【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の課題は、骨セメントペーストの出発成分としてのモノマー液体およびセメント粉末から骨セメントペーストを製造して、混合された骨セメントペーストをディスペンスするための装置であって、
1)シリンダ形の内部を有するカートリッジであって、カートリッジの前部に向かって動くことができるディスペンスプランジャと、長手方向に沿って延在する収容部とを備えており、ディスペンスプランジャはカートリッジ内かつカートリッジの後部に配置されており、収容部の前部はカートリッジの後部に結合されており、
2)収容部内に配置されたポンピングプランジャであって、収容部の長手方向において収容部の前部に向かって可動であるように収容部内に支持されている、ポンピングプランジャと、
3)モノマー液体を収容する潰れることができるアンプルであって、収容部内かつポンピングプランジャとディスペンスプランジャとの間に配置されており、アンプルはアンプル本体部を有し、アンプル本体部は収容部の内壁に少なくとも部分的に接触している、アンプルと、
4)収容部内かつディスペンスプランジャとアンプル本体部との間またはポンピングプランジャとアンプル本体部との間に配置されたスペーサであって、収容部の長手方向に延在し、収容部の内壁からスペーサまでの離隔距離は少なくともアンプル本体部の壁厚と等しい大きさである、スペーサと、
を備えた装置によって解決される。
【0021】
本発明では理論的に、ディスペンスプランジャとアンプル本体部との間に1つのスペーサを配置し、ポンピングプランジャとアンプル本体部との間に第2のスペーサを配置することも可能である。その際には、アンプルはこれら2つのスペーサの間で潰される。よって本発明は、スペーサを正確に1つとするものではない。他の(第2の)スペーサを設けることも可能であるからである。1つまたは複数のスペーサは、複数の部分から構成することもできる。しかし本発明では、1つのスペーサが1つの部分から構成され、または複数のスペーサが1つの部分から構成されているのが好適である。
【0022】
また本発明では、モノマー液体を収容部内かつポンピングプランジャとディスペンスプランジャとの間に配置し、液体を1つより多くのアンプル内に収容することもできる。その際には、複数のアンプルは順次または並行して破壊して開けられる。
【0023】
本発明の装置は、モノマー液体を貯蔵するために適したものであり、そのためのものである。本発明の装置は、セメント粉末の貯蔵に対応したものでもあるのが好適である。
【0024】
収容部、カートリッジ、ポンピングプランジャ、ディスペンスプランジャおよびスペーサは好適には熱可塑性材料から、特に射出成形法を用いて作製されている。これは、装置を低コストで使い捨て可能な衛生製品として製造できることを意味する。
【0025】
カートリッジの内部はシリンダ形状を有する。このシリンダ形状は、カートリッジの内部について実現できる最も簡単な形状である。幾何学的には「シリンダ形状」とは、任意の底面領域を有するシリンダ全般の形状をいい、換言すると、円形の底面領域を有するシリンダだけではない。よって、カートリッジの内部の内壁は、任意の底面を有するシリンダ、特に異なる底面を有するシリンダすなわち非円形または非丸形の底面を有するシリンダのシリンダ表面によって、実現することができる。しかし、本発明では、回転対称的な底面、特に円形の底面を有するシリンダ形状が内部について有利である。というのも、これが最も簡単に製造できるからである。収容部の有利には同様にシリンダ形の内部についても、同様のことが当てはまる。
【0026】
本発明の装置では、スペーサをディスペンスプランジャの後部もしくはポンピングプランジャの前部に固定し、またはスペーサをアンプルのアンプルヘッドの周囲に配置することができ、アンプルヘッドは、アンプル本体部の外径よりも小さい外径を有する。
【0027】
スペーサがディスペンスプランジャの後部またはポンピングプランジャの前部に固定されている場合、装置を特に簡単にセットアップすることができる。さらに、このようにしてスペーサの位置が固定され、傾くことがないので、スペーサがアンプルに対して安定的かつ高信頼性で動くことが保証される。理論的には、1つのスペーサをディスペンスプランジャの後部に固定し、第2のスペーサをポンピングプランジャの前部に固定することもできる。どちらのプランジャにスペーサが固定されているか(ポンピングプランジャに固定されているか、またはディスペンスプランジャに固定されているか)に依存して(またはスペーサが双方のプランジャに固定されている場合)、アンプルの破片はプランジャとスペーサとの間を通過することができず、よって、スペーサを傾けることもなく、かつ/またはスペーサによって制限すべき2つのプランジャ間の離隔距離を変化させることもない。
【0028】
さらに、刃部を有する少なくとも1つのカット要素を、ポンピングプランジャのアンプル側の前部および/またはディスペンスプランジャのアンプル側の後部に配置することもでき、好適なのは、それぞれ少なくとも1つの刃部を有する少なくとも3つまたは少なくとも4つのカット要素を配置することであり、少なくとも1つのカット要素は、ポンピングプランジャが前進駆動されたときにアンプル本体部の壁を切って貫通するように、ポンピングプランジャの前部および/またはディスペンスプランジャの後部の、収容部の内壁側に位置する一部に配置されており、刃部は好適には、ポンピングプランジャおよび/またはディスペンスプランジャの中心の長手軸から径方向外側に延在する。
【0029】
これによって、アンプルまたはアンプル本体部は規定の場所で破壊し、または切られる。これにより、破壊して開けるプロセスをより良好に制御することができ、この手順を標準化することができる。よって、アンプルの破片を、スペーサによって生じるスペースに良好に収まる予測可能な寸法で生じさせることができる。少なくとも1つのカット要素を、ポンピングプランジャの前部および/またはディスペンスプランジャの後部の、収容部の内壁側に位置する一部に配置するということは、少なくとも1つのカット要素がポンピングプランジャの前部および/またはディスペンスプランジャの後部の中央に延在することもできない、という意味ではない。少なくとも、収容部の内壁側に配置された外側の部分にも、長手方向においてアンプル本体部の壁と揃うように配置しなければならない、ということである。既定の局在化した位置に規定の力を加えることにより、同じ力でも、この位置における圧力を増大することができ、これによってアンプルの規定の破壊を達成することができる。これにより、アンプルを破壊して開けるプロセスの再現性が高くなる。
【0030】
少なくとも1つのカット要素の外側は、好適には、収容部の内壁と接触している。
【0031】
スペーサの自由端から少なくとも1つのカット要素までの離隔距離、好適には長手方向の離隔距離を、少なくとも10mmとすることができる。
【0032】
本発明のカット要素を備えた装置では、アンプルは、アンプル本体部の径よりも小さい径を有するアンプルヘッドを有し、かつ少なくとも1つのカット要素およびスペーサは、アンプルヘッドをディスペンスプランジャに向けてディスペンスプランジャの後部に配置され、または少なくとも1つのカット要素およびスペーサは、アンプルヘッドをポンピングプランジャに向けてポンピングプランジャの前部に配置されることができる。
【0033】
これは、アンプルを確実に開けることができることを意味する。さらに、アンプルが開けられるときに少なくとも1つのカット要素によって生じる破壊前部は、アンプルの破片がスペーサの自由端と、スペーサに向かって動かそうとするポンピングプランジャまたはディスペンスプランジャとの間を通過せずに、互いに押し合うディスペンスプランジャとポンピングプランジャとの間にスペーサによって生じる距離を意図せずに増大しないように、スペーサの自由端の背部に進行する。
【0034】
本発明では、アンプル本体部は、アンプルの、収容部の長手方向に対して垂直な最大断面を有する部分とすることができる。このことによって、アンプルが大きな容量を有し、かつ装置が比較的コンパクトな構成を有することができ、すなわち、長手方向に過度に長くならないことが保証される。
【0035】
さらに、スペーサの長手方向の長さを、少なくとも1つのカット要素とポンピングプランジャの前部またはディスペンスプランジャの後部との間の長手方向の離隔距離の少なくとも3倍とすることができ、好適には、スペーサの長手方向の長さは、少なくとも1つのカット要素とポンピングプランジャの前部またはディスペンスプランジャの後部との間の長手方向の離隔距離の少なくとも5倍である。
【0036】
このことによって、アンプルが開けられるときに少なくとも1つのカット要素によって生じる破壊前部が、アンプルの破片がスペーサの自由端と、スペーサに向かって動かそうとするポンピングプランジャまたはディスペンスプランジャとの間を通過せず、または容易に通過せずに、互いに押し合うディスペンスプランジャとポンピングプランジャとの間にスペーサによって生じる距離を意図せずに増大しないように、スペーサの自由端の背部から十分な距離に進行するという状況が生じる。
【0037】
本発明の装置の好適な一発展形態では、ポンピングプランジャが前方に駆動されたときにアンプルが開いてアンプルが圧縮された後、スペーサがポンピングプランジャとディスペンスプランジャとの間の離隔距離のさらなる縮小を阻止することにより、間にスペーサを有するポンピングプランジャとディスペンスプランジャとがカートリッジの前部に向かって動かされたときに、アンプルの破片に対してディスペンスプランジャとポンピングプランジャとの間にスペースが生じずに、アンプルの破片がより小さい破片に割れることがないように構成することができる。
【0038】
アンプルが圧縮されるとき(時系列においても)、アンプルが(一層)より小さい破片に割れなくなる前に、アンプルの破片は既に複数回割れていることができる。
【0039】
これによって、スペーサがポンピングプランジャとディスペンスプランジャとの間の距離を固定した後、後で割れる破片によってポンピングプランジャとディスペンスプランジャとが共に駆動されるときにさらに圧縮が生じて、ポンピングプランジャとディスペンスプランジャとの間のスペースがさらに縮小してカートリッジの内部にさらにモノマー液体が押し込まれ、モノマー液体が骨セメントペースト中に侵入してディスペンスプロセス中にモノマー気泡となり、または骨セメントペーストのちょう度を変化させることがない状況がもたらされる。
【0040】
また好適には、スペーサの長手方向の長さを、スペーサの長さに相当する距離におけるポンピングプランジャとディスペンスプランジャとの間の容積がアンプルの材料の体積より大きくなる長さ、好適には、ポンピングプランジャとディスペンスプランジャとの間の容積がアンプル材料の体積の少なくとも2倍、または全ての介在スペースを含めた破壊したアンプルの破片の体積と少なくとも同じ大きさになる長さにすることができる。
【0041】
このことによって、ガラス破片を非常に大きな力で圧縮する必要が無くなり、またはポンピングプランジャとディスペンスプランジャとが共に動く間に骨セメントペーストが押出されるときに生じる力がアンプル破片をさらに割って、ポンピングプランジャとディスペンスプランジャとの間の容積がさらに縮小することにより、カートリッジの内部の骨セメントペースト中に意図せずにさらにモノマー液体が押し込まれることがなくなることを保証することができる。このことによって、骨セメントペーストが均質であることを保証することができる。
【0042】
本発明の有利な一発展形態は、スペーサは、長手方向に延在する複数のロッドによって実現されており、ロッドは、互いに結合されており、またはポンピングプランジャの前部に固定されており、またはディスペンスプランジャの後部に固定されており、ロッドは好適には、丸形、三角形もしくは角形の横断面、特に矩形の横断面を有し、かつ/またはT字形の縦断面を有する、というものである。
【0043】
ロッド自体は大きくスペースをとらず、また、ポンピングプランジャとディスペンスプランジャとの間の離隔距離を少なくとも2点で安定化することができる。さらに好適には、ロッドの自由端がアンプルのアンプル本体部の前部の壁を良好に穿孔して貫通できるように、ロッドは自由端において一点にテーパ状にすることができる。さらに、ロッドはアンプルの破片を容易に押し退けることができる。スペーサは好適には、少なくとも3つのロッドによって実現され、最も好適には3つ、4つ、5つまたは6つのロッドによって実現されている。
【0044】
本発明では、スペーサを中空シリンダによって実現することができ、特に、長手方向に複数のスリットを有する中空シリンダによって実現することができる。
【0045】
さらに、アンプルは、アンプル本体部に結合されたアンプルヘッドを有し、アンプルヘッドは、アンプル本体部の外径よりも小さい外径を有し、スペーサはアンプルヘッドの隣に配置されており、またはスペーサはアンプルヘッドを包囲することも可能である。
【0046】
かかる構成により、スペーサの動きを簡単に規定することができ、破壊して開けるプロセスを標準化することができる。さらに、上述の構成により、アンプルは装置内にしっかり保持されて保管される。
【0047】
さらに、アンプルを、モノマー液体に対して化学的に安定しているガラスまたは合成材料から作製することができ、ガラスは、アンプル用の材料であるのが好適である。
【0048】
これらの材料は、モノマー液体を貯蔵するために非常に適している。
【0049】
また、アンプル本体部はシリンダ形であり、収容部はシリンダ形の内部を有し、好適には、アンプル本体部が収容部内に保持され、特に表面と揃って保持されるように、アンプル本体部の外径は、内部がシリンダ形である収容部の内径と一致するように構成することもできる。
【0050】
このようにして、アンプルは偶発的に叩かれることによって早期に装置内で破壊して開くことがないように、装置内にしっかり保持される。
【0051】
好適には、ポンピングプランジャを長手方向に収容部の後部から前部へ前方に駆動できるように保持される構成が可能である。
【0052】
これは、装置をたとえばカートリッジガン等の押出装置内に挟持して、これを用いて操作できることを意味する。
【0053】
骨セメントペーストを放出するための1つのディスペンス開口からカートリッジの内部の前部を封止することができ、その際には、カートリッジの内部のディスペンスプランジャをディスペンス開口に向かって押すことができる。
【0054】
このようにして、このディスペンス開口を介して骨セメントペーストを押し出すことができる。
【0055】
このようにして、カートリッジのディスペンス開口をその前部において、シールを用いて、特に栓部材を用いて封止することができ、その際には、ディスペンス開口が開いたときにディスペンス開口を介して骨セメントペーストをカートリッジから押し出すことができ、シールは好適には、気体に対して透過性であり、かつセメント粉末に対して不透過性である。シールは好適には、気体に対して透過性でありかつセメント粉末に対して不透過性であるフィルタ、特に有孔フィルタである。
【0056】
このようにして、セメント粉末をカートリッジの内部に良好に貯蔵することができる。シールは開封することができる。シールが気体に対して透過性であり、かつセメント粉末に対して不透過性である場合、シールを介してカートリッジの内部の排気を行って、滅菌ガスを用いて内部をリンジングすることにより、カートリッジの内部およびセメント粉末を滅菌処理することができる。
【0057】
シールは後部に、カートリッジの内部の方を向いた凹部を有することができ、この凹部に、セメント粉末の前部分が収容される。この部分は後で、骨セメントペーストのあまり良好に混合されなかった一部がストッパによって除去されるように、シールによって除去することができる。
【0058】
シールは好適には、ディスペンスプランジャと共にカートリッジの封止システムを構成し、この封止システムは、圧力が軸方向圧としてディスペンス開口の方向にディスペンスプランジャに作用することによって開封することができる。
【0059】
本発明の一発展形態では、カートリッジの内部が収容部の内部と揃うように、カートリッジの後部を収容部の前部に結合することができる。
【0060】
このことによって、骨セメントペーストをカートリッジの内部から押し出すためにポンピングプランジャをディスペンスプランジャと共に前方にカートリッジの内部へ駆動できることが保証される。
【0061】
また好適には、カートリッジの内部のセメント粉末をカートリッジの前部とディスペンスプランジャとの間に配置することもでき、好適には、モノマー液体を導く添加物がセメント粉末中に分散されている。
【0062】
このようにして、装置を直ちに使用することができ、先に装置にセメント粉末を充填する必要が無くなる。
【0063】
また、セメント粉末を、ディスペンスプランジャの前部に、特に面全体にわたって接触するように接触させることもでき、セメント粉末は好適には、カートリッジの内部に押し込まれる。
【0064】
これによって、モノマー液体がセメント粉末と混合されるときに骨セメントペースト中に気泡を生じ得る、カートリッジ内に残留する比較的大きな気泡が防止される。これは、高密度でパックされたセメント粉末とともには起こり得ない。というのも、モノマー液体がセメント粉末の粒子を良好に濡らし、モノマー液体の表面張力によってセメント粉末の粒子間に気泡が生じ得なくなるか、または少なくとも重大な気泡が生じ得なくなるからである。
【0065】
また、カートリッジの内部のセメント粉末のセメント粒子間のスペースの容積は、セメント粉末の総体積を基準として22体積%〜40体積%の範囲とすることもできる。セメント粉末の総体積は好適には、ディスペンスプランジャと、カートリッジの前部のディスペンス開口内のシールとによって区切られた、カートリッジの内部の容積と一致する。
【0066】
さらに、モノマー液体を導く添加物をセメント粉末中に分散させることも可能であり、好適には、セメント粉末にこの添加物がコーティングされており、またはセメント粉末と添加物とが混合されている。
【0067】
添加物として、生体適合性のセルロース、たとえば、モノマー液体に対して十分な吸引性を示す生体適合性のセルロースを使用することができる。かかる添加物は、セメント粉末中に粒子の形態で分散することができる。
【0068】
これによって、膨張するセメント粉末がモノマー液体のさらなる拡散を阻止する前に、モノマー液体がそれ自体でセメント粉末中に迅速に分散して完全に混合することができる。これによって、セメント粉末中により長距離にわたってモノマー液体を導くことも可能となり、これによって均質な骨セメントペーストを製造することもできる。
【0069】
また、疎水性の添加物をセメント粉末中に分散させることもでき、この疎水性の添加物は、好適には、モノマー液体がセメント粉末中にさらに分散するのを阻止する、骨セメントの事前の重合を生じることなく、モノマー液体をセメント粉末の全部に分散できるようにするためのものである。
【0070】
これにより、骨セメントに含まれるセメント粉末の重合がモノマー液体によって生じることによりモノマー液体のさらなる分散が阻止される前に、モノマー液体をセメント粉末中に迅速に分散させることができる。これは、本発明の構成を、収容部と共に成形された1つのカートリッジで実現できる唯一の手段、すなわち、モノマー液体を片側からセメント粉末中に押し込んで、なおかつ、モノマー液体がセメント粉末中にさらに分散するのを重合が阻止する前にモノマー液体がそれ自体でセメント粉末の全部に分散することができる唯一の手段である。
【0071】
添加物は好適には粒子状または繊維状である。好適には添加物は、少なくとも1つのOH基を含む化学物質を有する。添加物は好適には、添加物1gあたり少なくとも0.6gのメチルメタクリレートの吸引性を有する。
【0072】
本発明では、セメント粉末は少なくとも、100μm未満のふるい分級の粒子状のポリメチルメタクリレートまたはポリメチルメタクリレートコポリマーと、開始剤と、メチルメタクリレートに不溶である粒子状または繊維状の少なくとも1つの添加物とを含み、添加物は、常温で添加物1gあたり0.6g以上のメチルメタクリレートの吸引性を有するものである。
【0073】
かかるセメント粉末は特に、モノマー液体をセメント粉末中に分散させるために非常に適しているので、モノマー液体の片側の押し込みをカートリッジの内部の狭い側でも行うことができるように、装置を構成することができる。驚くべきことに、上述のセメント粉末をモノマー液体に単に接触させるだけで、手動でまたは技術的装置を用いてセメント粉末を混合する必要なくそれ自体でラジカル重合により硬化する、非付着性の塑性変形可能な骨セメントペーストを製造できることが発見された。メチルメタクリレートに不溶である粒子状または繊維状の添加物であって、常温で添加物1gあたり0.6g超のメチルメタクリレートの吸引性を有する添加物を、低粘性の骨セメントのセメント粉末に添加することにより、モノマー液体を少なくとも5cmの距離にわたって押し込むことができる改良されたセメント粉末が、セメント粉末として生成されることが観察された。驚くべきことに、かかる添加物は、モノマー液体によるセメント粉末の濡れも改善する。添加物は「ウィック作用」を有し、0.1重量%からの非常に少量でもセメント粉末内部にモノマー液体を導く。さらに、添加物は、セメント粉末中のポリマー粒子が付着し合うのを減速させ、その結果、阻止するゲル層の形成が減速し、セメント粉末中へのモノマー液体の浸透が促進される。このモノマー液体を、セメント粉末中に押し込むこと、または引き込むこともできる。
【0074】
好適には、添加物はその表面に、共有結合したヒドロキシル基を有することができる。本発明では、添加物は好適には、微結晶セルロース、オキシセルロース、でんぷん、二酸化チタンおよび二酸化シリコンを含む群から選択することができ、発熱性の二酸化シリコンが特に好適である。添加物は、100μm未満のふるい分級、好適には50μm未満のふるい分級、最も好適には10μm未満のふるい分級の粒径を有することができる。また好適には、セメント粉末中の添加物は、セメント粉末の総重量に対して0.1〜2.5重量%の量で含まれることもできる。さらに、ポリマー粉末は開始剤として過酸化ジベンゾイルを含むこともできる。
【0075】
モノマー液体は少なくとも、メチルメタクリレートと活性剤とを含むことができる。さらにモノマー液体は、芳香族アミンの群に属する少なくとも1つの活性剤を含むこともできる。さらにモノマー液体は、キノンまたは立体障害フェノールの群に属する少なくとも1つのラジカル安定剤を含むこともできる。
【0076】
有利なのは、添加物がその表面に、共有結合したヒドロキシル基を有することである。特に有利なのは、特にSi‐OH基およびアルコール類のOH基である。添加物は、その表面上に配置されたOH基のおかげで高い表面エネルギーを有し、これは、添加物をメチルメタクリレートによって良好に濡らすことができることを意味する。発熱性のケイ酸エアロジル(Aerosil(登録商標))380およびエアロジル(Aerosil(登録商標))300が特に適している。さらに、ゾルゲル法によって生成された二酸化シリコンを添加物として使用することもできる。
【0077】
本発明ではまた、ディスペンスプランジャの前部に中空シリンダが配置されており、この中空シリンダは、ディスペンスプランジャがカートリッジの内部の前部に向かって押されたときに、ディスペンスプランジャの各部分がカートリッジの内部の前部から離隔してカートリッジの内部にデッドボリュームが残るように、カートリッジの前部に向かう方向のディスペンスプランジャのさらなる動きを阻止する。
【0078】
このことによって、骨セメントペーストのあまり良好に混合されていない一部であって、ディスペンスプランジャの付近に位置する一部が、押出プロセスの終了時に押出されるのを防止することができる。さらに、中空シリンダに沿ってモノマー液体をカートリッジの内部のセメント粉末中のより奥深くに導くこともできる。
【0079】
ここで、デッドボリュームは少なくとも1cm
3の体積、好適には少なくとも3cm
3の体積を有することができる。
【0080】
本発明の一発展形態では、モノマー液体および気体に対しては透過性であるがセメント粉末に対しては不透過性である少なくとも1つの連通部であって、ディスペンスプランジャの前部とディスペンスプランジャの後部とを連通する連通部を、ディスペンスプランジャに設けることができ、またはモノマー液体および気体に対しては透過性であるがセメント粉末に対しては不透過性である連通部を介して収容部の内部チャンバとカートリッジの内部とを互いに連通することができる。これにより、たとえば酸化エチレン等の滅菌ガスを用いてカートリッジの内部および収容部の内部を滅菌処理することができる。さらに、アンプルが開いた後にセメント粉末が連通部内に浸透して、ここで早期にモノマー液体と反応することにより、膨張する骨セメントペーストによって連通部が封鎖されて、モノマー液体がセメント粉末中にさらに通過するのが妨害または阻止されるのを、防止することもできる。
【0081】
本発明ではさらに、収容部の内部を外部と連通する少なくとも1つの通気口を収容部の壁に配置することもできる。これにより、たとえば酸化エチレン等の滅菌ガスを用いて装置の内部もリンジングし、またはフラッシングすることもできる。
【0082】
好適には、ポンピングプランジャが収容部の前部に向かって動くことによって、収容部内に配置されたアンプルがポンピングプランジャの動きによって開く前に少なくとも1つの通気口が封鎖されるように、少なくとも1つの通気口をポンピングプランジャの付近に配置することができる。このようにして、モノマー液体が収容部内から少なくとも1つの通気口を通って外部へ流出するのを防止することができる。
【0083】
たとえばカートリッジガン等の押出装置の使用を容易にするため、押出装置を固定する手段を装置の後部に配置することもでき、押出装置は、ポンピングプランジャおよびディスペンスプランジャをカートリッジの前部に向かって押すために使用することができる。
【0084】
また、カートリッジの前部にディスペンスチューブを配置することもでき、このディスペンスチューブを介して骨セメントペーストを押し出すことができる。このようにして、骨セメントペーストがより塗布しやすくなる。
【0085】
さらに、好適には、アンプル内のモノマー液体の体積を少なくとも、カートリッジ内のセメント粉末粒子間の空気充填されたスペースの体積と等しい大きさとすることができ、好適には、少なくとも、カートリッジの内部と収容部の内部との間の液体収容管の容積と、スペーサの長さに相当する離隔距離における、ポンピングプランジャとディスペンスプランジャとの間の容積とを加算したものから、アンプルの材料の体積を減算し、さらに、カートリッジ内のセメント粉末粒子間の空気充填されたスペースの容積を加算したものと等しい大きさとすることができる。このことによって、骨セメントペーストを形成するために十分なモノマー液体を使用できることが保証される。
【0086】
本発明の基礎となる課題はまた、セメント粉末とモノマー液体とから骨セメントペーストを製造する、骨セメントペーストの製造方法、特にペースト状のポリメチルメタクリレート骨セメントペーストの製造方法であって、
A)モノマー液体と長手方向に延在するスペーサとを備えたアンプルを、収容部内に、長手方向に動くことができるポンピングプランジャと、ディスペンスプランジャであってポンピングプランジャが長手方向にディスペンスプランジャに向かって押されるディスペンスプランジャとの間に配置するステップと、
B)ディスペンスプランジャに向かうポンピングプランジャの動きによって、アンプルのアンプルヘッドを破壊して開け、または切り離され、開いたアンプルの内部でスペーサの自由端をアンプル本体部に向かって移動することにより、開いたアンプルのアンプル本体部の壁の少なくとも一部が移動中にスペーサと収容部の内壁との間に位置するようにするステップと、
C)ディスペンスプランジャに向かうポンピングプランジャの移動によって、開いたアンプルを圧縮してさらに破壊することにより、収容部内からモノマー液体をセメント粉末中に搾出し、モノマー液体はセメント粉末と混合して骨セメントペーストを形成するステップと、
D)スペーサをポンピングプランジャとディスペンスプランジャとの間に挟み込むことによって、スペーサはディスペンスプランジャとポンピングプランジャとの間の離隔距離のさらなる縮小を阻止し、モノマー液体が収容部から骨セメントペースト中へさらに圧搾されるのを阻止するステップと、
を含むことを特徴とする製造方法によっても解決される。
【0087】
これによって、本発明の装置を使用して本方法を実施することができる。
【0088】
よって、本方法は本発明の装置の利点を有する。
【0089】
さらに、ステップC)において、セメント粉末に対しては不透過性であるが気体およびモノマー液体に対しては透過性である、ディスペンスプランジャの少なくとも1つの連通部を介して、セメント粉末を収容するカートリッジ内にモノマー液体を押し込むこともできる。
【0090】
このことによって、セメント粉末が事前に連通部内に浸透し、ここでモノマー液体と反応して連通部を封鎖することにより、さらにモノマー液体をセメント粉末中に押し込むことができなくなることが防止される。
【0091】
さらに、ステップA)の前に収容部に固定された押出装置のロッドの軸方向の動きによって、ステップB)およびC)のポンピングプランジャの動きを駆動することもできる。
【0092】
このようにして、たとえばカートリッジガン等の従来の押出装置を用いて、本方法またはポンピングプランジャの動きを駆動することができる。
【0093】
また、刃部を有する少なくとも1つのカット要素がディスペンスプランジャの後部またはポンピングプランジャの前部に配置されていることも可能であり、その際には、ステップC)においてアンプル本体部の壁を刃部によって切り、または破壊し、スペーサの自由端から少なくとも1つのカット要素まで離隔距離が設けられており、好適には、長手方向に少なくとも10mmの離隔距離が設けられている。
【0094】
これは、可能な限りアンプルの破片がスペーサの自由端とディスペンスプランジャまたはポンピングプランジャとの間を通過できなくなることを意味する。このことによって、ステップD)におけるポンピングプランジャとディスペンスプランジャとの間の離隔距離を非常に高精度で設定することができ、これによって、セメント粉末中に導入されるモノマー液体の量を非常に高精度で既定することができることを、保証することができる。これは、骨セメントペーストのちょう度を所望のちょう度に非常に高精度で調整することができることを意味する。
【0095】
最後に、セメント粉末はカートリッジの内部チャンバ内に配置されており、ディスペンスプランジャは、長手方向に可動となるように、カートリッジの内部に配置されており、ステップC)においてモノマー液体をカートリッジの内部に押し込み、ステップD)の後、ステップE)においてディスペンスプランジャをポンピングプランジャによって長手方向にカートリッジの内部に押し込むことにより、骨セメントペーストをカートリッジの内部から押し出すことも提案する。
【0096】
よって、ポンピングプランジャの直線運動によってもディスペンスプランジャを駆動することができ、同一の運動によって骨セメントペーストをディスペンスすることができるので、モノマー液体をセメント粉末中に押し込むためにも使用される同一の直線駆動装置を用いて骨セメントペーストをディスペンスすることができる。
【0097】
ここで、ステップE)において、骨セメントペーストに作用する圧力によって、カートリッジの前部のディスペンス開口内のシール、とりわけ有孔フィルタを外側へ動かし、または押すこともでき、好適にはその後、シールをディスペンス開口から取り外し、特に好適には、その後にカートリッジの前部に塗布チューブを固定する。
【0098】
本発明は、収容部の内壁から離隔距離を有するスペーサによって、収容部からセメント粉末中へ移送されるモノマー液体の量を非常に正確に設定でき、かつ良好に再現できる精度で、ポンピングプランジャとディスペンスプランジャとの間の最小離隔距離を設定することに成功するとの驚くべき発見に基づいている。開いたアンプルが潰されるとき、スペーサの自由端がこのアンプルのアンプル本体部の内部で動くことができるので、スペーサの自由端と、ポンピングプランジャの自由端側の前部またはディスペンスプランジャの自由端側の後部との間に、アンプルの断片(すなわちアンプルの破片)が挟まるおそれを回避するように(または少なくとも低減できるように)、アンプル本体部内を通る破壊する前部または切断前部は、スペーサの自由端から離隔距離を有することができる。よって、スペーサがポンピングプランジャとディスペンスプランジャとの間に挟み込まれるような距離にディスペンスプランジャに向かってポンピングプランジャを押したときの、ディスペンスプランジャとポンピングプランジャとの間の離隔距離は、スペーサの長手方向の長さによって決定される。その際には、スペーサの自由端とポンピングプランジャの前部またはディスペンスプランジャの後部との間に未だ存在するのはアンプルの底部のみとなり、好適には、この底部も粉砕する。したがって、圧縮された状態におけるポンピングプランジャとディスペンスプランジャとの間の容積は、非常に高精度で既知となる。スペーサの体積は既知であり、また、アンプル壁の体積またはアンプルの破片の体積は既知であるから、アンプルからのモノマー液体であって体積内に残留するモノマー液体の量を、非常に高精度で予測することができ、よって、セメント粉末に押し込まれたモノマー液体の量も、非常に高精度で予測することができる。アンプルに対する輸送保護具として収容部内に設けることができるホルダの体積も既知である。よって、本発明の装置および本発明の方法を使用して、規定量のモノマー液体をセメント粉末に押し込むことにより、骨セメントを所望のちょう度で再現可能に製造することができる。
【0099】
特に有利なのは、アンプル本体部を規定の場所で機械的に破壊して開け、または切開する、刃部を有する少なくとも1つのカット要素が設けられていることであり、このアンプル本体部は、スペーサの自由端から可能な限り除去される。断片または破片が生じるこの破壊前部またはカット前部は、スペーサの自由端から可能な限り除去される。
【0100】
本発明はまた、ポンピングプランジャがディスペンスプランジャに向かって動いた場合、まずアンプルヘッドがアンプルのシリンダ形のアンプル本体部(ガラス壁)に押し込まれること、またはまず少なくとも1つのスペーサがアンプル本体部に押し込まれることにも基づいている。それと同時に、少なくとも1つのスペーサは、アンプル本体部を少なくとも1つのスペーサによって破壊することなく、アンプルのシリンダ形のアンプル本体部の内部に侵入する。ポンピングプランジャがディスペンスプランジャに向かってさらに動くと、スペーサと、該当する場合にはアンプルヘッドとが、アンプル本体部の空洞内に押し込まれ、なおかつ、ポンピングプランジャの前部、または好適には、ポンピングプランジャの前部の少なくとも1つのカット要素が、アンプル本体部の壁(ガラスアンプルのガラス壁)に当たって、壁に作用する。これに代えて、ディスペンスプランジャの後部、または好適には、ディスペンスプランジャの後部の少なくとも1つのカット要素が、アンプル本体部の壁に作用することもできる。ポンピングプランジャがディスペンスプランジャに向かってさらに動くと、壁は破壊し始める。これは、断片(ガラス破片)の形成はスペーサの前進運動の背部でなされることを意味する。その際には、スペーサはディスペンスプランジャ内またはポンピングプランジャ内に侵入し、ポンピングプランジャがディスペンスプランジャに向かってさらに動くのを阻止する。このプロセスは高精度でのみ行うことができる。というのも、ガラス破片の形成はスペーサの前進する自由端の背部でなされるからである。よって、破片がスペーサとディスペンスプランジャまたはポンピングプランジャとの間で移動することが不可能となる。
【0101】
本発明では、スペーサが複数のロッドによって実現されている場合、好適には、スペーサはプランジャ内に侵入する直前にアンプルの底部において外側に向かって、カートリッジ壁に向かって滑脱する。これは具体的には、スペーサがポンピングプランジャをさらに前進させた場合、ディスペンスプランジャとポンピングプランジャとの間の離隔距離が変化することなく、ディスペンスプランジャもポンピングプランジャと共に同時にカートリッジヘッドに向かって動くことを意味する。これは、スペーサの軸方向の(長手方向の長さ)が、ディスペンスプランジャとポンピングプランジャとの間の離隔距離を一義的に定めることを意味する。このことの前提条件は、スペーサが機械的に安定しており、特にねじれおよび屈曲に対して耐性を有するように構成されていることである。しかし、スペーサが弾性変形できるようにすることができる。
【0102】
セメント粉末がカートリッジの内部に設けられている本発明の好適な装置の決定的な利点は、閉じられたセメンティングシステム内に骨セメントペーストの2つの出発成分が貯蔵されていること、およびこれらの出発成分の混合がこの閉じられた装置内で行われることである。これは、ユーザによって装置に充填する必要が無いことを意味する。よって、これは完全なプリパッケージングセメンティングシステムである。医療関係ユーザは、骨セメントの個々の出発成分に全く接触しない。よって、不快なにおいは最小限のみとなる。
【0103】
本装置の格別な利点は、手動で駆動される押出装置のロッドを単に前進させるだけで、モノマー液体がセメント粉末中に押し込まれることでもある。このことにより、セメント粉末の粒子間に存在する空気が、モノマー液体と置き換わる。混合パドルを有する混合ロッドを用いて手動で混合する必要なく、均質な骨セメントペーストが製造される。これは、過誤が生じやすい手動の混合が不要になることを意味する。装置の操作は可能な限り簡素になる。これは即時使用可能なシステムである。
【0104】
本発明の装置および方法の利点は、最初に、手動で操作される自明の押出装置のロッドの直線前進の力の連続的な作用によって、モノマー液体容器を開け、その後、モノマー液体容器を圧縮することによって、モノマー液体容器からモノマー液体が放出して、有利にはプレス成形されたセメント粉末中に押し込まれ、押し込まれたモノマー液体によって、セメント粉末粒子間に存在する空気が変位し、モノマー液体がセメント粉末の粒子を濡らした後、骨セメントペーストが形成されるように、手動で操作される自明の押出装置のロッドの直線前進を利用できることにも基づく。このことの前提条件は、セメント粉末がモノマー液体によって非常に良好に濡れてキャピラリ作用を利用してモノマー液体を引き込むことができるように調整されたセメント粉末を使用することである。
【0105】
本装置は、使い捨て可能な衛生製品として使用することができる。というのも、本装置の大部分をプラスチックから製造できるからであり、また、酸化エチレンを用いて、内部およびセメント粉末を含む全ての部分を滅菌処理できるからである。
【0106】
ポリメチルメタクリレート骨セメントを貯蔵、混合およびディスペンスするための本発明の一例の装置は、たとえば、
中空シリンダの形態のカートリッジと、軸方向に可動のポンピングプランジャと、気体または液体に対して透過性であるが粉末粒子に対して不透過性である、軸方向に可動のディスペンスプランジャと、モノマー液体を収容するガラスのアンプルを内部に配置した第1の空洞部と、セメント粉末を内部に配置した第2の空洞部であって、気体に対して透過性であるが粉末粒子に対して不透過性である軸方向に可動の封止栓部材も備えている第2の空洞部と、楔形の少なくとも1つのカット要素であって、カット要素は、ガラスのアンプルのガラス壁がカートリッジの長手軸を基準として同一の半径に位置するように、径方向に配置されているカット要素と、ディスペンスプランジャとポンピングプランジャとの間にカートリッジの長手軸に対して平行に延在する少なくとも1つのスペーサとを備えることができ、スペーサはガラスのアンプルのアンプルヘッドを包囲し、スペーサは、ガラスのアンプルのガラス壁の内部の半径よりも小さい半径に配置されており、ポンピングプランジャと、気体および液体に対して透過性でありかつ粉末粒子に対して不透過性であるディスペンスプランジャと、カートリッジの内壁とによって形成される、第1の空洞部の容積が、破れたガラスのアンプルのガラス破片の体積以上になるように、スペーサはディスペンスプランジャとポンピングプランジャとの間の軸方向の(長手方向の)離隔距離を有する。
【0107】
スペーサとカット要素とは、共にディスペンスプランジャに配置するか、または代替的に、双方ともポンピングプランジャに配置することができる。
【0108】
さらに、少なくとも1つのスペーサと、好適には少なくとも1つのカット要素も、リング上またはリング形に配置して、これをポンピングプランジャの前部またはディスペンスプランジャの背部に配置することもできる。
【0109】
スペーサは複数のロッドを有することができ、これら複数のロッドは、ディスペンスプランジャの後部またはポンピングプランジャの前部に固定され、長手方向に収容部内へ延在する。ここでさらに、ディスペンスプランジャの後部またはポンピングプランジャの前部から離隔している少なくとも1つのリングを介して、複数のロッドを互いに結合することもできる。このようにして複数のロッドは安定化され、また互いを安定化する。よって、ロッドは少なくとも1つのリングを介して互いを安定化するので、通常の(強化処理されていない)合成材料をロッドに使用することができる。ロッドと少なくとも1つのリングとは、好適には、合成材料から単一片で製造される。
【0110】
本発明では、スペーサと少なくとも1つのカット要素とをポンピングプランジャに配置することができ、アンプルヘッドを有するアンプルがポンピングプランジャの方を向いている場合には、ポンピングプランジャのディスペンスプランジャ側の前部に配置することができる。
【0111】
本発明ではさらに、スペーサと少なくとも1つのカット要素とを、気体および液体に対して透過性かつ粉末粒子に対して不透過性であるディスペンスプランジャに配置することもでき、アンプルヘッドを有するアンプルがディスペンスプランジャの方を向いている場合には、ディスペンスプランジャのポンピングプランジャ側の後部に配置することもできる。
【0112】
スペーサは好適には、丸形、三角形、矩形またはT字形の3つまたは4つのロッドによって構成されている。ロッドは、中空体または中実体の形態を有することができる。ロッドは、合成材料、ポリアミド、ポリケトン、ポリエーテルスルホンおよびポリイミド、ならびに好適にはガラス繊維強化プラスチックから成ることができる。さらに、ロッドは鋼材、チタンおよびチタン合金から成ることもできる。
【0113】
本発明では好適には、スペーサを中空シリンダまたは中空シリンダの一部によって構成することもできる。
【0114】
好適には、スペーサの軸方向の高さはカット要素の少なくとも5倍である。これによって、ガラス破片の形成が常に、スペーサの自由端の背部でなされることが保証される。
【0115】
少なくとも1つのカット要素のうち全てのカット要素が、ポンピングプランジャの前部またはディスペンスプランジャの後部から最大2mm延在すること、好適には最大1mm延在することが好適である。
【0116】
以下、16の概略図を参照して、本発明の他の例示的な実施形態を説明するが、これによって本発明は限定されない。