(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明に係るエチレン/α−オレフィン共重合体(以下、単に「本発明の共重合体」と称することがある。)、その製造方法および潤滑油について詳細に説明する。
【0045】
本発明の共重合体は、下記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物(A)、ならびに、有機金属化合物(B−1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)および前記架橋メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B−3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を含むオレフィン重合触媒の存在下で、エチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとを共重合することにより製造されたものである。
【0047】
<架橋メタロセン化合物(A)>
架橋メタロセン化合物(A)は、上記式[I]で表される。式[I]中のY、M、R
1〜R
14、Q、nおよびjを以下に説明する。
【0048】
(Y、M、R1〜R12、Q、nおよびj)
Yは、第14族原子であり、例えば、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子およびスズ原子が挙げられ、好ましくは炭素原子またはケイ素原子であり、より好ましくは炭素原子である。
【0049】
Mは、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、好ましくはジルコニウム原子である。
【0050】
R
1〜R
12は、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基からなる群より選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R
1からR
12までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、互いに結合していなくてもよい。
【0051】
ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20の環状飽和炭化水素基、炭素数2〜20の鎖状不飽和炭化水素基、炭素数3〜20の環状不飽和炭化水素基、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基等が例示される。
【0052】
炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖状飽和炭化水素基であるメチル基、エチル基、n-プロピル基、アリル(allyl)基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基など、分岐状飽和炭化水素基であるイソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、t-アミル基、ネオペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-プロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基、シクロプロピルメチル基などが例示される。アルキル基の炭素数は好ましくは1〜6である。
【0053】
炭素数3〜20の環状飽和炭化水素基としては、環状飽和炭化水素基であるシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルネニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基など、環状飽和炭化水素基の水素原子が炭素数1〜17の炭化水素基で置き換えられた基である3-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-シクロヘキシルシクロヘキシル基、4-フェニルシクロヘキシル基などが例示される。環状飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは5〜11である。
【0054】
炭素数2〜20の鎖状不飽和炭化水素基としては、アルケニル基であるエテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-メチルエテニル基(イソプロペニル基)など、アルキニル基であるエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)などが例示される。鎖状不飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは2〜4である。
【0055】
炭素数3〜20の環状不飽和炭化水素基としては、環状不飽和炭化水素基であるシクロペンタジエニル基、ノルボルニル基、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アズレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基など、環状不飽和炭化水素基の水素原子が炭素数1〜15の炭化水素基で置き換えられた基である3-メチルフェニル基(m-トリル基)、4-メチルフェニル基(p-トリル基)、4-エチルフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、ビフェニリル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基(メシチル基)など、直鎖状炭化水素基または分岐状飽和炭化水素基の水素原子が炭素数3〜19の環状飽和炭化水素基または環状不飽和炭化水素基で置き換えられた基であるベンジル基、クミル基などが例示される。環状不飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは6〜10である。
【0056】
炭素数1〜20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基(イソプロピリデン基)、エチルメチレン基、メチルエチレン基、n-プロピレン基などが例示される。アルキレン基の炭素数は好ましくは1〜6である。
【0057】
炭素数6〜20のアリーレン基としては、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、4,4'-ビフェニリレン基などが例示される。アリーレン基の炭素数は好ましくは6〜12である。
【0058】
ケイ素含有基としては、炭素数1〜20の炭化水素基において、炭素原子がケイ素原子で置き換えられた基であるトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等のアルキルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基等のアリールシリル基、ペンタメチルジシラニル基、トリメチルシリルメチル基などが例示される。アルキルシリル基の炭素数は1〜10が好ましく、アリールシリル基の炭素数は6〜18が好ましい。
【0059】
窒素含有基としては、アミノ基や、上述した炭素数1〜20の炭化水素基またはケイ素含有基において、=CH-構造単位が窒素原子で置き換えられた基、-CH
2-構造単位が炭素数1〜20の炭化水素基が結合した窒素原子で置き換えられた基、または-CH
3構造単位が炭素数1〜20の炭化水素基が結合した窒素原子またはニトリル基で置き換えられた基であるジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、N-モルフォリニル基、ジメチルアミノメチル基、シアノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピリジニル基など、N-モルフォリニル基およびニトロ基などが例示される。窒素含有基としては、ジメチルアミノ基、N-モルフォリニル基が好ましい。
【0060】
酸素含有基としては、水酸基や、上述した炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素含有基または窒素含有基において、-CH
2-構造単位が酸素原子またはカルボニル基で置き換えられた基、または-CH
3構造単位が炭素数1〜20の炭化水素基が結合した酸素原子で置き換えられた基であるメトキシ基、エトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシロキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、t-ブトキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、n-2-オキサブチレン基、n-2-オキサペンチレン基、n-3-オキサペンチレン基、アルデヒド基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トリメチルシリルカルボニル基、カルバモイル基、メチルアミノカルボニル基、カルボキシ基、メトキシカルボニル基、カルボキシメチル基、エトカルボキシメチル基、カルバモイルメチル基、フラニル基、ピラニル基などが例示される。酸素含有基としては、メトキシ基が好ましい。
【0061】
ハロゲン原子としては、第17族元素であるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが例示される。
【0062】
ハロゲン含有基としては、上述した炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基または酸素含有基において、水素原子がハロゲン原子によって置換された基であるトリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基などが例示される。
【0063】
Qは、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から、同一のまたは異なる組合せで選ばれる。
【0064】
ハロゲン原子および炭素数1〜20の炭化水素基の詳細は、上述のとおりである。Qがハロゲン原子である場合は、塩素原子が好ましい。Qが炭素数1〜20の炭化水素基である場合は、該炭化水素基の炭素数は1〜7であることが好ましい。
【0065】
アニオン配位子としては、メトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基などのアルコキシ基、アセテート、ベンゾエートなどのカルボキシレート基、メシレート、トシレートなどのスルホネート基などを例示することができる。
【0066】
孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル化合物などを例示することができる。
【0067】
jは1〜4の整数であり、好ましくは2である。
【0068】
nは1〜4の整数であり、好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。
【0069】
(R13およびR14)
R
13およびR
14は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、アリール基、置換アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基からなる群より選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R
13およびR
14は互いに結合して環を形成していてもよく、互いに結合していなくてもよい。
【0070】
炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基の詳細については、上述の通りである。
【0071】
アリール基としては、前述した炭素数3〜20の環状不飽和炭化水素基の例と一部重複するが、芳香族化合物から誘導された置換基であるフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、テトラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、インデニル基、アズレニル基、ピロリル基、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基などが例示される。アリール基としては、フェニル基または2-ナフチル基が好ましい。
【0072】
前記芳香族化合物としては、芳香族炭化水素および複素環式芳香族化合物であるベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ピレン、インデン、アズレン、ピロール、ピリジン、フラン、チオフェンなどが例示される。
【0073】
置換アリール基としては、前述した炭素数3〜20の環状不飽和炭化水素基の例と一部重複するが、前記アリール基が有する1以上の水素原子が炭素数1〜20の炭化水素基、アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基により置換されてなる基が挙げられ、具体的には3-メチルフェニル基(m-トリル基)、4-メチルフェニル基(p-トリル基)、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、ビフェニリル基、4-(トリメチルシリル)フェニル基、4-アミノフェニル基、4-(ジメチルアミノ)フェニル基、4-(ジエチルアミノ)フェニル基、4-モルフォリニルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-フェノキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、3-メチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3-(トリフルオロメチル)フェニル基、4-(トリフルオロメチル)フェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、5-メチルナフチル基、2-(6-メチル)ピリジル基などが例示される。
【0074】
上記式[I]で表される架橋メタロセン化合物(A)において、nは1であることが好ましい。このような架橋メタロセン化合物(以下「架橋メタロセン化合物(A−1)」ともいう。)は、下記一般式[II]で表わされる。
【0076】
式[II]において、Y、M、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、Qおよびjの定義等は、上述のとおりである。
【0077】
架橋メタロセン化合物(A−1)は、上記式[I]におけるnが2〜4の整数である化合物に比べ、製造工程が簡素化され、製造コストが低減され、ひいてはこの架橋メタロセン化合物(A−1)を用いることでエチレン/α−オレフィン共重合体の製造コストが低減されるという利点が得られる。
【0078】
上記式[II]で表される架橋メタロセン化合物(A−1)において、R
1、R
2、R
3およびR
4は全て水素であることが好ましい。このような架橋メタロセン化合物(以下「架橋メタロセン化合物(A−2)」ともいう。)は、下記一般式[III]で表わされる。
【0080】
式[III]において、Y、M、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、Qおよびjの定義等は、上述のとおりである。
【0081】
架橋メタロセン化合物(A−2)は、上記式[I]におけるR
1、R
2、R
3およびR
4のいずれか一つ以上が水素原子以外の置換基で置換された化合物に比べ、製造工程が簡素化され、製造コストが低減され、ひいてはこの架橋メタロセン化合物(A−2)を用いることでエチレン/α−オレフィン共重合体の製造コストが低減されるという利点が得られる。また、一般に高温重合を行うことにより、エチレン/α-オレフィン共重合体のランダム性は低下することが知られているが、該架橋メタロセン化合物(A−2)を含むオレフィン重合触媒の存在下でエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーとを共重合する場合、高温重合であっても、得られるエチレン/α-オレフィン共重合体のランダム性が高いという利点も得られる。
【0082】
上記式[III]で表される架橋メタロセン化合物(A−2)において、R
13およびR
14のいずれか一方が、アリール基または置換アリール基であることが好ましい。このような架橋メタロセン化合物(A−3)は、R
13およびR
14がいずれもアリール基および置換アリール基以外の置換基である場合に比べ、生成するエチレン/α-オレフィン共重合体中の二重結合量が少ないという利点が得られる。
【0083】
架橋メタロセン化合物(A−3)において、R
13およびR
14のいずれか一方が、アリール基または置換アリール基であり、他方が炭素数1〜20のアルキル基であることがさらに好ましく、R
13およびR
14のいずれか一方が、アリール基または置換アリール基であり、他方がメチル基であることが特に好ましい。このような架橋メタロセン化合物(以下「架橋メタロセン化合物(A−4)」ともいう。)は、R
13およびR
14がいずれもアリール基または置換アリール基である場合に比べ、生成するエチレン/α-オレフィン共重合体中の二重結合量と重合活性とのバランスに優れ、この架橋メタロセン化合物を用いることでエチレン/α−オレフィン共重合体の製造コストが低減されるという利点が得られる。
【0084】
ある一定の重合器内全圧および温度の条件下で重合を実施する場合において、水素導入による水素分圧の上昇は重合モノマーであるオレフィンの分圧の低下を引き起こし、とりわけ水素分圧が高い領域において重合速度を低下させるという問題を生じる。重合反応器はその設計上許容される内部全圧が制限されているため、特に低分子量のオレフィン重合体を製造する際に過度な水素導入を必要とすると、オレフィン分圧が著しく低下するため、重合活性が低下する場合がある。しかしながら、架橋メタロセン化合物(A−4)を用いて本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体を製造する場合、上記架橋メタロセン化合物(A−3)を用いる場合に比べ、重合反応器に導入する水素量が低減され、重合活性が向上し、エチレン/α−オレフィン共重合体の製造コストが低減されるという利点が得られる。
【0085】
上記架橋メタロセン化合物(A−4)において、R
6およびR
11は隣接した置換基と互いに結合して環を形成していてもよい、炭素数1〜20のアルキル基および炭素数1〜20のアルキレン基であることが好ましい。このような架橋メタロセン化合物(以下「架橋メタロセン化合物(A−5)」ともいう。)は、R
6およびR
11が炭素数1〜20のアルキル基および炭素数1〜20のアルキレン基以外の置換基で置換された化合物に比べ、製造工程が簡素化され、製造コストが低減され、ひいてはこの架橋メタロセン化合物(A−5)を用いることでエチレン/α−オレフィン共重合体の製造コストが低減されるという利点が得られる。
【0086】
上記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物(A)、上記一般式[II]で表される架橋メタロセン化合物(A−1)、上記一般式[III]で表される架橋メタロセン化合物(A−2)、ならびに上記架橋メタロセン化合物(A−3)、(A−4)および(A−5)において、Mはジルコニウム原子であることがさらに好ましい。Mがジルコニウム原子である上記架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合触媒の存在下でエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーとを共重合する場合、Mがチタン原子またはハフニウム原子である場合に比べ重合活性が高く、エチレン/α−オレフィン共重合体の製造コストが低減されるという利点が得られる。
【0087】
(架橋メタロセン化合物(A)の例示等)
このような架橋メタロセン化合物(A)としては、
[ジメチルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジメチルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジメチルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、 [ジメチルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジメチルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、 [シクロヘキシリデン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(η
5-2-メチル-4-t-ブチルシクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、 [ジフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η
5-(2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)](η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチルフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチルフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチルフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、 [メチルフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチルフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、 [メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、 [ジフェニルシリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、 [ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、 [ジシクロヘキシルシリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[エチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[エチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[エチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、 [エチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[エチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
これらの化合物のジルコニウム原子をハフニウム原子に置き換えた化合物またはクロロ配位子をメチル基に置き換えた化合物
などが例示されるが、架橋メタロセン化合物(A)はこれらの例示に限定されない。尚、例示した架橋メタロセン化合物(A)の構成部分であるη
5−テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルは4,4,7,7−テトラメチル−(5a,5b,11a,12,12a-η
5)−1,2,3,4,7,8,9,10−オクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレニル基、η
5−オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルは1,1,4,4,7,7,10,10−オクタメチル−(5a,5b,11a,12,12a-η
5)−1,2,3,4,7,8,9,10−オクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレニル基をそれぞれ表わす。
【0088】
<化合物(B)>
本発明で使用される重合触媒は、上記の架橋メタロセン化合物(A)、ならびに有機金属化合物(B−1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)および架橋メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B−3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を含む。
【0089】
有機金属化合物(B−1)として、具体的には下記のような周期律表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が用いられる。
【0090】
(B−1a)一般式 R
amAl(OR
b)
nH
pX
q
(式中、R
aおよびR
bは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である)
で表される有機アルミニウム化合物。
【0091】
このような化合物として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムなどのトリ-n-アルキルアルミニウム、
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリ-2-メチルブチルアルミニウム、トリ-3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ-2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐状アルキルアルミニウム、
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム、
トリフェニルアルミニウム、トリ(4-メチルフェニル)アルミニウムなどのトリアリールアルミニウム、
ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド、
一般式(i-C
4H
9)
xAl
y(C
5H
10)
z(式中、x、y、zは正の数であり、z≦2xである。)で表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム、
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド、
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド、
一般式R
a2.5Al(OR
b)
0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム、
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのアルキルアルミニウムアリーロキシド、
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド、
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、
エチルアルミニウムジクロリドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム、
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド、
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドおよびその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム、
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム
などを例示することができる。また、上記一般式R
amAl(OR
b)
nH
pX
qで表される化合物に類似する化合物も使用することができ、例えば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C
2H
5)
2AlN(C
2H
5)Al(C
2H
5)
2などを挙げることができる。
【0092】
(B−1b)一般式 M
2AlR
a4
(式中、M
2はLi、NaまたはKを示し、R
aは炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)
で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。
【0093】
このような化合物として、LiAl(C
2H
5)
4、LiAl(C
7H
15)
4などを例示することができる。
【0094】
(B−1c)一般式 R
aR
bM
3
(式中、R
aおよびR
bは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M
3はMg、ZnまたはCdである。)
で表される周期律表第2族または第12族金属のジアルキル化合物。
【0095】
有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)としては、従来公知のアルミノキサンをそのまま使用することができる。具体的には、下記一般式[IV]および/または下記一般式[V]で表わされる化合物を挙げることができる。
【0097】
式[IV]および[V]中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。
【0098】
特にRがメチル基であるメチルアルミノキサンであってnが3以上、好ましくは10以上のものが利用される。これらアルミノキサン類に若干の有機アルミニウム化合物が混入していても差し支えない。
【0099】
本発明においてエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンとの共重合を高温で行う場合には、特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物も適用することができる。また、特開平2-167305号公報に記載されている有機アルミニウムオキシ化合物、特開平2-24701号公報、特開平3-103407号公報に記載されている二種類以上のアルキル基を有するアルミノキサンなども好適に利用できる。なお、本発明で用いられることのある「ベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物」とは、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であり、ベンゼンに対して不溶性または難溶性である化合物である。
【0100】
また、有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)として、下記一般式[VI]で表されるような修飾メチルアルミノキサン等も挙げることができる。
【0102】
式[VI]中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基、mおよびnはそれぞれ独立に2以上の整数を示す。
【0103】
この修飾メチルアルミノキサンはトリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて調製されるものである。このような化合物は一般にMMAOと呼ばれている。このようなMMAOはUS4960878公報およびUS5041584公報で挙げられている方法で調製することができる。また、東ソー・ファインケム社等からもトリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムを用いて調製した、Rがイソブチル基であるものがMMAOやTMAOといった名称で市販されている。このようなMMAOは各種溶媒への溶解性および保存安定性を改良したアルミノキサンであり、具体的には上記式[IV]および[V]で表わされる化合物のうちのベンゼンに対して不溶性または難溶性の化合物とは違い、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素に溶解する。
【0104】
さらに、有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)として、下記一般式[VII]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物も挙げることができる。
【0106】
式[VII]中、R
cは炭素数1〜10の炭化水素基を示す。R
dは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示す。
【0107】
架橋メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B−3)(以下、「イオン化イオン性化合物」または単に「イオン性化合物」と略称する場合がある。)としては、特開平1-501950号公報、特開平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP5321106号公報などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0108】
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物は、下記一般式[VIII]で表されるホウ素化合物である。
【0110】
式[VIII]中、R
e+としては、H
+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。R
f〜R
iは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる置換基であり、好ましくは置換アリール基である。
【0111】
上記カルベニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムカチオンなどの三置換カルベニウムカチオンなどが挙げられる。
【0112】
上記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n-プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキル置換アンモニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン、ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0113】
上記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(4-メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0114】
R
e+としては、上記具体例のうち、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルベニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0115】
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、カルベニウムカチオンを含む化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス{3,5-ジ-(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを例示することができる。
【0116】
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、トリアルキル置換アンモニウムカチオンを含む化合物として、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(4-メチルフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2-メチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス{4-(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(2-メチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4-メチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4-メチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス{4-(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムなどを例示することができる。
【0117】
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオンを含む化合物として、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、 N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを例示することができる。
【0118】
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、ジアルキルアンモニウムカチオンを含む化合物として、ジ-n-プロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどを例示することができる。
【0119】
その他、本出願人によって開示されているイオン性化合物(例えば特開2004-51676号公報参照)も制限無く使用が可能である。
【0120】
上記のイオン性化合物(B−3)は、1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いでもよい。
【0121】
有機金属化合物(B−1)としては、市販品のために入手が容易なトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムが好ましい。このうち、取り扱いが容易なトリイソブチルアルミニウムが特に好ましい。
【0122】
有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)としては、市販品のために入手が容易なメチルアルミノキサン、およびトリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムを用いて調製したMMAOが好ましい。このうち、各種溶媒への溶解性および保存安定性が改良されたMMAOが特に好ましい。
【0123】
イオン性化合物(B−3)としては、市販品として入手が容易であり、かつ重合活性向上への寄与が大きいことから、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0124】
化合物(B)としては、イオン性化合物(B−3)が好ましい。上記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物(A)とイオン性化合物(B−3)とを含むオレフィン重合触媒の存在下でエチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーとを共重合する場合、高い重合活性を発現し、エチレン/α−オレフィン共重合体の製造コストが低減されるという利点が得られる。また、重合活性が大きく向上することから、トリイソブチルアルミニウムとトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートとの組合せ、およびトリイソブチルアルミニウムとN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートとの組合せが特に好ましい。
【0125】
<担体(C)>
本発明では、オレフィン重合触媒の構成成分として、必要に応じて担体(C)を用いてもよい。
【0126】
本発明で用いてもよい担体(C)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
【0127】
多孔質酸化物として、具体的にはSiO
2、Al
2O
3、MgO、ZrO、TiO
2、B
2O
3、CaO、ZnO、BaO、ThO
2など、またはこれらを含む複合物または混合物、例えば天然または合成ゼオライト、SiO
2-MgO、SiO
2-Al
2O
3、SiO
2-TiO
2、SiO
2-V
2O
5、SiO
2-Cr
2O
3、SiO
2-TiO
2-MgOなどを使用することができる。これらのうち、SiO
2および/またはAl
2O
3を主成分とするものが好ましい。このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が0.5〜300μm、好ましくは1.0〜200μmであって、比表面積が50〜1000m
2/g、好ましくは100〜700m
2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3〜3.0cm
3/gの範囲にある。このような担体は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成してから使用される。
【0128】
無機塩化物としては、MgCl
2、MgBr
2、MnCl
2、MnBr
2等が用いられる。無機塩化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機塩化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いてもよい。
【0129】
粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、イオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって、構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含まれるイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl
2型、CdI
2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α-Zr(HAsO
4)
2・H
2O、α-Zr(HPO
4)
2、α-Zr(KPO
4)
2・3H
2O、α-Ti(HPO
4)
2、α-Ti(HAsO
4)
2・H
2O、α-Sn(HPO
4)
2・H
2O、γ-Zr(HPO
4)
2、γ-Ti(HPO
4)
2、γ-Ti(NH
4PO
4)
2・H
2Oなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。本発明で用いられる粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理として、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。
【0130】
イオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質(ゲスト化合物)を導入することをインターカレーションという。ゲスト化合物としては、TiCl
4、ZrCl
4などの陽イオン性無機化合物、Ti(OR)
4、Zr(OR)
4、PO(OR)
3、B(OR)
3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al
13O
4(OH)
24]
7+、[Zr
4(OH)
14]
2+、[Fe
3O(OCOCH
3)
6]
+などの金属水酸化物イオンなどが挙げられる。これらの化合物は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)
4、Al(OR)
3、Ge(OR)
4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)などを加水分解重縮合して得た重合物、SiO
2などのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物などが挙げられる。
【0131】
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
【0132】
担体(C)としての有機化合物としては、粒径が0.5〜300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が2〜14のα−オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0133】
<上記オレフィン重合触媒を用いた、エチレンとα−オレフィンとの共重合>
本発明の共重合体の製造方法は、上記オレフィン重合触媒の存在下で、エチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとを共重合する工程を含むことを特徴としている。
【0134】
本発明で用いられるα−オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、ビニルシクロヘキサンなどの炭素数3〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンを例示することができる。α−オレフィンとしては、炭素数3〜10の直鎖状または分岐状のα−オレフィンが好ましく、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンがより好ましく、得られる共重合体を用いた潤滑油の剪断安定性の点からプロピレンが最も好ましい。これらのα−オレフィンは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0135】
また、極性基含有モノマー、芳香族ビニル化合物、および環状オレフィンから選択される少なくとも1種を反応系に共存させて重合を進めることもできる。エチレンおよび炭素数が3〜20のα−オレフィンとの合計100質量部に対して、他のモノマーは、例えば20質量部以下、好ましくは10質量部以下の量で用いることができる。
【0136】
極性基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸などのα,β-不飽和カルボン酸類、およびこれらのナトリウム塩等の金属塩類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのα,β-不飽和カルボン酸エステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどの不飽和グリシジル類などを例示することができる。
【0137】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、メトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、アリルベンゼンなどを例示することができる。
【0138】
環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセンなどの炭素数3〜30、好ましくは3〜20の環状オレフィン類を例示することができる。
【0139】
本発明の共重合体の製造方法としては、上記のオレフィン重合触媒の存在下で、エチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとを共重合する方法であって、ポリマー中の各々のモノマー由来の構成単位の割合の合計を100モル%としたときに、エチレン由来の構成単位の割合が30〜70モル%の範囲にある共重合体(ただし、エチレン由来の構成単位とα−オレフィン由来の構成単位との合計を100モル%とする。)が得られるように重合する方法が挙げられる。
【0140】
エチレン由来の構成単位と炭素数が3〜20のα−オレフィン由来の構成単位とのモル比は、原料のモノマー比を調整することにより上記範囲内とすることができる。エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれる1種のオレフィンとを共重合する場合、エチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィンの仕込みモル比は、通常、エチレン:α−オレフィン = 10:90〜99.9:0.1、好ましくはエチレン:α−オレフィン = 30:70〜99.9:0.1、さらに好ましくはエチレン:α−オレフィン = 50:50〜99.9:0.1である。
【0141】
ランダム性の高いエチレン/α−オレフィン共重合体を生成可能なオレフィン重合触媒を使用する重合方法により、高温重合が可能となる。すなわち、該オレフィン重合触媒を使用することにより、高温重合時に生成するエチレン/α−オレフィン共重合体のランダム性の低下を抑制することができる。溶液重合においては、生成したエチレン/α−オレフィン共重合体を含む重合溶液の粘度が高温で低下するため、低温重合時に比べて重合器内のエチレン/α−オレフィン共重合体の濃度を上げることが可能となり、結果として重合器当りの生産性が向上する。本発明におけるエチレンおよびα−オレフィンの共重合は、溶液重合、懸濁重合(スラリー重合)などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できるが、このように、本発明の効果を最大限享受し得るという観点からは溶液重合が特に好ましい。
【0142】
オレフィン重合触媒の各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれる。また、触媒中の各成分の少なくとも2つ以上は予め接触されていてもよい。
【0143】
架橋メタロセン化合物(A)(以下「成分(A)」ともいう。)は、反応容積1リットル当り、通常10
-9〜10
-1モル、好ましくは10
-8〜10
-2モルになるような量で用いられる。
【0144】
有機金属化合物(B−1)(以下「成分(B−1)」ともいう。)は、成分(B−1)と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(B−1)/M]が、通常0.01〜50000、好ましくは0.05〜10000となるような量で用いられる。
【0145】
有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)(以下「成分(B−2)」ともいう。)は、成分(B−2)中のアルミニウム原子と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(B−2)/M]が、通常10〜5000、好ましくは20〜2000となるような量で用いられる。
【0146】
イオン性化合物(B−3)(以下「成分(B−3)」ともいう。)は、成分(B−3)と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(B−3)/M]が、通常1〜10000、好ましくは1〜5000となるような量で用いられる。
【0147】
重合温度は、通常-50℃〜300℃であり、好ましくは100℃〜250℃、さらに好ましくは130℃〜200℃である。前記範囲の重合温度領域では温度が高くなるに従い、重合時の溶液粘度が低下し、重合熱の除熱も容易となる。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaゲージ圧(MPa-G)、好ましくは常圧〜8 MPa-Gである。
【0148】
重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに、重合を反応条件の異なる二つ以上の重合器で連続的に行うことも可能である。
【0149】
得られる共重合体の分子量は、重合系中の水素濃度や重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する成分(B)の量により調節することもできる。水素を添加する場合、その量は生成する共重合体1kgあたり0.001〜5000NL程度が適当である。
【0150】
液相重合法において用いられる重合溶媒は、通常、不活性炭化水素溶媒であり、好ましくは常圧下における沸点が50℃〜200℃の飽和炭化水素である。重合溶媒としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素が挙げられ、特に好ましくは、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサンが挙げられる。重合対象であるα−オレフィン自身を重合溶媒として用いることもできる。尚、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類やエチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素も重合溶媒として使用することができるが、環境への負荷軽減の視点および人体健康への影響の最少化の視点からは、これらの使用は好ましくない。
【0151】
オレフィン重合体の100℃における動粘度は重合体の分子量に依存する。すなわち高分子量であれば高粘度となり、低分子量であれば低粘度となるため、上述の分子量調整により100℃における動粘度を調整する。また、減圧蒸留のような従来公知の方法により得られた重合体の低分子量成分を除去することで、得られる重合体の分子量分布(Mw/Mn)を3以下に調整することができる。さらに得られた重合体について、従来公知の方法により水添を行ってもよい。水添により得られた重合体の2重結合が低減されれば、酸化安定性および耐熱性が向上する。
【0152】
オレフィン重合体のガラス転移点(Tg)は、例えば重合系中のエチレン濃度や水素濃度、重合温度等を変化させることによって調節することができる。
【0153】
<共重合体>
本発明の共重合体は、構成単位であるエチレン単位の含量が、好ましくは30〜70モル%、より好ましくは40〜65モル%、特に好ましくは45〜60モル%の範囲であり、α−オレフィン単位の含量が、好ましくは30〜70モル%、より好ましくは35〜60モル%、特に好ましくは40〜55モル%の範囲である。各単位の組成が上記範囲にあることにより、得られる潤滑油組成物として優れた温度・粘度特性を発揮することができる。
【0154】
本発明の共重合体の重量平均分子量は1,000〜50,000の範囲であり、好ましくは2,000〜40,000、さらに好ましくは2,000〜20,000、特に好ましくは5,000〜20,000である。この範囲にあると、潤滑油に用いた場合の基油に対する増粘性と剪断安定性に優れる。
【0155】
本発明の共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は2.5以下であり、好ましくは1.1〜2.5の範囲にあり、より好ましくは1.2〜2.2の範囲にある。この範囲にあれば、得られる潤滑油組成物の剪断安定性が優れる。
【0156】
共重合体の数平均分子量および重量平均分子量は、分子量既知の標準物質(単分散ポリスチレン(PSt))を用いて較正されたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができ、これらの結果より分子量分布(Mw/Mn)を算出することができる。分子量分布が広いと、α−オレフィン(共)重合体中に含まれる所望の分子量から外れたより高分子量の成分および/または低分子量の成分が増加し、高分子量の成分は上述の理由により剪断安定性を低下させる。
【0157】
本発明の共重合体は、示差走査型熱量測定(DSC)によって測定されるガラス転移点(Tg)が、通常−50℃未満であり、好ましくは−55〜−90℃であり、より好ましくは−60〜−80℃の範囲にある。この範囲にあると、該共重合体を含有する潤滑油組成物は、従来の潤滑油組成物よりも低温における流動性に優れる。
【0158】
本発明において、共重合体の示差走査型熱量測定(DSC)によるガラス転移点(Tg)は、以下の方法によって測定される:
サンプルパンをDSCセルに配置し、DSCセルを窒素雰囲気下にて30℃(室温)から150℃まで10℃/分で昇温し、次いで、150℃で5分間保持した後、10℃/分で降温し、DSCセルを−100℃まで冷却する(降温過程)。次いで、100℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温し、昇温過程で得られるエンタルピー曲線の変曲点での接線の交点をガラス転移点(Tg)とする。ガラス転移点の(Tg)の求め方はJIS K7121 9.3に基づいて行った。
【0159】
本発明における共重合体は、下記式[1]で表されるB値が、1.1以上、好ましくは1.2以上である。
【0161】
式[1]中、P
Eはエチレン成分の含有モル分率を示し、P
Oはα−オレフィン成分の含有モル分率を示し、P
OEは全dyad連鎖のエチレン・α−オレフィン連鎖のモル分率を示す。
【0162】
上記B値が大きいほど、ブロック的な連鎖が少なく、エチレンおよびα−オレフィンの分布が一様であり、組成分布の狭い共重合体であることを示している。このブロック的連鎖の長さが共重合体の物性面における特性に影響を及ぼすことになり、B値が大きいほどブロック的連鎖が短く、流動点が低くなって良好な低温特性を示す。
【0163】
B値は、共重合体中における共重合モノマー連鎖分布のランダム性を示す指標であり、上記式[1]中のP
E、P
OおよびP
OEは、
13C NMRスペクトルを測定し、J. C. Randall [Macromolecules, 15, 353 (1982)]、J. Ray [Macromolecules, 10, 773 (1977)]らの報告に基づいて求めることができる。
【0164】
本発明によって得られる共重合体において、
1H−NMRで測定される分子鎖二重結合のビニル、ビニリデン、二置換オレフィンおよび三置換オレフィンの合計は、水添操作前において1000炭素当たり好ましくは8.0未満、より好ましくは5.0未満、さらに好ましくは3.5未満である。下限値は好ましくは1000炭素当たり0である。分子鎖二重結合量が当該範囲内にあると、水添操作を行った際に不飽和部位が十分に水素化されるため酸化安定性の観点から好ましい。水添操作後の分子鎖二重結合量は、好ましくは1.0未満、より好ましくは0.5未満、さらに好ましくは0.3未満であると、潤滑油組成物に用いた際、得られる潤滑油組成物の耐熱性が良好となる。
【0165】
本発明の共重合体は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した極限粘度([η])が、好ましくは0・02〜0.4の範囲であり、より好ましくは0.04〜0.38、さらに好ましくは0.04〜0.25、特に好ましくは0.08〜0.25である。この範囲にあると、潤滑油に用いた場合の基油に対する増粘性と剪断安定性に優れる。
【0166】
本発明において、共重合体の極限粘度([η])は、以下の方法によって測定される:
重合体約20 mgをデカリン15 mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度η
spを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5 ml追加して希釈後、同様にして比粘度η
spを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のη
sp/Cの値を極限粘度として採用する。
【0167】
[η]=lim(η
sp/C) (C→0)
<潤滑油組成物>
本発明の潤滑油組成物は、本発明の共重合体を含んでいる。本発明の共重合体の含有量は、潤滑油組成物100質量%に対し、好ましくは1質量%以上100質量%以下、より好ましくは1質量%以上90質量%以下、特に好ましくは2質量%以上70質量%以下である。
【0168】
本発明の潤滑油組成物には、必要に応じて低粘度基油を添加してもよい。本発明の潤滑油組成物に用いられる低粘度基油としては100℃での動粘度が2〜40mm
2/sの範囲にある、従来公知の鉱物油、合成炭化水素油、及びエステル油から選ばれる少なくとも1種の基油が用いられる。
【0169】
鉱物油は精製の仕方により幾つかの等級があるが、一般に0.5〜10%のワックス分を含む鉱物油が使用される。例えば、水素分解精製法で製造された流動点が低く、粘度指数の高い、イソパラフィンを主体とした組成の高度精製油を用いることができる。
【0170】
また、フィッシャー・トロプシュ法によって得られたガス・トゥー・リキッド(GTL)基油も好適に用いることのできる基油である。このようなGTL基油は、例えば、EP0776959、EP0668342、WO97/21788、WO00/15736、WO00/14188、WO00/14187、WO00/14183、WO00/14179、WO00/08115、WO99/41332、EP1029029、WO01/18156およびWO01/57166に記載されているものである。
【0171】
合成炭化水素油としては、例えばα−オレフィンオリゴマー、アルキルベンゼン類、アルキルナフタレン類等が挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上組合わせて用いることができる。このうちα−オレフィンオリゴマーとしては、炭素原子数8〜12のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンの低分子量オリゴマー(本発明の共重合体を除く)が使用できる。本発明の潤滑油組成物にα−オレフィンオリゴマーを用いると、極めて温度粘度特性、低温粘度特性、さらには耐熱性に優れた潤滑油組成物が得られる。このようなα−オレフィンオリゴマーは、チーグラー触媒、ルイス酸を触媒としたカチオン重合、熱重合、ラジカル重合によって製造することができる。工業的にも入手可能であり、100℃動粘度2mm
2/s〜100mm
2/sのものが市販されている。例えば、NESTE社製NEXBASE、ExxonMobil Chemical社製Spectrasyn、Ineos Oligmers社製Durasyn、Chevron Phillips Chemical社製Synfluidなどが挙げられる。
【0172】
アルキルベンゼン類、アルキルナフタレン類の大部分は、通常アルキル鎖長が炭素原子数6〜14のジアルキルベンゼンまたはジアルキルナフタレンであり、このようなアルキルベンゼン類またはアルキルナフタレン類は、ベンゼンまたはナフタレンとオレフィンとのフリーデルクラフトアルキル化反応によって製造される。アルキルベンゼン類またはアルキルナフタレン類の製造において使用されるアルキル化オレフィンは、線状もしくは枝分かれ状のオレフィンまたはこれらの組み合わせでもよい。これらの製造方法は、例えば、米国特許第3,909,432号に記載されている。
【0173】
また、エステルは共重合体との相溶性の観点から脂肪酸エステルが好ましく、潤滑油組成物の低粘度基油として合成炭化水素油を用いる場合、エステルを加えることで潤滑油封止剤に対して良好な膨潤抑制効果が得られる。
【0174】
脂肪酸エステルとしては特に限定されないが、以下のような炭素、酸素、水素のみからなる脂肪酸エステルが挙げられる。
【0175】
一塩基酸とアルコールから製造されるモノエステル;二塩基酸とアルコールとから、またはジオールと一塩基酸または酸混合物とから製造されるジエステル;ジオール、トリオール(たとえばトリメチロールプロパン)、テトラオール(たとえばペンタエリスリトール)、ヘキサオール(たとえばジペンタエリスリトール)などと一塩基酸または酸混合物とを反応させて製造したポリオールエステルなどが挙げられる。これらのエステルの例としては、トリデシルペラルゴネート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、トリメチロールプロパントリヘプタノエート、ペンタエリスリトールテトラヘプタノエートなどがエステルとして挙げられる。
【0176】
具体的には、本発明の共重合体との相溶性の観点から、エステルを構成するアルコール部位は水酸基が2官能以上のアルコールが好ましく、脂肪酸部位は炭素数が8以上の脂肪酸が好ましい。ただし、脂肪酸については製造コストの点において、工業的に入手が容易である炭素数が20以下の脂肪酸が優位である。エステルを構成する脂肪酸は1種でもよく、2種以上の酸混合物でも本発明で開示される性能を十分に発揮する。より具体的には、トリメチロールプロパンラウリン酸ステアリン酸混合トリエステルやジイソデシルアジペートなどが挙げられ、これらは共重合体のような飽和炭化水素成分と、後述する極性基を有する酸化防止剤、腐食防止剤、耐摩耗剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、防錆剤および消泡剤等の安定剤との相溶性の点から好ましい。
【0177】
本発明の潤滑油組成物は、低粘度基油として合成炭化水素油を用いる場合、潤滑油組成物全体を100質量%としたときに、脂肪酸エステルを5〜20質量%の量で含むことが好ましい。5質量%以上の脂肪酸エステルを含有することにより、各種内燃機関、工業機械内部における樹脂やエラストマーといった潤滑油封止材に対し、良好な適合性が得られる。具体的には、潤滑油封止材の膨潤を抑制できる。酸化安定性または耐熱性の観点から、エステルの量は20質量%以下であることが好ましい。潤滑油組成物に鉱物油が含まれる場合、鉱物油そのものが潤滑油封止剤の膨潤抑制効果を有するため、脂肪酸エステルは必ずしも必要ではない。
【0178】
また、本発明の潤滑油組成物は、極圧剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、腐食防止剤、耐摩耗剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、防錆剤および消泡剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0179】
本発明の潤滑油組成物に用いられる添加剤としては下記のものを例示することができ、これらを単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0180】
極圧剤:各種内燃機関、工業機械が高負荷状態に晒された場合に、焼付け防止の効果を有するものの総称であり、特に限定されないが、スルフィド類、スルホキシド類、スルホン類、チオホスフィネート類、チオカーボネート類、硫化油脂、硫化オレフィンなどのイオウ系極圧剤;リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩、亜リン酸エステルアミン類などのリン酸類;塩素化炭化水素などのハロゲン系化合物などを例示することができる。また、これらの化合物を2種類以上併用してもよい。
【0181】
なお、極圧潤滑条件に至るまでに、炭化水素、または潤滑油組成物を構成する他の有機成分が、加熱、せん断により極圧潤滑条件以前に炭化してしまい、金属表面に炭化物被膜を形成する可能性がある。このため、極圧剤単独の使用では、炭化物被膜により極圧剤と金属表面の接触が阻害され、極圧剤の十分な効果が期待できないおそれがある。
【0182】
極圧剤は単独で添加してもよいが、本発明における潤滑油組成物は共重合体といった飽和炭化水素を主成分とするため、予め使用する他の添加剤とともに、鉱物油もしくは合成炭化水素油等の潤滑油基油に溶解させた状態で添加した方が、分散性の観点から好ましい。具体的には、極圧剤成分などの諸成分をあらかじめ配合し、更に鉱物油もしくは合成炭化水素油等の潤滑油基油に溶解させた、いわゆる極圧剤パッケージを選択して潤滑油組成物に添加する方法がより好ましい。
【0183】
好ましい極圧剤(パッケージ)としては、LUBRIZOL社製Angramol−98A、AFTON CHEMICAL社製HITEC1532、AFTON CHEMICAL社製HITEC307、AFTON CHEMICAL社製HITEC3339、RHEIN CHEMIE社製Additin RC 9410等が挙げられる。
【0184】
清浄分散剤:金属スルホネート、金属フェネート、金属フォスファネート、コハク酸イミドなどを例示することができる。清浄分散剤は、必要に応じて潤滑油組成物100質量%に対して0〜15質量%の範囲で用いられる。
【0185】
これもいわゆる他の添加剤と配合し、鉱物油もしくは合成炭化水素油等の潤滑油に溶解させたDIパッケージとして工業的に入手可能であり、例えばAFTON CHEMICAL社製HITEC3419D、AFTON CHEMICAL社製HITEC2426等が挙げられる。
【0186】
耐摩耗剤:二硫化モリブデンなどの無機または有機モリブデン化合物、グラファイト、硫化アンチモン、ポリテトラフルオロエチレンなどを例示することができる。耐摩耗剤は、必要に応じて潤滑油組成物100質量%に対して0〜3質量%の範囲で用いられる。
【0187】
酸化防止剤:2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどのフェノール系やアミン系の化合物が挙げられる。酸化防止剤は、必要に応じて潤滑油組成物100質量%に対して0〜3質量%の範囲で用いられる。
【0188】
防錆剤:各種アミン化合物、カルボン酸金属塩、多価アルコールエステル、リン化合物、スルホネートなどの化合物が挙げられる。防錆剤は、必要に応じて潤滑油組成物100質量%に対して0〜3質量%の範囲で用いられる。
【0189】
消泡剤:ジメチルシロキサン、シリカゲル分散体などのシリコーン系化合物、アルコール系またはエステル系の化合物などを例示することができる。消泡剤は、必要に応じて潤滑油組成物100質量%に対して0〜0.2質量%の範囲で用いられる。
【0190】
流動点降下剤:流動点降下剤としては、種々公知の流動点降下剤を使用し得る。具体的には、有機酸エステル基を含有する高分子化合物が用いられ、有機酸エステル基を含有するビニル重合体が特に好適に用いられる。有機酸エステル基を含有するビニル重合体としては例えばメタクリル酸アルキルの(共)重合体、アクリル酸アルキルの(共)重合体、フマル酸アルキルの(共)重合体、マレイン酸アルキルの(共)重合体、アルキル化ナフタレン等が挙げられる。
【0191】
このような流動点降下剤は、融点が−13℃以下であり、好ましくは−15℃、さらに好ましくは−17℃以下である。流動点降下剤の融点は、差走査型熱量計(DSC)を用いて測定される。具体的には、試料約5mgをアルミパンに詰めて200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、10℃/分で−40℃まで冷却し、−40℃で5分保持した後、10℃/分で昇温する際の吸熱曲線から求める。
【0192】
上記流動点降下剤はさらに、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって得られるポリスチレン換算重量平均分子量が20,000〜400,000の範囲にあり、好ましくは30,000〜300,000、より好ましくは40,000〜200,000の範囲にある。
【0193】
流動点降下剤は、通常、0〜2質量%の範囲で用いられる。
【0194】
上記の添加剤以外にも、抗乳化剤、着色剤、油性剤(油性向上剤)などを必要に応じて用いることができる。
【0195】
本発明の潤滑油組成物は、特定の共重合体を含有しているため、剪断安定性に優れる。剪断安定性は、ドイツ工業規格DIN 52350−6に記載の方法に準拠したKRL剪断安定性試験により評価される。具体的には、潤滑油組成物を60℃で20hrの間、剪断条件下(1450rpm)におき、試験前の100℃における動粘度に対する試験後の100℃における動粘度の低下率を求める。この値が小さいほど剪断安定性に優れることを表す。
【0196】
<用途>
本発明の潤滑油組成物は、工業用潤滑油(ギア油、作動油)およびグリース用基油として用いることが可能であり、特に自動車用潤滑油として好適である。また、ディファレンシャルギア油のような自動車用ギア油、または手動変速機油、自動変速機油、無段変速機油などのような自動車用駆動油にも好適に使用できる。さらには自動車エンジン油、船舶シリンダ油にも使用することができる。本発明の潤滑油組成物は、自動車用変速機油として、100℃における動粘度を7.5mm
2/s以下、好ましくは6.5mm
2/s以下、さらに好ましくは5.5mm
2/sに調整した場合、優れた省燃費性能を発揮する。
【実施例】
【0197】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0198】
[評価方法]
下記実施例および比較例等において、エチレン/α−オレフィン共重合体および潤滑油組成物の物性等は以下の方法で測定した。
【0199】
<エチレン含有量(mol%)>
日本分光社製フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR-610またはFT/IR-6100を用い、長鎖メチレン基の横揺れ振動に基づく721cm
-1付近の吸収とプロピレンの骨格振動に基づく1155cm
-1付近の吸収との吸光度比(D1155cm
-1/D721cm
-1)を算出し、予め作成しておいた検量線(ASTM D3900での標準試料を使って作成)よりエチレン含有量(重量%)を求めた。続いて、100重量%から上記の方法で求めたエチレン含有量(重量%)を減じてプロピレン含有量(重量%)を求めた。次に、得られたエチレン含有量(重量%)およびプロピレン含有量(重量%)を用い、下記式に従ってエチレン含有量(mol%)を求めた。
【0200】
【数3】
【0201】
<B値>
o-ジクロロベンゼン/ベンゼン-d
6(4/1[vol/vol%])を測定溶媒とし、測定温度120℃、スペクトル幅250ppm、パルス繰り返し時間5.5秒、パルス幅4.7・sec(45
Oパルス)測定条件下(100 MHz、日本電子ECX400P)、または測定温度120℃、スペクトル幅250ppm、パルス繰り返し時間5.5秒、パルス幅5.0・sec(45
Oパルス)測定条件下(125 MHz、ブルカー・バイオスピンAVANCEIIIcryo-500)にて
13C NMRスペクトルを測定し、下記式[1]に基づき算出した。
【0202】
【数4】
【0203】
式[1]中、P
Eはエチレン成分の含有モル分率を示し、P
Oはα−オレフィン成分の含有モル分率を示し、P
OEは全dyad連鎖のエチレン・α−オレフィン連鎖のモル分率を示す。
【0204】
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)>
数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、東ソー株式会社製のGPC(HLC-8320GPC)を用いて以下のようにして測定した。分離カラムとして、TSKgel SuperMultiporeHZ-M(4本)を用い、カラム温度を40℃とし、移動相にはテトラヒドロフラン(和光純薬社製)を用い、展開速度を0.35ml/分とし、試料濃度を5.5g/Lとし、試料注入量を20マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンとしては、東ソー社製(PStQuick MP-M)のものを用いた。各種平均分子量は、汎用校正の手順に従い、ポリスチレン分子量換算として計算した。
【0205】
分子量分布(Mw/Mn)は、上記測定法により測定したMwを、同じく上記測定法により測定したMnで除して算出した。
【0206】
<極限粘度([η])>
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。重合体約20 mgをデカリン15 mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度η
spを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5 ml追加して希釈後、同様にして比粘度η
spを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のη
sp/Cの値を極限粘度として採用した。
【0207】
[η]=lim(η
sp/C) (C→0)
<分子鎖二重結合量>
o-ジクロロベンゼン-d
4を測定溶媒とし、測定温度120℃、スペクトル幅20ppm、パルス繰り返し時間7.0秒、パルス幅6.15μsec(45
oパルス)測定条件下にて、
1H NMRスペクトル(400 MHz、日本電子ECX400P)を測定し、算出した。
【0208】
<DSC測定>
セイコーインスツルメント社X−DSC−7000を用い、簡易密閉できるアルミサンプルパンに約8mgのエチレン/α−オレフィン共重合体を入れてDSCセルに配置し、DSCセルを窒素雰囲気下にて室温から150℃まで10℃/分で昇温し、次いで、150℃で5分間保持した後、10℃/分で降温し、DSCセルを−100℃まで冷却した(降温過程)。次いで、100℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温し、昇温過程で得られるエンタルピー曲線の変曲点での接線の交点をガラス転移点(Tg)とした。ガラス転移点(Tg)の求め方はJIS K7121 9.3に基づいて行った。
【0209】
<粘度特性>
100℃動粘度、40℃動粘度および粘度指数は、JIS K2283に記載の方法により、測定、算出した。
【0210】
<KRL剪断安定性>
潤滑油組成物の剪断安定性は、DIN 52350−6に記載の方法に準拠し、KRL剪断安定性試験機を用いて評価した。配合油を60℃で20hrの間、剪断条件下(1450rpm)におき、試験前後での100℃での動粘度の低下率を評価した。
【0211】
上記方法にて剪断応力を与えた後、動粘度の低下率が10%未満であれば良好な耐久性を示す。動粘度の低下率が5%未満であれば極めて優れた耐久性を示す。
【0212】
<超音波剪断安定性>
潤滑油組成物の超音波剪断安定性は、JASO M347に準拠し、60分の超音波照射を行い、試験前後での100℃での動粘度の低下率を評価した。
【0213】
上記方法にて剪断応力を与えた後、動粘度の低下率が5%未満であれば良好な耐久性を示す。動粘度の低下率が1%未満であれば極めて優れた耐久性を示す。
【0214】
<低温粘度>
低温粘度は、ASTM D2983に準拠して、所定の温度にてブルックフィールド粘度計により測定した。
【0215】
[メタロセン化合物の合成]
実施例および比較例で用いたメタロセン化合物の合成方法を以下に示す。なお、合成したメタロセン化合物およびその前駆体の構造は、
1H NMRスペクトル(270 MHz、日本電子GSH-270)、FD-質量(以下「FD-MS」と称する。)スペクトル(日本電子SX-102A)等を測定して決定した。
【0216】
<合成例1>
[メチルフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドの合成
(i)6-メチル-6-フェニルフルベンの合成
窒素雰囲気下、200mL三口フラスコにリチウムシクロペンタジエン 7.3g (101.6 mmol)および脱水テトラヒドロフラン100mLを加えて攪拌した。溶液をアイスバスで冷却し、アセトフェノン15.0g(111.8 mmol)を滴下した。その後、室温で20時間攪拌し、得られた溶液を希塩酸水溶液でクエンチした。ヘキサン100mLを加えて可溶分を抽出し、この有機層を水、飽和食塩水で洗浄後 無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、溶媒を留去し、得られた粘性液体をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で分離し、目的物(赤色粘性液体)を得た。(収量14.7 g、収率78%)。6-メチル-6-フェニルフルベンの同定は
1H NMRスペクトルにて行った。以下にその測定値を示す。
1H NMRスペクトル(270 MHz, CDCl
3): δ/ppm 7.39 (m, 5H), 6.64 (m, 1H), 6.57 (m, 1H), 6.48 (m, 1H), 6.18 (m, 1H), 2.54 (s, 3H)。
【0217】
(ii)メチル(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)(フェニル)メタンの合成
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに2,7-ジ-t-ブチルフルオレン 2.01g(7.20 mmol)および脱水t-ブチルメチルエーテル50mLを添加した。氷浴で冷却しながらn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液 (1.65 M) 4.60mL(7.59 mmol)を徐々に添加し、室温で16時間攪拌した。6-メチル-6-フェニルフルベン1.66 g (9.85 mmol)を添加した後、加熱還流下で1時間攪拌した。氷浴で冷却しながら水50mLを徐々に添加し、得られた二層の溶液を200mL分液漏斗に移した。ジエチルエーテル50mLを加えて数回振った後水層を除き、有機層を水50mLで3回、飽和食塩水50mLで1回洗った。無水硫酸マグネシウムで30分間乾燥した後、減圧下で溶媒を留去した。少量のヘキサンを加えて得た溶液に超音波を当てたところ固体が析出したので、これを採取して少量のヘキサンで洗浄した。減圧下で乾燥し、白色固体としてメチル(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)(フェニル)メタン2.83 g (6.34 mmol、88.1 %)を得た。メチル(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)(フェニル)メタンの同定はFD-MSスペクトルにて行った。以下にその測定値を示す。
FD-MSスペクトル:M/z 446 (M
+)。
【0218】
(iii)[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドの合成
窒素雰囲気下、100mLシュレンク管にメチル(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)(フェニル)メタン1.50 g (3.36 mmol)、脱水トルエン50mLおよびTHF 570μL (7.03 mmol)を順次添加した。氷浴で冷却しながらn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液 (1.65 M)4.20mL(6.93 mmol)を徐々に添加し、45℃で5時間攪拌した。減圧下で溶媒を留去し、脱水ジエチルエーテル40mLを添加して赤色溶液とした。メタノール/ドライアイス浴で冷却 しながら四塩化ジルコニウム 728 mg(3.12 mmol)を添加し、室温まで徐々に昇温しながら16時間攪拌したところ、赤橙色スラリーが得られた。減圧下で溶媒を留去して得られた固体をグローブボックス内に持ち込み、ヘキサンで洗浄した後、ジクロロメタンで抽出した。減圧下で溶媒を留去して濃縮した後、少量のヘキサンを加え、−20℃で放置したところ赤橙色固体が析出した。この固体を少量のヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥することにより、赤橙色固体として[メチルフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド 1.20 g (1.98 mmol、63.3%)を得た。[メチルフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドの同定は
1H NMRスペクトルにて行った。以下にその測定値を示す。
1H NMRスペクトル(270 MHz, CDCl
3): δ/ppm 8.02 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.96 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 7.89-7.86 (br, 1H), 7.78 (br, 1H), 7.69-7.62(m, 2H), 7.59-7.50 (m, 2H), 7.44-7.38 (m, 2H), 6.40-6.37 (m, 1H), 6.28-6.25 (m, 1H), 6.05 (br, 1H), 5.81-5.78 (m, 1H), 5.60-5.57 (m, 1H), 2.53 (s, 3H) , 1.37 (s, 9H), 0.95 (s, 9H)。
【0219】
<合成例2>
[ジフェニルメチレン[η
5-(2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)](η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドの合成
(i)1-メチル-3-i-プロピル-6,6-ジフェニルフルベンの合成
窒素雰囲気下、200mL三口フラスコに1-メチル-3-i-プロピルシクロペンタジエン(GC純度:88.5%)2.13 gおよび脱水THF 100mLを加えた。氷浴で冷却しながらn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液 (1.63 M) 10.7mL (17.4 mmol)を徐々に添加した後、室温で4時間撹拌した。再び氷浴で冷却しながらDMI 2.37 g (20.7 mmol)を徐々に添加し、室温で30分間撹拌した。その後、ベンゾフェノン 3.49 g (19.2 mmol)を加え、加熱還流下で20時間撹拌した。氷浴で冷却しながら水 50mLを徐々に添加し、更にジエチルエーテル 50mLを加えて室温で30分間攪拌した。得られた二層の溶液を500mL分液漏斗に移し、有機層を水 100mLで3回、飽和食塩水100mLで1回洗った。無水硫酸マグネシウムで30分間乾燥した後、減圧下で溶媒を留去して橙褐色固体を得た。シリカゲルクロマトグラフ(300 g、ヘキサン)による分離を行い、赤色溶液を得た。減圧下で溶媒を留去し、赤色油状物として1-メチル-3-i-プロピル-6,6-ジフェニルフルベン 2.09 g (7.29 mmol)を得た。1-メチル-3-i-プロピル-6,6-ジフェニルフルベンの同定は
1H NMRスペクトルにて行った。以下にその測定値を示す。
1H NMRスペクトル(270 MHz, CDCl
3): δ/ppm 7.36-7.22 (m, 10H), 6.25-6.23 (m, 1H), 5.74-5.73 (m, 1H), 2.68-2.52 (m, 1H), 1.48 (d, J = 1.4 Hz, 3H), 1.12 (d, J = 6.8 Hz, 6H)。
【0220】
(ii)(2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジフェニルメタンの合成
窒素雰囲気下、200mL三口フラスコにオクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレン 1.73 g(4.46 mmol)および脱水t-ブチルメチルエーテル70mLを添加した。氷浴で冷却しながらn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液 (1.63 M)2.90mL(4.73 mmol)を徐々に添加し、その後室温で7時間攪拌した。1-メチル-3-i-プロピル-6,6-ジフェニルフルベン834mg (2.91 mmol)を添加した後、加熱還流下で17時間撹拌した。室温まで冷却した後、氷浴で冷却しながら水50mL、続いてジエチルエーテル50mLを徐々に添加し、得られた二層の溶液を500mL分液漏斗に移した。数回振った後水層を除き、有機層を水100mLで3回、飽和食塩水100mLで1回洗った。無水硫酸マグネシウムで30分間乾燥した後、減圧下で溶媒を留去して固体を得た。得られた固体をメタノールで洗浄した後、シリカゲルクロマトグラフ(60 g、ヘキサン)による分離を行い、無色の溶液を得た。減圧下で溶媒を留去し、白色固体として(2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジフェニルメタン 1.03 g (1.53 mmol、52.5%)を得た。(2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジフェニルメタンの同定はFD-MSスペクトルにて行った。以下にその測定値を示す。
FD-MSスペクトル: M/z 673 (M
+)。
【0221】
(iii)[ジフェニルメチレン[η5-(2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)](η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドの合成
窒素雰囲気下、100mLシュレンク管に(2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジフェニルメタン 926 mg (1.38 mmol)、脱水トルエン30mLおよび脱水THF 0.24mL(3.0 mmol)を順次添加した。氷浴で冷却しながらn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液 (1.63 M) 1.80mL(2.93 mmol)を徐々に添加し、45℃で4時間攪拌したところ赤色溶液が得られた。減圧下で溶媒を留去し、脱水ジエチルエーテル 30mLを添加して再び赤色溶液とした。メタノール/ドライアイス浴で冷却しながら四塩化ジルコニウム280 mg(4.27 mmol)を添加し、室温まで徐々に昇温しながら17時間攪拌したところ、赤色スラリーが得られた。減圧下で溶媒を留去して得られた固体をグローブボックス内に持ち込み、ヘキサンで抽出した。減圧下で溶媒を留去して濃縮し、−20℃で再結晶した。析出した固体を少量のヘキサンで洗浄し、減圧下で乾燥することにより、赤色固体として[ジフェニルメチレン[η
5-(2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)](η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド 345 mg (0.414 mmol、34.5%)を得た。[ジフェニルメチレン[η
5-(2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)](η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドの同定は
1H NMRスペクトルおよびFD-MSスペクトルにて行った。以下にその測定値を示す。
1H NMRスペクトル(270 MHz, CDCl
3): δ/ppm 8.07-7.93 (m, 5H), 7.80-7.76 (m, 1H), 7.48-7.19 (m, 6H), 6.96 (s, 1H), 6.04 (s, 1H), 5.99 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 5.40 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 2.57 (sep, J = 7.0 Hz, 1H), 1.85 (s, 3H), 1.7-1.6 (br m, 8H), 1.50 (s, 3H), 1.47 (s, 3H), 1.43 (s, 3H), 1.40 (s, 3H), 1.11 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 1.07 (s, 3H), 1.01 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 0.88 (s, 3H), 0.86 (s, 3H), 0.77 (s, 3H)
FD-MSスペクトル: M/z 832 (M
+)。
【0222】
<その他のメタロセン化合物の合成>
[エチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドは、特許第4367687号公報に記載の方法で合成した。
【0223】
[ジフェニルメチレン(η
5-2-メチル-4-t-ブチルシクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドは、WO2004/087775に記載の方法で合成した。
【0224】
[ジメチルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドは、特開平4-69394号公報に記載の方法で合成した。
【0225】
[ジフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドは、特開平6-172433号公報に記載の方法で合成した。
【0226】
[ジフェニルシリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドは、J.Organomet.Chem., 509, 63(1996)に記載の方法で合成した。
【0227】
[ビス(η
5-1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリドは、特公平6-62642号公報に記載の方法で合成した。
【0228】
[ビス(η
5-1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリドは、WO95/04761に記載の方法で合成した。
【0229】
[エチレン/α−オレフィン共重合体の製造]
以下の実施例および比較例においてエチレン/α−オレフィン共重合体を製造した。なお、得られたエチレン/α−オレフィン共重合体について、必要に応じて、下記方法で水添操作を実施した。各実施例および比較例における製造条件、ならびに得られたエチレン/α−オレフィン共重合体の物性等については、表1および表2に示す。
【0230】
<水添操作>
内容積1Lのステンレス製オートクレーブに0.5質量%Pd/アルミナ触媒のヘキサン溶液100mLおよびエチレン/α−オレフィン共重合体の30質量%ヘキサン溶液500mLを加え、オートクレーブを密閉した後、窒素置換を行なった。次いで、撹拌をしながら140℃まで昇温し、系内を水素置換した後、水素で1.5MPaまで昇圧して15分間水添反応を実施した。
【0231】
<実施例1>
[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドによるエチレン/プロピレン共重合(50℃)
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製重合器にヘプタン250mLを装入し、系内の温度を50℃に昇温した後、エチレンを25L/hr、プロピレンを75L/hr、水素を100L/hrの流量で連続的に重合器内に供給し、撹拌回転数600rpmで撹拌した。次にトリイソブチルアルミニウム0.2mmolを重合器に装入し、次いでMMAO 0.688 mmolと[エチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.00230 mmolをトルエン中で15分以上予備混合したものを重合器に装入することにより重合を開始した。その後、エチレン、プロピレン、水素の連続的供給を継続し、50℃で15分間重合を行った。少量のイソブチルアルコールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のモノマーをパージした。得られたポリマー溶液を、0.2 mol/lの塩酸100mLで3回、次いで蒸留水100mLで3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られたポリマーを80℃の減圧下で一晩乾燥した。その結果、エチレン-プロピレン共重合体1.43 gを得た。得られたポリマーのエチレン含有量は48.4 mol%、Mwは17430、Mw/Mnは2.1、[η]は0.23 dl/g、Tgは-63℃、B値は1.3、分子鎖二重結合量(個/1000炭素)はビニル = 0.05、ビニリデン = 0.29、二置換オレフィン<0.01、三置換オレフィン = 0.09であった。
【0232】
<実施例2>
[ジフェニルメチレン(η5-2-メチル-4-t-ブチルシクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドによるエチレン/プロピレン共重合(50℃)
[エチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.00230 mmolの代わりに[ジフェニルメチレン(η
5-2-メチル-4-t-ブチルシクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.00202 mmolを用い、MMAO 0.688 mmolの代わりにMMAO 0.607 mmolを用い、エチレンの流量を25L/hrから55L/hrに変更し、プロピレンの流量を75L/hrから45L/hrに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で重合を行った。その結果、エチレン-プロピレン共重合体1.60 gを得た。得られたポリマーのエチレン含有量は51.3 mol%、Mwは18380、Mw/Mnは1.8、[η]は0.24 dl/g、Tgは-62℃、B値は1.1、分子鎖二重結合量(個/1000炭素)はビニル = 0.04、ビニリデン = 0.12、二置換オレフィン<0.01、三置換オレフィン = 0.06であった。
【0233】
<実施例3>
[ジメチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドによるエチレン/プロピレン共重合(50℃)
[エチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.00230 mmolの代わりに[ジメチルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.00215 mmolを用い、MMAO 0.688 mmolの代わりにMMAO 0.645 mmolを用い、エチレンの流量を25L/hrから55L/hrに変更し、プロピレンの流量を75L/hrから45L/hrに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で重合を行った。その結果、エチレン-プロピレン共重合体1.40 gを得た。得られたポリマーのエチレン含有量は54.3 mol%、Mwは28805、Mw/Mnは1.9、[η]は0.34 dl/g、Tgは-60℃、B値は1.3、分子鎖二重結合量(個/1000炭素)はビニル = 0.13、ビニリデン = 1.10、二置換オレフィン<0.01、三置換オレフィン = 0.29であった。
【0234】
<実施例4>
[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドによるエチレン/プロピレン共重合(50℃)
[エチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.00230 mmolの代わりに[ジフェニルシリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.00288 mmolを用い、MMAO 0.688 mmolの代わりにMMAO 0.868 mmolを用い、エチレンの流量を25L/hrから35L/hrに変更し、プロピレンの流量を75L/hrから65L/hrに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で重合を行った。その結果、エチレン-プロピレン共重合体2.31 gを得た。得られたポリマーのエチレン含有量は50.6 mol%、Mwは27184、Mw/Mnは1.9、[η]は0.32 dl/g、Tgは-61℃、B値は1.3、分子鎖二重結合量(個/1000炭素)はビニル<0.01、ビニリデン = 0.14、二置換オレフィン<0.01、三置換オレフィン<0.01であった。
【0235】
<実施例5>
[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドによるエチレン/プロピレン共重合(50℃)
[エチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.00230 mmolの代わりに[メチルフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.00397 mmolを用い、MMAO 0.688 mmolの代わりにMMAO 1.192 mmolを用い、エチレンの流量を25L/hrから55L/hrに変更し、プロピレンの流量を75L/hr から45L/hrに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で重合を行った。その結果、エチレン-プロピレン共重合体1.59 gを得た。得られたポリマーのエチレン含有量は49.9 mol%、Mwは34238、Mw/Mnは1.9、[η]は0.40 dl/g、Tgは-60℃、B値は1.3、分子鎖二重結合量(個/1000炭素)はビニル = 0.08、ビニリデン = 0.90、二置換オレフィン<0.01、三置換オレフィン = 0.22であった。
【0236】
<実施例6>
[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドによるエチレン/プロピレン共重合(130℃)
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製重合器にデカン250mLを装入し、系内の温度を130℃に昇温した後、エチレンを25L/hr、プロピレンを75L/hr、水素を100L/hrの流量で連続的に重合器内に供給し、撹拌回転数600rpmで撹拌した。次にトリイソブチルアルミニウム0.2 mmolを重合器に装入し、次いでMMAO 1.213 mmolと[メチルフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.00402 mmolをトルエン中で15分以上予備混合したものを重合器に装入することにより重合を開始した。その後、エチレン、プロピレン、水素の連続的供給を継続し、130℃で15分間重合を行った。少量のイソブチルアルコールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のモノマーをパージした。得られたポリマー溶液を、0.2 mol/lの塩酸100mLで3回、次いで蒸留水100mLで3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られたポリマーを80℃の減圧下で一晩乾燥した。その結果、エチレン-プロピレン共重合体0.77 gを得た。得られたポリマーのエチレン含有量は54.9 mol%、Mwは4987、Mw/Mnは1.8、[η]は0.08 dl/g、Tgは-71℃、B値は1.2、分子鎖二重結合量(個/1000炭素)はビニル = 1.09、ビニリデン = 1.74、二置換オレフィン = 0.11、三置換オレフィン = 0.28であった。
【0237】
<実施例7>
[ジフェニルメチレン(η5-2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾオレニル)]ジルコニウムジクロリドによるエチレン/プロピレン共重合
充分に窒素置換した内容積2Lのステンレス製オートクレーブにヘプタン780mLおよびプロピレン110 gを装入し、系内の温度を110℃に昇温した後、水素1.35 MPa、エチレン0.44 MPaを供給することにより全圧を3 MPaGとした。次にトリイソブチルアルミニウム0.4 mmol、[ジフェニルメチレン(η
5-2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)(η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.00025 mmolおよびN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.0010 mmolを窒素で圧入し、攪拌回転数を400 rpmにすることにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を3 MPaGに保ち、110℃で8分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレン、プロピレン、水素をパージした。得られたポリマー溶液を、0.2 mol/lの塩酸1000mLで3回、次いで蒸留水1000mLで3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られたポリマーを80℃の減圧下で一晩乾燥した。その結果、エチレン-プロピレン共重合体45.6 gを得た。得られたポリマーのエチレン含有量は55.1 mol%、Mwは12110、Mw/Mnは1.8、[η]は0.17 dl/g、Tgは-64℃、B値は1.1であった。また、分子鎖二重結合量(個/1000炭素)はビニル = 0.10、ビニリデン = 0.14、二置換オレフィン<0.01、三置換オレフィン<0.01であり、水添操作後の分子鎖二重結合量の合計(個/1000炭素)は0.1未満であった。
【0238】
<実施例8>
[ジフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドによるエチレン/プロピレン共重合
ヘプタン740mLおよびプロピレン130 gを装入し、系内の温度を150℃に昇温した後、水素0.65 MPa、エチレン0.26 MPaを供給することにより全圧を3 MPaGとし、[ジフェニルメチレン(η
5-2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)(η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾオレニル)]ジルコニウムジクロリド 0.00025 mmolおよびN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.0010 mmolの代わりに[ジフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド 0.000075 mmolおよびN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.00075 mmolを用い、150℃で5分間重合を行ったこと以外は、実施例7と同様の操作で重合を行った。その結果、エチレン-プロピレン共重合体18.0 gを得た。得られたポリマーのエチレン含有量は53.8 mol%、Mwは10700、Mw/Mnは1.8、[η]は0.16 dl/g、Tgは-65℃、B値は1.2であった。また、分子鎖二重結合量(個/1000炭素)はビニル = 0.35、ビニリデン = 0.96、二置換オレフィン = 0.05、三置換オレフィン= 0.07であり、水添操作後の分子鎖二重結合量の合計(個/1000炭素)は0.3であった。
【0239】
<実施例9>
[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドによるエチレン/プロピレン共重合
ヘプタン850mL、プロピレン75gを装入し、系内の温度を150℃に昇温した後、水素1.56 MPa、エチレン0.11MPaを供給することにより全圧を3MPaGとし、[ジフェニルメチレン(η
5-2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)(η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾオレニル)]ジルコニウムジクロリド 0.00025 mmolおよびN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.0010 mmolの代わりに、[メチルフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.00015 mmolおよびN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.0015 mmolを用い、150℃で5分間重合を行ったこと以外は、実施例7と同様の操作で重合を行った。その結果、エチレン-プロピレン共重合体25.1 gを得た。得られたポリマーのエチレン含有量は48.8 mol%、Mwは3570、Mw/Mnは1.8、[η]は0.06 dl/g、Tgは-76℃、B値は1.1であった。また、分子鎖二重結合量(個/1000炭素)はビニル = 0.70、ビニリデン = 2.51、二置換オレフィン = 0.02、三置換オレフィン = 0.15であり、水添操作後の分子鎖二重結合量の合計(個/1000炭素)は0.1未満であった。
【0240】
<実施例10>
[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドによるエチレン/プロピレン共重合
ヘプタン710mL、プロピレン145 gを装入し、系内の温度を150℃に昇温した後、水素0.40 MPa、エチレン0.27 MPaを供給することにより全圧を3 MPaGとし、 [ジフェニルメチレン(η
5-2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)(η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾオレニル)]ジルコニウムジクロリド 0.00025 mmolおよびN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.0010 mmolの代わりに、[メチルフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド 0.00010 mmolおよびN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.001 mmolを用い、150℃で5分間重合を行ったこと以外は、実施例7と同様の操作で重合を行った。その結果、エチレン-プロピレン共重合体52.2 gを得た。得られたポリマーのエチレン含有量は53.1 mol%、Mwは9660、Mw/Mnは1.9、[η]は0.14 dl/g、Tgは-66℃、B値は1.2であった。また、分子鎖二重結合量(個/1000炭素)はビニル = 0.59、ビニリデン = 2.14、二置換オレフィン = 0.06、三置換オレフィン = 0.25であり、水添操作後の分子鎖二重結合量の合計(個/1000炭素)は0.2であった。
【0241】
<実施例11>
[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドによるエチレン/プロピレン共重合
ヘプタン910mL、プロピレン45 gを装入し、系内の温度を130 ℃に昇温した後、水素2.24 MPa、エチレン0.09 MPaを供給することにより全圧を3 MPaGとし、[ジフェニルメチレン(η
5-2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)(η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾオレニル)]ジルコニウムジクロリド 0.00025 mmolおよびN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.0010 mmolの代わりに、[メチルフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド 0.00060 mmolおよびN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.006 mmolを用い、130℃で5分間重合を行ったこと以外は、実施例7と同様の操作で重合を行った。その結果、エチレン-プロピレン共重合体22.9 gを得た。得られたポリマーのエチレン含有量は51.9 mol%、Mwは2680、Mw/Mnは1.6、[η]は0.05 dl/g、Tgは-77℃、B値は1.1であった。また、分子鎖二重結合量(個/1000炭素)はビニル = 0.24、ビニリデン = 1.39、二置換オレフィン = 0.17、三置換オレフィン = 0.05であり、水添操作後の分子鎖二重結合量の合計(個/1000炭素)は0.1未満であった。
【0242】
<比較例1>
[ビス(η5-1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリドによるエチレン/プロピレン共重合
ヘプタン210mL、プロピレン395 gを装入し、系内の温度を80℃に昇温した後、水素300mL、エチレン0.32 MPaを供給することにより全圧を3 MPaGとし、[ジフェニルメチレン(η
5-2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)(η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾオレニル)]ジルコニウムジクロリド 0.00025 mmolおよびN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.0010 mmolの代わりに、[ビス(η
5-1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド0.00030 mmolおよびN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.003 mmolを用い、80℃で5分間重合を行ったこと以外は、実施例7と同様の操作で重合を行った。その結果、エチレン-プロピレン共重合体23.3 gを得た。得られたポリマーのエチレン含有量は52.2 mol%、Mwは4420、Mw/Mnは2.2、[η]は0.08 dl/g、Tgは-74℃、B値は1.0であった。また、分子鎖二重結合量(個/1000炭素)はビニル = 0.08、ビニリデン = 9.11、二置換オレフィン = 0.08、三置換オレフィン = 0.20であり、水添操作後の分子鎖二重結合量の合計(個/1000炭素)はは1を超えて残存していた。
【0243】
<比較例2>
[ビス(η5-1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリドによるエチレン/プロピレン共重合
ヘプタン210mL、プロピレン395 gを装入し、系内の温度を80℃に昇温した後、水素300mL、エチレン0.32 MPaを供給することにより全圧を3 MPaGとし、 [ジフェニルメチレン(η
5-2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)(η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾオレニル)]ジルコニウムジクロリド 0.00025 mmolおよびN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.0010 mmolの代わりに、[ビス(η
5-1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド0.00030 mmolおよびN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.003 mmolを用い、80℃で5分間重合を行ったこと以外は、実施例7と同様の操作で重合を行った。その結果、エチレン-プロピレン共重合体45.6 gを得た。得られたポリマーのエチレン含有量は51.6 mol%、Mwは4530、Mw/Mnは2.1、[η]は0.08 dl/g、Tgは-75℃、B値は1.0であった。また、分子鎖二重結合量(個/1000炭素)はビニル = 0.07、ビニリデン = 8.98、二置換オレフィン = 0.11、三置換オレフィン = 0.13であり、水添操作後の分子鎖二重結合量の合計(個/1000炭素)は1を超えて残存していた。
【0244】
<比較例3>
[ビス(η5-1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリドによるエチレン/プロピレン共重合(50℃)
[エチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.00230 mmolの代わりに[ビス(η
5-1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド0.00622 mmolを用い、MMAO 0.688 mmolの代わりにMMAO 1.871 mmolを用い、エチレンの流量を25L/hrから5L/hrに変更し、プロピレンの流量を75L/hr から95L/hrに変更し、水素の流量を100L/hrから0L/hrに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で重合を行った。その結果、エチレン-プロピレン共重合体0.72 gを得た。得られたポリマーのエチレン含有量は52.5 mol%、Mwは4620、Mw/Mnは2.0、[η]は0.08 dl/g、Tgは-73℃、B値は1.2、分子鎖二重結合量(個/1000炭素)はビニル = 0.07、ビニリデン = 10.68、二置換オレフィン = 0.08、三置換オレフィン = 0.13であった。
【0245】
<比較例4>
[ビス(η5-1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリドによるエチレン/プロピレン共重合(50℃)
[エチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.00230 mmolの代わりに[ビス(η
5-1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド0.00720 mmolを用い、MMAO 0.688 mmolの代わりにMMAO 2.160 mmolを用い、エチレンの流量を25L/hrから10L/hrに変更し、プロピレンの流量を75L/hr から90L/hrに変更し、水素の流量を100L/hrから0L/hrに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で重合を行った。その結果、エチレン-プロピレン共重合体1.19 gを得た。得られたポリマーのエチレン含有量は46.9 mol%、Mwは3627、Mw/Mnは2.0、[η]は0.06 dl/g、Tgは-76℃、B値は1.2、分子鎖二重結合量(個/1000炭素)はビニル = 0.05、ビニリデン = 12.35、二置換オレフィン = 0.06、三置換オレフィン = 0.11であった。
【0246】
【表1】
【0247】
表1中の成分(A)、成分(B−1)および成分(B−2)の種類は以下のとおりである。
<成分(A)>
i : [エチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド
ii : [ジフェニルメチレン(η
5-2-メチル-4-t-ブチルシクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド
iii : [ジメチルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド
iv : [ジフェニルシリレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド
v : [メチルフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド
viii : [ビス(η
5-1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド
ix : [ビス(η
5-1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド
<成分(B−1)>
a : トリイソブチルアルミニウム
<成分(B−2)>
b : MMAO
【0248】
【表2】
【0249】
表2中の成分(A)、成分(B−1)および成分(B−3)の種類は以下のとおりである。
<成分(A)>
vi : [ジフェニルメチレン(η
5-2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)(η
5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド
vii : [ジフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド
v : [メチルフェニルメチレン(η
5-シクロペンタジエニル)(η
5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド
viii : [ビス(η
5-1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド
ix : [ビス(η
5-1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド
<成分(B−1)>
a : トリイソブチルアルミニウム
<成分(B−3)>
c : N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
[潤滑油組成物の調製]
以下の潤滑油組成物の調製において用いられたエチレン/α−オレフィン共重合体以外の成分は以下のとおりである。
【0250】
低粘度基油;100℃動粘度が5.8mm
2/sである合成炭化水素油PAO(NESTE社製NEXBASE2006、PAO−6)、100℃動粘度が3.0mm
2/sであるAPI(American Petroleum Institute)Group II鉱油(SK LUBRICANTS社製YUBASE−L3(鉱油A))、ならびに100℃動粘度が4.2mm
2/sおよび6.5mm
2/sであるAPI Group III鉱油(それぞれSK LUBRICANTS社製YUBASE−4(鉱油B)、YUBASE−6(鉱油C))
ポリメタクリレート;EVONIK社製VISCOPLEX 0−220(数平均分子量23,000、PMA−A)およびVISCOPLEX 0−110(数平均分子量9,100、PMA−B)
ポリブテン;JX日鋼日石社製日石ポリブテンHV−1900(PB−A)およびHV−300(PB−B)
脂肪酸エステル;BASF社製SYNATIVE ES TSTC
極圧剤パッケージ;AFTONCHEMICAL社製HITEC−3339
自動変速機油用DIパッケージ;AFTON CHEMICAL社製HITEC−2426
流動点降下剤;BASF社製IRGAFLO 720P
<自動車用ギア油>
配合例1〜3では、Sciety of Automobile Engineers(SAE)によるギア油粘度規格90に合わせ、100℃動粘度が約14.0mm
2/sとなるよう配合調整を行った。下記配合例および比較配合例で得られた潤滑油組成物の潤滑油特性を表3に示す。
【0251】
(配合例1)
実施例9で得られた水添操作後の共重合体を40.5質量%、脂肪酸エステルを15.0質量%、極圧剤パッケージを3.9質量%となるように配合し、これにPAO−6を加え全体を100質量%となるよう調整した。
【0252】
(配合例2)
実施例10で得られた水添操作後の共重合体を14.0質量%、脂肪酸エステルを15.0質量%、極圧剤パッケージを3.9質量%となるように配合し、これにPAO−6を加え全体を100質量%となるよう調整した。
【0253】
(配合例3)
実施例8で得られた水添操作後の共重合体を12.5質量%、脂肪酸エステルを15.0質量%、極圧剤パッケージを6.5質量%となるように配合し、これにPAO−6を加え全体を100質量%となるよう調整した。
【0254】
(比較配合例1)
PMA−Aを18.4質量%、脂肪酸エステルを15.0質量%、極圧剤パッケージを3.9質量%となるように配合し、これにPAO−6を加え全体を100質量%となるよう調整した。
【0255】
(比較配合例2)
PMA−Bを31.4質量%、エステルを15.0質量%、極圧剤パッケージを3.9質量%となるように配合し、これにPAO−6を加え全体を100質量%となるよう調整した。
【0256】
【表3】
【0257】
この粘度のギア油は自動車用ディファレンシャルギア油、手動変速機油等に好適に使用できる。本発明にて得られた共重合体を用いた潤滑油組成物は、一般的に自動車ギア油に用いられているPMA−Aを用いた比較配合例1と比べて、大きく剪断安定性に優れる結果となった。また、剪断安定性が比較配合例1より改善されている比較配合例2と比較すると、剪断安定性は同等であるが低温粘度が優れる結果となった。
【0258】
<自動車用自動変速機油>
配合例4および5は、自動変速機油用DIパッケージを用い、市販の自動変速機油(トヨタ自動車社製オートフルードWS)の100℃動粘度と合わせるため、5.5mm
2/s未満となるよう配合調整を行った。得られた潤滑油組成物の潤滑油特性を表4に示す。
【0259】
(配合例4)
実施例10で得られた水添操作後の共重合体を2.8質量%、DIパッケージを8.0質量%、流動点降下剤を0.5質量%となるように配合し、これに鉱油Aと鉱油Bが質量比にて2:3となるよう調整した低粘度基油を加え全体を100質量%となるよう調整した。
【0260】
(配合例5)
実施例8で得られた水添操作後の共重合体を2.5質量%、DIパッケージを8.0質量%、流動点降下剤を0.5質量%となるように配合し、これに鉱油Aと鉱油Bが質量比にて2:3となるよう調整した低粘度基油を加え全体を100質量%となるよう調整した。
【0261】
【表4】
【0262】
本発明にて得られた共重合体を自動変速機油に用いると、市販油と同等の粘度指数および低温粘度に加え、極めて優れた剪断安定性を示す。すなわち、本発明にて得られた共重合体を用いることにより、製造時の初期粘度をさらに下げることができる。
【0263】
また、DIパッケージを変更することにより、同様の配合調整にて無段変速機油においても同様の効果が得られ、DIパッケージに代わり極圧剤パッケージを用いれば手動変速機油としても好適に使用できる。
【0264】
<工業用潤滑油>
配合例6および7は、International Organization for Standardization(ISO)による粘度規格320に合わせ、40℃動粘度が約288〜352mm
2/s(ISO VG320)となるよう配合調整を行った。下記配合例および比較配合例で得られた潤滑油組成物の潤滑油特性を表5に示す。
【0265】
(配合例6)
実施例10にて得られた水添操作後の共重合体を32.2質量%、流動点降下剤0.5質量%、並びに極圧剤パッケージを1.2質量%となるように配合し、これに鉱油Cを加え全体を100質量%となるよう調整した。
【0266】
(配合例7)
実施例8にて得られた水添操作後の共重合体を28.1質量%、流動点降下剤0.5質量%、並びに極圧剤パッケージを1.2質量%となるように配合し、これに鉱油Cを加え全体を100質量%となるよう調整した。
【0267】
(比較配合例3)
PB−Aを28.6質量%、流動点降下剤0.5質量%、並びに極圧剤パッケージを1.2質量%となるように配合し、これに鉱油Cを加え全体を100質量%となるよう調整した。
【0268】
(比較配合例4)
PB−Bを41.4質量%、流動点降下剤0.5質量%、並びに極圧剤パッケージを1.2質量%となるように配合し、これに鉱油Cを加え全体を100質量%となるよう調整した。
【0269】
【表5】
【0270】
本発明にて得られた共重合体を用いた潤滑油組成物は、ポリブテンを用いた比較配合例と比較し、大きく低温粘度が優れる結果となった。