(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載のレーザ装置であって、前記N個の導波路コアは、当該N個の導波路コアのうち隣り合う導波路コア間でエバネッセント光が相互伝搬するように互いに近接して配置されていることを特徴とするレーザ装置。
請求項1または2記載のレーザ装置であって、前記マルチコア導波路と前記光反射器との間に介在し、前記マルチコア導波路の当該他の光入出力端と光学的に結合された後端側分岐導波路を更に備え、
前記後端側分岐導波路は、前記N個の導波路コアからそれぞれ伝搬したN本の光を合波して合波光を生成し、当該生成された合波光を前記光反射器に出力するとともに、前記光反射器で反射された光をN本の反射光に分岐させ、当該N本の反射光をそれぞれ前記N個の導波路コアに入射させることを特徴とするレーザ装置。
請求項9記載のレーザ装置であって、前記第2のバス導波路と前記光反射器との間に介在し、前記第2のバス導波路の光入出力端と光学的に結合された後端側分岐導波路を更に備え、
前記後端側分岐導波路は、前記K個の導波路コアからそれぞれ伝搬したK本の光を合波して合波光を生成し、当該生成された合波光を前記光反射器に出力するとともに、前記光反射器で反射された光をK本の反射光に分岐させ、当該K本の反射光をそれぞれ前記K個の導波路コアに入射させることを特徴とするレーザ装置。
請求項6または7記載のレーザ装置であって、前記第1のリング共振器及び前記第2のリング共振器にそれぞれ接続された温度調整素子を更に備えることを特徴とするレーザ装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る種々の実施の形態について詳細に説明する。なお、図面全体において同一符号を付された構成要素は、同一構成及び同一機能を有するものとする。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る実施の形態1であるレーザ装置1の概略構成を示す平面図である。
図2は、
図1に示した入出力導波路22のII−II線における概略断面を示す図であり、
図3は、
図1に示したマルチコア導波路27のIII−III線における概略断面を示す図である。
【0012】
図1に示されるようにレーザ装置1は、半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier,SOA)10と、このSOA10と光学的に結合された光導波路構造20とを備えている。
図1では、説明の便宜上、導波路パターンを被覆するクラッド層の表示は省略されている。
【0013】
光導波路構造20は、
図1に示されるように半導体基板層21を備え、この半導体基板層21上に、入出力導波路22、分岐導波路23、3本の導波路コア24〜26からなるマルチコア導波路27、及び、3つのミラー(反射鏡)28〜29からなる光反射器31を備えて構成されている。また、
図2及び
図3の断面図に示されるように、光導波路構造20は、半導体基板層21と、この半導体基板層21上に堆積されたクラッド層33とを有し、クラッド層33は、入出力導波路22、分岐導波路23、マルチコア導波路27及び光反射器31を被覆する。なお、本実施の形態では、入出力導波路22、分岐導波路23、マルチコア導波路27及び光反射器31は、クラッド層33によって完全に被覆されているが、これに限定されるものではない。
【0014】
このような光導波路構造20の製造方法は、たとえば、以下のとおりである。先ず、SOI(Silicon On Insulator)基板を用意する。SOI基板は、支持基板層、埋め込み酸化シリコン層及びシリコン層がこの順番で積層された基板である。選択エッチング技術を用いてシリコン層をパターニングすることで、入出力導波路22、分岐導波路23、マルチコア導波路27及び光反射器31を構成するシリコン層のパターンを形成することができる。次に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、当該シリコン層のパターン上に酸化シリコン層を堆積させる。この結果、堆積された酸化シリコン層と埋め込み酸化シリコン層とをクラッド層とし、シリコン層のパターンをコア層として有する光導波路構造20が作製される。この製造方法では、半導体基板層21は支持基板層によって構成される。なお、この製造方法に代えて、SOI基板のシリコン層のうちコア層となるべき部分以外の部分を選択的に酸化させることでクラッド層が形成されてもよい。
【0015】
入出力導波路22は、
図1に示されるように単一の導波路コアからなり、SOA10の光入出力端面10bと光学的に結合された光入出力端22aを有する。SOA10は、光入出力端面(後端面)10bを介して光を光導波路構造20に入力することができる。
【0016】
マルチコア導波路27は、同一方向(Z軸方向)に沿って延在しかつX軸方向に等間隔で離れて配置された3本の導波路コア24,25,26で構成されている。後述するようにスーパーモードを励振させるため、導波路コア24,25,26は、当該導波路コア24,25,26のうち隣り合う導波路コア同士が光学的に結合するように互いに近接して配置される。
【0017】
分岐導波路23は、入出力導波路22と光学的に結合された単一の光入出力端と、導波路コア24,25,26の端部24a,25a,26aの光入出力端と光学的に結合された3個の分岐端とを有している。分岐導波路23は、入出力導波路22からの伝搬光を3本の光に分岐させ、当該3本の光を導波路コア24,25,26にそれぞれ伝搬させることができる。
【0018】
光反射器31は、導波路コア24,25,26の他の端部24b,25b,26bの光入出力端と光学的に結合された3個のミラー28,29,30で構成されている。これらミラー28,29,30は、導波路コア24,25,26を伝搬した光をそれぞれSOA10の方向に反射させる機能を有する。これにより、SOA10及び光導波路構造20は、全体として共振器構造を有する。ミラー28〜30は、たとえば、ブラッググレーティングによって実現されてもよいし、あるいは、結晶の劈開面で実現されてもよい。
【0019】
なお、本実施の形態の導波路コア24〜26のコア数は3個であり、分岐導波路23の分岐端の数は3個であるが、コア数及び分岐端の数はそれぞれ3個に限定されるものではない。コア数及び分岐端の数がそれぞれN個(Nは2以上の整数)となるように分岐導波路23及びマルチコア導波路27の構成を適宜変更することが可能である。
【0020】
SOA10は、誘導放出を起こすゲイン媒質である。SOA10における光の増幅が、光導波路構造20における光の損失を上回ると発振が生じ、レーザ光CLが得られる。SOA10は、光導波路構造20とは反対側の光出力端面(前端面)10aからレーザ光CLを出力する。狭スペクトル線幅を得る1つの方法は、共振器の長さを長くすることであることが知られている。また、レーザ光CLの波長は、共振器の長さと波長の関係から決定され、共振器の長さが波長に対して共振条件を満たす場合、その波長を有するレーザ光CLが出力される。
【0021】
図2に示されるように、SOA10から光導波路構造20に入力された光によって基本モードFMが励振される。マルチコア導波路27においては、導波路コア24〜26は、隣り合う導波路コア間でエバネッセント光が相互伝搬するように互いに近接して配置されている。このため、導波路コア24,25間、及び、導波路コア25,26間が光学的に結合されるので、
図3に示されるようにスーパーモードSMと呼ばれる伝搬モードが励振される。分岐導波路23を用いてスーパーモードが励振されるため、高次のスーパーモードの励振は抑制され、0次のスーパーモードのみを選択的に励振することが可能である。
【0022】
図4は、入出力導波路22の伝搬モード(コアモード)が基本モードである場合の、II−II線断面における電界のx方向成分分布を濃度値(グレイスケール値)で示す図である。
図4において、x軸はX軸方向に対応する位置を示し、y軸はY軸方向に対応する位置を示している。(x,y)=(0,0)の位置に配置された入出力導波路22が実線で示されている。
図4のx方向成分分布では、濃度値が高いほど、正のx成分の値が大きい。この基本モードは、入出力導波路22がシリコンで構成され、クラッド層33がシリカガラスで構成され、入出力導波路22のコア幅w
1=290nm、その高さh=290nm、入出力導波路22の屈折率n
si=3.5、クラッド層33の屈折率n
SiO2=1.45、波長λ=1.55μmとの条件下で得られたものである。x方向成分分布の計算は、下記の非特許文献2で示されているベクトル有限要素法を用いて行われた。
【0023】
・非特許文献2:K. Saitoh and M. Koshiba, “Full-vectorial imaginary-distance beam propagation method based on a finite element scheme: Application to photonic crystal fibers,” IEEE J. Quantum Electron. 38, 927 (2002).
【0024】
図5は、
図4に示した基本モードに対してマルチコア導波路27でスーパーモードが励振された場合の、III−III線断面における電界のx方向成分分布を濃度値(グレイスケール値)で示す図である。
図5では、x軸方向に沿って配列された導波路コア24,25,26が、それぞれ矩形状の実線で示されている。このスーパーモードは、導波路コア24,25,26のコア幅w
1及び高さhがすべて同一、かつコア間隔a
1=600nmとの条件下で計算されたものである。
【0025】
導波路コア24,25,26のコア間隔a
1は、導波路コア24,25間及び導波路コア25,26間にエバネッセント光が相互伝搬できる程度に小さいことから、
図5によれば、導波路コア24,25同士及び導波路コア25,26同士は、0次のスーパーモードを励振できるほど十分に近接していることが分かる。3個の導波路コア24,25,26からなる結合導波路を伝搬したスーパーモードは、後端面の光反射器31によって反射され、その後、分岐導波路23で基本モードに変換された後にSOA10に入射される。このとき、SOA10の前端面10a側のミラーと光反射器31との間の共振条件を満足する波長が、出力レーザ光CLの波長となる。
【0026】
図5に示したとおり、導波路コア24〜26は、スーパーモードを励起励振できる程度に十分近接しているため、導波路コア24〜26は光学的に結合しているということができる。マルチコア導波路27でスーパーモードが励振されることにより、III−III線断面における実効コア断面積を拡大させることが可能である。よって、高光出力パワー時の場合、または長い共振器長が採用された場合でも、非線形光学効果を抑制することができる。また、高光出力化と狭スペクトル線幅化の両立を実現することができる。したがって、従来のレーザ光源の高出力化の方法として知られている、コヒーレントビーム結合(Coherent Beam Combining,CBC)法のように、各コアエレメントの位相調整をせずに済むという利点がある。
【0027】
ここで、CBCとは、アレイ状のファイバーレーザをコヒーレントに結合させる方法である。CBCでは、アレイ数を増やすことで出力限界値を上昇させることが可能である。また、それぞれのレーザの位相状態を制御することにより、レーザの出射方向を変えることもできる。CBCは、たとえば、下記の非特許文献3に開示されている。
【0028】
・非特許文献3:T. Y. Fan, “Laser Beam Combining for High-Power, High-Radiance Sources,” IEEE J. Select. Top. Quant. Electron. 11, 567 (2005).
【0029】
以上に説明したとおり、実施の形態1では、導波路コア24〜26は、当該導波路コア24〜26のうち隣り合う導波路コア同士が光学的に結合するように互いに近接して配置されているので、マルチコア導波路27にスーパーモードを励振させることができる。このスーパーモードにより、マルチコア導波路27の実効コア断面積が大きくなるため、非線形光学効果の発生が抑制され、出力波長の安定化を実現することができる。
【0030】
また、本実施の形態では、分岐導波路23が用いられてるため、高次のスーパーモードの励振は抑制されることから、導波路コア24〜26を有する結合導波路を用いても、マルチモード発振を抑制することが可能である。
【0031】
図6は、実施の形態1の変形例であるレーザ装置1Aの概略構成を示す平面図である。この変形例のレーザ装置1Aは、SOA10及び光導波路構造20Aを備えて構成されている。この変形例の光導波路構造20Aの構成は、上記分岐導波路23に代えて
図6のマルチモード干渉(MMI)型分岐導波路23Mを有する点を除いて、上記実施の形態1の光導波路構造20の構成と同じである。本実施の形態の場合でも、上記実施の形態1の場合と同様の効果を実現することができる。
【0032】
実施の形態2.
図7は、本発明に係る実施の形態2であるレーザ装置2の概略構成を示す平面図である。
図7に示されるように本実施の形態のレーザ装置2は、SOA10及び光導波路構造20Bを備えて構成されている。この光導波路構造20Bの構成は、実施の形態1の光反射器31に代えて
図7の分岐導波路(後端側分岐導波路)38及び光反射器39を有する点を除いて、実施の形態1の光導波路構造20の構成と同じである。
【0033】
光導波路構造20Bの製造方法は、実施の形態1の光導波路構造20の製造方法と同様である。光反射器39は、たとえば、ブラッググレーティングによって実現されてもよいし、あるいは、結晶の劈開面で実現されてもよい。
【0034】
本実施の形態の分岐導波路38は、マルチコア導波路27と光反射器39との間に介在し、光反射器39と光学的に結合された単一の光入出力端と、導波路コア24,25,26の端部24b,25b,26bの光入出力端と光学的に結合された3個の分岐端とを有している。分岐導波路38は、導波路コア24,25,26からそれぞれ伝搬した3本の光を合波して合波光を生成し、この合波光を光反射器39に出力することができる。また、分岐導波路38は、光反射器39で反射された光を3本の光に分岐させ、当該3本の光を導波路コア24,25,26に伝搬させることができる。
【0035】
導波路コア24〜26を伝搬する0次のスーパーモードは、後端側に配置された分岐導波路38によって1個の導波路コアを伝搬する基本モードに変換され、更に光反射器39で反射される。したがって、SOA10と光導波路構造20Bとで共振器構造が構成される。
【0036】
本実施の形態では、ミラー反射による複数の導波路コア間の位相の偏差による光損失を防ぐことができるという効果が得られる。すなわち、実施の形態1では、3個のミラー28〜29がそれぞれ導波路コア24〜26について設けられていたので、ミラー28〜29の作製誤差によって伝搬光の反射時に導波路コア間で位相の偏差が生じることがある。これは、伝搬しているスーパーモードに対して光損失の要因となる。これに対し、本実施の形態では、光反射器39とマルチコア導波路27との間に分岐導波路38が配置されているので、分岐導波路38においてスーパーモードは基本モードに変換される。これにより、複数の導波路コア間の位相の偏差による光損失を防ぐことが可能となる。
【0037】
なお、本実施の形態の導波路コア24〜26のコア数は3個、前端側に設けられた分岐導波路23の分岐端の数は3個、後端側に設けられた分岐導波路38の分岐端の数も3個であるが、コア数及び分岐端の数はそれぞれ3個に限定されるものではない。コア数及び分岐端の数がそれぞれN個(Nは2以上の整数)となるように分岐導波路23,38及びマルチコア導波路27の構成を適宜変更することが可能である。
【0038】
図8は、実施の形態2の変形例であるレーザ装置2Aの概略構成を示す平面図である。この変形例のレーザ装置2Aは、SOA10及び光導波路構造20Cを備えて構成されている。この変形例の光導波路構造20Cの構成は、上記分岐導波路(後端側分岐導波路)38に代えて
図8のマルチモード干渉型分岐導波路38Mを有する点を除いて、上記実施の形態2の光導波路構造20Bの構成と同じである。この変形例の場合でも、上記実施の形態2の場合と同様の効果を実現することができる。
図8の構成において、分岐導波路23に代えてマルチモード干渉型分岐導波路23M(
図6)が採用されてもよい。
【0039】
実施の形態3.
図9は、本発明に係る実施の形態3であるレーザ装置3の概略構成を示す平面図である。
図10は、
図9に示したマルチコア導波路47のIX−IX線における概略断面を示す図である。
図9に示されるようにレーザ装置3は、SOA10とこのSOA10と光学的に結合された光導波路構造40とを備えている。
図9では、説明の便宜上、導波路パターンを被覆するクラッド層の表示は省略されている。
【0040】
光導波路構造40は、
図9に示されるように半導体基板層41上に、入出力導波路42、分岐導波路43、3本の導波路コア44〜46からなるマルチコア導波路47、3本の導波路コア54〜56からなるバス導波路(第1のバス導波路)57、3本の導波路コア64〜66からなるバス導波路(第2のバス導波路)67、3個のミラー(反射鏡)68〜70からなる光反射器71、リング共振器(第1及び第2のリング共振器)50,60、及び、これらリング共振器50,60の温度調整のための温度調整素子として機能するヒータ(電極)78,79を備えて構成されたリング共振器構造である。
【0041】
また、
図10の断面図に示されるように、光導波路構造40は、半導体基板層41と、この半導体基板層21上に堆積されたクラッド層53とを有し、このクラッド層53は、入出力導波路42、分岐導波路43、マルチコア導波路47、バス導波路57,67、光反射器71及びリング共振器50,60を被覆する。なお、本実施の形態では、入出力導波路42、分岐導波路43、マルチコア導波路47、バス導波路57,67、光反射器71及びリング共振器50,60は、クラッド層53によって完全に被覆されているが、これに限定されるものではない。このような光導波路構造40の製造方法は、上記実施の形態1の光導波路構造20の製造方法と同様である。
【0042】
入出力導波路42は、
図9に示されるように単一の導波路コアからなり、SOA10の光入出力端面10bと光学的に結合された光入出力端42aを有する。SOA10は、光入出力端面(後端面)10bを介して光を光導波路構造40に入力することができる。
【0043】
分岐導波路43は、入出力導波路42と光学的に結合された単一の光入出力端と、導波路コア44,45,46の端部44a,45a,46aの光入出力端と光学的に結合された3個の分岐端を有している。分岐導波路43は、入出力導波路42からの伝搬光を3本の光に分岐させ、当該3本の光を導波路コア44,45,46に伝搬させることができる。
【0044】
マルチコア導波路47は、同一方向(Z軸方向)に沿って延在しかつX軸方向に等間隔で離れて配置された3本の導波路コア44,45,46で構成されている。実施の形態1の場合と同様に、これら導波路コア44,45,46は、スーパーモードを励振させるため、当該導波路コア44,45,46のうち隣り合う導波路コア同士が光学的に結合するように互いに近接して配置される。これにより、隣り合う導波路コア間でエバネッセント光が相互伝搬することが可能となる。
【0045】
なお、本実施の形態の導波路コア44〜46のコア数は3個であり、分岐導波路43の分岐端の数は3個であるが、コア数及び分岐端の数はそれぞれ3個に限定されるものではない。コア数及び分岐端の数がそれぞれN個(Nは2以上の整数)となるように分岐導波路43及びマルチコア導波路47の構成を適宜変更することが可能である。
【0046】
リング共振器(第1のリング共振器)50は、円環状の導波路コア(シングルコア)で構成されている。このリング共振器50の一端部は、導波路コア44,45,46の端部44b,45b,46bと光学的に結合するように配置されている。この配置により、リング共振器50の当該一端部と導波路コア44,45,46の端部44b,45b,46bとで方向性結合器51が構成される。
【0047】
バス導波路(第1のバス導波路)57は、同一方向(Z軸方向)に沿って延在しかつX軸方向に等間隔で離れて配置された3本の導波路コア54,55,56で構成されている。実施の形態1の場合と同様に、これら導波路コア54,55,56は、スーパーモードを励振させるため、当該導波路コア54,55,56のうち隣り合う導波路コア同士が光学的に結合するように互いに近接して配置される。これにより、隣り合う導波路コア間でエバネッセント光が相互伝搬することが可能となる。導波路コア54,55,56の一方の端部54b,55b,56bは、リング共振器50の他端部と光学的に結合するように配置されている。この配置により、リング共振器50の他端部と導波路コア54,55,56の端部54b,55b,56bとで方向性結合器52が構成される。
【0048】
なお、本実施の形態のバス導波路57における導波路コア54〜56のコア数は3個であるが、この個数に限定されるものではない。コア数がM個(Mは2以上の整数)となるようにバス導波路57の構成を適宜変更することが可能である。
【0049】
バス導波路57における導波路コア54,55,56の他方の端部54a,55a,56aは、他のリング共振器(第2のリング共振器)60の一端部と光学的に結合する。このリング共振器60は、
図9に示されるように円環状の導波路コア(シングルコア)で構成されている。リング共振器50の一端部と導波路コア54,55,56の他方の端部54a,55a,56aとが光学的に結合することにより、方向性結合器61が構成される。
【0050】
一方、バス導波路(第2のバス導波路)67は、同一方向(Z軸方向)に沿って延在しかつX軸方向に等間隔で離れて配置された3本の導波路コア64,65,66で構成されている。実施の形態1の場合と同様に、導波路コア64,65,66は、スーパーモードを励振させるため、当該導波路コア64,65,66のうち隣り合う導波路コア同士が光学的に結合するように互いに近接して配置される。これにより、隣り合う導波路コア間でエバネッセント光が相互伝搬することが可能となる。導波路コア64,65,66の一方の端部64a,65a,66aは、リング共振器60の他端部と光学的に結合するように配置されている。この配置により、当該リング共振器60の他端部と導波路コア64,65,66の一方の端部64a,65a,66aとで方向性結合器62が構成される。
【0051】
なお、本実施の形態のバス導波路67における導波路コア64〜56のコア数は3個であるが、この個数に限定されるものではない。コア数がK個(Kは2以上の整数)となるようにバス導波路67の構成を適宜変更することが可能である。
【0052】
バス導波路67における導波路コア64,65,66の他方の端部64b,65b,66bは、光反射器70と光学的に結合するように配置されている。
図9に示されるように光反射器71は、導波路コア64,65,66の他方の端部64b,65b,66bの光入出力端と光学的に結合された3個のミラー68,69,70で構成されている。これらミラー68,69,70は、導波路コア64,65,66を伝搬した光をそれぞれ逆方向に反射させる機能を有する。このようなミラー68,69,70は、たとえば、ブラッググレーティングによって実現されてもよいし、あるいは、結晶の劈開面で実現されてもよい。
【0053】
そして、リング共振器50上に高抵抗金属材料からなるヒータ78が形成されており、リング共振器60上に高抵抗金属材料からなるヒータ79が形成されている。このようなヒータ78,79は、たとえば、タンタル、白金またはチタンなどの高抵抗金属材料を蒸着することにより形成することが可能である。ヒータ78,79に通電しこれらヒータ78,79の温度を個別に制御することで、2つのリング共振器50,60のバーニア効果(屈折率変化)によって共振波長が変化する。よって、チューナブルな波長制御を実現することが可能となる。
【0054】
リング共振器50,60と結合されるマルチコア導波路47及びバス導波路57,67の各々は、3個の導波路コアからなる結合導波路として機能する。このため、マルチコア導波路47及びバス導波路57,67を伝搬する0次のスーパーモードとリング共振器50,60の伝搬モードとが位相整合するように導波路パラメータを選択することによって、マルチコア導波路47及びバス導波路57,67の組とリング共振器50,60とは光学的に結合され、全体として共振器を形成することができる。
【0055】
今、結合導波路を構成する3個の導波路コア(たとえば、導波路コア44〜46)を「コアA」と呼び、リング共振器(たとえば、リング共振器50)を形成する導波路を「コアB」と呼ぶこととする。コアAは、
図10に示されるように、実施の形態1の場合と同様に、コア幅w
1、高さh、間隔a
1を有している。一方、コアBのコア幅w
2は、3個の導波路コアからなる結合導波路の伝搬モードである0次のスーパーモードと位相整合するように決定される必要がある。
【0056】
図11は、コアBのみが存在すると仮定して計算された伝搬モードの実効屈折率I1のコア幅w
2依存性を示すグラフである。参考として、コアAの0次スーパーモード(
図5)に対する実効屈折率を破線I0で示す。w
2=299nmとすると、位相整合条件を満たすことが確認可能である。ここで、一般に、1個の導波路コアに対する基本モードの実効屈折率よりも、3個の導波路コアによる0次スーパーモードのほうが実効屈折率が大きいため、w
2>w
1の関係になっていることに注意すべきである。ただし、0次のスーパーモードでなく、高次のスーパーモードを励振するよう分岐導波路を設計した場合には、この限りではない。
【0057】
このような条件に対して、コアAとコアB間のコア間隔をたとえばa
2=800nmとした場合における2つのスーパーモードの計算結果を
図12及び
図13にそれぞれ示す。ここで、
図12では、左方に現れるコアBのx方向成分の値は正の値を示し、右方に現れる3つのコアAのx方向成分の値も正の値を示す。一方、
図13では、左方に現れるコアBのx方向成分の値は負の値を示し、右方に現れる3つのコアAのx方向成分の値は正の値を示している。
図12に示したスーパーモードの実効屈折率をn
e、
図13に示した実効屈折率をn
oとすると、コアAのスーパーモードがコアBに完全に移行する伝搬長である結合長L
cは、これらのスーパーモードのビートから以下の式(1)により計算できる。
【0058】
L
c=λ/{2(n
e−n
o)} (1)
【0059】
今、実効屈折率n
eは約2.051597、実効屈折率n
oは約2.042803と計算することができるため、結合長L
cは、約88μmと見積もることができる。このことを確かめるため、コアAに入力した光パワーの伝搬に対する変化を計算した結果P0を
図14に示す。
図14の結果の計算には、下記の非特許文献4に示されている、ベクトル有限要素法に基づくビーム伝搬法が使用された。
【0060】
・非特許文献4:K. Saitoh, and M. Koshiba, “Full-vectorial finite element beam propagation method with perfectly matched layers for anisotropic optical waveguides,” IEEE/OSA J. Lightwave Technol. 19, 405 (2001).
【0061】
図15,
図16及び
図17には、伝搬長Lについて、L=0、L=66μm、L=88μmに対する電界のx成分分布がそれぞれ示されている。コアAに入力した光パワーは、伝搬に従って徐々にコアBに移行し、結合長L
cが約88μmのときには、当該光パワーはほぼ100%コアBに移行していることが確認できる。なお、結合長L
cの値については、コア間隔a
2を小さい値となるように設計すれば、n
e−n
oの値は大きくなり、結合長L
cは更に短くなる。逆にコア間隔a
2の値を大きい値となるように設計すれば、n
e−n
oの値は小さくなり、結合長L
cは更に長くなる。
【0062】
以上に説明したように実施の形態3では、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。この効果に加え、チューナブルな波長制御が可能である。各々が3個の導波路コアからなる結合導波路47,57,67とリング共振器50,60を構成するコアとが位相整合し、これらコア間で光パワーの移行が可能であることから、各々が3個の導波路コアからなる結合導波路47,57,67を用いても、本実施の形態のレーザ装置3は、全体として共振器として動作することが可能となる。
【0063】
次に、実施の形態3の変形例について説明する。
図18は、実施の形態3の第1変形例であるレーザ装置3Aの概略構成を示す平面図である。この変形例のレーザ装置3Aは、SOA10及び光導波路構造40Aを備えて構成されている。この変形例の光導波路構造40Aの構成は、上記分岐導波路43に代えて
図18のマルチモード干渉型分岐導波路43Mを有する点を除いて、上記実施の形態3の光導波路構造40の構成と同じである。本実施の形態の場合でも、上記実施の形態3の場合と同様の効果を実現することができる。
【0064】
図19は、実施の形態3の第2変形例であるレーザ装置3Bの概略構成を示す平面図である。
図19に示されるように本実施の形態のレーザ装置3Bは、SOA10及び光導波路構造40Bを備えて構成されている。この光導波路構造40Bの構成は、実施の形態3のリング共振器50,60及びヒータ78,79に代えて、
図19の中間分岐導波路81,83,85,87、接続導波路82,84,86,88、リング共振器91,92及びヒータ98,99を有する点を除いて、実施の形態3の光導波路構造40の構成と同じである。
【0065】
レーザ装置3Bにおいては、接続導波路82とリング共振器91の端部とで方向性結合器93が形成され、接続導波路84とリング共振器91の他端部とで方向性結合器94が形成されている。また、接続導波路86とリング共振器92の端部とで方向性結合器95が形成され、接続導波路88とリング共振器92の他端部とで方向性結合器96が形成されている。光導波路構造40Bの製造方法は、実施の形態1の製造方法と同様である。
【0066】
図19に示されるように中間分岐導波路(第1の中間分岐導波路)81は、マルチコア導波路47とリング共振器91との間に介在し、導波路コア44〜46の端部44b,45b,46bの光入出力端と光学的に結合されている。中間分岐導波路(第1の接続導波路)81は、導波路コア44〜46から入力された3本の光を合波して合波光を生成する。方向性結合器93において、接続導波路82は、中間分岐導波路81から入力された合波光をリング共振器91の一端部に伝搬させることができる。逆に、接続導波路82は、リング共振器91の当該一端部から入力された光を中間分岐導波路81に伝搬させる。中間分岐導波路81は、接続導波路82から入力された光を3本の光に分岐させて当該3本の光を導波路コア44〜46にそれぞれ伝搬させることができる。
【0067】
方向性結合器94では、接続導波路(第2の接続導波路)84は、リング共振器91の他端部からの伝搬光を中間分岐導波路83に出力する。中間分岐導波路(第2の中間分岐導波路)83は、バス導波路57とリング共振器91との間に介在し、導波路コア54〜56の端部54b,55b,56bの光入出力端と光学的に結合されている。中間分岐導波路83は、リング共振器91の他端部から接続導波路84を介して入力された光を3本の光に分岐させて当該3本の光をそれぞれ導波路コア54〜56に伝搬させることができる。逆に、中間分岐導波路83は、導波路コア54〜56の端部54b,55b,56bから入力された3本の光を合波して合波光を生成し、当該合波光を、接続導波路84を介してリング共振器91に伝搬させることができる。
【0068】
一方、中間分岐導波路(第3の中間分岐導波路)85は、バス導波路57とリング共振器92との間に介在し、導波路コア54〜56の端部54a,55a,56aの光入出力端と光学的に結合されている。中間分岐導波路85は、導波路コア54〜56から入力された3本の光を合波して合波光を生成する。方向性結合器95において、接続導波路(第3の接続導波路)86は、中間分岐導波路85から入力された合波光をリング共振器92の一端部に伝搬させることができる。逆に、接続導波路86は、リング共振器92の当該一端部から入力された光を中間分岐導波路85に伝搬させる。中間分岐導波路85は、接続導波路86から入力された光を3本の光に分岐させて当該3本の光を導波路コア54〜56にそれぞれ伝搬させることができる。
【0069】
方向性結合器96では、接続導波路(第4の接続導波路)88は、リング共振器92の他端部からの伝搬光を中間分岐導波路87に出力する。中間分岐導波路(第4の中間分岐導波路)87は、バス導波路67とリング共振器92との間に介在し、導波路コア64〜66の端部64a,65a,66aの光入出力端と光学的に結合されている。中間分岐導波路87は、リング共振器92の他端部から接続導波路88を介して入力された光を3本の光に分岐させて当該3本の光をそれぞれ導波路コア64〜66に伝搬させることができる。逆に、中間分岐導波路87は、導波路コア64〜66の端部64a,65a,66aから入力された3本の光を合波して合波光を生成し、当該合波光を、接続導波路88を介してリング共振器92に伝搬させることができる。
【0070】
実施の形態4.
図20は、本発明に係る実施の形態4であるレーザ装置4の概略構成を示す平面図である。
図20に示されるように本実施の形態のレーザ装置4は、SOA10及び光導波路構造40Cを備えて構成されている。この光導波路構造40Cの構成は、実施の形態3の光反射器71に代えて
図20の分岐導波路(後端側分岐導波路)89及び光反射器100を有する点を除いて、実施の形態3の光導波路構造40の構成と同じである。
【0071】
光導波路構造40Cの製造方法は、実施の形態1の光導波路構造20の製造方法と同様である。光反射器100は、たとえば、ブラッググレーティングによって実現されてもよいし、あるいは、結晶の劈開面で実現されてもよい。
【0072】
本実施の形態の分岐導波路89は、バス導波路67と光反射器100との間に介在し、光反射器100と光学的に結合された単一の光入出力端と、導波路コア64〜66の端部64b,65b,66bの光入出力端と光学的に結合された3個の分岐端とを有している。分岐導波路89は、導波路コア64〜66からそれぞれ伝搬した3本の光を合波して合波光を生成し、この合波光を光反射器100に出力することができる。また、分岐導波路89は、光反射器100で反射された光を3本の光に分岐させ、当該3本の光を導波路コア64〜66に伝搬させることができる。
【0073】
このように分岐導波路89は、上記実施の形態2の分岐導波路38と同様の機能を有することから、実施の形態2の場合と同様に、導波路コア64〜66を伝搬する0次のスーパーモードを、1個の導波路コアを伝搬する基本モードに変換し、当該基本モードを光反射器100に与えることができる。したがって、実施の形態4では、実施の形態3と同様の効果に加えて、実施の形態2の場合と同様に、ミラー反射における複数の導波路コア間の位相の偏差による光損失を防ぐことができる。
【0074】
図21は、実施の形態4の変形例であるレーザ装置4Aの概略構成を示す平面図である。この変形例のレーザ装置4Aは、SOA10及び光導波路構造40Dを備えて構成されている。この変形例の光導波路構造40Dの構成は、上記分岐導波路(後端側分岐導波路)89に代えて
図21のマルチモード干渉型分岐導波路89Mを有する点を除いて、上記実施の形態4の光導波路構造40Cの構成と同じである。この変形例の場合でも、上記実施の形態4の場合と同様の効果を実現することができる。
【0075】
実施の形態5.
図22は、本発明に係る実施の形態5であるレーザ装置5の概略構成を示す平面図である。
図22に示されるように本実施の形態のレーザ装置5は、SOA10及び光導波路構造40Eを備えて構成されている。この光導波路構造40Eの構成は、実施の形態3のリング共振器50,60及びヒータ78,79に代えて、
図22の多重リング共振器110,120及びヒータ118,119を有する点を除いて、実施の形態3の光導波路構造40の構成と同じである。
【0076】
多重リング共振器(第1のリング共振器)110は、同心状に配置された3個のリング状導波路コア111,112,113からなる。リング状導波路コア111,112,113は、スーパーモードを励振させるため、当該リング状導波路コア111,112,113のうち隣り合うリング状導波路コア同士が光学的に結合するように互いに近接して配置される。これにより、隣り合うリング状導波路コア間でエバネッセント光が相互伝搬することが可能となる。また、チューナブルな波長制御を実現するために、高抵抗金属材料からなるヒータ118が多重リング共振器110上に設けられている。このような多重リング共振器110の一端部とマルチコア導波路47の導波路コア44〜46の端部44b,45b,46bとで方向性結合器114が構成され、多重リング共振器110の他端部とバス導波路57の導波路コア54〜56の端部54b,55b,56bとで方向性結合器115が構成される。
【0077】
なお、多重リング共振器110におけるリング状導波路コア111〜113のコア数は3個であるが、コア数は3個に限定されるものではない。コア数がL個(Lは2以上の整数)となるように多重リング共振器110の構成を適宜変更することが可能である。
【0078】
一方、多重リング共振器(第2のリング共振器)120は、同心状に配置された3個のリング状導波路コア121,122,123からなる。リング状導波路コア121,122,123は、スーパーモードを励振させるため、当該リング状導波路コア121,122,123のうち隣り合うリング状導波路コア同士が光学的に結合するように互いに近接して配置される。これにより、隣り合うリング状導波路コア間でエバネッセント光が相互伝搬することが可能となる。また、チューナブルな波長制御を実現するために、高抵抗金属材料からなるヒータ119が多重リング共振器120上に設けられている。このような多重リング共振器120の一端部とバス導波路57の導波路コア54〜56の端部54a,55a,56aとで方向性結合器124が構成され、多重リング共振器120の他端部とバス導波路67の導波路コア64〜66の端部64a,65a,66aとで方向性結合器125が構成される。
【0079】
なお、多重リング共振器120におけるリング状導波路コア121〜123のコア数は3個であるが、コア数は3個に限定されるものではない。コア数がP個(Pは2以上の整数)となるように多重リング共振器120の構成を適宜変更することが可能である。
【0080】
以上に説明したように実施の形態5では、多重リング共振器110,120は、スーパーモードを励振するように構成されている。よって、実施の形態3と同様の設計方法により、マルチコア導波路47及びバス導波路57,67のスーパーモードに対する位相整合条件が満足されれば、レーザ装置5は全体として共振器として動作することができる。したがって、実施の形態3の効果に加えて、多重リング共振器110,120における結合導波路に対しても実効コア断面積を拡大させることが可能であるので、高光出力パワー時において非線形光学効果を抑制することが可能となる。したがって、出力波長の安定化を実現することができる。
【0081】
図23は、実施の形態5の変形例であるレーザ装置5Aの概略構成を示す平面図である。この変形例のレーザ装置5Aは、SOA10及び光導波路構造40Fを備えて構成されている。この変形例の光導波路構造40Fの構成は、上記したバス導波路57,67に代えて
図23の導波路コア(シングルコア)54,64を有する点を除いて、上記実施の形態5の光導波路構造40Eの構成と同じである。この変形例においては、多重リング共振器110(第1のリング共振器)の他端部と導波路コア54の端部54bとで方向性結合器115Aが構成されている。また、多重リング共振器120(第2のリング共振器)の一端部と導波路コア54の端部54aとで方向性結合器124Aが構成され、多重リング共振器120の他端部と導波路コア64の端部64aとで方向性結合器125Aが構成されている。
【0082】
この変形例でも、マルチコア導波路47及び多重リング共振器110,120でスーパーモードが励振されることから、高光出力パワー時において非線形光学効果を抑制することができる。したがって、出力波長の安定化を実現することができる。
【0083】
実施の形態6.
図24は、本発明に係る実施の形態6であるレーザ装置6の概略構成を示す平面図である。
図24に示されるように本実施の形態のレーザ装置6は、SOA10及び光導波路構造40Gを備えて構成されている。この光導波路構造40Gの構成は、実施の形態5の入出力導波路42及びマルチコア導波路47に代えて
図24の入出力導波路47Sを有する点を除いて、実施の形態5の光導波路構造40Eの構成と同じである。
【0084】
入出力導波路47Sは、
図24に示されるように単一の導波路コア(シングルコア)からなり、SOA10の光入出力端面10bと光学的に結合された光入出力端47Saを有する。SOA10は、光入出力端面(後端面)10bを介して光を光導波路構造40Gに入力することができる。本実施の形態においては、多重リング共振器110(第1のリング共振器)の一端部と入出力導波路47Sの端部47Sbとで方向性結合器114Aが構成されている。
【0085】
本実施の形態でも、多重リング共振器110,120でスーパーモードが励振されることから、高光出力パワー時において非線形光学効果を抑制することができる。したがって、出力波長の安定化を実現することができる。
【0086】
図25は、実施の形態6の変形例であるレーザ装置6Aの概略構成を示す平面図である。この変形例のレーザ装置6Aは、SOA10及び光導波路構造40Hを備えて構成されている。この変形例の光導波路構造40Hの構成は、上記したバス導波路57,67に代えて
図25の導波路コア(シングルコア)54,64を有する点を除いて、上記実施の形態6の光導波路構造40Gの構成と同じである。この変形例においては、多重リング共振器110(第1のリング共振器)の他端部と導波路コア54の端部54bとで方向性結合器115Aが構成されている。また、多重リング共振器120(第2のリング共振器)の一端部と導波路コア54の端部54aとで方向性結合器124Aが構成され、多重リング共振器120の他端部と導波路コア64の端部64aとで方向性結合器125Aが構成されている。
【0087】
この変形例でも、多重リング共振器110,120でスーパーモードが励振されることから、高光出力パワー時において非線形光学効果を抑制することができる。したがって、出力波長の安定化を実現することができる。
【0088】
以上、図面を参照して本発明に係る種々の実施の形態について述べたが、これら実施の形態は本発明の例示であり、これら実施の形態以外の様々な形態を採用することもできる。たとえば、上記実施の形態1〜6の各々における結合導波路の導波路コアの数はすべて同一であるが、これに限定されるものではない。位相整合条件が満足されるのであれば、結合導波路の導波路コアの数をすべて同一にする必要はない。
また、上記実施の形態1〜6の光導波路構造は、埋め込み型の導波路を有するものであるが、これに限定されるものではない。埋め込み型の導波路に代えて、リッジ型の導波路またはハイメサ型の導波路が使用されてもよい。
【0089】
なお、本発明の範囲内において、上記実施の形態1〜6の自由な組み合わせ、各実施の形態の任意の構成要素の変形、または各実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。