特許第6618847号(P6618847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立GEニュークリア・エナジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6618847-多層地盤一体型建物の安全対策設備 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618847
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】多層地盤一体型建物の安全対策設備
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/04 20060101AFI20191202BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   E04H9/04
   E04H9/14 A
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-80958(P2016-80958)
(22)【出願日】2016年4月14日
(65)【公開番号】特開2017-190620(P2017-190620A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2018年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】廣田 豊
(72)【発明者】
【氏名】中島 誠治
(72)【発明者】
【氏名】若杉 健一
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−214866(JP,A)
【文献】 特開昭55−009121(JP,A)
【文献】 特開平06−026134(JP,A)
【文献】 特開平06−258482(JP,A)
【文献】 特開2014−089134(JP,A)
【文献】 特開昭55−162199(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0167708(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0007758(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/04 − 9/14
E02D 29/045
G21C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に一部が埋設されている安全建屋の上部を含む周囲を、少なくとも飛来物の衝突により安全機能が喪失しない層と衝撃を吸収する層を備えた複数層で覆っていることを特徴とする多層地盤一体型建物の安全対策設備。
【請求項2】
請求項1に記載の多層地盤一体型建物の安全対策設備において、
前記飛来物の衝突により安全機能が喪失しない層は、前記安全建屋の上部最外層に配置された貫通防止層であり、前記飛来物の衝突による衝撃を吸収する層は、前記安全建屋の上部を含む周囲に配置された衝撃吸収層であることを特徴とする多層地盤一体型建物の安全対策設備。
【請求項3】
請求項2に記載の多層地盤一体型建物の安全対策設備において、
前記衝撃吸収層の廻り或いは前記安全建屋の上部を含む周囲に、外部火災により安全機能が喪失しない不燃層が配置されていることを特徴とする多層地盤一体型建物の安全対策設備。
【請求項4】
請求項3に記載の多層地盤一体型建物の安全対策設備において、
前記貫通防止層は土、コンクリート、鉄板或いはライトサンドのいずれかから成り、前記衝撃吸収層はウレタンシート若しくは衝撃吸収ゲルのいずれかから成り、前記不燃層は土から成ることを特徴とする多層地盤一体型建物の安全対策設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層地盤一体型建物の安全対策設備に係り、例えば、原子力発電所において重大事故等を誘発させる可能性のある外部事象(地震、竜巻、火災、津波等)が発生した場合においても、重大事故の発生を抑制する機能を有した安全設備を備えている原子炉建屋等に好適な多層地盤一体型建物の安全対策設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、原子力発電所においては、重大事故発生時に対処するための設備(以下、安全設備という)を設置することが要求されている。
【0003】
この重大事故発生時に対処するための安全設備は、外部事象によって機能を喪失しないことが求められている。この要求に対する従来の一般的な対策として、例えば、特許文献1があり、この特許文献1には、外部事象に対して堅牢な構造物、即ち、外部飛来物からの衝撃に耐える壁厚で構築された原子炉建屋を半地下構造で構築し、その上方を覆うように屋根構造物を設けることが記載されている。
【0004】
一方、特許文献2には、敷地の岩盤が深く、高地震帯等の固有の特殊な立地条件がある場合であっても、施設の安全性と建設コストの合理化を図り得る原子炉建屋を提供するために、原子炉格納容器を収納する2基一体型の二次格納施設を原子炉建屋のほとんどか、或いは全体を地中に埋設することが記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、復水器を冷却する冷却タンク内の水量を内外水源に依存することにより削減し、耐震設計・配置設計に対する影響や機器配置に対する制約条件を緩和するために、地下に原子炉建屋を配置して、冷却タンク内の冷却水が枯渇したときは、地上の水源から冷却水を補給することが記載されている。
【0006】
また、特許文献4には、敷地面積の縮小、耐震性の向上、非常時の安全性の向上等を図ることができる原子炉を提供するために、圧力容器を収容する原子炉格納容器の外壁を上方に延長した直立円筒状のコンクリート製建屋に原子炉建屋を収容し、コンクリート製建屋の上端部のみを地上に露出させた状態で地中に埋設状態にし、地上部にクレーンを配置したことが記載されている。
【0007】
更に、特許文献5には、敷地面積の大幅な減少化や耐震性の向上、更には保守費用の削減や安全性の向上を図るために、原子炉建屋の屋上の高さを地表面の高さとほぼ一致させた完全地下構造であって、地上構造のタービン建屋をその屋上に設けて原子炉建屋を覆うようにしたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−252800号公報
【特許文献2】特開平09−145883号公報
【特許文献3】特開平08−248166号公報
【特許文献4】特開平06−258482号公報
【特許文献5】特開昭62−156594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した如く、原子力発電所においては、重大事故に対処するための安全設備を設置する必要があるが、この安全設備は、外部事象によって機能喪失しないことが求められているため、以下の(イ)、(ロ)、(ハ)の構造を有した構造物内に安全設備を設置する必要がある。
【0010】
即ち、(イ):外部火災により安全機能が喪失しない構造、(ロ):外部からの飛来物の衝突により機能が喪失しない構造、(ハ):外部からの飛来物の衝突時に発生する衝撃により機能が喪失しない構造である。
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載のような、外部事象に対して堅牢な構造物を設ける構造は、(イ)及び(ロ)に対する対策としては有効であったが、堅牢な構造物(建物)であるため衝撃が伝わりやすく、そのため、上記(ハ)に対しては対応できないという課題がある。
【0012】
また、特許文献2−5には、上記した課題に対する認識は全くないので、その解決策については記載されていない。
【0013】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、外部火災による安全機能及び外部からの飛来物の衝突による機能が喪失しないことは勿論、外部からの飛来物の衝突時に発生する衝撃による機能が喪失しない多層地盤一体型建物の安全対策設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の多層地盤一体型建物の安全対策設備は、上記目的を達成するために、地盤に一部が埋設されている安全建屋の上部を含む周囲を、少なくとも飛来物の衝突により安全機能が喪失しない層と衝撃を吸収する層を備えた複数層で覆っていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外部火災による安全機能及び外部からの飛来物の衝突による機能が喪失しないことは勿論、外部からの飛来物の衝突時に発生する衝撃による機能が喪失しない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の多層地盤一体型建物の安全対策設備の実施例1を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の多層地盤一体型建物の安全対策設備を説明する。
【実施例1】
【0018】
図1に、本発明の多層地盤一体型建物の安全対策設備の実施例1を示す。
【0019】
該図に示す如く、本発明の多層地盤一体型建物1の安全対策設備は、地盤である岩盤6に一部が埋設されている安全建屋(例えば、原子炉建屋等)2の上部を含む周囲を、少なくとも飛来物の衝突により安全機能が喪失しない層と衝撃を吸収する層を備えた複数層で覆っていることを特徴とする。
【0020】
即ち、飛来物の衝突により安全機能が喪失しない層は、安全建屋2の上部最外層に配置された貫通防止層5であり、飛来物の衝突による衝撃を吸収する層は、安全建屋2の上部を含む周囲に配置され、ウレタンシート若しくは衝撃吸収ゲルのいずれかから成る衝撃吸収層3であり、衝撃吸収層3の廻り或いは安全建屋2の上部を含む周囲に、外部火災により安全機能が喪失しない土からなる不燃層4が配置されている。
【0021】
更に詳述すると、安全建物2は、飛来物の衝突により生じる衝撃伝播により安全機能が喪失しないよう、衝撃吸収層3で覆い、また、森林火災等により外部火災が発生した場合においても、安全機能が喪失しないよう衝撃吸収層3の廻りを不燃層4で覆っているものである。
【0022】
なお、衝撃吸収層3と不燃層4の覆う順番については、事故発生確率等を加味し反対(下層に不燃層4、上層に衝撃吸収層3)にしてもよい。
【0023】
また、飛来物の衝突により安全機能が喪失しないよう表層に貫通防止層5を設置すると良い。この貫通防止層5は、土若しくはコンクリート、鉄板等が考えられるが、安全建物2への上部荷重を考慮し、軽量なもの、例えばライトサンド等を採用するのが望ましい。更に、飛来物による衝突および外部火災が同時に発生することも考慮し、貫通により他の層に影響を与えないよう貫通防止層5は表層に設置することが望ましい。
【0024】
このような本実施例の構成によれば、各々の外部事象に対する層を多層設置することで、従来、防護対策が十分であった外部事象(飛来物の衝撃および火災)に加え、課題であった衝撃に対しても十分に防護可能となる。
【0025】
従って、本実施例の構成とすることにより、外部火災による安全機能及び外部からの飛来物の衝突による機能が喪失しないことは勿論、外部からの飛来物の衝突時に発生する衝撃による機能が喪失しないという効果を得ることができる。
【0026】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成を置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1…多層地盤一体型建物、2…安全建物、3…衝撃吸収層、4…不燃層、5…貫通防止層、6…岩盤。
図1