特許第6618986号(P6618986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6618986-電子変速機制御装置およびその製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6618986
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】電子変速機制御装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20191202BHJP
   H01L 25/04 20140101ALI20191202BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20191202BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   H05K3/28 B
   H01L25/04 Z
   H01L23/12 F
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-502791(P2017-502791)
(86)(22)【出願日】2015年6月19日
(65)【公表番号】特表2017-528906(P2017-528906A)
(43)【公表日】2017年9月28日
(86)【国際出願番号】EP2015063786
(87)【国際公開番号】WO2016008672
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2018年4月26日
(31)【優先権主張番号】102014214057.9
(32)【優先日】2014年7月18日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】トーマス プロイシュル
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ロイブル
【審査官】 小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−531632(JP,A)
【文献】 特開2011−155083(JP,A)
【文献】 特開2012−080030(JP,A)
【文献】 特開昭52−049466(JP,A)
【文献】 特開2010−219093(JP,A)
【文献】 特開平10−213366(JP,A)
【文献】 特表2006−515115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
H01L 23/12
H01L 25/04
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(11)、回路基板配置部(12)、および該回路基板配置部(12)上に実装された電気的または電子的なアセンブリ(13、14)を備える電子変速機制御装置(10)であって、前記回路基板配置部(12)は、部分的に前記ハウジング(11)の内側のオイルに対して密閉された領域で、および部分的に前記ハウジング(11)の外側のオイルに対して密閉されていない領域で、延在し、および前記回路基板配置部(12)は、複数の導電性の伝導経路層(17a、17b、17c、17d)を備え、該伝導経路層(17a、17b、17c、17d)は誘電層(18a、18b、18c)により、互いに電気的に絶縁されている電子変速機制御装置(10)において、少なくとも、前記回路基板配置部(12)において前記ハウジング(11)の外側のオイルに対して密閉されていない領域に延在するセクション(16)で、外側の導電性の伝導経路層(17a、17d)に対して、耐油性の電気的絶縁材料製の最終遮断最外層(20、21)が、前記電気的または電子的なアセンブリ(13、14)を前記回路基板配置部(12)と電気的に接触させるインターフェイス(19)を除いて、施されており、
前記最終遮断最外層(20、21)は各々、プラスチック製の射出成型層として構成されていることを特徴とする電子変速機制御装置(10)。
【請求項2】
請求項1の記載の電子変速機制御装置であって、前記回路基板配置部(12)は4つの伝導経路層(17a、17b、17c、17d)を備え、該伝導経路層(17a、17b、17c、17d)は、3つの誘電層(18a、18b、18c)により、互いに電気的に絶縁され、および少なくとも、前記回路基板配置部(12)において前記ハウジング(11)の外側に延在するセクション(16)で、前記外側の導電性の伝導経路層(17a、17d)に対して、耐油性の電気的絶縁材料製の最終遮断最外層(20、21)が、前記インターフェイス(19)を除いて、施されていることを特徴とする電子変速機制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子変速機制御装置であって、前記最終遮断最外層(20、21)は各々、ポリイミド箔製の積層層として構成されていることを特徴とする電子変速機制御装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電子変速機制御装置であって、前記最終遮断最外層(20、21)は各々、プリプレグ製の積層層として構成されていることを特徴とする電子変速機制御装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電子変速機制御装置であって、ハウジング(11)が、複数層のアルミニウムダイキャストハウジングとして構成されており、該アルミニウムダイキャストハウジングのシェルが圧縮されていることを特徴とする電子変速機制御装置。
【請求項6】
請求項に記載の電子変速機制御装置であって、ハウジング(11)が、プラスチック射出成型ハウジングとして構成されていることを特徴とする電子変速機制御装置。
【請求項7】
請求項1〜の何れか一項に記載の電子変速機制御装置の製造方法であって:
a)両側に、導電性の伝導経路層(17b、17c)を積層した、誘電性の電気的絶縁材料製のコア層(18a)を準備するステップと;
b)前記コア層(18a)上に施した、導電性の前記伝導経路層(17b、17c)をエッチングするステップと;
c)エッチングした前記伝導経路層(17b、17c)に対して、誘電性の電気的絶縁材料製の更なる層(18b、18c)を各々、少なくとも1度施し、誘電性の電気的絶縁材料製の該更なる層(18b、18c)の各々に対して、導電性の更なる伝導経路層(17a、17d)を施し、および導電性の該更なる伝導経路層(17a、17d)をエッチングするステップと;
d)外側の、エッチングした、導電性の前記更なる伝導経路層(17a、17d)の各々に対して、耐油性の電気的絶縁材料製の、最終遮断最外層(20、21)を、少なくとも、回路基板配置部(12)においてハウジング(11)の外側に延在するセクション(16)において施すステップと、
を含む方法。
【請求項8】
請求項に記載の方法であって、前記ステップc)において、前記コア層(18a)の、エッチングした前記伝導経路層(17b、17c)に対して、誘電性の材料製の唯一の更なる層(18b、18c)の各々のみを施し、および誘電性の電気的絶縁材料製の前記更なる層の各々に対して、唯一の導電性の更なる伝導経路層(17a、17d)を施すことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項またはに記載の方法であって、ハウジング(11)をアルミニウムダイキャストハウジングとして構成し、最終遮断最外層(20、21)を、ポリイミド箔製またはプリプレグ製の積層層として構成することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項またはに記載の方法であって、ハウジング(11)をプラスチック射出成型ハウジングとして構成し、最終遮断最外層(20、21)を、前記プラスチック射出成型ハウジングを備えるプラスチック製の射出成型層として構成することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の電子変速機制御装置に関する。本発明は更に、電子変速機制御装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実地から既知の電子変速機制御装置は、ハウジング、回路基板配置部、および回路基板配置部上に実装された、電気的または電子的なアセンブリを備える。電子変速機制御装置の回路基板配置部は、部分的にハウジングの内側のオイルに対して密封された領域、および部分的にハウジングの外側のオイルに対して密封されていない領域、に位置している。回路基板配置部は、複数の導電性の伝導経路層を備える。伝導経路層は、誘電層により電気的に絶縁されている。実地から既知の電子変速機制御装置の回路基板配置部において、外側の導電性の伝導経路層に対して、更なる誘電層が積層される。更なる誘電層に対して、導電性のコンタクト層が施される。その後導電性のコンタクト層は、エッチングにより広範囲で除去され、および、電気的または電子的なアセンブリを回路基板配置部の伝導経路層と接触させる電気的インターフェイスの領域のみに残される。電気的インターフェイスの領域において、外側の誘電層に対して施されたコンタクト層で、エッチングにより除去されなかった領域は、ニッケルおよび金を含む被覆を備え、コンタクト層をオイルに起因する腐食から保護する。このために、実施から既知の電子変速機制御装置の回路基板配置部の構造は、比較的複雑となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した背景技術に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、新しい種類の電子変速機制御装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1に記載の電子変速機制御装置により解決される。
【0005】
本発明に従い、少なくとも、回路基板配置部においてハウジングの外側のオイルに対して密封されていない領域に延在するセクションで、外側の導電性の伝導経路層に対して、耐油性の電気的絶縁材料製の最終遮断最外層が、電気的または電子的なアセンブリを回路基板配置部と接触させる電気的インターフェイスを除いて、施されている。
【0006】
本発明による電子変速機制御装置の回路基板配置部は、単純かつコンパクトな構造を備える。つまり、電気的絶縁材料製の最終遮断層が、外側の導電性の伝導経路層に対して施される。しかしながら、この最終層に対しては、導電性のコンタクト層は施されない。このため、導電性の層の数が従来技術と比較して2つ低減される。これにより、省略された導電性のコンタクト層に対しても、従来技術に従って必要とされていた積層工程およびエッチング工程が不要となる。このため、より単純かつ費用対効果に優れて、電子変速機制御装置を製造可能である。
【0007】
好適には、回路基板配置部は4つの導電性の伝導経路層を備える。伝導経路層は3つの誘電層により、互いに電気的に絶縁されている。少なくとも、回路基板配置部においてハウジングの外側に延在するセクションにおいて、インターフェイスを除いて、耐油性の電気的絶縁材料製の最終遮断最外層が施される。そうした電子変速機制御装置は、特に単純かつコンパクトな構造を有する回路基板配置部を備える。
【0008】
本発明の有利な第1発展実施形態に従い、耐油性の電気的絶縁材料製の最終遮断最外層は各々、ポリイミド箔製またはプリプレグ製の積層層として構成されている。本発明のこの発展実施形態は、電子変速機制御装置のハウジングが、複数層のアルミニウムダイキャストハウジングとして製造されている場合に、特に適している。
【0009】
本発明の、代替的で有利な第2発展実施形態に従い、耐油性の電気的絶縁材料製の最終遮断最外層は各々、プラスチック製の射出成型層として構成されている。本発明のこの発展実施形態は、電子変速機制御装置のハウジングが、プラスチック射出成型ハウジングとして構成されている場合に、特に適している。
【0010】
本発明による電子変速機制御装置の製造方法は、請求項8に定義される。
【0011】
好適な発展形態は、従属請求項及び以下の記述から明らかとなる。本発明の実施形態は、上述に限定されることなく、以下に図面を参照し本発明の実施形態を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による電子変速機制御装置の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、例えば自動車の自動変速機に使用されるような、電子変速機制御装置に関する。
【0014】
図1は、本発明による電子変速機制御装置10を、極めて概略化した図である。電子変速機制御装置10は、ハウジング11、回路基板配置部12、ならびに回路基板配置部12上に実装され、回路基板配置部12と電気的に接触する、電気的または電子的なアセンブリ13,14を備える。回路基板配置部12はセクション15を備える。セクション15は、ハウジング11の内側の変速機オイルに対して密封された領域に位置している。回路基板配置部12の更なるセクション16は、ハウジング11の外側の変速機オイルに対して密封されていない領域に配置されている。
【0015】
回路基板配置部12は、複数の導電性の伝導経路層17a、17b、17cおよび17dを備える。これらの導電性の伝導経路層17a、17b、17cおよび17dは、誘電層18a、18bおよび18cにより、互いに電気的に絶縁されている。図示の実施形態においては、4つの伝導経路層17a、17b、17cおよび17d、ならびに3つのこの種の誘電層18a、18bおよび18cが存在する。
【0016】
少なくとも、回路基板配置部12においてハウジング11の外側の変速機オイルに対して密封されていない領域に延在するセクション16で、外側の導電性の伝導経路層17aおよび17dに対して、耐油性の電気的絶縁誘電材料製の最終遮断最外層20、21が、電気的または電子的なアセンブリ14を伝導経路層17aおよび17dと接触させる電気的インターフェイス19を除いて、施されている。
【0017】
従って、これら遮断する最終層20、21に対しては、更なる導電性の層、つまり引き続いてエッチングにより広範囲で除去されるコンタクト層は施されない。むしろ外側の伝導経路層17a、17dに対して施された、耐油性の電気的絶縁材料料製の層20、21は、回路基板配置部12においてハウジング11から突出するセクション16において、回路基板配置部12の遮断層、または最終層である。
【0018】
本発明の第1変更実施形態に従い、耐油性の電気的絶縁材料製の、遮断する最終層20または21は各々、ポリイミド箔製の積層層として構成されている。ポリイミド箔製の遮断する最終層20または21が構成される場合、最終層20、21は、外側の伝導経路層17a、17dに対して、部分的表面のみに、つまりこれらの伝導経路層17a、17dの導体が実際に走る場所のみに設けられる。
【0019】
第2変更実施形態に従い、遮断する最終層20、21は各々、プリプレグ製の積層層として構成されている。プリプレグ製のこの種の積層層は、ポリイミド箔製の積層層よりも費用対効果に優れているため、プリプレグ製の積層層は、電気的インターフェイス19を除いて、覆われるべき外側の伝導経路層17a、17dの領域で全面に施される。
【0020】
電子変速機制御装置10のハウジング11が、複数層のアルミニウムダイキャストハウジングから構成され、そのシェルが圧縮されている場合、ポリイミド箔製またはプリプレグ製の遮断する最終層20、21が使用される。
【0021】
電子変速機制御装置10のハウジング11が、プラスチックから製造されており、およびプラスチック射出成型ハウジングとして構成されている場合には、遮断する最終層20、21も同様にプラスチックから製造されることが好適である。プラスチック製の最終層20、21は、外側の伝導経路層17a、17dに対して、通常部分的表面のみに、つまりこれらの伝導経路層17a、17dの導体が実際に走る場所のみに設けられる。
【0022】
本発明による電子変速機制御装置10の製造方法は、以下のステップを含む。まず両側に、内側の導電性の伝導経路層17bおよび17cを積層した、誘電性の絶縁材料製のコア層18aを準備するステップ。この内側の伝導経路層17b、17cを、伝導経路層17b、17c上に所望の伝導経路構造を構成するために、エッチングするステップ。
【0023】
コア層18aの、エッチングした伝導経路層17b、17cに対して、誘電性の電気的絶縁材料製の更なる層18bまたは18cを各々施し、これら誘電性の電気的に絶縁する更なる層18b、18cに対して、導電性の更なる伝導経路層17aまたは17dを施し、これら外側の伝導経路層17aおよび17dの領域において所望の伝導経路構造を構成するために、これら更なる伝導経路層17aまたは17dを、続いてエッチングするステップ。
【0024】
このステップは複数回繰り返し可能ではあるが、好適には一回に限り実行する。つまり、コア層18aに受容された伝導経路層17b、17cに対して、コア層18aの両側に、エッチング処理した伝導経路層17a、17dを備える、更なる誘電層18bおよび18cのみを施すのである。
【0025】
外側の伝導経路層17a、17dをエッチングするのに続いて、伝導経路層17a、17dに対して、耐油性の電気的絶縁材料製の、遮断する最終層20または21を各々、つまり回路基板配置部12においてハウジング11の外側のオイルに対して密封されていない領域で延在するセクション16において施すステップ。
【0026】
上述のように、これら最終層20、21はポリイミド箔製またはプリプレグ製の積層層として、または代替的には、プラスチック射出成型層として構成可能である。
【0027】
図1は、ハンダレジスト製の層22を、ハウジング11の内側のオイルに対して密封されている領域において、回路基板配置部12の対応するセクション15に施すことが可能なことを示す。この種のハンダレジストは、変速機オイルに対して耐性がないため、変速機オイルの攻撃にさらされる、回路基板配置部12のセクション16における使用には適さない。
【0028】
回路基板配置部12のセクション16において、最終遮断最外層20、21が施されていないインターフェイス19は各々、好適にはニッケルおよび金を含む被覆を備え、インターフェイス19を油に起因する腐食から保護する。
【0029】
本発明による電子変速機制御装置10の回路基板配置部12は、単純かつコンパクトな構造を備え、および既知の変速機制御装置の回路基板配置部よりも僅かな労力で製造される。2つの導電性の層が省略されるため、積層し、およびエッチングにより部分的に除去しなければならない導電性の層の数が2だけ低減される。従って、本発明による電子変速機制御装置10の回路基板配置部12は、その厚みおよび複雑性を低減することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 変速機制御装置
11 ハウジング
12 回路基板配置部
13 アセンブリ
14 アセンブリ
15 セクション
16 セクション
17a 伝導経路層
17b 伝導経路層
17c 伝導経路層
17d 伝導経路層
18a 誘電層
18b 誘電層
18c 誘電層
19 インターフェイス
20 層
21 層
22 層
図1