特許第6619078号(P6619078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619078
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】ドライパウダー吸入器
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20191202BHJP
【FI】
   A61M15/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-502682(P2018-502682)
(86)(22)【出願日】2016年7月19日
(65)【公表番号】特表2018-520800(P2018-520800A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】EP2016067208
(87)【国際公開番号】WO2017013130
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2018年2月19日
(31)【優先権主張番号】15177556.6
(32)【優先日】2015年7月20日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511148433
【氏名又は名称】ヴェクトュラ・デリヴァリー・ディヴァイスィズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・メリニオティス
(72)【発明者】
【氏名】リアム・マックギネス
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−532192(JP,A)
【文献】 特表2010−512212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00−15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入器(10)であって、
ハウジング(14)と、
それを経てユーザーによって一回分の薬剤が吸入されるマウスピース(18)と、
複数のブリスターを有するブリスターストリップであって、各ブリスターは、少なくとも最初に、ユーザーによる吸入のための一回分の薬剤を収容する、ブリスターストリップ(12)と、
前記ブリスターストリップ(12)のターゲットブリスターからの薬剤の取り出しを容易にするためのブリスター開封アセンブリ(20)と、
前記ターゲットブリスターとなるように各ブリスターを前記ブリスター開封アセンブリと整列状態となるように順次移動させるよう動作可能なアクチュエータ機構(22,24)と
を具備し、
前記ハウジング(14)は、第1のコイル(34)として前記ブリスターストリップの未開封部分を収容するための第1のブリスター区画(28)と、前記ブリスターストリップの開封済み部分を収容するとともにそれを第2のコイル(36)へと巻回するための第2のブリスター区画(30)と、前記第1のブリスター区画と前記第2のブリスター区画とを分離させる可動隔壁(32)と、を具備し、
前記可動隔壁(32)は前記吸入器の連続的な作動中に漸進的に移動させられ、これによって前記第1のブリスター区画(28)の容積を漸進的に減少させるとともに前記第2のブリスター区画(30)の容積を漸進的に増大させ、
前記吸入器は、さらに、
前記第1のコイル(34)の少なくとも一部を支持するために前記ハウジング内で前記第1のブリスター区画(28)内に配置されるかあるいはその一部を形成する第1の弧状支持面(38)であって、前記第1のコイルの直径が最大であるときの前記吸入器の耐用期間におけるある段階で、前記第1の弧状支持面(38)の半径は前記第1のコイル(34)の半径と一致する、第1の弧状支持面(38)と、
前記第2のコイル(36)の少なくとも一部を支持するために前記ハウジング内で、前記第2のブリスター区画(30)内に配置されるかあるいはその一部を形成する第2の弧状支持面(40)であって、前記第1のコイル(34)の直径が略最大であるときの前記吸入器の耐用期間におけるある段階で、前記第2の弧状支持面(40)の半径は前記第2のコイル(36)の半径と一致し、前記第2のコイル(36)は、前記第2の弧状支持面(40)と前記可動隔壁(32)との中間に配置される、第2の弧状支持面(40)と、
使用済みブリスターストリップが前記第2のブリスター区画(30)に入るとき、前記使用済みブリスターストリップの方向を制御するためのブリスターストリップ案内リブ(60)であって、前記使用済みブリスターストリップは、前記吸入器の連続的な作動の間、前記案内リブと前記ハウジング(14)の内面との間を通過し、前記ブリスターストリップ(12)は高さaを有しており、かつ、前記案内リブは、前記ハウジングの内面から距離bだけ離間させられている、ブリスターストリップ案内リブ(60)と、
を具備し、
前記距離bは前記高さa未満であることを特徴とする吸入器。
【請求項2】
前記第1のコイル(34)の少なくとも一部を支持するために前記ハウジング内で、前記第1のブリスター区画(28)内に配置されるかあるいはその一部を形成する第3の弧状支持面(42)をさらに具備し、
前記第1のコイル(34)および前記第2のコイル(36)の合計直径が最大であるときの前記吸入器の耐用期間におけるある段階で、前記第3の弧状支持面(42)の半径は前記第1のコイル(34)の半径と一致する、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記第1、第2および第3の弧状支持面(38,40,42)の全ては、前記ハウジング(14)の内面から延在する、請求項2に記載の吸入器。
【請求項4】
前記第1、第2および第3の弧状支持面(38,40,42)の全ては、前記ハウジング(14)内に配置された内壁から延在する、請求項に記載の吸入器。
【請求項5】
前記第1の弧状支持面(38)および/または第3の弧状支持面(42)は、前記第1のコイルの半径が最大であるとき、少なくとも30度の前記第1のコイル(34)の弧に等しい長さを有する、請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の吸入器。
【請求項6】
前記第2の弧状支持面(40)は、前記第1のコイルの半径が略最大であるとき、少なくとも30度の前記第2のコイル(36)の弧に等しい長さを有する、請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載の吸入器。
【請求項7】
前記ハウジング(14)に対する前記第1、第2および第3の弧状支持面(38,40,42)の全ての位置は、それらが不動であるように固定される、請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載の吸入器。
【請求項8】
前記第1のコイル(34)は、前記第3の弧状支持面(42)と前記可動隔壁(32)との中間に配置される、請求項2ないし請求項7のいずれか1項に記載の吸入器。
【請求項9】
前記ブリスターが開封された後に、前記ブリスターを少なくとも部分的に押し潰すためのブリスター圧潰部材をさらに備える、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末形態の医薬品の経口または経鼻送達のための吸入デバイスに関する。より具体的には、本発明は、粉末状薬剤がブリスターストリップ内に収容されるドライパウダー吸入器に関する。本発明はまた、それぞれが穿孔可能な蓋を有すると共に本発明によるデバイスのユーザーによる吸入のための薬剤の投与量を含むブリスターのストリップを収容する吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
吸入デバイスを用いた薬剤の経口または経鼻送達は薬物投与の特に魅力的な方法である。なぜなら、これらのデバイスは、患者が目立たないように公共の場で使用するのが比較的容易であるからである。気道の局所疾患およびその他の呼吸器疾患を治療するための薬剤を送達するだけでなく、それらはまた最近では、肺を介して血流に薬剤を送達するために使用され、それによって皮下注射の必要性が回避される。
【0003】
ドライパウダー製剤は、通常は、正確かつ一貫して測定された一回分のパウダーをそれぞれ含むカプセルまたはブリスターの形態で、個々の用量に予め包装されることが一般的である。ブリスターは、一般に、延性箔ラミネートまたはプラスチック材料から冷間成形され、製造中およびブリスター内に用量薬物が導入された後、ブリスターの周囲に永久的にまたは剥離可能に固着される蓋を含む。
【0004】
薬物がそれにさらされた場合に吸入器の送達特性に有害な影響を及ぼす可能性がある光およびUV線から遮蔽されることに加えて、薬物は水の浸入および酸素などのガスの浸入から保護されるので、箔ブリスターはカプセルよりも好ましい。したがって、ブリスターは個々の用量薬物に対して優れた環境保護を提供する。
【0005】
それぞれが、予め計量されかつ個々に包装された送達されるべき投与量の薬物を収容する複数のブリスターを含むコイル状のブリスターストリップを受け入れる吸入デバイスは周知である。デバイスを作動させることによって、ある機構が、例えばそれを穿孔するかあるいは蓋を剥がすことによって、ブリスターを破るかまたは破断させ、これによって、患者が吸入するときブリスターを通って空気が引き込まれるが、これは、続いてデバイスを経てブリスターから、そして患者の気道を通って肺の中に運ばれる用量薬物を引き込む。ブリスターから用量薬物を運ぶために、加圧された空気またはガスまたはその他の推進剤を使用することもできる。代替的に、ブリスターを穿孔または開封する機構が、そこから用量薬剤を続いて吸入することができるレセプタクル内へと、ブリスターから用量薬剤を押し出すかまたは放出してもよい。
【0006】
吸入器は、ブリスターが使用されるたびにブリスターを開封しかつ/またはデバイス内にブリスターを挿入する必要なしに、一定期間にわたってそれを繰り返し使用することができるように、多数の用量薬剤を保持することができることが有利である。したがって、多くの従来のデバイスは、個々の用量の薬剤をそれぞれ収容する多数のブリスターを貯蔵するための手段を含む。用量薬剤が吸入されるとき、割り出し機構は、先に空になったブリスターを開封機構から離れるように移動させ、これによって新しいブリスター、ターゲットブリスターが、その内容物の吸入のために開封する準備ができた位置へと移動させられる。このタイプの吸入器は、特許文献1として公開された本願出願人自身の国際特許出願から知られている。
【0007】
特許文献1から知られているデバイスは、完全に一体化されたデバイス、すなわち使用済みブリスターがそのハウジング内に保持され、ユーザーがブリスターストリップと直接接触する必要がないデバイスを提供するように既に改変されている。
【0008】
現在特許文献2として公開されている本願出願人自身の先の出願から知られている一つの変更された実施形態では、その中にブリスターストリップの使用済み部分が案内されるデバイスのハウジング内に搭載されたフレキシブルでかつ弾力性のある螺旋要素が提供され、これによってストリップが次第に使い尽くされるにつれて、ますます多くのストリップがそのコイル間でその中に供給され押し込まれるので、螺旋は膨張する。
【0009】
本発明と同様に、特許文献2のデバイスは、ハウジングの内部を使用済みおよび未使用のブリスター区画に分離するための隔壁を有する。隔壁は剛体であり、かつ、使用されたブリスターの数が増加しかつ未使用ブリスターの数が減少するにつれて未使用ブリスター区画および使用済みブリスター区画のサイズが互いに変化するようにスライド可能に取り付けられる。可動壁はまた、特許文献3(Valois S.A.S.)からも知られている。
【0010】
特許文献2はまた、使用済みブリスターが、ブリスターストリップ駆動機構または割り出しホイールと、デバイスのケーシングの内面との間で圧潰される実施形態を説明している(これはまた本発明の吸入器の特徴でもある)。圧潰が行われるとき、すなわち使用済みストリップがブリスターストリップ駆動部材の周りを通過するとき、それが使用済みブリスター区画内でコイル状になるのを助けるカールまたは湾曲した形態がストリップに付与される。
【0011】
本発明に係る吸入器の完全な動作は特許文献4に記載されている。割り出し機構は特許文献5に具体的に記載されている。
【0012】
特許文献1、特許文献2、特許文献5および特許文献4の開示は、この参照により本明細書中に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2005/037353号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2009/007352号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0288278号明細書
【特許文献4】国際公開第2012/069854号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2009/092652号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、デバイスのコンパクトさを高めるために内部構造を最適化しながら、デバイスのハウジング内に使用済みブリスターストリップを保持する吸入デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様によれば、吸入器であって、
ハウジングと、
マウスピースと、
複数のブリスターを有するブリスターストリップであって、各ブリスターは、少なくとも最初に、マウスピースを介したユーザーによる吸入のための一回分の薬剤を収容する、ブリスターストリップと、
上記ブリスターストリップのターゲットブリスターからの薬剤の取り出しを容易にするためのブリスター開封アセンブリと、
上記ターゲットブリスターとなるように各ブリスターを上記ブリスター開封アセンブリと整列状態となるように順次移動させるよう動作可能なアクチュエータ機構とを具備し、
上記ハウジングは、第1のコイルとして上記ブリスターストリップの未開封部分を収容するための第1のブリスター区画と、上記ブリスターストリップの開封済み部分を収容するとともにそれを第2のコイルへと巻回するための第2のブリスター区画と、上記第1および第2のブリスター区画を分離させる可動隔壁とを具備し、
上記可動隔壁は上記吸入器の連続的な作動中に漸進的に移動させられ、これによって上記第1のブリスター区画の容積を漸進的に減少させるとともに上記第2のブリスター区画の容積を漸進的に増大させ、
上記吸入器は、上記第1または第2のコイルの少なくとも一部を支持するために上記ハウジング内に弧状支持面をさらに具備する吸入器が提供される。
【0016】
任意選択で、吸入器の耐用期間におけるある段階で、第1のコイルの直径が最大であるとき、弧状支持面の半径は第1のコイルの半径と一致する。
【0017】
任意選択で、吸入器の耐用期間におけるある段階で、第1および第2のコイルの合計直径が最大であるとき、弧状支持面の半径は第1のコイルの半径と一致する。
【0018】
任意選択で、吸入器の耐用期間におけるある段階で、第1のコイルの直径が最大またはそれに近いとき、弧状支持面の半径は第2のコイルの半径と一致する。
【0019】
弧状支持面は、第1のブリスター区画内に配置されてもよく、あるいは第1のブリスター区画の一部を形成してもよい。
【0020】
弧状支持面は、第2のブリスター区画内に配置されてもよく、あるいは第2のブリスター区画の一部を形成してもよい。
【0021】
好ましくは、円弧状支持面はハウジングの内面から延在する。代替的に、弧状支持面は、ハウジング内の内壁から延在してもよい。
【0022】
好ましくは、第1のコイルの直径が最大であるとき、弧状支持面は、少なくとも30度の第1のコイルの弧に等しい長さを有する。
【0023】
好ましくは、ハウジングに対する弧状支持面の位置は、それが不動であるように固定される。
【0024】
第1のコイルは、弧状支持面と可動隔壁との中間に配置されてもよい。代替的に、第2のコイルは、弧状支持面と可動隔壁の中間に配置されてもよい。
【0025】
好ましくは、吸入器は、それが第2のブリスター区画に入るとき、使用済みブリスターストリップの方向を制御するためのブリスターストリップ案内リブをさらに備え、使用済みブリスターストリップは、吸入器の連続的な作動中、案内リブとハウジングの内面との間を通過する。理想的には、ブリスターストリップは高さaを有するとともに案内リブは距離bだけハウジングの内面から離間させられており、距離bは高さa未満である。
【0026】
任意選択で、吸入器は、ブリスターが開封された後に、それを少なくとも部分的に押し潰すためのブリスター圧潰部材をさらに備える。
【0027】
好ましくは、弧状支持面は1mmまでの厚さを有する。
【0028】
好ましくは、弧状支持面は可動隔壁から離間している。
【0029】
好ましくは、弧状支持面は柔軟性を持たないかあるいは剛体である。
【0030】
任意選択で、可動隔壁は、ブリスターストリップの使用済み部分が第2のブリスター区画に入るときに、第2のコイルの形成を容易にするように構成されてもよい。
【0031】
好ましくは、ブリスターストリップは30ないし60個のブリスターを担持する。
【0032】
好ましくは、各ブリスターは、100mgまでの、好ましくは50mgまでの、より好ましくは10ないし25mgまでの用量ペイロードを有する。
【0033】
本発明の第2の態様によれば、吸入器であって、
ハウジングと、
マウスピースと、
複数のブリスターを有するブリスターストリップであって、各ブリスターは、少なくとも最初に、マウスピースを介したユーザーによる吸入のための一回分の薬剤を収容する、ブリスターストリップと、
上記ブリスターストリップのターゲットブリスターからの薬剤の取り出しを容易にするためのブリスター開封アセンブリと、
上記ターゲットブリスターとなるように各ブリスターを上記ブリスター開封アセンブリと整列状態となるように順次移動させるよう動作可能なアクチュエータ機構とを具備し、
上記ハウジングは、第1のコイルとして上記ブリスターストリップの未開封部分を収容するための第1のブリスター区画と、上記ブリスターストリップの開封済み部分を収容するとともにそれを第2のコイルへと巻回するための第2のブリスター区画と、上記第1および第2のブリスター区画を分離させる可動隔壁とを具備し、
上記可動隔壁は上記吸入器の連続的な作動中に漸進的に移動させられ、これによって第1のブリスター区画の容積を漸進的に減少させるとともに上記第2のブリスター区画の容積を漸進的に増大させ、
上記吸入器は、上記第1のコイルの少なくとも一部を支持するために上記ハウジング内に弧状支持面をさらに具備し、
上記吸入器の耐用期間におけるある段階で、上記第1のコイルの直径が最大であるとき、上記弧状支持面の半径は上記第1のコイルの半径と一致することを特徴とする吸入器が提供される。
【0034】
本発明の第3の態様によれば、吸入器であって、
ハウジングと、
マウスピースと、
複数のブリスターを有するブリスターストリップであって、各ブリスターは、少なくとも最初に、マウスピースを介したユーザーによる吸入のための一回分の薬剤を収容する、ブリスターストリップと、
上記ブリスターストリップのターゲットブリスターからの薬剤の取り出しを容易にするためのブリスター開封アセンブリと、
上記ターゲットブリスターとなるように各ブリスターを上記ブリスター開封アセンブリと整列状態となるように順次移動させるよう動作可能なアクチュエータ機構とを具備し、
上記ハウジングは、第1のコイルとして上記ブリスターストリップの未開封部分を収容するための第1のブリスター区画と、上記ブリスターストリップの開封済み部分を収容するとともにそれを第2のコイルへと巻回するための第2のブリスター区画と、上記第1および第2のブリスター区画を分離させる可動隔壁とを具備し、
上記可動隔壁は上記吸入器の連続的な作動中に漸進的に移動させられ、これによって第1のブリスター区画の容積を漸進的に減少させるとともに上記第2のブリスター区画の容積を漸進的に増大させ、
上記吸入器は、上記第1のコイルの少なくとも一部を支持するために上記ハウジング内に弧状支持面をさらに具備し、
上記吸入器の耐用期間におけるある段階で、上記第1および第2のコイルの合計直径が最大であるとき、上記弧状支持面の半径は上記第1のコイルの半径と一致することを特徴とする吸入器が提供される。
【0035】
本発明の第4の態様によれば、吸入器であって、
ハウジングと、
マウスピースと、
複数のブリスターを有するブリスターストリップであって、各ブリスターは、少なくとも最初に、マウスピースを介したユーザーによる吸入のための一回分の薬剤を収容する、ブリスターストリップと、
上記ブリスターストリップのターゲットブリスターからの薬剤の取り出しを容易にするためのブリスター開封アセンブリと、
上記ターゲットブリスターとなるように各ブリスターを上記ブリスター開封アセンブリと整列状態となるように順次移動させるよう動作可能なアクチュエータ機構とを具備し、
上記ハウジングは、第1のコイルとして上記ブリスターストリップの未開封部分を収容するための第1のブリスター区画と、上記ブリスターストリップの開封済み部分を収容するとともにそれを第2のコイルへと巻回するための第2のブリスター区画と、上記第1および第2のブリスター区画を分離させる可動隔壁とを具備し、
上記可動隔壁は上記吸入器の連続的な作動中に漸進的に移動させられ、これによって第1のブリスター区画の容積を漸進的に減少させるとともに上記第2のブリスター区画の容積を漸進的に増大させ、
上記吸入器は、上記第2のコイルの少なくとも一部を支持するために上記ハウジング内に弧状支持面をさらに具備し、
上記吸入器の耐用期間におけるある段階で、上記第1のコイルの直径が最大あるいはそれに近いとき、上記弧状支持面の半径は上記第2のコイルの半径と一致することを特徴とする吸入器が提供される。
【0036】
これは、第2のコイルの直径が最小であるときの吸入器の耐用期間における段階と一致する。
【0037】
本発明の第5の態様によれば、吸入器であって、ハウジングと、上記ハウジングから延在するかあるいは上記ハウジングに対して搭載されるマウスピースと、複数のブリスターを有するブリスターストリップであって、各ブリスターは、少なくとも最初に、上記マウスピースを介したユーザーによる吸入のための一回分の薬剤を収容するブリスターストリップと、上記ブリスターストリップのターゲットブリスターからの薬剤を取り出しを容易にするためのブリスター開封アセンブリと、上記ターゲットブリスターとなるように各ブリスターを上記ブリスター開封アセンブリと整列状態となるように順次移動させるよう動作可能なアクチュエータ機構とを具備し、上記ハウジングは、第1のコイルとして上記ブリスターストリップの未開封部分を収容するための第1のブリスター区画と、上記ブリスターストリップの開封済み部分を収容するとともにそれを第2のコイルへと巻回するための第2のブリスター区画と、上記第1および第2のブリスター区画を分離させる可動隔壁とを具備し、上記可動隔壁は上記吸入器の連続的な作動中に漸進的に移動させられ、これによって第1のブリスター区画の容積を漸進的に減少させるとともに上記第2のブリスター区画の容積を漸進的に増大させ、上記吸入器はさらに、上記第1のコイルの少なくとも一部を支持するための上記第1のブリスター区画内の弧状支持面と、上記第1のコイルのさらなる一部を支持するための上記第1のブリスター区画内の第2の上記弧状支持面と、上記第2のコイルの一部を支持するための上記第2のブリスター区画内の第3の上記弧状支持面とを具備する吸入器が提供される。
【0038】
好ましくは、吸入器は、使用済みブリスターストリップが第2のブリスター区画に入るときにその方向を制御するためのブリスターストリップ案内リブをさらに備え、使用済みブリスターストリップは吸入器の連続作動中に案内リブとハウジングの内面との間を通過する。理想的には、ブリスターストリップは高さaを有し、案内リブは距離bだけハウジングの内面から離間させられ、距離bは高さa未満である。
【0039】
以下、本発明の実施形態を、添付図面の図1ないし図9を参照して、単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明による吸入器の個々のコンポーネントを示す分解斜視図である。
図2a】吸入器の一般的な機能および動作を示すための一連の図である。
図2b】吸入器の一般的な機能および動作を示すための一連の図である。
図2c】吸入器の一般的な機能および動作を示すための一連の図である。
図2d】吸入器の一般的な機能および動作を示すための一連の図である。
図2e】吸入器の一般的な機能および動作を示すための一連の図である。
図3】吸入器の第1のブリスター区画内の未使用ブリスターストリップの特にコイル状部分を示す、吸入器の側方から見た断面図である。
図4】未使用ブリスターストリップのコイル状部分の直径が最大であるときの吸入器の耐用期間のある段階での図3の吸入器の側方から見た断面図であるが、コイル状ブリスターストリップが分かりやすくなるように取り除かれている。
図5】未使用ブリスターストリップのコイル状部分と使用済みブリスターストリップのコイル状部分の合計直径が最大であるときの吸入器の耐用期間のある段階での図3の吸入器の側方から見た断面図であるが、やはりコイル状ブリスターストリップは取り除かれている。
図6】使用済みブリスターストリップのコイル状部分の直径が最大であるときの吸入器の耐用期間のある段階での図3の吸入器の側方から見た断面図であるが、やはりコイル状ブリスターストリップは取り除かれている。
図7】ブリスター圧潰を伴わない、吸入器の耐用期間にわたる未使用および使用済みブリスターストリップのための吸入器内の空間要求を示すグラフである。
図8図8と同様のグラフであるが、吸入器に組み込まれたブリスター圧潰を伴い、吸入器内の空間要求に関するブリスター圧潰の効果を示している。
図9】追加のコイルを形成するために、使用済みブリスターストリップが第2のブリスター区画に入り、それ自体の上に再び巻かれる状態を示す概略拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
添付図面の図1および図2を参照すると、ブリスターストリップ12から粉末状薬剤を分配するためのドライパウダー吸入器10が示されている。吸入器10は、二つのシェル部分14a,14bから形成されるハウジング14と、第1の回転軸線Aを中心に回転するようにハウジング14に対して回動可能に取り付けられたキャップ16と、第2の回転軸線Bを中心として回転するようにハウジング14に対して回動可能に取り付けられたマウスピース18と、ブリスターストリップ12に孔を開けるためにマウスピース18から垂下するブリスター穿孔部材20と、ブリスターストリップ12をブリスター穿孔部材20を越えて前進させるための割り出しシステムと、ブリスターストリップ12の割り出しおよび穿孔の両方を引き起こすように作動可能な操作レバー22とを具備する。
【0042】
キャップ16は、当該キャップ16がマウスピース18を覆って、それを保護する閉位置から完全開位置へ、図2(a)に矢印「R」で示す方向に移動可能であり、この位置では、マウスピース18は、ユーザーがブリスターストリップ12からマウスピース18を介して一回分の薬剤を吸入することを可能にするために露出させられる。
【0043】
キャップ16は、矢印「R」の方向に、その完全開位置へと回動させられる。操作レバー22は、キャップ16がその閉位置から回動させられるとすぐに現れる。次いで、ユーザーは、それが図2(b)に矢印「S」で示す方向に回動するように操作レバー22に圧力を加える。
【0044】
操作レバー22がそのストロークの第1の部分を通って図2(b)に示す位置へと最初に回動する間、ブリスターストリップ12は、未使用ブリスターを移動させてブリスター穿孔部材20と整列するように割り出される。
【0045】
操作レバー22が、図2(b)に示す位置を越えてかつそのストロークの第1の部分を完了した後に、図2(c)の矢印「T」の方向に、そのストロークの第2の部分にわたって回動させられるとき、ブリスターストリップ12は静止したままであるが、マウスピース18はここで回動させられ、これによってブリスター穿孔部材20は、前もって整列させられたブリスターの蓋を穿孔する。
【0046】
操作レバー22が図2(c)に示す位置になると、図2(d)の矢印「U」で示すように、ユーザーはマウスピース18を経て吸入する。
【0047】
吸入後、ユーザーは、キャップ16を反対方向、すなわち図2(e)の「V」で示す方向に回動させる。この動作の間、キャップ16は操作レバー22と係合し、これによって操作レバー22はまた図2(a)に示すようなその初期位置に戻り、ブリスターストリップは操作レバー22のこのリターン動作中に静止したままである。
【0048】
キャップ16は、それが、ブリスターストリップ12の割り出し機能を発揮させることなくまたはマウスピース18から垂下するブリスター穿孔部材20によって整列状態のブリスターの蓋を穿孔することなく自由に開閉できる、という点で「受動的」であることに留意されたい。キャップ16は受動的であるが、キャップ16を閉じる前に操作レバー22が押し下げられた場合には、それは操作レバーを元の位置に戻すリセット機能を発揮する。
【0049】
キャップ16および操作レバー22は、キャップ16がその閉位置にありかつ操作レバー22がその初期位置に戻ったときに、キャップ16がデバイスを操作するためにユーザーによって押圧される操作レバー22の上に重なるように構成される。これは、ユーザーが、キャップ16を開く前に操作レバー22を回動させることによってデバイスを作動させようとすることを防止する。
【0050】
上述したように、吸入器10は、国際公開第2009/092652号パンフレットにおいて既に説明された割り出し機構を有しており、ここではこれ以上の詳細な説明は省略する。
【0051】
割り出し機構は、その周りを使用済みブリスターストリップが移動し、かつ、それがブリスターストリップ12を前方に押しやるブリスターストリップ駆動部材または割り出しホイール24を備える。割り出しホイール24はまた、使用済みブリスターキャビティがその周囲を通過するときにそれを押し潰し、これによってそれらを少なくとも部分的に圧潰するために使用できる。これは、ハブと吸入器10のケーシングまたは壁、またはケーシングに固定されたコンポーネントとの間の距離がブリスターキャビティの最大高さよりも小さくなるように割り出しホイール24の軸またはハブを拡大することによって達成される。ブリスターキャビティが割り出しホイール24のスポーク間に引き込まれると、割り出しホイール24の前方への回転により、キャビティが割り出しホイール24の拡大ハブと吸入器10のケーシングとの間で少なくとも部分的に押し潰されるか挟み込まれる。空のブリスターキャビティを少なくとも部分的に押し潰す利点は、コイル状ストリップがより小さな半径を持つので、デバイスの使用済みブリスター区画内でコイル状に巻かれたときに、より少ない空間しか占有しないということである。さらに、割り出しホイール24の周りに供給される結果として、そしてブリスターキャビティの圧潰の結果として、ストリップに自然な湾曲が付与される。これにより、ブリスターストリップ12の使用済み部分がより容易にコイル状になる。ブリスターキャビティが押し潰されたとき、キャビティは、割り出しホイール24のスポークがストリップに接触する点、すなわちブリスターキャビティがブリスターストリップ12の残部と接触する根部において、窪ませようとすることに対してより弾力性があることもまた明らかである。したがって、ブリスターストリップ12のより確実で正確な駆動は、ブリスターが圧潰されたときに達成される。
【0052】
ハウジング14内で、チャンバー26は、剛体隔壁32によって第1および第2の区画28,30へと分離させられる。ブリスターストリップ12の未使用部分は、第1のブリスター区画28内に第1のコイル34として貯蔵され、そしてブリスターストリップ12の第2の部分は第2のコイル36を形成するように第2のブリスター区画30内に受け入れられる。隔壁32はチャンバー26内にスライド可能に設けられ、これによって、より多くのブリスターが使用されるとき、第2のブリスター区画30内のブリスターの使用済みコイル36の力は隔壁32を押圧し、使用済みブリスターのための空間を拡大すると共に未使用ブリスターが以前占有していた空間を減少させるようにそれを押しやる。
【0053】
本発明が存在するのは、ここである。ハウジング14の内部の構成は、第1および第2のブリスター区画28,30のために必要な空間を最小限に抑えるように最適化され、これによって吸入器10の全体的なサイズが低減される。
【0054】
吸入器10は、当該吸入器10の連続作動中に、第1のコイル34、第2のコイル36または第1および第2のコイル34,36の両方の少なくとも一部を支持するために、ハウジング14内に三つの弧状支持面38,40,42を備える。この実施形態では、三つの別個の弧状支持面38,40,42が設けられているが、弧状支持面38,40,42の一つまたは二つの組み合わせが実施可能に利用できる。構成が最適化されるのは三つの弧状支持面38,40,42の全てが使用されるときである。ただ一つまたは二つの弧状支持面38,40,42によって、ブリスターストリップ12の未使用および使用済み部分のために必要な空間が小さくなるように構成が改良されるが、これは、好ましい最適な構成ではない。
【0055】
図3は、1回または2回の作動が行われた後の、ただし第2のコイル36が第2のブリスター区画30内で形成され始める前の未使用のブリスターストリップ12のコイル34を示す。第1のコイル34の直径は、その最大値よりもわずかに小さい。
【0056】
図4は、未使用のブリスターストリップ12のコイル34を、その最大直径またはその近くにおいて、ただし第2のコイル36を形成するために第2のブリスター区画30内に十分な使用済みブリスターストリップを伴って示している。図4において、第1の弧状支持面38は、第1のコイル34の理論的な最外螺旋を支持するように見える。第1の弧状支持面38は、第1のブリスター区画28の一部を形成する。第1の弧状支持面38は、割り出しホイール24の近傍で、吸入器10の内壁から延びている。この位置において、第1の弧状支持面38は、吸入器10内の実質的に中央の位置で第1のコイル34を支持し、図4に見られるように、可動隔壁32を吸入器10の右側に付勢する。第1の弧状支持面38は、第1のコイル34の直径が最大である場合、少なくとも30度の第1のコイル34の弧に等しい長さを有する。弧状支持面のこの長さは、吸入器10の設計の複雑さを不必要に増大させることなく、第1のコイル34を最初に適所で保持するのに十分な第1のコイル34のためのサポートを提供する。
【0057】
第2の弧状支持面40は第2のコイル36を支持する。第2の弧状支持面40は、第2のブリスター区画30の一部を形成する。第2の弧状支持面40は、割り出しホイール24の出口領域の近傍に配置される。第2の弧状支持面40は、第1のコイル34の直径が最大であるとき、少なくとも30度の第2のコイル36の弧に相当する。
【0058】
したがって、第1および第2のブリスター区画28,30の形態は、第1のコイル34の直径が最大またはそれに近いときの吸入器10の耐用期間における段階に特有である。このとき、第2のコイル36の直径は最小である。この段階で、第1の弧状支持面38の半径は第1のコイル34の半径と一致する。また、第2の弧状支持面40の半径は第2のコイル36の半径と一致する。
【0059】
ここで図5を参照すると、第3の弧状支持面42が吸入器10の内面から内向きに延びている。第3の弧状支持面42は第1のブリスター区画28の一部を形成する。第3の弧状支持面42は、割り出しホイール24の入口領域の近傍に配置される。やはり、第3の弧状支持面42の長さは、第1のコイル34の直径が最大である場合に、少なくとも30度の第1のコイル34の弧に相当する。
【0060】
図5では、第1および第2のブリスター区画28,30の形態は、第1および第2のコイル34,36の組み合わせ直径が最大であるときの吸入器10の耐用期間における段階に特有である。この段階では、第3の弧状支持面42の半径は第1のコイル34の半径と一致する。
【0061】
図6では、ブリスターストリップ12からの用量薬剤の全てまたはほとんど全てが吸入器10から分配されてしまっている。第1および第2のブリスター区画28,30の形態は、第2のコイル36の直径が最大であるときの吸入器10の耐用期間における段階に特有である。これは、第1のコイル34の直径が最小またはそれに近いときと同じ段階と一致する。
【0062】
図7を参照すると、第1のコイルの直径が曲線44で示され、第2のコイルの直径が曲線46で示され、これらの二つの直径の合計、すなわち第1および第2のコイルの合計直径が曲線48で示されている。
【0063】
吸入器10の耐用期間の始めであって用量薬剤がほとんどまたは全く供給されていないとき、そして吸入器の耐用期間の実質的に中間まで、第1および第2のブリスター区画28,28内の空間が、第1および第2のコイル34,36のために続いて必要とされる内部容積を最小限に抑えるように厳しく制御されるかあるいは割り当てられることが非常に重要である。これがなされなければ、第1および第2のコイル34,36の合計直径を示す曲線48が上向きにシフトし、グラフの非常に高い点で始まるであろう。結果として、第1および第2のコイル34,36のために必要な空間は、その組み合わされた直径が最大、すなわち吸入器10の耐用期間のほぼ中間において生じる直径曲線48の合計のピークであるとき、より大きくなるであろう。簡単に言えば、吸入器の有効耐用期間の開始時に、第1および第2のコイルの組み合わされた直径ができるだけ小さいことが不可欠である。
【0064】
吸入器10の耐用期間の終わりにあるいはそれに近づくにつれて、使用済みブリスターストリップが緊密に巻き上げられる必要がほとんどないので、弧状支持面38,40,42の役割はますます重要ではなくなる。実際には、第2のコイル36は、第2のブリスター区画30内で利用可能な空間の全てではないにしても大部分を満たすように単に膨張する。
【0065】
先に説明したように、ブリスター圧潰が吸入器10に組み込まれると、図8に示すように、これは、概ね吸入器10の耐用期間全体にわたって、第1および第2のコイル34,36の合計直径を減少させる。特に、第1および第2のコイル34,36の組み合わされた直径がピークにあるときに第1および第2のコイル34,36のために必要な空間は、ブリスター圧潰が使用されない場合に比べて低減される。
【0066】
ブリスターの圧潰はブリスター穿孔および用量薬剤吸入が生じた後に行われるので、ブリスターの圧潰は第1のコイル34の直径に影響しない。それは、コイル状の使用済みブリスターストリップの直径に影響を及ぼし、より緊密な第2のコイル36を促進する。したがって、第1および第2のコイル34,36の合計直径は、ブリスターの圧潰が生じないときよりも小さい。
【0067】
図7および図8の両方から明らかなように、第1および第2のコイル34,36の合計直径を最小にするためには、吸入器10の耐用期間の初期段階において、可能な限り第1および第2のコイル34,36を拘束することが重要である。これが、今度は、第1および第2のコイル34,36の合計直径がそのピーク(または最大)であるときに必要とされる空間の大きさを最小にする。これは、上述した一つ以上の弧状支持面38,40,42を用いることによって達成される。
【0068】
上述した弧状支持面38,40,42のいずれもが可動隔壁32の一部を形成しない。図4図5および図6から分かるように可動隔壁32は右から左へと吸入器の幅を横切って移動するので、ある期間の間、第1の弧状支持面38は可動隔壁32の近くにある。第2の弧状支持面40は、第2のコイル36によって、可動隔壁32から分離させられている。第3の弧状支持面42は、第1のコイル34によって、可動隔壁32から分離させられている。
【0069】
本発明のこの実施形態では、可動隔壁32は、吸入器10内のチャンバー26を第1および第2のブリスター区画28,30に分割するバッフル52に取り付けられかつそれと共に一体的に形成された細長い足部50を備える。足部50の略中央領域は、それがバッフル52の両側で反対方向に延びるようにバッフル52に取り付けられている。足部50は、ハウジング14の壁に形成されたリセス54内にスライド可能に受け入れられると共に、リセス50の壁との接触が主として足部50の幅広な端部で行われるように、それがバッフル52につながるその中央よりもその端部において幅広である。
【0070】
バッフル52自体は、直線状本体部分56と、この直線状本体部分56の下端から延在する弧状テール部分58とを有する、略「J」字形である。弧状テール部分58は、入ってくる使用済みブリスターストリップが第2の区画30内で第2のコイル36へと緊密に螺旋状になるのを促進するように湾曲している。弧状テール部分58の半径が小さくなるほど、第2のコイル36はますます緊密になる。これの利点は、得られる第2のコイル36が、それ以外の場合に比べて、その最大半径において、より小さくなることである。
【0071】
ここで図9を参照すると、ブリスターストリップ案内リブ60が第2のブリスター区画30内に配置されている。ブリスターストリップ案内リブ60は、使用済みブリスターストリップが第2のブリスター区画30に入るとき、その方向を制御する。ブリスターストリップ案内リブ60とハウジング14との間には、吸入器10の連続的な作動の間に、使用済みブリスターストリップがそれを通過することを可能にするために、ギャップあるいはチャネルが存在する。ギャップのサイズは重要である。ブリスターストリップ12は高さaを有し、かつ、ブリスターストリップ案内リブ60がハウジング14の内面から距離bだけ離間している場合、距離bは高さaより小さくなければならない。
【0072】
ブリスターストリップ案内リブ60の厚さは重要である。非常に薄いと、ブリスターストリップ案内リブ60は製造中に問題を生じる。厚すぎると、使用済みブリスターストリップが緊密に巻かれない。その代わりに、使用済みブリスターストリップは、最終的にコイルになり始める前に、チャンバー26の中心に向かってブリスターストリップ案内リブ60から離れるように動く(丸みを帯びたものとは対照的に)細長いループを形成する。したがって、第2のコイル36の結果として得られる直径は、そうでない場合よりもはるかに大きくなり、これによって、第1および第2のコイル34,36の組み合わされた直径が増大し、結果として、使用済みおよび未使用のブリスターストリップ12のために必要な内部容積が増大する。リブの厚さが最適値にあるとき、使用済みブリスターストリップがコイル状になり始めると、それ自体がコイル状に戻り、入ってくる使用済みブリスターストリップと係合する。したがって、ブリスターストリップ12の自由端部に作用する力によって、入ってくるブリスターストリップに作用して、それを前方に移動させる力が増大する。本発明者は、ブリスターストリップ案内リブ60の最適厚さが1mmまでであることを見出した。
【0073】
必要とされる全体的な内部容積への影響に関して、ブリスターストリップ案内リブ60は、上述した三つの弧状支持面38,40,42よりも影響が大きいことが判明している。この場合、第3の弧状支持面42が最も影響が大きく、次は第1の弧状支持面38であり、最後は第2の弧状支持面40である。
【0074】
ブリスター圧潰が吸入器10に組み込まれない場合、デバイスは三つの弧状支持面38,40,42および/またはブリスターストリップ案内リブ60のうちの一つ以上から依然として恩恵を受けるであろう。しかしながら、使用済みおよび未使用ブリスターストリップ12のために必要な全空間は、コイル状の使用済みおよび未使用ブリスターストリップ12の組み合わされた直径が最大であるときに、より大きくなるであろう。
【0075】
より大きな用量ペイロードブリスターでは、依然として、必要な内部空間の最適化を行うことができるが、やはり、コイル状の使用済みおよび未使用ブリスターストリップ12のピーク総直径は、そうでない場合よりも大きくなる。
【0076】
最適化は、60回用量薬剤吸入器10ならびに30回用量薬剤吸入器10のために機能するであろう。30回用量薬剤吸入器10では、デバイス全体を理論的に比例的に小さくすることができる。しかしながら、現実には、金型のコストは60回用量薬剤形態のために既に一度支払われており、30回用量薬剤吸入器10は共通のコンポーネントを使用するので、既存の金型を使用することは経済的に賢明である。さらに、30回用量薬剤吸入器10のために必要な内部空間を最適化するという問題は、単に既に利用可能な空間が十分にあるために、むしろ無意味であろう。
【0077】
以下の特許請求の範囲に含まれる本発明の多くの修正および変形は、当業者には明らかであり、上記説明は、本発明の好ましい実施形態の説明としてのみみなされるべきである。例えば、「マウスピース」について言及するが、本発明はまた、用量薬剤が鼻腔を介して吸入されるデバイスにも適用可能である。したがって、本明細書の目的のために、「マウスピース」という用語はまた、その範囲内に、それを介した吸入のために患者の鼻腔内に挿入される管を含むように解釈されるべきである。
【0078】
さらに、ブリスター穿孔部材は、マウスピースに取り付けられてマウスピースとブリスター穿孔部材とが一緒に動くように記載されているが、マウスピース自体は静止したままであってもよく、ブリスター穿孔部材が整列させられたブリスターの蓋を穿孔するべくマウスピースに対して回動するようにブリスター穿孔要素をマウスピースに回動可能に取り付けることもできる。
【0079】
別の実施形態では、キャップおよび作動部材を組み合わせて単一部品にすることができるので、キャップの回転はまた、ストリップの割り出しおよび整列したブリスターの穿孔を引き起こす。
【0080】
本発明の吸入器は受動的デバイスでも能動的デバイスでもよいことが理解されるであろう。受動的デバイスでは、ユーザーがマウスピースを経て吸入するときに生じる空気の流れに用量薬剤が引き込まれる。しかしながら、能動的デバイスでは、吸入器は、ブリスターを通ってガスまたは空気の加圧された流れを発生させて用量薬剤を引き込み、マウスピースを介してブリスターからユーザーの気道へとそれを運ぶための手段を含むであろう。一実施形態では、吸入器は、ハウジング内に加圧ガスまたは空気の供給源を備えていてもよい。
【0081】
本明細書を通して、「未使用」および「使用済み」ブリスターの両方が言及される。「未使用」ブリスターとは、ブリスター穿孔部材を通過しておらず、その中に含まれる用量薬剤が無傷のままであるブリスターを意味することが理解されるであろう。「使用済み」ブリスターとは、ユーザーによるアクチュエータの動作に応答してブリスター穿孔部材を通過し、そこに含まれる用量薬剤へのアクセスが得られるように穿孔されたブリスターを意味する。一般に、「使用済み」ブリスターとは、そこから用量薬剤が吸入されたブリスターを意味するが、ブリスター穿孔部材を通過して穿孔されたが、その中に含まれる用量薬剤の一部あるいは全てを依然として含むブリスターを包含するとも解釈されるべきである。これは、例えば、以前に穿孔されたブリスターから用量薬剤を吸入することなくブリスターストリップを動かすためにユーザーがアクチュエータを動かすときに起こり得る。
【符号の説明】
【0082】
10 ドライパウダー吸入器
12 ブリスターストリップ
14 ハウジング
14a シェル部分
14b シェル部分
16 キャップ
18 マウスピース
20 ブリスター穿孔部材
22 操作レバー
24 ホイール
26 チャンバー
28 第1のブリスター区画
30 第2のブリスター区画
32 可動隔壁
34 第1のコイル
36 第2のコイル
38 第1の弧状支持面
40 第2の弧状支持面
42 第3の弧状支持面
44 曲線
46 曲線
48 曲線
50 足部
52 バッフル
54 リセス
56 直線状本体部分
58 弧状テール部分
60 ブリスターストリップ案内リブ
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9