(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の情報生成部は、前記動作異常が確認された時点を含む時間範囲における時系列データを取得し、前記時系列データを有する前記第1の情報を生成することを特徴とする請求項1または2に記載の保守支援システム。
前記第2の情報生成部は、前記動作機構の制御のためのパラメータである制御パラメータの変更についての提案を含む前記第2の情報を生成することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の保守支援システム。
前記第1の情報生成部は、前記動作異常が確認された時点を含む時間範囲における時系列データを取得し、前記時系列データを有する前記第1の情報を生成することを特徴とする請求項12に記載の数値制御装置。
産業機械の動作機構の駆動を制御する数値制御装置と、前記数値制御装置と通信可能な支援装置とを備え、前記産業機械の保守を支援する保守支援システムの制御方法であって、
前記動作機構の動作異常が確認されたときに、前記動作異常に関わるデータを前記動作機構の動作状況に関するデータの中から抽出し、抽出されたデータを含む第1の情報を生成する工程と、
前記保守のために前記数値制御装置へ提案される第2の情報を、前記第1の情報の内容に基づいて生成する工程と、
を含み、
前記動作機構は、複数の軸の各々の方向へ移動対象を移動させる機構であって、
前記第1の情報を生成する工程において、移動の目標とする指令位置が推移する経路である指令経路の中から抽出された部分についての前記動作異常に関わるデータであって、前記複数の軸の各々の方向のうち、前記抽出された部分に含まれる移動の方向に基づいて選択された方向についての前記動作異常に関わるデータを抽出することを特徴とする保守支援システムの制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態にかかる保守支援システム、数値制御装置および保守支援システムの制御方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる保守支援システム400の構成を示す図である。実施の形態1において、保守支援システム400は、産業機械である工作機械100の保守を支援する。保守支援システム400は、工作機械100以外の産業機械、例えば生産現場に設置される産業ロボットの保守を支援するものであっても良い。
【0012】
保守支援システム400は、数値制御装置1を含む工作機械100と、数値制御装置1と通信可能な支援装置であるサーバ200とを備える。数値制御装置1は、工作機械100の動作機構の駆動を制御する。保守支援システム400は、工作機械100の保守の支援のために提案される情報である提案情報をサーバ200から数値制御装置1へ送ることによって、工作機械100の保守を支援する。なお、数値制御装置1は、工作機械100と一体とされた装置であるほか、工作機械100の外部の装置であって工作機械100に接続されたものであっても良い。この場合、保守支援システム400は、数値制御装置1とサーバ200とを備えるものであっても良い。
【0013】
工作機械100は、工作機械100のうちの制御系の構成要素である数値制御装置1を有する。また、工作機械100は、動作機構を構成するXサーボモータ11、Yサーボモータ12およびZサーボモータ13を有する。動作機構の詳細については後述する。
【0014】
図1には、数値制御装置1が有する機能構成を示している。数値制御装置1は、数値制御装置1全体を制御する制御部2と、数値制御装置1の外部の装置の通信を行う通信部3と、情報を入力する入力部4と、情報を表示する表示部5と、情報を記憶する記憶部6とを有する。制御部2は、動作機構の駆動を制御する駆動制御部7と、工作機械100の保守の支援を要請するための処理を行う支援要請処理部8とを有する。
【0015】
図1には、サーバ200が有する機能構成を示している。サーバ200は、サーバ200全体を制御する制御部20と、サーバ200の外部の装置との通信を行う通信部21と、情報を記憶する記憶部22とを有する。制御部20は、工作機械100の保守の支援のための処理を行う支援処理部23を有する。サーバ200は、工作機械100の保守業務を行う保守業者の拠点に設置される。保守業者は、例えば工作機械100を製造する製造メーカ、または製造メーカから保守業務を委託された業者である。
【0016】
数値制御装置1の通信部3とサーバ200の通信部21とは、ネットワーク300を介して通信可能に接続されている。ネットワーク300は、インターネット、LAN(Local Area Network)またはVPN(Virtual Private Network)といった通信網である。
【0017】
図2は、
図1に示す保守支援システム400の数値制御装置1が有する支援要請処理部8の機能構成を示す図である。支援要請処理部8は、入力部4へのプログラム番号の入力によって指定されたプログラムを解析するプログラム解析部14を有する。また、支援要請処理部8は、第1の情報生成部である動作情報生成部15を有する。動作情報生成部15は、動作機構の動作の異常が確認されたときにおける動作機構の動作状況に関するデータを取得する。動作情報生成部15は、取得されたデータを含む第1の情報である動作情報を生成する。プログラム解析部14および動作情報生成部15の詳細については後述する。
【0018】
図3は、
図1に示す保守支援システム400のサーバ200が有する支援処理部23の機能構成を示す図である。支援処理部23は、動作機構の制御のシミュレーションと動作機構の動作のシミュレーションとによって、動作機構の動作状況をシミュレートするシミュレート処理部24を有する。また、支援処理部23は、第2の情報生成部である提案情報生成部25を有する。提案情報生成部25は、工作機械100の保守のために数値制御装置1へ提案される第2の情報である提案情報を、動作情報に基づいて生成する。シミュレート処理部24および提案情報生成部25の詳細については後述する。
【0019】
図1に示す数値制御装置1の各機能部は、実施の形態1の保守支援システム400の制御方法を実行するための制御プログラムがハードウェアを用いて実行されることによって実現される。
【0020】
図4は、実施の形態1にかかる数値制御装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。数値制御装置1は、各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)31と、データ格納領域を含むRAM(Random Access Memory)32と、不揮発性メモリであるROM(Read Only Memory)33と、制御プログラムと各種情報とを記憶する外部記憶装置34とを備える。数値制御装置1は、数値制御装置1の外部の装置との接続インタフェースである通信インタフェース(Interface:I/F)35と、情報を入力する入力デバイス36と、画面にて情報を表示する出力デバイスであるディスプレイ37とを備える。
図4に示す数値制御装置1の各部は、バス38を介して相互に接続されている。
【0021】
CPU31は、ROM33および外部記憶装置34に記憶されているプログラムを実行する。
図1に示す制御部2の機能は、CPU31を使用して実現される。外部記憶装置34は、HDD(Hard Disk Drive)あるいはSSD(Solid State Drive)である。
図1に示す記憶部6の機能は、外部記憶装置34を使用して実現される。ROM33には、数値制御装置1であるコンピュータまたはコントローラの基本となる制御のためのプログラムであるBIOS(Basic Input/Output System)あるいはUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)といったブートローダであって、ハードウェアを制御するソフトウェアまたはプログラムが記憶されている。なお、制御プログラムは、ROM33に記憶されても良い。
【0022】
ROM33および外部記憶装置34に記憶されている各種プログラムは、RAM32にロードされる。CPU31は、RAM32に制御プログラムを展開して各種処理を実行する。入力デバイス36は、キーボードおよびポインティングデバイスを含む。
図1に示す入力部4の機能は、入力デバイス36を使用して実現される。ディスプレイ37の1つの例は、液晶パネルを備える液晶ディスプレイである。
図1に示す表示部5の機能は、ディスプレイ37を使用して実現される。
図1に示す通信部3の機能は、通信I/F35を使用して実現される。
【0023】
図1に示すサーバ200は、実施の形態1の保守支援システム400の制御方法を実行するための制御プログラムがインストールされたコンピュータである。サーバ200の各機能部も、制御プログラムがハードウェアを用いて実行されることによって実現される。
【0024】
図5は、実施の形態1にかかるサーバ200のハードウェア構成を示すブロック図である。サーバ200は、各種処理を実行するCPU41と、データ格納領域を含むRAM42と、不揮発性メモリであるROM43と、制御プログラムと各種情報とを記憶する外部記憶装置44と、サーバ200の外部の装置との接続インタフェースである通信I/F45とを備える。
図5に示すサーバ200の各部は、バス46を介して相互に接続されている。
【0025】
図1に示す制御部20の機能は、CPU41を使用して実現される。
図1に示す記憶部22の機能は、外部記憶装置44を使用して実現される。
図1に示す通信部21の機能は、通信I/F45を使用して実現される。
図5に示す各部について、
図4に示す各部と重複する説明は省略する。
【0026】
制御プログラムは、コンピュータによる読み取りが可能とされた記憶媒体に記憶されたものであっても良い。外部記憶装置34,44には、記憶媒体に記憶された制御プログラムが格納されても良い。記憶媒体は、フレキシブルディスクである可搬型記憶媒体、あるいは半導体メモリであるフラッシュメモリであっても良い。制御プログラムは、他のコンピュータあるいはサーバ装置から通信ネットワークを介して、数値制御装置1とサーバ200とへインストールされても良い。
【0027】
図6は、
図1に示す保守支援システム400の工作機械100が有する動作機構101の概略構成を示す図である。工作機械100は、3軸であるX軸、Y軸およびZ軸のそれぞれの並進運動が可能な動作機構101を有する3軸制御工作機械である。工作機械100は、かかる3軸の並進運動のほかに2軸のそれぞれの回転を可能にする5軸制御加工を行うものであっても良い。
【0028】
動作機構101は、コラム50に設けられた主軸ヘッド51と、被加工物54が載置されるステージ53とを含む。被加工物54を加工するための工具52は、主軸ヘッド51に取り付けられる。
図1に示す駆動制御部7は、三次元空間における工具52と被加工物54との相対位置を制御する。工作機械100は、Z軸を中心に工具52を回転させながら、被加工物54に工具52を接触させることによって、被加工物54の切削加工を行う。主軸ヘッド51には、工具52を回転させる主軸モータが設けられている。
図6において、主軸モータの図示を省略している。
【0029】
主軸ヘッド51は、X軸方向とZ軸方向とに移動可能である。ステージ53は、Y軸方向へ移動可能である。動作機構101は、
図1に示すXサーボモータ11の回転運動を直線運動へ変換する機構と、
図1に示すYサーボモータ12の回転運動を直線運動へ変換する機構と、
図1に示すZサーボモータ13の回転運動を直線運動へ変換する機構とを有する。回転運動を直線運動へ変換する機構は、ボールねじといった運動伝達要素を含む。Xサーボモータ11は、X軸方向において主軸ヘッド51を駆動する。Yサーボモータ12は、Y軸方向においてステージ53を駆動する。Zサーボモータ13は、Z軸方向において主軸ヘッド51を駆動する。動作機構101は、X軸方向とZ軸方向とへの主軸ヘッド51の移動と、Y軸方向へのステージ53の移動とによって、工具52と被加工物54との相対位置を変化させる。なお、主軸ヘッド51の移動可能な方向とステージ53の移動可能な方向とは、上記のとおりである場合に限られず、3軸の方向において適宜変更しても良い。
【0030】
図7は、
図1に示す数値制御装置1が有する駆動制御部7と、動作機構を構成するサーボモータとを示す図である。以下の説明にて、被加工物54に対する工具52の相対位置を、単に「位置」と称することがあるものとする。
【0031】
駆動制御部7は、X軸方向の指令位置CPxと、Y軸方向の指令位置CPyと、Z軸方向の指令位置CPzとを生成する指令値生成部16を有する。指令値生成部16は、動作機構101の数値制御のためのプログラムである加工プログラムを解釈して、加工プログラムにしたがった指令位置CPx,Cpy,CPzを生成する。指令位置CPx,Cpy,CPzは、移動の目標とされる位置を表す。
【0032】
駆動制御部7は、指令トルクCTx,CTy,CTzを生成するサーボ制御部17を有する。指令トルクCTxは、Xサーボモータ11に発生させるトルクを制御するための指令である。指令トルクCTyは、Yサーボモータ12に発生させるトルクを制御するための指令である。指令トルクCTzは、Zサーボモータ13に発生させるトルクを制御するための指令である。応答位置RPxは、指令トルクCTxによるXサーボモータ11の制御によって到達した位置を表す。応答位置RPyは、指令トルクCTyによるYサーボモータ12の制御によって到達した位置を表す。応答位置RPzは、指令トルクCTzによるZサーボモータ13の制御によって到達した位置を表す。
【0033】
Xサーボモータ11には、応答位置PRxを検出する位置検出器が取り付けられている。Yサーボモータ12には、応答位置PRyを検出する位置検出器が取り付けられている。Zサーボモータ13には、応答位置PRzを検出する位置検出器が取り付けられている。
図7では、位置検出器の図示を省略している。駆動制御部7には、応答位置PRx,RPy,RPzの検出結果が入力される。駆動制御部7は、応答位置RPxを指令位置CPxに追従させるように指令トルクCTxを調整するための演算によって、指令トルクCTxのフィードバック制御を行う。駆動制御部7は、応答位置RPyを指令位置CPyに追従させるように指令トルクCTyを調整するための演算により、指令トルクCTyのフィードバック制御を行う。駆動制御部7は、応答位置RPzを指令位置CPzに追従させるように指令トルクCTzを調整するための演算により、指令トルクCTzのフィードバック制御を行う。
【0034】
図8は、
図1に示す工作機械100による加工によって得られる加工形状の第1の例を示す図である。
図8に示す被加工物55は、半円柱形状をなしている。被加工物55は、長手方向をX軸方向に一致させて配置されている。被加工物55の曲面の加工において、工作機械100は、YZ平面における円弧に沿うように工具52を移動させ、円弧に沿った移動を終えるごとに工具52の位置をX軸方向にシフトさせることを繰り返す。
図8に示す破線の矢印は、工具52の経路を表している。
【0035】
図9は、
図1に示す工作機械100による加工によって得られる加工形状の第2の例を示す図である。
図9に示す被加工物60は、
図8に示す被加工物55の場合と同じ加工プログラムによって加工されたものである。被加工物60には、被加工物55には無い直線状の筋目61が生じている。Z軸方向において工具52が移動する方向が反転した際に、動作機構101のうちZサーボモータ13によって駆動する要素間における摩擦の方向が反転する。摩擦の方向の反転は、Zサーボモータ13の制御を乱す外的な作用である外乱となり得る。かかる外乱の影響によって、サーボ制御部17によって生成される指令トルクCTzに追従誤差が生じることがある。かかる追従誤差によって、被加工物60の曲面のうちZ軸方向における頂部には、曲面上の位置よりもZ軸方向において突起した削り残しが生じ得る。Z軸方向において工具52が移動する方向が反転するごとに生じる追従誤差によって、Z軸方向における最上部にX軸方向へ延びる筋目61が形成される加工不良が生じる。
【0036】
数値制御装置1には、このような追従誤差を補正するための補正機能が備えられている。かかる補正機能のための制御パラメータである補正パラメータは、動作機構101における摩擦の大きさといった特性に応じて調整される。動作機構101の経年変化によって動作機構101の特性に変化が生じた場合、特性の変化に応じて補正パラメータが調整されなければ、数値制御装置1は、追従誤差の補正ができなくなる。
【0037】
実施の形態1にかかる保守支援システム400は、動作機構101の動作精度の低下による加工不良が確認されたときにおける動作状況を、サーバ200でのシミュレートによって検証する。サーバ200は、検証の結果を基に、動作機構101の制御のためのパラメータである制御パラメータの変更についての提案情報を生成して、生成された提案情報を数値制御装置1へ送る。工作機械100を操作するオペレータは、サーバ200から送られた提案情報を数値制御装置1において確認することができる。このようにして、保守支援システム400は、工作機械100の保守を支援する。
【0038】
次に、工作機械100の保守を支援するための保守支援システム400の動作について説明する。生産現場における工作機械100のオペレータは、加工不良を発見した場合に、加工不良が生じた被加工物60についての加工プログラムのプログラム番号を入力部4へ入力する。数値制御装置1は、プログラム番号の入力画面を表示部5に表示しても良い。生産現場には、プログラム番号の入力のための操作端末が設置されても良い。
【0039】
プログラム解析部14は、入力されたプログラム番号によって指定された加工プログラムについて、加工プログラムに記述されている指令経路を解析する。指令経路は、指令位置を推移させる経路である。プログラム解析部14は、指令経路から、加工不良が発生し得る部分を抽出する。
図8に示す指令経路の場合、プログラム解析部14は、Z軸方向において指令位置が変化する方向の正負が反転する位置である反転位置と、指令経路のうち反転位置より手前の位置と反転位置より先の位置とを含む部分を抽出する。
【0040】
次に、プログラム解析部14は、抽出された部分の付近において、各軸方向のうち位置の移動が含まれる方向を判定して、動作情報の生成のためのデータを取得する対象とする軸を選択する。
図8に示す指令経路の場合、上記反転位置の付近において位置の移動が含まれる方向はY軸方向とZ軸方向であって、X軸方向の移動はない。この場合、プログラム解析部14は、Y軸とZ軸とを選択する。
【0041】
動作情報生成部15は、プログラム解析部14によって抽出された部分について、加工プログラムにしたがって動作機構101を動作させる。動作情報生成部15は、プログラム解析部14によって選択された軸について、動作情報の生成のための時系列データを取得する。時系列データは、動作機構101の動作の際における時系列の各種位置データであって、動作機構101を動作させた時間範囲における指令位置のデータと、当該時間範囲における応答位置のデータと、当該時間範囲における指令トルクのデータとを含む。Y軸とZ軸とが選択された場合に、動作情報生成部15は、指令位置CPy,CPzと、応答位置RPy,RPzと、指令トルクCTy,CTzとを含む時系列データを取得する。これにより、動作情報生成部15は、動作機構101の異常である動作精度の低下が確認されたときにおける動作状況に関するデータである時系列データを取得する。すなわち、動作情報生成部15は、動作機構101の異常が確認された場合に、動作機構101の正常時を含む動作状況に関するデータの中から、その異常が確認された時点を含む時間範囲における時系列データを取得する。
【0042】
また、動作情報生成部15は、動作機構101を動作させたときにおける制御パラメータを記憶部6から読み出す。動作情報生成部15は、記憶部6に記憶されている制御パラメータのうち、フィードバック制御におけるゲイン、または追従誤差の補正のための補正パラメータなど、動作機構101の位置変化に影響を与える可能性がある制御パラメータを読み出す。動作情報生成部15は、取得された時系列データと、読み出された制御パラメータとを含む動作情報を生成する。通信部3は、動作情報生成部15によって生成された動作情報をサーバ200へ送信する。
【0043】
数値制御装置1は、工作機械100による加工において各種位置データを常時記憶部6に記憶することによって、時系列データを保持しても良い。時系列データが保持されている場合、動作情報生成部15は、加工プログラムにしたがった動作機構101の動作を行わなくても良い。動作情報生成部15は、保持されている時系列データのうち、プログラム解析部14によって抽出された部分についての時系列データを読み出す。動作情報生成部15は、動作機構101の動作による時系列データの取得に代えて、保持されている時系列データを読み出すことによって、動作精度の低下が確認されたときにおける動作状況に関する時系列データを取得することができる。この場合、動作情報生成部15は、時系列データの取得のための動作機構101の動作が不要となることにより、動作情報の生成に要する時間を短縮することができる。
【0044】
サーバ200の通信部21は、数値制御装置1の通信部3によって送信された動作情報を受信する。シミュレート処理部24は、受信された動作情報を基に、動作機構101の動作状況をシミュレートする。
【0045】
図10は、
図1に示す支援処理部23が有するシミュレート処理部24の機能構成を示す図である。シミュレート処理部24は、動作機構101の制御のシミュレーションを行う制御シミュレート部26と、動作機構101の動作のシミュレーションを行う動作シミュレート部27とを有する。なお、上述の例のように、Y軸とZ軸とについての時系列データが動作情報に含まれ、かつX軸についての時系列データが動作情報に含まれない場合には、シミュレート処理部24は、Y軸およびZ軸についての動作および制御のシミュレーションを行い、X軸についての動作および制御のシミュレーションを行わない。以下の説明では、シミュレート処理部24は、X軸、Y軸およびZ軸についての動作および制御のシミュレーションを行うものとする。
【0046】
制御シミュレート部26には、動作情報に含まれる時系列データのうち、各軸についての指令位置CPx,CPy,CPzのデータが入力される。制御シミュレート部26は、サーボ制御部17による制御のシミュレーションを行うことによって、指令位置CPxから生成される指令トルクの推定値CTx’と、指令位置CPyから生成される指令トルクの推定値CTy’と、指令位置CPzから生成される指令トルクの推定値CTz’とを求める。制御シミュレート部26は、求めた推定値CTx’,CTy’,CTz’を出力する。
【0047】
動作機構101に作用する摩擦に起因する外乱は、各軸の外乱トルクとして表現される。推定値CTx’には、X軸についての外乱トルクDTxが加算される。推定値CTy’には、Y軸についての外乱トルクDTyが加算される。推定値CTz’には、Z軸についての外乱トルクDTzが加算される。動作シミュレート部27には、外乱トルクDTxが加算された推定値CTx’と、外乱トルクDTyが加算された推定値CTy’と、外乱トルクDTzが加算された推定値CTz’とが入力される。
【0048】
動作シミュレート部27は、外乱トルクDTxが加算された推定値CTx’を基に、Xサーボモータ11の動作をシミュレーションすることによって、応答位置の推定値PRx’を求める。動作シミュレート部27は、外乱トルクDTyが加算された推定値CTy’を基に、Yサーボモータ12の動作をシミュレーションすることによって、応答位置の推定値PRy’を求める。動作シミュレート部27は、外乱トルクDTzが加算された推定値CTz’を基に、Zサーボモータ13の動作をシミュレーションすることによって、応答位置の推定値PRz’を求める。
【0049】
なお、制御シミュレート部26は、応答位置の推定値RPx’を指令位置CPxに追従させるように推定値CTx’を調整するための演算によって、推定値CTx’のフィードバック制御を行う。制御シミュレート部26は、応答位置の推定値RPy’を指令位置CPyに追従させるように推定値CTy’を調整するための演算によって、推定値CTy’のフィードバック制御を行う。制御シミュレート部26は、応答位置の推定値RPz’を指令位置CPzに追従させるように推定値CTz’を調整するための演算によって、推定値CTz’のフィードバック制御を行う。制御シミュレート部26は、動作情報に含まれる制御パラメータのうち、フィードバック制御におけるゲインを読み出して、読み出されたゲインを用いたフィードバック制御を行う。
【0050】
このようにして、シミュレート処理部24は、動作機構101の制御のシミュレーションと動作機構101の動作のシミュレーションとを行い、動作機構101の動作状況のシミュレーション結果である応答位置の推定値RPx’,RPy’,RPz’を求める。
【0051】
シミュレート処理部24には、各軸についての制御をシミュレートするための制御モデルと、各軸についての動作をシミュレートするための動作モデルと、各軸についての外乱トルクのモデルとが必要となる。制御シミュレート部26は、各軸についての制御をシミュレートするために、軸ごとにサーボ制御部17と同じ処理を実行可能とする構成を備えている。動作シミュレート部27にて各軸についての動作をシミュレートするための構成と、軸についての外乱トルクのモデルとは、動作情報に含まれる応答位置RPx,RPy,RPzと、指令トルクCTx,CTy,CTzとを用いたシステム同定を行うことによって決定される。システム同定の手法には、ARX(autoregressive with exogenous input)モデルを用いた同定または部分空間同定法といった手法を用いることができる。
【0052】
なお、上記のシステム同定に用いられるデータが不足している場合、モデルの同定が正しく行われず、シミュレート処理部24でのシミュレートによって得られる推定値RPx’,RPy’,RPz’による経路65と、動作情報に含まれる応答位置RPx,RPy,RPzによる経路とに大きな差が生じる場合がある。かかる場合に、サーバ200は、シミュレート処理部24による動作状況のシミュレーションの結果に基づいて、時系列データの追加を数値制御装置1へ要求しても良い。
【0053】
例えば、サーバ200による要求に応じて、数値制御装置1のプログラム解析部14は、加工プログラムに記述されている指令経路から抽出される部分の範囲を拡大、すなわち、抽出される時系列データの時間範囲を拡大して、指令経路の部分の再抽出を行う。動作情報生成部15は、再抽出された部分についての時系列データを取得して、動作情報を生成する。数値制御装置1の通信部3は、生成された動作情報をサーバ200へ送信する。これにより、数値制御装置1は、時系列の時間範囲が拡大された時系列データを含む動作情報をサーバ200へ送信する。シミュレート処理部24は、範囲が拡大された時系列データを基に、シミュレートを再度実行する。これにより、シミュレート処理部24は、正確なシミュレートを行うことが可能となる。
【0054】
図11は、
図10に示すシミュレート処理部24によるシミュレーションの結果の第1の例を示す図である。
図11に示す経路65は、
図9に示す被加工物60を加工する場合について、応答位置の推定値RPy’,RPz’をプロットすることにより得られた工具52の経路のシミュレーション結果を示している。経路65は、被加工物60のYZ平面における円弧に相当する。また、経路65には、推定値CTz’の追従誤差によって生じる突起部66が含まれている。突起部66は、
図11では、かかる追従誤差による突起部66を拡大して示している。
【0055】
突起部66は、Z軸方向における経路65の移動方向が反転した直後、すなわち経路65上の位置の象限が切り換わったときの追従誤差によって生じている。突起部66は、外乱である摩擦の方向が反転した影響で追従性が低下して、円弧よりもY軸およびZ軸の原点から遠ざかる側である外側へ経路65が膨らむことによって生じる。経路65におけるこのような誤差は、象限突起と称される。象限突起である突起部66は、
図9に示す筋目61の原因となる。
【0056】
シミュレート処理部24は、シミュレーションの結果を基に象限突起を確認すると、制御シミュレート部26におけるZ軸についてのシミュレーションについて、象限突起の補正度合いを調整するために、象限突起の補正のための制御パラメータである補正パラメータを変更する。
図11に示す突起部66については、象限突起の補正度合いが不足していることから、シミュレート処理部24は、補正度合いを強めるように補正パラメータを変更する。
【0057】
なお、補正パラメータの設定あるいは動作機構101の状態によっては、象限突起は、円弧よりもY軸およびZ軸の原点へ近づく側である内側へ経路65が入り込むように生じることがある。この場合、象限突起の補正度合いが過剰であることから、シミュレート処理部24は、補正度合いを弱めるように補正パラメータを変更する。
【0058】
シミュレート処理部24は、制御パラメータを変更した後に、動作機構101の制御および動作のシミュレーションを再度実行する。シミュレート処理部24は、シミュレーションを実行するごとに、象限突起の補正が適切であるか否かを判断する。保守支援システム400は、制御パラメータの変更による効果をこのようなシミュレーションによって確認できることから、効果の確認のための実際の加工を行う場合に比べて、確認に要する時間を短縮できる。
【0059】
図12は、
図10に示すシミュレート処理部24によるシミュレーションの結果の第2の例を示す図である。
図12に示す経路67は、象限突起の補正が適切であると判断されたときにおけるシミュレーション結果を示している。シミュレート処理部24は、象限突起の補正が適切であるとの判断が得られたときの制御パラメータを提案情報生成部25へ出力する。
【0060】
提案情報生成部25は、動作情報に含まれる変更前の制御パラメータと、シミュレート処理部24による変更後の制御パラメータとの差分を求める。提案情報生成部25は、求めた差分を基に、制御パラメータの変更プランを含む提案情報を生成する。通信部21は、提案情報生成部25によって生成された提案情報を数値制御装置1へ送信する。
【0061】
数値制御装置1の通信部3は、サーバ200の通信部21によって送信された提案情報を受信する。表示部5は、提案情報のうち、制御パラメータの変更プランを表示する。工作機械100のオペレータは、表示された変更プランにしたがって制御パラメータを変更することができる。また、数値制御装置1は、表示された変更プランの承認のための操作を入力部4において受け付けても良い。工作機械100のオペレータの操作によって変更プランが承認されると、制御部2は、変更プランにしたがって制御パラメータを変更する。工作機械100のオペレータは、経験あるいは熟練度に関わらず、サーバ200からの提案情報を参照することによって、制御パラメータを適切に調整することができる。保守業者は、工作機械100が設置されている生産現場へ出向かなくても、保守のための提案情報をオペレータへ提供することができる。また、保守業者は、工作機械100の加工不良があったときに、迅速に対応することができる。
【0062】
図13は、実施の形態1にかかる保守支援システム400の制御方法による手順について説明する図である。ステップS1において、数値制御装置1の入力部4は、プログラム番号を受け付ける。ステップS2において、数値制御装置1のプログラム解析部14は、ステップS1におけるプログラム番号によって指定された加工プログラムを解析する。ステップS3において、数値制御装置1の動作情報生成部15は、ステップS2における解析結果を基に、時系列データと制御パラメータとを含む動作情報を生成する。ステップS4において、数値制御装置1の通信部3は、ステップS3において生成された動作情報をサーバ200へ送信する。
【0063】
サーバ200の通信部21は、ステップS4において送信された動作情報を受信する。ステップS5において、サーバ200のシミュレート処理部24は、受信された動作情報を基に、動作機構101の動作状況のシミュレーションを実行する。ステップS6において、サーバ200の提案情報生成部25は、ステップS5におけるシミュレーションの結果を基に、制御パラメータの変更レシピを含む提案情報を生成する。ステップS7において、通信部21は、ステップS6において生成された提案情報を数値制御装置1へ送信する。
【0064】
数値制御装置1の通信部3は、ステップS7において送信された提案情報を受信する。表示部5は、受信された提案情報を表示する。ステップS8では、数値制御装置1の制御部2は、工作機械100のオペレータの操作によって、制御パラメータを変更する。以上により、保守支援システム400は、
図13に示す手順による動作を終了する。
【0065】
実施の形態1によると、動作情報生成部15は、加工不良が確認されたときにおける動作機構101の動作状況に関する時系列データを基に、動作情報を生成する。支援要請処理部8は、サーバ200での制御パラメータの調整によるトラブルシュートに必要な情報を適切に選択し、サーバ200でのシミュレーションにて過不足なく活用可能な情報をサーバ200へ送ることができる。保守支援システム400は、数値制御装置1からサーバ200へ過大なデータが送られることを抑制可能とし、データの通信量の低減が可能となる。保守支援システム400は、数値制御装置1からサーバ200へ送られるデータが絞り込まれることによって必要な情報まで送られなくなるという事態を回避できる。サーバ200は、数値制御装置1から送られる動作情報によって、動作機構101の動作状況を正確に把握することができる。以上により、保守支援システム400は、産業機械の動作機構101による動作状況の正確な把握とデータの通信量の低減とが可能となるという効果を奏する。
【0066】
実施の形態2.
実施の形態2にかかる保守支援システム400は、動作機構101の動作状況についての指標値を数値制御装置1において監視し、指標値が閾値を超えたことによって、動作不良の予兆を検知する。保守支援システム400は、指標値が閾値を超えたときにおける指標値のログデータをサーバ200にて検証して、動作機構101を構成する部品についてのメンテナンスの要否を判定する。サーバ200は、メンテナンスの要否についての判定の結果を基に、部品のメンテナンスに関する提案情報を生成して、生成された提案情報を数値制御装置1へ送る。工作機械100を操作するオペレータは、サーバ200から送られた提案情報を数値制御装置1において確認することができる。このようにして、保守支援システム400は、工作機械100の保守を支援する。
【0067】
図14は、本発明の実施の形態2にかかる保守支援システム400の数値制御装置1が有する支援要請処理部70の機能構成を示す図である。実施の形態2において、支援要請処理部70は、
図2に示す支援要請処理部8に代えて、数値制御装置1に設けられている。支援要請処理部70は、工作機械100の保守の支援を要請するための処理を行う。
【0068】
支援要請処理部70は、動作機構101の動作状況についての指標値を監視する指標監視部71を有する。また、支援要請処理部70は、動作機構の動作精度の低下が確認されたときにおける動作状況に関するデータを基に、保守の支援を要請するためにサーバ200へ送信される動作情報を生成する動作情報生成部72を有する。
【0069】
図15は、実施の形態2にかかる保守支援システム400のサーバ200が有する支援処理部80の機能構成を示す図である。実施の形態2において、支援処理部80は、
図3に示す支援処理部23に代えて、サーバ200に設けられている。支援処理部80は、工作機械100の保守の支援のための処理を行う。
【0070】
動作機構101の構成要素には、送り駆動系あるいは主軸を構成するボールねじおよびベアリングといった部品が含まれる。ボールねじとベアリングとは、負荷を受けながら回転する転動体を有する。転動体は、長期の使用によって摩耗あるいは傷が生じることがある。転動体は、摩耗あるいは傷によって、送り軸の負荷の増加、または特定の周波数成分での共振といった、動作不良の予兆となる現象を生じ得る。ボールねじとベアリングとは、このような現象を生じたまま使用が継続されることによって、動作機構101の構成要素に作用する摩擦による外乱が増大し、象限突起の増大といった動作不良を生じさせる。ボールねじまたはベアリングが完全に損傷した場合、動作機構101が動作不能となることによって、工作機械100は加工を行うことができなくなる。損傷した部品が交換されるまでの期間が長引くほど、工作機械100の稼動が停止される期間が長くなるため、生産への支障が大きくなる。
【0071】
保守支援システム400は、指標値のログデータを基に、部品の損傷の予兆を検知する。部品が完全に損傷するよりも前に部品を交換可能とすることで、工作機械100は、稼働が停止される事態を回避することが可能となり、生産性の低下を最小限に抑えることができる。
【0072】
指標監視部71は、指標値として、各軸の負荷と共振ピークの高さとを監視する。各軸の負荷は、Xサーボモータ11、Yサーボモータ12、Zサーボモータ13および主軸モータの各指令トルクの二乗平均によって得られる。共振ピークの高さは、Xサーボモータ11、Yサーボモータ12およびZサーボモータ13の各指令トルクの高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)解析によって得られる。記憶部6には、指標値のログデータを格納する領域であるリングバッファが確保されている。リングバッファに格納されたログデータのデータ量が、リングバッファに格納可能なデータ量の上限に達すると、リングバッファのうち最古のデータが最新のデータに書き換えられる。
【0073】
あらかじめ設定された閾値を超える負荷が指標監視部71によって検知された場合に、動作情報生成部72は、リングバッファに保持されているログデータのうちの負荷の履歴データである負荷データを読み出す。動作情報生成部72は、読み出された負荷データを含む動作情報を生成する。あらかじめ設定された閾値を超える共振ピーク高さが指標監視部71によって検知された場合に、動作情報生成部72は、そのときのFFT解析の結果を含む動作情報を生成する。通信部3は、動作情報生成部72によって生成された動作情報をサーバ200へ送信する。
【0074】
サーバ200の通信部21は、数値制御装置1の通信部3によって送信された動作情報を受信する。メンテナンス判定部81は、動作情報に含まれる負荷データまたはFFT解析の結果を基に、部品のメンテナンスの要否を判定する。記憶部22は、ボールねじまたはベアリングといった部品について、部品の損傷の予兆となる負荷の推移を示す第1のプロファイル情報と、部品の損傷の予兆となる共振ピーク高さの推移を示す第2のプロファイル情報とを保持している。メンテナンス判定部81は、負荷データの推移が第1のプロファイル情報と一致する場合に、部品のメンテナンスが要るものと判定する。また、メンテナンス判定部81は、共振ピーク高さの推移が第2のプロファイル情報と一致する場合に、部品のメンテナンスが要るものと判定する。メンテナンス判定部81は、負荷データの推移が第1のプロファイル情報と一致しない場合と、共振ピーク高さの推移が第2のプロファイル情報と一致しない場合とにおいて、部品のメンテナンスは不要と判定する。
【0075】
提案情報生成部82は、部品のメンテナンスが要るとの判定がメンテナンス判定部81によってなされた場合、当該部品の交換を促す提案情報を生成する。提案情報生成部82は、部品のメンテナンスは不要との判定がメンテナンス判定部81によってなされた場合、部品の交換は不要であることを示す提案情報を生成する。通信部21は、提案情報生成部82によって生成された提案情報を数値制御装置1へ送信する。
【0076】
数値制御装置1の通信部3は、サーバ200の通信部21によって送信された提案情報を受信する。表示部5は、受信された提案情報を表示する。工作機械100のオペレータは、部品の交換を促す提案情報が表示された場合に、部品の交換を行うか、保守業者へ部品の交換を依頼する。工作機械100は、オペレータの経験あるいは熟練度に関わらず、サーバ200からの提案情報を参照することによって、部品の損傷を未然に防止することができる。オペレータは、部品が損傷するよりも前に、交換のための部品あるいは部品交換に関連する資材をあらかじめ準備することができる。保守業者は、交換のための部品あるいは部品交換に関連する資材を生産現場へあらかじめ提供することによって、保守サービスの効率的な運営が可能となる。
【0077】
図16は、実施の形態2にかかる保守支援システム400の制御方法について説明する図である。ステップS11において、数値制御装置1の指標監視部71は、指標値を監視する。ステップS11における監視において、閾値を超える指標値が検知された場合に、ステップS12において、数値制御装置1の動作情報生成部72は、指標値のログデータを含む動作情報を生成する。ステップS13において、数値制御装置1の通信部3は、ステップS12において生成された動作情報をサーバ200へ送信する。
【0078】
サーバ200の通信部21は、ステップS13において送信された動作情報を受信する。ステップS14において、サーバ200のメンテナンス判定部81は、受信された動作情報を基に、部品のメンテナンスの要否を判定する。ステップS15において、動作情報生成部15は、ステップS14における判定の結果を示す提案情報を生成する。ステップS16において、通信部21は、ステップS15において生成された提案情報を数値制御装置1へ送信する。
【0079】
数値制御装置1の通信部3は、ステップS16において送信された提案情報を受信する。ステップS17では、表示部5は、受信された提案情報を表示する。以上により、保守支援システム400は、
図16に示す手順による動作を終了する。
【0080】
実施の形態2によると、保守支援システム400は、部品の損傷の予兆が生じている時期に部品のメンテナンスを促す提案情報を工作機械100のオペレータに示すことで、部品の損傷を未然に防ぐための支援を行うことができる。動作情報生成部72は、指標値が閾値を超えた場合に、指標値のログデータを含む動作情報を生成する。指標値が閾値を超えたことによって当該指標値のログデータを含む動作情報が生成されることで、閾値を超えていない指標値についてのデータは送信されない。支援要請処理部70は、メンテナンスの要否の判定に必要な情報を適切に選択し、判定に過不足なく活用可能な情報をサーバ200へ送ることができる。保守支援システム400は、数値制御装置1からサーバ200へ過大なデータが送られることを抑制可能とし、データの通信量の低減が可能となる。保守支援システム400は、数値制御装置1からサーバ200へ送られるデータが絞り込まれることによって必要な情報まで送られなくなるという事態を回避できる。サーバ200は、数値制御装置1から送られる動作情報によって、動作機構101の動作状況を正確に把握することができる。以上により、保守支援システム400は、産業機械の動作機構101による動作状況の正確な把握とデータの通信量の低減とが可能となるという効果を奏する。
【0081】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
保守支援システム(400)は、産業機械の動作機構の駆動を制御する数値制御装置(1)と、数値制御装置(1)と通信可能な支援装置であるサーバ(200)とを備え、産業機械の保守を支援する。数値制御装置(1)は、動作機構の動作状態に関するデータの中から動作機構の動作の異常が確認されたときにおける動作機構の動作状況に関するデータを取得し、取得されたデータを含む第1の情報を生成する第1の情報生成部を備える。サーバ(200)は、保守のために数値制御装置(1)へ提案される第2の情報を、第1の情報の内容に基づいて生成する第2の情報生成部を備える。