特許第6618797号(P6618797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6618797-リトラクタ式墜落防止器具 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618797
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】リトラクタ式墜落防止器具
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20191202BHJP
【FI】
   A62B35/00 K
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-257819(P2015-257819)
(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公開番号】特開2017-113496(P2017-113496A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】505312730
【氏名又は名称】株式会社電力機材サービス
(73)【特許権者】
【識別番号】000139702
【氏名又は名称】株式会社安田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 好美
(72)【発明者】
【氏名】松本 慧
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−084347(JP,U)
【文献】 特開2001−149490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 1/00− 5/00
A62B 35/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体のケースのランヤード巻取り胴の回転を停止する機構部が見える位置に点検窓を一つ以上装備したリトラクタ式墜落防止器具であって、
ランヤードの金属製のワイヤ−ロープ又はベルトに電気的に接続され、接地リード線が接続可能な金属部分が前記ケースの前記点検窓とは異なる位置から露出するように設けられたリトラクタ式墜落防止器具。
【請求項2】
前記金属部分は、前記ラヤード巻取り胴の心棒を前記ケースの外まで出したボルトの部分である請求項1に記載のリトラクタ式墜落防止器具。
【請求項3】
前記ランヤードのワイヤーロープ、又は、ベルトの取付け、取りはずしが容易に実施可能な構造として、前記ランヤードの係留側の先端が回転可能な状態に、前記先端部の係留穴を貫通するボルトで前記ランヤード巻取り胴に係留した請求項1又は2に記載のリトラクタ式墜落防止器具。
【請求項4】
前記ランヤードのワイヤーロープ、又は、ベルトの取付け、取りはずしが容易に実施可能な構造として、前記ランヤードを全て引き出した状態で、前記ランヤード巻取り胴に発生する、使用中常に前記ランヤードを引き上げるための回転力を付与するバネによる回転力を回転固定治具により的確かつ簡単に静止させ、かつ、固定できるための構造を有する請求項に記載のリトラクタ式墜落防止器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リトラクタ式墜落防止器具、通称安全ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業者の墜落を防止する用具としてリトラクタ式墜落防止器具、通称安全ブロックが広く使われている。
【0003】
この器具は、内部に引出し自在なランヤードと呼ばれるワイヤーロープ等を巻き取った回転体(巻き胴)と、巻き胴が常にランヤードを巻き取る方向に回転力を与えるバネと、作業員が墜落してランヤードが急激に引き出された時に巻き胴の回転を止めて作業員の墜落を阻止する回転停止装置とを備えている。
【0004】
これらの装置の不具合は、作業員の負傷等を引き起こす可能性が有ることから、不良品の使用は絶対避けなければならない。
【0005】
現在、安全ブロックは数々のメーカから発売されているが、いずれも使用者による内部機構の自主点検は想定しておらず、もっぱらメーカによる数年に一回の分解細密点検で機能維持することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−149490
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
送電鉄塔の塗装工事に使用する安全ブロックには、次の課題がある。
【0008】
すなわち、第一の課題は、錆びた鉄粉等の付着、または、侵入である。塗装の前に既に発生している錆びを除去する必要が有り、ケレンと呼ばれる錆びた鉄粉を除去する作業を実施する。このケレンにより安全ブロックに錆びた鉄粉等が付着、または、侵入すると、鉄製部品の錆びの誘発や増長、回転部に入り込んで回転を阻害したりする恐れがある。
【0009】
第二の課題は、塗料の付着である。安全ブロックは塗装の対象物である鉄塔の部材に、作業の開始前に取付けて作業終了するまで放置される。このため、安全ブロックのワイヤーロープなどの一部部品が鉄塔部材表面の未乾燥状態の塗膜に接触したり、鉄塔部材表面の未乾燥状態の塗料の一部が重力で自然落下、すなわち、滴下したりして、安全ブロック本体やワイヤーロープ等に付着することは避けられない。
【0010】
内部機構まで塗料の付着した安全ブロックは、次の様な異常の発生が懸念される。一つは、ワイヤーロープ等に付着した塗料が未乾燥のままワイヤーロープが巻き胴に巻き取られ、そのまま乾燥することでワイヤーロープ等同士を固着させてしまい、繰出しがスムーズにいかない恐れがある。
【0011】
二つには、内部機構まで塗料が侵入した場合には、墜落を阻止する機構の適切かつ確実な動作を妨げる恐れがある。
【0012】
更に、第三の課題として、誘導電圧の処理が有る。送電鉄塔での作業では、安全ブロックの金属部への、送電状態の電線からの誘導電圧の発生が避けられない。特にワイヤーロープは長大になる事から、時には人体感知電流に近い電流を発生させることも考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するため、以下の安全ブロックを提供する。
【0014】
請求項1では、内部の機構に異常が発生していないか確認するための点検窓を一つ以上装備し、ランヤードの金属製のワイヤ−ロープ又はベルトに電気的に接続され、接地リード線が接続可能な金属部分が前記ケースの前記点検窓とは異なる位置から露出するように設けられたリトラクタ式墜落防止器具を提供した。点検窓は、1つに限らず複数個あってもよいし、カバー全体が透明でも良い。
【0015】
請求項では、前記点検窓に、透明の蓋、または、開閉・取り外し可能な蓋を装備した事を特徴とするリトラクタ式墜落防止器具を提供した。透明な蓋か、開閉・取り外し可能な蓋かは二者択一ではなく、透明な開閉・取り外し可能な蓋でも良い。
【0016】
請求項には、リトラクタ式墜落防止器具の金属部分を接地する場合に、接地リード線が容易に接続可能で、製造し易い構造とした、接地可能なリトラクタ式墜落防止器具を提供した。
【0017】
請求項には、ランヤードとして使用するワイヤーロープ、または、ベルトを交換する時に、ワイヤーロープ等の取りはずし、取り付けが容易に実施可能な構造として、ランヤードの先端が回転可能な状態に、先端部の係留穴を貫通するボルトで係留したリトラクタ式墜落防止器具を提供した。
【0018】
請求項には、ランヤードを全て引き出した状態で、ランヤード巻取り胴に発生する使用中常にランヤードを巻き上げるための回転力を付与するバネによる回転力を、的確かつ簡単に静止・固定させるための構造であることを特徴としたリトラクタ式墜落防止器具を提供した。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された発明によれば、塗料や錆びた鉄粉など異物が安全ブロックの内部に侵入しても、点検窓から確認できる。特に、透明な蓋による点検窓があれば工事現場で何時でも点検できるので、安全性の向上が期待できる。
【0020】
送電鉄塔の塗装工事は、送電線を送電状態のまま施工する場合があり、その場合はリトラクタ式墜落防止器具の金属部分、特に、金属製のワイヤーロープには送電線からの誘導現象による電圧が発生することがある。作業員が電流を感知すると驚いて二次災害を惹起する恐れもある事から、感知防止のためにリトラクタ式墜落防止器具の金属部分を、大地と接続状態にある鉄塔の部材に接続して接地する必要がある。このため、請求項の発明による接地リード線を容易に取付けることで作業員の安全を向上できる。
【0021】
請求項3、4の発明によれば、リトラクタ式墜落防止器具を完全に分解することなく、ランヤードのワイヤーロープ等を容易に交換できる。これは、ワイヤーロープ等に塗料が付着した時の対応として、一つは溶剤を使ってワイヤーロープ等から塗膜を除去する方法と、二つはワイヤーロープ等を取り換える方法が考えられるが、この取替作業の効率化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明で提供される安全ブロックの実施例を示す外観図であり、内部構造は非表示とした。
図2図2は、本発明で提供される安全ブロックの実施例の内、ワイヤーロープ等を取り替えし易い構造の例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の実施例であり、請求項1から請求項4までの特徴を有する安全ブロックの外観である。
【0024】
先ず、点検窓21は図のように、本体のケース1の正面から見て左下位置に丸型の窓を配置した。この位置は、もしもの時に作業員の落下を阻止するランヤード巻き胴の回転を停止する機構部が見える位置である。
【0025】
実施例では、表側に1か所のみ円形窓を配置したが、複数でも良いし、大きさや形、位置はさまざまな変化形が考えられる。
【0026】
次に、点検窓1の構造であるが、この実施例では透明の蓋を設置した。これにより、いついかなる状態、例えば高所作業で使用中の安全ブロックでも容易に内部の点検が可能となった。
【0027】
また、点検窓の蓋は、透明でなくてもなんら問題なく、開閉可能な、又は、取り外し可能な蓋でも良い。
【0028】
次に、接地リード線の取付けであるが、実施例では、ランヤード巻取り胴の心棒であるボルトをケースの外まで出し、接地リード線締め付けナットを追加上て、接地リード線の取付け端子22とした。
【0029】
送電線からの誘導が比較的大きく、かつ、作業員が接触する可能性がある金属部としてはランヤードのワイヤーロープが該当し、これを簡単かつ確実に接地できる取付け端子が実現できた。
【0030】
接地リード線は、安全ブロックを使用するユーザーの要求に基づく鉄塔側接続金具とリード線長さを確定して製作される。
【0031】
図2は、ワイヤーロープ等を取り替えし易い構造の例を示した。
【0032】
ワイヤーロープ2の末端はアイ加工され、ワイヤーロープ等巻き付け胴(胴の両端の鍔を含む)31にボルト32で係留される。
【0033】
ボルト32は、緩めたり、締め付けたりし易い形状と位置に配置される。
【0034】
ワイヤーロープ等を巻取り胴から全部引き出した状態にしないと、ワイヤーロープ等を交換できないが、この状態は、バネに回転力が最も蓄積された状態のため、巻取り胴の回転を静止・固定させる必要が有る。
このため、鍔に回転固定用の切欠き等の目印と治具当て構造体を兼ねた形状とし、回転固定治具のセットを確実にするものである。
【符号の説明】
【0035】
1 リトラクタ式墜落防止器具(安全ブロック)本体(内部非表示)
2 ランヤード(ワイヤーロープ、または、ベルト)
21 点検窓
22 接地リード線取付け端子
31 ランヤード巻取り胴(鍔付き)(内部部品のひとつ)
32 ランヤード係留用のボルト
33 ランヤード巻取り胴固定治具当て(切欠き)
図1
図2