特許第6618757号(P6618757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618757
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】流体動圧軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/02 20060101AFI20191202BHJP
【FI】
   F16C17/02 A
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-203977(P2015-203977)
(22)【出願日】2015年10月15日
(65)【公開番号】特開2017-75658(P2017-75658A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】390006585
【氏名又は名称】株式会社三共製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝又 一久
(72)【発明者】
【氏名】安達 健郎
【審査官】 中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−034013(JP,A)
【文献】 特開2005−351376(JP,A)
【文献】 特開2001−065569(JP,A)
【文献】 特開2003−113838(JP,A)
【文献】 特開2008−157330(JP,A)
【文献】 特開2008−002522(JP,A)
【文献】 特開2003−322162(JP,A)
【文献】 特開2014−224548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00− 17/26
F16C 33/00− 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムリブを有する回転可能なカムと、回転可能な回転部材とを備えるカム機構、又は回転可能な平面カムと、動作可能な部材とを備えるカム機構のための流体動圧軸受であって、
前記流体動圧軸受は、軸部材と、前記軸部材の外周面に沿って回転可能な外輪部とを備え、前記軸部材の外周面と前記外輪部の内周面との間にラジアル隙間が設けられ
記軸部材の外周面は、第1の表面領域、第2の表面領域、及び、前記第1の表面領域と前記第2の表面領域との間に配置された第1の流体動圧保持領域を含み、
前記外輪部が、前記軸部材の外周面に沿って前記第1の表面領域から前記第1の流体動圧保持領域を通って前記第2の表面領域に向かうように回転している場合に、前記ラジアル隙間のうちの前記第1の流体動圧保持領域上に位置する第1の荷重負荷領域において、前記外輪部の回転に従って前記第1の表面領域から前記第1の流体動圧保持領域に流動する流体によって動圧を発生させることができるように、前記第1の表面領域に動圧溝が形成され
前記回転可能な回転部材が前記流体動圧軸受を備える場合には、前記カムリブが前記流体動圧軸受に接触するときに、前記第1の流体動圧保持領域が前記カムリブに対面するように、前記軸部材が前記回転可能な回転部材に固定され、
前記動作可能な部材が前記流体動圧軸受を備える場合には、前記平面カムが前記流体動圧軸受に接触するときに、前記第1の流体動圧保持領域が前記平面カムに対面するように、前記軸部材が前記動作可能な部材に固定されることを特徴とする流体動圧軸受。
【請求項2】
前記外輪部が、前記軸部材の外周面に沿って前記第2の表面領域から前記第1の流体動圧保持領域を通って前記第1の表面領域に向かうように回転している場合に、前記第1の荷重負荷領域において、前記外輪部の回転に従って前記第2の表面領域から前記第1の流体動圧保持領域に流動する流体によって動圧を発生させることができるように、前記第2の表面領域に動圧溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体動圧軸受。
【請求項3】
前記第1の表面領域の動圧溝が、複数の略V字形状を有する溝から形成され、前記略V字形状の頂点部が前記第2の表面領域に対向するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体動圧軸受。
【請求項4】
前記第2の表面領域の動圧溝が、複数の略V字形状を有する溝から形成され、前記略V字形状の頂点部が前記第1の表面領域に対向するように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の流体動圧軸受。
【請求項5】
前記第1の流体動圧保持領域において、前記軸部材の外周面に複数のディンプルが形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の流体動圧軸受。
【請求項6】
前記軸部材の外周面に、その円周方向に沿って円弧溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の流体動圧軸受。
【請求項7】
前記外輪部に、その外周面から内周面に通ずる油路孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の流体動圧軸受。
【請求項8】
前記軸部材の外周面が、更に、第3の表面領域、第4の表面領域、及び、前記第3の表面領域と前記第4の表面領域との間に配置された第2の流体動圧保持領域を含み、
前記外輪部が、前記軸部材の外周面に沿って前記第1の表面領域から前記第1の流体動圧保持領域を通って前記第2の表面領域に向かうように回転している場合に、前記ラジアル隙間のうちの前記第2の流体動圧保持領域上に位置する第2の荷重負荷領域において、前記外輪部の回転に従って前記第3の表面領域から前記第2の流体動圧保持領域に流動する流体によって動圧を発生させることができるように、前記第3の表面領域に動圧溝が形成され、
前記外輪部が、前記軸部材の外周面に沿って前記第2の表面領域から前記第1の流体動圧保持領域を通って前記第1の表面領域に向かうように回転している場合に、前記第2の荷重負荷領域において、前記外輪部の回転に従って前記第4の表面領域から前記第2の流体動圧保持領域に流動する流体によって動圧を発生させることができるように、前記第4の表面領域に動圧溝が形成されていることを特徴とする請求項2〜7の何れか一項の記載の流体動圧軸受。
【請求項9】
前記軸部材の外周面が、前記第1の表面領域及び前記第2の表面領域の前記軸部材の軸線に対する反対側にそれぞれ前記第3の表面領域及び前記第4の表面領域を含むことを特徴とする請求項8に記載の流体動圧軸受。
【請求項10】
前記軸部材の外周面の外径が、前記軸部材の挿入部の外径より大きいことを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の流体動圧軸受。
【請求項11】
カムフォロア又はローラフォロアであることを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の流体動圧軸受。
【請求項12】
ムリブを有する回転可能なカムと、回転可能な回転部材とを備えるカム機構であって、
前記回転部材が、請求項1〜11の何れか一項に記載の流体動圧軸受を複数備え、前記カムリブが前記複数の流体動圧軸受の少なくとも1つに接触することによって前記回転部材及び前記カムが回転するようになっていることを特徴とするカム機構。
【請求項13】
前記カムリブが前記複数の流体動圧軸受の各々に接触するときに、前記複数の流体動圧軸受の各々の前記第1の流体動圧保持領域が前記カムリブに対面するように、前記複数の流体動圧軸受の各々の前記軸部材が前記回転部材に固定されていることを特徴とする請求項12に記載のカム機構。
【請求項14】
回転可能な平面カムと、動作可能な部材とを備えるカム機構であって、
前記部材が、その先端に請求項1〜11の何れか一項に記載の流体動圧軸受を備え、前記平面カムが前記流体動圧軸受に接触することによって前記部材が動作し且つ前記平面カムが回転するようになっていることを特徴とするカム機構。
【請求項15】
前記平面カムが前記流体動圧軸受に接触するときに、前記流体動圧軸受の前記第1の流体動圧保持領域が前記平面カムに対面するように、前記流体動圧軸受の前記軸部材が前記部材に固定されていることを特徴とする請求項14に記載のカム機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い回転精度と負荷容量を有し、低トルク性に優れる流体動圧軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円筒状の外輪と、外輪に軸心方向に挿入されたスタッドと、外輪とスタッド間に外輪の回転に伴って転動されるころとを備えた転がり軸受のカムフォロアが知られており、その中には、転動されるころを保持するための保持器を備えたカムフォロア、保持器を用いない総ころ形のカムフォロアがある。このような転がり軸受のカムフォロアは、カム機構、例えば、ローラギヤカム機構、バレルカム機構、等に使用されるが、カムとの位置関係により外輪の外径が制約されるため、剛性不足や負荷容量が不足する傾向にある。そこで、転がり軸受のカムフォロアの代替として、すべり軸受のカムフォロアを使用することで、スタッド径を太くしたり、外輪の肉厚を厚くしたりすることができる。
【0003】
特許文献1には、一端部を片持ち支持される軸部材と、軸部材の他端部外周に装着されたすべり軸受とを備えたカムフォロアが開示されている。すべり軸受は、Feの含有量が90wt%以上のFe系の焼結金属材からなる円筒状の母体と、母体の内周面から両端面にかけて形成された摺動層とで構成され、摺動層は、例えばポリエチレン樹脂等のベース材料に、シリコーン油等の潤滑剤およびこの潤滑剤を含浸させた球状多孔質シリカを配合した摺動材組成物で形成されている。
【0004】
特許文献2には、内周に、複数の動圧溝を円周方向に配列した動圧溝領域を有する軸受スリーブと、軸受スリーブの内周に挿入された軸部材とを備え、軸部材の外周と軸受スリーブ内周の動圧溝領域との間のラジアル軸受隙間に生じた流体の動圧作用で軸部材を正逆回転方向でラジアル方向に非接触支持する動圧軸受が開示されている。軸受スリーブは、焼結金属製で、内周に、軸方向一方側の第1の正回転用の動圧溝領域と軸方向他方側の第1の逆回転用の動圧溝領域とを有し、第1の正回転用の動圧溝領域と第1の逆回転用の動圧溝領域とが、それぞれ軸方向に対して傾斜する動圧溝と、これとは逆向きに傾斜する動圧溝とを軸方向の別位置に備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−24094号公報
【特許文献2】特開2005−351374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によるカムフォロアは、すべり軸受の母体をFe系の焼結金属材で形成しているので、高い寸法精度及び回転精度を得ることができ、また、摺動層をベース材料としてポリエチレン樹脂を使用して形成しているので、低摩擦性を有することができる。しかし、軸部材とすべり軸受との間の摩擦係数は、0.08であって、転動されるころを備えた転がり軸受のカムフォロアの外輪とスタッドとの間の摩擦係数に比べても大きいために、すべり軸受を軸部材に対して回転させるには大きいトルクが必要であって、負荷容量が小さいという問題がある。
【0007】
特許文献2による動圧軸受は、軸受スリーブの内周に軸方向に対して傾斜する動圧溝と、これとは逆向きに傾斜する動圧溝とを軸方向の別位置に備えることにより、正逆回転時においても、軸部材と軸受スリーブとの間のラジアル軸受隙間に流体の動圧作用を生じさせている。しかし、軸方向一方側の正回転用の動圧溝領域を有し、軸方向他方側の逆回転用の動圧溝領域を有していることから、流体が、それぞれの領域で逆向きに流動するため、軸受装置の外部に漏洩し、軸部材と軸受スリーブの間の摩擦を充分に小さくすることができないという問題がある。
【0008】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解決して、高い回転精度を有し、大きな負荷にも支障なく使用が可能であるとともに、トルクを低減することができる流体動圧軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記目的は、軸部材と、軸部材の外周面に沿って回転可能な外輪部とを備え、軸部材の外周面と外輪部の内周面との間にラジアル隙間が設けられた流体動圧軸受であって、軸部材の外周面は、第1の表面領域、第2の表面領域、及び、第1の表面領域と第2の表面領域との間に配置された第1の流体動圧保持領域を含み、外輪部が、軸部材の外周面に沿って第1の表面領域から第1の流体動圧保持領域を通って第2の表面領域に向かうように回転している場合に、ラジアル隙間のうちの第1の流体動圧保持領域上に位置する第1の荷重負荷領域において、外輪部の回転に従って第1の表面領域から第1の流体動圧保持領域に流動する流体によって動圧を発生させることができるように、第1の表面領域に動圧溝が形成されている流体動圧軸受によって達成される。
【0010】
また、上記目的の別の一つは、外輪部が、軸部材の外周面に沿って第2の表面領域から第1の流体動圧保持領域を通って第1の表面領域に向かうように回転している場合に、第1の荷重負荷領域において、外輪部の回転に従って第2の表面領域から第1の流体動圧保持領域に流動する流体によって動圧を発生させることができるように、第2の表面領域に動圧溝が形成されている流体動圧軸受によって達成される。
【0011】
また、上記目的の別の一つは、第1の表面領域の動圧溝が、複数の略V字形状を有する溝から形成され、略V字形状の頂点部が第2の表面領域に対向するように形成されている流体動圧軸受によって達成される。
【0012】
また、上記目的の別の一つは、第2の表面領域の動圧溝が、複数の略V字形状を有する溝から形成され、略V字形状の頂点部が第1の表面領域に対向するように形成されている流体動圧軸受によって達成される。
【0013】
また、上記目的の別の一つは、第1の流体動圧保持領域において、軸部材の外周面に複数のディンプルが形成されている流体動圧軸受によって達成される。
【0014】
また、上記目的の別の一つは、軸部材の外周面に、その円周方向に沿って円弧溝が形成されている流体動圧軸受によって達成される。
【0015】
また、上記目的の別の一つは、外輪部に、その外周面から内周面に通ずる油路孔が設けられている流体動圧軸受によって達成される。
【0016】
また、上記目的の別の一つは、軸部材の外周面が、更に、第3の表面領域、第4の表面領域、及び、第3の表面領域と第4の表面領域との間に配置された第2の流体動圧保持領域を含み、外輪部が、軸部材の外周面に沿って第1の表面領域から第1の流体動圧保持領域を通って第2の表面領域に向かうように回転している場合に、ラジアル隙間のうちの第2の流体動圧保持領域上に位置する第2の荷重負荷領域において、外輪部の回転に従って第3の表面領域から第2の流体動圧保持領域に流動する流体によって動圧を発生させることができるように、第3の表面領域に動圧溝が形成され、外輪部が、軸部材の外周面に沿って第2の表面領域から第1の流体動圧保持領域を通って第1の表面領域に向かうように回転している場合に、第2の荷重負荷領域において、外輪部の回転に従って第4の表面領域から第2の流体動圧保持領域に流動する流体によって動圧を発生させることができるように、第4の表面領域に動圧溝が形成されている流体動圧軸受によって達成される。
【0017】
また、上記目的の別の一つは、軸部材の外周面が、第1の表面領域及び第2の表面領域の軸部材の軸線に対する反対側にそれぞれ第3の表面領域及び第4の表面領域を含む流体動圧軸受によって達成される。
【0018】
また、上記目的の別の一つは、軸部材の外周面の外径が、軸部材の挿入部の外径より大きい流体動圧軸受によって達成される。
【0019】
また、上記目的の別の一つは、カムフォロア又はローラフォロアである流体動圧軸受によって達成される。
【0020】
更に、上記目的の別の一つは、スクリュー形状のカムリブを有する回転可能なカムと、カムの回転に伴って回転可能な回転部材とを備えるカム機構であって、回転部材が、上記の流体動圧軸受を複数備え、カムリブが複数の流体動圧軸受の少なくとも1つに接触することによって回転部材が回転するようになっているカム機構によって達成される。
【0021】
また、上記目的の別の一つは、カムリブが複数の流体動圧軸受の各々に接触するときに、複数の流体動圧軸受の各々の第1の流体動圧保持領域がカムリブに対面するように、複数の流体動圧軸受の各々の軸部材が回転部材に固定されているカム機構によって達成される。
【0022】
更に、上記目的の別の一つは、回転可能な平面カムと、平面カムの回転に伴って動作可能な部材とを備えるカム機構であって、部材が、その先端に上記の流体動圧軸受を備え、平面カムが流体動圧軸受に接触することによって部材が動作するようになっているカム機構によって達成される。
【0023】
また、上記目的の別の一つは、平面カムが流体動圧軸受に接触するときに、流体動圧軸受の第1の流体動圧保持領域が平面カムに対面するように、流体動圧軸受の軸部材が部材に固定されているカム機構によって達成される。
【発明の効果】
【0024】
上記のように、軸部材の外周面の第1の表面領域に動圧溝を形成することにより、ラジアル隙間のうちの第1の荷重負荷領域に流体による動圧を発生させて軸部材と外輪部との摩擦を小さくすることができるので、トルクを低減することができ、高い回転精度を有し、大きな負荷にも支障なく使用が可能である軸受を実現することができる、という効果を奏する。また、軸部材の外周面の第2の表面領域にも動圧溝を形成することにより、外輪部が軸部材に対して正回転・逆回転どちらの場合においてもラジアル隙間のうちの第1の荷重負荷領域に流体による動圧を発生させて軸部材と外輪部との摩擦を小さくすることができる、という効果を奏する。また、動圧溝を略V字形状とすることにより、更に効率的に動圧を発生させることができる、という効果を奏する。また、ディンプル、円弧溝を形成することにより、更に効率的に動圧を発生させることができる、という効果を奏する。
また、本発明の流体動圧軸受をカム機構に使用することにより、高い回転精度と負荷容量を有し、長寿命化に適し、更に、本発明の流体動圧軸受にはころが無いので静粛性が向上するカム機構を実現することができる、という効果を奏する。
【0025】
なお、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の流体動圧軸受を側面から見た断面図である。
図2】軸部材の一方の側面から見た第一の実施例の概略図である。
図3】軸部材の一方の側面から見た第二の実施例の概略図である。
図4】軸部材の一方の側面から見た第三の実施例の概略図である。
図5】軸部材の一方の側面から見た第四の実施例の概略図である。
図6】軸部材の一方の側面から見た第五の実施例の概略図である。
図7】軸部材の一方の側面から見た第六の実施例の概略図である。
図8】軸部材の一方の側面から見た第七の実施例の概略図である。
図9】軸部材の一方の側面から見た第八の実施例の概略図である。
図10】軸部材の一方の側面から見た第九の実施例の概略図である。
図11】軸部材の一方の側面から見た第十の実施例の概略図である。
図12】軸部材の一方の側面から見た第十一の実施例の概略図である。
図13】軸部材の反対の側面から見た第一の実施例の概略図である。
図14】軸部材の反対の側面から見た第二の実施例の概略図である。
図15】外輪部の正面から見た断面図である。
図16】外輪部の側面から見た一部透視図である。
図17】本発明の流体動圧軸受を使用したカム機構の正面から見た概略図である。
図18】本発明の流体動圧軸受とカム面の接触を下面から見た断面概略図である。
図19】本発明の流体動圧軸受を使用した別のカム機構の正面から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
図1〜19を参照して、本発明の流体動圧軸受の実施例及び本発明の流体動圧軸受を使用したカム機構の実施例を説明する。
【0029】
図1に、流体動圧軸受101の断面図を示す。流体動圧軸受101は、軸部材104と、軸部材104の外周面107に沿って回転可能な外輪部102とを備え、軸部材104の外周面107と外輪部102の内周面120との間にはラジアル隙間103が設けられている。図1においては、流体動圧軸受101は、更に、カム機構のタレット等の回転部材に流体動圧軸受101を嵌合するための挿入部105、挿入部105を介してタレットに軸部材104を固定するためのボルト等の固定部材を受容する固定部材受孔106を備えているが、これらの挿入部105、固定部材受孔106は備えていなくてもよい。
【0030】
図2に、図1の流体動圧軸受101の軸部材104について、側面から見た第一の実施例の概略図を示す。軸部材104の外周面107は、第1の正転用動圧生成領域108である第1の表面領域、第1の逆転用動圧生成領域109である第2の表面領域、第1の正転用動圧生成領域108と第1の逆転用動圧生成領域109との間に配置された第1の流体動圧保持領域110を含む。なお、図2〜14で記載された点線は各領域を説明するための便宜上のものである。外輪部102が、軸部材104の外周面107に沿って第1の正転用動圧生成領域108から第1の流体動圧保持領域110を通って第1の逆転用動圧生成領域109に向かうように回転している場合に(正回転)、ラジアル隙間103のうちの、第1の流体動圧保持領域110上に位置する第1の荷重負荷領域(図18参照)において、外輪部102の回転に従って第1の正転用動圧生成領域108から第1の流体動圧保持領域110に流動する油等の流体によって動圧を発生させることができるように、第1の正転用動圧生成領域108に外周面107に対して窪んでいる動圧溝111が形成されている。このように、第1の正転用動圧生成領域108に動圧溝111が形成されていると、外輪部102の正回転に応じて、油等の流体が、第1の正転用動圧生成領域108の動圧溝111に沿って第1の流体動圧保持領域110に向かってその動圧溝111の尖端部に集約されるように流動し、その集約された流体がその尖端部で堰き止められることによって、ラジアル隙間103のうちの、第1の流体動圧保持領域110上に位置する第1の荷重負荷領域において圧力の高い流体による膜が形成されて、流体による動圧が発生する。この流体による動圧によって、外輪部102は、第1の流体動圧保持領域110において軸部材104に接触することなく、低摩擦且つ低トルクで回転することができる。
【0031】
また、外輪部102が、軸部材104の外周面107に沿って第1の逆転用動圧生成領域109から第1の流体動圧保持領域110を通って第1の正転用動圧生成領域108に向かうように回転している場合に(逆回転)、ラジアル隙間103のうちの、第1の流体動圧保持領域110上に位置する第1の荷重負荷領域(図18参照)において、外輪部102の回転に従って第1の逆転用動圧生成領域109から第1の流体動圧保持領域110に流動する油等の流体によって動圧を発生させることができるように、第1の逆転用動圧生成領域109に外周面107に対して窪んでいる動圧溝111が形成されていてもよい。このように、第1の逆転用動圧生成領域109に動圧溝111が形成されていると、外輪部102の逆回転に応じて、油等の流体が、第1の逆転用動圧生成領域109の動圧溝111に沿って第1の流体動圧保持領域110に向かってその動圧溝111の尖端部に集約されるように流動し、その集約された流体がその尖端部で堰き止められることによって、ラジアル隙間103のうちの、第1の流体動圧保持領域110上に位置する第1の荷重負荷領域において圧力の高い流体による膜が形成され、流体による動圧が発生する。この流体による動圧によって、外輪部102は、第1の流体動圧保持領域110において軸部材104に接触することなく、低摩擦且つ低トルクで回転することができる。
【0032】
第1の正転用動圧生成領域108である第1の表面領域の動圧溝111は複数の略V字形状を有する溝から形成されていてもよく、その略V字形状の頂点部が第1の逆転用動圧生成領域109に対向するように形成されていてもよい。また、第1の逆転用動圧生成領域109である第2の表面領域の動圧溝111は複数の略V字形状を有する溝から形成されていてもよく、その略V字形状の頂点部が第1の正転用動圧生成領域108に対向するように形成されていてもよい。動圧溝111を略V字形状を有する溝とすることにより、流体が略V字形状の尖端部である頂点部112に集約されるように流動し、その集約された流体がその頂点部112で堰き止められることによって、ラジアル隙間103のうちの、第1の流体動圧保持領域110上に位置する第1の荷重負荷領域において圧力の高い流体による膜が形成され、流体による動圧が発生する。
【0033】
そして、第1の正転用動圧生成領域108の動圧溝111である略V字形状の頂点部112、及び、第1の逆転用動圧生成領域109の動圧溝111である略V字形状の頂点部112が互いに対向するように形成されることによって、外輪部102が正回転する場合であっても逆回転する場合であっても、ラジアル隙間103のうちの、第1の流体動圧保持領域110上に位置する第1の荷重負荷領域において圧力の高い流体による膜を形成することができる。
【0034】
図3に示すように、軸部材104の外周面107には、外周面107の円周方向に沿って1つ以上の円弧溝114が形成されていてもよい。また、動圧溝111の尖端部である略V字形状の頂点部112を連結するように円弧溝114を形成してもよく、このように形成すると、第1の正転用動圧生成領域108と第1の逆転用動圧生成領域109の動圧溝111には、互いに対向するヘリングボーン形状の溝が形成される。軸部材104の外周面107に円弧溝114を形成することにより、更に効率的に流体が集約されて、第1の荷重負荷領域において圧力の高い流体による膜が形成され、流体による動圧が発生する。
【0035】
図4に示すように、軸部材104の外周面107には、第1の正転用動圧生成領域108と第1の逆転用動圧生成領域109との間の第1の流体動圧保持領域110において、複数の凹部形状のディンプル113が形成されていてもよい。ディンプル113の外径は、100μm以下、好ましくは50μm以下であることが好ましい。第1の流体動圧保持領域110に複数のディンプル113を形成することにより、外輪部102が軸部材104に対して正回転又は逆回転している場合に、複数のディンプル113が、第1の正転用動圧生成領域108又は第1の逆転用動圧生成領域109から第1の流体動圧保持領域110に向かって流入してくる流体の溜まりとして作用して、流体の膜形成能力を向上させることができる。このために、ラジアル隙間103のうちの、第1の流体動圧保持領域110上に位置する第1の荷重負荷領域において、更に圧力の高い流体による膜が形成されて、流体による動圧が発生する。この流体による動圧によって、外輪部102は、第1の流体動圧保持領域110において軸部材104に接触することなく、低摩擦且つ低トルクで回転することができる。なお、ディンプル113は、図4に示すように、第1の正転用動圧生成領域108、第1の逆転用動圧生成領域109において形成されていてもよいし、軸部材104の外周面107全体に形成されていてもよい。
【0036】
図5〜10に、第四〜九の実施例を示す。図5は、図3の実施例に対してディンプル113が形成された実施例であり、図6は、図3の実施例に対して形成される動圧溝111、円弧溝の数を増やした実施例であり、図7は、図6の実施例に対してディンプル113が形成された実施例であり、図8は、図6の実施例の円弧溝114が円環状に形成された実施例であり、図9は、図8の実施例に対してディンプル113が形成された実施例であり、図10は、動圧溝のその他の形状を示す実施例である。このように、あらゆる形状の動圧溝、円弧溝、ディンプルを組み合わせることによって、動圧を発生させることができ、モーメント荷重の大きさ等、流体動圧軸受が使用される環境に応じていろいろな形状を選択することができる。なお、外周部107に形成される動圧溝、円弧溝、ディンプルの形状は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
図2〜10においては、第1の正転用動圧生成領域108の動圧溝111及び第1の逆転用動圧生成領域109の動圧溝111は、図1に示す軸部材104の軸線104aに対して、対称の形状になるように形成されているが、図11、12に示すように、第1の正転用動圧生成領域108、第1の逆転用動圧生成領域109、第1の流体動圧保持領域110は、軸部材104の軸線104aに対して角度αを有するように軸部材104の外周面107に含まれていてもよい。また、ディンプル113が軸線104aに対して大よそ角度αを有するように分布するように形成されてもよい。なお、角度αは、後述するように流体動圧軸受101がカム機構に使用される場合において、流体動圧軸受101の外輪部102が最も押圧される部分に、流体による動圧を発生させることができるように決定される。このように角度αを有することにより、流体動圧軸受101が使用されるカム機構に応じて、軸部材104と外輪部102との摩擦を小さくすることができる、という効果を奏する。
【0038】
図13、14に示すように、軸部材104の外周面107は、更に、第3の表面領域である第2の正転用動圧生成領域115、第4の表面領域である第2の逆転用動圧生成領域116、第2の正転用動圧生成領域115と第2の逆転用動圧生成領域115との間に配置された第2の流体動圧保持領域117を含んでいてもよい。外輪部102が、軸部材104の外周面107に沿って第2の正転用動圧生成領域115から第2の流体動圧保持領域117を通って第2の逆転用動圧生成領域116に向かうように回転している場合、すなわち、軸部材104の外周面107に沿って第1の正転用動圧生成領域108から第1の流体動圧保持領域110を通って第1の逆転用動圧生成領域109に向かうように回転している場合に(正回転)、ラジアル隙間103のうちの、第2の流体動圧保持領域117上に位置する第2の荷重負荷領域(図18参照)において、外輪部102の回転に従って第2の正転用動圧生成領域115から第2の流体動圧保持領域117に流動する油等の流体によって動圧を発生させることができるように、第2の正転用動圧生成領域115に外周面107に対して窪んでいる動圧溝111が形成されていてもよい。また、外輪部102が、軸部材104の外周面107に沿って第2の逆転用動圧生成領域116から第2の流体動圧保持領域117を通って第2の正転用動圧生成領域115に向かうように回転している場合、すなわち、軸部材104の外周面107に沿って第1の逆転用動圧生成領域109から第1の流体動圧保持領域110を通って第1の正転用動圧生成領域108に向かうように回転している場合に(逆回転)、ラジアル隙間103のうちの、第2の流体動圧保持領域117上に位置する第2の荷重負荷領域(図18参照)において、外輪部102の回転に従って第2の逆転用動圧生成領域116から第2の流体動圧保持領域117に流動する油等の流体によって動圧を発生させることができるように、第2の逆転用動圧生成領域116に外周面107に対して窪んでいる動圧溝111が形成されていてもよい。このように、第2の正転用動圧生成領域115に動圧溝111が、そして、第2の逆転用動圧生成領域116に動圧溝111がそれぞれ形成されると、外輪部102の正回転又は逆回転に応じて、流体が、第2の正転用動圧生成領域115又は第2の逆転用動圧生成領域116の動圧溝111に沿って第2の流体動圧保持領域117に向かってその動圧溝111の尖端部に集約されるように流動し、その集約された流体がその尖端部で堰き止められることによって、ラジアル隙間103のうちの、第1の流体動圧保持領域110とは異なる位置に配置された第2の流体動圧保持領域117上に位置する第2の荷重負荷領域(図18参照)においても、圧力の高い流体による膜が形成され、流体による動圧が発生する。この流体による動圧によって、外輪部102は、第2の流体動圧保持領域117においても軸部材104に接触することなく、低摩擦且つ低トルクで回転することができる。
【0039】
なお、第2の正転用動圧生成領域115は、図1に示す軸部材104の軸線104aに対して、第1の正転用動圧生成領域108の反対側に配置されていてもよい。また、第2の逆転用動圧生成領域116は、図1に示す軸部材104の軸線104aに対して第1の逆転用動圧生成領域109の反対側に配置されていてもよい。
【0040】
また、図1に示すように、挿入部105を備える場合には、軸部材104の外周面107の外径が、軸部材104の挿入部105の外径より大きくてもよい。外周面107の外径を挿入部105の外径より大きくすることにより、流体動圧軸受101をカム機構のタレット等の回転部材に嵌合する場合に、外周面107が回転部材に入り込みすぎないようにストッパーとして作用することができ、これによって、軸部材104の軸線104aの方向に対する外周面107の長さを確保し、軸部材104の外周面107に沿って外輪部102がスムーズに回転できるようにしている。
【0041】
図15、16に示すように、外輪部102には、外輪部102の外周面119から内周面120に通ずる油路孔118が設けられていてもよい。油路孔118を設けることにより、外輪部102の外周面119から軸部材104の外周面107と外輪部102の内周面120との間にあるラジアル隙間103に、油等の流体をスムーズに流出入できるようになる。
【0042】
流体動圧軸受101としては、カムフォロア又はローラフォロアであってもよい。
【0043】
図17、18に、流体動圧軸受101が使用されたカム機構201を示す。図17に示すように、カム機構201は、カム軸の全部又は一部にスクリュー形状のカムリブ204を有するカム軸線203を中心に回転可能なカム202と、カム202の回転に伴って回転部材軸線208を中心に回転可能なタレット等の回転部材207とを備える。なお、図17では、カム機構としてローラギヤ(グロボイダル)カムを用いた減速機構を示しているが、ローラギヤカムを用いたインデックス機構、円筒カム、バレルカムを用いた減速機構やインデックス機構、板カムや溝カム等の平面カムを用いた直動機構や揺動機構、等、その他のカム機構であってもよい。回転部材207には、その外周方向に沿って複数の流体動圧軸受101が備えられている。カム機構201の回転部材207に流体動圧軸受101を取り付ける方法には、例えば、軸部材104の挿入部105を介して流体動圧軸受101を回転部材207に挿入し、固定部材受孔106にボルト等の固定部材を挿入して回転部材207に締め付けて、軸部材104を回転部材207に固定する方法、流体動圧軸受101の挿入部105を回転部材207に挿入し、回転部材207の挿入部105が挿入された箇所に設けられた雌ねじに止めねじを挿入して、軸部材104を回転部材207に固定する方法(この場合、挿入部105には、底が平面状である窪み、V字状の窪み、等が設けられていてもよい)、流体動圧軸受101の挿入部105を回転部材207に対して圧入(しまりばめ)して嵌め合うことによって固定する方法、流体動圧軸受101の挿入部105を回転部材207に対してすきまばめし、隙間にねじ緩み止め接着剤を導入して固定する方法、等、これらには限定されない様々な方法がある。カム202が回転すると、カムリブ204の第1のカム面205又は第2のカム面206と流体動圧軸受101の外輪部102の外周面119との接触によって流体動圧軸受101の外周面119が押圧されて、回転部材207は回転するが、その際、流体動圧軸受101の外輪部102は、軸部材104に支持されて回転可能であるために、カムリブ204に対して転がり接触している。
【0044】
図18は、カム機構の、あるタイミングにおける、流体動圧軸受101の外輪部102の外周面119とカムリブ204の第1及び第2のカム面205、206の接触状態を示す断面概略図である。カム202の回転に伴ってカムリブ204が矢印の方向に沿って回転すると、カム202に転がり接触している流体動圧軸受101a、101cの外輪部102は、軸部材104に対して矢印の方向(時計回り或いは反時計回り)に回転し、外輪部102の回転に従いラジアル隙間にある流体も回転する。
【0045】
より詳細には、カムリブ204の第1のカム面205と流体動圧軸受101aの外輪部102との接触によって外輪部102は押圧され、外輪部102の中心軸線が軸部材104の中心軸線に対して傾心した状態で、外輪部102は、軸部材104に支持されながら第1の正転用動圧生成領域108から第1の流体動圧保持領域110を通って第1の逆転用動圧生成領域109に向かうように時計回りに回転する。ラジアル隙間103にある流体も、外輪部102の回転に従って第1の正転用動圧生成領域108から第1の流体動圧保持領域110に流動する。ここで、第1のカム面205から外輪部102への押圧によって、軸部材104の外周面107において負荷を受けるのは、第1のカム面205に対面している部分に限定される。従って、この第1のカム面205に対面される軸部材104の外周面107の部分に、圧力の高い流体による膜を形成させ、流体による動圧を発生させて、軸部材104と外輪部102との摩擦を小さくする必要がある。そこで、軸部材104を、その外周面107に含まれる第1の正転用動圧生成領域108と第1の逆転用動圧生成領域109との間に配置された第1の流体動圧保持領域110が第1のカム面205に対面するように回転部材207に固定すれば、ラジアル隙間103のうちの、第1の流体動圧保持領域110上に位置する第1の荷重負荷領域121において、流体による動圧を発生させることができ、軸部材104と外輪部102との摩擦を小さくすることができる。また、カム202が逆回転し、外輪部102が軸部材104に支持されながら第1の逆転用動圧生成領域109から第1の流体動圧保持領域110を通って第1の正転用動圧生成領域108に向かうように反時計回りに回転した場合でも、同様に、第1の荷重負荷領域121において、流体による動圧を発生させることができる。
【0046】
図17、18のように、流体動圧軸受101aの外輪部102の回転方向と流体動圧軸受101cの外輪部102の回転方向とが異なる場合には、流体動圧軸受101bは、カムリブ204に接触しないようにしてもよい。
【0047】
流体動圧軸受101cは、第1のカム面205とは反対側の第2のカム面206に接触、すなわち、流体動圧軸受101aが接触するカム面とは反対側のカム面に接触している。ここで、流体動圧軸受101aと同様に、第2のカム面206から外輪部102への押圧によって、軸部材104の外周面107において負荷を受けるのは、第2のカム面206に対面している部分に限定される。従って、この第2のカム面206に対面される軸部材104の外周面107の部分に、圧力の高い流体による膜を形成させ、流体による動圧を発生させるために、外周面107が、更に第2の正転用動圧生成領域115、第2の逆転用動圧生成領域116、第2の正転用動圧生成領域115と第2の逆転用動圧生成領域116との間に配置された第2の流動動圧保持領域117を含むようにしてもよい。そして、軸部材104を、その外周面107に含まれる第2の正転用動圧生成領域115と第2の逆転用動圧生成領域116との間に配置された第2の流体動圧保持領域117が第2のカム面206に対面するように回転部材207に固定すれば、外輪部102が軸部材104に支持されながら第2の逆転用動圧生成領域116から第2の流体動圧保持領域117を通って第2の正転用動圧生成領域115に向かうように反時計回りに回転した場合でも、またカム202が逆回転し、外輪部102が軸部材104に支持されながら第2の正転用動圧生成領域115から第2の流体動圧保持領域117を通って第2の逆転用動圧生成領域116に向かうように時計回りに回転した場合でも、ラジアル隙間103のうちの、第2の流体動圧保持領域117上に位置する第2の荷重負荷領域122において、流体による動圧を発生させることができ、軸部材104と外輪部102との摩擦を小さくすることができる。
【0048】
図19に、流体動圧軸受101が使用された別のカム機構301を示す。図19に示すように、カム機構301は、平面カム軸線303を中心に回転可能な平面カム302と、平面カム302の回転に伴って動作可能な部材304とを備える。平面カム302は、板カム、溝カム、等であってもよい。部材304には、その先端に流体動圧軸受101が備えられている。平面カム302が流体動圧軸受101に接触することによって、部材304が動作するようになっている。例えば、図19のように、平面カム302が、平面カム軸線303を中心に回転すると、平面カム302の端部や溝に部材304の先端に備えられた流体動圧軸受101が接触し、その回転による接触に伴って部材304が上下に直動する。平面カム302と流体動圧軸受101とが接触している場合において、部材304の先端に固定された流体動圧軸受101の軸部材104に対して、流体動圧軸受101の外輪部102が回転している。
【0049】
また、平面カム302と流体動圧軸受101とが接触している場合において、平面カム302から外輪部102への押圧によって、軸部材104の外周面107において負荷を受けるのは、平面カム302の端部、溝に対面している部分である。従って、平面カム302が流体動圧軸受101に接触しているときに、その軸部材104の外周面107に含まれる第1の正転用動圧生成領域108と第1の逆転用動圧生成領域109との間に配置された第1の流体動圧保持領域110が平面カム302の端部、溝に対面するように、流体動圧軸受101の軸部材104を部材304に固定してもよい。このように軸部材104を固定することにより、ラジアル隙間103のうちの、第1の流体動圧保持領域110上に位置する第1の荷重負荷領域において、流体による動圧を発生させることができ、軸部材104と外輪部102との摩擦を小さくすることができる。
【0050】
上記記載は特定の実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の原理と添付の特許請求の範囲の範囲内で種々の変更及び修正をすることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0051】
101 流体動圧軸受
102 外輪部
103 ラジアル隙間
104 軸部材
105 挿入部
106 固定部材受孔
107 軸部材の外周面
108 第1の正転用動圧生成領域(第1の表面領域)
109 第1の逆転用動圧生成領域(第2の表面領域)
110 第1の流体動圧保持領域
111 動圧溝
112 動圧溝頂点部
113 ディンプル
114 円弧溝
115 第2の正転用動圧生成領域(第3の表面領域)
116 第2の逆転用動圧生成領域(第4の表面領域)
117 第2の流体動圧保持領域
118 油路孔
119 外輪の外周面
120 外輪の内周面
121 第1の荷重負荷領域
122 第2の荷重負荷領域
201 カム機構
202 カム
203 カム軸線
204 カムリブ
205 第1のカム面
206 第2のカム面
207 回転部材
208 回転部材軸線
301 カム機構
302 平面カム
303 平面カム軸線
304 部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19