(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
押出機で押し出し、ノズルから連続噴出させて長繊維の繊維ウェブを形成し、スパンボンド不織布層を2層以上重ね合わせて熱融着で全層融合するとき、前記スパンボンド不織布層の移送方向に対して直交するX軸成分、前記X軸成分に対して直交するY軸成分は、
前記Y軸成分方向に長い熱融着部分の前記X軸成分方向の幅Xa、融合しない部分の前記X軸成分方向の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲とし、
また、前記Y軸成分方向に長い前記熱融着部分の前記Y軸成分方向の長さYaと、熱融着しない部分の前記Y軸成分方向の長さYbとは、前記Y軸成分方向の一直線上の配置であり、
前記熱融着部分の長さYaの前記Y軸成分方向の1/2位置の両側は前記熱融着しない部分の長さYbとなり、かつ、前記熱融着しない部分の長さYbの前記Y軸成分方向の1/2位置の両側は前記熱融着部分の長さYaに設定し、
前記熱融着部分の長さYaの前記Y軸成分方向の1/2位置は、前記X軸成分方向に平行な熱融着部分によって接続され、
前記熱融着部分は互いに干渉し会う前記X軸成分方向、前記Y軸成分方向に線対称の形状であるエンボス加工とを具備することを特徴とする複合構造体。
押出機で押し出し、ノズルから連続噴出させて長繊維の繊維ウェブを形成し、スパンボンド不織布層を2層以上重ね合わせて熱融着で全層融合するとき、前記スパンボンド不織布層の移送方向に対して直交するX軸成分、前記X軸成分に対して直交するY軸成分は、
前記Y軸成分方向に長い熱融着部分の前記X軸成分方向の幅Xa、融合しない部分の前記X軸成分方向の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲とし、
また、前記Y軸成分方向に長い前記熱融着部分の前記Y軸成分方向の長さYaと、熱融着しない部分の前記Y軸成分方向の長さYbとは、前記Y軸成分方向の一直線上の配置であり、
前記熱融着部分の長さYaの前記Y軸成分方向の1/2位置の両側は前記熱融着しない部分の長さYbとなり、かつ、前記熱融着しない部分の長さYbの前記Y軸成分方向の1/2位置の両側は前記熱融着部分の長さYaに設定し、
前記熱融着部分の長さYaの前記Y軸成分方向の1/2位置は、前記X軸成分方向に平行な熱融着部分によって接続され、
前記熱融着部分を互いに干渉し会う前記X軸成分方向、前記Y軸成分方向に線対称の形状としたエンボス加工とを具備することを特徴とする複合構造体の製造装置。
【背景技術】
【0002】
複合構造体の具体的使途は、衣料部材、医療用部材、土木・建築用部材、自動車内装用・部品用部材、衛生用部材、インテリア用部材、寝装用部材、農業用部材、皮革用部材、産業資材用部材、生活資材用部材等である。
特に、柔らかいがしっかり接合されており、縦方向、横方向に伸縮しない、また、強度も強い複合構造体が望まれていた。
【0003】
特許文献1では、尿を含む水分を透過させる透過性シート、クレープ状の吸液透過性シート、吸収性コアの下面に設けられ尿を含む水分を吸収する吸収性コア、吸収性コアの下面に設けられたクレープ状の吸液透過性シート、尿を含む水分を透過させない不透過性シートと順次積層され、吸収性コア及びその両側にある吸液透過性シート及び吸液透過性シートを透過性シートと不透過性シートとの間で包み込んで収容する複合構造体を開示している。
【0004】
特許文献1のように、ペット用シートの交換のタイミングが長くなり、ペット用シートに限らず、介護シーツ、紙おむつ、防水シーツ等は、尿や排泄物で重くなり、作業中に破けたり、機械的強度不足を生じさせ、簡単に処理することができなくなる。また、枕カバー、防護服生地等になると汗や体臭が染み込み不潔感が感じられるようになり、できるだけ不潔感のない箇所によって作業を進行させようとするから、部分的に破壊され、機械的強度不足になる可能性がある。逆に、機械的強度を増加させるとなると、嵩が低くなり、密度が高くなり、機械的強度が高くなるが、不織布自体の汗や体臭の染み込みが低下する。
【0005】
また、特許文献2は、互いに接着された少なくとも2つの不織布ポリマー層を含み、1つの不織布ポリマー層が不織布層の約40質量%以下の量で無機粒子状充填剤を含む複合構造体が構成されたものである。
ポリマー不織布、例えば、ポリプロピレン(PP)不織布は、多くの用途において使用され、衛生及び医療市場においては、大きな割合でスパンメルト不織布が使用されており、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布とが複合不織布構造体とされている。通常、内層にメルトブロー不織布を、また、外層にスパンボンド不織布が使用される。内層のメルトブローはバリア層となるが、良好なバリアとなる微細繊維(直径約2μm以下)は、また、非常に弱い繊維及び布帛をもたらす。スパンボンド層(約15μmの繊維直径)を組み込んで、複合布帛に、意図される用途における機能と共に、加工ラインにおいて加工するための十分な強度を与えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
なお、以下、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布とを重ね合わせて構成した複合構造体について簡単に説明する。
一般的な特許文献2の複合構造体において、スパンボンド不織布は、多くの場合、盛り上がり形状によって熱接着されるが、熱と圧力との組合せによってポリプロピレンは部分的に溶融し、変形して、溶融接着を行う。温度、圧力、速度及びエンボス形状の組合せである不織布の接着が弱すぎる場合には、個々の繊維は接着点から引き離されるか、または接着部位が崩壊し、破断時の伸長が比較的大きくなる。
不織布の接着が強すぎる場合、接着点における過剰な溶融が繊維の弱点を生じさせ、繊維が接着点で破断し、破断時の伸長は非常に小さくなる。最適な接着条件に合致する場合、繊維破断の大部分が接着点間で生じる。これにより最も高い引張強度を有する布帛が得られ、伸長は2つの極値の中間になる。
【0008】
メルトブロー不織布は、高温において超極細繊維化し、スパンボンド不織布と同じ強度及び結晶化度を有していないため、メルトブロー不織布がスパンボンド不織布よりも低い温度で溶融または変形する。したがって、バリア性能が維持されるようにスパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布を重ね合わせて接着するために使用される接着条件により、スパンボンド不織布の接着が弱くなりすぎる傾向がある。
殊に、衣料部材、医療用部材、自動車内装用・部品用部材、土木・建築用部材等々の用途が決まらないと、機械的強度の強い良好な嵩高の機能性不織布が得られなかった。
【0009】
そこで、本発明は、かかる従来の問題点を解消すべく、乾燥時または湿潤時においても加工性がよく、繊維の脱落がなく、また、重ね合わせても腰が強くて縦伸びや横縮みをすることなく、使用時には柔らかく、これら嵩高加工及び機械的強度を任意に設定できる複合構造体及びその製造装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明にかかる複合構造体は、2層以上重ね合わせてなるスパンボンド不織布層(不織布層の「層」とは厚みが「0」でない厚みの不織布を意味する)を熱融着で全層同時融合するとき、前記スパンボンド不織布層の機械的な移送方向に対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分(製造機械の機械的移送方向)は、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、融合しない部分の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲とし、また、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbとは、Y軸成分方向の一直線上の配置であり、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYb、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定し、熱融着部分の幅Xaと熱融着部分の長さYaの面を熱融着したエンボス加工を具備する。
【0011】
ここで、2層以上重ね合わせて融着するスパンボンド不織布層とは、スパンボンド不織布層のみを直接「スパンボンド不織布層」+「スパンボンド不織布層」と2層以上重ね合わせてもよいし、「スパンボンド不織布層」と「スパンボンド不織布層」との間に「メルトブロー不織布層」を積層した「スパンボンド不織布層」+「メルトブロー不織布層」+「スパンボンド不織布層」の組み合わせでもよい。即ち、2層以上重ね合わせて融着する「スパンボンド不織布層」は、複数層を形成するものであればよく、例えば、「メルトブロー不織布層」が1以上の不織布を形成するものであってもよい。結果的に、2層以上重ね合わせて融着する「スパンボンド不織布層」を有しておれば、他の不織布層、合成樹脂層を有していてもよい。
なお、「メルトブロー不織布層」とは、溶融した熱可塑性プラスチック樹脂を押出機の後に設置し、その設置したダイ(紡口)から、ネットコンベアまたは捕集スクリーン上に高速高温の気流を吹き出すことにより吸引し、ファイバーのサイズがφ1μm〜15μmで、通常2〜4μm程度の自己接着性ウェブを作り出されたものである。
したがって、例えば、「スパンボンド不織布層」が2層以上の場合には、「スパンボンド不織布層」+「スパンボンド不織布層」+「スパンボンド不織布層」と、「メルトブロー不織布層」+「スパンボンド不織布層」+「スパンボンド不織布層」と、「スパンボンド不織布層」+「メルトブロー不織布層」+「スパンボンド不織布層」と、「スパンボンド不織布層」+「スパンボンド不織布層」+「メルトブロー不織布層」となる。
【0012】
スパンボンド不織布層の移送方向に対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分は、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、融合しない部分の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲としたものである。
また、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbとは、「熱融着部分の幅Xa」×「熱融着部分の長さYa」の面を熱融着面とし、隣接するY軸成分方向の一直線上の配置において、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYb、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定するエンボス加工したものである。
【0013】
請求項
1に記載の複合構造体は、前記熱融着部分の長さYaの前記Y軸成分方向の1/2位置の両側は、前記X軸成分方向に平行な熱融着部分の幅によって接続されている。
【0014】
請求項
2の発明にかかる複合構造体の製造装置は、2層以上重ね合わせてなるスパンボンド不織布層の製造工程で、重ね合わせて熱融着で全層融合するとき、前記スパンボンド不織布層の移送方向に対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分は、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、融合しない部分の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲とし、また、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbとは、Y軸成分方向の一直線上の配置であり、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYb、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定し、熱融着部分の幅Xaと熱融着部分の長さYaの面を熱融着したエンボス加工工程とを具備する。
【0015】
ここで、2層以上重ね合わせて融着する「スパンボンド不織布層」とは、「スパンボンド不織布層」のみを直接「スパンボンド不織布層」+「スパンボンド不織布層」と2層以上重ね合わせてもよいし、「スパンボンド不織布層」と「スパンボンド不織布層」との間に「メルトブロー不織布層」を積層した「スパンボンド不織布層」+「メルトブロー不織布層」+「スパンボンド不織布層」の組み合わせでもよい。即ち、2層以上重ね合わせて融着する「スパンボンド不織布層」は、複数層を形成するものであればよく、「メルトブロー不織布層」は1以上不織布を形成するものであってもよい。即ち、2層以上重ね合わせて融着する「スパンボンド不織布層」を有しておれば、他の不織布層、合成樹脂層を有していてもよい。
なお、「メルトブロー不織布層」とは、溶融した熱可塑性プラスチック樹脂を押出機の後に設置し、その設置したダイ(紡口)から、ネットコンベアまたは捕集スクリーン上に高速高温の気流で吹き出し、ファイバーのサイズがφ1μm〜15μmで、通常2〜4μm程度の自己接着性ウェブを作り出したものである。
【0016】
したがって、例えば、「スパンボンド不織布層」が2層以上の場合には、「スパンボンド不織布層」+「スパンボンド不織布層」+「スパンボンド不織布層」と、「メルトブロー不織布層」+「スパンボンド不織布層」+「スパンボンド不織布層」と、「スパンボンド不織布層」+「メルトブロー不織布層」+「スパンボンド不織布層」と、「スパンボンド不織布層」+「スパンボンド不織布層」+「メルトブロー不織布層」となる。
スパンボンド不織布層の移送方向に対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分は、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、融合しない部分の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲としたものである。
また、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbとは、「熱融着部分の幅Xa」×「熱融着部分の長さYa」の面を熱融着面とし、隣接するY軸成分方向の一直線上の配置において、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYb、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定してエンボス加工したものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明の複合構造体は、2層以上重ね合わせてなるスパンボンド不織布層を熱融着で全層融合するとき、前記スパンボンド不織布層の移送方向に対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分は、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、融合しない部分の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲とする。
また、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbとは、Y軸成分方向の一直線上の配置であり、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYb、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定し、熱融着部分の幅Xaと熱融着部分の長さYaの面を熱融着したエンボス加工を行うものである。
【0018】
特に、特殊エンボスを用いることで、柔らかいがしっかり接合されており、縦方向、方向に伸びない、また、強度も強い複合構造体を得ている。
したがって、2層以上重ね合わせてなるスパンボンド不織布層は、任意の嵩高の厚みを柔らかい対象物や人体側とすることができる。必要に応じてメルトブロー不織布層等を組み込むことができる。
前記スパンボンド不織布層を2層以上重ね合わせて熱融着で全層融合するとき、まず、前記スパンボンド不織布層の移送方向に対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分は、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、融合しない部分の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲とし、熱融着部分の幅Xaを融合しない部分の幅Xbよりも狭くしている。
【0019】
そして、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbは、Y軸成分方向の一直線上に熱融着部分の長さYa及び熱融着しない部分の長さYbが配置され、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYb、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定し、熱融着部分の幅Xaと熱融着部分の長さYaの面を熱融着したエンボス加工を行うものであるから、X軸成分方向及びY軸成分方向は勿論、斜めの外力に対しても、縦伸びや横縮みをしない腰が強いものとなる。特に、熱融着部分の幅Xaと熱融着部分の長さYaの面を熱融着したエンボス加工を行うものであるから、縦伸びや横縮みが内部歪となって対抗するから、全体的に縦伸びや横縮みに対する抵抗力が強く形状変化に至らない。
【0020】
更に、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbは、加工が可能であり、製品使用時(湿潤時)に柔らかくて繊維や製品の脱落がなく、縦伸びや横縮みをしない腰が強いもので嵩高加工及び機械的強度を任意に形成できる。
乾燥時または湿潤時においても加工性がよく、使用時に柔らかくて繊維の脱落がなく、重ね合わせても腰が強くて縦伸びや横縮みをすることなく、嵩高加工及び機械的強度を任意に設定できる複合構造体とするものである。
このように、乾燥時または湿潤時においても加工性がよく、使用時に柔らかくて繊維の脱落がなく、重ね合わせても腰が強くて縦伸びや横縮みをすることなく、嵩高加工及び機械的強度を任意に設定できる複合構造体が得られる。
【0021】
請求項
1の発明の複合構造体は、前記熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は、X軸成分方向に平行な熱融着部分の幅によって接続したものであるから
、X軸成分方向数に加わる外力が他の方向に加わる外力と略均一となる。したがって、本発明の複合構造体は周囲の何れに外力を加えても、全体的に縦横の伸びや横縦の縮みに対する抵抗力が強く形状変化に至らない。
【0022】
請求項
2の発明の複合構造体の製造装置は、2層以上重ね合わせてなるスパンボンド不織布層を熱融着で全層融合するとき、前記スパンボンド不織布層の移送方向に対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分は、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、融合しない部分の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲とする。
また、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbとは、Y軸成分方向の一直線上の配置であり、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYb、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定し、熱融着部分の幅Xaと熱融着部分の長さYaの面を熱融着したエンボス加工を行うものである。
【0023】
したがって、2層以上重ね合わせてなるスパンボンド不織布層は、任意の嵩高の厚みを柔らかい対象物や人体側とすることができる。また、必要に応じて、スパンボンド不織布層、レジンボンド不織布層、サーマルボンド不織布層等を組み込むことができる。
前記スパンボンド不織布層を2層以上重ね合わせて熱融着で全層融合するとき、まず、前記スパンボンド不織布層の移送方向に対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分は、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、融合しない部分の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲とし、熱融着部分の幅Xaを融合しない部分の幅Xbよりも狭くしている。
【0024】
そして、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbは、Y軸成分方向の一直線上に熱融着部分の長さYa及び熱融着しない部分の長さYbが配置され、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYb、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定し、熱融着部分の幅Xaと熱融着部分の長さYaの面を熱融着したエンボス加工を行うものであるから、X軸成分方向及びY軸成分方向は勿論、斜めの外力に対しても、縦伸びや横縮みをしない腰が強いものとなる。特に、熱融着部分の幅Xaと熱融着部分の長さYaの面を熱融着したエンボス加工工程を行うものであるから、縦伸びや横縮みが内部歪となって対抗するから、全体的に縦伸びや横縮みに対する抵抗力が強く形状変化に至らない。
【0025】
更に、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbは、加工が可能であり、製品使用時(湿潤時)に柔らかくて繊維や製品の脱落がなく、縦伸びや横縮みをしない腰が強いもので嵩高加工及び機械的強度を任意に形成できる。
このように、乾燥時または湿潤時においても加工性がよく、使用時に柔らかくて繊維の脱落がなく、重ね合わせても腰が強くて縦伸びや横縮みをすることなく、嵩高加工及び機械的強度を任意に設定できる複合構造体の製造装置が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、実施の形態において、図示の同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分であるから、ここではその重複する説明を省略する。
【0028】
[実施の形態1]
本実施の形態1の複合構造体は、主として、第1スパンボンド不織布製造機10、第2スパンボンド不織布製造機20、第3スパンボンド不織布製造機30、エンボス加工を行う凸部65を形成したエンボス凸部ローラ61、及び特定曲率面からなるエンボス平滑ローラ62から全体のエンボスローラ60を構成している。
【0029】
この第1スパンボンド不織布製造機10、第2スパンボンド不織布製造機20、第3スパンボンド不織布製造機30の各スパンボンド不織布製造機は、紡糸から、直接、不織布を製造する装置である。なお、エンボス凸部ローラ61とエンボス平滑ローラ62は、エンボス凸部ローラ61とエンボス平滑ローラ62を1/2の高さの凸部65とすることができる。但し、回転のタイミングを同一とする必要がある。また、エンボス凸部ローラ61とエンボス平滑ローラ62を逆の構成としてもよい。前記エンボス平滑ローラ62とは、所定の直径で形成された同一径のものであればよい。
【0030】
なお、第1スパンボンド不織布製造機10、第2スパンボンド不織布製造機20、第3スパンボンド不織布製造機30は、基材となる原材料にコポリマーのポリプロピレン(PP)を使用し、柔らかい長繊維スパンボンド不織布を形成するもので、その坪量は8〜12グラムの薄いものに仕上げるのが望ましい。また、各第1スパンボンド不織布製造機10、第2スパンボンド不織布製造機20、第3スパンボンド不織布製造機30は、各坪量を均一とし、各スパンボンド不織布層10A,20A,30Aの柔らかさを決定している。なお、不織布層の「層」とは厚みが「0」でない不織布を意味する。
【0031】
第1スパンボンド不織布製造機10、第2スパンボンド不織布製造機20、第3スパンボンド不織布製造機30で、スパンボンド不織布層10A,20A,30Aを積層し、後述するスパンレース処理部(ウォータージェット)により、スパンボンド不織布を水流交絡する。また、後述する水分を乾燥させた処理の後、スパンボンド不織布層10A,20A,30Aをエンボス加工により接着させる。これにより、繊維等の脱落を防ぎ、縦伸びを抑え、加工性能が良くなる。また、特殊なエンボスパターンで従来のスパンボンド不織布層10A,20A,30Aのメッシュパターンに類似した模様に仕上げることができる。
なお、エンボス加工を行う凸部65を形成したエンボス凸部ローラ61により接着した現物のエンボスパターンの接着部分は透明になっているが、これは穴が開いているわけではなく、基材のポリプロピレン(PP)繊維の部分が熱で熔融し、透明に見えているだけで一体になっているから、縦横伸びも抑えることができる。拭き取った汚れ等も表面から裏面に通過しないため、不織布を持つ手等に汚れが付着することがない。
【0032】
従来の不織布製造機は、ペレットの溶融樹脂から短繊維への加工、次いで短繊維糸から不織布への加工と、2段階の工程が一般的であったが、本実施の形態ではスパンボンド製造機では紡糸から不織布の形成まで一貫して加工し、生産が高速化している。また、長繊維を用いているから強度が高く、寸法安定性に優れ、各種用途に展開利用されている。即ち、スパンボンド不織布層10A,20A,30Aは、原料として乾式不織布のような綿状の繊維ではなく、直径3〜5ミリ程度の米粒状の合成樹脂ペレットで、これを溶融し、繊維化・ウェブ化して不織布を製造している。原料の選択や製造工程での工夫で、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の複合タイプや、ポリ乳酸(PLA)ベースの生分解タイプ等があり、用途によって選択される。
【0033】
本実施の形態1の複合構造体としての第1スパンボンド不織布製造機10は、原材料のペレットを供給するホッパー11と、ホッパー11に供給した原材料を熔融して熔融ペレットを押し出する押出機12と、押出機12から押し出された熔融樹脂をノズル13から連続長繊維として噴出し、冷却し、高速移動させるエジェクター14を解して連続長繊維としてウェブを捕集し、ネットコンベア15に吸引され、ネットコンベア15の上面に噴射される。
ネットコンベア15は、内部に空気を吸い込む吸引部16が配設され、外部に配設されたエアーポンプによって下方に吸引されている。したがって、ネットコンベア15の上面にスパンボンド不織布層10Aが積層される。
【0034】
同様に、第2スパンボンド不織布製造機20は、原材料のペレットを供給するホッパー21と、ホッパー21に供給した原材料のペレットを熔融して押し出す押出機22と、押出機22から押し出された熔融樹脂をノズル23から噴射し、エジェクター24を解して連続長繊維として捕集し、ネットコンベア25に噴射する。
ネットコンベア25は、内部に吸引部26が配設され、外部に配設されたエアーポンプによって下方に吸引されている。したがって、ネットコンベア25の上面にスパンボンド不織布層20Aが積層される。なお、送りローラ27はスパンボンド不織布層20Aのガイドを行うものである。また、搬送コンベア28はスパンボンド不織布層10A,20A,30Aを送るものである。
【0035】
同様に、第3スパンボンド不織布製造機30は、原材料のペレットを供給するホッパー31と、ホッパー31に供給した原材料のペレットを熔融して押し出す押出機32と、押出機32から押し出された熔融樹脂をノズル33から噴射し、エジェクター34を解して連続長繊維として捕集し、ネットコンベア35に噴射する。
ネットコンベア35は、内部に吸引部36が配設され、外部に配設されたエアーポンプによって下方に吸引されている。したがって、ネットコンベア35の上面にスパンボンド不織布層30Aが積層される。なお、送りローラ37はスパンボンド不織布層30Aのガイドを行うものである。
【0036】
ネットコンベア15は、内部に吸引部16が配設され、外部に配設された図示しないエアーポンプによってネットコンベア15の上面から下面方向に吸引されている。したがって、ネットコンベア15の上面に紡糸され、冷却、延伸、開戦、捕集されたスパンボンド不織布層10Aが形成される。
同様に、ネットコンベア25は、内部に吸引部26が配設され、外部に配設された図示しないエアーポンプによって吸引されている。したがって、ネットコンベア25の上面に紡糸され、冷却、延伸、開戦、捕集されたスパンボンド不織布層20Aが形成する。
ネットコンベア35は、内部に吸引部36が配設され、外部に配設された図示しないエアーポンプによって吸引されている。したがって、ネットコンベア35の上面には紡糸され、冷却、延伸、開戦、捕集されたスパンボンド不織布層30Aが形成される。
【0037】
ホッパー11,21,31、押出機12,22,32で押し出し、ノズル13,23,33から連続噴出させた長繊維の繊維ウェブを積層し、レーヨン、ポリエステル、パルプ繊維等の短繊維として水と混練させたパルプ原料を、スパンレース処理部40において、堆積されたスパンボンド不織布層10A,20A,30Aをウォータージェットのジェット噴流を噴射し、繊維同士を絡み合わせる。
【0038】
スパンボンド不織布層10A,20A,30Aを3層重ねたスパンボンド不織布層40Aは、エンボス形成用に形成した周面を部分的に凸部65を形成したエンボス凸部ローラ61及び特定曲率面からなるエンボス平滑ローラ62から全体加熱用のエンボスローラ60のエンボスパターンと、所定の直径の筒からなる均一周面を形成したエンボス凸部ローラ61の間によって、熱融着で全層融合すべく型押しする。このとき、スパンボンド不織布層10A,20A,30Aの移送方向Yに対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分は、各種ローラの回転軸によって定まる。
【0039】
熱ローラによって型押しする凸部65を形成したエンボス凸部ローラ61及び特定曲率面からなるエンボス平滑ローラ62から全体のエンボスローラ60は、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、Y軸成分方向の熱融着部分の幅Yaによって、部分的に加熱される
図3乃至
図5に示す凸部65のエンボスパターンが形成され、スパンボンド不織布ロール70として巻き取られる。
【0040】
また、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbとは、Y軸成分方向の一直線上にある。また、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbはY軸方向に伸びている。
しかも、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYbとなり、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定している。
熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は、熱融着しない部分の長さYbとなり、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着する部分の長さYaの1/2位置にある。本発明を実施する場合には、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYbとなり、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着する部分の長さYaの何れかにあればよい。
【0041】
熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2の位置、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2の位置、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2の位置は、正確に1/2を特定するものではなく、1/5乃至4/5の範囲であればよい。この1/2はそれらの中間値で望ましい値である。
即ち、融合しない部分の幅Xbは、Y軸成分方向のY軸成分方向に連続形成されている。また、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbは、X軸成分方向の熱融着しない部分の幅Xbとの面積Xb・Ybが型押しをしない面積である。面積Xa・Ybが型押しするエンボスローラ60の凸部65となっている。
ここで、Xb/Xaの比率は、嵩高加工、機械的強度の指標として使用できる。また、特に、Xb/Xaの比率の融合しない部分の幅Xbは、摺動する際の摺動抵抗の指標にもなる。
【0042】
したがって、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xaと熱融着しない部分の幅XbをX軸成分方向に張力を加えると、熱融着しない部分の幅Xb及び熱融着しない部分の長さYbに外力が加わり、最も引っ張り力が弱くなるが、他の斜め角度またはY軸成分方向に加えられた外力は、エンボス加工する部分の幅Xaとの面積Xa・Ybで分散されて外力に耐える構造となっている。
よって、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、Y軸成分方向の熱融着部分の幅Yaによって、部分的に加熱され熱融着され、エンボス加工される。
【0043】
ところで、
図3及び
図4については、エンボスローラ60の周囲に、幅Xaで、長さYaの熱融着部分を繰返し形成しているが、X軸成分方向に外力を加えると、直接、外力が熱融着しない部分の幅Xbに加えられることになる。
したがって、乾燥時であっても、湿潤時であっても、Y軸成分方向の熱融着しない部分の幅Ybの両先端が隣接の熱融着部分の長さYaよりも短い両端内にあり、熱融着部分の長さYaの両端に外力が加わらないので、製品使用時にも柔らかくて、重ね合わせても縦伸びや横縮みをしない腰が強い嵩高加工ができる。また、Y軸成分方向の熱融着しない部分の幅Ybの両先端が隣接の熱融着部分の長さYaの両端内にあるから、柔らかくても繊維の脱落がなく、かつ、重ね合わせても縦(Y軸成分方向)伸びが生じない。また、横(X軸成分方向)縮みをしない腰が強い嵩高加工となる。
【0044】
また、熱溶着するエンボス加工される融着部を、
図5に示す「H」字形等のように、互いに干渉し会うX軸成分方向、Y軸成分方向に線対称の形状であれば、熱融着部分を乾燥時または湿潤時に無関係に、熱融着の加工性がよく、スパンボンド不織布層10A,20A,30Aと3層で形成でき、製品使用時にも柔らかくて繊維や製品の脱落がなく、縦伸びや横縮みをしない。また、腰が強く、嵩高加工及び機械的強度を任意に形成できる複合構造体とすることができる。
【0045】
エンボス加工により熱融着される凸部65の幅Xcは、
図5に示す単位図形が「H」字形等のように、X軸成分方向とY軸成分方向に各々伸縮、膨張できない構成とすると、スパンボンド不織布層10A,20A,30Aが平面的方向に変化する量が少なく、その平面に対して垂直方向の厚み方向の嵩は高くすることができる。
図5に示す単位図形の「H」は全平面的方向に変化する量が少なくなる。しかし、
図3及び
図4に示す単位図形「I」は、平面的方向に変化する量が少なくなるが、X軸成分方向のみは横伸びが発生する可能性が高くなる。
そこで、熱融着長さYa、熱融着しない部分の幅Yb、熱融着長さXa、熱融着しない部分の幅Xbの寸法を変更することにより、融着部の幅XcのX軸成分方向に外力を加えた時の伸びを任意に設定できる。
即ち、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は、X軸成分方向に平行な熱融着部分の幅Xcによって融着部の幅が接続されている。
【0046】
その後、スパンボンド不織布層10A,20A,30Aを積層して一体化した後に、乾燥させ、その後、エンボス形成用に形成した周面を形成したエンボス凸部ローラ61と均一周面を形成したエンボス平滑ローラ62の間の圧力を加え、熱融着で全層融合すべく型押しするとき、スパンボンド不織布層10A,20A,30Aの移送方向Yに対して直交するX軸成分、熱融着の長さYa、X軸成分に対して直交するY軸成分は、各種ローラの回転によって定まる。
なお、エンボス形成用のエンボスローラ60は、
図3乃至
図5に示すものと同様である。
[実施の形態2]
【0047】
図2に示す本実施の形態2の複合構造体は、
図1に示す実施の形態1の第1スパンボンド不織布製造機20を、メルトブロー不織布製造機100に置換したものである。
メルトブロー不織布製造機100は、溶融ポリマーを高温圧縮空気でノズルから押し出し、高速の熱風によって押し出し、極細繊維化し、自己接着性のウェブを形成し、ネットコンベアにそれを吹き付けるように、ネットコンベアの下から吸引排気して、シート状の不織布を得るものである。特に、メルトブロー不織布製造機100は、ファイバーサイズがφ1μm〜15μmのマイクロフィルタとして形成している。
【0048】
本実施の形態2の複合構造体としてのメルトブロー不織布製造機100は、原材料のペレットを供給するホッパー101と、ホッパー101に供給した原材料を熔融して熔融ペレットを押し出する押出機102と、押出機102から押し出された熔融樹脂をノズル103から連続長繊維としてコンプレッサの高温高圧の熱風を噴出しながら、連続長繊維としてウェブを捕集し、ネットコンベア105に吸引され、ネットコンベア105の上面に噴射される。
ネットコンベア105は、内部に空気を吸い込む吸引部106が配設され、外部に配設されたコンプレッサ107によって下方に吸引されている。したがって、ネットコンベア105の上面にメルトブロー不織布製造機100が形成される。
【0049】
メルトブロー不織布製造機100よって製造される不織布は、ポリマーの色や、親水性や撥水性を出した不織布を作ることができる。極細繊維で構成できるからきめ細かい構成となり、特に、平均繊維径をコントロールすることにより、各種特性を調整できる。また、スパンボンド不織布層10A,30Aとの位置及びそれらの厚みから各種シートを積層し、それぞれの性能を発揮する複合シートを作ることができる。各種フィルタや産業用マスク、ワイピングクロス等の商品に使用されている。
【0050】
本実施の形態2の複合構造体としてのメルトブロー不織布製造機100は、スパンボンド不織布層10A,30Aと共に重ね合わせることで、3層としてエンボス形成用に形成した周面の凸部65からなるエンボス凸部ローラ61及び特定曲率面からなるエンボス平滑ローラ62の間によって、熱融着で全層融合すべく型押する。このとき、スパンボンド不織布層10A,30Aの移送方向Yに対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分は、各種ローラの回転によって定まる。
型押しするエンボス凸部ローラ61と周囲が所定の直径のエンボス平滑ローラ62は、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、Y軸成分方向の熱融着部分の幅Yaによって、部分的に加熱される凸部65が形成されている。
【0051】
実施の形態1と同様に、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xaと熱融着しない部分の幅XbをX軸成分方向に張力を加えると、熱融着しない部分の幅Xb及び熱融着しない部分の長さYbに外力が加わり、X軸成分方向に最も引っ張り力が弱くなるが、他の斜め角度またはY軸成分方向に加えられた外力は、エンボス加工する部分の幅Xaとの面積Xa・Ybで分散されて外力に耐える構造となっている。
よって、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、Y軸成分方向の熱融着部分の幅Yaによって、部分的にエンボス加工されることにより熱融着される融着部が形成されている。
【0052】
したがって、
図3及び
図4に示すように、エンボスローラ60の周囲に、幅Xaで、長さYaの熱融着部分を形成しているが、X軸成分方向に外力を加えると、直接、外力が熱融着しない部分の幅Xbに加えられることになる。
そこで、エンボス加工により熱融着される凸部65を、
図5に示す「H」字形等のように、互いに干渉し会うX軸成分方向、Y軸成分方向に線対称の形状であれば、熱融着部分を、乾燥時または湿潤時に無関係に、熱融着の加工性がよく、スパンボンド不織布層10A,100A,30Aとの3層で形成でき、製品使用時にも柔らかくて繊維や製品の脱落がなく、縦伸びや横縮みをしない腰が強いもので嵩高加工及び機械的強度を任意に形成できる複合構造体とすることができる。
【0053】
上記実施の形態2の複合構造体は、押出機12,32、押出機102で押し出し、ノズル13,33、ノズル103から連続噴出させて長繊維の繊維ウェブを形成し、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリプロピレン、パルプ等の繊維の何れか1つ以上の短繊維と水と混練させた原材料を噴射させ、スパンボンド不織布層10A,30A、メルトブロー不織布層100Aを積層して交絡する。
前記スパンボンド不織布層10A,30A、メルトブロー不織布層100Aを3層重ね合わせて熱融着で全層融合するとき、スパンボンド不織布層10A,30A、メルトブロー不織布層100Aの移送方向に対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分は、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、融合しない部分の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲としたものである。
【0054】
このとき、実施の形態1と同様に、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbとは、Y軸成分方向の一直線上の配置であり、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYbとなり、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定した凸部65を形成したエンボス凸部ローラ61及びエンボス平滑ローラ62によるエンボス加工を行ったものである。
【0055】
ここで、2層以上重ね合わせて融着するスパンボンド不織布層10A,20A,30Aとは、本発明を実施する場合には、スパンボンド不織布層10A,20A,30Aのみを直接、スパンボンド不織布層10A,30A及びメルトブロー不織布層100Aを重ね合わせてもよいし、スパンボンド不織布層10A,30Aの前にメルトブロー不織布層100Aを積層したメルトブロー不織布層100Aとしてもよいし、メルトブロー不織布層100Aをスパンボンド不織布層10A,30Aの何れかでもよい。
即ち、或いは、2層以上重ね合わせて融着するスパンボンド不織布層を有しておれば、他の不織布層、合成樹脂層を有していてもよい。結果、2層以上重ね合わせて融着するスパンボンド不織布層10A,20A,30Aは、複数層を形成するものであればよく、メルトブロー不織布層100Aは1以上の不織布層を形成するものであればよい。
【0056】
したがって、スパンボンド不織布層10A,20A,30Aの移送方向に対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分は、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、融合しない部分の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲としたものである。
また、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbとは、熱融着部分の幅Xaと熱融着部分の長さYaの面を熱融着面とし、隣接するY軸成分方向の一直線上の配置において、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYb、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定してエンボス凸部ローラ61及びエンボス平滑ローラ62によるエンボス加工としたものである。
【0057】
その後、水分を乾燥させた後、スパンボンド不織布層10A,30A及びメルトブロー不織布層100Aを
図3及び
図4、
図5に示す特殊なエンボス加工により融着させる。これにより、繊維の脱落を防ぎ加工適性が良い状態になり縦伸びを抑える。また、特殊なエンボスパターンで従来のスパンボンド不織布のメッシュパターンに類似した模様に仕上げることができる。ただし、エンボスパターンに見える部分は穴が開いているわけではなく、基材のポリプロピレン(PP)繊維の部分が熱で接着し透明に見えているだけであるので、横伸びも抑えることができる。拭き取った汚れなども裏面に通過しないため、手などに汚れが付着しない。
【0058】
本実施の形態1及び2の複合構造体によれば、スパンボンド不織布層10A,20A,30A、またはスパンボンド不織布層10A,30A及びメルトブロー不織布層100Aに縦伸びを抑えつつ、横方向の伸縮性を持たせる加工をした基材として使用すると、濡れると強度が弱いので破れ易くなり、また、濡れた時でも硬くなる。そして、紙粉が出てきたり、繊維の部分が湿潤時に基材からはがれてしまうという問題を解決することができた。サーマルボンド不織布でも同様な加工を施すことで良好な結果が得られた。
【0059】
本実施の形態にかかる複合構造体の製造装置は、押出機102,22,32で押し出し、ノズル103,23,33から連続噴出させて長繊維の繊維ウェブを形成し、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリプロピレン、パルプ等の繊維の何れか1つ以上の繊維によって2層以上重ね合わせてなるスパンボンド不織布層10A,30A及びメルトブロー不織布層100Aの製造工程、または前記メルトブロー不織布層100A、スパンボンド不織布層20A,30Aの製造工程で3層重ね合わせて熱融着で全層融合するとき、前記メルトブロー不織布層100A、スパンボンド不織布層20A,30Aの移送方向に対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分は、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、融合しない部分の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲とし、また、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbとは、Y軸成分方向の一直線上の配置であり、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYbとなり、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定したエンボス加工するものである。
【0060】
本実施の形態の複合構造体は、3層重ね合わせてなるメルトブロー不織布層100Aとスパンボンド不織布層10A,30Aを熱融着で全層融合するとき、メルトブロー不織布層100Aとスパンボンド不織布層10A,30Aの移送方向に対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分は、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、融合しない部分の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲とする。
また、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbとは、Y軸成分方向の一直線上の配置であり、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYb、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定し、熱融着部分の幅Xaと熱融着部分の長さYaの面を熱融着したエンボス凸部ローラ61及びエンボス平滑ローラ62によるエンボス加工を行うものである。
【0061】
したがって、2層以上重ね合わせてなるメルトブロー不織布層100Aとスパンボンド不織布層10A,30Aは、任意の嵩高の厚みを柔らかい対象物や人体側とすることができる。必要に応じてメルトブロー不織布層等を組み込むことができる。
メルトブロー不織布層100Aとスパンボンド不織布層10A,30Aを2層以上重ね合わせて熱融着で全層融合するとき、まず、前記スパンボンド不織布層の移送方向に対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分は、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、融合しない部分の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲とし、熱融着部分の幅Xaを融合しない部分の幅Xbよりも狭くしている。
【0062】
そして、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbは、Y軸成分方向の一直線上に熱融着部分の長さYa及び熱融着しない部分の長さYbが配置され、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYb、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定し、熱融着部分の幅Xaと熱融着部分の長さYaの面を熱融着したエンボス加工を行うものであるから、X軸成分方向及びY軸成分方向は勿論、斜めの外力に対しても、縦伸びや横縮みをしない腰が強いものとなる。特に、熱融着部分の幅Xaと熱融着部分の長さYaの面を熱融着した凸部65を形成したエンボス凸部ローラ61及びエンボス平滑ローラ62からなるエンボスローラ60によるエンボス加工を行うものであるから、縦伸びや横縮みが内部歪となって対抗するから、全体的に縦伸びや横縮みに対する抵抗力が強く形状変化に至らない。
【0063】
更に、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbは、加工が可能であり、製品使用時(湿潤時)に柔らかくて繊維や製品の脱落がなく、縦伸びや横縮みをしない腰が強いもので嵩高加工及び機械的強度を任意に形成できる。
加えて、乾燥時または湿潤時においても加工性がよく、使用時に柔らかくて繊維等の脱落がなく、重ね合わせても腰が強くて縦伸びや横縮みをすることなく、嵩高加工及び機械的強度を任意に設定できる複合構造体の製造装置を提供できる。
【0064】
上記実施の形態1または2では、スパンボンド不織布層10A,20A,30Aを2層以上重ね合わせてなるものであるが、本発明を実施する場合には、
図1に示す実施の形態1の第1スパンボンド不織布製造機10を何れに配設するかが問題であるものの、メルトブロー不織布製造機100の数は直接問題とするものではない。
また、上記実施の形態では、スパンボンド不織布製造機10,30とメルトブロー不織布製造機100は、その後、凸部65を形成したエンボス凸部ローラ61及びエンボス平滑ローラ62によるエンボスローラ60でエンボス加工を行っている。
【0065】
本発明におけるエンボス加工は、スパンボンド不織布層10A,20A,30Aの移送方向、即ち、Y軸成分に対して直交するX軸成分は、Y軸成分方向に長く、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、融合しない部分の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲とし、また、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、前記Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbとは、前記Y軸成分方向の一直線上の配置であり、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYbとなり、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定したものである。