(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記配管と前記保温材との間の空間を保持するスペーサーを前記配管の外周に沿って螺旋状に捲回して備えること、を更に含む、ことを特徴とする請求項8に記載の配管に保温構造を取りつける方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内部に流体が流通する配管は、様々な目的で所定の温度に保たれる必要がある。
【0005】
具体的には、内部に外気温度より低い温度の流体(例えばLPG、LNG等の低温流体)が流通する配管は、配管の内圧が高まることを防止するために保温(保冷)される必要がある。
【0006】
また、内部に外気温度より高い温度の流体(例えば、酸露点を超える温度で配管内を流通する亜硫酸ガス等)が流通する配管は、配管が冷やされることにより流体が液化することを防止するために所定の温度に保たれる必要がある。
【0007】
例えば、低温流体が流通する配管において保温が十分でない場合、該配管の外表面に外気の水蒸気が固化・堆積し霜が付着することがある。
【0008】
また、内部に低温流体が流通する配管には、該配管内部の温度上昇を防止するために、該配管の周囲に直接保温材(断熱材、保冷材ともいう)を取り付けられることがある。更に、配管が屋外に設置される場合、該配管は直接雨水に晒されて保温材が含水する場合や、大気中の水分を吸水して含水する場合には保温材が本来有する断熱性能を大きく低下させることになる。このような外部からの影響を低減するために、配管の周囲に直接備えられる保温材の最外層に防湿層(防水層ともいう)が取り付けられることがある。
【0009】
保温材の最外層に防湿層(防水層)が取り付けられる場合であっても、防湿層(防水層)の経時劣化や施工不具合が有る場合は、保温材等が前述の外部環境に長い期間晒されることとなり、雨水や大気中の水分を含水して保温材が本来有する断熱性能を大きく低下させてしまうこととなる。このように保温材等が含水し保温材等の劣化が進むことで、保温材が本来有する断熱性能を更に低下させる。
【0010】
雨水や大気中の水分の含水による断熱性能の低下は、配管の周囲の霜の付着を助長することになり、多くの霜が配管の外表面に付着することによって配管に負荷がかかり、配管に予期せぬダメージが発生することも懸念される。
【0011】
一般的に、このような配管に付着した霜は、人間の手によって直接削り落とすしかなかった。また、劣化した保温材等については、含水によって低下した断熱性能を回復させる手段がないため、一旦劣化した保温材等を取り除き、新しい保温材を再度取り付ける措置を取らざるを得なかった。
【0012】
他の例として、前述の亜硫酸ガスのような高温流体が流通する配管において保温が十分でなく、配管の内側が流通するガスの酸露点以下に冷やされた場合、配管の内部が液化した流体に晒されることとなり、配管の内側から腐蝕が進行することとなる。
【0013】
また、高温流体が流通する配管においても低温流体が流通する配管と同様に、配管の周囲に直接保温材が取り付けられることがある。外装材の施工不具合や経時劣化により防水が不十分な状態であると、該保温材に雨水等が含水することになる。
【0014】
配管の周囲に直接に取り付けられた保温材に含水した雨水等は、内部に高温流体が流通する配管の場合には、配管の温度が高いために時間の経過とともに徐々に乾燥することとなるが、装置の運休に伴い配管温度が低下した場合には保温材が含水したままになる。
【0015】
装置の始動に伴い配管の温度が上昇することで、再度乾燥するが、この乾燥・含水を繰り返すことで、配管の外側からも腐食が進行することとなる。
【0016】
一般的に、このように腐蝕が進行した配管については新たな配管に交換する等、大掛かりな工事が必要となり、また、劣化した保温材についても、低下した断熱性能を回復させる手段がないため、一旦劣化した保温材等を取り除き、新しい保温材を再度取り付ける措置を取らざるを得なかった。
【0017】
本発明の目的は、内部に流体が流通する配管を保温する保温構造の提供、及び該配管に該保温構造を取りつける方法を提供することにある。
【0018】
また、本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するための本発明の配管保温構造は、内部に流体が流通する配管を保温する配管保温構造であって、前記配管の外表面と離間して、前記配管の全周を覆うように備えられた保温材と、前記配管と前記保温材との間の空間に、気体を流通させるための気体注入口と、前記空間に流通する前記気体を該配管保温構造の外部に排気するための気体排気口と、を含む、ことを特徴とする配管保温構造であることを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決するための本発明の配管に保温構造を取りつける方法は、内部に流体が流通する配管に、該配管を保温する保温構造を取りつける方法であって、前記配管の外表面と離間して、前記配管の全周を覆うように保温材を巻きつけること、前記配管と前記保温材との間の空間に気体を注入するための、気体注入口を備えること、前記空間に注入された前記気体を該空間の外部に排気するための、気体排気口を備えること、を含むことを特徴とする配管に保温構造を取りつける方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、内部に流体が流通する配管を保温する保温構造の提供、及び該配管に該保温構造を取りつける方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第一実施態様に係る保温構造]
以下、本発明の第一実施形態に係る保温構造について図を参照して説明する。なお下記においては、配管に外気温度より低い温度の流体が流通することとして説明するが、配管に外気温度以上の温度の流体が流通することとしてもよい。
【0024】
図1は、第一実施形態に係る保温構造を、配管に装着した状態で示す斜視図である。
図2は、
図1にて示される保温構造の分解斜視図である。
図3は、
図1におけるIII−III線における断面を示す図である。
図4は、
図1におけるIV−IV線における断面を示す図である。
【0025】
第一実施形態に係る保温構造10は、内部に流体が流通する配管を保温する保温構造10であって、前記配管500の外表面と離間して、前記配管500の全周を覆うように備えられた保温材101と、前記配管500と前記保温材101との間の空間SPに、気体Gを注入するための気体注入口102と、前記空間SPに注入された前記気体Gを該空間SPの外部に排気するための気体排気口103と、を含む、ことを特徴とする。
【0026】
ここで、被保温体である配管500は、内部に外気温度より低い温度の流体を流通する配管であることとしてもよい。より具体的には、例えばLPG、LNG等の低温流体を流通する配管500であることとしてもよい。配管500の内部に形成された中空部501には、輸送すべき液体あるいは気体が流通することとなる。
【0027】
ここで低温流体とは、具体的には20℃以下の流体であることとしてもよく、−170℃〜20℃の流体であることとしてもよい。
【0028】
上記配管500は、例えば炭素鋼によって形成されたものであることとしてもよいし、ステンレス鋼(SUS)等の合金鋼によって形成されたものであることとしてもよい。また、配管500は、ポリエチレン配管であることとしてもよいし、SUSとプラスチックの二層構造を有するプラスチック被覆配管であることとしてもよい。なお、配管500の材質は上記例示した材質に限定されるものではない。
【0029】
図1を参照すると、被保温体である配管500は、例えば炭素鋼鋼管502の周囲に保温材503が備えられ、更に該保温材503の周囲に外装材504が備えられているものである。
【0030】
以下、第一実施形態に係る保温構造10の一部を構成する保温材101と、被保温体である配管500に備えられる保温材503とを区別するために、配管500に備えられる保温材を特に“既設保温材503”と呼び、保温構造10に備えられる保温材は単に“保温材101”と呼ぶこととする。
【0031】
また、第一実施形態に係る保温構造10の一部を構成する外装材106と、被保温体である配管500に備えられる外装材504とを区別するために、配管500に備えられる外装材を特に“既設外装材504”と呼び、保温構造10に備えられる外装材は単に”外装材106”と呼ぶこととする。
【0032】
既設保温材503は、配管500の外気による温度上昇を抑制するために設けられた断熱材であることとしてもよい。既設保温材503として用いることができる断熱材は、特に限定されないが、例えばけい酸カルシウム(ゾノライト系ケイ酸カルシウム等)、パーライト等の断熱性無機多孔質成形体や、グラスウール、ロックウール等の断熱性無機繊維体や、硬質ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、フェノールフォーム等の断熱性発泡プラスチック成形体や、ポリエステル不織布等の有機材料や、若しくはこれらの複合材料を好ましく用いることができる。
【0033】
また、既設保温材503は、断熱材以外にも、断熱材兼吸音材又は吸音材であることとしてもよい。すなわち、配管500は防音ラギング施工された配管であることとしてもよい。防音ラギング施工は、例えば炭素鋼鋼管502内部を流動する流体の振動が炭素鋼鋼管502の管壁に伝搬し配管500の周囲に拡散する騒音を遮音する。断熱材兼吸音材は、特に限定されないが、ロックウール等好ましく用いることができる。
【0034】
更に、既設保温材503は、単層で形成されていることとしてもよいし、所定の機能を有する層が複数積層されて形成されていることとしてもよい。例えば、既設保温材503が防音ラギング施工されたものである場合、断熱材層と、吸音材層とが積層されたものを適宜使用することができる。
【0035】
既設外装材504は、既設保温材503を保護するために設けられるカバー部材であることとしてもよい。既設外装材504としては、例えば、着色メッキ鋼板、ステンレス鋼板、及びアルミニウム鋼板等の金属板を好ましく用いることができる。又は、既設外装材504は、鋼板(鉄、ステンレス、アルミニウム等)、金属箔、ラバー、及び樹脂から選択される少なくとも二以上の部材によって形成されることとしてもよい。
【0036】
また、既設外装材504は、単層で形成されていることとしてもよいし、所定の機能を有する層が複数積層されて形成されていることとしてもよい。例えば、既設保温材503の保護機能を目的とする金属板等と、制振機能を有する制振材と、で構成されることとしてもよい。また既設外装材504に用いられる制振材は鉛であることとしてもよい。特に、鉛で形成された制振材を含む既設外装材504は、上述の防音ラギング施工された配管において、断熱材兼吸音材と組み合わせて好適に用いることができる。
【0037】
ところで、既設保温材503としては、その撥水性を高める処理が施された断熱性無機多孔質成形体や断熱性無機繊維体を用いることもできる。しかしながら、仮にこのような撥水処理を行った断熱性無機多孔質成形体や断熱性無機繊維体であっても、既設保温材503を完全に非透水性を有するものとすることはできず、少なからず透水性を有するものとなる。
【0038】
また、既設保温材503として非透水性の断熱性発泡プラスチック成形体を用いたとしても、何らかの理由で防湿層に不備がある又は生じた場合は、水蒸気が断熱性の発泡プラスチック成形体を透過して内部に侵入し既設保温材503(保冷材)は含水する。水蒸気の透過による既設保温材503(保冷材)の含水は、撥水性が高める処理がされた断熱性無機多孔質成形体や断熱性無機繊維体でも同様に発生する。
【0039】
第一実施形態に係る保温構造10において、配管500は屋外に配置されるものであることとしてもよい。この場合、配管500は、雨水等に晒され得る環境下に設置されることとなる。
【0040】
図1に示されるように、配管500においては、既設外装材504が最外層として既設保温材503の外周の全体を覆っているため、雨水によって保温材に水が浸入することは、ある程度防止することができる。
【0041】
しかしながら、既設外装材504自身が、施工不具合や錆び等の腐食、その他外部からの何らかの原因により防水が不完全な状態になると、既設保温材503の外周の全体を覆う状態で無くなることが起こり得る。防湿層が健全であれば、既設保温材が侵入した雨水等を吸い含水することを防ぐことができるが、防湿層に何らかの原因で不備がある場合は、既設保温材503へ空気中の水分が結露となり浸入し、又は雨水等が浸入し、既設保温材503が含水することが起こり得る。
【0042】
また、既設外装材504が健全であったとしても、何らかの原因で防湿層に不備がある又は生じた場合は、既設保温材503へ水蒸気が侵入し、既設保温材503が含水することが起こり得る。
【0043】
この場合、断熱性無機多孔質成形体等で形成される既設保温材503の内部の空隙には、熱伝導性が空気よりも高い水が保持されることとなり、既設保温材503の断熱性が低下することとなる。
【0044】
既設保温材503の断熱性能の低下と、外部水蒸気の含水は、内部に外気温度よりも低い温度の流体を流通させる配管500周囲の結露や結氷の付着を助長することになる。これらの結露や結氷は、既設外装材及び/又は架台の腐食の発生、或いは表面に付着した氷の落下などの安全上の問題が生じさせる場合も懸念される。
【0045】
そこで、第一実施形態に係る保温構造10を、断熱性能が低下した既設保温材503を有する配管500に直接取り付けし、新たな配管500の保温構造10として、例えば、
図1〜
図4に示すような構造を構築する。
【0046】
図1〜4に示されるように、保温構造10は、配管500の外表面と離間して、配管500の全周を覆うように備えられた保温材101と、配管500と保温材101との間の空間SPに気体Gを注入するための気体注入口102と、空間SPに注入された気体Gを該空間SPの外部に排気するための気体排気口103とを含むものである。
【0047】
保温材101は、既設保温材503と同様に配管500の外気による温度上昇を抑制するために設けられた断熱材であることとしてもよい。保温材101として用いることができる断熱材は、特に限定されないが、例えばけい酸カルシウム(ゾノライト系ケイ酸カルシウム等)、パーライト等の断熱性無機多孔質成形体や、グラスウール、ロックウール等の断熱性無機繊維体や、硬質ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、フェノールフォーム等の断熱性発泡プラスチック成形体や、ポリエステル不織布等の有機材料や、若しくはこれらの複合材料を好ましく用いることができる。
【0048】
保温材101の厚さに特に制限は無く、配管500の太さに応じて適宜選択することができる。例えば、保温材101の厚さは、3〜30mmの範囲であることとしてもよいし、2〜20mmの範囲であることとしてもよい。
【0049】
前述のように、保温材101は外気の水蒸気や雨水が浸透し含水することによって断熱性能が著しく減少してしまう。このため、
図2〜4に示されるように、保温材101の配管500と対向する側とは反対側には外部からの水蒸気や雨水の浸入を抑制する第一防湿材104aを備えることとしてもよい。
【0050】
第一防湿材104aは、例えば、樹脂シート、金属箔及び樹脂若しくは紙との複合シートにて実現されることとしてもよく、より具体的には、PE(ポリエチレン)シート、PTFE(ポリテトラフロオロエチレン)シート、アスファルトルーフィング、ゴムアスファルトシート、ブチルゴムシート、アルミクラフト紙、アルミガラスクロス、アルミ箔、アルミ箔とPET(ポリエチレンテレフタレート)との複合シート、これらを単独または積層した複合シートにて実現されることとしてもよい。
【0051】
また、第一防湿材104aが備えられる側とは反対、すなわち、保温材101の配管500と対向する側には、雨水等を含浸している既設保温材503から揮散した水分の浸透を抑制する第二防湿材104bを備えることとしてもよい。
【0052】
第二防湿材104bは、第一防湿材104a同様、例えば、樹脂シート、金属箔及び樹脂若しくは紙との複合シートにて実現されることとしてもよく、より具体的には、PE(ポリエチレン)シート、PTFE(ポリテトラフロオロエチレン)シート、アスファルトルーフィング、ゴムアスファルトシート、ブチルゴムシート、アルミクラフト紙、アルミガラスクロス、アルミ箔、アルミ箔とPET(ポリエチレンテレフタレート)との複合シート、これらを単独または積層した複合シートにて実現されることとしてもよい。
【0053】
第一、第二防湿材104a,104bの厚さに特に制限は無く、適宜選択することができる。例えば、第一、第二防湿材104bの厚さは、0.02〜3mmの範囲であることとしてもよい。
【0054】
なお、第一実施形態に係る保温構造10においては、第一、第二防湿材104a,104bの両方が備えられているが、いずれか一方の防湿材を備えることとしてもよい。
【0055】
保温材101が、配管500の外表面と離間して配管500の全周を覆うように備えられることによって、配管500と保温材101との間には空間SPができることとなる。該空間SPに気体Gが流通することにより、既設保温材503に含浸した水の揮散及び/又は氷結の昇華が促進される。そして、既設保温材503が乾燥することによって、該既設保温材503の断熱性能は回復することとなる。
【0056】
保温構造10は、配管500と保温材101との間の空間SPに気体Gを流通させるために、該空間SPに気体Gを注入するための気体注入口102と、空間SPに注入された気体Gを該空間SPの外部に排気するための気体排気口103が備えられている。すなわち、該空間SPを流通することによって既設保温材503からの水分を含んだ湿った気体Gは、気体排気口103を経て該空間SPの外部に排気される。
【0057】
図2〜4に示されるように、第一実施形態の保温構造10の一部を構成する、気体注入口102と、気体排気口103とは、保温材101に貫設されることとしてもよい。
【0058】
また、配管500と保温材101との間の空間SPに注入される気体Gは、一定圧若しくは一定流速の気体Gであることが好ましい。したがって、気体注入口102には気体Gを送り込むためのポンプ(図示なし)が接続されることとしてもよい。あるいは一定圧若しくは一定流速の気体Gが排出されるように、気体Gを排出するためのポンプが気体排気口103に接続されることとしてもよい。
【0059】
また、配管500と保温材101との間の空間SPにおいて、よりスムーズに気体Gが流通するように、気体注入口102及び/又は気体排気口103には逆止弁(図示なし)が備えられることとしてもよい。
【0060】
また、気体注入口102から配管500と保温材101との間の空間SPに注入される気体Gは、水分を含有していない乾燥した気体Gであることが好ましい。例えば気体注入口102から大気中の空気を取り入れ、該空間SP内に流通させる場合、大気中の空気を予めシリカゲル等の乾燥材を通過させた後、気体注入口102から該空間SPに、水分量が低減された大気中の空気を注入することとしてもよい。すなわち、気体注入口102に気体Gを取り入れるための流路上に、乾燥材(図示なし)が備えられることとしてもよい。
【0061】
また、乾燥気体は、より具体的には、露点温度が−10℃以下の気体Gであることとしてもよいし、−30℃以下の気体Gであることとしてもよいし、−50℃以下の気体Gであることとしてもよい。
【0062】
また、乾燥気体を配管500と保温材101との間の空間SPに供給する場合、気体注入口102に気体Gを取り入れるための流路上に、既存の乾燥空気発生装置(図示なし)が取り付けられることとしてもよい。
【0063】
また、保温構造10は、
図2〜4に示されるように、配管500と保温材101との間の空間SPを保持するスペーサー105を更に含む。このように、スペーサー105を備えることによって、空間SP内の気体Gの流通はよりスムーズなものとなり、本願発明の効果を更に高めることとなる。
【0064】
スペーサー105の厚さを変更することによって、配管500と保温材101との間の空間SPの容積を適宜設定することができる。例えば、スペーサー105の厚さは、3〜30mmの範囲であることとしてもよいし、2〜20mmの範囲であることとしてもよい。
【0065】
また、スペーサー105を上記説明した保温材101と同一の材料にて形成することとしてもよい。スペーサー105自体が保温材と同様の機能を備えることによって、本願発明の効果を更に高めることとなる。
【0066】
より具体的にはスペーサー105は例えば、けい酸カルシウム(ゾノライト系ケイ酸カルシウム等)、パーライト等の断熱性無機多孔質成形体や、グラスウール、ロックウール等の断熱性無機繊維体や、硬質ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、フェノールフォーム等の断熱性発泡プラスチック成形体や、ポリエステル不織布等の有機材料や、若しくはこれらの複合材料によって形成されることとしてもよい。
【0067】
第一実施形態に係る保温構造10の一部を構成するスペーサー105は、
図2に示されるように、配管500の外周に沿って螺旋状に捲回して備えられる。スペーサー105を螺旋状に捲回して備えることによって、配管500の外周全体に空間SPを配置することができ、換言すると、配管500の外周全体に気体注入口102から注入された気体Gが流通することとなり、本願発明の効果を更に高めることとなる。
【0068】
また、保温構造10は、
図1〜4に示されるように、最表面に外装材106が備えられることとしてもよい。外装材106は、保温材101を保護するために設けられる金属製のカバー部材である。外装材106としては、例えば、着色メッキ鋼板やステンレス板等の金属板を好ましく用いることとしてもよい。
【0069】
図1に示されるように、保温構造10において、外装材106が最外層として保温構造10の全体を覆っているため、雨水によって保温構造10内に水が浸入することは、ある程度防止することができる。
【0070】
また、
図1に示されるように保温構造10は、その端部に、保温構造10と配管500との隙間を埋めるシール材107が備えられることとしてもよい。また、シール材107は、例えばシリコーンシーラント等によって実現されることとしてもよい。
【0071】
なお、保温構造10は、配管500とのシール性が保てるのであれば、単に結束バンド等を用いて、保温構造10の端部を配管500に固定することとしてもよい。
【0072】
[第一実施態様に係る保温構造を配管に取りつける方法]
第一実施態様に係る保温構造10を配管500に取りつける方法は、内部に流体が流通する配管500に、該配管500を保温する保温構造10を取りつける方法であって、前記配管500の外表面と離間して、前記配管500の全周を覆うように保温材101を巻きつけること、前記配管500と前記保温材101との間の空間SPに気体Gを注入するための、気体注入口102を備えること、前記空間SPに注入された前記気体Gを該空間SPの外部に排気するための、気体排気口103を備えること、を含む、ことを特徴とする。
【0073】
また、第一実施態様に係る保温構造10を配管500に取りつける方法は、既に設置されている配管500の所定位置に直接取り付けることが可能である。すなわち、保温構造10を配管500に取りつける工程において、既存配管500を外したりする手間は不要である。
【0074】
第一実施形態に係る保温構造10を配管500に施工する手順について下記に説明する。
【0075】
はじめに、施工する配管箇所の状態を確認し、顕著な霜が付着している場合には、事前に取り除いておくことが好ましい。
【0076】
次いで、配管500の外表面と離間して、前記配管500の全周を覆うように保温材101を巻きつけて取りつける。この際事前に、配管500と保温材101との間の空間SPを保持するスペーサー105を配管500の外周に沿って螺旋状に捲回して備えることにより、簡便に保温材101を取りつけることができ好ましい。
【0077】
保温材101の取りつけは、シート形状を有するもの保温材101を配管500の周方向に沿って捲回して備えられることとしてもよい。
【0078】
また、保温材101は複数の部分に分割可能に形成されていることとしてもよい。例えば、保温材101は、施工する配管500の周方向において複数に分割可能な円筒成形体として形成されたものを用いることとしてもよい。例えば、保温材101は配管500の下方側部分の外周を覆う半円筒形状の下側保温材(図示なし)と、上方側部分の外周を覆う半円筒形状の上側保温材(図示なし)と、から構成されることとしてもよい。
【0079】
その後、配管500と保温材101との間の空間SPに気体Gを注入するための気体注入口102と、空間SPに注入された気体Gを該空間SPの外部に排気するための気体排気口103を備える。気体注入口102と、気体排気口103とは、それぞれの孔径に相応する形の穴を配管500に取り付けられた保温材101に形成した後、該穴に差し込むように貫設することとしてもよい。
【0080】
なお、第一実施形態に係る保温構造10を配管500に取りつける方法においては、保温構造10の端部と配管500との隙間に、シリコーンシーラントを用いて形成されるシール材107を備えることとする。
【0081】
[第一実施形態に係る保温構造の取りつけ例]
図5は、第一実施形態に係る保温構造10が他の配管600に設置された状態における、気体注入口の周辺における周方向断面を示す断面図である。
【0082】
このように、第一実施形態に係る保温構造10は、既設保温材等が備えられておらず、単に管のみで構成される配管600にも適用することができる。
【0083】
この場合、保温構造10は配管600を保温するとともに、配管600の外表面に外気の水蒸気が固化・堆積し霜が付着することを防止することとなり、多くの霜が配管600の外表面に付着することに起因する配管600の損傷を抑制する効果を奏することとなる。
【0084】
なお、配管600に外気温度以上の温度の流体が流通する場合においても、保温構造10は配管600を所定温度以上に保ち、また、配管600の外表面に外気の水蒸気が付着することを防止することとなり、配管600の腐食等による損傷を抑制する効果を奏することとなる。
【0085】
[第二実施形態に係る保温構造]
第二実施形態に係る保温構造20は、第一実施形態に係る保温構造10と比較して、スペーサーが異なるものである。他の構成については第一実施形態に係る保温構造10と同一のものであるため、説明を省略することとする。
【0086】
図6は、第二実施形態に係る保温構造の分解斜視図である。
【0087】
第二実施形態に係る保温構造20の一部を構成するスペーサーは、
図6に示されるように、コルゲート板である。なおコルゲート板205とは、プレス加工された波板のことを意味することとしてもよい。コルゲート板205には、規則正しい幅の凹凸が形成されている。
【0088】
第二実施形態に係る保温構造20においてスペーサーとして機能するコルゲート板205は、例えば、金属、プラスチック等によって形成されることとしてもよい。より具体的には、コルゲート板205は、アルミニウムによって形成されることとしてもよいし、ステンレス鋼によって形成されることとしてもよい。
【0089】
コルゲート板205は、コルゲート板205の凹凸溝の延伸方向と、配管500の延伸方向(
図6中のx方向)とが一致するように、配管500に捲回して備えられることによって、より簡便に配管500と保温材101との間の空間SPを保持するスペーサーとして機能することとなる。
【0090】
[第三実施形態に係る保温構造]
第三実施形態に係る保温構造30は、第一実施形態に係る保温構造と比較して、気体注入口302及び/又は気体排気口303の位置が異なるものである。他の構成については第一実施形態に係る保温構造10と同一のものであるため、説明を省略することとする。
【0091】
図7は、第三実施形態に係る保温構造が配管に設置された状態における、気体注入口の周辺における周方向断面を示す断面図である。
【0092】
第三実施形態に係る保温構造30の気体注入口302及び/又は気体排気口303の位置は、
図7に示されるように、配管500の鉛直方向(
図7におけるz方向)の下半分側(
図7におけるz1側)の位置に備えられている。
【0093】
水分を含浸し断熱性能が低下した配管500の既設保温材503の水分密度は、鉛直方向の下半分側(
図7におけるz1側)の方が、上半分側(
図7におけるz2側)と比較して高いものとなる。そして、気体注入口302及び/又は気体排気口303が設置される場所の周辺は、配管500と保温材101との間の空間SP内においても流通する気体Gの量が多いものとなる。
【0094】
第三実施形態に係る保温構造30の気体注入口302及び/又は気体排気口303は、既設保温材503の水分密度の高い場所に置かれることとなるため、既設保温材503の含浸する水分をより効率よく揮散させることとなり、既設保温材503の断熱性能の回復が早いものとなる。
【0095】
なお、本発明の配管保温構造は、上記説明した実施形態に限られるものではない。すなわち、被保温体である配管500は、水平方向にのみに延びる配管に限られず、例えば、傾斜して配置された配管や、屈曲したエルボ部分を含む配管を含むものであることとしてもよい。更に、本発明の配管保温構造は、例えば、保温材で覆われた、横型又は縦型の既設の機器の胴体部や鏡部のような被保温体に対して使用されることとしてもよい。
【0096】
また、例えば、本発明に係る配管に保温構造を取りつける方法は、上述したような配管のような被保温体に限られず、例えば、傾斜して配置された配管や、屈曲したエルボ部分を含む配管に適用されることとしてもよい。更に、本発明に係る配管に保温構造を取りつける方法は、例えば、保温材で覆われた、横型又は縦型の既設の機器の胴体部や鏡部のような被保温体に対しても適応されることとしてもよい。