特許第6618809号(P6618809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618809
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】二段過給システム
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/00 20060101AFI20191202BHJP
   F02B 37/013 20060101ALI20191202BHJP
   F02B 37/02 20060101ALI20191202BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20191202BHJP
   F02B 37/18 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   F02B37/00 500B
   F02B37/013
   F02B37/02 F
   F02B39/00 F
   F02B37/18 E
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-4034(P2016-4034)
(22)【出願日】2016年1月13日
(65)【公開番号】特開2017-125431(P2017-125431A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】堀内 裕史
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−140888(JP,A)
【文献】 実開平02−064725(JP,U)
【文献】 特開2012−140889(JP,A)
【文献】 特開2011−174425(JP,A)
【文献】 特開昭62−000625(JP,A)
【文献】 特開2011−231730(JP,A)
【文献】 特開2010−216365(JP,A)
【文献】 特開2007−154684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00
F02B 37/013
F02B 37/02
F02B 37/18
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから送出される排気によって高圧段タービンを作動させ且つ高圧段コンプレッサで圧縮した吸気をエンジンへ送給する高圧段ターボチャージャと、該高圧段ターボチャージャの高圧段タービンから送出される排気によって低圧段タービンを作動させ且つ低圧段コンプレッサで圧縮した吸気を前記高圧段コンプレッサへ送給する低圧段ターボチャージャとを備えた二段過給システムであって、高圧段タービンのハウジング内に、タービン車室を経由するメイン経路と、前記タービン車室を迂回するバイパス経路とを区画形成する一方、高圧段タービンの排気出口と低圧段タービンの排気入口とに同じ端面形状のフランジを夫々形成し、前記バイパス経路を開閉する流路切替装置を前記各フランジと同じ端面形状で形成して該各フランジの間に挟み且つ前記流路切替装置を前記各フランジと重ね合わせた状態で共締めしたことを特徴とする二段過給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二段過給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、過給システムのダウンサイジングやトルクアップを実現するために、小径の高圧段ターボチャージャを採用した二段過給システムが検討されており、この種の二段過給システムにおいては、図3に示す如く、エンジン1の排気マニホールド2から送出される排気Gにより高圧段タービン3を作動させ且つ高圧段コンプレッサ4で圧縮した吸気Aをエンジン1の吸気マニホールド5へ送給する高圧段ターボチャージャ6と、該高圧段ターボチャージャ6の高圧段タービン3から送出される排気Gにより低圧段タービン8を作動させ且つ低圧段コンプレッサ9で圧縮した吸気Aを前記高圧段コンプレッサ4へ送給する低圧段ターボチャージャ10とが備えられている。
【0003】
更に、前記低圧段ターボチャージャ10の低圧段コンプレッサ9の吐出側と前記高圧段ターボチャージャ6の高圧段コンプレッサ4の吸入側との間には、インタクーラ12が介装されており、前記高圧段コンプレッサ4の吐出側とエンジン1の吸気マニホールド5との間には、アフタクーラ13が介装されている。
【0004】
また、排気系の高圧段タービン3よりも上流側(具体的には排気マニホールド2)からアフタクーラ13よりも下流側(具体的には吸気マニホールド5)へ至るEGR配管14が設けられ、該EGR配管14には、排気系から分流した排気Gを冷却するEGRクーラ15と、吸気系へ還流すべき排気Gの流量を調整するEGRバルブ16とが設けられている。
【0005】
而して、斯かる二段過給システムにおいては、エンジン1が稼動状態である時に、排気マニホールド2から送出される排気Gが、高圧段タービン3へ流入して高圧段コンプレッサ4を駆動した後、低圧段タービン8へ流入して低圧段コンプレッサ9を駆動し、該低圧段コンプレッサ9に流入して圧縮された吸気Aは、インタクーラ12を経て高圧段コンプレッサ4に送給され、該高圧段コンプレッサ4で再び圧縮され、アフタクーラ13を経て吸気マニホールド5へ送給されるので、シリンダへの吸気Aの送給量が増加し、1サイクル当たりの燃料噴射量を多くすれば、エンジン1の出力を高めることができる。
【0006】
また、前記排気Gの一部は、排気マニホールド2からEGR配管14へ流入し、EGRクーラ15で冷却され且つEGRバルブ16で流量調整が行われた排気Gが、吸気Aと一緒に吸気マニホールド5へと送給され、これによりシリンダ内の燃焼温度の低下が図られてNOxの発生が低減される。
【0007】
ただし、排気Gの流量が大きい高速高負荷域(図4のグラフ中にクロスハッチングを付して示す運転領域)では、小径の高圧段ターボチャージャ6が過剰に回転して過給圧が必要以上に高まり、エンジン1の各気筒の最大筒内圧が制限値を超えて運転不可となってしまったり、過給圧が排気マニホールド2の圧力より高くなって排気Gが再循環できなくなったりする虞れがある。
【0008】
このため、高圧段タービン3を迂回するバイパス配管7を設けると共に、該バイパス配管7の途中にバイパスバルブ11を設け、該バイパスバルブ11を高速高負荷域で開けて適正な流量の排気Gのみ高圧段タービン3に流し、残りは高圧段タービン3を迂回させて低圧段タービン8へ導くようにしている。
【0009】
尚、前述の如き二段過給システムと関連する先行技術文献情報としては、本発明と同じ出願人による下記の特許文献1等が既に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012−77730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図5に斜視図で示している通り、前述の如き従来構造にあっては、排気マニホールド2(図3参照)の排気出口に二股状の分岐管17を装備し、排気Gをバイパス配管7と高圧段タービン3(図5では説明の便宜上から高圧段コンプレッサ4の図示を省略)とに振り分けられるようにしており、また、低圧段タービン8の排気入口には二股状の合流管18を装備し、高圧段タービン3から連絡管19を介して導いた排気Gと、高圧段タービン3を迂回させてバイパス配管7により導いた排気Gとを、バイパスバルブ11により選択的に低圧段タービン8に導入し得るようにしているが、このようにバイパス配管7や連絡管19を介在させなければならないことで配管構成が複雑化する結果、高圧段ターボチャージャ6と低圧段ターボチャージャ10のコンパクトなレイアウトが難しくなり、車両への搭載性が悪くなるという問題があった。
【0012】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなしたもので、高圧段ターボチャージャと低圧段ターボチャージャのコンパクトなレイアウトを実現して車両への搭載性を従来より大幅に向上し得る二段過給システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、エンジンから送出される排気によって高圧段タービンを作動させ且つ高圧段コンプレッサで圧縮した吸気をエンジンへ送給する高圧段ターボチャージャと、該高圧段ターボチャージャの高圧段タービンから送出される排気によって低圧段タービンを作動させ且つ低圧段コンプレッサで圧縮した吸気を前記高圧段コンプレッサへ送給する低圧段ターボチャージャとを備えた二段過給システムであって、高圧段タービンのハウジング内に、タービン車室を経由するメイン経路と、前記タービン車室を迂回するバイパス経路とを区画形成する一方、高圧段タービンの排気出口と低圧段タービンの排気入口とに同じ端面形状のフランジを夫々形成し、前記バイパス経路を開閉する流路切替装置を前記各フランジと同じ端面形状で形成して該各フランジの間に挟み且つ前記流路切替装置を前記各フランジと重ね合わせた状態で共締めしたことを特徴とするものである。
【0014】
而して、このようにすれば、高圧段タービンのハウジング内におけるバイパス経路を流路切替装置により開通させ、高圧段タービンのタービン車室を迂回させて排気を流すことが可能となるので、バイパス配管や連絡管、分岐管、合流管といった配管部品を不要として、高圧段タービンと低圧段タービンとの間における配管構成の大幅な簡素化を図り、高圧段タービンと低圧段タービンとを流路切替装置のみを挟んで近接配置することで高圧段ターボチャージャと低圧段ターボチャージャのコンパクトなレイアウトが実現されることになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の二段過給システムによれば、バイパス配管や連絡管、分岐管、合流管といった配管部品を不要として、高圧段タービンと低圧段タービンとの間における配管構成の大幅な簡素化を図ることができるので、高圧段タービンと低圧段タービンとを流路切替装置のみを挟んで近接配置して高圧段ターボチャージャと低圧段ターボチャージャのコンパクトなレイアウトを実現することができ、これにより車両への搭載性を従来より大幅に向上することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
図2図1のメイン経路とバイパス経路について模式的に示す概略図である。
図3】一般的な二段過給システムの一例を示す系統図である。
図4図3のバイパス配管を利用していた運転領域を示すグラフである。
図5】従来の二段過給システムの配管構成を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1及び図2は本発明を実施する形態の一例を示すもので、本形態例の二段過給システムにおいては、先に図3で説明した従来の二段過給システムと原理的に大きく相違するところはなく、高圧段タービン3と低圧段タービン8との間における配管構成を変更した点が特徴となっているので、図1及び図2では、高圧段タービン3と低圧段タービン8との間における配管構成を中心に説明しており、図1及び図2で図示を省略されている構成要件については図3を参照することとする。
【0020】
即ち、本形態例においては、図3で説明した従来の二段過給システムと同様に、エンジン1から送出される排気Gによって高圧段タービン3を作動させ且つ高圧段コンプレッサ4で圧縮した吸気A(図3参照)をエンジン1へ送給する高圧段ターボチャージャ6と、該高圧段ターボチャージャ6の高圧段タービン3から送出される排気Gによって低圧段タービン8を作動させ且つ低圧段コンプレッサ9で圧縮した吸気Aを前記高圧段コンプレッサ4へ送給する低圧段ターボチャージャ10とを備えた二段過給システムとなっている。
【0021】
ただし、高圧段タービン3のハウジング内に、タービン車室21を経由するメイン経路22と、前記タービン車室21を迂回するバイパス経路23とを区画形成し、高圧段タービン3の排気出口に、前記バイパス経路23を開閉する流路切替装置20を挟んで低圧段タービン8の排気入口を接続するようにしており、より具体的には、高圧段タービン3の排気出口と低圧段タービン8の排気入口とに同じ端面形状のフランジ24,25を夫々形成すると共に、該各フランジ24,25と同じ端面形状で流路切替装置20を形成し、前記各フランジ24,25と流路切替装置20とを重ね合わせた状態で共締めするようにしている。
【0022】
ここで、前記流路切替装置20には、高圧段タービン3の排気出口のフランジ24に開口するメイン経路22及びバイパス経路23と連続するようメイン経路22’及びバイパス経路23’が穿設されているが、このうちバイパス経路23’の方にはバタフライ式のバイパスバルブ26が内蔵されており、該バイパスバルブ26が図示しないアクチュエータにより開閉操作されるようにしてある。
【0023】
尚、図1に示している例においては、排気マニホールド2の排気出口を三口で開口した場合を例示しており、図1中の下段の二口が高圧段タービン3のハウジングにおけるメイン経路22に連通し、上段の一口が高圧段タービン3のハウジングにおけるバイパス経路23に連通するようになっている。
【0024】
而して、このようにすれば、高圧段タービン3のハウジング内におけるバイパス経路23を流路切替装置20により開通させ、高圧段タービン3のタービン車室21を迂回させて排気Gを流すことが可能となるので、バイパス配管7(図5参照)や連絡管19(図5参照)、分岐管17(図5参照)、合流管18(図5参照)といった配管部品を不要として、高圧段タービン3と低圧段タービン8との間における配管構成の大幅な簡素化を図り、高圧段タービン3と低圧段タービン8とを流路切替装置20のみを挟んで近接配置することで高圧段ターボチャージャ6と低圧段ターボチャージャ10のコンパクトなレイアウトが実現されることになる。
【0025】
従って、上記形態例によれば、バイパス配管7や連絡管19、分岐管17、合流管18といった配管部品を不要として、高圧段タービン3と低圧段タービン8との間における配管構成の大幅な簡素化を図ることができるので、高圧段タービン3と低圧段タービン8とを流路切替装置20のみを挟んで近接配置して高圧段ターボチャージャ6と低圧段ターボチャージャ10のコンパクトなレイアウトを実現することができ、これにより車両への搭載性を従来より大幅に向上することができる。
【0026】
尚、本発明の二段過給システムは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0027】
1 エンジン
3 高圧段タービン
4 高圧段コンプレッサ
6 高圧段ターボチャージャ
8 低圧段タービン
9 低圧段コンプレッサ
10 低圧段ターボチャージャ
20 流路切替装置
21 タービン車室
22 メイン経路
23 バイパス経路
24 フランジ
25 フランジ
G 排気
図1
図2
図3
図4
図5