(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らの知見によれば、煙突の上端開口付近から放射される騒音には、2種類のものがある。
そのうち第1の騒音は、煙突内を伝播してきた騒音であり、この種の騒音は一定の周波数を有する。この音波が煙突の上端開口から放出されると、地上の人々まで騒音として伝播する。
第2の騒音は、煙突の上端開口から流出する流体に起因する騒音である。煙突の上端開口から流出した流体は、上端開口の上方に、圧力が不規則に変動する領域(圧力変動不規則領域)を形成する。この圧力変動不規則領域の内部では安定な音波は形成されないが、この圧力変動不規則領域の外縁にて、外方に向かう音波が形成される。この音波が地上の人々まで騒音として伝播する。第2の騒音は、一般的に、第1の騒音よりも広い周波数分布を有する。
【0008】
ここで、非特許文献1が開示するダクト消音制御装置は、ダクト内を伝播する第1の騒音の低減には有効であるが、ダクトから流出した後に流体が形成する第2の騒音の低減には有効ではない。
また、特許文献1が開示する騒音低減装置に適用された音響管や共鳴器は、特定の周波数を有する音波の低減に優れており、煙突内を伝播してきた特定の周波数を有する第1の騒音の低減には有効であると考えられるが、周波数分布が広い第2の騒音には有効ではない。また、第2の騒音の周波数分布は、流体の流れによって規定されるため、正確に把握することが容易ではない。
一方、特許文献2が開示する能動遮音壁は、煙突の騒音を低減するためのものではなく、防音壁の上端よりも下方へ伝播する騒音の相殺については言及していない。
【0009】
そもそも、非特許文献1、特許文献1及び特許文献2は、煙突の上端開口から流出した流体によって上端開口の上方に圧力変動が不規則な領域が形成され、この領域の外縁で、煙突内を伝播してきた第1の騒音とは別に、第2の騒音が形成されることについて何ら言及していない。
上記事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、煙突の上端開口から流出した流体によって形成されて放射される騒音を、周波数にかかわらずに低減可能な煙突騒音低減装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る煙突騒音低減装置は、
煙突の上端開口から前記上端開口の径方向にて距離をあけて配置されるとともに、前記径方向と交差する水平方向に延在する回折部と、
前記回折部から下方に向けて延在する遮音部と
、
前記遮音部の上端と下端との間で前記煙突から前記遮音部に延びて前記遮音部を支持する支持部と
を備え
、
前記遮音部の下端が開口する。
【0011】
上記構成(1)によれば、回折部が、煙突の上端開口から流出した流体によって形成される圧力変動の不規則な領域(圧力変動不規則領域)から離れて配置されているので、該領域の外縁で形成されて伝播してくる音波(騒音波)を確実に回折させることができる。回折波の音圧は、直進する騒音波Nの音圧よりも低くなるので、煙突の上端開口から地上に届く騒音を、周波数にかかわらずに低減することができる。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記構成(1)において、
前記回折部は、前記煙突の周方向にて前記煙突の上端開口を全周に渡って囲むように配置されている。
上記構成(2)では、回折部は、煙突の周方向にて煙突の上端開口を全周に渡って囲むように配置されているので、煙突の周囲全域に渡って、煙突の上端開口から地上に届く騒音を周波数にかかわらずに低減することができる。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では、上記構成(1)において、
前記回折部は、前記煙突の周方向にて前記煙突の上端開口の一部とのみ対向するように配置されている。
上記構成(3)では、煙突の上端開口からみて回折部が配置された方向にて、煙突の上端開口から地上に届く騒音を周波数にかかわらずに低減することができる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、上記構成(3)において、
前記回折部は、前記煙突の周方向にて回転可能である。
上記構成(4)では、回折部の位置を煙突の周りでの回転により変化させることで、任意の方向にて、煙突の上端開口から地上に届く騒音を周波数にかかわらずに低減することができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記構成(3)又は(4)において、
前記煙突の周方向での前記回折部の長さは可変である。
上記構成(5)では、煙突の周方向での回折部の長さを変化させることで、煙突の周方向にて任意の範囲にて、煙突の上端開口から地上に届く騒音を周波数にかかわらずに低減することができる。
【0016】
(6)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(5)の何れか一つにおいて、
前記煙突の上端開口と前記回折部との間に設けられる前記距離は可変である。
大まかに言えば、騒音波は圧力変動不規則領域の外縁で形成されるけれども、周波数によって形成される位置、即ち煙突の上端開口からの距離、が異なる。これを利用して、上記構成(6)では、煙突の上端開口と回折部との間に設けられる距離を変化させることで、低減される騒音波の周波数を変化させることができ、煙突騒音低減装置に要求される周波数特性を容易に実現することができる。
【0017】
(7)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(6)の何れか一つにおいて、
前記回折部の上下方向での位置が可変である。
煙突の上端開口の周辺では、風の流れによって、騒音波の伝播方向が曲げられることがある。この点、上記構成(7)では、回折部の上下方向の位置が可変であり、騒音波の伝播方向に応じて回折部の高さを調節することができ、地上に届く騒音を上空の風の流れにかかわらずに低減することができる。
【0018】
(8)幾つかの実施形態では、上記構成(7)において、
前記回折部は、上下方向にて、前記煙突の上端開口よりも上方に配置可能である。
煙突の上端開口の周辺では、風の流れによって、騒音波の伝播方向が曲げられることがある。このため、煙突の上端開口と回折部の高さが同じであると、騒音波が回折せずに回折部を超えて地上まで伝播することがある。この点、上記構成(8)では、煙突の上端開口よりも上方に回折部を配置することにより、騒音波が回折せずに回折部を超えることを阻止することができ、地上に届く騒音を上空の風の流れにかかわらずに低減することができる。
【0019】
(9)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(8)において、
前記遮音部は、上下方向にて可変の長さを有する。
上記構成(9)では、遮音部の上下方向での長さを調整することにより、遮音部によって騒音波の伝播を直接的に遮断し、地上に届く騒音を周波数にかかわらずにより一層低減することができる。
【0020】
(10)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(9)の何れか一つにおいて、
前記煙突と前記遮音部との間の距離が可変である。
上記構成(10)では、遮音部と煙突との間の距離を短くすることにより、煙突と遮音部との間の隙間での騒音波の伝播を遮り、地上に届く騒音を周波数にかかわらずにより一層低減することができる。
【0021】
(11)幾つかの実施形態では、上記構成(10)において、
前記遮音部は、前記遮音部の下端側と前記煙突との間の距離が変化するように揺動可能である。
上記構成(11)では、遮音部の下端側と煙突との間の距離が短くなるように遮音部を揺動させることにより、煙突と遮音部との間の隙間での騒音波の伝播を遮り、地上に届く騒音を周波数にかかわらずにより一層低減することができる。
【0022】
(12)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(11)の何れか一つにおいて、
前記遮音部と前記煙突との間に配置される吸音部を更に備える。
上記構成(12)では、吸音部によって、煙突と遮音部との間の隙間を伝播する騒音波を低減させることができ、地上に届く騒音を周波数にかかわらずにより一層低減することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、煙突の上端開口から流出した流体によって形成されて放射される騒音を、周波数にかかわらずに低減可能な煙突騒音低減装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る煙突騒音低減装置1(1a)を適用した、ガスタービン発電システム2の概略的な構成を示している。ガスタービン発電システム2は、ガスタービン3、発電機4、排ガス処理装置6、及び、煙突8を備え、煙突8に煙突騒音低減装置1が適用されている。
ガスタービン3は、圧縮機10、燃焼器12、及び、タービン14を有し、圧縮機10は、タービン14が出力する動力の一部を利用して空気を圧縮可能である。燃焼器12は、圧縮機10によって圧縮された空気を用いて燃料を燃焼させ、高温高圧の燃焼ガス(排ガス)を発生させる。燃焼ガスのエネルギは、タービン14で動力に変換され、この動力によって発電機4が作動させられる。タービン14から排出された排ガスは、排ガス処理装置6で浄化され、その後、煙突8を通じて大気中に放出される。
【0028】
なお、排ガス処理装置6は、排ガスを浄化できるものであれば特に限定されないが、例えば、排熱回収ボイラを用いてもよい。この場合、排熱回収ボイラにて得られた蒸気で蒸気タービンを作動させ、蒸気タービンにより発電機4又は他の発電機を作動させてもよい。
【0029】
図2は、煙突8の上端開口8a側とともに、煙突騒音低減装置1(1a)の断面を概略的に示す図である。
図3は、煙突8とともに煙突騒音低減装置1(1a)を概略的に示す平面図であり、
図2における煙突騒音低減装置1(1a)の断面は、
図3中のII―II線に沿っている。
図4は、煙突騒音低減装置1(1a〜1l)の作用効果を説明するための概略図である。
【0030】
図5は、煙突8とともに、他の実施形態に係る煙突騒音低減装置1(1b)の概略的な構成を示す平面図である。
図6は、煙突8の上端開口8a側とともに、煙突騒音低減装置1(1c)の断面を概略的に示す図である。
図7〜
図10は、煙突8とともに、他の実施形態に係る煙突騒音低減装置1(1d,1e,1f,1g)の概略的な構成をそれぞれ示す平面図である。
図11は、煙突8の上端開口8a側とともに、
図10中のXI−XI線に沿って、煙突騒音低減装置1(1g)の断面を概略的に示す図である。
図12及び
図13は、煙突8とともに、煙突騒音低減装置1(1h)の概略的な構成をそれぞれ示す平面図である。
図14は、煙突8の上端開口8a側とともに、
図12中のXIV−XIV線に沿って、煙突騒音低減装置1(1h)の断面を概略的に示す図である。
図15〜
図19は、煙突8の上端開口8a側とともに、他の実施形態に係る煙突騒音低減装置1(1i,1j,1k,1l)の断面を概略的にそれぞれ示す図である。
【0031】
図2〜
図19に示したように、煙突騒音低減装置1(1a〜1l)は、それぞれ、回折部20と、遮音部21と、を備えている。
回折部20は、煙突8の上端開口8aから、上端開口8aの径方向(煙突8の径方向)にて距離をあけて配置されるとともに、上端開口8aの径方向と交差する水平方向に延在している。
遮音部21は、回折部20から下方に向けて延在している。
【0032】
ここで、本発明者らの知見によれば、煙突8の上端開口8a付近から放射される騒音には、2種類のものがある。
そのうち第1の騒音は、煙突8内を伝播してきた騒音であり、この種の騒音は一定の周波数を有する。この音波が煙突8の上端開口8aから放出されると、地上の人々まで騒音として伝播する。
【0033】
第2の騒音は、煙突8の上端開口8aから流出する流体に起因する騒音である。煙突8の上端開口8aから流出した流体は、
図4に示したように、上端開口8aの上方に圧力が不規則に変動する領域(圧力変動不規則領域)Aを形成する。この圧力変動不規則領域Aの内部では安定な音波は形成されないが、この圧力変動不規則領域Aの外縁にて、外方に向かう音波(騒音波N)が形成される。この音波が地上の人々まで騒音として伝播する。この種の第2の騒音は、一般的に、第1の騒音よりも広い周波数分布を有する。
【0034】
そこで、煙突騒音低減装置1(1a〜1l)では、回折部20は、煙突8の上端開口8aから流出する流体によって煙突8の上端開口8aの上方に生じる圧力変動不規則領域Aから離れて配置され、圧力変動不規則領域Aの外縁にて形成されて回折部20に向かって伝播してくる騒音波Nを、遮音部21と協働して下方に向けて回折させるように構成されている。なお、遮音部21の機能は、回折部20の直下での騒音波Nの伝播を遮り、遮音部21の外側で回折波Ndを形成可能にすることである。回折部20の直下で騒音波Nの伝播を遮ることが可能であれば、遮音部21の構成は特に限定されることはない。
【0035】
上記構成を有する煙突騒音低減装置1(1a〜1l)によれば、騒音波Nが回折部20で回折させられる。回折波Ndの音圧は、直進する騒音波Nの音圧よりも低くなるので、煙突8の上端開口8aから地上に届く騒音を、周波数にかかわらずに低減することができる。
【0036】
幾つかの実施形態では、回折部20は、煙突8の上端開口8aの外縁から水平方向にて200mm以上2000mm以下の距離Lに配置される(
図2参照)。
【0037】
幾つかの実施形態では、遮音部21は、
図1〜
図19にそれぞれ示したように、少なくとも1つの壁50によって構成される。壁50は、例えば、煙突8に取り付けられた少なくとも1つの支持部材52によって支持される。
【0038】
幾つかの実施形態では、
図1〜
図19にそれぞれ示したように、壁50の上端縁が回折部20を構成している。ただし、壁50の上に配置された部材が回折部を構成してもよい。つまり、回折部20は、壁50の一部であってもよいし、壁50とは異なる部材によって構成されていてもよい。
【0039】
幾つかの実施形態では、
図3及び
図5にそれぞれ示した煙突騒音低減装置1a,1bのように、回折部20は、煙突8の周方向にて煙突8の上端開口8aを全周に渡って囲むように配置されている。
煙突騒音低減装置1a,1bのように、回折部20が、煙突8の周方向にて煙突8の上端開口8aを全周に渡って囲むように配置されている場合、煙突8の周囲全域に渡って、煙突8の上端開口8aから地上に届く騒音を周波数にかかわらずに低減することができる。
【0040】
幾つかの実施形態では、
図3に示した煙突騒音低減装置1aのように、壁50は円筒形状の壁50aによって構成されている。幾つかの実施形態では、
図5に示した煙突騒音低減装置1bのように、壁50は、角筒形状の壁50bによって構成されている。幾つかの実施形態では、
図6に示した煙突騒音低減装置1cのように、壁50は、テーパ付きの筒形状の壁50cによって構成されている。また、壁50は楕円筒形状を有していてもよく、断面が四角形以外の多角形の角筒形状を有していてもよい。
なお、テーパ付きの筒形状の壁50cによれば、テーパが無い場合に比べて、壁50cの下端側にて、煙突8と遮音部21との間の隙間を狭くすることができる。これにより、煙突8と遮音部21との間の隙間における騒音波の伝播を遮り、地上に届く騒音を周波数にかかわらずにより一層低減することができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、回折部20は、煙突8の周方向に沿って連続的に延びている。なお、回折部20が連続的に延びているとは、回折部20に騒音波の波長程度の長さの不連続部、例えば切欠や隙間等、が存在する場合も含むものとする。騒音波の波長程度の長さの不連続部であれば、煙突騒音低減装置1の騒音低減特性に与える影響を無視することができる。
【0042】
幾つかの実施形態では、
図7〜
図10及び
図17にそれぞれ示した煙突騒音低減装置1d〜1g,1jのように、回折部20は、煙突8の周方向にて煙突8の上端開口8aの一部とのみ対向するように配置されている。
煙突騒音低減装置1d〜1g,1jのように、回折部20が、煙突8の周方向にて煙突8の上端開口8aの一部とのみ対向するように配置されている場合、回折部20が配置された方向にて、煙突8の上端開口8aから地上に届く騒音を周波数にかかわらずに低減することができる。
【0043】
幾つかの実施形態では、
図7、
図9、
図12及び
図13に示したように、回折部20は、それぞれ円弧上に配列される。この場合、壁50は、断面円弧形状の分割筒形状を有する少なくとも1つの壁50dによって構成される。
幾つかの実施形態では、
図8に示したように、回折部20は、直線上に配列される。この場合、壁50は、少なくとも1つの平坦な壁50eによって構成される。
【0044】
幾つかの実施形態では、
図9〜
図11にそれぞれ示した煙突騒音低減装置1f,1gのように、回折部20は、煙突8の周方向にて回転可能である。
煙突騒音低減装置1f,1gのように、回折部20が、煙突8の周方向にて回転可能である場合、回折部20の位置を回転により変化させることで、任意の方向にて、煙突8の上端開口8aから地上に届く騒音を周波数にかかわらずに低減することができる。
なお例えば、
図11に示したように、煙突8に対し回転機構54を介して支持部材52を取り付けることによって壁50(50d,50e)を回転可能にし、これにより、回折部20を、煙突8の周方向にて回転可能にすることができる。
【0045】
幾つかの実施形態では、
図10及び
図11に示した煙突騒音低減装置1gのように、煙突8の周方向での回折部20の長さ(全長)は可変である。
煙突騒音低減装置1gのように、煙突8の周方向での回折部20の長さが可変である場合、煙突8の周方向での回折部20の長さを変化させることで、煙突8の周方向にて任意の範囲にて、煙突8の上端開口8aから地上に届く騒音を周波数にかかわらずに低減することができる。
【0046】
なお例えば、半径の異なる2つの壁50(50d)のうち一方又は両方を、煙突8に対して回転機構54を介して取り付け、
図10に示したように2つの壁50(50d)のうち一方又は両方を回転させることで、回折部20の長さ(全長)を変化させることができる。
【0047】
幾つかの実施形態では、
図12〜
図14に示した煙突騒音低減装置1hのように、煙突8の上端開口8aと回折部20との間に設けられる距離は可変である。
大まかに言えば、
図4に示したように、騒音波Nは圧力変動不規則領域Aの外縁で形成されるけれども、周波数によって、騒音波Nの形成位置は異なる。これを利用して、煙突8の上端開口8aと回折部20との間に設けられる距離を変化させることで、低減される騒音波Nの周波数を変化させることができ、煙突騒音低減装置1に要求される周波数特性を容易に実現することができる。
【0048】
なお例えば、少なくとも1つの壁50(50d)を、
図14に示したように水平方向往復動機構56を介して支持部材52又は煙突8に取り付け、壁50(50d)を煙突8の径方向に移動させることで、煙突8の上端開口8aと回折部20の間の距離を変化させることができる。
【0049】
幾つかの実施形態では、
図12〜
図14に示した煙突騒音低減装置1hのように、煙突8と遮音部21との間の水平方向での距離は可変である。
上記構成によれば、煙突8と遮音部21との間の隙間を狭くすることにより、煙突8と遮音部21との間の隙間における騒音波の伝播を遮り、地上に届く騒音を周波数にかかわらずにより一層低減することができる。
【0050】
幾つかの実施形態では、
図15及び
図16に示した煙突騒音低減装置1iのように、回折部20の上下方向の位置は可変である。
煙突8の上端開口8aの周辺では、風の流れによって、騒音波の伝播方向が曲げられることがある。この点、回折部20の上下方向の位置が可変であれば、騒音波Nの伝播方向に応じて回折部20の高さを調節することができ、地上に届く騒音を上空の風の流れにかかわらずに低減することができる。
【0051】
なお例えば、少なくとも1つの壁50(50a,50b,50c,50d,50e)を、
図15及び
図16に示したように上下方向往復動機構58を介して支持部材52又は煙突8に取り付け、少なくとも1つの壁50(50a,50b,50c,50d,50e)を上下方向に移動させることで、回折部20の上下方向の位置を変化させることができる。
【0052】
幾つかの実施形態では、
図16に示した煙突騒音低減装置1iのように、回折部20は、上下方向にて、煙突8の上端開口8aよりも上方に配置可能である。
煙突8の上端開口8aの周辺では、風の流れによって、騒音波の伝播方向が曲げられることがある。このため、煙突8の上端開口8aと回折部20の高さが同じであると、騒音波が回折部20を回折せずに超えて地上まで伝播することがある。この点、煙突8の上端開口8aよりも上方に回折部20を配置することにより、騒音波が回折部20を回折せずに超えることを阻止することができ、地上に届く騒音を上空の風の流れにかかわらずに低減することができる。
【0053】
幾つかの実施形態では、
図15及び
図16に示した煙突騒音低減装置1iのように、遮音部21は上下方向にて可変の長さを有する。
遮音部21が上下方向にて可変の長さを有する場合、遮音部21の上下方向の長さを調整することにより、遮音部21によって騒音波の伝播を直接的に遮断し、地上に届く騒音を周波数にかかわらずにより一層低減することができる。
【0054】
なお例えば、以下の構成により、遮音部21の上下方向の長さを変化させることができる。まず、重なり合うように設けた複数の壁50(50a,50b,50c,50d,50e)によって遮音部21を構成する。そして、複数の壁50(50a,50b,50c,50d,50e)のうち少なくとも1つを、上下方向往復動機構58を介して支持部材52又は煙突8に取り付ける。このような構成によれば、
図19及び
図20に示したように、少なくとも1つの壁50(50a,50b,50c,50d,50e)を上下方向に移動させることで、遮音部21の上下方向の長さを変化させることができる。
【0055】
幾つかの実施形態では、
図17に示したように煙突騒音低減装置1jのように、遮音部21が、遮音部21の下端側と煙突8との間の距離が変化するように揺動可能である。
遮音部21の下端側と煙突8との間の距離が短くなるように遮音部21を揺動させることにより、煙突8と遮音部21との間の隙間での騒音波の伝播を遮り、地上に届く騒音を周波数にかかわらずにより一層低減することができる。
なお例えば、
図17に示したように、揺動機構60を介して連結された複数の壁50(50e)によって遮音部21を構成し、複数の壁50(50e)のうち下方の壁50(50e)を揺動させることによって、遮音部21の下端側と煙突8との間の距離を短くすることができる。
【0056】
幾つかの実施形態では、
図18に示した煙突騒音低減装置1kのように、煙突騒音低減装置1は、遮音部21と煙突8との間に配置される吸音部62を更に備える。
遮音部21と煙突8との間に吸音部62を配置することによって、煙突8と遮音部21の間の隙間を伝播する騒音波を低減させることができ、地上に届く騒音を周波数にかかわらずにより一層低減することができる。
【0057】
幾つかの実施形態では、吸音部62は、壁50(50a,50b,50c,50d,50e)に対し、壁50(50a,50b,50c,50d,50e)の内面の少なくとも一部を覆うように取り付けられる。
壁50(50a,50b,50c,50d,50e)の内面の少なくとも一部を覆うように吸音部62を取り付けることによって、遮音部21での騒音波の反射を抑制することができ、地上に届く騒音を周波数にかかわらずにより一層低減することができる。
なお例えば、吸音部62は、多孔板等の表面に凹凸を有する部材によって構成される。
【0058】
幾つかの実施形態では、
図19に示した煙突騒音低減装置1lのように、煙突8は、上端開口8aよりも下方に、上端開口8aよりも側方に突出した段部64を有し、遮音部21は段部64に直接的又は間接的に取り付けられている。
煙突8の段部64に遮音部21を取り付けることによって、簡単な構成にて、遮音部21を配置することができる。
なお例えば、段部64は、煙突8に取り付けられたサイレンサ66の外壁によって構成されている。当該サイレンサ66は、煙突8の内部と図示しない連通孔によって連通した空洞68を有し、煙突8の内部を伝播する特定周波数の音波を低減するように構成されている。
【0059】
幾つかの実施形態では、煙突8と遮音部21との間の隙間(空間)は、上部以外にも開口しており、音響管や共鳴器を構成していない。
【0060】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変更を加えた形態や、これらの形態を組み合わせた形態も含む。
例えば、煙突8及び上端開口8aの平面形状は特に限定されることはなく、円形状の外に、四角形状等であってもよい。なお、煙突8又は上端開口8aの平面形状が円形状ではない場合、煙突8又は上端開口8aの周方向とは、煙突8又は上端開口8aの軸線回りの方向をさすものとする。