3mm〜15mmの範囲に設定される。ここで、
図5(a)は、切込生成刃4を上方から見た場合の平面図であり、
図5(b)は、
図5(a)において示される矢視B方向から見た場合の側面図である。また、
図5(c)は、
図5(a)において示される矢視C方向から見た場合の底面図である。また、
図5(d)は、
図5(a)において示される矢視D方向から見た場合の側面図であり、
図5(e)は、
図5(a)において示される矢視E方向から見た場合の側面図である。切込生成刃4は、
図1に示すように、刃物本体2の外周面から径方向外側に、刃先部42が突出するようにして刃物本体2の一端側に固定される。この切込生成刃4の幅は、刃物本体2の厚みと略同一寸法となるように構成することが好ましい。また、取付部41は、刃物本体2の径方向に沿う方向に長尺となるように構成されており、刃物本体2に形成されるボルト孔21に対応して形成される貫通孔43を備えている。本実施形態においては、取付部の輪郭が、平面視矩形状となるように構成している。なお、切込生成刃4は、ボルト50を締め付けることにより、ボルト頭で取付部41を刃物本体2側に押さえ付けることによって、刃物本体2の所定位置に固定される。貫通孔43の周囲の部分が、ボルト50のボルト頭と当接する部分となる。
【0024】
図5における切込生成刃4においては、貫通孔43が、刃物本体2の径方向に沿う長孔状に形成されており、取付部41(切込生成刃4)が、刃先部42を刃物本体2の径方向に位置調整可能に構成されている。つまり、長孔状の貫通孔43の長手方向の寸法が、刃物本体2に形成される二つのボルト孔21間の距離(二つのボルト孔21を含むボルト孔21間の距離)よりも長くなるように構成されている。なお、この貫通孔43の幅寸法(
図5(a)においては、上下方向の幅寸法)は、挿通されるボルト50の軸部の径よりも僅かに大きくなるように設定されている。
【0025】
また、切込生成刃4が備える取付部41は、刃物本体2の一端側に対向する側の一方面上(刃物本体2の一端側の端面に接触する底面45)に形成される取付部粗面部を備えている。本実施形態においては、取付部粗面部は、取付部41の一方面(底面45)に対し、複数の微小幅の取付部線状溝44を形成することにより構成されており、これら各取付部線状溝44は、設置される刃物本体2の径方向に対して垂直な方向に延びるように形成されている。また、各取付部線状溝44は、刃物本体2の径方向に沿って同一間隔をあけて配置されるように形成することが好ましい。
【0026】
取付部粗面部を構成する各取付部線状溝44の溝幅(刃物本体2の径方向に沿う方向の幅)や、溝深さの寸法は、適宜設定することができるが、例えば、溝幅を0.2mm〜2mm程度、溝深さを0.2mm〜2mm程度に形成する。また、各取付部線状溝44同士の間隔についても、適宜設定することができるが、例えば、0.5mm〜2mm程度に形成することが好ましい。このような取付部線状溝44は、例えば、レーザー加工やエッチング処理、切削加工等を取付部の一方面に施すことにより形成することができる。
【0027】
また、取付部粗面部を構成する取付部線状溝44の形成エリアについては、少なくとも長孔状の貫通孔43が形成される領域を含むように設定することが好ましい。より好ましくは、
図5(c)に示すように、取付部41の底面の略全領域に亘るように複数の取付部線状溝44の形成エリアを設定する。
【0028】
また、刃物本体2は、
図6(a)に示すように、その一端側に配置される取付部との接触面上に形成される刃物本体粗面部を備えている。本実施形態においては、刃物本体粗面部は、刃物本体2の一端側において取付部41が設置される表面に対し、複数の微小幅の刃物本体線状溝22を形成することにより構成されており、これら各刃物本体線状溝22は、刃物本体2の径方向に対して垂直な方向に延びるように形成されている。また、各刃物本体線状溝22は、刃物本体2の径方向に沿って同一間隔をあけて配置されるように形成することが好ましい。
【0029】
刃物本体粗面部を構成する各刃物本体線状溝22の溝幅(刃物本体2の径方向に沿う方向の幅)や、溝深さの寸法は、適宜設定することができるが、例えば、溝幅を0.2mm〜2mm程度、溝深さを0.2mm〜2mm程度に形成する。また、各刃物本体線状溝22同士の間隔についても、適宜設定することができるが、例えば、0.5mm〜2mm程度に形成することが好ましい。このような刃物本体線状溝22は、例えば、レーザー加工やエッチング処理、切削加工等を取付部の一方面に施すことにより形成することができる。
【0030】
また、刃物本体粗面部の形成エリア(刃物本体線状溝22の形成エリア)については、切込生成刃4と接触する領域の略全領域に亘るように設定することが好ましい。具体的には、
図6(a)(b)に示すように、刃物本体2の一端側の上端から刃物本体2の径方向内側方向に向けての距離Kが、切込生成刃4の長手方向の長さL1と同一となる領域を刃物本体線状溝22の形成エリア(刃物本体粗面部の形成エリア)として設定することが好ましい。なお、刃物本体線状溝22の形成エリア(刃物本体粗面部の形成エリア)としては、刃物本体2の一端側の上端から刃物本体2の径方向内側方向に向けての距離Kが上記L1よりも短い領域であってもよく、或いは、長い領域であってもよい。
【0031】
以上の構成を備えた切断加工用刃物1は、例えば
図15及び
図16に示すような溝切り装置70に取り付けられて使用される。段ボールシート等のシート材にスリットを形成する方法は、上記背景技術で説明した方法と同一であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0032】
本実施形態に係る切断用加工刃物1においては、刃物本体2が、その一端側における取付部41との接触面上に形成される刃物本体粗面部を備え、更に、刃物本体2に設置される切込生成刃4が有する取付部41が、刃物本体2の一端側に対向する側の一方面上に形成される取付部粗面部を備えるように構成されているため、切込生成刃4が段ボールシートとの当接・突き破り時の衝撃によって、刃物本体2の径方向内側に該切込生成刃4を移動させるような力が作用しても、互いに対向して接触可能に形成される刃物本体粗面部と取付部粗面部との作用により、切込生成刃4が、刃物本体2の一端部表面上を滑りにくくすることが可能となり、刃物本体2の径方向内側に切込生成刃4が移動することを効果的に規制することができる。この結果、切込生成刃4の先端における刃先部42の適正な位置(刃物本体2の外周縁からの突出量)を好適に維持することが可能となる。
【0033】
特に上述の本実施形態に係る切断加工用刃物1においては、刃物本体粗面部を刃物本体2の径方向に対して垂直な方向に延びる複数の刃物本体線状溝22によって構成し、更に、取付部粗面部を刃物本体2の径方向に対して垂直な方向に延びる複数の取付部線状溝44によって構成しているため、段ボールシートとの当接・突き破り時の衝撃によって、刃物本体2の径方向内側に切込生成刃4を移動させるような力が作用しても、刃物本体線状溝22と取付部線状溝44とが引っ掛かりやすくなり、刃物本体2の径方向内側に切込生成刃4が移動することをより効果的に規制する。この結果、切込生成刃4の先端における刃先部42の適正な位置(刃物本体2の外周縁からの突出量)を好適に維持することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態に係る切断用加工刃物1においては、仮に、段ボールシートとの当接・突き破り時の衝撃によって、切込生成刃4が、刃物本体2の径方向内側に移動した場合、その切込生成刃4の移動したことを容易に把握することもできる。具体的に説明すると、例えば、
図7(a)に示すように、切込生成刃4の先端における刃先部42を適正な位置にセッティングした場合の取付部41の他端部41b(刃物本体2の径方向内側の取付部41の端部)よりも刃物本体径方向内側に存在する刃物本体線状溝22の本数を把握しておくことにより、その本数が減少した際(
図7(b)に示す状態時)に、切込生成刃4が、刃物本体2の径方向内側に移動したことを認識することができる。特に、各刃物本体線状溝22の間隔を同一間隔として構成する場合には、各刃物本体線状溝22を目盛りとしても利用することが可能となり、切込生成刃4の移動量を正確に把握することが可能となる。これにより、切断加工用刃物1を使用して段ボールシート等へのスリット加工を行う作業者は、作業前或いは作業後の点検時に、切込生成刃4の先端における刃先部42が適正な位置にあるか否かを容易に判断することができ、その結果、スリット端部を形成できない、或いは、形成できたとしてもスリット端部に破れが発生してしまうといった事態が発生することを未然に効果的に防止することができる。
【0035】
また、スリット加工を行う作業者は、作業前或いは作業後の点検時において切込生成刃4の位置ズレを確認した場合、或いは、切込生成刃4を交換する場合に、例えば、取付部41の他端部41b(刃物本体2の径方向内側の取付部41の端部)よりも刃物本体径方向内側に存在する刃物本体線状溝22の本数に基づいて、切込生成刃4の刃先部42が適正な位置となるように、刃物本体2の径方向に沿って切込生成刃4を移動・設置させることができ、容易に切込生成刃4の適正な位置へのセッティングを行うことが可能となる。
【0036】
このように、本発明に係る発明によれば、切込生成刃4の位置ズレを効果的に防止することができるという効果の他、仮に、切込生成刃4が移動してしまった場合であっても、その移動状況や移動量を把握でき、また、切込生成刃4の適正な位置へのセッティング作業を容易化できるという優れた効果を奏するものとなる。
【0037】
以上、本発明の一実施形態に係る切断加工用刃物1について説明したが、切断加工用刃物1の具体的構成は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態においては、取付部粗面部は、複数の微小幅の線状溝44を形成することにより構成されているが、取付部41の一方面に対し、格子状のギザギザの凹凸を形成するローレット加工を施すことにより取付部粗面部を形成してもよい。刃物本体粗面部についても同様にローレット加工により形成することができる。また、所定領域に対してブラスト処理を行うことによって他の領域よりも表面を粗くすることにより刃物本体粗面部や取付部粗面部を形成してもよい。また、取付部粗面部を形成する領域に対してブラスト処理を行うことによって他の領域よりも表面を粗くした上で、上述の複数の微小幅の取付部線状溝44を形成して取付部粗面部を構成してもよく、同様に、刃物本体粗面部を形成する領域に対してブラスト処理を行うことによって他の領域よりも表面を粗くした上で、上述の複数の微小幅の刃物本体線状溝22を形成して刃物本体粗面部を構成してもよい。
【0038】
また、
図8に示すように、上記実施形態において、刃物本体粗面部(刃物本体線状溝22)が形成される刃物本体2の一端部の端面に対して垂直な面、つまり、平面視扇状に形成される主面2aに、上記各刃物本体線状溝22の一方端に対応する位置を示すマーキング部を備えるように構成してもよい。このマーキング部は、刃物本体2の主面2aに対し、複数のマーキング線状溝47を形成することにより構成することが好ましい。これらマーキング線状溝47を形成する領域は、
図8に示すように、刃物本体2の主面2a上であって、切込生成刃4が設置される近傍位置とすることが好ましい。また、刃物本体2の一端部の端面上に形成される各刃物本体線状溝22の一方端が、当該端面との境界である側縁にまで達しており、刃物本体2の主面2aの所定領域に形成されるマーキング部を構成する各マーキング線状溝47が、各刃物本体線状溝22の一方端に接続するように構成することが好ましい。ここで、刃物本体2は、扇状の2つの主面2aを備えることになるが、マーキング部は、2つの主面2aの内のいずれか一方に形成してもよく、或いは、2つの主面の両方に形成してもよい。
【0039】
切断加工用刃物1を溝切り装置70が有する上側回転ホルダ73,73に設置された場合、段ボールシートのスリット加工等を行う作業者が、取付部41の他端部41b(刃物本体2の径方向内側の取付部41の端部)よりも刃物本体径方向内側に存在する刃物本体線状溝22を視認することが困難な場合も発生するが、このようなマーキング部を刃物本体2の主面2aに形成することにより、当該マーキング部に基づいて、切込生成刃4の位置ズレが生じたか否かを確認することが可能となる。具体的に説明すると、
図9(a)に示すように、切込生成刃4の先端における刃先部42を適正な位置にセッティングした場合の取付部41の他端部41b(刃物本体2の径方向内側の取付部41の端部)よりも刃物本体径方向内側に存在するマーキング部に係るマーキング線状溝47の本数を把握しておくことにより、その本数が減少した際(
図9(b))に、切込生成刃4が、刃物本体2の径方向内側に移動したことを認識することができる。特に、各刃物本体線状溝22の間隔を同一間隔として構成しつつ、これら各刃物本体線状溝22の位置にそれぞれ対応するように、マーキング部に係る各マーキング線状溝47を刃物本体の主面2aに形成するような場合、各マーキング線状溝47を目盛りとしても利用することが可能となり、切込生成刃4の移動量を正確に把握することが可能となる。これにより、切断加工用刃物1を使用して段ボールシート等へのスリット加工を行う作業者は、作業前或いは作業後の点検時に、刃物本体の主面上に形成されるマーキング部に基づいて、切込生成刃4の先端における刃先部42が適正な位置にあるか否かを容易に判断することができ、その結果、スリット端部を形成できない、或いは、形成できたとしてもスリット端部に破れが発生してしまうといった事態が発生することを未然に効果的に防止することができる。
【0040】
また、スリット加工を行う作業者は、作業前或いは作業後の点検時において切込生成刃4の位置ズレを確認した場合、或いは、切込生成刃4を交換する場合に、例えば、取付部41の他端部41b(刃物本体2の径方向内側の取付部41の端部)よりも刃物本体径方向内側に存在するマーキング部に係るマーキング線状溝47の本数に基づいて、切込生成刃4の刃先部42が適正な位置となるように、刃物本体2の径方向に沿って切込生成刃4を移動・設置させることができ、容易に切込生成刃4の適正な位置へのセッティングを行うことが可能となる。
【0041】
また、上記実施形態においては、切込生成刃4の刃先部4は、平刃として構成しているが、例えば、
図10に示すように、半円筒状の形態として構成され、その裏面側の一端部が
図10(a)及び(b)の破線で示すように切り欠かれることにより、一端外周縁に半円形状の刃先が形成されるように構成してもよい。なお、切込生成刃4は、刃先部42の外周曲面を刃物本体2の一端側に露出させる向きにて刃物本体2の一端側に取り付けられる。ここで、
図10(a)は、切込生成刃4を上方から見た場合の平面図であり、
図10(b)は、
図10(a)において示される矢視F方向から見た場合の側面図である。また、
図10(c)は、
図10(a)において示される矢視G方向から見た場合の側面図であり、
図10(d)は、
図10(a)において示される矢視H方向から見た場合の側面図である。
【0042】
また、上記実施形態においては、平板状に切込生成刃4を形成し、その一端部に平刃としての刃先部42を備えるように構成しているが、
図11(a)に示すように、この刃先部42に、一又は複数の刃先切欠き部421を形成するようにしてもよい。また、上記
図10に示すような半円筒状の形態として切込生成刃を構成し、その一端外周縁に半円形状の刃先を形成する場合であっても、当該刃先(刃先部42の先端)に、
図11(b)に示すように、一又は複数の刃先切欠き部421を形成するようにしてもよい。
【0043】
また、上記実施形態においては、切込生成刃4の刃先部42を刃物本体2の径方向に位置調整可能に構成しつつ、二つのボルト50によって刃物本体2に固定される切込生成刃4の構成について説明したが、このような構成に特に限定されず、単一のボルト50によって、刃物本体2の径方向に位置調整可能に切込生成刃4を刃物本体2に固定される構成を採用してもよい。
【0044】
また、上記実施形態において、刃物本体2の形態として、例えば、
図12に示すように、刃物本体2の一端側を平面視において略三角形状に切り欠かれて形成される本体切欠き部を構成し、刃物本体2の端面25に対して角度θの傾斜を有する支持面27を備えるように構成してもよい。角度θは、5°〜30°の範囲が好ましく、特に10°〜20°の範囲が好適であり、本実施形態では15°としている。なお、切込生成刃4を固定する際に用いられるボルト孔21は、支持面27に形成されており、切込生成刃4は、当該支持面27に取り付けられる。
【解決手段】シート材にスリットを形成するための切断加工用刃物であって、刃物本体と、スリットを形成する溝切り刃と、スリットの端部を形成する切欠生成刃とを備え、前記刃物本体は、扇形状に形成され、一端側にボルト孔を備えており、前記溝切り刃は、前記刃物本体の厚み方向両側縁に沿ってそれぞれ設けられており、前記切込生成刃は、前記刃物本体の一端側に着脱自在に取り付けられる取付部と、前記取付部の一端部に形成される刃先部とを備えており、前記刃物本体は、その前記一端側における前記取付部との接触面上に形成される刃物本体粗面部を備えており、前記取付部は、前記刃物本体のボルト孔に対応して形成され、前記刃物本体の径方向に沿う長孔状の貫通孔と、前記刃物本体の前記一端側に対向する側の一方面上に形成される取付部粗面部とを備えていることを特徴とする切断加工用刃物。