(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るエンジン21及び2系統の燃料供給経路30,31を概略的に示す説明図である。
図2は、燃焼室110の周辺の構成を詳細に示す背面一部断面図である。
図3は、エンジン21の平面図である。
図4は、液体燃料供給経路を示す模式的な前方斜視図である。
【0015】
図1に示す本実施形態のエンジン(多気筒エンジン)21は、気体燃料を空気と混合させてから燃焼室に流入させる予混合燃焼方式と、液体燃料を燃焼室内に噴射して燃焼する拡散燃焼方式と、の何れにも対応可能な、いわゆるデュアルフューエルエンジンである。本実施形態のエンジン21は、図示しない船舶の推進兼発電機構の駆動源として、船舶の機関室の内底板上に、ベース台を介して据え付けられる。
【0016】
エンジン21の後端部からは、エンジン出力軸としてのクランク軸24が後方に向かって突出している。クランク軸24の一端には、図示しない減速機が動力伝達可能に連結される。この減速機を間に挟んで、船舶の図示しない推進軸が、クランク軸24と軸線を一致させるように配置される。推進軸の端部には、船舶の推進力を発生させるプロペラが取り付けられる。前記減速機はPTO軸を有しており、このPTO軸に、図示しない軸駆動発電機が動力伝達可能に連結される。
【0017】
この構成により、エンジン21の動力が減速機を介して、推進軸と軸駆動発電機とに分岐して伝達される。これにより、船舶の推進力を発生させるとともに、軸駆動発電機の駆動にて生じた電力が船舶内の電気系統に供給される。
【0018】
次に、エンジン21について、図面を参照して詳細に説明する。エンジン21は、上述したようにデュアルフューエルエンジンであり、天然ガス等の燃料ガスを空気に混合させて燃焼させる予混合燃焼方式と、重油等の液体燃料(燃料油)を拡散させて燃焼させる拡散燃焼方式と、の何れかを選択して駆動させることができる。
【0019】
以下の説明では、予混合燃焼方式による稼動モード(予混合燃焼モード)を「ガスモード」と、拡散燃焼方式による稼動モード(拡散燃焼モード)を「ディーゼルモード」と、それぞれ呼ぶ場合がある。ガスモードでは、天然ガスを利用することによる環境負荷物質(窒素酸化物、硫黄酸化物及び粒子状物質等)の低減を実現して環境規制への適合を容易にする一方、ディーゼルモードでは、高効率での稼動を実現することができる。
【0020】
また、以下では、減速機と接続される側を後側として、エンジン21の構成における前後左右の位置関係を説明する。従って、前後方向は、クランク軸24の軸線に平行な方向と言い換えることができ、左右方向は、クランク軸24の軸線に垂直な方向と言い換えることができる。ただし、この説明はエンジン21の向きを限定するものではなく、エンジン21は用途等に応じて様々な向きで設置することができる。
【0021】
エンジン21には、
図1に示すように、2系統の燃料供給経路30,31が接続されている。一方の燃料供給経路30には、液化天然ガス(LNG)を貯留するガス燃料タンク32が接続されるとともに、他方の燃料供給経路31には、船舶用ディーゼルオイル(MDO)を貯留する液体燃料タンク33が接続される。この構成で、一方の燃料供給経路30はエンジン21に燃料ガスを供給し、他方の燃料供給経路31はエンジン21に燃料油を供給する。
【0022】
燃料供給経路30には、上流側から順に、液化状態の気体燃料を貯蔵するガス燃料タンク32と、ガス燃料タンク32の液化燃料を気化させる気化装置34と、気化装置34からエンジン21への燃料ガスの供給量を調整するガスバルブユニット35と、が配置されている。
【0023】
エンジン21は、
図2及び
図4に示すように、シリンダブロック25の上にシリンダヘッド26を組み付けて構成される直列多気筒エンジンである。シリンダブロック25の下部には、前記クランク軸24が、
図4に示すように軸線24cを前後方向に向けた状態で回転可能に支持されている。
【0024】
シリンダブロック25には、複数(本実施形態では、6つ)の気筒がクランク軸24の軸線に沿うように一列(直列)に並べて形成される。各気筒には、
図2に示すように、ピストン78が上下方向にスライド可能に収容される。このピストン78は、図示しないロッドを介して前記クランク軸24に連結される。
【0025】
図3に示すように、それぞれの気筒を上側から覆うように、シリンダブロック25には6つのシリンダヘッド26が取り付けられる。シリンダヘッド26はそれぞれの気筒に対して設けられ、ヘッドボルト99を用いてシリンダブロック25に固定される。
図2に示すように、それぞれの気筒において、ピストン78の上面とシリンダヘッド26で取り囲まれた空間に燃焼室110が形成される。
【0026】
複数のヘッドカバー40は、
図3に示すように、各気筒に対応するように、クランク軸24の軸線24cの方向(前後方向)に沿って一列に並んでシリンダヘッド26上に配置されている。
図2に示すように、それぞれのヘッドカバー40の内部には、吸気弁及び排気弁を動作させためのプッシュロッド及びロッカーアーム等からなる動弁機構が収容されている。前記吸気弁を開いた状態では、燃焼室110に吸気マニホールド67からの吸気を取り込むことができる。前記排気弁を開いた状態では、燃焼室110からの排気を排気マニホールド44に排出することができる。
【0027】
図2に示すように、ヘッドカバー40の右側の近傍には、後述するパイロット燃料噴射弁82の上端部が配置されている。このパイロット燃料噴射弁82は、シリンダヘッド26の内部に挿入され、燃焼室110に向かって斜下方に延びている。
【0028】
図2に示すように、シリンダヘッド26の右側には、ガスモード(予混合燃焼モード)での稼動時に各気筒の燃焼室110にガス燃料を分配して供給するためのガスマニホールド41が設けられる。ガスマニホールド41は、シリンダヘッド26の右側面に沿って前後方向に延びるように配置される。ガスマニホールド41には、各気筒の燃焼室110に対応する6つのガス枝管41aが接続され、当該ガス枝管41aの先端部には、
図2に示すように、ガス燃料を噴射するためのガスインジェクタ98が設けられる。ガスインジェクタ98の先端部は、気筒に対応してシリンダヘッド26の内部に形成される吸気枝管67aに臨んでいる。ガスインジェクタ98からガス燃料を噴射することにより、吸気マニホールド67の吸気枝管67aにガス燃料を供給することができる。
【0029】
図2及び
図4に示すように、シリンダブロック25の左側には、ディーゼルモード(拡散燃焼モード)での稼動時に各気筒の燃焼室110に液体燃料を分配して供給するための液体燃料供給用レール配管42が設けられる。液体燃料供給用レール配管42は、シリンダブロック25の左側面に沿って前後方向に延びるように配置されている。液体燃料供給用レール配管42に供給された液体燃料は、各気筒に対応して設けられた燃料供給ポンプ89に分配して供給される。それぞれの気筒には、
図2に示すように、燃料供給ポンプ89から供給された液体燃料を噴射するメイン燃料噴射弁79が配置されている。メイン燃料噴射弁79はシリンダヘッド26に上方から垂直に差し込まれるように配置され、その上端部はヘッドカバー40の内部に配置され、下端部は気筒の燃焼室110に臨んでいる。燃料供給ポンプ89とメイン燃料噴射弁79とは、シリンダヘッド26に形成された液体燃料供給路106を介して接続される。
【0030】
液体燃料供給用レール配管42の下方近傍の位置に、それぞれの燃料供給ポンプ89から戻された余分な燃料を集めるための液体燃料戻し集約管48が設けられる。液体燃料戻し集約管48は、液体燃料供給用レール配管42と平行に配置され、燃料供給ポンプ89に接続される。液体燃料戻し集約管48の端部には、液体燃料を液体燃料タンク33まで戻すための燃料戻し管115が接続される。
【0031】
図2及び
図4に示すように、シリンダブロック25の左側であって、液体燃料供給用レール配管42よりも上方の位置には、ガスモード(予混合燃焼モード)での燃焼時にガス燃料着火を目的として各気筒の燃焼室110にパイロット燃料を分配して供給するためのパイロット燃料供給用レール配管47が設けられる。パイロット燃料供給用レール配管47は、シリンダブロック25の左側面に沿って前後方向に延びるように配置されている。それぞれの気筒には、
図2及び
図4に示すように、パイロット燃料供給用レール配管47から供給された液体燃料(パイロット燃料)を噴射するパイロット燃料噴射弁82が配置されている。パイロット燃料噴射弁82はシリンダヘッド26に上方から斜めに差し込まれるように配置され、その上端部はヘッドカバー40のすぐ右脇の位置に配置され、下端部は気筒の燃焼室110に臨んでいる。
図4に示すように、それぞれの気筒に対応して、パイロット燃料枝管109がパイロット燃料供給用レール配管47から分岐するように設けられている。パイロット燃料枝管109は、並べて配置されたヘッドカバー40の間を通過するように配置され、パイロット燃料噴射弁82の上端部に接続される。パイロット燃料枝管109は、漏れた燃料の飛散を防止するための枝管カバー105によって覆われている。
【0032】
図2及び
図4に示すように、シリンダブロック25及びシリンダヘッド26で構成されるエンジン21の左側面の上部には段差が形成されており、この段差の部分に、パイロット燃料供給用レール配管47と液体燃料供給用レール配管42と燃料供給ポンプ89とが配置されている。シリンダブロック25及びシリンダヘッド26には、この段差部分を覆うようにサイドカバー43が取り付けられている。パイロット燃料供給用レール配管47、液体燃料供給用レール配管42、及び燃料供給ポンプ89は、サイドカバー43で被覆されている。
【0033】
図3等に示すように、燃料供給ポンプ89が並べられる方向の一端部の近傍には、燃料供給ポンプ89における燃料噴射量を調整するための調速機201が配置されている。この調速機201は、サイドカバー43の内部において液体燃料供給用レール配管42等と平行に配置されるコントロール伝達軸202を回転させることができる。このコントロール伝達軸202は、気筒の数だけ備えられている燃料供給ポンプ89が有するコントロールラックに連結されている。調速機201は、コントロール伝達軸202を回転させることで、燃料供給ポンプ89の前記コントロールラックを変位させ、これにより燃料供給ポンプ89の圧送量(メイン燃料噴射弁79の噴射量)を変更することができる。
【0034】
図2に示すように、シリンダヘッド26の右上方であって、ガスマニホールド41よりも上方の位置には、各気筒の燃焼室110での燃焼により発生した排気を集めて外部に排出するための排気マニホールド44が、ガスマニホールド41と平行に配置される。排気マニホールド44の外周は、遮熱カバー45で覆われている。
図2に示すように、排気マニホールド44には各気筒に対応する排気枝管44aが接続されている。この排気枝管44aは、各気筒の燃焼室110に通じている。
【0035】
シリンダブロック25の内部の右側寄りには、外部からの空気(吸気)を各気筒の燃焼室110に分配して供給するための吸気マニホールド67が、ガスマニホールド41と平行に配置される。
図2に示すように、吸気マニホールド67から分岐するように6つの吸気枝管67aがシリンダヘッド26の内部に形成され、それぞれの吸気枝管67aは燃焼室110に通じている。
【0036】
この構成により、ディーゼルモード(拡散燃焼モード)での稼動時には、各気筒に吸気マニホールド67から供給された空気がピストン78のスライドにより圧縮された適宜のタイミングで、メイン燃料噴射弁79から燃焼室110内に適宜の量の液体燃料が噴射されるようになっている。液体燃料を燃焼室110内に噴射することにより、ピストン78は、燃焼室110で生じる爆発から得られる推進力によって気筒内を往復運動し、ピストン78の往復運動がロッドを介してクランク軸24の回転運動に変換されて動力が得られる。
【0037】
一方、ガスモード(予混合燃焼方式)での稼動時には、ガスマニホールド41からのガス燃料がガスインジェクタ98から吸気枝管67a内で噴射されることにより、吸気マニホールド67から供給された空気と、ガス燃料とが混合される。気筒に導入された空気とガス燃料の混合気がピストン78のスライドにより圧縮された適宜のタイミングで、パイロット燃料噴射弁82から燃焼室110内に少量のパイロット燃料が噴射されることにより、ガス燃料に着火される。ピストン78は、燃焼室110での爆発により得られる推進力によって気筒内を往復運動し、ピストン78の往復運動がロッドを介してクランク軸24の回転運動に変換されて動力が得られる。
【0038】
ディーゼルモードで稼動した場合にも、ガスモードで稼動した場合にも、燃焼により生じた排気はピストン78の運動により気筒から押し出され、排気マニホールド44に集められた後、外部に排出される。
【0039】
エンジン21の前端面(正面)には、クランク軸24の前端部分を取り囲むようにして、燃料油ポンプ56と、図略の冷却水ポンプと、潤滑油ポンプと、がそれぞれ設けられている。クランク軸24からの回転動力が適宜伝達されることにより、クランク軸24の外周側に設けられた冷却水ポンプ、潤滑油ポンプ、及び燃料油ポンプ56がそれぞれ駆動される。
【0040】
図4に示す燃料油ポンプ56は、回転駆動されることにより、
図1の液体燃料タンク33から供給される燃料油(液体燃料)を、パイロット燃料供給用主管107を経由して、パイロット燃料供給用レール配管47に送る。液体燃料タンク33から燃料油ポンプ56への燃料経路の中途部には、燃料油を濾過するパイロット燃料用フィルタが設けられている。
【0041】
また、(燃料油ポンプ56とは別の)図略の燃料油ポンプがクランク軸24の回転に伴って回転駆動されることにより、当該燃料ポンプは液体燃料タンク33からの燃料油を吸い込んで、
図4等に示す液体燃料供給用主管108を経由して液体燃料供給用レール配管42に送る。液体燃料タンク33から液体燃料供給用レール配管42への燃料油の供給経路の中途部には、燃料油を濾過するメイン燃料用フィルタが設けられている。
【0042】
図4に示すように、パイロット燃料供給用主管107、液体燃料供給用主管108及び燃料戻し管115は、シリンダブロック25の左側面に沿うように、シリンダブロック25のすぐ前方に配置されている。パイロット燃料供給用主管107、液体燃料供給用主管108及び燃料戻し管115は、シリンダブロック25の前端面から左方に突出するように設けられた複数のクランプ部材111を介して、シリンダブロック25の左側面に沿って上下方向に延びるように配置される。
【0043】
シリンダブロック25の後方の右側寄りには、エンジン21の各部の動作を制御するエンジン制御装置(制御装置)73が図略の支持部材を介して設けられている。このエンジン制御装置73は、
図6に示すように、エンジン21の各部に設けられたセンサ(圧力センサ、トルクセンサ等)からデータを取得して、エンジン21の各種動作(燃料の噴射、流量調整弁の開度の変更等)を制御するように構成されている。
【0044】
次に、エンジン21における吸気及び排気のための構成について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、エンジン21の吸排気系統の構成を示す模式図である。
【0045】
図5に示すように、エンジン21において、6つの気筒が一列に並べて配置されている。それぞれの気筒は、吸気枝管67aを介して吸気マニホールド67と接続されるとともに、排気枝管44aを介して排気マニホールド44と接続されている。
【0046】
吸気マニホールド67は、エンジン21の外部に通じる吸気流路15と接続され、外部の空気をそれぞれの気筒に取り込むことができるようになっている。吸気流路15の中途には、過給機49のコンプレッサ49bと、インタークーラ51と、が配置されている。
【0047】
コンプレッサ49bとインタークーラ51の間には、吸気マニホールド67に供給される空気流量を調整するためのメインスロットルバルブ(メインスロットル弁)V1が設けられている。メインスロットルバルブV1は流量調整弁として構成されており、その開度をエンジン制御装置73からの電気信号によって制御可能に構成されている。
【0048】
吸気流路15には、インタークーラ51の空気出口側と、コンプレッサ49bの空気入口側と、を接続する吸気バイパス流路17が設けられている。コンプレッサ49bを通過した空気の一部は、この吸気バイパス流路17を経由して再循環される。吸気バイパス流路17には、当該吸気バイパス流路17を通過する空気の流量を調節するための吸気バイパス弁V2が設けられている。吸気バイパス弁V2は、メインスロットルバルブV1と同様に流量調整弁として構成されており、その開度をエンジン制御装置73からの電気信号によって制御可能に構成されている。吸気バイパス弁V2の弁開度を変更することにより、吸気マニホールド67に供給される空気流量を調整することができる。
【0049】
排気マニホールド44は、エンジン21の外部に通じる排気流路16と接続され、各気筒から排気された空気を外部に排出することができる。排気流路16の中途には、過給機49のタービン49aが配置されている。
【0050】
排気流路16には、排気マニホールド44の排気出口側と、タービン49aの排気出口側と、を接続する(タービン49aを迂回する)排気バイパス流路18が設けられている。排気マニホールド44から排気流路16に送られた排気の一部は、排気バイパス流路18を経由してタービン49aの排気出口側よりも下流に至った後、外部に排出される。排気バイパス流路18には、当該排気バイパス流路18を通過する排気の流量を調節するための排気バイパス弁V3が設けられている。排気バイパス弁V3は、メインスロットルバルブV1と同様に流量調整弁として構成されており、その開度をエンジン制御装置73からの電気信号によって制御可能に構成されている。排気バイパス弁V3の弁開度を変更することにより、タービン49aに流入する排気流量を調整し、コンプレッサ49bにおける空気の圧縮量を調整することができる。即ち、排気バイパス弁V3の弁開度を調節することによって、吸気マニホールド67に供給される空気流量を調整することができる。
【0051】
次に、流量調整弁の弁開度におけるフィードバック制御について、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
図6は、エンジン21を制御するための電気的な構成を示すブロック図である。
図7は、エンジン21をガスモードで稼動したときの、吸気マニホールド67における吸気流量の調整制御を説明するグラフである。
【0052】
図6に示すように、エンジン制御装置73は、パイロット燃料噴射弁82と、燃料供給ポンプ89と、ガスインジェクタ98と、を制御可能に構成されている。エンジン制御装置73は、パイロット燃料噴射弁82を開閉制御することで、燃焼室110に液体燃料(パイロット燃料)を供給することができる。エンジン制御装置73は、燃料供給ポンプ89の制御弁を開閉制御することで、燃料供給ポンプ89からメイン燃料噴射弁79を介して燃焼室110に液体燃料(メイン燃料)を供給することができる。エンジン制御装置73は、調速機201を制御することで、メイン燃料噴射弁79からの液体燃料の噴射量を調節することができる。エンジン制御装置73は、ガスインジェクタ98を制御することで、吸気マニホールド67の吸気枝管67aにガス燃料を供給することができる。
【0053】
また、エンジン制御装置73は、メインスロットルバルブV1と、吸気バイパス弁V2と、排気バイパス弁V3と、を制御可能に構成されている。前述したように、エンジン制御装置73は、メインスロットルバルブV1、吸気バイパス弁V2、及び排気バイパス弁V3それぞれの弁開度を制御することで、吸気マニホールド67に流入する空気流量を調整することができる。
【0054】
図6に示すように、エンジン制御装置73は、エンジン21の各部に備えられた各種センサからの信号を入力可能に構成されている。また、エンジン制御装置73は、機側操作用制御装置71と相互に通信可能に構成されている。
【0055】
エンジン21が備える6つの気筒のうち一部又は全部には、筒内圧センサ63が配置されている。この筒内圧センサ63は、圧電素子又は歪ゲージ等を備えて構成されており、気筒の内部の圧力(図示平均有効圧、IMEP)を検出することができる。筒内圧センサ63が検出した筒内圧は、エンジン制御装置73に出力される。
【0056】
エンジン21の吸気マニホールド67には、当該吸気マニホールド67における空気圧力を測定する吸気圧センサ39が設けられている。この吸気圧センサ39は、例えば半導体歪ゲージを用いた構成とすることができる。吸気圧センサ39が検出した吸気圧力は、エンジン制御装置73に出力される。
【0057】
エンジン21の適宜の位置(例えば、クランク軸24の近傍)には、トルクセンサ(負荷検出器)64が取り付けられている。トルクセンサ64としては、例えば、歪ゲージを用いてトルクを検出するフランジ型のものを用いることができる。トルクセンサ64が検出したエンジン負荷(エンジントルク)は、エンジン制御装置73に出力される。
【0058】
エンジン21の適宜の位置(例えば、シリンダブロック25)には、エンジン回転数センサ65が取り付けられている。エンジン回転数センサ65は、例えばセンサとパルス発生器により構成され、クランク軸24の回転に応じてパルス信号を発生するように構成することができる。エンジン回転数センサ65が検出したエンジン回転数は、エンジン制御装置73に出力される。
【0059】
ディーゼルモードでエンジン21を稼動させる場合、エンジン制御装置73は、燃料供給ポンプ89における制御弁を開閉制御して、各気筒における燃焼を所定のタイミングで発生させる。即ち、各気筒の噴射タイミングに合わせて燃料供給ポンプ89の制御弁を開くことで、メイン燃料噴射弁79を通じて各気筒内に燃料油を噴射させ、気筒内で発火させる。一方、ガスインジェクタ98からの燃料ガスの噴射、及び、パイロット燃料噴射弁82からのパイロット燃料の噴射は、ディーゼルモードにおいては停止されている。
【0060】
ディーゼルモードにおいては、エンジン制御装置73は、トルクセンサ64が検出したエンジン負荷と、エンジン回転数センサ65が検出したエンジン回転数と、に基づいて、各気筒におけるメイン燃料噴射弁79からの噴射タイミングをフィードバック制御する。これにより、エンジン21のクランク軸24は、船舶の推進兼発電機構で必要とされるトルクが得られるように、船舶の推進速度に応じたエンジン回転数で回転する。また、エンジン制御装置73は、吸気圧センサ39で検出された吸気マニホールド67内の空気圧力に基づいて、メインスロットルバルブV1の弁開度を制御する。これにより、エンジン出力に必要とされる空気流量となるようにコンプレッサ49bから圧縮空気を吸気マニホールド67に供給する。
【0061】
ガスモードでエンジン21を稼動させる場合、エンジン制御装置73は、ガスインジェクタ98における弁を開閉制御して、吸気枝管67aに燃料ガスを供給することで、当該燃料ガスを吸気マニホールド67からの空気に混合し、各気筒内に予混合燃料を供給させる。また、エンジン制御装置73は、パイロット燃料噴射弁82を開閉制御して、所定のタイミングでパイロット燃料を各気筒に噴射することで着火源を発生させ、予混合ガスが供給された各気筒内で燃焼を行わせる。一方、メイン燃料噴射弁79からのメイン燃料の噴射は、ガスモードにおいては停止されている。
【0062】
ガスモードにおいては、エンジン制御装置73は、トルクセンサ64が検出したエンジン負荷と、エンジン回転数センサ65が検出したエンジン回転数と、に基づいて、ガスインジェクタ98による燃料ガスの噴射流量と、各気筒におけるパイロット燃料噴射弁82による噴射タイミングと、をフィードバック制御する。
【0063】
また、エンジン制御装置73は、トルクセンサ64により検出されるエンジン負荷、及び、吸気圧センサ39により検出される吸気マニホールド67内の空気圧力等に基づいて、メインスロットルバルブV1、吸気バイパス弁V2、及び排気バイパス弁V3それぞれの弁開度を例えば
図7のように制御する。
【0064】
まず、メインスロットルバルブV1の制御について、
図7(a)を参照して説明する。なお、
図7のグラフに示すL1,L2,L3,L4は予め定められたエンジン負荷の所定値(ただし、L1<L2<L3<L4)であって、そのうち所定値L4は低負荷領域と中高負荷領域との境界に相当するエンジン負荷である。
【0065】
エンジン負荷が所定値L1未満である場合は、エンジン制御装置73は、エンジン負荷に応じて吸気マニホールド67の目標圧力を
図7(d)に示す関係に基づいて設定した上で、吸気圧センサ39により検出された実際の圧力が上記の目標圧力に近づくように、メインスロットルバルブV1の弁開度をPID制御(フィードバック制御)する。
【0066】
エンジン負荷が所定値L1以上かつ所定値L2未満である場合は、エンジン制御装置73は、エンジン負荷に対するメインスロットルバルブV1の弁開度を記憶した第1データテーブルD1を参照し、エンジン負荷に対応したメインスロットルバルブV1の弁開度となるようにマップ制御する。第1データテーブルD1は、エンジン負荷が増大するのに従ってメインスロットルバルブV1の弁開度を徐々に増大させるように定められる。
【0067】
エンジン負荷が所定値L2以上である場合は、エンジン制御装置73は、メインスロットルバルブV1が全開となるように制御する。なお、エンジン負荷の所定値L2は、吸気マニホールド67の空気圧力が大気圧となる値Ltよりも低く設定されている。
【0068】
次に、吸気バイパス弁V2の制御について、
図7(b)を参照して説明する。
【0069】
エンジン負荷が所定値L3未満である場合は、エンジン制御装置73は、吸気バイパス弁V2が全閉となるように制御する。
【0070】
エンジン負荷が所定値L3以上である場合は、エンジン制御装置73は、エンジン負荷に応じて吸気マニホールド67の目標圧力を
図7(d)に示す関係に基づいて設定した上で、吸気圧センサ39により検出された実際の圧力が上記の目標圧力に近づくように、吸気バイパス弁V2の弁開度をPID制御(フィードバック制御)する。
【0071】
次に、排気バイパス弁V3の制御について、
図7(c)を参照して説明する。
【0072】
エンジン負荷が所定値L1未満である場合は、エンジン制御装置73は、排気バイパス弁V3が全開となるように制御する。
【0073】
エンジン負荷が所定値L1以上である場合は、エンジン制御装置73は、エンジン負荷に対する排気バイパス弁V3の弁開度を記憶した第2データテーブルD2を参照し、エンジン負荷に対応した排気バイパス弁V3の弁開度となるようにマップ制御する。第2データテーブルD2は、エンジン負荷が所定値L1から所定値L2に増大するのに従って排気バイパス弁V3の弁開度を徐々に減少させ、所定値L2から所定値L3までは排気バイパス弁V3を全閉とし、所定値L3から増大するのに従って排気バイパス弁V3の開度を徐々に増大させるように定められる。
【0074】
以上のように、エンジン制御装置73は、メインスロットルバルブV1と、吸気バイパス弁V2と、排気バイパス弁V3と、を制御することで、吸気マニホールド67の空気圧力を調整する。これにより、エンジン出力に必要とされる空気流量となるようにコンプレッサ49bから圧縮空気を吸気マニホールド67に供給するとともに、ガスインジェクタ98から供給される燃料ガスとの空燃比をエンジン出力に応じた値に調整することができる。
【0075】
ところで、本実施形態のようなデュアルフューエルエンジンにおいては、ディーゼルモードとガスモードとで空燃比が異なり、同一の大きさの負荷に対して、ガスモードではディーゼルモードと比較して必要な空気流量が少ない。従って、過給機49についてはディーゼルモードで使用することを基本に設計する必要がある一方で、ガスモードにおいても、当該ガスモードの空燃比に適した流量の空気を供給する必要がある。
【0076】
この点、本実施形態では、上記の構成とすることで、過給機49の構成をディーゼルモードでの稼動に対して最適化した場合でも、ガスモードでの稼動時に、エンジン負荷の変動に応じて吸気バイパス弁V2の弁開度を制御することにより、吸気マニホールド67の圧力制御の応答性を高めることができる。従って、負荷変動時においても、燃焼に必要な空気量の過不足を防止できるので、ディーゼルモードでの稼動に最適化した構成の過給機49を用いた場合でも、ガスモードで良好に稼動することができる。
【0077】
また、エンジン負荷の変動に応じて排気バイパス弁V3の開度を制御することにより、燃料ガスの燃焼に必要な空燃比に合わせた空気をエンジン21に供給することができる。また、応答性の良い吸気バイパス弁V2の制御を併せて行うことで、ガスモードにおいて負荷変動に対する応答速度を増大させることができるので、負荷が変動した場合でも、燃焼に必要な空気量の不足を原因とするノッキング等を回避することができる。
【0078】
ところで、エンジン負荷を適切に検出することはエンジン21の適切な燃焼制御のために重要であり、トルクセンサ64によるエンジン負荷の検出が何らかの理由でできなくなると、出力低下、燃料消費量の悪化等の原因となる。特に、本実施形態のようなデュアルフューエルエンジンをガスモードで稼動する場合において、上述のように負荷変動が生じた場合でもノッキング及び失火を回避するためには、エンジン負荷を正確に検出して空気流量を制御することが必要になる。
【0079】
本実施形態においてエンジン負荷は、
図6のトルクセンサ64により、例えば4mA〜20mAの範囲で、負荷が増大するに従って電流値が増大する信号として検出される。従って、トルクセンサ64の電流値が4mAである場合はエンジン負荷が実質的にゼロであることを意味するが、トルクセンサ64の断線等の理由によってエンジン負荷をゼロと誤検出している可能性も否定できない。
【0080】
この点、本実施形態では、エンジン制御装置73が、筒内圧センサ63が筒内圧を検出することにより得られたデータ列により図示平均有効圧を計算し、得られた図示平均有効圧が所定の閾値以上であるにもかかわらずトルクセンサ64のエンジン負荷検出値が無負荷を示している場合、トルクセンサ64によるエンジン負荷の検出に異常が発生したと判定する。
【0081】
即ち、筒内圧センサ63が検出する筒内圧が所定の大きさ以上であれば、少なくともある程度の大きさの負荷がエンジン21に対して投入されているはずであるが、それにもかかわらずトルクセンサ64のエンジン負荷の検出結果がゼロを示しているなら、トルクセンサ64でのエンジン負荷の検出に何らかの異常が発生している可能性が高い。このことを利用して、エンジン制御装置73は、上記の状況が生じればトルクセンサ64が異常であると判定し、その旨を、機側操作用制御装置71が備えるディスプレイ72に表示するように構成されている。これにより、エンジン負荷の検出に関する異常を適切に発見して、早期の対応を促すことができる。
【0082】
次に、上述したトルクセンサ64の異常を検出するための具体的な制御について、
図8を主に参照しながら詳細に説明する。
図8は、トルクセンサ64の異常を検出するためにエンジン制御装置73が行う判定処理を示すフローチャートである。
図9は、トルクセンサ64の異常が検出された結果としてガスモードからディーゼルモードに切り替わる場合の、燃料ガス及び燃料油の供給制御を説明する図である。
【0083】
図8に示すように、ガスモードで稼動するエンジン21においてエンジン制御装置73は、エンジン回転数センサ65が検出するエンジン回転数を目標値に近づけるように、ガスインジェクタ98が噴射する燃料ガスの量を調整する制御を行う(調速制御、ステップS101)。
【0084】
次に、エンジン制御装置73は、トルクセンサ64により検出したエンジン負荷に応じて、メインスロットルバルブV1、吸気バイパス弁V2及び排気バイパス弁V3の開度を制御する(ステップS102)。制御の方法としては、
図7を参照して説明したように、エンジン負荷の大きさに応じて、全開で固定する制御、全閉で固定する制御、マップ制御、PID制御(フィードバック制御)の何れかが選択される。
【0085】
その後、エンジン制御装置73は、ステップS102において得られたエンジン負荷が実質的に無負荷であったか否かを判断する(ステップS103)。
【0086】
ステップS103の判断で、検出されたエンジン負荷が実質的にゼロでなかった場合は、ステップS101に戻り、処理を繰り返す。
【0087】
ステップS103の判断で、検出されたエンジン負荷が実質的にゼロであった場合は、筒内圧センサ63の検出圧力から図示平均有効圧を計算し、この図示平均有効圧が所定の閾値以上であるか否かを判断する(ステップS104)。
【0088】
ステップS104の判断で、図示平均有効圧が閾値未満である場合、ステップS101に戻り、処理を繰り返す。
【0089】
ステップS104の判断で、図示平均有効圧が閾値以上である場合、エンジン制御装置73は、トルクセンサ64に何らかの異常が発生していると判断し、その旨を示すメッセージを、機側操作用制御装置71のディスプレイ72に表示させる(ステップS105)。これにより、エンジン負荷の検出に異常が生じていることをエンジン21のオペレータが早期に気付いて適切な処置を行うことができる。
【0090】
その後、エンジン制御装置73は、エンジン制御装置73は、燃焼モードをディーゼルモードに切り替えて(ステップS106)、ガスモードでの処理を終了する。このように、エンジン負荷の検出に異常が発生するとガスモードからディーゼルモードに切り替えることで、船舶用の大型エンジンに求められる運転継続性を確保することができる。
【0091】
なお、デュアルフューエルエンジンにおいてガスモードからディーゼルモードへの切替えは、直ちに切り替える場合と、徐々に切り替える場合と、が考えられる。
【0092】
例えば、エンジン21がガスモードで稼動していたが、船舶の航行の結果、窒素酸化物等の排出量が制限されている規制海域から外に出た場合は、ガスモードからディーゼルモードへ徐々に切り替えることが好ましい。この場合、ガスインジェクタ98から噴射される燃料ガスの量を徐々に減少させ、また、メイン燃料噴射弁79から噴射される液体燃料の量を徐々に増大させる制御が行われる。
【0093】
一方で、ガスモードでの稼動中に異常が発生した場合は、ガスモードからディーゼルモードに直ちに切り替えることが好ましい。考えられる異常としては、例えば、燃料ガスの圧力の低下、吸気マニホールド67の圧力の低下、ガス温度の上昇、空気温度の上昇、又は各種センサの異常(上記のトルクセンサ64の異常を含む)を挙げることができる。この場合、ガスインジェクタ98から噴射される燃料ガスの量は急激にゼロとされ、それとほぼ同時に、メイン燃料噴射弁79から噴射される液体燃料の量をゼロから急激に増大させる制御が行われる。
【0094】
本実施形態においても、トルクセンサ64に異常が発生したのを検知した後のガスモードからディーゼルモードへの切替え(ステップS106)は、
図9に示すように、徐々にではなく瞬時に行われる。
【0095】
一般的に、ディーゼルモードにおいてメイン燃料噴射弁79から噴射される液体燃料(メイン燃料)の量は、エンジン回転数とエンジン負荷からマップにより求められる。しかしながら、トルクセンサ64には上記のとおり異常があるので、ステップS106においてガスモードからディーゼルモードへ遷移した後の初期のメイン燃料の噴射量(
図9の燃料油供給量FO1)を求めるにあたって、トルクセンサ64が検出したエンジン負荷は信頼することができない。そこで、エンジン制御装置73は、筒内圧センサ63が検出した気筒の内部の圧力から図示平均有効圧を求め、これから更に正味平均有効圧(BMEP)を計算して、当該正味平均有効圧からエンジン負荷を推定するように構成されている。なお、図示平均有効圧と正味平均有効圧の関係、及び正味平均有効圧とエンジン負荷の関係は良く知られているので、具体的な計算については説明を省略する。
【0096】
その後、エンジン制御装置73は、初期のメイン燃料の噴射量(
図9に示す燃料油供給量FO1)を、エンジン回転数と、推定したエンジン負荷と、を用いて上記のマップにより求め、当該量の液体燃料をメイン燃料噴射弁79から噴射するように調速機201を制御する。このように構成することで、エンジン負荷をトルクセンサ64で正常に検出できない状況においても、ディーゼルモードへの切替直後に適切な量の液体燃料をメイン燃料噴射弁79から噴射することができ、エンジン回転数を良好に維持することができる。
【0097】
以上に説明したように、本実施形態のエンジン21は、筒内圧センサ63と、トルクセンサ64と、エンジン制御装置73と、を備える。筒内圧センサ63は、気筒の内部の圧力を検出する。トルクセンサ64は、エンジン負荷を検出する。エンジン制御装置73には、筒内圧センサ63の検出結果及びトルクセンサ64の検出結果が入力される。エンジン制御装置73は、トルクセンサ64によって検出された負荷がゼロ(無負荷)であり、且つ、筒内圧センサ63の検出結果から得られる筒内圧力(具体的には、図示平均有効圧)が閾値以上である場合、トルクセンサ64による検出に異常があると判定する。
【0098】
これにより、筒内圧力とエンジン負荷との間にある程度の相関があることを利用して、トルクセンサ64の異常の有無を簡素な構成で判定することができる。この結果、例えば、異常への対応をオペレータに早期に促すことができる。
【0099】
また、本実施形態のエンジン21は、吸気マニホールド67と、ガスインジェクタ98と、メイン燃料噴射弁79と、を備える。吸気マニホールド67は、気筒内へ空気を供給する。ガスインジェクタ98は、吸気マニホールド67から供給される空気に燃料ガスを噴射して混合させる。メイン燃料噴射弁79は、気筒に液体燃料を噴射する。エンジン21は、ガスインジェクタ98が噴射した気体燃料を空気と混合させてから気筒内の燃焼室110に流入させるガスモード(予混合燃焼モード)と、メイン燃料噴射弁79が液体燃料を燃焼室110内に噴射することにより燃焼するディーゼルモード(拡散燃焼モード)と、を切り替えて稼動可能である。エンジン制御装置73は、ガスモードでの稼動中にトルクセンサ64による検出に異常があると判定した場合、ガスモードからディーゼルモードに切り替える。
【0100】
これにより、トルクセンサ64によるエンジン負荷の検出に異常がある状態で、エンジン21がガスモードで稼動するのを回避することができる。この結果、エンジン21の稼動の継続性を確保することができる。
【0101】
また、本実施形態のエンジン21において、エンジン制御装置73は、ガスモードでの稼動中にトルクセンサ64による検出に異常があると判定し、ガスモードからディーゼルモードに切り替える場合に、筒内圧センサ63の検出値に基づいてエンジン負荷を計算により推定し、推定されたエンジン負荷に基づいて、ディーゼルモードへの切替直後にメイン燃料噴射弁79が噴射する液体燃料の量を算出する。
【0102】
これにより、ガスモードからディーゼルモードに切り替わった初期において、メイン燃料噴射弁79から適切な量の液体燃料を噴射することができる。この結果、モード切替時のエンジン回転数の低下等を防止して、エンジン21を安定して稼動することができる。
【0103】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0104】
トルクセンサ64は、エンジン負荷に応じた電流値の信号を出力することに代えて、例えばエンジン負荷に応じた電圧値の信号を出力するように構成することができる。
【0105】
図8のフローに示すS104において、図示平均有効圧(IMEP)ではなく、例えば正味平均有効圧(BMEP)を閾値と比較するようにしても良い。
【0106】
負荷検出器としては、上記のトルクセンサ64に限定されず、例えばワットトランスデューサを用いることができる。
【0107】
上記の実施形態では、ガスモードにおける予混合気の着火は、パイロット燃料噴射弁82から液体燃料を少量噴射することによって行われる(マイクロパイロット着火)。しかしながらこれに代えて、例えば火花による点火が行われても良い。
【0108】
上記の実施形態では、エンジン21は、船舶の推進兼発電機構の駆動源として用いられているが、これに限るものではなく、他の用途に用いられてもよい。