(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流量調整部は、前記加熱ゾーンにおける前記回転方向の下流端において、前記加熱ゾーンと前記非加熱ゾーンとの境界の圧力が前記環状空間において最も高くなるように、前記非加熱ゾーンを流れるガスの流量を調整する、
請求項1に記載の回転炉床炉。
環状に連続する形状の環状空間の側部および上部を囲む一対の周壁および天板を有する炉本体と、前記環状空間の底部に配置され、所定の回転方向に回転可能な環状の炉床部とを備えた回転炉床炉を用いて、酸化鉄を含む塊成物を加熱することにより当該酸化鉄を還元して還元鉄を製造する方法であって、
前記環状空間の一部の区間を構成する加熱ゾーンにおいて前記炉床部の上に置かれた前記塊成物を加熱して前記塊成物に含まれる酸化鉄を還元することによって還元鉄を生成する加熱動作と、
前記環状空間における前記加熱ゾーンにつながる非加熱ゾーンにおいて前記環状空間の内部で発生した排気ガスを当該環状空間の外部へ排出する排気動作と、
前記非加熱ゾーンにおける前記排気ガスを排出する位置よりも前記回転方向の上流側に圧力調整用のガスを導入する導入動作と、
前記非加熱ゾーンの開口面積を調整することにより、当該非加熱ゾーンにおいて前記排気ガスを排出する排出位置と前記圧力調整用のガスを導入する導入位置との間を流れるガスの流量を調整する流量調整動作とを含む
還元鉄の製造方法。
前記流量調整動作では、前記加熱ゾーンにおける前記回転方向の下流端において、前記加熱ゾーンと前記非加熱ゾーンとの境界の圧力が前記環状空間において最も高くなるように、前記非加熱ゾーンを流れるガスの流量を調整する、
請求項9に記載の還元鉄の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の回転炉床炉では、外気取込み手段によって炉内に取り込まれた空気によって非加熱区間の圧力を高めて排気ガスの流れの分岐点の位置を調整するので、加熱空間における加熱バーナの燃焼状況によって排気ガスの量が大きく変動すれば、それに対応して外気取込み手段による炉内に取り込む空気の量も大きく変える必要がある。そのため、炉内に取り込む空気の量を抑えながら上記の分岐点の位置を加熱区間と非加熱区間の境界付近になるように調整することが難しいという問題がある。
【0008】
また、取込空気量が多くなりすぎると、非加熱区間において過剰に炉床を冷却してしまい、熱損失を招く。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、炉内に取り込むガスの量を抑えながら排気ガスの分岐点の位置を加熱区間と非加熱区間の境界付近になるように調整することが可能な回転炉床炉および還元鉄の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためのものとして、本発明の回転炉床炉は、酸化鉄を含む塊成物を加熱することにより当該酸化鉄を還元して還元鉄を製造する回転炉床炉であって、環状に連続する形状の環状空間の側部および上部を囲む一対の周壁および天板を有する炉本体と、前記環状空間の底部に配置され、所定の回転方向に回転可能な環状の炉床部と、前記環状空間の内部で発生する排気ガスを前記炉本体の外部へ排出する排気部と、を備えており、前記環状空間は、前記炉床部の上に置かれた前記塊成物を加熱する加熱ゾーンと、当該塊成物の加熱を行わない非加熱ゾーンとを有しており、前記加熱ゾーンと前記非加熱ゾーンとが環状につながることにより、前記環状空間が形成されており、前記非加熱ゾーンには、前記排気部と、当該排気部よりも前記回転方向の上流側に配置され、前記環状空間の内部の圧力を調整するための圧力調整用のガスを当該非加熱ゾーンに導入する導入部と、前記導入部と前記排気部との間に配置され、前記非加熱ゾーンの開口面積を調整することにより当該非加熱ゾーンを流れるガスの流量を調整する流量調整部と、が設けられていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、流量調整部が導入部と排気部との間において非加熱ゾーンの開口面積を調整することにより、当該非加熱ゾーンを流れるガスの流量を調整する。これにより、当該導入部と排気部との間における圧力差、すなわち圧力損失を当該ガスに与えることが可能である。したがって、加熱ゾーンでの排気ガス量が大きく変動することで加熱ゾーンの圧力損失が変動しても、この圧力バランスを取るために流量調整部で非加熱ゾーンの圧力損失を調整することが可能である。これにより、加熱ゾーンと非加熱ゾーンの圧力バランスを取ることが可能になる。したがって、流量調整部によって開口面積が調整された状態であれば、導入部からの圧力調整用のガスの導入量を低く抑えても、十分な圧力損失を得ることができ、排気ガスの分岐点の位置を加熱ゾーンと非加熱ゾーンの境界付近になるように調整することが可能になる。
【0012】
前記流量調整部は、前記加熱ゾーンにおける前記回転方向の下流端において、前記加熱ゾーンと前記非加熱ゾーンとの境界の圧力が前記環状空間において最も高くなるように、前記非加熱ゾーンを流れるガスの流量を調整するのが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、流量調整部が上記のように非加熱ゾーンを流れるガスの流量を調整することにより、環状空間内部のガス流れの分岐点を、前記加熱ゾーンにおける前記回転方向の下流端において前記加熱ゾーンと前記非加熱ゾーンとの境界に位置することが可能になる。これにより、加熱ゾーン内部では排気ガスの流れが塊成物の移動方向(すなわち上記の回転方向)に完全に対向する完全対向流に調整することが可能になる。その結果、上記熱交換効率が最も良い還元鉄の製造が可能になる。
【0014】
前記導入部は、前記非加熱ゾーンに導入される前記圧力調整用のガスの導入量を調整する導入量調整部を有するのが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、上記導入量調整部によって、非加熱ゾーンに導入される圧力調整のガスの導入量を調整することにより、排気ガスの流れの分岐点の位置を精度よく調整することが可能である。
【0016】
前記流量調整部は、昇降可能な仕切り壁を備え、前記仕切り壁は、前記環状空間の内部に設置され、前記炉床部に対して接近および離反が可能な当該炉床部に対向する下端部を有し、前記仕切り壁は、前記下端部と前記炉床部との隙間によって形成される前記開口面積を調整するように昇降するのが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、仕切り壁の昇降によって、当該仕切り壁の下端部と炉床部との隙間によって形成される前記開口面積を調整し、それによって、非加熱ゾーンを流れるガスの流量を容易に調整することが可能である。
【0018】
前記導入部は、前記圧力調整用のガスとして前記炉本体の外部の空気を前記非加熱ゾーンへ送る送風機を備えるのが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、圧力調整用のガスとして前記炉本体の外部の空気を安価に利用することが可能になる。
【0020】
前記非加熱ゾーンは、前記加熱ゾーンの前記回転方向下流側端部に連続し、前記加熱ゾーンを通過した前記塊成物を冷却する冷却区間を有しており、前記導入部は、前記非加熱ゾーンにおける前記冷却区間よりも前記回転方向の下流側に前記空気を導入するように、構成されているのが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、送風機によって非加熱ゾーンに導入される空気は、非加熱ゾーンにおける冷却区間よりも前記回転方向の下流側に導入される。そのため、当該冷却区間では、加熱ゾーンで生成された還元鉄が上記の空気に触れて再酸化されることを防止することが可能である。
【0022】
前記非加熱ゾーンには、前記炉床部の上面に床敷炭を供給する床敷炭供給部がさらに設けられ、前記導入部は、前記床敷炭供給部よりも前記回転方向の上流側に前記圧力調整用のガスを導入するように、構成されているのが好ましい。
【0023】
かかる構成によれば、床敷炭供給部によって炉床部上面に敷かれた床敷炭が前記導入部によって導入された圧力調整用のガスによって吹き飛ばされるおそれを回避することが可能である。
【0024】
前記流量調整部は、前記床敷炭供給部よりも前記回転方向の上流側に配置されているのが好ましい。
【0025】
かかる構成によれば、流量調整部が導入部と排気部との間のガスの流量を絞ったときに当該ガスの流速が速くなっても、当該ガスが床敷炭供給部によって炉床部上面に敷かれた床敷炭を吹き飛ばすおそれを回避することが可能である。
【0026】
本発明の還元鉄の製造方法は、環状に連続する形状の環状空間の側部および上部を囲む一対の周壁および天板を有する炉本体と、前記環状空間の底部に配置され、所定の回転方向に回転可能な環状の炉床部とを備えた回転炉床炉を用いて酸化鉄を含む塊成物を加熱することにより当該酸化鉄を還元して還元鉄を製造する方法であって、
前記環状空間の一部の区間を構成する加熱ゾーンにおいて前記炉床部の上に置かれた前記塊成物を加熱して前記塊成物に含まれる酸化鉄を還元することによって還元鉄を生成する加熱動作と、
前記環状空間における前記加熱ゾーンにつながる非加熱ゾーンにおいて前記環状空間の内部で発生した排気ガスを当該環状空間の外部へ排出する排気動作と、
前記非加熱ゾーンにおける前記排気ガスを排出する位置よりも前記回転方向の上流側に圧力調整用のガスを導入する導入動作と、
前記非加熱ゾーンの開口面積を調整することにより、当該非加熱ゾーンにおいて前記排気ガスを排出する排出位置と前記圧力調整用のガスを導入する導入位置との間を流れるガスの流量を調整する流量調整動作とを含むことを特徴とする。
【0027】
この製造方法では、 加熱ゾーンで発生する排気ガスの量が大きく変動しても、非加熱ゾーンの開口面積を調整することにより、非加熱ゾーンにおいて前記排気ガスを排出する排出位置と圧力調整用のガスを導入する導入位置との間を流れるガスの流量を調整する。これにより、これら排出位置と導入位置との間において、排気ガスの量に応じた大きさの圧力損失を非加熱ゾーンを流れるガスに与えることが可能である。したがって、加熱ゾーンでの排気ガス量が大きく変動することで加熱ゾーンの圧力損失が変動しても、この圧力バランスを取るために流量調整動作および導入動作の一方もしくは両方によって非加熱ゾーンの圧力損失を調整することが可能である。例えば、大きな変動に対しては流量調整動作によって行い、小さな変動に対しては導入動作によって行えばよい。これにより、加熱ゾーンと非加熱ゾーンの圧力バランスを取ることが可能になる。したがって、流量調整動作によって開口面積が調整された状態であれば、圧力調整用のガスの導入量を低く抑えても、十分な圧力損失を得ることができ、排気ガスの流れの分岐点の位置を加熱ゾーンと非加熱ゾーンの境界付近になるように調整することが可能である。
【0028】
前記流量調整動作では、前記加熱ゾーンにおける前記回転方向の下流端において、前記加熱ゾーンと前記非加熱ゾーンとの境界の圧力が前記環状空間において最も高くなるように、前記非加熱ゾーンを流れるガスの流量を調整するのが好ましい。
【0029】
上記のように非加熱ゾーンを流れるガスの流量を調整することにより、環状空間内部のガス流れの分岐点を、前記加熱ゾーンにおける前記回転方向の下流端において前記加熱ゾーンと前記非加熱ゾーンとの境界に位置することが可能になる。これにより、加熱ゾーン内部では排気ガスの流れが塊成物の移動方向(すなわち上記の回転方向)に完全に対向する完全対向流に調整することが可能になる。その結果、上記熱交換効率が最も良い還元鉄の製造が可能になる。
【0030】
前記導入動作では、前記排気ガスの量の変化に応じて前記非加熱ゾーンに導入される前記圧力調整用のガスの導入量を調整するのが好ましい。
【0031】
この場合、排気ガスの量の変化に応じて非加熱ゾーンに導入される圧力調整のガスの導入量を調整することにより、排気ガスの流れの分岐点の位置を精度よく調整することが可能である。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明の回転炉床炉および還元鉄の製造方法によれば、炉内に取り込むガスの量を抑えながら排気ガスの分岐点の位置を加熱ゾーンと非加熱ゾーンの境界付近になるように調整することが可能である。その結果、排気ガスと塊成物との間の熱交換効率の良い還元鉄の製造が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明の回転炉床炉および還元鉄の製造方法の実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0035】
図1〜2に示される回転炉床炉1は、炉床部3が炉本体2の内部で回転移動し、当該炉床部3の上に置かれた酸化鉄を含む塊成物Pを炉本体2の内部で加熱することによって当該酸化鉄を還元して還元鉄を製造する還元炉である。
【0036】
この回転炉床炉1は、環状の炉本体2と、環状の炉床部3と、床敷炭供給部4と、塊成物供給部5と、製造後の還元鉄等を炉外に排出する排出部6と、炉本体2の内部で発生する排気ガスを炉外へ排気する排気部7とを備えている。
【0037】
炉本体2および炉床部3は、例えば、水冷支持金物の表面にアルミナ等の耐火物が施工されたものにより構成される。
【0038】
炉本体2は、環状に連続する形状の環状空間2aの側部および上部を囲む形状を有する。炉本体2は、例えば、同心状に互いに対向する一対の周壁2cと、当該一対の周壁2cの上端の間を連結する天板2bとを有する。これら一対の周壁2cおよび天板2bとともに炉床部3によって、前記環状空間2aが画定される。
【0039】
炉床部3は 環状空間2aの底部に配置され、所定の回転方向Rに回転可能な構成を有する。具体的には、炉床部3は、円環状をなしており、その半径方向に沿う一定の幅を有する。炉床部3は、環状空間2aの底部に配置された状態で、垂直軸回りに回転方向R(
図1では反時計回り方向)に回転できるように構成されている。炉床部3は、駆動装置(図示せず)から与えられる駆動力によって回転方向Rへ回転する。本発明の技術分野に属する回転炉床炉1は、環状空間2a内に外気の空気等が極力入り込まないように遮断された構造になっている。具体的には、回転炉床炉1は、炉本体2および炉床部3によって形成された環状空間2aが基本的に外気と遮断された構造になっている。
【0040】
環状空間2aは、炉床部3の上に置かれた塊成物Pを加熱する加熱ゾーンZ1と、当該塊成物Pの加熱を行わない非加熱ゾーンZ2とを有している。加熱ゾーンZ1と非加熱ゾーンZ2とが環状につながることにより、前記環状空間2aが形成されている。
【0041】
加熱ゾーンZ1には、加熱バーナ(図示せず)が当該ゾーンZ1の周方向に分散して設けられている。加熱バーナは、天然ガスなどを燃焼することにより当該加熱ゾーンZ1内部を通過する塊成物Pおよびガスを高温(1200〜1500℃程度)で加熱する。これにより、塊成物Pに含まれる酸化鉄が還元して還元鉄(具体的には、粒状の溶融金属鉄)が製造される。加熱ゾーンZ1では、回転方向Rの下流側が高温になるように、加熱バーナの燃焼調整などによって、当該ゾーンZ1内部の温度が調整されている。
【0042】
非加熱ゾーンZ2は、加熱ゾーンZ1における回転方向Rの下流側に位置する冷却区間Z21と、当該冷却区間Z21における前記回転方向Rの下流側に位置する機械室Z22と、当該機械室Z22における前記回転方向Rの下流側で、かつ、燃焼ゾーンZ1の上流側に位置する排気区間Z23とを有している。
【0043】
冷却区間Z21には、炉床部3の上にある還元鉄とスラグを冷却する冷却装置(図示せず)が設けられている。加熱ゾーンZ1で製造された還元鉄およびその副生物であるスラグは、冷却区間Z21を通過するときに冷却されて固化する。冷却区間Z21では、炉本体2の周壁2cなどには、環状空間2a内部の様子を視認できるようにのぞき窓などが設けられている。
【0044】
機械室Z22には、塊成物Pおよび炉床部3の上に敷かれる床敷炭を炉内に供給する機構ならびに製造後の還元鉄等を炉外に排出する機構として、上記の床敷炭供給部4、塊成物供給部5、排出部6が配置されている。
【0045】
床敷炭供給部4は、床敷炭を炉床部3の上面に供給する。床敷炭は、塊成物Pと炉床部3との接触を避けるために炉床部3の上面に敷かれる粒の細かい炭材である。床敷炭が塊成物Pと炉床部3との間に介在することによって、還元鉄製造時において生成される還元鉄およびその副生物のスラグが炉床部3に付着することを回避することが可能である。
【0046】
塊成物供給部5は、床敷炭供給部4における回転方向Rの下流側に配置されている。塊成物供給部5は、酸化鉄を含む塊成物Pを炉床部3の上面(具体的には、炉床部3の上面に敷かれた床敷炭の上)に供給する。塊成物Pは、炭素質還元剤と酸化鉄とを含有する略球状の固形物である。
【0047】
排出部6は、塊成物供給部5に対して回転方向Rの下流側、具体的には、加熱ゾーンZ1および冷却区間Z21よりも下流側(
図1〜2では、機械室Z22の上流側端部付近)に配置されている。排出部6は、加熱ゾーンZ1内部で塊成物Pに含まれる酸化鉄が還元されたことによって生成された還元鉄およびスラグを炉本体2の外部へ取り出すことが可能な構成を有する。例えば、排出部6は、水平方向に延びる回転軸と、スクリュー部とを有してもよい。この場合、回転軸を回転させることによって、らせん状のスクリュー部が還元鉄を水平方向へ掻き出し、還元鉄排出シュート13を介して炉本体の外部へ排出することが可能である。
【0048】
排気区間Z23には、上記の排気部7が配置されている。排気部7は、環状空間2aの内部で発生する排気ガスを炉本体2の外部へ排出するように構成されている。排気部7は、例えば、炉本体2の天井部を貫通して垂直方向に延びる煙突7aと、当該煙突7aの内部のガスを吸引する排気ファン(図示せず)とを備えている。すなわち、排気部7は、排気ファンによる負圧を用いて、環状空間2a内部の排気ガスを炉外へ吸い出すように構成されている。
【0049】
環状空間2aの内部で発生する排気ガスは、2方向のガス流れFL1、FL2に分かれて流れて排気部7に集められ、当該排気部7から炉本体2の外部へ排出される。この2方向のガス流れは、回転方向Rと反対方向に流れる逆方向ガス流れFL1と、回転方向Rと同じ方向に流れる順方向ガス流れFL2とからなる。
【0050】
本実施形態の回転炉床炉1は、環状空間2aの内部で発生した排気ガスの上記のガス流れFL1、FL2を制御するために、圧力調整用のガスを非加熱ゾーンZ2に導入する導入部9と、非加熱ゾーンZ2を流れるガスの流量を調整する流量調整部10とをさらに備えている。
【0051】
導入部9は、非加熱ゾーンZ2の機械室Z22において、排気部7よりも回転方向Rの上流側(
図1〜2において排気部7の左側)に配置されている。導入部9は、環状空間2aの内部の圧力を調整するための圧力調整用のガスを機械室Z22に導入する。この圧力調整用のガスは、具体的には、非加熱ゾーンZ2での圧力損失を調整して、環状空間2内部の圧力バランスをとる。
【0052】
導入部9は、具体的には、送風機9aと、導入管9bと、当該導入管9bの途中に設けられた調節弁9cとを備える。
【0053】
導入管9bの入口側の端部9b1は、送風機9aの排気口に連通している。導入管9bの出口側の端部9b2は、機械室Z22における回転方向Rの上流側の端部に連通している。
【0054】
送風機9aは、圧力調整用のガスとして炉本体2の外部の空気を、導入管9bを介して機械室Z22へ送る。送風機9aは、押込みファンであって、例えば、遠心ファンなどからなる。このように導入部9が送風機9aを備えていることにより、圧力調整用のガスとして炉本体2の外部の空気を安価に利用することが可能になる。なお、圧力調整用のガスは、空気以外のガス(例えば窒素や二酸化炭素など)であってもよい。
【0055】
調節弁9cは、導入管9bの途中に設けられ、非加熱ゾーンZ2に導入される圧力調整用のガス(空気)の導入量を調整する。なお、調節弁9cは、送風機9aの吸込み側に設けてもよい。
【0056】
なお、本実施形態では、本発明の導入量調整部として調節弁9cを用いているが、調節弁以外の他の構成でもよい。また、調節弁9cを設ける代わりに、送風機9aが導入量調整部としてインバータモータなどの送風量可変手段を備え、送風機自体によって導入量を調整できるようにしてもよい。
【0057】
上記のように、導入管9bの出口側の端部9b2は、機械室Z22における回転方向Rの上流側の端部に連通している。そのため、導入部9は、床敷炭供給部4よりも回転方向Rの上流側に空気を導入することが可能である(回転方向Rと同じ方向に流れる導入空気流れFL3参照)。そのため、床敷炭供給部4から炉床部3に供給される床敷炭が空気によって飛散することを防止することが可能である。
【0058】
また、上記の出口側の端部9b2の配置により、導入部9は、非加熱ゾーンZ2における冷却区間Z21よりも回転方向Rの下流側に送風機9aから送られてきた空気を導入することが可能である。そのため、冷却区間Z21において還元鉄が空気によって再酸化することを防止することが可能である。しかも、冷却区間Z21内部に空気が導入されないので、排出部6で排出される前の炉床部3の上面に存在する床敷炭を吹き飛ばされるおそれがない。そのため、冷却区間Z21内部の視認性の低下を回避することが可能である。
【0059】
なお、圧力調整用のガスの導入は、調節弁9cのみ、送風機9a(押込みファン)のみ、またはその両方の組合せによって行うことが考えられる。ただし、送風圧力のバランスを考えれば、送風機9aを用いる方がよいと考えられる。なお、加圧空気等の圧力を持ったガスを使用可能であれば、調節弁9cだけでも対応可能と考えられる。
【0060】
流量調整部10は、導入部9と排気部7との間に配置される。流量調整部10は、非加熱ゾーンZ2の開口面積を調整することにより、当該非加熱ゾーンZ2における当該導入部9と当該排気部7との間を流れるガス、すなわち、排気ガスの順方向ガス流れFL2および導入空気流れFL3が合流したガス流れFL4の流量を調整する。これにより、流量調整部10によって、当該導入部9と当該排気部7との間における圧力差、すなわち圧力損失をガス流れFL4に与えることが可能である。
【0061】
ここでいう非加熱ゾーンZ2の「開口面積」とは、例えば、非加熱ゾーンZ2のガス流れFL4の流路の断面における開口面積のことをいう。
【0062】
流量調整部10は、具体的には、昇降可能な仕切り壁10aと、当該仕切り壁10aを上下に移動させる駆動部10bとを備える。仕切り壁10aは、炉本体2と同様に水冷支持金物の表面にアルミナ等の耐火物が施工されたものによって製造される。仕切り壁10aは、環状空間2aの内部に設置され、炉床部3に対して接近および離反が可能な当該炉床部3に対向する下端部を有する。仕切り壁10aは、前記下端部と前記炉床部3との隙間によって形成される前記開口面積を調整するように昇降する。
【0063】
本実施形態では、仕切り壁10aは、床敷炭供給部4よりも回転方向Rの上流側に配置されている。そのため、仕切り壁10aが導入部9と排気部7との間を流れるガスFL4の流量を絞ったときに当該ガスの流速が速くなっても、当該ガスが床敷炭供給部4によって炉床部3の上面に敷かれた床敷炭を吹き飛ばすおそれを回避することが可能である。
【0064】
また、本実施形態では、仕切り壁10aは、排出部6よりも回転方向Rの下流側に配置されている。そのため、仕切り壁10aが上記のガスFL4の流量を絞ったときに当該ガスの流速が速くなっても、排出部6で排出される前の炉床部3の上面に存在する床敷炭を吹き飛ばすおそれを回避することが可能である。
【0065】
上記のように構成された回転炉床炉1を用いた還元鉄の製造方法は、以下のようにして行われる。
【0066】
この製造方法では、大別して以下の4つの動作(I)〜(IV)が行われる。すなわち、この製造方法は、
(I)環状空間2aの一部の区間を構成する加熱ゾーンZ1において炉床部3の上に置かれた酸化鉄を含む塊成物Pを加熱して当該酸化鉄を還元することによって還元鉄を生成する加熱動作と、
(II)環状空間2aにおける加熱ゾーンZ1につながる非加熱ゾーンZ2において環状空間2aの内部で発生した排気ガスを当該環状空間2aの外部へ排出する排気動作と、
(III)非加熱ゾーンZ2における排気ガスを排出する位置よりも回転方向Rの上流側に圧力調整用のガスを導入する導入動作と、
(IV)非加熱ゾーンZ2の開口面積を調整することにより、当該非加熱ゾーンZ2において排気ガスを排出する排出位置と圧力調整用のガスを導入する導入位置との間を流れるガスの流量を調整する流量調整動作とを含む。
【0067】
還元鉄の製造方法では、上記の加熱動作、排気動作および導入動作は、それぞれ併行して行われる。流量調整動作は、上記の3つの動作と併行して常時行ってもよいし、間欠的に行ってもよい。例えば、流量調整動作を間欠的に行う場合、還元鉄の製造開始時または製造定格運転への移行時等の炉内排気ガス量が大きく変動することによる圧力損失の変化が大きい時において、流量調整動作を行ってもよい。
【0068】
上記の加熱動作は、具体的には、以下のような手順で行われる。まず、機械室Z22において、回転方向Rへ回転する炉床部3の上に、床敷炭供給部4から床敷炭が供給され、さらに、その床敷炭の上に、塊成物供給部5から塊成物Pが供給される。そして、炉床部3の上に置かれた塊成物Pは、炉床部3の回転に伴って、加熱ゾーンZ1内部を回転方向Rに移動する。塊成物Pは、加熱ゾーンZ1の内部を回転方向Rへ移動するにしたがって、当該塊成物Pの温度が高められ、塊成物Pに含まれる酸化鉄の還元が行われる。さらに、塊成物Pが回転ゾーンZ1内部を進行すると、生成された還元鉄がさらに加熱されて溶融する。これにより、還元鉄がスラグから分離して凝集することにより、粒状の溶融金属鉄が製造される。また、加熱動作の後、製造された粒状の溶融金属鉄およびスラグは、冷却区間Z21を通過するときに冷却されて固化する。冷却後の粒状の金属鉄、スラグ、および床敷炭は、排出部6によって炉外へ排出される。
【0069】
排気動作では、具体的には、環状空間2aの内部で発生した排気ガスは、非加熱ゾーンZ2の排気区間Z23に設置された排気部7によって吸引される。このとき、排気ガスは、2方向のガス流れFL1、FL2に分岐して環状空間2a内部を流れて排気部7に集められる。集められた排気ガスは、当該排気部7から環状空間2aの外部へ排出される。
【0070】
導入動作では、具体的には、導入部9の送風機9aを作動させて、非加熱ゾーンZ2における排気ガスを排出する排気部7の位置よりも回転方向Rの上流側(すなわち、機械室Z22)に圧力調整用のガスとして空気を導入する(導入空気流れFL3参照)。導入空気流れFL3は、上記の順方向ガス流れFL2と合流し、ガス流れFL4となって排気部7から環状空間2aの外部へ排出される。
【0071】
本実施形態では、導入動作において、導入部9の調節弁9cによって、排気ガスの量の変化に応じて非加熱ゾーンZ2に導入される空気の導入量を調整する。具体的には、導入動作において、調節弁9cは、加熱ゾーンZ1における回転方向Rの下流端において、加熱ゾーンZ1と非加熱ゾーンZ2との境界BRの圧力が環状空間2aにおいて最も高くなるように、空気の導入量を調整する。
【0072】
流量調整動作では、具体的には、非加熱ゾーンZ2における排気部7の位置と導入部9の位置とで挟まれた区間において、流量調整部10の仕切り壁10aを昇降させることによって、仕切り壁10aの下端部と炉床部3との隙間によって形成された前記開口面積を調整する。これにより、排気部7と導入部9とで挟まれた区間において、当該区間を流れるガス流れFL4の流量を調整する。
【0073】
本実施形態では、流量調整動作では、加熱ゾーンZ1における回転方向Rの下流端において、加熱ゾーンZ1と非加熱ゾーンZ2との境界BRの圧力が環状空間2aにおいて最も高くなるように、仕切り壁10aは非加熱ゾーンZ2を流れるガス流れFL4の流量を調整する。
【0074】
すなわち、本実施形態の製造方法では、導入部9および流量調整部10の両方によって、加熱ゾーンZ1における回転方向Rの下流端において、加熱ゾーンZ1と非加熱ゾーンZ2との境界BRの圧力が環状空間2aにおいて最も高くなるように、非加熱ゾーンZ2を流れるガス流れFL4の流量を調整することが可能である。
【0075】
境界BRおよびその付近の圧力は、環状空間2a内部に設置された圧力検知部15によって検知される。圧力検知部15は、例えば、境界BRとその前後の円周方向に1か所ずつの計3か所に設けられる。これにより、流量調整部10の仕切り壁10aを昇降して仕切り壁10aと炉床部3との隙間の開口面積を調整しておき、その後、3つの圧力検知部15で検出される圧力に基づいて、導入部9の調節弁9cによって空気の導入量を調整すればよい。これによって、排気ガスの2方向のガス流れガス流れFL1、FL2の分岐点Sを境界BRの位置へ来るように正確に調整することが可能である。
【0076】
なお、導入部9による空気導入量の調整および流量調整部10による流量調整のいずれか一方を行ってもよい。
【0077】
ガスの分岐点を精度よく調整するためには圧力検知部15は最低3か所あるのが望ましい。例えば、1か所は境界BR(目標位置)に、その上下流に最低1か所ずつで、合計3か所に圧力検知部15を配置すればよい。しかしながら、3か所未満の場合でも、3か所以上設けた場合よりも精度は劣るが、冷却区間Z21に設置された観察窓からガス流れ方向を確認しながら分岐点Sの位置を調整することは可能である。
【0078】
仕切り壁10aは、耐火物からなるので、非常に重い。そのため、仕切り壁10aの昇降は導入部9による調整に比べて応答性が悪い。したがって、その点を考慮したガスの分岐点Sの位置調整を行う必要がある。例えば、加熱ゾーンZ1での加熱バーナの燃焼量が比較的低い製造開始時の場合には、加熱ゾーンZ1での圧力損失が定格運転時に比べて小さくなることが予想されるため、この仕切り壁10aと炉床部3との開口面積をあらかじめ狭く調整しておくことで、より短時間でガスの分岐点Sの位置を好ましい位置に調整が可能である。還元鉄の製造中では、圧力検知部15によって検知された圧力の変化に基づいて、導入部9の調節弁9cによって空気の導入量を細かく調整するようにすればよい。これによって、加熱ゾーンZ1から発生する排気ガスの量の変化に高い応答性で対応することが可能になる。
【0079】
以上のように、本実施形態の回転炉床炉1および還元鉄の製造方法では、流量調整動作において、流量調整部10が導入部9と排気部7との間において非加熱ゾーンZ2の開口面積を調整することにより、当該非加熱ゾーンZ2のガス流れFL4(すなわち、排気ガスの順方向ガス流れFL2および導入空気流れFL3が合流したガス流れ)の流量を調整する。これにより、当該導入部9と排気部7との間における圧力差、すなわち圧力損失を当該ガス流れFL4に与えることが可能である。したがって、加熱ゾーンZ1での排気ガス量が大きく変動することで加熱ゾーンZ1の圧力損失が変動しても、この圧力バランスを取るために流量調整部10による流量調整動作及び導入動作の一方もしくは両方によって非加熱ゾーンZ2の圧力損失を調整することが可能である。例えば、大きな変動に対しては流量調整動作によって行い、小さな変動に対しては導入動作によって行えばよい。これにより、加熱ゾーンZ1と非加熱ゾーンZ2の圧力バランスを取ることが可能になる。したがって、流量調整部10によって開口面積が調整された状態であれば、導入部9からの圧力調整用のガスである空気の導入量を低く抑えても、十分な圧力損失を得ることができ、排気ガスの2方向のガス流れFL1、FL2の分岐点Sの位置を加熱ゾーンZ1と非加熱ゾーンZ2の境界付近になるように調整することが可能である。
【0080】
本実施形態の回転炉床炉1は、流量調整部10を備えていることにより、非加熱ゾーンZ2の非常に限定された狭いエリア内で、当該非加熱ゾーンZ2を流れるガス流れFL4に圧力損失を与えることができる。そのため、非加熱ゾーンZ2のスペースを有効に活用することが可能である。一方、このような流量調整部10が無ければ、導入部9から導入される外部の空気によって、当該導入部9から排気部7までの区間全体に圧力損失を与える必要があるので、非常に大流量の導入空気が必要となるという問題が懸念される。しかし、上記実施形態の回転炉床炉1では、流量調整部10によってそのような問題は解消されるので、導入部9による導入空気の流量を抑えることが可能である。
【0081】
また、本実施形態の回転炉床炉1および還元鉄の製造方法では、流量調整部10は、加熱ゾーンZ1における回転方向Rの下流端において、加熱ゾーンZ1と非加熱ゾーンZ2との境界BRの圧力が環状空間2aにおいて最も高くなるように、非加熱ゾーンZ2を流れるガスの流量を調整する。流量調整部10が上記のように非加熱ゾーンZ2を流れるガスの流量を調整する。これにより、環状空間2a内部のガス流れFL1、FL2の分岐点Sを、加熱ゾーンZ1における回転方向Rの下流端において加熱ゾーンZ1と非加熱ゾーンZ2との境界BRに位置することが可能になる。これにより、加熱ゾーンZ1内部では排気ガスの流れが塊成物Pの移動方向(すなわち上記の回転方向R)に完全に対向する完全対向流に調整することが可能になる。その結果、上記熱交換効率が最も良い還元鉄の製造が可能になる。
【0082】
なお、分岐点Sは好ましくは境界BR上に位置するように調整されるのが最も好ましいが、現実の運転では境界BR上への正確な位置調整は難しい。したがって、現実的には分岐点Sが境界BR付近になるように運転することが好ましい。その理由は以下のとおりである。すなわち、分岐点Sが境界BRからずれて、加熱ゾーンZ1、非加熱ゾーンZ2のどちらに入っても炉全体の熱効率は下がる(燃費が悪くなる)。したがって、分岐点Sをできるだけ境界BRに近づけるような運転を行う。実際の運転では、非加熱ゾーンZ2の視認性確保のために、分岐点Sは加熱ゾーンZ1に少し入り込んだところで運転する。
【0083】
本実施形態の回転炉床炉1では、導入部9は、非加熱ゾーンZ2に導入される圧力調整用のガスの導入量を調整する調節弁9cを有している。したがって、本実施形態の還元鉄の製造方法のように、導入動作において、上記調節弁9cによって、非加熱ゾーンZ2に導入される圧力調整のガスの導入量を調整することにより、排気ガスのガス流れFL1、FL2の分岐点Sの位置を精度よく調整することが可能である。
【0084】
本実施形態の回転炉床炉1では、流量調整部10の仕切り壁10aを昇降することによって、当該仕切り壁10aの下端部と炉床部3との隙間によって形成される前記開口面積を調整することが可能である。それによって、非加熱ゾーンZ2を流れるガス流れFL4の流量を容易に調整することが可能である。また、仕切り壁10aは、構造が簡単であるので、例えば水冷支持金物に耐火物を施工した構造にすることが可能であり、耐久性が良くなる。
【0085】
(変形例)
上記実施形態の回転炉床炉1では、流量調整部10が昇降可能な仕切り壁10aを備えているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の変形例として、流量調整部10は、昇降可能な仕切り壁10aの代わりに、水平方向に延びる回転軸と、当該回転軸を回転中心として回転する仕切り板を設けてもよい。この場合、仕切り板の回転角度によって、仕切り板の上方および下方に形成される隙間の開口面積を変えることが可能である。