(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6619061
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】放電加工装置
(51)【国際特許分類】
B23H 1/04 20060101AFI20191202BHJP
B23H 1/10 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
B23H1/04 Z
B23H1/10 Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-133339(P2018-133339)
(22)【出願日】2018年7月13日
【審査請求日】2018年10月4日
(31)【優先権主張番号】201810647822.7
(32)【優先日】2018年6月22日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 潤
【審査官】
奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−173199(JP,A)
【文献】
米国特許第04578556(US,A)
【文献】
特開平05−169322(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/031011(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 1/04
B23H 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物との間で放電加工を行う工具電極と、
前記工具電極が挿通されるハウジングと、
前記ハウジングの内壁と前記工具電極との間に設けられた空間であるミスト生成領域に圧縮気体を供給する圧縮気体供給装置と、
前記圧縮気体の流路であって、前記圧縮気体供給装置と前記ミスト生成領域とを接続する第1流路と、
前記ミスト生成領域に加圧加工液を供給する加圧加工液供給装置と、
前記加圧加工液の流路であって、前記加圧加工液供給装置と前記ミスト生成領域とを接続する第2流路と、
を備え、
前記第2流路と前記ミスト生成領域との境界である加圧加工液供給口は、前記ハウジングの内壁に前記ハウジングの内壁の周方向において等角度毎に2以上、または、前記ハウジングの内壁の全周に渡って形成され、
前記ミスト生成領域に供給された前記加圧加工液は、前記圧縮気体と混合されることにより霧状に微粒子化し、ミスト噴出口からミストとして噴射され、
前記第2流路と前記ミスト生成領域との接続部は、前記第1流路と前記ミスト生成領域との接続部よりも前記ミスト噴射口側に設けられており、
前記工具電極が挿通され、前記ミスト生成領域の上側に配置される液槽と、
前記加圧加工液供給装置から前記液槽内に前記加圧加工液を供給する流路であって、前記液槽と前記加圧加工液供給装置とを接続する第3流路と、
を備えたことを特徴とする放電加工装置。
【請求項2】
前記ミスト生成領域は、前記ハウジングの下端側に設けられたミスト生成空間と前記ミスト生成空間と前記液槽との間に前記ミスト生成空間の上側全域を覆うように設けられた圧縮気体供給空間とからなり、
前記ミスト生成空間には、前記第2流路を介して前記加圧加工液供給装置から加圧加工液が供給され、
前記圧縮気体供給空間には、前記第1流路を介して前記圧縮気体供給装置から圧縮気体が供給されることを特徴とする請求項1に記載の放電加工装置。
【請求項3】
前記工具電極を支持する2以上のダイスをさらに備え、
前記ダイスうちの1つは、前記液槽の下端部に配置され、
前記工具電極と前記ダイスとの間には、間隙が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の放電加工装置。
【請求項4】
前記工具電極を支持する2以上のダイスをさらに備え、
前記ダイスのうちの1つは、前記液槽の上端部に配置され、
前記工具電極と前記ダイスとの間には、間隙が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の放電加工装置。
【請求項5】
前記圧縮気体は、空気であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の放電加工装置。
【請求項6】
前記加圧加工液は、水であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の放電加工装置。
【請求項7】
放電加工中、前記工具電極は、同軸周りに回転していることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の放電加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物と工具電極との間に放電を発生させながら、工具電極を移動させることによって被加工物を加工する放電加工装置に関し、特に、空気中において被加工物の加工部分にミストを噴射させながら加工を行う放電加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工具電極と被加工物とを所定の間隙をおいて配置し、工具電極と被加工物の両極間に電圧を印加して放電を発生させるとともに、工具電極と被加工物とを相対移動させて被加工物に加工を施し、所望の形状に加工する装置として放電加工装置が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、空気中で放電加工を行う気中放電加工装置が開示されている。この気中放電加工装置では、細穴工具電極内から噴出される圧縮空気と細穴工具電極の側面に沿って送られる圧縮空気に加えて、細穴工具電極の両側且つ加工部分から離れた位置に2本の液体ミスト噴出ノズルを配置し、当該液体ミスト噴出ノズルからミストを噴射させることにより、放電加工中に生じる加工屑を除去しつつ、被加工物の加工を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−102828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般に、細穴工具電極の径は非常に小さく、特許文献1に記載の細穴工具電極内から噴出される圧縮空気と細穴工具電極の側面に沿って送られる圧縮空気も微量である。それに加えて、気体では、液体などと比較して加工屑を除去しづらい。さらに、特許文献1に記載の気中放電加工装置では、細穴工具電極の両側且つ加工部分から離れた位置に配置された2本の液体ミスト噴出ノズルからミストを噴射しているため、特に、被加工物の深部を加工する際に加工部分までミストが到達せず、加工屑を十分に除去することができないことがあった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、気中放電加工において、加工屑を十分に除去することができる放電加工装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の放電加工装置は、被加工物との間で放電加工を行う工具電極と、前記工具電極が挿通されるハウジングと、前記ハウジングの内壁と前記工具電極との間に設けられた空間であるミスト生成領域に圧縮気体を供給する圧縮気体供給装置と、前記圧縮気体の流路であって、前記圧縮気体供給装置と前記ミスト生成領域とを接続する第1流路と、前記ミスト生成領域に加圧加工液を供給する加圧加工液供給装置と、前記加圧加工液の流路であって、前記加圧加工液供給装置と前記ミスト生成領域とを接続する第2流路と、を備え、前記第2流路と前記ミスト生成領域との境界である加圧加工液供給口は、前記ハウジングの内壁に前記ハウジングの内壁の周方向において等角度毎に2以上、または、前記ハウジングの内壁の全周に渡って形成され、前記ミスト生成領域に供給された前記加圧加工液は
、前記圧縮気体と混合されることにより霧状に微粒子化し、
ミスト噴出口からミストとして噴射され
、前記第2流路と前記ミスト生成領域との接続部は、前記第1流路と前記ミスト生成領域との接続部よりも前記ミスト噴射口側に設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、第2流路と空間との境界である加圧加工液供給口は、ハウジングの内壁にハウジングの内壁の周方向において等角度毎に2以上、または、ハウジングの内壁の全周に渡って形成されている。従って、ハウジングの内壁の周方向において、加圧加工液をミスト生成領域に偏りなく供給することができる。これにより、ミスト生成領域にミストを均一に生成し、工具電極に沿って偏りなく噴射させることができるため、放電加工が行われる工具電極近傍の加工屑を確実に除去することができる。
【0009】
第2の発明の放電加工装置は、前記第1の発明において、前記工具電極が挿通され、前記ミスト生成領域の上側に配置される液槽と、前記加圧加工液供給装置から前記液槽内に前記加圧加工液を供給する流路であって、前記液槽と前記加圧加工液供給装置とを接続する第3流路と、をさらに備えたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明では、工具電極が挿通され、ミスト生成領域の上側に配置される液槽と、加圧加工液供給装置から液槽内に加圧加工液を供給する流路であって、液槽と加圧加工液供給装置とを接続する第3流路と、をさらに備えている。従って、液槽内の加工液によって工具電極を冷却することができる。これにより、放電加工時の工具電極の温度上昇を抑制し、工具電極の消耗を抑えることができる。
【0011】
第3の発明の放電加工装置は、前記第2の発明において、前記ミスト生成領域は、前記ハウジングの下端側に設けられたミスト生成空間と前記ミスト生成空間と前記液槽との間に前記ミスト生成空間の上側全域を覆うように設けられた圧縮気体供給空間とからなり、前記ミスト生成空間には、前記第
2流路を介して前記加圧加工液供給装置から加圧加工液が供給され、前記圧縮気体供給空間には、前記第
1流路を介して前記圧縮気体供給装置から圧縮気体が供給されることを特徴とするものである。
【0012】
本発明では、ミスト生成領域は、ハウジングの下端側に設けられたミスト生成空間とミスト生成空間と液槽との間にミスト生成空間の上側全域を覆うように設けられた圧縮気体供給空間とからなり、ミスト生成空間には、第
2流路を介して加圧加工液供給装置から加圧加工液が供給され、圧縮気体供給空間には、第
1流路を介して圧縮気体供給装置から圧縮気体が供給される。従って、第1流路から送られた圧縮空気は、圧縮気体供給空間を経由してミスト生成空間に供給される。これにより、空間に圧縮気体を偏りなく供給することができるため、圧縮空気の流れをより安定化させることができる。
【0013】
第4の発明の放電加工装置は、前記第2または3の発明において、前記工具電極を支持する2以上のダイスをさらに備え、前記ダイスのうちの1つは、前記液槽の下端部に配置され、前記工具電極と前記ダイスとの間には、間隙が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明では、工具電極を支持する2以上のダイスをさらに備え、ダイスのうちの1つは、液槽の下端部に配置され、工具電極とダイスとの間には、間隙が設けられている。従って、放電加工中に生じる工具電極の芯振れを防止することができる。これにより、加工位置のずれを防止し、高い精度で加工を行うことができる。また、ベンチュリ効果により、液槽内の加圧加工液を工具電極とダイスとの間の間隙から噴出させることができる。これにより、液槽内の加工液をミスト生成に利用することができる。また、加工液により、液槽の下側の工具電極を冷却することができる。
【0015】
第5の発明の放電加工装置は、前記第2〜4の何れかの発明において、前記工具電極を支持する2以上のダイスをさらに備え、前記ダイスのうちの1つは、前記液槽の上端部に配置され、前記工具電極と前記ダイスとの間には、間隙が設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、工具電極を支持する2以上のダイスをさらに備え、ダイスのうちの1つは、液槽の上端部に配置され、工具電極とダイスとの間には、間隙が設けられている。従って、放電加工中に生じる工具電極の芯振れを防止することができる。これにより、加工位置のずれを防止し、高い精度で加工を行うことができる。また、液槽内の加圧加工液を工具電極とダイスとの間の間隙から噴出させることができる。これにより、液槽内での冷却に加えて、液槽の上側でも工具電極を冷却することができる。
【0017】
第6の発明の放電加工装置は、前記第1〜5の何れかの発明において、前記圧縮気体は、空気であることを特徴とするものである。
【0018】
ここで、例えば、圧縮気体が酸素である場合、放電加工に伴い被加工物が激しく燃焼する。これにより、加工を速く進行させることができる代わりに、コストが高くなってしまう。また、例えば、圧縮気体が窒素である場合、燃焼が抑制され、加工速度が低下してしまう。
【0019】
本発明では、圧縮気体は、空気である。これにより、加工を一定速度以上で行うとともに、圧縮気体に要するコストを削減することができる。
【0020】
第7の発明の放電加工装置は、前記第1〜6の何れかの発明において、前記加圧加工液は、水であることを特徴とするものである。
【0021】
本発明では、加圧加工液は、水である。これにより、工具電極の冷却を効率的に行い、消耗を抑えることができる。また、加圧加工液に要するコストを削減することができる。
【0022】
第8の発明の放電加工装置は、前記第1〜7の何れかの発明において、放電加工中、前記工具電極は、同軸周りに回転していることを特徴とするものである。
【0023】
本発明では、放電加工中、工具電極は、同軸周りに回転している。これにより、放電加工中に生じる工具電極の芯振れを防止することができる。また、ミスト生成領域から噴射されたミストをより均一に拡散させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ハウジングの内壁の周方向において、加圧加工液をミスト生成領域に偏りなく供給することができる。これにより、ミスト生成領域にミストを均一に生成し、工具電極に沿って偏りなく噴射させることができるため、放電加工が行われる工具電極近傍の加工屑を確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態にかかる放電加工装置の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0027】
図1に示すように、放電加工装置100は、図示しない被加工物の加工部分にミストを噴射しつつ、放電加工を行うためのものである。放電加工装置100は、図示しない被加工物との間に電圧が印加されることにより放電を発生させる工具電極1と、工具電極1を保持するハウジング2と、ハウジング2内にミスト生成のための圧縮気体と加圧加工液とをそれぞれ供給する圧縮気体供給装置3および加圧加工液供給装置4などを備えている。なお、
図1の白色矢印は、圧縮気体供給装置3から送られる圧縮気体を示し、黒色矢印は、加圧加工液供給装置4から送られる加圧加工液を示している。
【0028】
工具電極1は、その内部に中空孔が設けられた円筒型のパイプ電極である。工具電極1は、外径が0.3〜3.0mmである。放電加工中、工具電極1は、図示しない回転駆動部によって、同軸周りに回転される。また、工具電極1の中空孔内には、圧縮気体供給装置3から圧縮気体が供給され、図示しない被加工物の加工部分に噴射される。
【0029】
ハウジング2は、貫通孔2aが設けられた略筒型形状をなしている。貫通孔2aの略中央から上側部分には、加圧加工液が充填される液槽5が嵌合された状態で取り付けられている。貫通孔2aの略中央から下側部分には、圧縮気体と加圧加工液とが混合されてミストが生成される空間であるミスト生成領域6が設けられている。貫通孔2aには、液槽5およびミスト生成領域6を貫くように、工具電極1が挿通される。ハウジング2には、圧縮気体供給装置3からミスト生成領域6に圧縮気体を送る際の流路となる第1流路7が形成されている。ハウジング2には、加圧加工液供給装置4からミスト生成領域6に加圧加工液を送る際の流路となる第2流路8が形成されている。ハウジング2には、加圧加工液供給装置4から液槽5に加圧加工液を送る際の流路となる第3流路9が形成されている。
【0030】
液槽5は、加圧加工液供給装置4から送られた加圧加工液により、工具電極1を冷却するためのものである。液槽5は、貫通孔5aが設けられた略筒型形状をなしている。貫通孔5aの上端部および下端部には、その内部に充填される加圧加工液が多量に漏れ出さないように封止するとともに、外周を取り囲むように工具電極1を支持するダイス10a,10bがそれぞれ取り付けられている。ダイス10a,10bと工具電極1との間には、間隙G1,G2が設けられている。間隙G1,G2の大きさは、0.0025〜0.010mmである。
【0031】
ミスト生成領域6は、液槽5の直下に形成され、第1流路7と連通する圧縮気体供給空間6aと第2流路8と連通するミスト生成空間6bとからなる。
【0032】
圧縮気体供給空間6aは、ミスト生成空間6bへと続く圧縮気体の流路の断面積が小さくなるように、その高さが低く設定されている。これにより、第1流路7から送られた圧縮気体の流速を急激に上げることができる。圧縮気体供給空間6aは、ミスト生成空間6bの上側全域を覆うように形成されている。
【0033】
ミスト生成空間6bは、圧縮気体供給空間6aと連通し、圧縮気体供給空間6aからハウジング2の下端までを貫く円柱型の空間である。ミスト生成空間6bにおけるハウジング2の内壁間の内径は、0.8〜5.0mmである。ミスト生成空間6bと第2流路8との境界であるハウジング2の内壁には、第2流路8から送られた加圧加工液をミスト生成空間6bに噴出する複数の加圧加工液供給口11が形成されている。
【0034】
複数の加圧加工液供給口11は、円形状である。複数の加圧加工液供給口11は、径の大きさが等しい。複数の加圧加工液供給口11の径の大きさは、0.2〜0.5mmである。複数の加圧加工液供給口11は、同じ高さに配置されている。加圧加工液供給口11は、上下方向、すなわち、ハウジング2の同軸方向からみて、工具電極1を中心として、ミスト生成空間6bを形成するハウジング2の内壁の周方向において、ハウジング2の内壁に等角度毎に2以上配置されている。本実施形態では、加圧加工液供給口11は、
図2に示すように、上下方向からみて、工具電極1を中心として、ミスト生成空間6bを形成するハウジング2の内壁の周方向において、ハウジング2の内壁に90度毎に4つ配置されている。また、本実施形態では、ミスト生成空間6bの周囲を取り巻く第2流路8を4つに分岐してミスト生成空間6bと接続させることにより、4つの加圧加工液供給口11を形成させている。
【0035】
圧縮気体供給装置3は、圧縮気体を供給するためのものである。圧縮気体は空気である。加圧加工液供給装置4は、加圧加工液を供給するためのものである。加圧加工液は水である。
【0036】
次に、放電加工時のミスト生成について、
図1を参照しつつ、詳細に説明する。
【0037】
圧縮気体供給空間6aに供給された圧縮気体は、圧縮気体供給空間6aで加速されてミスト生成空間6bへと送られ、開口部であるミスト噴射口6b1へと向かう高速の圧縮気体の流れを形成する。また、上述したように、工具電極1とダイス10bとの間の間隙G2の大きさは0.0025〜0.010mm、加圧加工液供給口11の径は0.2〜0.5mmであり、ミスト生成領域6への加工液の供給口の断面積は何れも小さい。そのため、加圧加工液による強制加圧に加えて、ベンチュリ効果によってミスト生成領域6に発生した負圧により、間隙G2および加圧加工液供給口11から加圧加工液が噴出する。噴出した加圧加工液は、圧縮気体によって霧状に微細化され、ミスト噴射口6b1からミストとして噴射される。
【0038】
(作用効果)
本実施形態では、4つの加圧加工液供給口11は、同じ径を有する円形状であって、同じ高さに配置されている。さらに、
図2に示すように、4つの加圧加工液供給口11は、上下方向からみて、工具電極1を中心として、ミスト生成空間6bを形成するハウジング2の内壁の周方向において、ハウジング2の内壁に90度毎に配置されている。これにより、ミスト生成空間6bに加圧加工液を偏りなく供給することができる。従って、ミスト生成空間6bにミストを均一に生成し、工具電極1に沿って偏りなく噴射させることができるため、放電加工が行われる工具電極1近傍の加工屑を確実に除去することができる。
【0039】
また、
図1に示すように、加圧加工液供給口11は、ミスト生成空間6bの高さ方向中央部に設けられている。従って、圧縮気体供給空間6aから下方向に安定した圧縮気体の流れが形成されている中に加圧加工液を供給することができる。これにより、生成されたミストを同気流に乗せて安定して噴射し続けることができる。
【0040】
また、工具電極1は、加圧加工液が充填される液槽5に挿通されている。従って、液槽5内の加圧加工液によって工具電極1を冷却することができる。これにより、放電加工時の工具電極1の温度上昇を抑制し、工具電極1の消耗を抑えることができる。
【0041】
また、圧縮気体供給空間6aは、ミスト生成空間6bの上側全域を覆うように設けられている。従って、圧縮気体供給空間6aを経由してミスト生成空間6bに圧縮気体を送ることができる。これにより、圧縮気体をミスト生成空間6bに偏りなく供給することができるため、圧縮気体の流れをより安定化させることができる。
【0042】
また、液槽5の貫通孔5aの上端部および下端部には、外周を取り囲むように工具電極1を支持するダイス10a,10bがそれぞれ配置されている。従って、ダイス10a,10bにより、放電加工中に生じる工具電極1の芯振れを防止することができる。これにより、加工位置のずれを防止し、高い精度で加工を行うことができる。
【0043】
また、ダイス10bと工具電極1との間には間隙G2が設けられ、間隙G2の大きさは0.0025〜0.010mmである。従って、ベンチュリ効果により、液槽5内の加圧加工液を工具電極1とダイス10bとの間の間隙G2から噴出させることができる。これにより、液槽5内の加圧加工液をミスト生成に利用することができる。また、加圧加工液により、液槽5の下側の工具電極1を冷却することができる。
【0044】
また、ダイス10aと工具電極1との間には間隙G1が設けられ、間隙G2の大きさは0.0025〜0.010mmである。従って、液槽5内の加圧加工液を工具電極1とダイス10aとの間の間隙G1から噴出させることができる。これにより、液槽5内での冷却に加えて、液槽5の上側でも工具電極1を冷却することができる。
【0045】
また、圧縮気体供給装置3から供給される圧縮気体は、空気である。これにより、加工を一定速度以上で行うとともに、圧縮気体に要するコストを削減することができる。
【0046】
また、加圧加工液供給装置4から供給される加圧加工液は、水である。これにより、工具電極1の冷却を効率的に行い、消耗を抑えることできる。また、加圧加工液に要するコストを削減することができる。
【0047】
また、放電加工中、工具電極1は、図示しない回転駆動部によって同軸周りに回転している。これにより、放電加工中に生じる工具電極1の芯振れを防止することができる。また、ミスト生成空間6bから噴射されたミストをより均一に拡散させることができる。
【0048】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態や実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0049】
本実施形態では、工具電極1は、パイプ電極であると記載したが、工具電極1は、棒状電極であっても構わない。また、パイプ電極に設けられる貫通孔は、如何なる個数および形状であっても構わない。
【0050】
本実施形態では、液槽5は、ハウジング2に対して別途設けられていると記載したが、例えば、ハウジング2内の内部空間として設けられていても構わない。
【0051】
本実施形態では、ミスト生成空間6bは、圧縮気体供給空間6aからハウジング2の下端までを貫く円柱型の空間であると記載したが、ミスト生成空間6bは、例えば、その断面が台形型となるように形成されていても構わない。より具体的には、ミスト生成空間6bにおけるハウジング2の内壁間の距離は、ハウジング2の下端に近づくにつれて大きくなるように形成されていても構わない。或いは、ミスト生成空間6bにおけるハウジング2の内壁間の距離は、ハウジング2の下端に近づくにつれて小さくなるように形成されていても構わない。また、ミスト生成空間6bは、高さ方向途中部にハウジング2の内壁間の距離が大きくなる部分や小さくなる部分が形成されていても構わない。
【0052】
また、加圧加工液供給口11は、上下方向からみて、工具電極1を中心として、ミスト生成空間6bを形成するハウジング2の内壁の周方向において、90度毎に4つ配置されていると記載したが、例えば、加圧加工液供給口11は、ハウジング2の内壁の全周に渡って形成されていても構わない。
【0053】
また、圧縮気体は空気であると記載したが、圧縮気体は、例えば、酸素や窒素、アルゴンであっても構わない。
【0054】
また、加圧加工液は水であると記載したが、加圧加工液は、例えば、水溶性加工液や油性加工液であっても構わない。
【符号の説明】
【0055】
1 工具電極
2 ハウジング
2a 貫通孔
3 圧縮気体供給装置
4 加圧加工液供給装置
5 液槽
5a 貫通孔
6 ミスト生成領域
6a 圧縮気体供給空間
6b ミスト生成空間
6b1 ミスト噴射口
7 第1流路
8 第2流路
9 第3流路
10a,10b ダイス
11 加圧加工液供給口
G1,G2 間隙
100 放電加工装置
【要約】
【課題】気中放電加工において、加工屑を十分に除去することができる放電加工装置を提供すること。
【解決手段】放電加工装置は、被加工物との間で放電加工を行う工具電極と、工具電極が挿通されるハウジングと、ハウジングの内壁と工具電極との間に設けられた空間であるミスト生成領域に圧縮気体を供給する圧縮気体供給装置と、圧縮気体の流路であって、圧縮気体供給装置とミスト生成領域とを接続する第1流路と、ミスト生成領域に加圧加工液を供給する加圧加工液供給装置と、加圧加工液の流路であって、加圧加工液供給装置とミスト生成領域とを接続する第2流路と、を備え、第2流路とミスト生成領域との境界である加圧加工液供給口は、ハウジングの内壁にハウジングの内壁の周方向において等角度毎に2以上、または、ハウジングの内壁の全周に渡って形成されている。
【選択図】
図1