特許第6618688号(P6618688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6618688三次元造形装置、製造方法およびコンピュータープログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618688
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】三次元造形装置、製造方法およびコンピュータープログラム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/165 20170101AFI20191202BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20191202BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20191202BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20191202BHJP
【FI】
   B29C64/165
   B33Y10/00
   B33Y30/00
   B33Y50/00
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-41031(P2015-41031)
(22)【出願日】2015年3月3日
(65)【公開番号】特開2016-159536(P2016-159536A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年10月10日
【審判番号】不服2019-3199(P2019-3199/J1)
【審判請求日】2019年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 英司
【合議体】
【審判長】 須藤 康洋
【審判官】 植前 充司
【審判官】 大畑 通隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−230895(JP,A)
【文献】 特開2010−149326(JP,A)
【文献】 特開2005−88432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C64/00
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面体をZ方向に複数積層して三次元の物体を造形する三次元造形装置であって、
前記断面体のX方向の造形解像度と、前記断面体のY方向の造形解像度と、前記断面体の前記Z方向への積層間隔とに応じて定まる単位格子毎に、前記物体の材料となる液体を吐出して前記物体を造形するヘッド部と、
前記ヘッド部を制御する制御部と、を備え、
前記単位格子は、前記Z方向に並ぶ複数の副単位格子を有し、
前記ヘッド部は、無彩色液体と、複数種類の有彩色液体とを、それぞれ、指定された量、前記各副単位格子内に吐出可能であり、
前記制御部は、前記ヘッド部を制御して、前記各副単位格子に対して、前記複数種類の有彩色液体のうち、いずれかの有彩色液体を指定した量、吐出させた場合に、前記副単位格子の空間体積が満たされない場合には、前記有彩色液体に加えて、前記無彩色液体を前記副単位格子に吐出させて、前記副単位格子の空間体積を満たす、
三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記物体の表面から内部へ向かう方向に複数の単位格子が並ぶことにより構成された単位格子列に対して、前記複数種類の有彩色液体のうちの一の有彩色液体を吐出する単位格子の数を変化させることによって、前記一の有彩色液体によって表される色の階調を表現する、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記単位格子列中に、前記一の有彩色液体を吐出する前記単位格子が複数ある場合に、
前記複数の単位格子のそれぞれにおいて、前記Z方向の位置が同一の各副単位格子に前記一の有彩色液体を吐出させ、かつ、
前記単位格子列内において、前記一の有彩色液体が前記無彩色液体よりも前記表面側に配置されるよう、前記各副単位格子に前記一の有彩色液体を吐出させる、
三次元造形装置。
【請求項4】
請求項3に記載の三次元造形装置であって、
前記無彩色液体の色は、白色である、三次元造形装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の三次元造形装置であって、
前記ヘッド部は、前記複数種類の有彩色液体をそれぞれ、少なくとも、第1の量と、前記第1の量よりも多い第2の量とで、吐出可能であり、
前記第2の量が、前記第1の量の倍数ではない、三次元造形装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記ヘッド部から前記副単位格子に吐出される前記無彩色液体は、前記無彩色液体の硬化収縮率と前記各有彩色液体の硬化収縮率との相違に応じて予め吐出量が調整されている、三次元造形装置。
【請求項7】
断面体をZ方向に複数積層して三次元の物体を造形する三次元造形装置によって三次元の物体を製造する製造方法であって、
前記三次元造形装置は、前記断面体のX方向の造形解像度と、前記断面体のY方向の造形解像度と、前記断面体の前記Z方向への積層間隔とに応じて定まる単位格子毎に、前記物体の材料となる液体を吐出して前記物体を造形するヘッド部を備え、
前記単位格子は、前記Z方向に並ぶ複数の副単位格子を有し、
前記ヘッド部は、無彩色液体と、複数種類の有彩色液体を、それぞれ、指定された量、前記各副単位格子内に吐出可能であり、
前記ヘッド部を制御して、前記各副単位格子に対して、前記複数種類の有彩色液体のうち、いずれかの有彩色液体を指定した量、吐出させた場合に、前記副単位格子の空間体積が満たされない場合には、前記有彩色液体に加えて、前記無彩色液体を前記副単位格子に吐出させて、前記副単位格子の空間体積を満たす、
製造方法。
【請求項8】
断面体をZ方向に複数積層して三次元の物体を造形する三次元造形装置をコンピューターが制御して三次元の物体を製造するためのコンピュータープログラムであって、
前記三次元造形装置は、前記断面体のX方向の造形解像度と、前記断面体のY方向の造形解像度と、前記断面体の前記Z方向への積層間隔とに応じて定まる単位格子毎に、前記物体の材料となる液体を吐出して前記物体を造形するヘッド部を備え、
前記単位格子は、前記Z方向に並ぶ複数の副単位格子を有し、
前記ヘッド部は、無彩色液体と、複数種類の有彩色液体を、それぞれ、指定された量、前記各副単位格子内に吐出可能であり、
前記ヘッド部を制御して、前記各副単位格子に対して、前記複数種類の有彩色液体のうち、いずれかの有彩色液体を指定した量、吐出させた場合に、前記副単位格子の空間体積が満たされない場合には、前記有彩色液体に加えて、前記無彩色液体を前記副単位格子に吐出させて、前記副単位格子の空間体積を満たす機能、
をコンピューターに実現させるためのコンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット技術を採用した三次元造形装置が注目されている。インクジェット技術を採用した三次元造形装置では、硬化性を有する液体を吐出して水平方向(XY方向)に沿った一層分の断面体を形成する工程を、高さ方向(Z方向)に何層にもわたって行うことで、三次元物体の造形が行われる。例えば、特許文献1に記載された三次元造形装置では、外周部分が着色された層と、外周部分が着色されていない層と、を重ね合わせることによって、色の濃淡を表現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−73163号公報
【特許文献2】特開2001−150556号公報
【特許文献3】特開2005−67138号公報
【特許文献4】特開2010−58519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、外部から観察したときに、1層につき、1色しか表現することができないため、多階調を表す際に、実際の造形解像度よりも見かけの解像度が低下する可能性がある。そのため、液体を吐出して着色された三次元物体を造形する技術において、見かけの解像度が低下することを抑制可能な技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、断面体をZ方向に複数積層して三次元の物体を造形する三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、前記断面体のX方向の造形解像度と、前記断面体のY方向の造形解像度と、前記断面体の前記Z方向への積層間隔とに応じて定まる単位格子毎に、前記物体の材料となる液体を吐出して前記物体を造形するヘッド部と;前記ヘッド部を制御する制御部と;を備える。そして、前記単位格子は、前記Z方向に並ぶ複数の副単位格子を有し、前記ヘッド部は、無彩色液体と、複数種類の有彩色液体とを、それぞれ、指定された量、前記各副単位格子内に吐出可能であり、前記制御部は、前記ヘッド部を制御して、前記各副単位格子に対して、前記複数種類の有彩色液体のうち、いずれかの有彩色液体を指定した量、吐出させた場合に、前記副単位格子の空間体積が満たされない場合には、前記有彩色液体に加えて、前記無彩色液体を前記副単位格子に吐出させて、前記副単位格子の空間体積を満たすことを特徴とする。このような形態の三次元造形装置であれば、造形解像度に応じた単位格子よりも細かな単位である副単位格子に対して、吐出する有彩色液体の量を調整することができるので、着色された三次元物体を造形する際に、三次元物体の見かけの解像度が低下することを抑制することができる。また、上記形態では、副単位格子に対して吐出した有彩色液体の量によって副単位格子の空間体積が満たされない場合には、無彩色液体によって、副単位格子の残りの空間体積を埋める。そのため、各副単位格子の体積が均一化されるとともに、単位格子の体積も均一化される。そのため、三次元物体を精度よく造形することができる。
【0007】
(2)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記物体の表面から内部へ向かう方向に複数の単位格子が並ぶことにより構成された単位格子列に対して、前記複数種類の有彩色液体のうちの一の有彩色液体を吐出する単位格子の数を変化させることによって、前記一の有彩色液体によって表される色の階調を表現してもよい。このような形態の三次元造形装置であれば、物体の奥行き方向に対しても着色を行うため、物体の外面から観察される色の濃淡を変化させることができる。そのため、表現可能な色数を増加させることができる。
【0008】
(3)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記単位格子列中に、前記一の有彩色液体を吐出する前記単位格子が複数ある場合に、前記複数の単位格子のそれぞれにおいて、前記Z方向の位置が同一の各副単位格子に前記一の有彩色液体を吐出させ、かつ、前記単位格子列内において、前記一の有彩色液体が前記無彩色液体よりも前記表面側に配置されるよう、前記各副単位格子に前記一の有彩色液体を吐出させてもよい。このような形態の三次元造形装置であれば、着色された部分の色の濃淡を的確に表現することができる。
【0009】
(4)上記形態の三次元造形装置において、前記無彩色液体の色は、白色であってもよい。このような形態の三次元造形装置であれば、着色された部分の色の濃度をより的確に表現することができる。
【0010】
(5)上記形態の三次元造形装置において、前記ヘッド部は、前記複数種類の有彩色液体をそれぞれ、少なくとも、第1の量と、前記第1の量よりも多い第2の量とで、吐出可能であり、前記第2の量が、前記第1の量の倍数でなくてもよい。このような形態の三次元造形装置であれば、第1の量と第2の量とを組み合わせることによって、様々な量を表すことができるので、表現可能な階調数を増加させることができる。
【0011】
(6)上記形態の三次元造形装置において、前記ヘッド部から前記副単位格子に吐出される前記無彩色液体の量は、前記無彩色液体の硬化収縮率と前記各有彩色液体の硬化収縮率との相違に応じて予め吐出量が調整されてもよい。このような形態の三次元造形装置であれば、三次元物体の造形精度を高めることができる。
【0012】
本発明は、三次元造形装置としての形態以外にも、種々の形態で実現することが可能である。例えば、三次元造形装置が三次元の物体を製造する製造方法や、コンピューターが三次元造形装置を制御して三次元の物体を造形するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムが記録された一次的でない有形の記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態としての三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。
図2】第1実施形態における三次元造形処理のフローチャートである。
図3】第1実施形態において色を表現する手法を説明するための図である。
図4】有彩色インクの吐出量とクリアインクの吐出量との関係を示す図である。
図5】第2実施形態における三次元造形処理のフローチャートである。
図6】奥行き方向に有彩色インクを記録する様子を示す図である。
図7】1滴あたりのインクの吐出量を4pl、8pl、12plのいずれかに調整可能な場合に表現可能な色数を示す図である。
図8】1滴あたりのインクの吐出量を5pl、8pl、13plのいずれかに調整可能な場合に表現可能な色数を示す図である。
図9】第3実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。
図10】クリアインクの吐出量を調整した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.第1実施形態:
図1は、本発明の第1実施形態としての三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。三次元造形装置100は、造形部10と、粉体供給部20と、平坦化機構30と、粉体回収部40と、ヘッド部50と、硬化エネルギー付与部60と、制御部70と、を備えている。制御部70には、コンピューター200が接続されている。三次元造形装置100とコンピューター200とをあわせて広義の三次元造形装置として捉えることもできる。図1には、互いに直行するX方向とY方向とZ方向とを示している。Z方向は、鉛直方向に沿った方向であり、X方向は、水平方向に沿った方向である。Y方向は、Z方向およびX方向に垂直な方向である。
【0015】
造形部10は、内部に三次元物体が造形される槽状の構造体である。造形部10は、XY方向に沿った平坦な造形ステージ11と、造形ステージ11の周囲を囲みZ方向に立設された枠体12と、造形ステージ11をZ方向に沿って移動させるアクチュエーター13とを備える。造形ステージ11は、制御部70がアクチュエーター13の動作を制御することにより、枠体12内においてZ方向に移動する。
【0016】
粉体供給部20は、造形部10内に粉体を供給する装置である。粉体供給部20は、例えば、ホッパーやディスペンサーにより構成される。
【0017】
平坦化機構30は、造形部10の上面を水平方向(XY方向)に移動することによって、造形部10内または、枠体12上に供給された粉体を平坦化し、造形ステージ11上に粉体層を形成するための機構である。平坦化機構30は、例えば、スキージやローラーによって構成される。平坦化機構30によって造形部10から押し出された粉体は、造形部10に隣接して設けられた粉体回収部40内に排出される。
【0018】
第1実施形態における三次元造形装置100は、三次元物体の材料として、硬化性を有する液体(以下、「硬化液」という)と、上述した粉体とを用いる。硬化液としては、モノマーと、モノマーが結合したオリゴマーとを主成分とする液体の樹脂材料と、紫外光が照射されると励起状態となってモノマーあるいはオリゴマーに働きかけて重合を開始させる重合開始剤との混合物を用いる。また、硬化液をヘッド部50から液滴として吐出可能な程度の低粘度となるように、硬化液中のモノマーは比較的低分子量のモノマーが選択されており、更に1つのオリゴマーに含まれるモノマーの数も数分子程度に調整されている。この硬化液は、紫外光を浴びて重合開始剤が励起状態になると、モノマーが互いに重合してオリゴマーに成長し、またオリゴマー同士もところどころで重合して、速やかに硬化して固体となる性質を有している。
【0019】
本実施形態では、粉体として、その表面に、硬化液内に含まれているものとは別のタイプの重合開始剤が付着された粉体を用いる。粉体の表面に付着された重合開始剤は、硬化液と接触するとモノマーあるいはオリゴマーに働きかけて重合を開始させる性質を有している。そのため、造形部10内の粉体に硬化液を供給すると、硬化液が粉体の内部に浸透するとともに、粉体表面の重合開始剤に接触して硬化し、その結果、硬化液が吐出された部分では、粉体同士が硬化した硬化液によって結合された状態となる。なお、粉体として、その表面に重合開始剤が付着された粉体を用いる場合には、重合開始剤を含まない硬化液を用いることも可能である。
【0020】
ヘッド部50は、ヘッド部50に接続されたタンク51から上述した硬化液の供給を受け、その硬化液をZ方向に沿って、造形部10中の粉体層に吐出する装置である。本実施形態では、ヘッド部50は、硬化液として、無彩色インクと、複数種類の有彩色インクとを吐出可能である。本実施形態では、ヘッド部50は、無彩色インクとして、透明(CL)インクとホワイト(W)インクとを吐出することができる。また、有彩色インクとして、シアン(C)インクと、マゼンタ(M)インクと、イエロー(Y)インクとを吐出することができる。なお、ヘッド部50が吐出するインクの色は、これらに限られない。ヘッド部50は、造形部10中に造形される三次元物体に対して、X方向およびY方向に移動可能である。また、ヘッド部50は、造形部10内の造形ステージ11がZ方向に移動することによって、三次元物体に対して相対的にZ方向に移動可能である。
【0021】
本実施形態のヘッド部50は、いわゆるピエゾ駆動方式の液滴吐出ヘッドである。ピエゾ駆動方式の液滴吐出ヘッドは、微細なノズル穴が設けられた圧力室を硬化液で満たしておき、ピエゾ素子を用いて圧力室の側壁を撓ませることによって、圧力室の容積減少分に相当する体積の硬化液を液滴として吐出することが可能である。後述する制御部70は、ピエゾ素子に印加する電圧波形を制御することによって、ヘッド部50から吐出する一滴あたりの硬化液の量を調整することが可能である。
【0022】
硬化エネルギー付与部60は、ヘッド部50から吐出された硬化液を硬化させるためのエネルギーを付与するための装置である。本実施形態では、硬化エネルギー付与部60は、ヘッド部50をX方向に挟むように配置された本硬化用発光装置61と仮硬化用発光装置62とによって構成されている。ヘッド部50が移動すると、それに伴い、硬化エネルギー付与部60も移動する。本硬化用発光装置61および仮硬化用発光装置62からは、硬化液を硬化させるための硬化エネルギーとして、紫外線が照射される。仮硬化用発光装置62は、吐出された硬化液をその着弾位置に固定するための仮硬化を行うために用いられる。本硬化用発光装置61は、仮硬化後に、硬化液を完全に硬化させるために用いられる。仮硬化用発光装置62から照射される紫外線のエネルギーは、例えば、本硬化用発光装置61から照射される紫外線の20〜30%のエネルギーである。
【0023】
制御部70は、CPUとメモリーとを備えている。CPUは、メモリーあるいは記録媒体に記憶されたコンピュータープログラムをメモリーにロードして実行することによって、アクチュエーター13と、粉体供給部20と、平坦化機構30と、ヘッド部50と、硬化エネルギー付与部60と、を制御して三次元物体を造形する機能を有する。詳細は後述するが、この機能には、ヘッド部50を制御して、造形解像度の最小単位である単位格子UG(図3参照)内の各副単位格子SU(図3参照)に対して、複数種類の有彩色インクのうち、いずれかの有彩色インクを、指定した量吐出させた場合に、副単位格子SUの空間体積が満たされない場合には、有彩色インクに加えて、無彩色インクをその副単位格子SUに吐出させて、その副単位格子SUの空間体積を満たすようにする機能が含まれる。制御部70が有する機能は、電子回路によって実現してもよい。
【0024】
三次元造形装置100が三次元物体を造形(製造)する手法を簡単に説明する。まず、コンピューター200が、三次元物体の形状を表すポリゴンデータを、Z方向の造形解像度(積層ピッチ)に従ってスライスし、XY方向に沿った複数の断面データを生成する。この断面データは、X方向およびY方向について所定の造形解像度を有しており、各要素に対して階調値が格納された二次元のビットマップデータによって表される。各要素に格納された階調値は、その要素に対応するXY座標に吐出する硬化液の量を表す。つまり、本実施形態では、ビットマップデータによって、三次元造形装置100の制御部70に対して、硬化液を吐出させる座標と、吐出させる硬化液の量とが指定される。
【0025】
三次元造形装置100の制御部70は、コンピューター200から断面データを取得すると、粉体供給部20および平坦化機構30を制御して造形部10内に粉体層を形成する。そして、断面データに従ってヘッド部50を駆動して硬化液を粉体層に吐出し、その後、吐出された硬化液に向かって硬化エネルギー付与部60を制御して紫外光を照射し、仮硬化および本硬化を行う。すると、紫外光によって硬化液が硬化して粉体同士が結合し、造形部10内には、1層分の断面データに対応する断面体が形成される。こうして1層分の断面体を形成すると、制御部70は、アクチュエーター13を駆動して造形ステージ11を、Z方向の造形解像度に応じた積層ピッチ分、Z方向に沿って降下させる。造形ステージ11を降下させると、制御部70は、造形ステージ11上に既に形成された断面体の上に新たな粉体層を形成する。新たな粉体層を形成すると、制御部70は、コンピューター200から次の断面データを受け取って、新たな粉体層に硬化液を吐出して紫外光を照射することにより、新たな断面体を形成する。このように制御部70は、コンピューター200から各層の断面データを受け取ると、アクチュエーター13や粉体供給部20、平坦化機構30、ヘッド部50、硬化エネルギー付与部60を制御することにより、1層ずつ断面体を形成し、それを積層していくことにより、三次元物体を造形する。
【0026】
図2は、本実施形態において実行される三次元造形処理の具体的なフローチャートである。本実施形態では、まず、コンピューター200が、記録媒体やネットワーク、コンピューター200において実行されているアプリケーションプログラム等から、三次元物体の形状を表すポリゴンデータを取得する(ステップS10)。ポリゴンデータを取得すると、コンピューター200は、ポリゴンデータによって表される各ポリゴンの表面の画像を、C,M,Yの各色に分版する(ステップS20)。
【0027】
各ポリゴンの表面の画像を分版すると、続いて、コンピューター200は、ポリゴンデータを、Z方向の造形解像度に従ってスライスし、断面毎にビットマップデータを生成する(ステップS30)。このとき、コンピューター200は、各断面データにおける物体の最外周に該当する座標には、各ポリゴンの表面画像に基づき、C,M,Yの各色の階調値を表す値を格納し、最外周よりも内側の座標には、クリアインクを吐出するための値を格納する。なお、最外周の着色を行う座標に隣接した内側の座標には、ホワイトインクを吐出するための値を格納してもよい。ホワイトインクを最外周の内側に配置すれば、地色が白色になるため、着色された色の再現性を向上させることができる。
【0028】
断面毎にビットマップデータが生成されると、三次元造形装置100の制御部70は、それらのビットマップデータをコンピューター200から受信し、受信したビットマップデータに従って、ヘッド部50等の各部を制御し、上述した手順に従い、三次元物体を造形する(ステップS40)。上述したように、各断面データの最外周の座標には、C,M,Yの各色について、階調値が記録されており、最外周以外の座標には、クリアインクを吐出するための値が格納されている。そのため、ステップS40では、内部が透明で、表面に着色が施された物体が造形される。ステップS40では、各単位格子に着色を行う際に、制御部70は、以下の手法に従い、着色を行う。
【0029】
図3は、第1実施形態において色を表現する手法を説明するための図である。本実施形態では、ヘッド部50は、単位格子UG毎に、三次元物体の材料となる硬化液を吐出して物体の造形を行う。単位格子UGとは、断面体のX方向およびY方向の造形解像度と、断面体のZ方向への積層間隔とに応じた最小の体積を有する格子である。つまり、単位格子UGとは、造形解像度の最小単位である。1つの単位格子UGは、ビットマップデータの1つの座標に対応する。単位格子のことを、ボクセル(Voxel)ともいう。1つの単位格子UGは、ヘッド部50が吐出可能な有彩色インクの種類に応じて、複数の副単位格子SUを有する。副単位格子SUのことを、サブボクセル(Sub Voxel)ともいう。本実施形態では、ヘッド部50は、減法混色における三原色(C,M,Y)の有彩色インクを吐出可能なため、1つの単位格子UGは、3つの副単位格子SUを有する。これら複数の副単位格子SUは、Z方向に並んでいる。ヘッド部50は、各副単位格子SUに対して、C,M,Y,W,CLのいずれかのインクを、制御部70から指定された量、吐出可能である。
【0030】
図3(A)〜(C)には、単位格子UGに対して、それぞれ、C,M,Yのうち1種類のインクが吐出され、1つの副単位格子SUが有彩色インクで満たされた例を示している。また、図3(D)〜(F)には、単位格子UGに対して、C,M,Yのうち2種類のインクが吐出され、2つの副単位格子SUが有彩色インクで満たされた例を示している。図3(G)には、単位格子に対して、C,M,Yのすべてのインクが吐出され、3つの副単位格子SUのすべてが有彩色インクで満たされた例を示している。図3(A)〜(F)に示されているように、C,M,Yのいずれも吐出されていない副単位格子SUには、クリアインク(CL)が吐出されて満たされる。
【0031】
本実施形態では、制御部70は、各副単位格子SUに、C,M,Yのうち、いずれかの有彩色インクを吐出させた場合において、その有彩色インクによって副単位格子SUの空間体積が満たされない場合には、有彩色インクに加えて、無彩色インクであるクリアインクを副単位格子SU内に吐出させることにより、副単位格子SUの空間体積を、有彩色インクおよび無彩色インクの両方によって満たす。そのため、各副単位格子SUの体積が、均一化されるとともに、単位格子UGの体積も均一化される。なお、粉体を用いて物体を造形する本実施形態の場合、副単位格子SUの空間体積は、副単位格子SUの体積から、そこに含まれている粉体の体積を除いた体積となり、その空間体積をほぼ満たすように有彩色インクおよび無彩色インクが吐出される。
【0032】
図4は、各副単位格子に対して吐出する有彩色インクの吐出量とクリアインクの吐出量との関係を示す図である。本実施形態では、ヘッド部50は、有彩色インクの1滴あたりの吐出量を、ビットマップデータ中の階調値の大きさに応じて、「なし(吐出しない)」「小」、「中」、「大」の4種類から選択する。具体的には、制御部70は、コンピューター200から取得したビットマップデータ中の階調値が0%以上25%未満であれば「なし」、25%以上50%未満であれば、「小」、50%以上75%未満であれば「中」、75%以上100%以下であれば「大」の各量の有彩色インクを吐出するように、ヘッド部50を制御する。つまり、本実施形態では、元のポリゴン表面の画像が例えばフルカラーの場合に、三次元物体に着色を行う際には、C,M,Yそれぞれ4階調であるため、合計で64色まで減色されることになる。この減色処理は、本実施形態では、制御部70において行われるが、コンピューター200がビットマップデータを生成する際に予め行ってもよい。本実施形態では、吐出量が「小」の場合には、ヘッド部50は4plのインクを吐出し、「中」の場合には8plのインクを吐出し、「大」の場合には12plのインクを吐出する。インクの吐出量が「大」の場合に吐出されるインクの量は、副単位格子SU1つ分の容量に一致する。本実施形態では、各インクの吐出量が4段間に区分されるが、ヘッド部50の吐出量の調整能力に応じて、より細かく、あるいは、大まかに区分されてもよい。
【0033】
ビットマップデータに基づいて、有彩色インクの吐出量が上記のように選択されると、制御部70は、選択された有彩色インクの吐出量に応じて、その有彩色インクを吐出する副単位格子SUに吐出するクリアインクの量を決定する。具体的には、制御部70は、有彩色インクの吐出量とクリアインクの吐出量との合計が、「大」の量に相当するように、クリアインクの吐出量を決定する。具体的には、本実施形態では、「小」と「中」の合計が、「大」に相当するため(4pl+8pl=12pl)、有彩色インクが「なし」の場合にはクリアインクは「大」、有彩色インクが「小」の場合にはクリアインクは「中」、有彩色インクが「中」の場合にはクリアインクは「小」、有彩色インクが「大」の場合にはクリアインクは「なし」、となる。この関係を、「大」を「11」、「中」を「10」、「小」を「01」、「なし」を「00」のように二進数で表せば、クリアインクの量は、有彩色インクの量を表す二進数を反転させた値(=11−有彩色インクの量を表す二進数)となる。そのため、制御部70は、ビットマップデータにおいて、クリアインクの量が指定されていなくても、有彩色インクの量が指定されていれば、それに基づいてクリアインクの量を容易に決定することができる。なお、制御部70は、二進数に基づく演算をすることなく、有彩色インクを吐出させるためにヘッド部50に印加する電圧波形から、自動的に、その電圧波形に対応するクリアインク吐出用の電圧波形を選択して印加することとしてもよい。
【0034】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置100では、造形解像度の最小単位である単位格子UGよりも小さな単位である副単位格子SUのそれぞれに対して、C,M,Yのいずれかの有彩色インクを、指定した量、吐出するため、単位格子UG毎に減法混色を行って色を表現することができる。そのため、造形解像度と見かけの解像度とを一致させることが可能となり、1つの単位格子UGにつきC,M,Yのいずれか1色だけ着色を行って面積階調により色を表現するよりも、見かけの解像度が大幅に向上することになる。
【0035】
また、本実施形態では、副単位格子SUに対して吐出した有彩色インクによって副単位格子SUの空間体積が満たされない場合には、クリアインクによって、副単位格子SUの残りの空間体積を埋めるため、各副単位格子SUの体積を均一化することができる。そのため、全ての単位格子UGの体積も均一化されることになり、その結果、最終的に造形される三次元物体の造形精度も高めることが可能になる。
【0036】
なお、本実施形態では、前述のとおり、C,M,Yの各色あたり、階調数が4であるため、1つの単位格子UGあたり64色の色が再現可能である。三次元物体では、二次元の画像のように自然画や陰影を表現する必要性が少ないため、この程度の色数でも十分に三次元物体の表面上の画像を再現可能な場合が多い。
【0037】
B.第2実施形態:
上記第1実施形態では、三次元物体の最外周のみに着色を行っている。これに対して、第2実施形態では、物体の最外周から、奥行き方向の内側にかけて着色を行う。第2実施形態における三次元造形装置100の構成は、第1実施形態と同じである。
【0038】
図5は、第2実施形態における三次元造形処理のフローチャートである。このフローチャートには、図2に示した第1実施形態における三次元造形処理と同じ処理内容の工程については、図2と同じステップ番号を付している。
【0039】
第2実施形態では、まず、コンピューター200がポリゴンデータを取得すると(ステップS10)、第1実施形態と同様に、各ポリゴンの表面の画像を、C,M,Yにそれぞれ分版する(ステップS20)。続いて、コンピューター200は、各色の階調値に応じて、単位格子UG毎に、各有彩色インクの吐出量を決定する(ステップS25)。このステップS25では、コンピューター200は、三次元物体のX,Y方向に沿った奥行き方向に並ぶ複数の単位格子UGを用いて階調表現を行うために、各色の階調値に応じて、それら複数の単位格子UGのそれぞれに対して吐出する各有彩色インクの吐出量を決定する。以下では、物体の表面から奥行き方向に並ぶ複数の単位格子UGのことを、単位格子列UCという(図6参照)。本実施形態では、単位格子列UCは、隣接する3つの単位格子UGによって構成される。
【0040】
上記ステップS25では、コンピューター200は、例えば、階調値が0%以上34%未満の場合には、その階調値の大きさに応じて、最も表面側の単位格子UGに対して吐出する有彩色インクの吐出量を、「なし」、「小」、「中」、「大」から選択する。また、階調値が、34%以上67%未満であれば、最も表面側の単位格子UGに対して吐出する有彩色インクの吐出量を、「大」とし、表面から奥行き方向に2番目に位置する単位格子UGに吐出する有彩色インクの吐出量を、階調値の大きさに応じて、「なし」、「小」、「中」、「大」から選択する。更に、階調値が、67%以上100%以下であれば、最も表面側の単位格子UGと、表面から奥行き方向に2番目に位置する単位格子UGに吐出する有彩色インクの吐出量を、両方とも「大」とし、表面から奥行き方向に3番目に位置する単位格子UGに吐出する有彩色インクの吐出量を、階調値の大きさに応じて、「なし」、「小」、「中」、「大」から選択する。つまり、本実施形態では、奥行き方向に並ぶ3つの単位格子UGについて、それぞれ、「なし」「小」、「中」、「大」の中から有彩色インクの吐出量が選択されるため、C,M,Yをそれぞれ10段階の階調で表すことが可能になる。この結果、CMY全体で、計1000色を表現することが可能になる。
【0041】
ステップS25の処理が完了すると、コンピューター200は、ステップS25によって決定された単位格子UG毎の各有彩色インクの吐出量に基づき、断面毎にビットマップデータを生成する(ステップS30)。本実施形態では、このステップS30において生成されるビットマップデータには、階調値ではなく、有彩色インクの吐出量が記録される。そして、三次元造形装置100の制御部70は、コンピューター200によって生成されたビットマップデータに従い、三次元物体を断面毎に造形する(ステップS40)。このステップS40において、制御部70は、第1実施形態と同様に、各副単位格子SUの空間体積が有彩色インクで満たされない場合には、残った空間体積をクリアインクによって満たす。
【0042】
図6は、奥行き方向に有彩色インクを記録する様子を示す図である。例えば、図6(A)に示した例では、イエローインクとマゼンタインクとが奥行き方向に3つの単位格子UG分、記録されることにより、赤色が表現されている。また、図6(B)では、イエローインクが奥行き方向に3つの単位格子UG分、記録され、シアンインクが2つの単位格子UG分、2つ分記録されることにより、黄緑色が表現されている。有彩色インクが吐出されていない副単位格子SUに対しては、クリアインクが吐出されている。
【0043】
図6に示すように、本実施形態では、制御部70は、単位格子列UC中に、有彩色インクを吐出する単位格子UGが複数ある場合に、Z方向の位置が同一の副単位格子SUにその有彩色インクを吐出させ、かつ、単位格子列UC内において、その有彩色インクがクリアインクよりも表面側に配置されるよう、各副単位格子SUに有彩色インクを吐出させる。こうすることによって、着色された部分の階調を的確に表現することができる。なお、有彩色インク間にクリアインクを挟むように奥行き方向に複数の有彩色インクを記録することも可能である。ここで、有彩色インクをZ方向の位置が同一の位置になるように吐出させるとは、複数の単位格子UGに対して、その有彩色インクを吐出する順番を同じにすることである。例えば、図6(A)におけるマゼンタインク(M)は2番目、図6(B)におけるシアンインク(C)は2番目に吐出しており、これらはZ方向の位置は同一である。
【0044】
以上で説明した第2実施形態によれば、単位格子UGよりも細かな単位である副単位格子SU単位で三次元物体に着色を行うだけではなく、物体の奥行き方向に対しても着色を行うため、物体の外面から観察される色の濃淡をより細かく表現することができる。そのため、表現可能な色数を大幅に増加させることができる。この結果、見かけの解像度が向上するだけではなく、色の再現性も向上させることができる。また、本実施形態においても、副単位格子SUのうち、有彩色インクによって満たされなかった空間体積は、クリアインクによって埋められるため、三次元物体を精度よく造形することができる。
【0045】
なお、第2実施形態において、有彩色インクよりも奥行き方向内側に配置する無彩色インクは、クリアインクではなくホワイトインクであってもよい。内側に配置する無彩色インクをホワイトインクとすれば、地色を白色にすることができるので、有彩色インクによる階調表現をより的確に行うことができる。
【0046】
また、第2実施形態では、奥行き方向に並ぶ複数の単位格子UGへの各有彩色インクの吐出量を、コンピューター200側でビットマップデータを生成する際に、決定している。これに対して、このような処理は、三次元造形装置100の制御部70が行ってもよい。
【0047】
ここで、インクの吐出量と奥行き方向の単位格子数とに応じて表現可能な色数について説明する。
図7は、1滴あたりのインクの吐出量を4pl、8pl、12plのいずれかに調整可能な場合に表現可能な色数を示す図である。上記実施形態のように、ヘッド部50が吐出する1滴あたりのインクの吐出量を、4pl、8pl、12plのいずれかに調整可能である場合には、奥行き方向に並ぶ単位格子を3つ用いれば、各色10階調、全体で1000色もの色を表現可能である。また、奥行き方向に並ぶ単位格子を2つ用いる場合であっても、各色7階調(0,4,8,12,16,20,24pl)、全体で343色もの色を表現可能である。なお、単位格子の数が1つであれば、第1実施形態で説明したとおり、各色4階調、CMY全体で64色の色が表現可能である。
【0048】
図8は、1滴あたりのインクの吐出量を5pl、8pl、13plのいずれかに調整可能な場合に表現可能な色数を示す図である。ヘッド部50が吐出する1滴あたりのインクの吐出量を、5pl、8pl、13plのいずれかに調整可能な場合には、図8に示すように、単位格子数が2つの場合でも、各色9階調(0,5,8,10,13,16,18,21,26pl)、CMY全体で729色の表現が可能となり、単位格子数が3つあれば、各色15階調、CMY全体で3375色もの表現が可能となる。これは、1滴あたりのインクの吐出量が、5pl、8pl、13plの場合には、それぞれの吐出量の値が倍数の関係にはなっていないため、単位格子列UC内において、各吐出量を様々に組み合わせることが可能になるためである。つまり、インクの吐出量の組み合わせが、倍数の関係でなければ、より細かな階調表現を行うことが可能になる。なお、このような関係は、5pl、8pl、13plの組み合わせに限らず、ヘッド部50が、各有彩色インクをそれぞれ、少なくとも、第1の量と、第1の量よりも多い第2の量とで、吐出可能であり、第2の量が、第1の量の倍数ではない量であればよい。
【0049】
C.第3実施形態:
図9は、第3実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。第1実施形態の三次元造形装置100は、造形部10内に供給された粉体に対して硬化液を吐出することによって三次元物体を造形している。これに対して、第3実施形態の三次元造形装置100aは、粉体を用いることなく、樹脂を含有する硬化液のみによって三次元物体を造形する。
【0050】
三次元造形装置100aは、造形部10と、ヘッド部50と、硬化エネルギー付与部60と、制御部70と、を備えている。造形部10は、第1実施形態と同様に、造形ステージ11と枠体12とアクチュエーター13とを備えている。ただし、枠体12は省略してもよい。ヘッド部50には、タンク51が接続されている。硬化エネルギー付与部60は、本硬化用発光装置61と仮硬化用発光装置62とを備えている。つまり、三次元造形装置100aは、多くの部分で第1実施形態の三次元造形装置100の構成と共通しており、第1実施形態の三次元造形装置100から、粉体供給部20と平坦化機構30と粉体回収部40とを省略した構成となっている。このような三次元造形装置100aであっても、粉体層を形成する処理を除き、第1実施形態の三次元造形装置100と同様の処理によって三次元物体を造形することができる。なお、本実施形態の場合、副単位格子SUの空間体積には、副単位格子SUの体積とほぼ等しくなるように有彩色インクおよび無彩色インクが吐出される。
【0051】
D.変形例:
<第1変形例>
有彩色インクと無彩色インクとで、硬化収縮率が異なる場合には、ヘッド部50から吐出される際のインクの体積(吐出量)が同じ場合であっても、硬化後の体積がばらつく。そのため、上記実施形態では、有彩色インクとクリアインクの少なくとも一方が、それらの硬化収縮率の相違に応じて、吐出量が予め調整されていることが好ましい。
【0052】
図10は、クリアインクの吐出量を調整した例を示す図である。図10に示すように、例えば、有彩色インクの硬化収縮率が16%、クリアインクの硬化収縮率が8%である場合には、制御部70は、「小」「中」「大」のクリアインクをそれぞれ吐出する際に、それらの量を、有彩色インクの同量よりも8%だけ少ない量で、ヘッド部50から吐出させる。こうすることにより、硬化収縮後の有彩色インクとクリアインクの体積を均一化することができ、三次元物体の造形精度を向上させることができる。もちろん、制御部70は、有彩色インクの吐出量を、クリアインクの硬化収縮率に合わせて調整してもよい。
【0053】
<第2変形例>
上記実施形態では、各色の階調を、単位格子UG、または、単位格子列UC単位で表している。これに対して、更に面積階調を組み合わせれば、見かけの解像度を更に高めることが可能である。
【0054】
<第3変形例>
上記実施形態では、三次元造形装置100は、三次元物体の最外周を着色したが、着色された部分の更に外周側に、着色された部分を保護するためのクリアインクを吐出してもよい。
【0055】
<第4変形例>
上記実施形態では、造形ステージ11がZ方向に移動することによって、ヘッド部50が相対的にZ方向に移動する。これに対して、造形ステージ11の位置を固定し、ヘッド部50をZ方向に直接的に移動させてもよい。また、上記実施形態では、ヘッド部50がX方向およびY方向に移動するが、ヘッド部50のX方向およびY方向の位置を固定し、造形ステージ11をX方向およびY方向に移動させてもよい。
【0056】
<第5変形例>
上記実施形態では、図2および図5に示した三次元造形処理のうち、ステップS10からステップS30までの処理は、コンピューター200によって実行されている。これに対して、これらの処理は、三次元造形装置100によって実行されてもよい。つまり、三次元造形装置100が、単体で、ポリゴンデータの取得から三次元物体の造形までのすべてを実行してもよい。また、上記実施形態では、図2および図5に示したステップS40の処理が三次元造形装置100の制御部70によって実行されている。これに対して、ステップS40の処理は、コンピューター200が三次元造形装置100の各部を制御することによって実行してもよい。つまり、コンピューター200が、三次元造形装置100の制御部70の機能を果たしてもよい。
【0057】
本発明は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態や変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
10…造形部
11…造形ステージ
12…枠体
13…アクチュエーター
20…粉体供給部
30…平坦化機構
40…粉体回収部
50…ヘッド部
51…タンク
60…硬化エネルギー付与部
61…本硬化用発光装置
62…仮硬化用発光装置
70…制御部
100,100a…三次元造形装置
200…コンピューター
UG…単位格子
SU…副単位格子
UC…単位格子列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10