特許第6618703号(P6618703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618703
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】油圧モータ
(51)【国際特許分類】
   F03C 1/253 20060101AFI20191202BHJP
【FI】
   F03C1/253
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-80290(P2015-80290)
(22)【出願日】2015年4月9日
(65)【公開番号】特開2016-200052(P2016-200052A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(72)【発明者】
【氏名】別役 厚徳
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−004777(JP,U)
【文献】 特開平09−256943(JP,A)
【文献】 実開昭61−129906(JP,U)
【文献】 特開2012−237214(JP,A)
【文献】 特開昭56−056984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03C 1/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧油の供給ポートおよび排出ポートが設けられたケーシングと、
前記ケーシングに対して回転可能に支持された出力軸と、
前記ケーシングの内部に設けられ、前記供給ポートおよび前記排出ポートを介して圧油が供給および排出されることで、前記出力軸を回転させる動力発生部と、
を備え、
前記ケーシングは、前記ケーシングの内部に開口して前記出力軸の周面に面する開口部を有するとともに前記開口部から前記出力軸の径方向に延びた第1流路と、前記第1流路とは交差した方向に前記第1流路から延びた第2流路とを含み、前記ケーシングの内部でコンタミネーションが生じた油を前記ケーシングの外部に向けて案内可能なドレン通路を有し、
前記ドレン通路には、前記ケーシングの内部の油が前記ケーシングの外部に向けて流れようとする場合に前記油の流れを許容するとともに、前記ケーシングの内部から前記ケーシングの外部に向かう油の流れが停止する場合に前記ドレン通路を閉じるチェック弁が設けられ、
前記チェック弁は、前記第1流路と前記第2流路との接続部に設けられ、前記ドレン通路の入口と出口との圧力差に加えて前記出力軸の回転によって油に与えられた遠心力が作用し前記出力軸の径方向に沿って進退することで前記第1流路を開閉可能である弁体と、前記弁体を支持するとともに前記出力軸の径方向に沿って弾性変形可能な弾性部材とを有した、
油圧モータ。
【請求項2】
圧油の供給ポートおよび排出ポートが設けられたケーシングと、
前記ケーシングに対して回転可能に支持された出力軸と、
前記ケーシングの内部に設けられ、前記供給ポートおよび前記排出ポートを介して圧油が供給および排出されることで、前記出力軸を回転させる動力発生部と、
を備え、
前記ケーシングは、前記ケーシングの内部に開口するとともに油圧モータの設置状態において略水平方向に延びた第1流路と、前記設置状態において前記第1流路から上方に向けて延びた第2流路とを含み、前記ケーシングの内部でコンタミネーションが生じた油を前記ケーシングの外部に向けて案内可能なドレン通路を有し、
前記ドレン通路には、前記ケーシングの内部の油が前記ケーシングの外部に向けて流れようとする場合に前記油の流れを許容するとともに、前記ケーシングの内部から前記ケーシングの外部に向かう油の流れが停止する場合に前記ドレン通路を閉じるチェック弁が設けられ、
前記チェック弁は、前記第1流路を開閉可能な弁体と、前記弁体を支持するとともに弾性変形可能な弾性部材と、前記弾性部材を支持する支持部材とを含み、
前記ケーシングは、前記第1流路の延長線上に設けられ、前記支持部材の少なくとも一部を収容するとともに、前記支持部材が前記ケーシングから取り外されると前記ケーシングの外部に開口する収容部を有し、前記支持部材が前記ケーシングから取り外された場合に、重力によって前記第2流路の下方に沈殿した異物が前記収容部を通じて前記ケーシングの外部から清掃可能である、
油圧モータ。
【請求項3】
前記第1流路と前記第2流路との接続部は、前記第2流路の下方に位置して前記第2流路内の油に含まれる異物が沈殿可能な空間部を有し、前記空間部は、前記弁体が前記第1流路を閉じた状態で、前記弁体に対して前記第1流路とは反対側において前記弁体と略水平方向に並ぶ、
請求項2に記載の油圧モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、油圧モータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、油圧ショベルなどの作業機械の旋回体駆動用モータとして、斜板式ピストンモータなどの油圧モータが知られている。この種の油圧モータでは、ケーシングの内部において固形微粒子などの異物が油に混入する「コンタミネーション」が生じる。そのため、モータのケーシングには、コンタミネーションが生じた油を外部に排出するためのドレン通路が設けられることがある。
【0003】
ところで、コンタミネーションが生じた油は、油圧モータが駆動する間は、前記ドレン通路を通ってケーシングの外部に排出される。しかしながら、油圧モータの駆動が停止すると、ドレン通路内で油の流れが停滞する。そのため、ドレン通路内の油に含まれる異物がケーシングの内部に逆流する場合がある。このように異物がケーシングの内部に逆流すると、ケーシングの内部の部品が傷つき、部品の寿命が短くなる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−237214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、部品の長寿命化を図ることができる油圧モータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の油圧モータは、ケーシングと、出力軸と、動力発生部とを持つ。前記ケーシングは、圧油の供給ポートおよび排出ポートが設けられる。前記出力軸は、前記ケーシングに対して回転可能に支持される。前記動力発生部は、前記ケーシングの内部に設けられ、前記供給ポートおよび前記排出ポートを介して圧油が供給および排出されることで、前記出力軸を回転させる。前記ケーシングは、前記ケーシングの内部に開口して前記出力軸の周面に面する開口部を有するとともに前記開口部から前記出力軸の径方向に延びた第1流路と、前記第1流路とは交差した方向に前記第1流路から延びた第2流路とを含み、前記ケーシングの内部でコンタミネーションが生じた油を前記ケーシングの外部に向けて案内可能なドレン通路を有する。前記ドレン通路には、チェック弁が設けられる。前記チェック弁は、前記ケーシングの内部の油が前記ケーシングの外部に向けて流れようとする場合に前記油の流れを許容するとともに、前記ケーシングの内部から前記ケーシングの外部に向かう油の流れが停止する場合に前記ドレン通路を閉じる。前記チェック弁は、前記第1流路と前記第2流路との接続部に設けられ、前記ドレン通路の入口と出口との圧力差に加えて前記出力軸の回転によって油に与えられた遠心力が作用し前記出力軸の径方向に沿って進退することで前記第1流路を開閉可能である弁体と、前記弁体を支持するとともに前記出力軸の径方向に沿って弾性変形可能な弾性部材とを有する。

【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の油圧モータを示す断面図。
図2】第1の実施形態のチェック弁を示す断面図。
図3】第2の実施形態の油圧モータを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の油圧モータを、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それらの重複する説明は省略する場合がある。
【0009】
ここで、+Z方向、−Z方向、およびR方向を定義する。+Z方向は、「第1方向」の一例である。+Z方向は、油圧モータの出力軸が突出する方向である。すなわち、+Z方向は、出力軸の軸方向に沿う方向である。−Z方向は、+Z方向とは反対の方向である。R方向は、「第2方向」の一例である。R方向は、+Z方向に交差した(例えば略直交した)方向である。例えば、R方向は、出力軸の径方向である。
【0010】
また、油圧モータの設置状態の一例を定義する。油圧モータの設置状態の一例は、+Z方向を下方に向けた状態(図1に示す状態)である。なお、油圧モータの設置状態は、上記例に限定されない。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、図1および図2を参照して、第1の実施形態の油圧モータ1を説明する。
図1は、本実施形態の油圧モータ1の構成例を示す。例えば、油圧モータ1は、油圧ショベルなどの作業機械の旋回体駆動用モータである。例えば、油圧モータは、斜板式ピストンモータである。
【0012】
詳しく述べると、図1に示すように、油圧モータ1は、ケーシング11と、回転動力を出力する出力軸12と、出力軸12に回転動力を与える動力発生部13と、出力軸12および動力発生部13を回転可能に支持する軸受14,15と、ケーシング11を密閉するオイルシール16とを有する。
【0013】
まず、ケーシング11について説明する。
例えば、ケーシング11は、金属製である。図1に示すように、ケーシング11は、油圧モータ1の外郭の大部分を形成する。ケーシング11は、第1ケーシング部材(ハウジング)21と、第2ケーシング部材(カバー)22とを組み合わせることで形成される。
【0014】
図1に示すように、第1ケーシング部材21は、筒状に形成される。第1ケーシング部材21は、出力軸12が突出する第1端部e1と、この第1端部e1とは反対側に位置した第2端部e2とを有する。第1端部e1には、出力軸12が通される第1開口部24が設けられる。第2端部e2には、出力軸12および動力発生部13を第1ケーシング部材21の内部に挿入するための第2開口部25が設けられる。
【0015】
一方で、第2ケーシング部材22は、ブロック状に形成される。第2ケーシング部材22は、第1ケーシング部材21の第2端部e2に取り付けられ、第2開口部25を閉じる。これにより、第1ケーシング部材21と第2ケーシング部材22との間には、出力軸12の一部および動力発生部13を収容可能な内部空間Sが形成される。
【0016】
第2ケーシング部材22は、第1ケーシング部材21の内側に突出する凸部30を有する。さらに、第2ケーシング部材22は、圧油の供給ポート31、圧油の排出ポート32、メイクアップポート33、メイクアップライン34、および連通路35を有する。
【0017】
供給ポート31は、ケーシング11の外部に設けられる供給ラインおよび制御弁ユニットを介して圧油供給源(例えば油圧ポンプ)に接続される。これにより、供給ポート31には、圧油供給源から圧油が供給される。
一方で、排出ポート32は、ケーシング11の外部に設けられる排出ラインを介して作動油タンクTに接続される。排出ポート32には、動力発生部13から排出された圧油が流入する。排出ポート32は、動力発生部13から排出された圧油を排出ラインに導く。
【0018】
メイクアップポート33およびメイクアップライン34は、キャビテーションを抑制する油圧回路の一部を構成する。この油圧回路は、例えば、ケーシング11の内部でキャビテーションが発生しそうな場合に、供給ポート31または排出ポート32を介してケーシング11の内部に圧油を補充する。これにより、キャビテーションの発生が抑制される。
このため、メイクアップポート33は、ケーシング11の外部に設けられる供給ラインおよび制御弁ユニットを介して前記圧油供給源に接続される。そして、メイクアップポート33には、キャビテーションの抑制に適した圧力の圧油が供給される。
【0019】
連通路35は、第2ケーシング部材22の凸部30に設けられる。連通路35は、メイクアップライン34を介してメイクアップポート33に連通する。連通路35には、例えばメイクアップポート33から圧油が供給される。
また、連通路35には、絞り36が設けられる。連通路35に供給された圧油は、絞り36を通ることで圧力が低下し、適切な圧力の潤滑油としてケーシング11の内部に供給される。すなわち本実施形態では、連通路35は、ケーシング11の内部に潤滑油を供給する潤滑油供給通路として機能する。
【0020】
なお、連通路35の構成および機能は、上記例に限定されない。連通路35は、潤滑油供給通路として機能するものでなく、ケーシング11の内部の油のリリーフ通路として機能するものでもよい。この場合は、ケーシング11の内部に漏れるリーク油(詳しくは後述する)の一部が前記潤滑油として機能する。
【0021】
次に、出力軸12について説明する。
図1に示すように、出力軸12は、円柱状に形成される。出力軸12は、ケーシング11の内部に収容される部分を有するとともに、ケーシング11の外部に突出する。出力軸12は、後述する第2軸受15によって、ケーシング11に対して回転可能に支持される。図1に示すように、油圧モータ1の+Z方向側には、減速装置Mが設けられる。出力軸12の先端部は、減速装置Mの回転体Bに接続される。
【0022】
次に、動力発生部13について説明する。
図1に示すように、動力発生部13は、ケーシング11の内部に設けられる。動力発生部13は、出力軸12と第2ケーシング部材22との間に設けられる。動力発生部13は、ケーシング11の供給ポート31および排出ポート32を介して圧油が供給および排出されることで、出力軸12を回転させる。詳しく述べると、動力発生部13は、シリンダブロック41、バルブプレート(弁板)42、複数のピストン43、斜板44、および複数のシュー45を有する。
【0023】
シリンダブロック41は、出力軸12と第2ケーシング部材22との間に設けられる。シリンダブロック41は、出力軸12よりも太い円柱状に形成される。例えば、シリンダブロック41は、出力軸12と一体に形成される。これにより、シリンダブロック41および出力軸12は、一体に回転する。
【0024】
シリンダブロック41は、複数のシリンダ穴46を有する。複数のシリンダ穴46は、シリンダブロック41の中心軸の周囲において、シリンダブロック41の周方向に等角度で形成される。
【0025】
シリンダブロック41は、−Z方向側の端面41eを有する。端面41eは、第2ケーシング部材22に面する。端面41eには、第2ケーシング部材22の凸部30が挿入される凹部47が設けられる。これにより、シリンダブロック41の凹部47の底面と第2ケーシング部材22の凸部30の先端面との間に、油溜まり48が形成される。本実施形態では、油溜まり48には、連通路35から潤滑油が供給される。
【0026】
バルブプレート42は、シリンダブロック41の端面41eと、第2ケーシング部材22との間に設けられる。バルブプレート42は、第2ケーシング部材22に固定される。バルブプレート42は、リング状に形成される。バルブプレート42は、ケーシング11の供給ポート31に連通する供給口51と、ケーシング11の排出ポート32に連通する排出口52とを有する。
【0027】
供給口51は、シリンダブロック41の周方向に沿う円弧状に形成される。供給口51は、複数のシリンダ穴46に含まれるいくつかのシリンダ穴46に連通する。供給口51は、ケーシング11の供給ポート31から供給された圧油を、シリンダ穴46に供給する。
一方で、排出口52は、シリンダブロック41の周方向に沿う円弧状に形成される。排出口52は、複数のシリンダ穴46に含まれる他のいくつかのシリンダ穴46に連通する。排出口52は、シリンダ穴46から排出される圧油を、ケーシング11の排出ポート32に導く。
【0028】
ピストン43は、シリンダブロック41のシリンダ穴46に挿入される。ピストン43は、シリンダ穴46に対して摺動可能である。シリンダ穴46に圧油が供給されると、ピストン43は、+Z方向側に移動する。一方で、ピストン43が−Z方向側に移動すると、シリンダ穴46から圧油が排出される。
【0029】
シュー45は、ピストン43の+Z方向側の端部に設けられる。ピストン43の+Z方向側の端部は、球状頭部43aを有する。シュー45は、球状頭部43aを介して、ピストン43に揺動可能に連結される。シュー45は、斜板44に摺動可能に当接する。
【0030】
斜板44は、ピストン43およびシュー45よりも+Z方向側に設けられる。斜板44は、第1ケーシング部材21の内面21aに固定される。斜板44は、出力軸12に対して斜めに傾斜している。
【0031】
次に、動力発生部13の動作について説明する。
−Z方向側の死点直後に位置するピストン43のシリンダ穴46は、バルブプレート42の供給口51に連通する。これにより、シリンダ穴46には、バルブプレート42の供給口51から圧油が供給される。圧油が供給されたシリンダ穴46のピストン43は、圧油によって+Z方向側に移動する。これにより、ピストン43の先端部に設けられたシュー45が斜板44に押し付けられる。シュー45が斜板44に押し付けられると、そのときに生じる反力の一部が、シリンダブロック41を回転させる力としてシリンダブロック41に作用する。これにより、シリンダブロック41および出力軸12が回転する。
【0032】
一方で、+Z方向側の死点直後まで移動したピストン43のシリンダ穴46は、バルブプレート42の排出口52に連通する。これにより、シリンダ穴46から、バルブプレート42の排出口52に圧油が排出可能になる。このとき、ピストン43は、シリンダブロック41の回転に伴い、斜板44によって−Z方向側に押される。これにより、ピストン43は、シリンダ穴46から圧油を排出しながら、−Z方向に移動する。そして、ピストン43は、−Z方向側の死点に戻る。
【0033】
次に、ケーシング11に設けられる2つの軸受14,15について説明する。
第1軸受14は、第2ケーシング部材22の凸部30の周面と、シリンダブロック41の凹部47の内面との間に設けられる。第1軸受14は、第2ケーシング部材22に対してシリンダブロック41を回転可能に支持する。例えば、第1軸受14は、ニードルベアリングである。なお、第1軸受14の種類は、上記例に限定されない。
【0034】
第2軸受15は、第1ケーシング部材21の内面21aと、出力軸12の周面12aと間に設けられる。第2軸受15は、第1ケーシング部材21に対して出力軸12を回転可能に支持する。例えば、第2軸受15は、テーパコロベアリングである。なお、第2軸受15の種類は、上記例に限定されない。
【0035】
次に、オイルシール16について説明する。
オイルシール16は、第2軸受15よりも+Z方向側に設けられる。例えば、オイルシール16は、第2軸受15と、第1ケーシング部材21の+Z方向側の端面21eとの間に設けられる。オイルシール16は、第1ケーシング部材21の第1開口部24の内面24aと、出力軸12の周面12aとの間に設けられる。オイルシールは、第1ケーシング部材21の第1開口部24の内面24aと出力軸12の周面12aとの間を密閉する。これにより、オイルシール16は、第1開口部24から油が漏れることを抑制する。
【0036】
次に、ケーシング11の内部の潤滑構造について説明する。
上述したように、本実施形態では、シリンダブロック41の凹部47の底面と第2ケーシング部材22の凸部30の先端面との間の油溜まり48に、連通路35から潤滑油が供給される。油溜まり48に供給された潤滑油の少なくとも一部は、シリンダブロック41の凹部47と第2ケーシング部材22の凸部30との間の隙間を通って第1軸受14に供給される。これにより、第1軸受14の摺動部分の摩擦抵抗が小さくなる。
【0037】
第1軸受14を通った潤滑油の少なくとも一部は、シリンダブロック41と第2ケーシング部材22との間の隙間からシリンダブロック41の端面41eとバルブプレート42との間に供給される。これにより、シリンダブロック41の端面41eとバルブプレート42との間の摩擦抵抗が小さくなる。
【0038】
また、シリンダブロック41と第2ケーシング部材22との間の隙間を通った潤滑油の少なくとも一部は、シリンダブロック41の周面と第1ケーシング部材21の内面21aとの間の隙間を通って、ピストン43の球状頭部43aとシュー45との間、および、シュー45と斜板44との間に供給される。これにより、ピストン43の球状頭部43aとシュー45との間、および、シュー45と斜板44との間の摩擦抵抗が小さくなる。
【0039】
ピストン43の球状頭部43aとシュー45との間、または、シュー45と斜板44との間を通った油の少なくとも一部は、第1ケーシング部材21の内面21aと出力軸12の周面12aとの間の隙間を通って第2軸受15に供給される。これにより、第2軸受15の摺動部分の摩擦抵抗が小さくなる。
【0040】
また本実施形態では、ケーシング11の内部空間Sの一部は、ドレン室DRとして機能する。図1に示すように、ドレン室DRは、第1ケーシング部材21の内面21aと、シリンダブロック41および出力軸12との間に形成される。
例えば、ドレン室DRには、連通路35から供給される潤滑油に加えて、バルブプレート42とシリンダブロック41との間、またはシリンダ穴46とピストン43との間から漏れるリーク油が流入する。なお、このリーク油は、上述した連通路35から供給される潤滑油と同様に、各部品に対する潤滑油として機能する。
【0041】
ここで、ケーシング11の内部では、油圧モータ1の駆動に伴い、油にコンタミネーションが生じる。なお本願でいう「コンタミネーション」とは、固形微粒子などの異物が油に混入することを意味する。例えば、固形微粒子は、ケーシング11の内部の摺動部分で削れた金属粉などである。なお、油に混入する異物は、上記例に限定されない。
【0042】
そこで、本実施形態のケーシング11は、ケーシング11の内部でコンタミネーションが生じた油をケーシング11の外部に向けて案内可能なドレン通路(ドレンポート)60を有する。なお本願でいう「ドレン」とは、ケーシング11の内部に生じる排油、すなわち油圧モータ1の駆動用の圧油として機能しない油を意味する。このため、例えば「ドレン通路」との用語は、「排油通路」または「排出通路」と称されてもよい。
【0043】
図1に示すように、本実施形態のドレン通路60は、例えばL字形に形成される。すなわち、ドレン通路60は、第1流路61と、この第1流路61とは交差した方向に延びた第2流路62とを含む。
【0044】
詳しく述べると、第1流路61は、ケーシング11の内部(例えばドレン室DR)に開口している。すなわち、第1流路61は、ケーシング11の内部に開口した開口部60aを有する。開口部60aは、動力発生部13および第2軸受15よりも+Z方向側に設けられる。本実施形態では、開口部60aは、第2軸受15とオイルシール16との間の位置で、ケーシング11の内部に開口する。これにより、ドレン通路60は、シリンダブロック41と第2ケーシング部材22との間の油溜まり48に供給され、第1軸受14、バルブプレート42の周囲、ピストン43の球状頭部43a、シュー45、および第2軸受15などを通った油を、第2軸受15の下流側で回収することができる。
【0045】
図1に示すように、本実施形態では、第1流路61の開口部60aは、出力軸12の周面12aに面する。また、第1流路61は、開口部60aからR方向に延びている。本実施形態では、第1流路61は、出力軸12の径方向に延びている。このため、第1流路61には、ドレン通路60の入口と出口との圧力差に加えて、出力軸12の回転による遠心力を伴う油が流入する。
【0046】
本実施形態では、第1流路61は、上述の設置状態(出力軸12を下方に向けた状態)において、開口部60aから略水平方向に延びる。例えば、第1流路61は、ドレン通路60の最下部を形成する。本実施形態では、第1流路61は、動力発生部13および第2軸受15よりも下方に位置する。ただし、第1流路61は、オイルシール16よりも上方に位置する。
【0047】
一方で、第2流路62は、第1流路61から、第1流路61とは交差した方向に延びている。例えば、第2流路62は、第1流路61から−Z方向側に延びている。すなわち、第2流路62は、第1流路61から、ケーシング11の供給ポート31および排出ポート32と同じ側に延びている。供給ポート31および排出ポート32と、第2流路62とが同じ側に設けられると、ケーシング11に対する多くの油圧配管を同じ側で行うことができるため、配管レイアウトや組み立て作業性などが良好になる。
【0048】
本実施形態では、第2流路62は、上述の設置状態において、第1流路61から上方に延びている。例えば、第2流路62は、第2軸受15、動力発生部13、第1軸受14、およびバルブプレート42よりも上方まで延びている。
【0049】
第2流路62は、ケーシング11の外部に開口する接続口60bを有する。接続口60bには、配管または継手などが接続される。図1に示すように、接続口60bから排出された油は、フィルタFで濾過され、作動油タンクTに回収される。
【0050】
次に、ドレン通路60に設けられるチェック弁70について説明する。
図1に示すように、本実施形態では、ドレン通路60の途中にチェック弁70が設けられる。例えば、チェック弁70は、第1流路61と第2流路62との接続部63に設けられる。本実施形態のチェック弁70は、ドレン通路60の開口部60aから接続口60bに向いて油が流れようとする場合に、前記油の流れを許容する。一方で、チェック弁70は、ドレン通路60の開口部60aから接続口60bに向かう油の流れが停止する場合に、ドレン通路60を閉じる。また別の観点では、チェック弁70は、出力軸12が回転する場合に、ドレン通路60に流入する油がケーシング11の外部まで流れることを許容する。一方で、チェック弁70は、出力軸12の回転が停止した場合に、ドレン通路60を閉じる。
【0051】
図2は、チェック弁70の詳細を示す。図2中の(a)は、チェック弁70の閉状態を示す。図2中の(b)は、チェック弁70の開状態を示す。より詳しく述べると、チェック弁70は、弁体71、弾性部材72、および支持部材(キャップ)73を有する。
【0052】
まず、弁体71について説明する。
弁体71は、ドレン通路60の内部に、R方向に沿って進退可能に配置される。本実施形態では、弁体71は、出力軸12の径方向(例えば水平方向)に沿って進退可能である。弁体71は、出力軸12の径方向に沿って進退することで、ドレン通路60の第1流路61を開閉可能である。
【0053】
ここで、図2に示すように、第1流路61は、第1部分61aと、この第1部分61aよりも内径が大きい第2部分61bとを有する。例えば、第2部分61bは、開口部60aから離れる方向に進むに従い内径が徐々に大きくなる拡径部である。第2部分61bは、第1流路61の第1部分61aと、第2流路62との間に設けられる。そして、弁体71の少なくとも一部は、第1部分61aの内径よりも大きく形成され、第2部分61bに収容される。なお、第2部分61bの形状は、上記例に限定されない。
【0054】
これにより、弁体71は、第1部分61aと第2部分61bとの境界部61cに接して第1流路61を閉じる第1位置(図2中の(a)参照)と、境界部61cから離れて第1流路61と第2流路62とを連通させる第2位置(図2中の(b)参照)との間で移動可能である。弁体71が前記第1位置に移動すると、第1流路61が閉じられ、第1流路61と第2流路62との間が遮断される。一方で、弁体71が前記第2位置に移動すると、第1流路61が開かれ、第1流路61から第2流路62に油が流れることができる。
【0055】
次に、弾性部材72および支持部材73について説明する。
図2に示すように、弾性部材72は、弁体71と支持部材73との間に設けられる。弾性部材72は、第1流路61の下流側から上流側に向けて弁体71を付勢する。言い換えると、弾性部材72は、R方向に沿って弁体71を付勢する。弾性部材72は、前記第1位置に向けて弁体71を付勢する。本実施形態では、弾性部材72は、出力軸12の周面12aに向けて弁体71を付勢する。また、弾性部材72は、R方向に弾性変形可能である。本実施形態では、弾性部材72は、出力軸12の径方向(例えば水平方向)に弾性変形可能である。
【0056】
支持部材73は、弾性部材72に対して、弁体71とは反対側に位置する。例えば、弁体71、弾性部材72、および支持部材73は、R方向にこの順で並ぶ。支持部材73は、弾性部材72を支持する。
【0057】
図2に示すように、ケーシング11は、支持部材73の少なくとも一部を収容する収容部81を有する。収容部81は、ケーシング11の外部に開口する。収容部81は、第1流路61の延長線上に設けられる。
【0058】
次に、チェック弁70の作用を説明する。
まず、油圧モータ1が停止している状態では、弁体71は、弾性部材72によって付勢され、前記第1位置にある。これにより、ドレン通路60は、閉じられている。
【0059】
油圧モータ1が駆動する場合は、ドレン通路60の入口と出口との圧力差と、出力軸12の回転による遠心力とによって、ケーシング11の内部の油がドレン通路60に流入する。これにより、弁体71には、前記圧力差による圧力と、油に与えられた遠心力とが作用する。そして、これらの力が弾性部材72の付勢力よりも大きくなることで、弁体71が前記第1位置から前記第2位置に向けて移動する。これにより、ドレン通路60が開かれる。ドレン通路60が開かれると、ケーシング11の内部の油がケーシング11の外部まで流れることができる。これにより、コンタミネーションが生じた油が、ケーシング11の外部に排出される。
【0060】
一方で、油圧モータ1の駆動が停止した場合は、弁体71には、ドレン通路60の入口と出口との圧力差と、出力軸12の回転による遠心力とが作用しなくなる。これにより、弁体71は、弾性部材72の付勢力によって前記第1位置に復帰する。これにより、ドレン通路60が閉じられる。ドレン通路60が閉じられると、ドレン通路60の第2流路62内の油は、チェック弁70によって堰き止められ、ケーシング11の内部に向けて逆流することができなくなる。これにより、異物を含む油が、第2流路62からケーシング11の内部に向けて逆流することが抑制される。
【0061】
このような構成によれば、油圧モータ1の部品の長寿命化を図ることができる。
ここで比較のため、ドレン通路60にチェック弁70を有しない油圧モータについて考える。このような油圧モータでも、油圧モータの駆動時には、コンタミネーションが生じた油は、ドレン通路60を通ってケーシング11の外部に排出される。しかしながら、油圧モータの駆動が停止すると、ドレン通路60内で油の流れが停滞する。そのため、ドレン通路60内の油に含まれる異物がケーシング11の内部に逆流する場合がある。このような異物は、ケーシング11の内部に逆流した後、ケーシング11の内部の部品(例えば、軸受15やオイルシール16)に付着する可能性がある。そして、これらの異物が付着した状態で油圧モータ1が駆動されると、異物が付着した部品に損傷が生じる場合がある。そのため、これらの部品の寿命が短くなる場合があった。
【0062】
そこで本実施形態の油圧モータ1は、ケーシング11と、出力軸12と、動力発生部13とを持つ。ケーシング11は、圧油の供給ポート31および排出ポート32が設けられる。出力軸12は、ケーシング11に対して回転可能に支持される。動力発生部13は、ケーシング11の内部に設けられ、供給ポート31および排出ポート32を介して圧油が供給および排出されることで、出力軸12を回転させる。ケーシング11は、当該ケーシング11の内部でコンタミネーションが生じた油をケーシング11の外部に向けて案内可能なドレン通路60を有する。ドレン通路60には、チェック弁70が設けられる。チェック弁70は、ケーシング11の内部の油がケーシング11の外部に向けて流れようとする場合に前記油の流れを許容するとともに、ケーシング11の内部からケーシング11の外部に向かう油の流れが停止する場合にドレン通路60を閉じる。
【0063】
このような構成によれば、油圧モータ1の駆動が停止した場合に、異物を含む油がドレン通路60からケーシング11の内部に逆流することを抑制することができる。このため、コンタミネーションによって油に含まれる異物がケーシング11の内部の部品に付着し、それら部品に損傷を与える可能性が小さくなる。言い換えると、ケーシング11の内部のコンタミネーションの濃度を低減することができる。これにより、ケーシング11の内部の部品(例えば軸受15およびオイルシール16)の長寿命化を図ることができる。
【0064】
本実施形態では、ドレン通路60は、第1流路61と、第2流路62とを含む。第1流路61は、ケーシング11の内部に開口している。第2流路62は、第1流路61とは交差した方向に第1流路61から延びている。チェック弁70は、第1流路61と第2流路62との接続部63に設けられる。
【0065】
このような構成によれば、チェック弁70を通過する油は、図2中の(b)に矢印Aで示すように、チェック弁70の背後とは異なる方向に流れることができる。このため、例えば、ドレン通路60が直線状に設けられ、油がチェック弁70の背後に回る場合(例えば図3参照)に比べて、油の流れに生じる圧力損失を小さくすることができる。すなわち、上記構成によれば、ケーシング11の内部の油の排出をよりスムーズにすることができる。
また、上記構成によれば、油がチェック弁70の背後に回る場合に比べて、支持部材73の形状を単純にすることができる。すなわち、支持部材73に油が通る通路などを設ける必要が無くなる。これにより、油圧モータ1の低コスト化を図ることができる。
【0066】
本実施形態では、第1流路61は、出力軸12の周面12aに面する開口部60aを有するとともに、出力軸12の軸方向とは交差したR方向に延びている。チェック弁70は、R方向に沿って進退することで第1流路61を開閉可能な弁体71と、弁体71を支持するとともにR方向に弾性変形可能な弾性部材72とを有する。
【0067】
このような構成によれば、弁体71には、ドレン通路60の入口と出口との圧力差による圧力に加えて、出力軸12の回転によって油に与えられる遠心力とが作用する。この構成によれば、例えば第2流路62の途中に弁体71を設ける場合に比べて、大きな力が弁体71に作用する。このため、弁体71を付勢する弾性部材72として、比較的大きな付勢力を有した弾性部材72を採用することができる。比較的大きな付勢力を有した弾性部材72を採用することができると、出力軸12の回転が停止した場合に、より早く、より確実にドレン通路60を閉じることができる。これにより、異物を含む油の逆流をさらに確実に抑制することができる。その結果、ケーシング11の内部の部品の長寿命化をさらに図ることができる。
【0068】
本実施形態では、R方向は、出力軸12の径方向である。
このような構成によれば、弁体71には、出力軸12の回転によって油に与えられた遠心力がさらに作用しやすくなる。このため、さらに大きな付勢力を有した弾性部材72を採用することができる。これにより、異物を含む油の逆流をさらに確実に抑制することができる。
【0069】
本実施形態では、チェック弁70は、弾性部材72を支持する支持部材73を含む。ケーシング11は、支持部材73の少なくとも一部を収容する収容部81を有する。収容部81は、第1流路61の延長線上に設けられる。
【0070】
このような構成によれば、第1流路61を加工する工程に併せて、収容部81を加工することができる。これにより、チェック弁70を設けるために必要なケーシング11の加工工程を少なくすることができる。これにより、油圧モータ1の低コスト化を図ることができる。
【0071】
本実施形態では、油圧モータ1は、供給ポート31および排出ポート32を上方に向けるとともに、出力軸12を下方に向けた設置状態で設置可能である。第1流路61は、前記設置状態において、略水平方向に延びている。第2流路62は、前記設置状態において、第1流路61から上方に向けて延びている。
【0072】
ここで、第2流路62が上方に向けて延びていると、油圧モータ1の駆動が停止した場合、第2流路62内の油に含まれる異物は、重力によって第2流路62の下部に落ちてくる可能性がある。ただし本実施形態では、第2流路62よりも下方に位置する第1流路61がチェック弁70によって閉じられる。このため、重力によって第2流路62の下部に落ちてくる異物は、ケーシング11の内部に逆流できない。
言い換えると、本実施形態では、チェック弁70が設けられることで、第2流路62が上方に向けて延びていても、異物がケーシング11の内部に逆流しない。このため、ケーシング11において、供給ポート31および排出ポート32と、ドレン通路60の接続口60bとを同じ側に配置することができる。これら、供給ポート31および排出ポート32と、ドレン通路60の接続口60bとを同じ側に配置することができると、ケーシング11に対する多くの油圧配管を同じ側で行うことができるため、配管レイアウトや組み立て作業性などが良好になる。
すなわち、上記構成によれば、配管レイアウトや組み立て作業性と、部品の長寿命化とを両立した油圧モータ1を提供することができる。
【0073】
また、上記構成によれば、チェック弁70が第2流路62の下方に位置する。このため、チェック弁70の支持部材73をケーシング11から取り外すことで、重力によって第2流路62の下方に沈殿した異物などを、支持部材73の収容部81を通じてケーシング11の外部に容易に取り出すことができる。すなわち上記構成によれば、ドレン通路60の清掃を行いやすくなる。これにより、油圧モータ1のメンテナンスの作業性を向上させることができる。
また上述したように、第1流路61は、略水平方向に延びている。また、支持部材73の収容部81は、第1流路61の延長線上に設けられる。このため、支持部材73をケーシング11から取り外すと、第1流路61は、収容部81を通じてケーシング11の側面に開口した状態になる。このため、上記構成によれば、第1流路61に対する外部からの作業性も良く、第1流路61についても清掃が容易になる。これにより、油圧モータ1のメンテナンスの作業性をさらに向上させることができる。
【0074】
さらに上記構成では、供給ポート31および排出ポート32と、ドレン通路60の接続口60bとがケーシング11の上端部に纏めて配置される。ケーシング11の上端部は、作業者にとって最も作業しやすい部分の一つである。このため、上記構成によれば、油圧モータ1の組み立て作業性をさらに向上させることができる。
【0075】
また別の観点で見ると、本実施形態のチェック弁70は、ドレン通路60の最下部に設けられる。ここで比較のため、チェック弁70がドレン通路60の最下部よりも上方に設けられる場合を考える。この場合、チェック弁70がドレン通路60を閉じても、ドレン通路60のなかでチェック弁70よりも下方に位置する異物は、重力によってケーシング11の内部に向けて逆流する可能性がある。
【0076】
そこで本実施形態では、チェック弁70は、ドレン通路60の最下部に設けられる。このような構成によれば、重力による異物の逆流をさらに確実に抑制することができる。これにより、ケーシング11の内部の部品の長寿命化をさらに図ることができる。
【0077】
本実施形態では、図1および図2に示すように、第1流路61と第2流路62との接続部63は、第2流路62の下方に位置して第2流路62内の油に含まれる異物が沈殿可能な空間部Gを有する。空間部Gは、弁体71が第1流路61を閉じた状態で、弁体71に対して第1流路61とは反対側において弁体71と略水平方向に並ぶ。
【0078】
ここで、油圧モータ1が停止状態から再び駆動を開始した初期状態では、出力軸12の回転速度が遅く、第1流路61から第2流路62に流れる油の量も少ない。このため、仮に第2流路62の途中にチェック弁70が設けられる場合、油に含まれる異物は、チェック弁70が再び開かれたタイミングで、重力の影響によって、ケーシング11の内部に向かおうとする可能性がある。
しかしながら上記構成によれば、油圧モータ1の駆動が停止した場合、第2流路62内の油に含まれる異物の少なくとも一部は、弁体71と支持部材73との間に位置する上記空間部Gに沈殿する。この空間部Gは、弁体71と略水平方向に並ぶ。このため、空間部Gに沈殿した異物は、チェック弁70が再び開かれたタイミングでも、重力の影響を受けにくく、第1流路61に入りにくい。これにより、ケーシング11の内部の部品の長寿命化をさらに図ることができる。
【0079】
(第2の実施形態)
次に、図3を参照して、第2の実施形態の油圧モータ1を説明する。
本実施形態は、ドレン通路60が第2流路62を有しない点で、第1の実施形態とは異なる。なお、本実施形態のその他の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。そのため、第1の実施形態と同様の部分の説明は省略する。
【0080】
図3は、第2の実施形態の油圧モータ1の構成例を示す。本実施形態では、ドレン通路60は、第1流路61のみによって形成される。すなわち、ドレン通路60は、開口部60aからR方向に延びてケーシング11の外部に開口している。本実施形態では、ドレン通路60は、開口部60aから出力軸12の径方向(例えば水平方向)に延びる。ドレン通路60は、接続口60bを有する。接続口60bには、配管または継手などが接続される。本実施形態では、チェック弁70は、第1流路61の途中に設けられる。
【0081】
詳しく述べると、第1流路61は、第1部分91aと、この第1部分91aよりも内径が大きい第2部分91bとを有する。例えば、第2部分91bは、第1部分91aと、ケーシング11の端面(側面)との間に亘って設けられる。第2部分91bには、チェック弁70の弁体71、弾性部材72、および支持部材73が収容される。
弁体71は、第1部分91aと第2部分91bとの境界部91cに接して第1流路61を閉じる第1位置と、境界部91cから離れて外部に向かう油の流れを許容する第2位置との間で移動可能である。
【0082】
本実施形態では、第2部分91bの内径は、少なくとも弁体71を収容する部分において、弁体71の外径よりも大きく形成される。このため、弁体71が上記第2位置に移動すると、第1流路61内の油は、弁体71の周面と第2部分91bの内面との間の隙間を通って外部に向けて流れることができる。また、支持部材73は、弁体71の背後に流れた油を、ケーシング11の外部に向けて通す通路を有する。
【0083】
このような構成によっても、第1の実施形態と同様に、油圧モータ1の部品の長寿命化を図ることができる。
【0084】
以上、第1および第2の実施形態に係る構成について説明したが、各実施形態の構成は上記例に限定されない。例えば、チェック弁70は、第1流路61や接続部63に代えて、第2流路62に設けられてもよい。
【0085】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、油圧モータ1は、ケーシング11と、出力軸12と、動力発生部13とを持つ。ケーシング11は、圧油の供給ポート31および排出ポート32が設けられる。出力軸12は、ケーシング11に対して回転可能に支持される。動力発生部13は、ケーシング11の内部に設けられ、供給ポート31および排出ポート32を介して圧油が供給および排出されることで、出力軸12を回転させる。ケーシング11は、当該ケーシング11の内部でコンタミネーションが生じた油をケーシング11の外部に向けて案内可能なドレン通路60を有する。ドレン通路60には、チェック弁70が設けられる。ケーシング11の内部の油がケーシング11の外部に向けて流れようとする場合に前記油の流れを許容するとともに、ケーシング11の内部からケーシング11の外部に向かう油の流れが停止する場合にドレン通路60を閉じる。このような構成によれば、油圧モータ1の部品の長寿命化を図ることができる。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0087】
1…油圧モータ、11…ケーシング、12…出力軸、12a…出力軸の周面、13…動力発生部、31…供給ポート、32…排出ポート、60…ドレン通路、61…第1流路、62…第2流路、63…接続部、70…チェック弁、71…弁体、72…弾性部材、73…支持部材、81…収容部、G…空間部。
図1
図2
図3