特許第6618772号(P6618772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618772
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】大気圧プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20191202BHJP
   C23C 16/505 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   H05H1/24
   C23C16/505
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-218210(P2015-218210)
(22)【出願日】2015年11月6日
(65)【公開番号】特開2017-91708(P2017-91708A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 達郎
(72)【発明者】
【氏名】奥村 直樹
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−049276(JP,A)
【文献】 特開平07−328427(JP,A)
【文献】 特開昭60−092834(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/153338(WO,A1)
【文献】 特表2009−544854(JP,A)
【文献】 特開平09−232293(JP,A)
【文献】 特開平05−202481(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0274567(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00−1/54
C23C 16/50−16/54
H01J 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極から間隙を介して離隔するように配置された第2電極と、
第1螺旋状部分を含み、前記第1螺旋状部分が前記間隙を通るように配置された第1管状誘電体と、
前記第1管状誘電体の内部に、被処理物およびプロセスガスの混合体を通す供給部と、
前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加する電源部と
第2螺旋状部分を含む第2管状誘電体とを備え
前記第1螺旋状部分と前記第2螺旋状部分とが二重螺旋をなすように配置されている、大気圧プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第1螺旋状部分は前記第1電極の周りを回るように配置され、前記第2電極は、前記第1螺旋状部分を取り囲むように配置されている、請求項1に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項3】
前記第1螺旋状部分が前記第1電極の外面に巻きつくことによって、前記第1電極は前記第1螺旋状部分を支持している、請求項2に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第2電極は、シート状の部材であり、前記第1螺旋状部分を包み込むように配置されている、請求項2または3に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項5】
第1電極と、
前記第1電極から間隙を介して離隔するように配置された第2電極と、
第1螺旋状部分を含み、前記第1螺旋状部分が前記間隙を通るように配置された第1管状誘電体と、
前記第1管状誘電体の内部に、被処理物およびプロセスガスの混合体を通す供給部と、
前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加する電源部と、
第2螺旋状部分を含む第2管状誘電体を備え、
前記第1螺旋状部分、前記第1電極、前記第2螺旋状部分、前記第2電極が四重螺旋をなすように配置されている、大気圧プラズマ処理装置。
【請求項6】
第1電極と、
前記第1電極から間隙を介して離隔するように配置された第2電極と、
第1螺旋状部分を含み、前記第1螺旋状部分が前記間隙を通るように配置された第1管状誘電体と、
前記第1管状誘電体の内部に、被処理物およびプロセスガスの混合体を通す供給部と、
前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加する電源部とを備え、
前記第1電極、前記第1螺旋状部分、前記第2電極が三重螺旋をなすように配置されている、大気圧プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧プラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大気圧近傍の圧力下で高電圧を印加して強力なプラズマを発生させ、被処理物の表面処理を行なう大気圧プラズマ処理が求められている。他の方法では表面処理がされにくい被処理物であっても、大気圧プラズマ処理を採用することによって容易に表面処理することができる場合がある。かねてよりカテーテル製造時の表面処理、医療用チューブの内壁処理を目的として大気圧プラズマ処理による表面処理が行なわれている。
【0003】
また、粉体は、化粧品や医薬品などの粉製品をはじめとして、リチウムイオン電池などのエレクトロニクス分野にまで幅広く用いられているが、これらの粉体の表面処理に大気圧プラズマ処理が採用される場合がある。
【0004】
たとえば特開2005−332783号公報(特許文献1)には、互いに対向する電極間にガス通路、ガス供給口を設け、ガス通路内に保持された被処理物にプラズマ処理を施すことが記載されている。
【0005】
特開平7−328427号公報(特許文献2)には、絶縁体管の外周に沿って電極対が互いに間隔をおいてスパイラル状に巻かれた構成が開示されている。この装置では、絶縁体管の内部にガスを流通させ、グロー放電プラズマを発生させることとなっており、このプラズマ中に粉粒体を連続的に供給することによって粉粒体の表面処理を行なうことができる。
【0006】
特開2013−215720号公報(特許文献3)には、複数の貫通孔が設けられた絶縁性基材の内部に電極を配置した構成が開示されている。この装置では、絶縁性基材の上側に被処理物としての粉体を配置し、貫通孔に下からガスを通すことによってプラズマが貫通孔から上方に吹き上がるようにし、粉体を流動させながら粉体の表面処理を行なうこととされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−332783号公報
【特許文献2】特開平7−328427号公報
【特許文献3】特開2013−215720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されている装置では、対向する平行平板状の電極を用いているので、プラズマ放電空間を広く、あるいは長くする際には、それに伴い装置筐体も大きくしなければならないという問題がある。
【0009】
特許文献2に記載されている装置では、放電方式が沿面放電であるので、放電管の径によっては、管の中心部のプラズマ強度が弱くなり、結果的にプラズマ処理が不十分な粉体が排出されるおそれがあるという問題がある。
【0010】
特許文献3に記載されている装置では、プラズマガスを粉体に吹き付けて表面処理を行なうことを狙っているが、粉体がプラズマ空間の中を直接通過して処理されるダイレクト処理に比べて処理効果が弱いことが明らかである。また、粉体を均一に流動させることは困難であり、したがって、プラズマ活性種にさらされる時間が粉体によって大幅に異なり、処理効果のムラが生じる。
【0011】
そこで、本発明は、省スペース化が可能であり、プラズマ処理時間を長くすることができ、被処理物をワンウェイで連続的にムラなくプラズマ処理することができる大気圧プラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に基づく大気圧プラズマ処理装置は、第1電極と、上記第1電極から間隙を介して離隔するように配置された第2電極と、第1螺旋状部分を含み、上記第1螺旋状部分が上記間隙を通るように配置された第1管状誘電体と、上記第1管状誘電体の内部に、被処理物およびプロセスガスの混合体を通す供給部と、上記第1電極と上記第2電極との間に電圧を印加する電源部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1管状誘電体の一部である第1螺旋状部分が第1電極と第2電極との間隙を通るように配置されており、被処理物は螺旋状部分を通りながらプラズマ処理されるので、省スペース化が可能であり、プラズマ処理時間を長くすることができ、被処理物をワンウェイで連続的にムラなくプラズマ処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に基づく実施の形態1における大気圧プラズマ処理装置の概念図である。
図2】本発明に基づく実施の形態1に関連して行なわれた実験2の説明図である。
図3】本発明に基づく実施の形態1に関連して行なわれた実験3の第1の設定の説明図である。
図4】本発明に基づく実施の形態1に関連して行なわれた実験3の第2の設定の説明図である。
図5】本発明に基づく実施の形態1に関連して行なわれた実験3の第3の設定の説明図である。
図6】本発明に基づく実施の形態2における大気圧プラズマ処理装置の概念図である。
図7】本発明に基づく実施の形態3における大気圧プラズマ処理装置の概念図である。
図8】本発明に基づく実施の形態4における大気圧プラズマ処理装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
(構成)
図1を参照して、本発明に基づく実施の形態1における大気圧プラズマ処理装置について説明する。本実施の形態における大気圧プラズマ処理装置の概念図を図1に示す。
【0016】
大気圧プラズマ処理装置101は、第1電極21と、第1電極21から間隙を介して離隔するように配置された第2電極22と、第1螺旋状部分41を含み、第1螺旋状部分41が前記間隙を通るように配置された第1管状誘電体31と、第1管状誘電体31の内部に、被処理物およびプロセスガスの混合体を通す供給部6と、電源部1とを備える。電源部1は、第1電極21と第2電極22との間に電圧を印加するものである。第1電極21は棒状の電極である。第2電極22はシート状の部材を丸めて形成された電極である。図1では、第2電極22は第1螺旋状部分41の外側の半周分のみを覆うように配置されているように描かれているが、実際には全周を覆うように配置されていてよい。電源部1から第1電極21へは配線2を介して接続されている。電源部1から第2電極22へは配線3を介して接続されている。第1管状誘電体31は、入口31aと出口31bとを有する。供給部6は入口31aに接続されており、回収部7は出口31bに接続されている。
【0017】
(作用・効果)
本実施の形態では、第1管状誘電体31の一部である第1螺旋状部分41が第1電極21と第2電極22との間隙を通るように配置されており、被処理物およびプロセスガスの混合体がこの螺旋状部分を通ることとなっている。したがって、被処理物は螺旋状部分を通りながらプラズマ処理されることとなる。プラズマ処理が行なわれる区間が螺旋状となっていることにより、直管型の場合に比べて、電極関係部分、誘電体関係部分などの省スペース化が可能となるので、装置全体の省スペース化が可能となる。また、プラズマ処理が行なわれる区間が螺旋状となっていることにより、プラズマ処理時間を長くすることができる。第1螺旋状部分の内部では、被処理物はプロセスガスと共に流れ、処理強度が強いダイレクト方式で処理が行なわれることとなる。したがって、被処理物を繰返し循環させる必要はなく、被処理物をワンウェイで連続的にムラなくプラズマ処理することができる。
【0018】
プラズマ処理が行なわれる区間が螺旋状であることにより、第1管状誘電体の曲げ半径が一定となるので、被処理物の搬送速度を一定とすることができる。本実施の形態では、被処理物は、管状誘電体の内部を通過することができるものであればよく、たとえば粉体、ガス、液体などであってもよい。被処理物は、導電性であっても非導電性であってもよい。
【0019】
プラズマ処理を施したことによる効果の種類は、ガス種に依存する。ガス種を変更することによりさまざまな効果を付与することができる。たとえばHe,Ar,N2などにO2を添加したガスを用いることで、被処理物に親水性を付与することが可能であり、O3発生による殺菌処理も可能である。また、He,Ar,N2などにF系ガス、たとえばCF4、C38などを添加したガスを用いることで、被処理物に撥水性を付与することもできる。さらに、He,Ar,N2などに還元性ガス、たとえばH2などを添加したガスを用いることで、被処理物表面の還元処理が可能である。
【0020】
被処理物が有害成分を含む物質である場合には、管状誘電体の内部を通過させることで、有害物質を処理分解して除去することも可能である。有害成分の例としては、たとえば、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)、硫黄酸化物(SOx)などが挙げられる。
【0021】
本実施の形態では、第1電極21が内部電極、第2電極22が外部電極となっているが、形状はこれに限らない。内部電極は、管状、シート状、フィルム状であってもよい。外部電極も、管状、シート状、フィルム状であってもよい。外部電極は、第1螺旋状部分41に対して接着剤によって接着してもよく、何も介さずに設置してもよい。内部電極も、第1螺旋状部分41に対して接着剤によって接着してもよく、何も介さずに設置してもよい。外部電極は、熱圧着によって設置してもよく、コーティング、成膜によって形成してもよい。
【0022】
外部電極となる第2電極22の材質は、導電性の物質であり、たとえば、銅、アルミニウム、SUSなどの金属であってもよく、黒鉛であってもよい。内部電極となる第1電極21の材質についても同様である。第1電極21は、中心まですべて導電性物質で満たされている必要はなく、内部は絶縁体で形成され、外周部のみ導電体で形成されたものであってもよい。
【0023】
第1電極21を構成する導電体は、誘電体で覆われていてもよい。第2電極22を構成する導電体についても、同様である。誘電体の例としては、樹脂からなるシート、フィルム、樹脂コーティング、成膜による無機物の薄膜などが挙げられる。高電圧が印加される電極が誘電体で覆われていることにより、異常放電、周囲への感電などを防ぐことが可能となるほか、プラズマの均一性が向上し、ムラなく処理することが可能となる。
【0024】
管状誘電体の材質は、絶縁物であり、たとえば、石英(ガラス)、セラミックなどの無機物であってもよく、シリコンゴム、フッ素系樹脂(PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)など)であってもよい。
【0025】
プラズマ放電により、第1電極および第2電極のうち少なくとも一方の温度が上昇する場合には、必要に応じて、第1電極、第2電極、管状誘電体のいずれかまたは全てを冷却してもよい。冷却方法としては、たとえば第1電極の内部に冷媒の通路を設けて冷媒を通す方法であってもよい。外部電極の周囲に冷媒の通路を設けて冷媒を通してもよい。電極に沿うように冷却ラインを配置してもよい。冷却方式は、空冷式であってもよく、冷却水方式であってもよい。後述するように、2つの管状誘電体を設けて、そのうち一方に冷媒を通すこととしてもよい。
【0026】
図1に示したように、第1螺旋状部分41は第1電極21の周りを回るように配置され、第2電極22は、第1螺旋状部分41を取り囲むように配置されていることが好ましい。この構成を採用することにより、第1螺旋状部分41を内外から確実に挟み込んで電圧を印加することができる。また、無駄なスペースを減らすことができ、省スペース化を図ることができる。ここで示した例では、第1電極21は円筒状の部材であるが、第1電極21は円筒状とは限らない。
【0027】
図1に示したように、第1螺旋状部分41が第1電極21の外面に巻きつくことによって、第1電極21は第1螺旋状部分41を支持していることが好ましい。この構成を採用することにより、第1螺旋状部分41を第1電極21によって支持することができるので、第1螺旋状部分41を支持するための余分な機構が不要となり、部品点数を減らすことが可能となる。
【0028】
図1に示したように、第2電極22は、シート状の部材であり、第1螺旋状部分41を包み込むように配置されていることが好ましい。この構成を採用することにより、単一の第2電極22で広い範囲を一括して被覆することができる。
【0029】
図1に示した例では、第2電極22は第1螺旋状部分41の周りの全周ではなく、半周のみを覆っているが、全周を覆っていてもよい。第2電極22は第1螺旋状部分41の周りを半周に限らず部分的に覆う構成であってもよい。全周を覆わずに一部あけた状態で覆う構成としておけばそのあけた部分からプラズマ放電の様子を確認できるので、好ましい。
【0030】
第2電極22は、薄いシート状の部材であってもよいが、肉厚の部材であってもよい。第1電極21は、中実状の棒状であってもよいが、中空状の部材であってもよい。すなわち、第1電極21は筒状であってもよい。
【0031】
本実施の形態では第1管状誘電体31の断面形状は円形であるものとしたが、断面形状は円形に限らず、たとえば楕円形、多角形であってもよい。本実施の形態では第1電極21、第2電極22は上から見て円形であるものとしたが、この形状は円形に限らず、たとえば楕円形、多角形であってもよい。
【0032】
(実験1)
実施の形態1で説明した構成で、管状誘電体内部全域でプラズマ放電が均一に行なわれるか確認するために放電確認実験を行なった。これを実験1とする。実験1の実験条件は以下のとおりである。
内部電極:SUS管(外径20mm)
外部電極:アルミテープ
管状誘電体:シリコンチューブ(外径6mm、内径4mm)
電源:スライダック(東京理工舎 RSA−10)およびネオントランス(小寺電子製作所 CR−N16)
ガスの種類:He,Arの2通り
SUS管を第1電極21として利用し、このSUS管をアースに接続した。第1電極21は支持体の役割も兼ねる。シリコンチューブを用意し、これを第1管状誘電体31とした。第1電極21としてのSUS管の周りにシリコン系接着剤を塗布し、第1管状誘電体31としてのシリコンチューブを螺旋状に巻き付けて接着した。さらにシリコン系接着剤でシリコンチューブ間の隙間を埋めた。シリコンチューブが螺旋状に巻き付いている部分が第1螺旋状部分41に相当する。第1螺旋状部分41の外周面のうち半周にわたってアルミテープを巻きつけた。このアルミテープが第2電極22に相当する。アルミテープを巻きつけるのを全周ではなく半周のみとしたのは、プラズマ放電を観察することができるようにするためである。第1管状誘電体31としてのシリコンチューブにガスを導入して、第1電極21と第2電極22との間、すなわち、SUS管とアルミテープとの間に高周波の高電圧を印加した。
【0033】
導入するガスは、HeとArとの2通りを別々に試した。ガスの流量はいずれも4リットル/分とした。Heに対しては、電圧は2kVを印加した。Arに対しては、電圧は3kVを印加した。周波数は18kHzとした。
【0034】
それぞれのガス条件において、プラズマが第1螺旋状部分41の全域で放電していることを目視で確認することができた。実験1により、第1螺旋状部分41の全域で均一に放電が生じることを確認することができた。
【0035】
(実験2)
実施の形態1で説明した構成で、被処理物のプラズマ処理が可能であるか確認するために放電確認実験を行なった。これを実験2とする。実験2の様子を図2に示す。実験2の実験条件は以下のとおりである。なお、螺旋状部分の長さとは、螺旋状部分の総延長ではなく、螺旋状の状態における外見上の長さである。
内部電極:SUS管(外径20mm)
外部電極:アルミテープ
管状誘電体:シリコンチューブ(外径6mm、内径4mm)
螺旋状部分の長さ:300mm
電源:スライダック(東京理工舎 RSA−10)およびネオントランス(小寺電子製作所 CR−N16)
粉体供給機構:ガラス濾過器(ビードレックス製)
粉体回収機構:サイクロン粉体捕集ポット(アズワン製)
ガスの種類:Ar
ガスの流量:4リットル/分
印加する電圧:4kV
周波数:18kHz
被処理物:PE(ポリエチレン)の粉体(三井化学製ミペロン(R))
ガラス濾過器11の内部にメッシュフィルタを設置し、このメッシュフィルタの上に被処理物としての粉体14を配置した。ガス源13から供給されるガスが矢印91のようにガラス濾過器11の内部に入り、粉体14を巻き上げながら矢印92のように入口31aを通って第1管状誘電体31に進入する。ガスと粉体14との混合体が矢印93に示すように第1管状誘電体31内を進行する。ガスと粉体14との混合体は、第1電極21と第2電極22とに挟まれた螺旋状部分を矢印94のように進行する。電源部1から配線2,3を介して第1電極21と第2電極22との間に高周波の高電圧を印加した。ガスと粉体14との混合体は、高電圧が印加されている螺旋状部分を通過し、矢印95のように出口31bに達する。ガスと粉体14との混合体は、出口31bを経由して回収部7に進入する。回収部7は、容器15とガス出口17とを備える。容器15にはプラズマ処理済の粉体16が溜まり、ガスは矢印96のようにガス出口17から出ていく。
【0036】
実験2の結果、粉体が第1管状誘電体に安定的に供給可能であり、螺旋状部分を通過させたのちに粉体を回収可能であることが確認できた。さらに、粉体を送り込んでいる間にもプラズマが安定して放電することを確認できた。さらに、未処理の粉体14および回収した粉体16を用いて純水に分散させたところ、未処理の粉体14に比べて処理済の粉体16は純水に対する分散性が大幅に向上していることがわかった。したがって、このような構成の装置を用いてプラズマ処理を行なうことによってPEの粉体の純水への分散性の改善が可能であることがわかった。
【0037】
(実験3)
実施の形態1で説明した構成で、被処理物の供給方向による被処理物の流動性および処理による効果を確認するため、装置の向きを図3図5のように3通りに設定して粉体のプラズマ処理を行なった。これを実験3とする。実験3の実験条件は以下のとおりである。
内部電極:SUS管(外径20mm)
外部電極:アルミテープ
管状誘電体:シリコンチューブ(外径6mm、内径4mm)
電源:スライダック(東京理工舎 RSA−10)およびネオントランス(小寺電子製作所 CR−N16)
ガスの種類:Arに1%のO2を添加したもの
粉体供給機構:ガラス濾過器(ビードレックス製)
粉体回収機構:サイクロン粉体捕集ポット(アズワン性)
ガスの流量:4リットル/分
印加する電圧:4kV
周波数:18kHz
被処理物:PEの粉体(三井化学製ミペロン(R))
図3に示した例では、第1電極21が上下方向に延在するように配置され、第1管状誘電体31の入口31aが上、出口31bが下となっている。被処理物としての粉体は上から下に向かって送り込まれ、螺旋状部分を通過する。
【0038】
図4に示した例では、第1電極21が上下方向に延在するように配置され、第1管状誘電体31の入口31aが下、出口31bが上となっている。被処理物としての粉体は下から上に向かって送り込まれ、螺旋状部分を通過する。
【0039】
図5に示した例では、第1電極21が水平方向に延在するように配置され、第1管状誘電体31の入口31aが右、出口31bが左となっている。被処理物としての粉体は右から左に向かって送り込まれ、螺旋状部分を通過する。
【0040】
実験3としては、これら3通りの向きに設定された装置において、それぞれ粉体を供給してプラズマ処理を行なった。その結果、図3図5のいずれの向きに設置されていても詰まりなく均一に粉体を供給することができ、粉体の回収も良好に行なえることがわかった。処理前後の粉体を用いて純水への分散性を調べたところ、図3図5のいずれの向きでプラズマ処理された粉体であっても、純水への分散性が大幅に改善されていたことがわかった。すなわち、図3図5のいずれの向きにおいても、プラズマ処理を良好に行なえることがわかった。
【0041】
(実施の形態2)
(構成)
図6を参照して、本発明に基づく実施の形態2における大気圧プラズマ処理装置について説明する。本実施の形態における大気圧プラズマ処理装置の概念図を図6に示す。
【0042】
本実施の形態における大気圧プラズマ処理装置102は、実施の形態1で説明したものに比べて、構成の基本的な部分においては共通するが、以下の点で異なる。
【0043】
大気圧プラズマ処理装置102は、第2螺旋状部分42を含む第2管状誘電体32を備える。第1螺旋状部分41と第2螺旋状部分42とが二重螺旋をなすように配置されている。大気圧プラズマ処理装置102は、供給部61,62と、回収部71,72とを備えている。
【0044】
(作用・効果)
本実施の形態においても、実施の形態1で説明したのと同様の効果を得ることができる。さらに本実施の形態では、第1管状誘電体31の他に第2管状誘電体32を備えており、第1管状誘電体31の一部である第1螺旋状部分41と第2管状誘電体32の一部である第2螺旋状部分42とが二重螺旋をなしているので、プロセスガスと被処理物との混合体を最大2種類まで同時に通すことができる。第1管状誘電体31と第2管状誘電体32とで同じ種類の混合体を通してもよく、異なる種類の混合体を通してもよい。第1螺旋状部分41と第2螺旋状部分42とによって構成される二重螺旋は、第1電極21と第2電極22とに挟まれているので、被処理物は二重螺旋の部分を通りながらプラズマ処理されることとなる。
【0045】
本実施の形態では、異なる2種類の被処理物を同時並行的に連続的にプラズマ処理することもできる。
【0046】
第1管状誘電体31と第2管状誘電体32とで同じ種類の混合体を供給する場合には、供給部61,62は分ける必要はなく、1つの供給部であってもよく、同様に、回収部71,72は分ける必要はなく、1つの回収部であってもよい。
【0047】
本実施の形態では、二重螺旋であるものとしたが、3重以上の多重螺旋となっていてもよい。すなわち、本実施の形態で例示した他に、さらに、他の螺旋状部分を含む管状誘電体を備えていてもよい。言い換えれば、大気圧プラズマ処理装置は、第1螺旋状部分を含む第1管状誘電体から第n螺旋状部分を含む第n管状誘電体まで(nは3以上)を含む構成であって、第1螺旋状部分から第n螺旋状部分までが多重螺旋となっていてもよい。
【0048】
(実施の形態3)
(構成)
図7を参照して、本発明に基づく実施の形態3における大気圧プラズマ処理装置について説明する。本実施の形態における大気圧プラズマ処理装置の概念図を図7に示す。
【0049】
本実施の形態における大気圧プラズマ処理装置103は、実施の形態1で説明したものに比べて、第1電極および第2電極の構成が異なる。
【0050】
大気圧プラズマ処理装置103は、第1電極21iと、第1電極21iから間隙を介して離隔するように配置された第2電極22iと、第1螺旋状部分41を含み、第1螺旋状部分41が前記間隙を通るように配置された第1管状誘電体31と、第1管状誘電体31の内部に、被処理物およびプロセスガスの混合体を通す供給部61と、第1電極21iと第2電極22iとの間に電圧を印加する電源部1とを備える。大気圧プラズマ処理装置103は、第2螺旋状部分42を含む第2管状誘電体32を備え、第1螺旋状部分41、第1電極21i、第2螺旋状部分42、第2電極22iが四重螺旋をなすように配置されている。大気圧プラズマ処理装置103は、第2管状誘電体32の内部に被処理物およびプロセスガスの混合体を通す供給部62を備える。大気圧プラズマ処理装置103は、第1管状誘電体31の出口31bから排出される被処理物を回収する回収部71と、第2管状誘電体32の出口32bから排出される被処理物を回収する回収部72とを備える。
【0051】
大気圧プラズマ処理装置103においては、螺旋状部分の中心となる棒状の部材は必ずしも必要ない。電源部1から第1電極21iへは配線3を介して接続されている。電源部1から第2電極22iへは配線2を介して接続されている。
【0052】
(作用・効果)
本実施の形態においても、実施の形態1で説明したのと同様の効果を得ることができる。さらに本実施の形態では、第1螺旋状部分41、第1電極21i、第2螺旋状部分42、第2電極22iが四重螺旋をなすように配置されており、第1螺旋状部分41は第1電極21iと第2電極22iとに挟まれ、第2螺旋状部分42も第1電極21iと第2電極22iとに挟まれているので、プロセスガスと被処理物との混合体を最大2種類まで同時に通しつつ、それぞれプラズマ処理を施すことができる。実施の形態2と同様に、第1管状誘電体31と第2管状誘電体32とで同じ種類の混合体を通してもよく、異なる種類の混合体を通してもよい。
【0053】
実施の形態2,3では、2つの管状誘電体が設けられているが、これら2つの管状誘電体のうち一方に被処理物を通し、もう一方に冷媒を流すこととしてもよい。このようにすれば、効率良く冷却を行なうことができる。3以上の管状誘電体が設けられている場合には、そのうち一部の管状誘電体に冷媒を流すこととしてもよい。
【0054】
(実験4)
実施の形態3の構成において粉体に対するプラズマ処理が可能であることを確認するために、実験を行なった。これを実験4とする。
【0055】
高圧側電極およびアース電極としては、SUS管を使用した。このSUS管は外周にセラミック溶射膜コート付きで外径3.2mmのものである。第1管状誘電体および第2管状誘電体としては、シリコンチューブを使用した。このシリコンチューブは、外径6mm、内径4mmのものである。螺旋状部分の芯に相当する支持体として石英管を使用した。石英管の外周面に、(A)高圧側電極、(B)第1管状誘電体、(C)アース電極、(D)第2管状誘電体の合計4つの部材を四重螺旋となるように巻きつけた。石英管の外周面においては、石英管の長手方向に沿って、(A)、(B)、(C)、(D)、(A)、(B)、(C)、(D)、(A)、(B)、…と繰り返し並ぶように配置した。
【0056】
処理対象物は、カーボンブラックの平均粒子径0.1μmの粉体とした。
この構成において、以下の条件でガスを処理対象物と共に供給し、電圧を印加した。
ガスの種類:He
ガスの流量:3リットル/分
印加する電圧:3.0kV
周波数:18kHz
この結果、四重螺旋となっている部分の管状誘電体の全域においてプラズマ放電が起こっていることが目視で観察できた。第1管状誘電体および第2管状誘電体を通過して回収された粉体を回収して純水への分散の度合いを調べたところ、処理前の粉体に比べて純水への分散性が向上していることが確認できた。
【0057】
(実施の形態4)
(構成)
図8を参照して、本発明に基づく実施の形態4における大気圧プラズマ処理装置について説明する。本実施の形態における大気圧プラズマ処理装置の概念図を図8に示す。
【0058】
本実施の形態における大気圧プラズマ処理装置104の構成は、実施の形態3で説明した構成から第2管状誘電体を取り除いたものに相当する。
【0059】
大気圧プラズマ処理装置104は、第1電極21iと、第1電極21iから間隙を介して離隔するように配置された第2電極22iと、第1螺旋状部分41を含み、第1螺旋状部分41が前記間隙を通るように配置された第1管状誘電体31と、第1管状誘電体31の内部に、被処理物およびプロセスガスの混合体を通す供給部6と、第1電極21iと第2電極22iとの間に電圧を印加する電源部1とを備える。大気圧プラズマ処理装置104においては、第1電極21i、第1螺旋状部分41、第2電極22iが三重螺旋をなすように配置されている。第1管状誘電体31の出口31bには回収部7が接続されている。
【0060】
大気圧プラズマ処理装置104は、第2管状誘電体が存在しないという点以外は、実施の形態3で説明した大気圧プラズマ処理装置103と同様である。
【0061】
(作用・効果)
通過させるべき被処理物およびプロセスガスの混合体が1種類のみである場合には、本実施の形態で説明したような構成の装置であってもよい。本実施の形態においても、実施の形態1で説明したのと同様の効果を得ることができる。
【0062】
なお、上記実施の形態のうち複数を適宜組み合わせて採用してもよい。
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0063】
1 電源部、2,3 配線、6,61,62 供給部、7,71,72 回収部、11 ガラス濾過器、12 ゴム栓、13 ガス源、14 (処理すべき)粉体、15 容器、16 (処理を終えた)粉体、17 ガス出口、21,21i 第1電極、22,22i 第2電極、31 第1管状誘電体、31a,32a 入口、31b,32b 出口、32 第2管状誘電体、41 第1螺旋状部分、42 第2螺旋状部分、91,92,93,94,95,96 矢印、101,102,103,104 大気圧プラズマ処理装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8