(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
予め負荷を加えたばね(82、92)は、支承部(21)の近位面に固着された別個の支承面部材(81)に動作可能に連結される、請求項1に記載のばね支援薬物送達デバイス(80、90)。
ピストンロッド(22)は用量設定中および用量送達中に回転しないよう固定され、中心体(20)は、ハウジング(4)内でのピストンロッド(22)の回転を防止するように設計される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のばね支援薬物送達デバイス(80、90)。
ハウジング(4)に対する数字スリーブ(24)のホーム位置へ戻る螺着運動によって、内側スリーブ(29)が遠位方向に回転することなく前進するよう、内側スリーブ(29)は数字スリーブ(24)にねじ係合される、請求項6に記載のばね支援薬物送達デバイス(80、90)。
ハウジング(4)に対する数字スリーブ(24)のねじ付部は第1のリードであり、数字スリーブ(24)に対する内側スリーブ(29)のねじ付部は第2のリードであり、ピストンロッドのねじ付軸のねじ付部は第3のリードであり、第1のリード、第2のリード、および第3のリードは等しくない、請求項6〜10のいずれか1項に記載のばね支援薬物送達デバイス。
用量設定中に、ダイヤルリンク(25)および数字スリーブ(24)は第1の軸方向配置にあり、ハウジング(4)に対するダイヤルリンク(25)および数字スリーブ(24)の螺着運動によって、ダイヤルリンク(25)および数字スリーブ(24)をホーム位置から第1の軸方向距離のところに螺着し、このダイヤルリンク(25)の螺着運動によって、駆動ナット(23)をピストンロッドのねじ付軸に沿って第1の軸方向距離とは異なる第2の軸方向距離のところに螺着し、用量送達中に、ダイヤルリンク(25)および数字スリーブ(24)は第2の軸方向配置にあり、ハウジング(4)に対する数字スリーブ(24)のホーム位置へ戻る螺着運動によって、遠位方向に回転することなく内側スリーブ(29)を前進させて、内側スリーブ(29)に軸方向に固定された駆動ナット(23)、したがってピストンロッド(22)および可動ピストン(10)を軸方向に前進させることにより、カートリッジ出口(17)から流体を投薬する、請求項6〜11のいずれか1項に記載のばね支援薬物送達デバイス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
すべてとは言えないにしてもほとんどの場合において、ユーザが用量を設定する前に、関連する支承部を通る親ねじの遠位端がカートリッジピストンの近位端または近位面に連続係合しない場合、ペン注射型デバイスの用量精度は大きく影響を受ける。言い換えると、一部の用量投入(dosing)機構の設計には、用量が注射された後、およびそれに続く用量の設定前に、親ねじがピストンから近位に動くか、または並進運動するという1つまたはそれ以上の欠陥がある。このような場合には、支承部がピストンの近位端に接触しなくなるため、支承部の遠位面とピストンの近位面との間に間隙または空所を生み出す。次の用量が設定され送達されると、親ねじは、ピストンに接触してピストンを動かす前に、この意図しない間隙を必ず横切ることになる。この間隙閉鎖中にピストンが動かないため、したがってカートリッジから薬剤が排出されないため、送達される実際の用量は、間隙のサイズに直接比例する量により設定されたものよりも小さい。したがって、用量送達と次の用量の設定との間の、意図しない親ねじの近位への動きを防止することが最も重要である。言い換えると、用量投入機構は、カートリッジピストンに対する親ねじの近位への動きを防止するための構造を含まなければならない。
【0010】
WO2005/018721に全体が記載された市販のペン注射デバイスの物理的試験から、ユーザが用量ノブを遠位方向に押し、同時に、用量ノブをいずれかの方向(時計方向または反時計方向)に回転させると、親ねじが近位方向または遠位方向に前進することがわかる。
【0011】
この市販の注射デバイスの別の認識される問題は、完全に手動で起動されるペンデバイスであることである。すなわち、ペン内に含まれる薬剤の注射が、完全にペンのユーザにより与えられる力によって送達されるため、この市販の医薬品送達ペンを手動ペンと呼ぶことができる。このように、薬剤の注射を、ばね要素などの任意のタイプの機構によって支援しない。そのような完全に手動で駆動されるペンの1つの欠点は、力を加えて用量設定部材をある軸方向に定めた距離だけ引き出した後に、用量設定部材を押して注射を行うよう、ユーザに求められることである。これは、特に、小児、高齢者、障害者、または糖尿病を患っている人のような運動技能や指の強度が低下している人には、困難な手動手順となり得る。この問題を解決するために、本発明は、用量投入機構の当初の設計を修正して、用量投与工程中にばね支援機能をもたらすようにする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
開示は、ばね支援薬物送達をもたらすための方法およびシステムに関する。ばね支援薬物送達デバイスは、ハウジングと、長手方向軸、遠位端、および近位端を有し、用量設定中および用量送達中に回転
しないよう固定され、ハウジングに対して軸方向に遠位方向へ可動な親ねじとを含むことができる。親ねじは、ねじ付軸、および遠位端に連結された支承部フットを含むことができ、親ねじは長手方向軸に平行に位置する平滑なキー溝を有する。一端部に可動ピストンおよび他端部に出口を有するカートリッジを設けることができる。親ねじが遠位に動くときに前記出口に向かって前進する親ねじ支承部が、ピストンに係合可能である。駆動ナットは、親ねじのねじ付軸に沿ってねじ係合し、螺着可能である。数字スリーブは、ハウジングにねじ係合して、ハウジングに対して螺着可能である。中心体は、ハウジング内で軸方向に固定され、親ねじのキー溝に摺動可能に嵌合してハウジング内での親ねじの回転を防止するタブを含む。用量投与工程中にデバイスのユーザを支援する、予め負荷を加えたばねが設けられる。
【0013】
重要なアイデアは、ハウジングと、長手方向軸、遠位端、および近位端を有し、ハウジングに対して軸方向に遠位方向へ可動であるピストンロッドとを含むばね支援薬物送達デバイスを提供することである。薬物送達デバイスは、ハウジング内で固定され、ピストンロッドに連結されて、ピストンロッドが中心体に対して軸方向に遠位方向へ可動であるようにする中心体をさらに含む。予め負荷を加えたばねはピストンロッドに動作可能に連結されて、ばねが解放され、ばねに蓄えられた力が、用量投与工程中にピストンロッドの遠位方向への駆動を支持するようにする。
【0014】
中心体とハウジングとは、一体に形成されても、連結された別個の部材であってもよい。連結は恒久的であっても解放可能であってもよい。中心体は、ハウジング内で少なくとも軸方向に固定される。
【0015】
本発明は、回転運動を直線運動に伝える(transfer)ように機能し得る親ねじに限定されないため、「ピストンロッド」という用語を用いる。「ピストンロッド」という用語は、好ましくは、送達デバイスのハウジングを通って/ハウジング内で動作するように適用された部材を意味し、この部材は、例えば注射可能な製品を放出または投薬する目的で送達デバイスを通って/送達デバイス内で軸方向に動くように設計される。「ピストンロッド」は、円形または非円形横断面を有する部材をさらに意味する。ピストンロッドは、当業者に公知の適切な材料から作られ、一体構成であっても複部構成であってもよい。ピストンロッドの一実施形態は、ねじ山を有する親ねじであってよい。
【0016】
動作可能に連結された部材を、直接連結、例えば、連結または係合しても、間接的に、すなわち他の部材を用いて連結してもよい。部材を、フォームフィット、圧力嵌め、または物質的な結合により連結してもよい。あるいは、部材を単に互いに接触させるかまたは互いに当接させて、力または動きを伝えるようにしてもよい。連結された部材は、例えば、互いに対して軸方向におよび/または回転方向に動いても動かなくてもよい。
【0017】
一実施形態では、予め負荷を加えたばねは、中心体とピストンロッドとの間またはハウジングとピストンロッドとの間に動作可能に連結される。予め負荷を加えたばねを、中心体とピストンロッドの支承部との間に動作可能に連結してもよい。一実施形態では、予め負荷を加えたばねは、支承部の近位面に固着された別個の支承面部材に動作可能に連結される。予め負荷を加えたばねは、支承部の近位面に動作可能に連結される波形ばねであってよい。ピストンロッドを、ねじ付軸、および遠位端に連結された支承部を含む親ねじとして具体化してもよい。
【0018】
例えば、1つの配置では、ペン型送達デバイスの中心体および親ねじ支承部を修正して、ばねを収容するようにしてもよい。そのようなばねは、圧縮ばねまたは波形ばねまたは他の同様の付勢要素であってよい。この配置では、デバイスをユーザに提供するときに、ばねを予め負荷または応力を加えた状態で提供することが好ましい。この予め負荷を加えたばねにより、用量投与工程中に加えることのできるばね力が規定され、したがって用量の投与に必要なユーザの力が小さくなる。本明細書でより詳細に説明するように、ばねの一端部を中心体に固定することができ、ばねの他端部を、親ねじ支承部に固着された別個の支承面部材に固定することができる。
【0019】
ユーザが用量ノブを押してペン内に含まれる薬剤の選択された用量を注射すると、予め負荷を加えたばねが解放され、親ねじを遠位方向に駆動することにより、ばねに蓄えられた力が注射を支持または支援する。このようにして、この配置では、ばねのないデバイスを用いるよりも、ユーザが注射を行うのに必要な力が小さい。
【0020】
前述した設計改良を含むペン型薬物送達デバイスは、ハウジングと、長手方向軸、遠位端、近位端、およびねじ付軸を有する親ねじとを含むことができる。親ねじは、用量設定中および注射中に回転
しないよう固定され、用量投与中にハウジングに対して軸方向に遠位方向のみへ動く。親ねじは、遠位端に連結された支承部フットを含むことができる。親ねじは、長手方向軸に平行に位置する平滑なキー溝を含むことができる。一実施形態では、親ねじは近位に動くことが常に防止される。デバイスは、流体容器またはカートリッジを有してもよく、この流体容器またはカートリッジは、一端部に可動ピストンおよび他端部に出口を有する、薬が充填されたリザーバを画成し、ピストンには、親ねじの遠位端に連結された支承部が係合する。ピストンは、用量投与中に親ねじが遠位に動くときに、カートリッジの出口または遠位端に向かって前進する。親ねじが遠位に動くときに前記出口に向かって前進する親ねじ支承部が、ピストンに係合可能であってよい。
【0021】
駆動ナットは、親ねじのねじ山にねじ係合し、用量設定中に親ねじおよびハウジングに対して回転し、近位に動くことができる。言い換えると、駆動ナットは、親ねじのねじ付軸に沿ってねじ係合し、螺着可能である。数字スリーブは、ハウジングにねじ係合して、ハウジングに対して螺着可能である。数字スリーブは、用量設定中にハウジングに対して近位方向に外向きに螺着される。中心体は、ハウジング内で軸方向に固定され、親ねじのキー溝に摺動可能に嵌合してハウジング内での親ねじの回転を防止するタブを含む。用量投与工程中にデバイスのユーザを支援する、予め負荷を加えたばねが設けられる。
【0022】
ダイヤルリンクは、駆動ナットに連結され、駆動ナットに対して軸方向に可動であり回転
しないよう固定され、ダイヤルリンクおよび数字スリーブが第1の軸方向配置にあるときに、ダイヤルリンクは数字スリーブに回転
しないよう固定される。ダイヤルリンクおよび数字スリーブが第2の軸方向配置にあるときに、数字スリーブはダイヤルリンクに対して回転可能である。一実施形態では、ダイヤルリンクは、駆動ナットに摺動可能に回転方向に係合し、駆動ナットに対して軸方向に可動であり回転
しないよう固定される。ダイヤルリンクおよび数字スリーブが第1の軸方向配置にあるときに、ダイヤルリンクはクラッチを通して数字スリーブに回転
しないよう固定され、第2の軸方向位置にあるときに、クラッチ、したがって数字スリーブはダイヤルリンクから係合解除され、ダイヤルリンクは数字スリーブに対して回転可能になる。内側スリーブは数字スリーブにねじ係合し、内側スリーブはハウジングに対して軸方向に可動であるが回転
しないよう固定される。内側スリーブは、例えば、内側スリーブに形成された少なくとも1つのスロットに摺動可能に嵌合する、中心体の少なくとも1つのラグにより、中心体に対して軸方向に可動であり回転
しないよう固定される。
【0023】
一実施形態では、中心体は、親ねじが近位方向に動くことを防止するように構成された少なくとも1つの金属ラチェットアームをさらに含む。
【0024】
一実施形態では、ハウジングに対する数字スリーブのねじ付部は第1のリードであり、数字スリーブに対する内側スリーブのねじ付部は第2のリードであり、親ねじのねじ付軸のねじ付部は第3のリードであり、第1のリード、第2のリード、および第3のリードは等しくない。
【0025】
用量設定中に、ダイヤルリンクおよび数字スリーブは第1の軸方向配置にあり、ハウジングに対するダイヤルリンクおよび数字スリーブの螺着運動によって、ダイヤルリンクおよび数字スリーブをホーム位置から第1の軸方向距離のところに螺着する。この螺着運動は、ダイヤルリンクおよび数字スリーブに連結された用量ノブの、ハウジングに対する螺着運動によって生じる。用量ノブの螺着運動によって、ダイヤルリンクおよび数字スリーブをホーム位置から第1の軸方向距離のところに螺着するため、数字スリーブがデバイスのハウジングまたは本体から近位方向に外方へ延びる。ダイヤルリンクの螺着運動によって、駆動ナットを親ねじのねじ付軸に沿って第1の軸方向距離とは異なる第2の軸方向距離のところに螺着する。
【0026】
用量投薬中に、ダイヤルリンクおよび数字スリーブ要素は第2の軸方向配置にあり、ハウジングに対する数字スリーブのホーム位置へ戻るまたは内向きの螺着運動によって、遠位方向に回転することなく内側スリーブを前進させて、駆動ナット、したがって親ねじおよび可動流体容器ピストンを軸方向に前進させることにより、カートリッジ出口から薬または流体を投薬する。駆動ナットは、内側スリーブに軸方向に固定される。
【0027】
本明細書で開示されたペン注射器は、ユーザが医薬品の投薬中に用量ノブを容易に押せるようにする機械的利益を備えることができ、その機械的利益は非常に高く、装置設計中に製造者により好都合に選択される。この機械的利益により、数字スリーブは、数字スリーブが前進させる親ねじよりも大きい軸方向距離を移動することができるため、小さい用量を送達することができる。
【0028】
添付図面を適切に参照しながら、以下の詳細な説明を読むことにより、本発明の改良された薬物送達デバイスの様々な態様のこれらおよびその他の利点、ならびにこれを達成する方法が当業者に明らかになろう。
【0029】
図面を参照しながら、例示的な実施形態について本明細書で説明する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
いくつかの図面を通じて、対応する参照符号は対応する部材を示す。図面は本発明の実施形態を表すが、図面は必ずしも縮尺通りではなく、本発明をより適切に図示し説明するために、図面のいくつかにおいて、ある特徴を強調または省略する場合がある。
【0032】
最初に
図1〜
図3を参照すると、注射器ペンとしての薬物送達デバイス1が示される。このペンは、細長い略筆記具状であるが、他の形状も本発明の範囲に含まれる。言い換えると、薬物送達デバイス1はペン型デバイスであってよい。薬物送達デバイス1は、カートリッジホルダ2、主(外部)本体またはハウジング4を有するハウジングを含む。
【0033】
薬物送達デバイス1およびハウジングは、遠位端および近位端を有する。「遠位端」という用語は、薬物送達デバイス1の投薬端の最も近くに配置されるかもしくは配置予定の薬物送達デバイス1またはその部材の端部を指す。「近位端」という用語は、デバイス1の投薬端から最も離れて配置されるかもしくは配置予定のデバイス1またはその部材の端部を指す。遠位端および近位端は、軸方向に互いに離間している。軸はデバイス1の長手方向軸または回転軸であってよい。
【0034】
カートリッジホルダ2の近位端と主ハウジング4の遠位端とは、ペン注射器が再利用可能なデバイスとして設計されるか、使い捨てデバイスとして設計されるかに応じて、適切な保持機能により共に固定される。後者の場合には、保持機能は、以下で説明する連結手段を用いる恒久的なものである。デバイスが再利用可能である場合には、保持手段は、ユーザがデバイスを容易に分解して空のカートリッジを新しい未使用のカートリッジに交換することのできるねじ式連結、ルアーロック、スナップ嵌め、バヨネットなどのタイプ、または取付具の組合せである。この図示した配置では、カートリッジホルダ2が本体4の近位端内に固定される。
【0035】
医薬製品のいくつかの用量を投薬可能なカートリッジ8が、カートリッジホルダ2内に設けられる。好ましくは、カートリッジ8は、1日に1回または複数回など頻繁に投与しなければならないタイプの薬剤を含む。1つのそのような薬剤はインスリンである。ピストン10は、最初はカートリッジ8の近位端に保持され、各注射が終了すると、次第に
図2に示す空のカートリッジ位置へ遠位に動く。着脱可能なキャップ14が、カートリッジホルダ2を覆う本体4に解放可能に保持連結される。
【0036】
図1〜
図3に示す薬物送達デバイスの用量設定機構を、使い捨てまたは再利用可能な薬物送達デバイスのいずれかについて使用することができる。薬物送達デバイス1が使い捨て薬物送達デバイスを含む場合、デバイス1を破壊せずにカートリッジ8を薬物送達デバイス1から取り外すことができない。使い捨てデバイスでは、注射器ペンを製造者が組み立てるときに、カートリッジホルダ2の近位端を、接着剤、超音波溶接、または別の適切な方法で用量設定機構のハウジングにしっかりと取り付ける、または固定することができる。あるいは、薬物送達デバイス1が再利用可能な薬物送達デバイスを含む場合、カートリッジ8は着脱可能であり、デバイス1を破壊せずに薬物送達デバイス1から取り外すことができる。
図1〜
図3に示す薬物送達デバイス1では、デバイスが使い捨て薬物送達デバイス1として示される。しかしながら、用量設定機構を再利用可能な薬物送達デバイスで使用してもよく、再利用可能なペンの場合、カートリッジホルダ2が再利用可能であり、例えばねじ付連結、バヨネット連結、またはスナップ嵌め連結により、リセット可能な親ねじを有する再利用可能な用量設定機構に近位端を着脱可能に取り付ける、または固定することができることを当業者は理解するであろう。
【0037】
前述した着脱可能または交換可能なキャップ14を使用して、主ハウジング4から延びるカートリッジホルダ2を覆う。好ましくは、交換可能なキャップ14の外寸は、交換可能なキャップ14がカートリッジホルダ2を覆う位置にあるとき単一の全体部材であるという印象を与えるように、主ハウジング4の外寸と同様または同一である。使用時に、着脱可能なキャップ14を取り外し、ハブに取り付けられた両頭針を含むペンニードルアセンブリ16を、カートリッジホルダ2の遠位端に螺着し、または押し付けることができ、あるいは、この遠位端にカチッと留めることができる。
【0038】
カートリッジ8は従来の設計であり、軸方向に摺動可能および封止可能にカートリッジの内壁に係合するピストン10により近位端で閉じられた薬充填リザーバを画成して、流体医薬品をリザーバ内に保持する。カートリッジリザーバの遠位出口端は、カートリッジ8の段下がり(stepped−down)径の首部15に固定されたキャップ13により保持されたセプタム11によって封止される。ペンニードルアセンブリ16がカートリッジホルダ2の遠位端に取り付けられると、注射針の近位先端がカートリッジホルダ2の遠位端の中心開口部、キャップ13の開口部を通過し、カートリッジセプタム11に貫入して、流体流出口をもたらし、これにより、注射器ペン1の動作中に、カートリッジリザーバ内の薬を遠位針の先端部から投薬することができる。上で図示し説明した流体薬カートリッジ8は例示的なものであり、本発明の範囲内で他の構成を使用してもよいため、限定するものではない。
【0039】
注射器ペン1の本体4は、軸方向に前進可能な親ねじ22、駆動ナット23、内側スリーブ29、ダイヤルリンク25、数字スリーブ24、クラッチ26、および圧縮ばね27を収容する。用量ノブ28はダイヤルリンク25に連結され、用量ノブ28を用いて用量を設定した後に設定用量を注射する。ハウジングまたは本体4は、射出成形されたプラスチックなどの軽量な材料から形成される。頑丈にするために、ハウジング4を単一の管状部品として成形してもよい。近位端近くのハウジング4の窓51に、ハウジング4にスナップ嵌合する拡大レンズを埋めて、使用中に数字スリーブ24上の用量標示マーキング(図示せず)が容易に見えるようにすることができる。
【0040】
ハウジング4の内部遠位端近くに、中心開口部が形成された中心体20が取り付けられ、この中心体20は、正反対にある対の要素またはタブ31から形成された内向きの回転防止機構を有し、タブ31は、親ねじ22の長手方向キー溝32に各々摺動可能に嵌合する内端部が四角くなっている。代替実施形態では、タブ31およびキー溝以外の機能、例えば、相補的に形成されたカラーの孔に嵌合する平坦部を有する親ねじを用いて、回転を防止してもよい。タブ31により、ペンの使用中に親ねじ22がハウジング4内で回転することは防止されるが、親ねじ22をカートリッジ8に向けて遠位方向など長手方向に移動させることは可能になる。中心体20を管状ハウジング4にスナップ嵌めまたは音波溶接連結することにより、ハウジング4に対する中心体20の軸方向および相対回転運動を防止することができる。
【0041】
親ねじ22は、用量投入中および注射中に軸方向に並進運動可能であり回転
しないよう固定されたねじの形状である。「回転
しないよう固定」という用語は、この文脈で、用量投入中および注射中に親ねじ22の回転が防止されることを意味する。親ねじ22は、その長さに沿って螺旋ねじ付部33を有する軸を含み、このねじ付部33は、長手方向に延びるキー溝または溝32によって中断される。ねじ付部33の近位端に示されるねじ山止め具34が設けられ、これを使用して、ユーザがカートリッジ2内に残る用量よりも多い薬の用量を送達するようにペン1を設定できないようにする。本発明の範囲内で、ねじ運動を止める他の形態に置き換えてもよく、例えば、ねじ近位端のねじ付部33は、カムイン(cam−in)できない場合に近位端近くで止まることができ、そのようなねじ山止め具を有する中実ねじによって、用量設定中に、ナット23がより確実にねじからトルクで外れることがなくなる。親ねじ22の遠位端は、広がったディスク状のフットまたは支承部21を含んで、支承部21が接触するカートリッジピストン10への負荷を分散させることにより、ピストンの前進中に直接係合する。相対回転を可能にすることのできるスナップ嵌め20などにより、別個の支承部フット21を親ねじ22に取り付けてもよい。親ねじ22は一体のプラスチック射出成形品として示されるが、代わりの構成材料および複数の部品が可能である。
【0042】
駆動ナット23は、可撓性フィンガ36およびクリッカ歯35を有する円筒形のチューブ状本体を含む。駆動ナット23の遠位領域には、親ねじ22のねじ付部33に摩擦ロッキングしてねじ係合する内側ねじ付部37が形成される。ねじ付部33、37は2条ねじ付部として示されるが、1条ねじ付部または別の複数条ねじ付部のように、異なって形成されるが依然として適切な摩擦ロッキング能力をもたらすものであってもよい。駆動ナット23は内側スリーブ29内に位置し、内側スリーブ29に軸方向に固定されるが回転方向に固定されない。用量設定中に駆動ナット23が内側スリーブ29に対して回転すると、内側スリーブ29内で半径方向に突出する可撓性アーム38に、クリッカ歯35がラチェット式に係合する。駆動ナット23が回転すると、可撓性アーム38は歯35を載り越えて、可聴クリックノイズを生み出す。歯35は、各クリックが1つの用量の設定に等しくなるように構成される。可撓性クリッカアーム38は1つしか設けられないが、4つの等角度で離間したアーム38を使用すると、内側スリーブ29内で駆動ナット23を中心に位置させる助けになる。ねじ付部37の近位に位置する駆動ナット本体23の空洞内部により、親ねじ22の近位端が自由に通過することができる。駆動ナット23の外面は、ダイヤルリンク25に協働係合して、ダイヤルリンク25が軸方向に自由であり、駆動ナット23に対して回転
しないよう固定されるように設計される。したがって、使用中、ダイヤルリンク25は、ねじ付駆動ナット23に対して軸方向に可動であるが、回転可能にロックされる。駆動ナット23の近位に延びるフィンガ36とダイヤルリンク25の遠位に延びるフィンガ43との協働によって、この連結が可能である。ダイヤルリンク25に固定された用量ノブ28を回すことによってダイヤルリンク25が回転する用量設定中に、これら2組のフィンガ36、43は互いに対して軸方向に動くが、互いに回転係合する。駆動ナット23は、一体のプラスチック射出成形品として示されるが、他の構成が本発明の範囲に含まれる。
【0043】
図示した実施形態では、ダイヤルリンク25が、本体4に嵌合する、射出成形プラスチックの一体部材に形成される。ダイヤルリンク本体の中心領域を取り囲むフランジ40は、フランジ40の遠位面から延びるスプラインまたは歯39、およびフランジ40の近位面から延びる歯41を含む。ダイヤルリンク25の近位端の段下がり部分が、軸方向に近位に延びるステム42を形成する。ダイヤルリンク本体の遠位端は、駆動ナット23のフィンガ36に嵌合する対のフィンガ43を含んで、ダイヤルリンク25に対する駆動ナット23の軸方向運動を可能にするが、回転運動を可能にせず、これにより、部品を共に同一の環状空間内で回転方向にロッキングする。フィンガ36、43は十分に軸方向に延びて、注射のための最大ペン用量の設定中に確実に係合解除されないようになっている。
【0044】
近位面を有し、かつ遠位に面した、中心に位置する支承部カラーおよび位置合わせ柱55を有する射出成形プラスチックの用量ノブ28が設けられる。ダイヤルリンク25のステム42は、用量ノブの位置合わせ柱を受け、製造組立中に支承部カラー内に超音波溶接されて、用量ノブ28とダイヤルリンク25とを軸方向に回転可能に共に固定するようにする。「回転
しないよう固定」という用語は、この文脈で、用量ノブ28とダイヤルリンク25との間のいかなる相対回転運動も防止されることを意味する。用量ノブスカート50が、用量ノブの遠位面の半径方向周囲から遠位に延びて、用量設定中にユーザの把持部として機能する。
【0045】
ダイヤルリンク25の周りには、数字スリーブ24が同軸に取り付けられる。数字スリーブ24は、螺旋溝として形成されたねじ付部52を有する円筒形外面30を有し、ねじ付部52は、本体4の内面に形成された対応するねじ付部62に係合して、数字スリーブ24をペンハウジング4にねじ係合する。ねじ付部52、62は、1条ねじ付部として示されるが、異なるように形成することもできる。カートリッジ8が最大ペン用量に対して十分に満たされていると仮定すると、ねじ付部62は最大ペン用量で数字スリーブ24のねじ付部52の端部63に当接する。数字スリーブ24の外面の遠位端の止め面64は、ゼロ用量位置で突出する止め具とわずかに離間関係に位置し、ユーザがゼロ用量位置より下でねじ要素を手動で螺着しようとする場合には、別の止め面に止め具が当接する。数字スリーブ24の空洞内部65は、螺旋ねじ付部67を備えた円筒形内面により画成される。
【0046】
数字スリーブ24の外径は、用量ノブ28内に嵌合できるように選択される。数字スリーブ24の近位端領域は、外周の周りで交互に離間したいくつかの切欠き70および対応する窓71を含む。数字スリーブ24は、その外面30の周りに、本体4開口部51を通して見える治療用量サイズの適切な印を含む。クラッチ26は数字スリーブ24の開口近位端に嵌合する。製造組立中に、クラッチ26の耳72が切欠き70に嵌合し、アセンブリフィンガ73が窓71にスナップロックして、数字スリーブ24およびクラッチ26を共に軸方向に回転可能にロックする。フランジの内面に形成されたクラッチ26の軸方向に延びる歯54の輪が、ダイヤルリンク25上で近位を向くダイヤルリンク歯41と協働する。クラッチ26と用量ノブ28の内側部分との間には、クラッチ26を付勢してダイヤルリンク25の歯41に係合する圧縮または付勢ばね27が配置される。注射中に、ユーザが用量ノブ28の近位面に押込み力を手動で加えると、ばね27が弾性圧縮されて、クラッチ26と数字スリーブ24とをダイヤルリンク25から係合解除する。ばね27がクラッチ26を付勢して数字スリーブ24を用量ノブ28およびダイヤルリンク25に取り付けると、ダイヤルリンク25のフランジ歯41とクラッチ歯54とが噛み合う。注射中にばね27が十分に圧縮されているときには、用量ノブ28およびダイヤルリンク25は、クラッチ26および数字スリーブ24とは噛み合わない。螺旋状に巻かれた金属ワイヤばね27が示されるが、他の形の一般的に公知の付勢要素に置き換えてもよい。
【0047】
内側スリーブ29は、プラスチックから射出成形され、数字スリーブ24の空洞65に嵌入する管状本体を含む。内側スリーブ29は、その外面に螺旋ねじ付部75を有し、この螺旋ねじ付部75は、数字スリーブ24の内面の内側ねじ付部67に係合する。ねじ付部67、75は1条ねじ付部として示されるが、異なるように形成することもできる。ねじ付部に対応する部分螺旋形状である内側スリーブ24の端部の最も近位の部分を切り欠いて、軸方向に突出する歯76の部分的な輪を形成し、この歯76は、ダイヤルリンクの遠位向きの歯39と噛み合うと、ダイヤルリンク25と内側スリーブ29とを共に回転可能にロックするように機能する。内側スリーブ29は、ペン本体4に軸方向に回転方向に固定される中間中心体20を通って本体4にキー止めされる。内側スリーブ29の遠位端は、内側スリーブ29の周囲に対の隆起状スロット77を有し、このスロット77は、中心体20から半径方向内方に突出するラグ78を軸方向に摺動可能に受ける。
【0048】
内側スリーブ29に成形された開口部は、半径方向内方に突出する歯を有する4つの弾性フィンガ38を画成し、これらの歯は、軸方向に向き、半径方向に突出する歯または隆起35を有する駆動ナット23の遠位端の凹部内に突出するように形成されて、用量設定中に、内方に突出する歯がいずれかの回転方向で歯35にカチッと嵌まるようにする。歯を有するフィンガ38は駆動ナット23の凹部と協働して、ナット23が、製造中に内側スリーブ29に組み付けられた後に内側スリーブ29から外れないようにする。
【0049】
用量送達中の戻り駆動を容易にするために、数字スリーブ24と本体4、ならびに数字スリーブ24と内側スリーブ29とのねじ付連結は、結合ではなく、対応して設計された凹部溝内で摺動する、突出する60°面角度のねじ山によりもたらされる。このようなねじ付部により、機械的利益が3.4以上であり、駆動部材または駆動ナット23のねじリードが0.108インチであることが好ましい。
【0050】
以下で、上記実施形態の動作について説明する。カートリッジ8内に閉じ込められた空気を除去し、支承部21がカートリッジストッパまたはピストン10の近位端に確実に接触するように、針16を取り付けたペン1を最初にプライミングすべきである。特に、ユーザは、一般的にペン本体4を片手でつかみながら、用量ノブスカート50を手で把持して、用量ノブ28を本体4に対して回し始める。ゼロ用量配置では、用量ノブ28が不適切に押し込まれない限り、数字スリーブ24がさらに遠位に動くことができないため、用量ノブ28は用量増加方向にしか回転することができない。窓51を通して見えるマーキングにより示される、1ユニットまたは2ユニットなどの小さい送達量に関連する数字スリーブの短い工程後に、ユーザは回転を止める。その後、キャップ14および存在する他のニードルキャップを取り外し、かつ針先端部を上方に向けた後に、ユーザは押込み力を用量ノブ28に加えて、数字スリーブ24がゼロ用量位置に戻るまで用量ノブ28を遠位に駆動する。このゼロ用量位置では、数字スリーブのねじ付部52が本体ねじ付部62の遠位端に到達しており、押込み動作中に、ピストン10はカートリッジ8内で前方に移動する。ピストン運動により液体が針の遠位先端部に到達したことをユーザが確認したら、プライミングプロセスが終了する。液体が針先端部に見えない場合、プライミング工程を必要に応じて繰り返す。プライミング後、ペン1は実際の注射に使用される準備が整う。
【0051】
最初に、ユーザは、用量ノブ28を回すことにより、窓51に見えるように所望の用量を設定することによってペンを準備する。ユーザが大きすぎる用量にダイヤル設定し、薬が排出されない場合、ユーザは、用量ノブ28を反対方向に、希望に応じてゼロまで戻るように回すことにより、ダイヤルを小さくなるように回転させる(rotate down)ことができる。用量を設定するために、用量ノブ28を時計方向に回す。用量ノブ28とダイヤルリンク25とが回転方向に固定されるため、ダイヤルリンク25が回転して、遠位向きフィンガ43が駆動ナット23の近位向きフィンガ36に係合することにより、駆動ナットを同一の方向に回す。駆動ナット23の回転により、固定された親ねじ22に対してナット23が回転し、これにより、ナット23が近位方向に親ねじ22の上方へ動く、または親ねじ22を上る。駆動ナット23は内側スリーブ29に対して回転し、内側スリーブ29は、中心体20とのスプライン連結により本体4に対して回転方向に固定して保持される。駆動ナット23と内側スリーブ29とが軸方向に固定されるため、駆動ナット23の近位への軸方向運動により、内側スリーブ29が中心体20に対して近位に摺動する。クラッチ26がダイヤルリンク25に回転方向に固定されるため、クラッチ26が回転すると、数字スリーブ24が回転して本体4から近位にスピンアウト(spin out)する。数字スリーブ24のねじ山のピッチが内側スリーブ29のねじ山のピッチより大きいため、数字スリーブ24およびダイヤルリンク25は、内側スリーブ29および駆動ナット23と比べて大きい軸方向距離を並進運動する。
【0052】
用量を注射するために、例えばユーザの皮膚に注射針の遠位先端部が適切に貫入するようにペン1を操作した後に、ハウジング4を把持する手の親指または人差し指などで、軸方向遠位への押込み力をノブ面53に加えて、ダイヤルリンク25を本体4に向けて軸方向に遠位方向へ押しやる。最初に、注射中に、ダイヤルリンク25が軸方向に移動し、この移動運動により付勢ばね27を圧縮して、ノブ面と数字スリーブ24の近位端との間の間隙を閉じる。付勢ばね27は、数字スリーブ24が本体4に対して動く前に圧縮されるように設計される。ダイヤルリンク25が数字スリーブ24に対して駆動ナット23の軸方向配置へ移動すると、クラッチ歯54とダイヤルリンク歯42とが係合解除されて、ダイヤルリンク25に対する数字スリーブ24の戻り後方回転が可能になる。ダイヤルリンク25の軸方向運動中、駆動ナット23は軸方向にまたは回転方向に動かない。数字スリーブ24とクラッチ26とが回転可能にダイヤルリンク25から連結解除されると、ユーザが用量ノブ28を押し込むことにより回転なしでダイヤルリンク25が引き続き軸方向に押し込まれるため、数字スリーブ24は用量ノブ28に対してスピンするときに本体4に螺着し、まだ残っている注射予定の量を示す数字スリーブ24の用量マーキングが窓51を通して見える。
【0053】
数字スリーブ24のねじを緩めると、内側スリーブ29が数字スリーブ24よりも小さい距離だけ遠位に前進するため、数字スリーブ24によって内側スリーブ29が数字スリーブのねじ付部内の内ねじ山を基本的に締め付ける。駆動ナット23の遠位端との当接または直接係合により内側スリーブ29が前進すると、回転なしで駆動ナット23が前進する。これにより、駆動ナット23が親ねじ22とねじ付連結するため、回転なしで親ねじ22が軸方向に前進し、親ねじの前進によりカートリッジピストン10が移動して、医薬品をカートリッジリザーバから排出する。数字スリーブのねじ付部52が本体4の遠位端に到達すると注射が終了し、そのときに、ペン1は準備完了状態またはゼロ用量位置に再び配置される。
【0054】
カートリッジ8内に残る薬が適切な用量投入に不十分となるまで、ペン1を継続して使用して所望の用量を送達することができる。この不足は、駆動ナットのねじ付部37が親ねじ22のねじ山止め具34に当接しているために、所望の用量を完全に設定することができないことによりユーザに示され、そのときに、駆動ナット23およびダイヤルリンク25は近位にそれ以上回転することができない。残っている薬が不十分であるときには、ペン1を廃棄し、同様であるが完全に新しいペンに交換する。
【0055】
前述したように、この市販の注射デバイスの1つの認識される問題は、完全に手動で起動されることである。すなわち、ペン内に含まれる薬剤の注射が、完全にペンのユーザにより与えられる力によって送達されるため、この市販の医薬品送達ペンを手動ペンと呼ぶことができる。このように、薬剤の注射を、どのようなタイプのばね要素によっても支援しない。そのような完全に手動で駆動されるペンの1つの欠点は、力を加えて用量設定部材をある軸方向に定めた距離だけ引き出した後に、用量設定部材を押して注射を行うよう、ユーザに求められることである。これは、特に、小児、高齢者、障害者、または糖尿病を患っている人のような運動技能や指の強度が低下している人には、困難な手動手順となり得る。この問題を解決するために、本発明は、用量投入機構の当初の設計を修正して、用量投与工程中にばね支援機能をもたらすようにする。
【0056】
例えば、
図4は、ダイヤル位置への準備ができた、ばね支援ペンデバイス80の一実施形態の斜視図である。図示したように、このばね支援ペンデバイス80は、中心体20の遠位端と親ねじ22の支承部21に固着された別個の支承面部材81との間に位置する、引張られたまたは予め負荷を加えたばね82を含む。
【0057】
例えば、
図6は、ばね82の遠位端84の拡大図であり、この遠位端84が親ねじ22の支承部21と協働する様子を示す。図示したように、支承部21は、凹部83を画成する別個の支承面部材81をさらに含む。この凹部83内に、ばね82の遠位端84が位置する。この構成では、支承面部材81は、ばね82の回転力を吸収するように構成される。支承面部材81は、親ねじ22の支承部21の近位面85にしっかりと取り付けられる。
図4に戻り、引張りばね82の近位端86は中心体20にしっかりと取り付けられる。
【0058】
上記で説明したように、この第1のばね支援実施形態により用量を設定するために、用量ノブ28を時計方向に回す。用量ノブ28とダイヤルリンク25とが回転方向に固定されるため、ダイヤルリンク25が回転して、遠位向きフィンガ43が駆動ナット23の近位向きフィンガ36に係合することにより、駆動ナット23を同一の方向に回す。駆動ナット23の回転により、固定された親ねじ22に対してナット23が回転し、これにより、ナット23が近位方向に親ねじ22の上方へ動く、またはリードを上る。駆動ナット23は、中心体20とのスプライン連結により本体4に対して回転方向に固定して保持された内側スリーブ29に対して回転する。駆動ナット23と内側スリーブ29とが軸方向に固定されるため、駆動ナット23の近位への軸方向運動により、内側スリーブ29が中心体20に対して近位に摺動する。
図4に示すばね支援送達デバイスの1つの利点は、用量の設定が、予め負荷を加えたばね82の導入による影響を受けないことである。このように、ユーザには追加の設定力が必要ない。
【0059】
用量を注射するために、
図1〜
図3に関して前述したデバイスと同様に、ハウジング4を把持する手の親指または人差し指などで、軸方向遠位への押込み力をノブ面53に加えてダイヤルリンク25を本体4に向けて軸方向に遠位方向へ押しやる。最初に、注射中に、ダイヤルリンク25が軸方向に移動し、この移動運動により付勢ばね27を圧縮して、ノブ面と数字スリーブ24の近位端との間の間隙を閉じる。付勢ばね27は、数字スリーブ24が本体4に対して動く前に圧縮されるように設計される。ダイヤルリンク25が数字スリーブ24に対して駆動ナット23の軸方向配置へ移動すると、クラッチ歯54とダイヤルリンク歯42とが係合解除されて、ダイヤルリンク25に対する数字スリーブ24の戻り駆動回転が可能になる。ダイヤルリンク25の軸方向運動中、駆動ナット23は軸方向にまたは回転方向に動かない。数字スリーブ24とクラッチ26とが回転可能にダイヤルリンク25から連結解除されると、ユーザが用量ノブ28を押し込むことにより回転なしでダイヤルリンク25が引き続き軸方向に押し込まれるため、数字スリーブ24は用量ノブ28に対してスピンするときに本体4に螺着し、内側スリーブ29が、引張られたばね82の支援力により、遠位方向に動く。駆動ナット23の遠位端との当接または直接係合により内側スリーブ29が前進すると、駆動ナット23は回転することなく前進し、これにより、駆動ナット23が親ねじ22とねじ付連結するため、引張られたばね82の支援によって親ねじ22が軸方向に前進する。親ねじ22のばね支援による前進により、カートリッジピストン10が移動して、医薬品をカートリッジリザーバから排出する。数字スリーブのねじ付部52が本体4の遠位端に到達すると注射が終了し、このときに、ペン1は準備完了状態またはゼロ用量位置に再び配置される。
図5は、投薬位置における
図4の実施形態の斜視図である。
【0060】
図7は、ダイヤル位置への準備ができた、ばね支援ペンデバイス90の代替配置の斜視図である。図示したように、このばね支援ペンデバイス90は、引張られたまたは予め負荷を加えた波形ばね92を含む。波形ばねは、平坦なワイヤ圧縮ばね、例えば波形金属座金であってよい。一実施形態は、クレスト・ツー・クレスト(crest−to−crest)波形ばねであってよい。このばねは、直列に予め積み重ねられる(pre−stacked)。波形ばねの一実施形態は、入れ子波形ばねである。入れ子ばねは、平坦なワイヤの1本の連続したフィラメントから平行に予め積み重ねられる。
【0061】
この波形ばね92は、中心体20と親ねじ22の支承部21の近位面との間に位置する。すなわち、圧縮されたまたは負荷を加えた波形ばね92の遠位端94は、親ねじ22の支承部21の近位面に沿って存在し、波形ばね92の近位端96は中心体20にしっかりと取り付けられる。ユーザは、
図4〜
図6に示すばね支援ペンデバイス80を用いて用量を設定する方法と同様の方法で、ばね支援ペンデバイス90を用いて用量を設定する。同様に、このばね支援ペンデバイス90の1つの利点は、用量の設定が、波形ばね92の導入による影響を受けないことであり、これは、用量設定手順中に追加の設定力が導入されないことを意味する。
【0062】
用量が設定されると、ユーザが用量ノブ28を押してペン90内に含まれる薬剤の選択された用量を注射したときに、波形ばね92が解放され、この注射工程中に、波形ばね92に蓄えられた力が親ねじ22の遠位への前進または駆動を支援する。このようにして、この配置では、ばねのないデバイスを用いるよりも、ユーザが注射を行うのに必要な力が小さい。
図8は、波形ばね92が伸長位置にある、投薬位置における
図7の実施形態の斜視図である。
【0063】
図9は、波形ばね92の遠位端94の拡大図である。図示したように、波形ばね92の遠位端94は、支承部21の近位面95上に直接存在する。
図6に示す圧縮ばね80および支承部21の構成と対照的に、波形ばね支援ペン薬物送達デバイス90は、支承部21に固着された別個の支承面部材を必要としない。波形ばね92を用いると、いかなるタイプの回転力も吸収する必要がないからである。
【0064】
本明細書で使用する用語「薬剤」または「医薬製品」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0065】
インスリン類似体は、例えば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0066】
インスリン誘導体は、例えば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0067】
エキセンジン−4は、例えば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0068】
エキセンジン−4誘導体は、例えば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0069】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0070】
ホルモンは、例えば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0071】
多糖類としては、例えば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、例えば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0072】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0073】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(例えば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0074】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0075】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0076】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0077】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0078】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0079】
薬学的に許容される塩は、例えば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、例えば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、例えば、アルカリまたはアルカリ土類、例えば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0080】
薬学的に許容される溶媒和物は、例えば、水和物である。
【0081】
本発明を様々な設計を有するものとして図示し説明したが、本発明を本開示の精神および範囲内で修正してもよい。例えば、一定用量を送達するために、ペン1、80、90を修正して、ダイヤルのねじを緩めて注射用にペン1、80、90を準備する最大限がその一定用量に対応するようにすることが好ましい。そのような一定用量のペンは、数字の用量標示マーキングを省くことができ、代わりに、例えば、指示およびグラフィカルな用量インジケータの形の合図をユーザに与えることができる。したがって、本開示は、その一般的な原理を用いる変形形態、使用、または適用を包含するものである。さらに、本開示は、本発明が属する技術の公知のまたは慣例の実施に含まれる本開示からの逸脱を包含するものである。