(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する画像処理装置、情報表示システム、画像処理方法およびプログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
また、以下では、本実施形態に係る画像処理手法の概要について
図1A〜
図1Eを用いて説明した後に、この画像処理手法を適用した画像処理装置10およびこれを含む情報表示システム1について、
図2〜
図9を用いて説明することとする。なお、
図1A〜
図6を用いた説明では、第1の実施形態について、
図7A〜
図8を用いた説明では、第2の実施形態について、それぞれ説明する。
【0011】
また、以下では、情報表示システム1が、通常はバックミラー(後写鏡)に鏡像として映る車両の後方画像を、車載カメラの撮像画像に基づいて生成し、ディスプレイ等の表示部へ表示する、いわゆる「電子ミラー」の機能を提供する場合を主たる例に挙げて説明を進める。なお、バックミラーには、ルームミラー、ドアミラー、フェンダーミラーおよびサイドアンダーミラーのいずれをも含むものとする。これらのバックミラー(後写鏡)のうち、車体の外部に取り付けられるドアミラー、フェンダーミラーおよびサイドアンダーミラー等は、「車体外後写鏡」とも呼ばれる。
【0012】
まず、本実施形態に係る画像処理手法の概要について、
図1A〜
図1Eを用いて説明する。
図1A〜
図1Eは、実施形態に係る画像処理手法の概要を示す図(その1)〜(その5)である。
【0013】
図1Aに示すように、本実施形態に係る情報表示システム1は、例えば車両Cの運転支援情報の表示用として構成される。具体的には、情報表示システム1は、表示部4と、画像処理装置10とを備える。
【0014】
表示部4は、運転支援情報を車両Cの運転者に対して表示する表示領域として機能するデバイスであり、例えば
図1Aに示すように、車両Cの運転席前方の運転者の視野へ直接情報を映し出すヘッドアップディスプレイとして構成される。本実施形態では、以下でも、表示部4がヘッドアップディスプレイであるものとして説明を進める。
【0015】
なお、表示部4は、例えば車両Cの車室前方中央のセンターディスプレイ等として構成されてもよい。
【0016】
画像処理装置10は、例えばインストルメント・パネル中央の内部等に配置され、表示部4へ出力する運転支援情報としての画像の生成処理を行う。かかる画像は、例えばドアミラーMR,MLにそれぞれ対応する電子ミラー画像として、また例えば車両Cの速度等の運行情報を示す画像として生成される。
【0017】
具体的には、
図1Bに示すように、本実施形態に係る情報表示システム1は、例えば表示部4の下部右側に、ドアミラーMRに対応する電子ミラー画像の表示領域D1を配置する。また、例えば表示部4の下部左側に、ドアミラーMLに対応する電子ミラー画像の表示領域D2を配置する。また、例えば表示部4の上部中央に、車両Cの運行情報としての速度の表示領域D3を配置する。
【0018】
ところで、通常、運転者がその視野に実際のバックミラーを捉える場合、運転者からはミラー自体に映る鏡像とミラー周辺の背景とが視認されることとなる。具体的には、
図1Cに示すように、運転者が、実際のドアミラーMRをその視野に捉えた場合、運転者は、ドアミラーMRの内側の鏡像M1と、ドアミラーMRの外側の背景B1とを視認する。
【0019】
そして、かかる場合において、仮に車両Cが前方へ直進移動していれば、鏡像M1の流れてゆく「流れ方向」は、例えば鏡像M1の消失点へ向かう方向(流れ方向dm1)である。これに対し、背景B1の流れてゆく「流れ方向」は、運転者がドアミラーMRを視野に捉えた場合に、車両Cの移動方向とは相対的に後方へ流れる景色の移動方向(流れ方向db1)である。
【0020】
すなわち、通常、運転者の視認する鏡像M1の「流れ方向」と背景B1の「流れ方向」とは、異なる方向であることが分かる。これは、言い換えれば、背景B1を模した背景画像の内側に鏡像M1を模した鏡像画像を配置し、車速に応じた速度で、かつ、車両Cの移動方向に応じた鏡像M1とは異なる「流れ方向」でそれぞれ流れさせれば、運転者が電子ミラー画像として違和感なく受け入れやすいということである。
【0021】
図1Bの説明に戻る。そこで、本実施形態に係る情報表示システム1では、電子ミラーとして機能させる表示領域D1,D2につき、背景B1を模した背景画像の内側に鏡像M1を模した鏡像画像を配置し、車速に応じた速度で、かつ、車両Cの移動方向に応じた鏡像M1とは異なる「流れ方向」でそれぞれで流れさせることとした。
【0022】
なお、以下では、ドアミラーMRに対応する表示領域D1を主に例示して説明を行う。ドアミラーMLに対応する表示領域D2については、表示領域D1と左右対称である点が異なる。なお、これから説明する表示領域D1,D2の背景画像Bi1,Bi2を便宜上総称する場合、背景画像Biと言う場合がある。同様に、表示領域D1,D2のバックミラー画像Mi1,Mi2を便宜上総称する場合、バックミラー画像Miと言う場合がある。
【0023】
具体的には
図1Bに示すように、本実施形態では、表示領域D1につき、背景画像Bi1の内側にバックミラー画像(後写鏡画像)Mi1を配置することとした。バックミラー画像Mi1は、車両Cの撮像部(後述)により撮像された車両Cの後方画像を鏡像反転させて生成される。すなわち、バックミラー画像Mi1は実際の撮像画像に基づくので、流れる速度および流れ方向dm1については撮像されたままでよい。
【0024】
一方、背景画像Bi1は、車両Cの車速に応じた速度で、かつ、バックミラー画像Mi1とは異なる流れ方向db1で流れるように生成される。このとき、背景画像Bi1は、必ずしも実際の撮像画像に基づいて生成される必要はない。
【0025】
すなわち、背景画像Bi1の流れ方向db1は、運転者に対し、車両Cの移動方向に対して相対的に流れる景色の移動方向を少なくとも想起させられればよく、厳密に撮像画像等の流れ方向と一致させる必要はない。したがって、背景画像Bi1の流れ方向db1は、バックミラー画像Mi1の流れ方向dm1とは異なる任意の方向でよい。
【0026】
具体例を
図1Dに一つ示す。
図1Dに示すように、情報表示システム1では、例えば車両Cが直進する場合の表示領域D1における背景画像Bi1の流れ方向db1を、表示領域D1,D2の中点を消失点Pとした、かかる消失点Pから放射状に延びる各直線に沿った方向とする。
【0027】
この場合、表示領域D1の流れ方向db1は、車両Cの運転席からの実際の視野において車両Cの移動方向に対して相対的に流れる景色の移動方向とは一致しない。しかしながら、左右の電子ミラーとして機能する表示領域D1,D2の中央から放射状に拡散あるいは収束する方向へ背景画像を流れさせることで、直進する車両Cに対し相対的に流れる景色の移動方向を少なくとも運転者に想起させることができる。
【0028】
なお、背景画像Bi1,Bi2の流れ方向には車両Cの舵角に基づく回転等の要素が加味されるが、この点については
図3A〜
図3Cを用いた説明で後述する。また、消失点Pの他の例等についても同じく
図3A〜
図3Cを用いた説明で後述する。
【0029】
また、背景画像Bi1は、実際の撮像画像に基づく必要はなく、車両Cの進行方向に対し相対的に流れる景色の移動方向を少なくとも運転者に想起させられればよいことから、例えば幾何学模様が流れ方向db1に沿って移動するような画像であってもよい。
【0030】
具体例を
図1Eに一つ示す。
図1Eに示すように、情報表示システム1では、例えば幾何学模様aP1を含む背景画像Bi1を生成し、かかる幾何学模様aP1を車速に応じた速度で流れ方向db1に沿って移動させる。なお、ここで、幾何学模様aP1は、流れ方向db1を示す形状(例えば、矢印)を有していることが好ましい。
【0031】
このように、流れ方向db1を示す形状を有する幾何学模様aP1を車速に応じた速度で移動させる背景画像Bi1によっても、車両Cの進行方向に対し相対的に流れる景色の移動方向を少なくとも運転者に想起させることできる。なお、幾何学模様の他の例については、
図4A〜
図4Cを用いた説明で後述する。
【0032】
そして、このような背景画像Bi1の内側に前述のバックミラー画像Mi1を配置することによって、電子ミラーとして機能する表示領域D1を、違和感なく運転者に電子ミラーとして認知させることができる。
【0033】
このように、本実施形態では、車両Cの撮像部により撮像された車両Cの後方画像を鏡像反転させたバックミラー画像Miを生成し、車両Cの車速に応じた速度で、かつ、バックミラー画像Miとは異なる任意の流れ方向で流れる背景画像Biを生成し、背景画像Biの内側にバックミラー画像Miが配置されるように合成することとした。
【0034】
したがって、本実施形態によれば、電子ミラーとして機能する表示領域D1,D2を、違和感なく運転者に電子ミラーとして認知させることができる。
【0035】
以下、上述した画像処理手法によって画像処理を行う画像処理装置10およびこれを含む情報表示システム1について、さらに具体的に説明する。
【0036】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態に係る情報表示システム1のブロック図である。なお、
図2では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを機能ブロックで表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0037】
換言すれば、
図2に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0038】
図2に示すように、情報表示システム1は、操作部2と、表示制御部3と、表示部4と、画像処理装置10とを備える。情報表示システム1は、車両Cに搭載された、撮像部20、車速センサ30、舵角センサ40および路面センサ50等の各種機器と情報の授受を行う。
【0039】
情報表示システム1につき、まず画像処理装置10以外の構成要素から説明する。操作部2は、例えば運転者といった利用者からの入力操作を受け付ける入力デバイスである。H/Wデバイスであっても、S/Wデバイスであってもよい。利用者は、かかる操作部2を介し、前述の消失点Pの位置を指定するといった操作や、例えば前述の幾何学模様を選択するといった操作等、背景画像Bi1,Bi2の生成に関する情報の入力操作を行うことが可能である。
【0040】
表示制御部3は、後述する画像処理装置10によって生成され、出力される電子ミラー画像を受け付け、表示部4へ表示させる。表示部4は、例えば上述したようにヘッドアップディスプレイ等であって、表示制御部3が出力する運転支援情報としての電子ミラー画像を、表示領域D1,D2へ表示する。
【0041】
つづいて画像処理装置10について説明する。画像処理装置10は、制御部11と、記憶部12とを備える。制御部11は、設定部11aと、バックミラー画像生成部11bと、背景画像生成部11cと、画像合成部11dとをさらに備える。
【0042】
記憶部12は、ハードディスクドライブや不揮発性メモリ、レジスタといった記憶デバイスであって、背景画像情報12aを記憶する。
【0043】
制御部11は、画像処理装置10の各部を制御する。設定部11aは、操作部2を介しての利用者の入力操作を受け付け、入力操作の内容に応じて背景画像情報12aを設定する。
【0044】
背景画像情報12aは、背景画像Bi1,Bi2の生成に関する情報群であって、前述の消失点Pの位置や、前述の幾何学模様が、例えば選択可能に複数パターン含まれる。
【0045】
バックミラー画像生成部11bは、撮像部20のうち、車両Cの後方撮像用に搭載された後方カメラ21により撮像された車両Cの後方画像を鏡像反転させたバックミラー画像Mi1,Mi2を生成する。また、バックミラー画像生成部11bは、生成したバックミラー画像Mi1,Mi2を画像合成部11dへ出力する。
【0046】
背景画像生成部11cは、車速センサ30、舵角センサ40、路面センサ50等の検出値および背景画像情報12aに基づき、背景画像Bi1,Bi2を生成する。なお、車速センサ30は、車両Cの車速を検出する。また、舵角センサ40は、車両Cの舵角を検出する。また、路面センサ50は、車両Cが移動中の路面の起伏を検出する。
【0047】
背景画像生成部11cは、これらの検出値および背景画像情報12aに基づき、上述したように、車両Cの車速に応じた速度で、かつ、バックミラー画像Mi1,Mi2とは異なる任意の流れ方向で流れる背景画像Bi1,Bi2を生成する。また、背景画像生成部11cは、生成した背景画像Bi1,Bi2を画像合成部11dへ出力する。
【0048】
ここで、
図3A〜
図4Cを用いて、背景画像情報12aの一例およびこれに基づく背景画像生成部11cの処理について説明しておく。
図3Aは、背景画像情報12aに含まれる選択可能な消失点Pの位置の一例を示す図である。
【0049】
図3Bおよび
図3Cは、背景画像生成部11cにおける背景画像Bi1,Bi2の流れ方向の決定方法を示す図(その1)および(その2)である。
図4A〜
図4Cは、背景画像情報12aに含まれる選択可能な幾何学模様の一例を示す図(その1)〜(その3)である。
【0050】
図3Aに示すように、背景画像情報12aには、例えば、表示部4の表示領域D1,D2の中点の位置である消失点P1と、車両Cのフロントガラス中央の位置である消失点P2とが含まれる。なお、消失点P1は、既に
図1Dを用いて説明した消失点Pに対応する。
【0051】
そして、消失点P1が選択された場合、
図3Bに示すように、背景画像生成部11cは、かかる消失点P1から放射状に延びる各直線に沿った方向に、例えば舵角センサ40の検出値に基づく回転角drおよび車両Cの進行方向を加味して、背景画像Bi1,Bi2における流れ方向db1,db2を決定する。
【0052】
また、消失点P2が選択された場合、
図3Cに示すように、背景画像生成部11cは、かかる消失点P2から放射状に延びる各直線がドアミラーMR,MLに重なる方向に、例えば上記回転角drおよび車両Cの進行方向を加味して、背景画像Bi1,Bi2における流れ方向db1,db2を決定する。
【0053】
また、背景画像情報12aには、
図4Aに示すように、例えば幾何学模様aP1が含まれる。幾何学模様aP1は、流れ方向db1,db2を示す形状として矢印を有する。また、
図4Bに示すように、流れ方向db1,db2を示す、例えば尾を引く流れ星のような形状の幾何学模様aP2が背景画像情報12aに含まれてもよい。
【0054】
また、
図4Cに示すように、流れ方向db1,db2を示す矢印ではあるが、曲線を含む幾何学模様aP3が背景画像情報12aに含まれてもよい。なお、
図4Aから
図4Cに例示した幾何学模様は流れ方向を示す形状(矢印)を含んでいるが、かかる形状を含まない円形、矩形、多角形などを背景画像情報12aの幾何学模様に採用してもよい。また、所定のマークなどを背景画像情報12aの幾何学模様に採用してもよい。
【0055】
そして、背景画像生成部11cは、例えばこれら幾何学模様aP1〜aP3のうちから選択されたものを用いて、かかる幾何学模様aP1〜aP3が決定した流れ方向db1,db2に沿って、かつ、車速センサ30の検出値に応じた速度で移動する背景画像Bi1,Bi2を生成する。
【0056】
なお、例えば、
図4Cに示す幾何学模様aP3が選択された場合、背景画像生成部11cは、かかる幾何学模様aP3の曲線形状によって、路面センサ50からの検出値に基づく路面の起伏を表すように背景画像Bi1,Bi2を生成してもよい。
【0057】
図2の説明に戻り、つづいて画像合成部11dについて説明する。画像合成部11dは、背景画像Biの内側にバックミラー画像Miが配置されるように、背景画像Biおよびバックミラー画像Miを合成する。
【0058】
ここで、これまでの説明をより分かりやすくするために、バックミラー画像生成部11b、背景画像生成部11cおよび画像合成部11dにおける各処理を概略的に
図5にまとめておく。
図5は、画像処理装置10における各処理の概略図である。
【0059】
すなわち、
図5に示すように、バックミラー画像生成部11bが、撮像部20の後方カメラ21により撮像された車両Cの後方画像を鏡像反転させたバックミラー画像Miを生成する(ステップS1)。
【0060】
また、背景画像生成部11cが、車両Cの車速に応じた速度で、かつ、バックミラー画像Miとは異なる任意の流れ方向で流れる背景画像Biを生成する(ステップS2)。
【0061】
そして、画像合成部11dが、背景画像Biの内側にバックミラー画像Miが配置されるように、バックミラー画像Miと背景画像Biを合成する(ステップS3)。
【0062】
次に、本実施形態に係る画像処理装置10が実行する処理手順について、
図6を用いて説明する。
図6は、第1の実施形態に係る画像処理装置10が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0063】
図6に示すように、まず設定部11aが、利用者の操作部2を介した入力操作に基づき、背景画像情報12aの初期設定を行う(ステップS101)。そして、電子ミラーの機能がONであるならば(ステップS102,Yes)、バックミラー画像生成部11bが、撮像部20から車両Cの後方画像を取得し(ステップS103)、これに基づいてバックミラー画像Miを生成する(ステップS104)。
【0064】
また、背景画像生成部11cは、車速センサ30から車両Cの車速を取得するとともに(ステップS105)、背景画像Biの流れ方向を決定する(ステップS106)。そして、背景画像生成部11cは、ステップS105およびS106の処理結果に基づいて背景画像Biを生成する(ステップS107)。
【0065】
そして、画像合成部11dが、バックミラー画像Miと背景画像Biを合成し(ステップS108)、表示制御部3へ出力した後、ステップS102からの処理を繰り返す。
【0066】
また、電子ミラーの機能がONでないならば(ステップS102,No)、処理を終了する。
【0067】
上述してきたように、第1の実施形態に係る画像処理装置は、バックミラー画像生成部(「第1画像生成部」の一例に相当)と、背景画像生成部(「第2画像生成部」の一例に相当)と、画像合成部とを備える。
【0068】
バックミラー画像生成部は、車両の外部を撮像する撮像部により撮像された車両の後方画像を鏡像反転させたバックミラー画像(「後写鏡画像」の一例に相当)を生成する。背景画像生成部は、車両の車速に応じた速度で、かつ、バックミラー画像とは異なる任意の流れ方向で流れる背景画像を生成する。画像合成部は、背景画像の内側にバックミラー画像が配置されるように背景画像およびバックミラー画像を合成する。
【0069】
したがって、第1の実施形態に係る画像処理装置によれば、電子ミラーとして機能する表示部の表示領域を、違和感なく運転者に電子ミラーとして認知させることができる。
【0070】
ところで、これまでは、背景画像が、撮像部の撮像画像に基づくことなく生成される場合を例に挙げたが、かかる撮像画像に基づき、背景画像を生成してもよい。かかる場合を第2の実施形態として、以下、説明する。
【0071】
(第2の実施形態)
図7Aは、第2の実施形態に係る情報表示システム1’のブロック図である。なお、
図7Aは、
図2に対応しているため、
図2と異なる部分について主に説明する。また、
図7Bは、第2の実施形態に係る背景画像生成部11c’のブロック図である。
【0072】
第2の実施形態に係る情報表示システム1’では、背景画像生成部11c’が、撮像部20のうち、例えば、車両Cの前方撮像用に搭載された前方カメラ22により撮像された車両Cの前方画像に基づき、背景画像Biを生成する。
【0073】
具体的には、背景画像生成部11c’は、前述の前方画像を、任意の視点位置へ視点変換した視点変換画像を背景画像Biとして生成する。より具体的には、
図7Bに示すように、背景画像生成部11c’は、歪み補正部11caと、視点変換演算部11cbとをさらに備える。背景画像Biに用いられる視点変換画像は、任意の視点位置から任意の視野方向をみた画像であるとも言える。
【0074】
歪み補正部11caは、前方カメラ22から取得した前方画像のレンズ歪みの補正処理を演算によって行う。また、歪み補正部11caは、補正処理後の前方画像を視点変換演算部11cbへ出力する。
【0075】
視点変換演算部11cbは、歪み補正部11caから取得した補正処理後の前方画像を、例えば背景画像情報12aに含まれる任意の視点位置へ視点変換する演算処理を行う。また、視点変換演算部11cbは、演算処理後の視点変換画像を、背景画像Biとして画像合成部11dへ出力する。
【0076】
なお、任意の視点位置および任意の視野方向は、あらかじめ操作部2を介した利用者の入力操作によって背景画像情報12aへ設定することができる。ここで、視点位置は、運転者が車両の運転席に着座した場合の運転者の目の位置に相当する所定位置(以下、「ドライバ視点位置」と言う)が好ましい。また、視野方向は、運転者が運転席に着座した状態で車両のドラミラーMR,MLに自然に視線を向ける方向に相当する所定方向(以下、「ドライバ視野方向」と言う)が好ましい。
【0077】
しかし、第1の実施形態でも述べたように、背景画像Biは、運転者に対し、車両Cの移動方向に対して相対的に流れる景色の移動方向を少なくとも想起させられればよい。このため、視点位置および視野方向を厳密にドライバ視点位置およびドライバ視野方向に一致させなくてもよく、任意の位置および方向であってよい。また、視点位置および視野方向のいずれか一方のみを、ドライバ視点位置およびドライバ視野方向に一致させてもよい。たとえば、視野方向のみをドライバ視野方向に一致させることで、背景画像Biの流れ方向dbをより自然なものにすることができる。なお、かかる任意の視点位置および視野方向に応じて視点変換演算されれば、演算処理後の視点変換画像において背景画像Biの流れ方向dbは、選択された視点位置および視野方向に応じて自動的に決まることとなる。
【0078】
レンズ歪みの補正のための演算処理や視点変換のための演算処理については、画像処理技術における公知の手法を用いることができるので、ここでの詳細な記載は省略する。
【0079】
次に、本実施形態に係る画像処理装置10’が実行する処理手順について、
図8を用いて説明する。
図8は、第2の実施形態に係る画像処理装置10’が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0080】
図8に示すように、まず設定部11aが、利用者の操作部2を介した入力操作に基づき、背景画像情報12aの初期設定を行う(ステップS201)。本実施形態では、前述の任意の視点位置および視野方向が設定されることとなる。
【0081】
そして、電子ミラーの機能がONであるならば(ステップS202,Yes)、バックミラー画像生成部11bが、撮像部20から車両Cの後方画像を取得し(ステップS203)、これに基づいてバックミラー画像Miを生成する(ステップS204)。
【0082】
また、背景画像生成部11c’は、撮像部20から車両Cの前方画像を取得し(ステップS205)、かかる前方画像を視点変換演算する(ステップS206)。そして、背景画像生成部11c’は、視点変換後の視点変換画像を、背景画像Biとして生成する(ステップS207)。
【0083】
そして、画像合成部11dが、バックミラー画像Miと背景画像Biを合成し(ステップS208)、表示制御部3へ出力した後、ステップS202からの処理を繰り返す。
【0084】
また、電子ミラーの機能がONでないならば(ステップS202,No)、処理を終了する。
【0085】
上述してきたように、第2の実施形態に係る画像処理装置は、バックミラー画像生成部(「第1画像生成部」の一例に相当)と、背景画像生成部(「第2画像生成部」の一例に相当)と、画像合成部とを備える。
【0086】
バックミラー画像生成部は、車両の外部を撮像する撮像部により撮像された車両の後方画像を鏡像反転させたバックミラー画像(「後写鏡画像」の一例に相当)を生成する。背景画像生成部は、車両の車速に応じた速度で、かつ、バックミラー画像とは異なる任意の流れ方向で流れる背景画像を生成する。画像合成部は、背景画像の内側にバックミラー画像が配置されるように背景画像およびバックミラー画像を合成する。
【0087】
また、第2の実施形態に係る画像処理装置は、背景画像生成部が、撮像部により撮像された車両の前方画像を、任意の視点位置へ視点変換した視点変換画像を背景画像とする。
【0088】
したがって、第2の実施形態に係る画像処理装置によれば、電子ミラーとして機能する表示部の表示領域を、違和感なく運転者に電子ミラーとして認知させることができる。
【0089】
ところで、第1または第2の実施形態に係る情報表示システム1,1’は、
図9に一例として示す構成のコンピュータ600で実現することができる。
図9は、実施形態に係る情報表示システム1,1’の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【0090】
コンピュータ600は、CPU(Central Processing Unit)610と、ROM(Read Only Memory)620と、RAM(Random Access Memory)630と、HDD(Hard Disk Drive)640とを備える。また、コンピュータ600は、メディアインターフェイス(I/F)650と、通信インターフェイス(I/F)660と、入出力インターフェイス(I/F)670とを備える。
【0091】
なお、コンピュータ600は、SSD(Solid State Drive)を備え、かかるSSDがHDD640の一部または全ての機能を実行するようにしてもよい。また、HDD640に代えてSSDを設けることとしてもよい。
【0092】
CPU610は、ROM620およびHDD640の少なくとも一方に格納されるプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM620は、コンピュータ600の起動時にCPU610によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ600のハードウェアに依存するプログラムなどを格納する。HDD640は、CPU610によって実行されるプログラムおよびかかるプログラムによって使用されるデータ等を格納する。
【0093】
メディアI/F650は、記憶媒体680に格納されたプログラムやデータを読み取り、RAM630を介してCPU610に提供する。CPU610は、かかるプログラムを、メディアI/F650を介して記憶媒体680からRAM630上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。あるいは、CPU610は、かかるデータを用いてプログラムを実行する。記憶媒体680は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)などの光磁気記録媒体やSDカード、USBメモリなどである。
【0094】
通信I/F660は、ネットワーク690を介して他の機器からデータを受信してCPU610に送り、CPU610が生成したデータを、ネットワーク690を介して他の機器へ送信する。あるいは、通信I/F660は、ネットワーク690を介して他の機器からプログラムを受信してCPU610に送り、CPU610がかかるプログラムを実行する。
【0095】
CPU610は、入出力I/F670を介して、ヘッドアップディスプレイ等の表示部4といった出力部、キーボードやマウス、ボタン等の操作部2といった入力部を制御する。CPU610は、入出力I/F670を介して、入力部からデータを取得する。また、CPU610は、生成したデータを入出力I/F670を介して表示部4や出力部に出力する。
【0096】
例えば、コンピュータ600が情報表示システム1として機能する場合、コンピュータ600のCPU610は、RAM630上にロードされたプログラムを実行することにより、設定部11aと、バックミラー画像生成部11bと、背景画像生成部11c,11c’と、画像合成部11dとを含む画像処理装置10,10’の制御部11,11’および表示制御部3の各機能を実現する。
【0097】
コンピュータ600のCPU610は、例えばこれらのプログラムを記憶媒体680から読み取って実行するが、他の例として、他の装置からネットワーク690を介してこれらのプログラムを取得してもよい。また、HDD640は、記憶部12が記憶する情報を記憶することができる。
【0098】
ところで、上述した実施形態では、電子ミラー画像中に、実際のバックミラーの外枠を模した外枠画像は含まれない場合を例示したが、かかる外枠画像を含むこととしてもよい。
【0099】
かかる場合、バックミラー画像生成部は、実際のバックミラーの外枠を模した外枠画像をさらに生成し、この外枠画像によってバックミラー画像の周囲を囲み、画像合成部は、背景画像の内側に外枠画像およびバックミラー画像が配置されるように背景画像、外枠画像およびバックミラー画像を合成すればよい。
【0100】
また、上述した実施形態では、主にドアミラーを電子ミラーとする場合を例に挙げたが、サイドアンダーミラーやルームミラーを電子ミラーとする場合にも、本実施形態は適用が可能である。
【0101】
また、上述した実施形態では、背景画像の流れ方向が、少なくとも運転者に対し、車両の移動方向に対して相対的に流れる景色の流れ方向を想起させるものである場合を例に挙げた。しかし、実際のバックミラーを運転者が視野に捉える場合において、車両の移動方向に関わらず、鏡像の周囲に鏡像の周囲とは異なる流れ方向で流れる背景が存在するだけでも、単に鏡像のみを視認する場合に比べて、運転者がバックミラーであると認知できる可能性は高い。
【0102】
したがって、背景画像は、その流れ方向が車両の移動方向に関わらずランダムなパターンであって、例えば幾何学模様がバックミラー画像の周囲を乱舞するようなものであってもよい。
【0103】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。