(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619093
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】多結晶シリコンを堆積させるための反応器
(51)【国際特許分類】
C01B 33/035 20060101AFI20191202BHJP
【FI】
C01B33/035
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-519351(P2018-519351)
(86)(22)【出願日】2016年10月11日
(65)【公表番号】特表2018-530511(P2018-530511A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】EP2016074317
(87)【国際公開番号】WO2017064048
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2018年6月11日
(31)【優先権主張番号】102015219925.8
(32)【優先日】2015年10月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クラウス,ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】クザ,クリスティアン
【審査官】
若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−062252(JP,A)
【文献】
特表2012−507462(JP,A)
【文献】
特表2013−535390(JP,A)
【文献】
特開2009−149495(JP,A)
【文献】
特開昭63−007369(JP,A)
【文献】
中国特許第100425532(CN,C)
【文献】
中国実用新案第203890069(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶シリコンの堆積のための反応器であって、
前記反応器は、反応器壁によって横方向および上方向に区切られており、基板によって下方向に区切られており、電流の直接通過によって加熱可能であり前記基板に取り付けられた複数のフィラメントロッド、当該反応器内にケイ素含有反応混合物を導入するための前記基板にある1個以上の開口部を通過するフィードガスシステム、および当該反応器からオフガスを排出するための前記基板にある1個以上の開口部を通過するオフガスシステムを備え、
前記フィードガスシステムおよび/または前記オフガスシステムが、開口部またはメッシュアパーチャーを含む金属、セラミックまたはCFC製の少なくとも1個の保護要素を備え、前記フィードガスシステムまたは前記オフガスシステムからフラッシングによって除去できるシリコン片のみが、前記保護要素より下の前記フィードガスシステムまたは前記オフガスシステムに進入可能になるように、前記保護要素の前記開口部および前記メッシュアパーチャーが構成され、フィードガスシステムが、少なくとも1個のノズルおよび前記ノズルに接続された少なくとも1個のフィードガス導管を備え、保護要素が、前記ノズルまたは前記フィードガス導管内に設置されていることを特徴とする、反応器。
【請求項2】
保護要素が、フィードガス導管の端部から0mmから500mmの距離に設置されたグリッドである、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
グリッドが、ノズルの下側に据え付けられている、請求項2に記載の反応器。
【請求項4】
グリッドの総面積に対する、すべての穴の面積の合計の比K1が、0.2から0.8の間である、請求項2又は3に記載の反応器。
【請求項5】
オフガスシステムが、少なくとも1個のオフガス導管を備え、保護要素が、前記オフガス導管内に配置された、または前記オフガスシステムのための基板の開口部に配置されたオフガスふるいである、請求項1から4のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項6】
保護要素が、オフガスシステムのための基板の開口部の中に吊り下げられたオフガスバスケットである、請求項1から4のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項7】
オフガスバスケットが、基板に対して上方向に開いており、オフガス導管に対して下方向に閉じられており、オフガスバスケットの壁に穴が設けられている、請求項6に記載の反応器。
【請求項8】
基板の開口部の中まで突出したオフガスバスケットの面積に対する、すべての穴の面積の合計の比K2が、0.2から0.9の間である、請求項6または7に記載の反応器。
【請求項9】
複数のフィラメントロッドを内包する請求項1から8のいずれか一項に記載の反応器内に、ケイ素含有成分および水素を含有する反応ガスを導入することを含む、多結晶シリコンを製造するための方法であって、電極によって各フィラメントロッドに電流が供給され、この結果、電流の直接通過によって、多結晶シリコンがフィラメントロッド上に堆積する温度に加熱される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコンの堆積のための反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
高純度多結晶シリコン(ポリシリコン)は、チョクラルスキー(CZ)法または帯域溶融(FZ)法による半導体のための単結晶シリコンの製造用ならびに光電変換分野向けの太陽電池の製造のための様々な引上げ法およびキャスティング法による単結晶シリコンまたは多結晶シリコンの製造用の出発物質として機能する。
【0003】
ポリシリコンは、一般的に、シーメンス法によって製造される。このシーメンス法は、支持体上に固体シリコンを堆積させるために電流の直接通過によって加熱される支持体を備える反応器内に、1種以上のケイ素含有成分および場合により水素を含む反応ガスを導入することを含む。使用するケイ素含有成分は、好ましくは、シラン(SiH
4)、モノクロロシラン(SiH
3Cl)、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)、トリクロロシラン(SiHCl
3)、テトラクロロシラン(SiCl
4)またはここで言及された物質の混合物である。
【0004】
シーメンス法は、典型的に、堆積反応器(「シーメンス反応器」としても公知)内で実施される。最も一般的に使用されている実施形態において、反応器は、金属基板と、当該ベルジャー内部に反応スペースを形成するように金属基板上に配置された冷却可能なベルジャーとを備える。基板は、1個以上の気体導入口と、退出していく反応ガスのための1個以上のオフガス用開口部と、反応スペース内の支持体を保持し、電流が供給される、ホルダーとを備える。
【0005】
各支持体は通常、2本の細いフィラメントロッド、および、一般に隣接するロッドどうしを自由端のところで接続するブリッジからなる。フィラメントロッドは、最も一般的には、単結晶もしくは多結晶シリコンから製造され、一般的に使用する度合いは少ないが金属もしくは合金または炭素からも製造される。フィラメントロッドは、反応器床上に配置されており、電流源への接続を可能にする、電極に滑りばめされる。高純度ポリシリコンの直径が経時で増大していくように、高純度ポリシリコンが、加熱されているフィラメントロッドおよび水平なブリッジの上に堆積される。この堆積工程は、所望の直径が達成されたらすぐに終了する。
【0006】
ノズルを介して反応ガスが下側部分、いわゆる基板に導入される堆積反応器は、ポリシリコンを製造するための標準として採用されている。しかしながら、ノズルを介した反応器の上側部分への反応ガスの導入も可能である。
【0007】
同様に、形成されたオフガスは、しばしば、反応器床にある1個以上の開口部を介して排出されるが、反応器のフードを介しても排出される。
【0008】
フィードガスの一様な分配がロッド上への一様な堆積のために重要であるため、フィードガスは、典型的に、複数のノズルを介して供給される。
【0009】
このようなフィードガスの分配は、それぞれが個別のフィードガスノズルに直接接続された個別の複数のフィードガス導管によって実現されることも可能であるし、または、反応器の付近にあり、通常、反応器基板の下にあり、個別のフィードガスノズルのための複数の接続部を有する、気体分配装置、例えば環状もしくは他の種類の気体分配装置によって実現されることも可能である。
【0010】
堆積工程中に、クラックが、成長しているシリコンロッド中に形成し得る。この結果、様々なサイズのシリコン破片が、フィードガス用開口部およびオフガス用開口部に落下し、気体導管または気体分配装置を閉塞する可能性がある。最悪の場合、すべてのロッドが崩壊し、非常に大きなシリコン片が、入口開口部および出口開口部に落下する恐れがある。
【0011】
フィードガスの場合は、このような閉塞により、フィードガスの分配が一様でなくなり、または不正確なフィードガスの計量になり、オフガスの場合は、閉塞により、反応器内で望ましくない圧力の上昇が起きる可能性がある。
【0012】
この理由のため、シリコン片は、遅くとも次のバッチより先に除去されなければならない。シリコン片は通常、比較的大きな労力をかけたときに(例えば、素手によってまたは把持装置、真空掃除機によって)のみ除去することができる。この手順は、不都合で長引く(即ち、準備時間がより長い)ものであるし、非常に大きな片は時折、把持装置にとって大きすぎ、真空掃除機によって吸引されない可能性があるため、必ずしも成功するとは限らない。
【0013】
WO2014/166711A1は、2つ以上の区画から構成されており、脱着可能な手段(例えば、フランジ)によって気密構造となるように互いに連結された、気体分配装置およびオフガス捕集装置を開示している。これは、単純化された気体分配装置またはオフガス捕集装置の除去およびクリーニングによって、落下したSi片の除去を可能にする。
【0014】
気体分配装置またはオフガス捕集装置の単純化したクリーニングが可能であるにも関わらず、おそらくは、モジュールにより構成された保護要素の汚染部分のみを取り外し、クリーニングしなければならないことが理由となって、取り外し、クリーニングおよび再設置手順には、著しい時間の消費が伴う。破片の探索と破片の除去が必要となる結果、目標直径を達成できず、バッチの切替え時間が延びるため、収率が乏しくなる。
【0015】
より多いフィード量を必要とし、従って、より大きな直径のフィードガスノズルを必要とする高収率の工程を用いるより大型の堆積プラントが流行しているため、上記課題は、深刻さが増している。ノズル直径が大きいため、シリコン破片は依然として、ノズルを介してフィードガスシステムにより容易に進入することが可能であり、前記システムを部分的に閉塞する恐れがある。フィードガスシステムが部分的に閉塞された結果、様々なノズルが、一様でないフィードの供給を受けることになる。
【0016】
基板のオフガス用開口部は一般に、フィードガスノズルの直径より大きい。さらに、基板は一般に、複数のオフガス用開口部を有し、これらの複数のオフガス用開口部は一般に、対称となるように基板に配置されている。オフガス用開口部のサイズを理由として、堆積中、堆積工程終了後のロッドの冷却中または反応器からのロッドの取外し中に落下したバッチが原因で形成されたSi破片とSiチャンクは両方とも、オフガスシステムに進入することが可能であり、1個以上のオフガス導管を部分的に閉塞する恐れがある。これらのSi片は、0mmから300mmまでの長さと、0からオフガス用開口部の断面までの断面とを有し得る。
【0017】
フィードガス導管およびオフガス導管内の閉塞または部分的な閉塞により、反応器内に一様でない流れが生じ、この結果、個別のポリシリコンロッドの直径が一様に増大しなくなり、膨れ部(popcorn)の成長の度合いが一様でなくなって、堆積工程中のプラントの操業停止に直結する可能性がある。複数のオフガス用開口部が存在する場合で、1個以上のオフガス用開口部が部分的に閉塞されているとき、閉塞された反応器内における気体の流れが非対称になる。
【0018】
フィードガス導管内の破片またはSiチャンクは、個別のノズルへのフィードガスの分配が一様でないため、反応器内における流体の運動に影響し、この結果、堆積反応器内に非対称な流れプロファイルを生じさせる。オフガス用開口部またはオフガス導管内のSiチャンクも同様に、堆積反応器内に非対称な流れプロファイルを生じさせる。
【0019】
反応器における非対称な流れは、堆積工程中のバッチの不具合(ロッド対の落下)によって、工程の安定性を低下させる。落下したロッド対は、汚染物質のため、低グレードの製品に格下げされなければならず、または苦労してクリーニングしなければならない。過度に深い膨れ部の成長を有するロッド片は、膨れ部の割合が品質基準および製品仕様の構成要素であるため、低グレード製品に格下げされなければならない。最も太いロッド直径が、バッチのスイッチオフ直径(switchoff diameter)を決定する。従って、あるバッチに含まれるロッドがより細くなると、プラント収率が低下し、製造コストが上昇する。
【0020】
CN100425532Cは、反応器の中まで突出したフィードガス配管を記述している。フィードガス配管は、シリコンロッドにフィードを供給するための、高さが異なる横方向に向かった複数の開口部を有する。垂直な開口部が存在しないため、破片はフィードガスシステムに進入することができない。しかしながら、このような構成は、ポリシリコンの製造において気体の流れが垂直になることを回避できないため、不利である。別の欠点は、フィードガス配管の腐食を起こし、この結果、製造されたポリシリコンの汚染を起こすほど深刻な熱応力および化学的ストレスに晒される、フィードガス配管の長さである。
【0021】
CN203890069Uは、オフガスからダストを沈降させるための装置を記述している。この装置は、互いに滑りばめされた2個の黒鉛製部品からなり、オフガス用開口部を覆った基板上に存在し、反応器のスペースの中まで突出している。外側部品は、円周方向に配列された多数の開口部を有し、ダスト含有オフガス流は、これらの開口部を通り抜けるように流れる。ダストは、外側部品と内側部品との間で沈降する。
【0022】
CN103896270Aは、上端が閉じられており、黒鉛から製造された、管状部品であって、多結晶シリコンの堆積のための堆積プラントのオフガスシステム内にある管束式熱交換器の蒸留側に配置された、横方向に向かった穴を有する、管状部品を記述している。当該管状部品は、下流側の管における流れを一様にし、研削作用のある粒子(非晶質シリコン)が熱交換器に入らないように保ち、この結果、研削の形態での熱交換器の腐食を回避するように意図されている。
【0023】
後に挙げた2つの公報には、より大きなSi片が落下してくると、黒鉛部分が機械的に耐えることができないという課題がある。当該管状部品が破壊されると、Si片がオフガス導管に進入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】国際公開第2014/166711号
【特許文献2】中国特許公報第100425532号明細書
【特許文献3】中国実用新案第203890069号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第103896270号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明によって達成すべき目的は、上記課題から発生している。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的は、多結晶シリコンの堆積のための反応器であって、
反応器壁によって横方向および上方向に区切られており、基板によって下方向に区切られており、電流の直接通過によって加熱可能であり、基板に取り付けられた複数のフィラメントロッド、反応器内にケイ素含有反応混合物を導入するための基板にある1個以上の開口部を通過するフィードガスシステム、および反応器からオフガスを排出するための基板にある1個以上の開口部を通過するオフガスシステムを備え、フィードガスシステムおよび/またはオフガスシステムが、開口部またはメッシュアパーチャーを含む金属、セラミックまたはCFC製の少なくとも1個の保護要素を備え、フィードガスシステムまたはオフガスシステムからフラッシングによって除去できるシリコン片のみが、保護要素より下のフィードガスシステムまたはオフガスシステムに進入可能になるように、保護要素の開口部およびメッシュアパーチャーが構成されることを特徴とする、反応器によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
「フィードガスシステム」という用語は、1個以上のノズル、および、それぞれがノズルまたはノズルに接続された気体分配装置に接続された1個以上のフィードガス導管を意味するものとして理解すべきである。従って、フィードガス導管およびノズルはそれぞれ、互いに直接接続し合っていてもよい。しかしながら、個別のフィードガスノズルのための複数の接続部を有する気体分配装置を基板より下に設置することもできる。ノズルおよびフィードガス導管は、基板の開口部を通過し、基板上に据え付けられている。しかしながら、他の構成、例えば気体分配装置と、ノズルに接続された個別のフィードガス導管との組合せも想定可能である。
【0028】
「オフガスシステム」という用語は、基板にある1個以上の開口部およびこの開口部に接続されたオフガス導管を意味するものとして理解すべきである。
【0029】
一実施形態において、オフガスシステムは、基板にある1個以上のオフガス用開口部と連通するように接続された、オフガス捕集装置を備える。基板が3個のオフガス用開口部を有する場合、オフガス捕集装置はやはり、それぞれが反応器のオフガス用開口部の1つと連通するように接続された3個の気体導入口を有することができる。しかしながら、他の構成、例えばオフガス捕集装置と個別のオフガス導管との組合せも想定可能である。
【0030】
従って、フィードガスシステムにおいて、保護要素は、ノズルまたはフィードガス導管内に設定されていてもよい。個別の各ノズルまたは個別の各フィードガス導管は、保護要素とはめ合わされることになる。
【0031】
本発明の一実施形態において、保護要素は、フィードガス導管またはノズルの断面に設置されたグリッドである。
【0032】
グリッドは、フィードガス導管の端部から、0mmから500mmまでの距離にあってよい。フィードガス導管の端部は、ノズルの頂部の縁部として規定されている。
【0033】
従って、グリッドは、フィードガス導管の中またはノズルの頂部側、ノズルの底部側もしくはノズルの中に据え付けられることも可能であるし、またはねじ込み継手により固定されることも可能である。
【0034】
グリッドは、平坦な表面または曲がった形状を有し得る。
【0035】
グリッドは、織物型メッシュまたは穴のある基体から製造されることが可能である。穴の形状は、円形、正方形または所望される任意の他の形状であってよい。円形または正方形の形状が好ましい。
【0036】
グリッドの基体は、多様な幾何形状にして実装することができる。
【0037】
可能な幾何形状は、ディスク、球形もしくは楕円形、円錐または二次元的もしくは三次元的に曲がった状態である。
【0038】
好ましい一実施形態において、平坦なディスクが重要である。
【0039】
グリッドの各実施形態は、ノズル内の流れ方向に対して異なる角度で据え付けられることが可能である。
【0040】
角度は、0°から80°までであり得る。
【0041】
一実施形態において、グリッドは、ノズルの下側に据え付けられている。「下側」という用語は、フィードガス導管にねじ込み継手により固定される側を意味するものとして理解すべきである。
【0042】
グリッドをノズルに取り付ける可能な手段は、溶接、はんだ付け、ねじ込み継手による固定、滑りばめまたは締結である。
【0043】
同様に、グリッドも、ノズルの製造中に固形素材からあらかじめ機械加工されていてもよい。
【0044】
好ましい一実施形態において、ノズルへのグリッドの据付けは、溶接によって達成される。同じ構成材料からノズルおよびグリッドを製作することが、有利である。
【0045】
グリッドに適した構成材料は、高温のHClおよびクロロシラン混合物に耐え切るすべての金属(ステンレス鋼、貴金属)、セラミックおよびCFC(炭素繊維強化炭素)である。
【0046】
グリッドのメッシュアパーチャーのサイズ(a)は、2mmから15mm、好ましくは3mmから10mmの間、特に好ましくは3mmから7mmの間である。グリッドのウェブ幅(b)は、0.5mmから5mmの間である。グリッドのウェブ幅(b)は、好ましくは0.5mmから3mmの間、特に好ましくは0.5mmから2mmの間である。
【0047】
グリッドの総面積に対する、すべての穴の面積の合計の比であるK1は、0.2から0.8の間にすべきである。「グリッドの総面積」という用語は、すべての穴の面積の合計と、すべてのウェブ面積の合計との総和として理解すべきである(ウェブ幅の規定に関しては、
図2および
図3を参照されたい。)。
【0048】
好ましい一実施形態において、比K1は、0.3から0.7までである。
【0049】
特に好ましい一実施形態において、比K1は、0.4から0.65までである。
【0050】
別の実施形態において、保護要素は、オフガス導管内に設置されたオフガスふるいである。オフガスふるいは、オフガス導管が、Si片によって閉塞された状態にならないように意図されている。
【0051】
オフガスふるいは、基板の下流側にあるオフガス導管に配置されることも可能であるし、または基板のオフガス用開口部の中に配置されることも可能である。
【0052】
最も単純な場合において、オフガスふるいは、オフガス導管内のフランジどうしの間にある、穴が開いたディスクである。
【0053】
オフガスふるいは好ましくは、基板のオフガス用開口部の中に吊り下げられたバスケットの形状である。このバスケットの形状には、容易に利用することが可能であり、取り替えも容易に行うことができるという利点がある。この目的のためには、基板との接触のためにバスケットの上端が広がっている場合が有利である。
【0054】
一実施形態において、オフガスバスケットが、オフガス用開口部の中まで突出しており、前記バスケットが、基板に対して上方向に開いており、オフガス導管に対して下方向に閉じられており、前記バスケットの壁に穴が設けられている。
【0055】
オフガスバスケットは、円筒形であってもよいし、または下方向に向かって円錐状に先細りしていてもよい。オフガスバスケットは、オフガス用開口部にはまり込む、所望される任意の他の形状を有することもできる。
【0056】
下方向に向かって円錐状に先細りした形状が、好ましい。
【0057】
オフガスバスケットにある個別の穴の面積は、15mm
2から225mm
2の間である。オフガスバスケットにある個別の穴の面積は、好ましくは15mm
2から150mm
2の間、特に好ましくは15mm
2から100mm
2の間である。
【0058】
オフガス用開口部の中まで突出したオフガスバスケットの面積に対する、すべての穴の面積の合計の比であるK2は、0.2から0.9の間にすべきである。オフガス用開口部の中まで突出したオフガスバスケットの面積は、すべての穴の面積の合計と、穴を除いたすべての面積の合計との総和である。
【0059】
好ましい一実施形態において、比K2は、0.3から0.8までである。
【0060】
特に好ましい一実施形態において、比K2は、0.5から0.8までである。
【0061】
オフガスふるいまたはオフガスバスケットに適した構成材料は、高温のHClおよびクロロシラン混合物に耐え切るすべての金属(ステンレス鋼、貴金属)、タングステン、ZrO
2、酸化イットリウム安定化ZrO
2、Si
3N
4、炭化ケイ素等のセラミックおよびCFCを含む。
【0062】
CFC、ZrO
2およびイットリウム安定化ZrO
2の使用が、好ましい。
【0063】
オフガスふるいまたはオフガスバスケットは、1個の部品から製造されることも可能であるし、または、例えば溶接、滑りばめ、ねじ込み継手による固定、締結またはピンによる固定によって個別の複数の部品をつなぎ合わせていてもよい。
【0064】
オフガスふるいまたはオフガスバスケットは、好ましくは、モノリス形である。
【0065】
本発明の一実施形態において、上述したフィードガスシステムにおける保護要素の実施形態と、上述したオフガスシステムにおける保護要素の実施形態とは、互いに組み合わせられる。
【0066】
従って、フィードガスシステムとオフガスシステムの両方が、このような保護要素を有する場合は、特に好ましい。
【0067】
一実施形態において、すべてのノズル、または代替的には、ノズルに接続されたすべてのフィードガス導管が、上記グリッドを備える一方で、同時に、オフガスバスケットが、基板にあるすべてのオフガス用開口部の中に吊り下げられている。
【0068】
本発明は、複数のフィラメントロッドを内包する、上記実施形態の1つ以上による反応器内に、ケイ素含有成分および水素を含有する反応ガスを導入することを含む、多結晶シリコンを製造するための方法であって、電極によって各フィラメントロッドに電流が供給され、この結果、電流の直接通過によって多結晶シリコンがフィラメントロッド上に堆積する温度に加熱される、方法にも関する。
【0069】
従って、本発明は、フィードガスシステムおよびオフガスシステムの保護要素の開口部より大きなシリコン破片またはシリコンチャンクをなくし、簡単なバックフラッシングによって保護要素の開口部より小さいシリコン破片またはシリコンを除去できるようにする。
【0070】
従って、フィードガスシステムおよび反応器における一様な流体の分配を達成することができる。反応器における対称な流れにより、ロッド対が一様に成長し、個別のロッド対のモルフォロジが均一になる。
【0071】
対照的に、反応器における非対称な流れにより、異なるモルフォロジを有し、厚さも異なるロッドが成長する。バッチのスイッチオフ直径は、最も太いロッド対によって限定される。一様に太いロッド対により、バッチの重量増大を達成することができ、この結果、収率が上昇し、コストが低下する。
【0072】
過度に不良なモルフォロジ(膨れ部の割合が過度に大きい、過度に多孔性の材料)の場合、シリコンは部分的に、低グレード製品に格下げされなければならない。この格下げは、一様なモルフォロジの場合、後で堆積工程によってモルフォロジを周到に調節できるため、不要になる。「モルフォロジ」という用語は、程度の差はあるがはっきりと分かる膨れ部に関する緻密さならびに表面およびバルクの構造を意味するものとして理解すべきである。
【0073】
バッチの切替え中に、例えば内視鏡検査法によって破片を探索し、時間がかかる破片の除去を行うことが不要になることにより、準備時間が短縮されることは、有利である。
【0074】
上述した本発明による反応器の実施形態に関して言及された特徴は、本発明による方法にも相応に適用され得る。本発明による実施形態に関する上記および他の特徴は、図面の記載および特許請求の範囲において説明されている。個別の特徴は、本発明の実施形態として別々に実現されることも可能であるし、または組合せとして実現されることも可能である。前記特徴により、他の事物に左右されることなく保護に値する有利な実装形態をさらに記述することができる。
【0075】
下記において、
図1から
図8を参照しながら本発明をさらに説明する。
【符号の説明】
【0076】
1 基板
2 フィードガス導管
3 グリッド
4 ねじ込み継手
5 グリッド用の据付けリング
6 グリッド固定用のピン
7 ノズル
8 オフガス用開口部
9 冷却されているオフガス導管
10 オフガスバスケット
11 オフガスバスケットの穴
a メッシュアパーチャーのサイズ
b ウェブ幅
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】フィードガス導管のグリッドの概略図を示す。
【
図4】フィードガス導管の出口にグリッドディスクが締結された概略図を示す。
【
図5】締結されたリングにピンによって据え付けられたグリッドの概略図を示す。グリッドは、フィードガス導管の出口より下にある。
【
図6】ノズルに据え付けられたグリッドの様々な実施形態の概略図を示す。
【0078】
図1は、反応器の基板1およびフィードガス導管2を示している。グリッド3が、フィードガス導管2内に設置されている。
【0079】
図2は、切抜き型開口部を有するグリッド3を示している。グリッド3は、穴のある基体から生じる。グリッド3は、メッシュアパーチャーのサイズaおよびウェブ幅bによって特徴付けられる。
【0080】
図3は、織物型メッシュを有するグリッド3を示している。このような織物型メッシュ3は、やはり、メッシュアパーチャーのサイズaおよびウェブ幅bによって特徴付けることができる。
【0081】
図4は、反応器の基板1およびフィードガス導管2を示している。グリッド3が、フィードガス導管2の出口に据え付けられる。この目的のために、ねじ込み継手4によってフィードガス導管2に固定された、グリッド3のための据付けリング5が存在する。この結果、フィードガス導管2の出口にグリッドディスクが締結されている。
【0082】
図5は、反応器の基板1およびフィードガス導管2を示している。フィードガス導管2の出口において、据付けリング5が、ねじ込み継手4によってフィードガス導管2に固定されている。グリッド3は、フィードガス導管2の内部に配置され、ピン6によって据付けリングに据え付けられる。この結果、グリッド3は、フィードガス導管2の出口より下に配置された、締結済みリング5に据え付けられる。
【0083】
図6は、ノズル7に据え付けられたグリッド3の様々な実施形態を示している。グリッド3の基体は、球形または楕円形(A、B)、平坦な(C、D)および円錐(E、F)という、異なる幾何形状を有する。実施形態Dは、ノズル内の流れ方向に対して約30°の角度に固定されている。
【0084】
図7は、反応器の基板1、オフガス用開口部8およびオフガス導管9を示している。オフガス導管9内には、オフガスバスケット10が設置されている。オフガスバスケット10は、穴11を有する。オフガスバスケット10は、円筒形である。
【0085】
図8は、反応器の基板1、オフガス用開口部8およびオフガス導管9を示している。オフガス導管9内には、オフガスバスケット10が設置されている。オフガスバスケット10は、穴11を有する。オフガスバスケット10は、円錐である。
【0086】
比較例
グリッドなしのおよびオフガスバスケットなしのノズルを用いた堆積(本発明によらない。)
フィードガス導管およびオフガス導管の内視鏡検査法後に、バッチの約10%において、シリコン破片およびシリコンチャンクが発見された。これらの破片およびチャンクは、面倒な除去を必要とした。これにより、準備時間が4時間延びた。
【0087】
一部のシリコン破片およびシリコンチャンクは、内視鏡検査法によっても発見することができなかった。
【0088】
この結果、次のバッチの4%が、工程中に失敗した。これは、ロッドの落下が原因だった。
【0089】
さらなる結果として、2つのロッド対重量分布の群が得られた。
【0090】
第1の群において、バッチの平均ロッド対重量に基づいた最も太いロッド対と最も細いロッド対との偏差は、約3%だった。この群は、合計のうちの80%を占めており、フィードガスシステム内にシリコン破片およびシリコンチャンクが含まれていなかった。
【0091】
第2の群において、バッチの平均ロッド対重量に基づいた最も太いロッド対と最も細いロッド対との偏差は、約8%だった。この群は、合計のうちの20%を占めていた。この群の材料の25%は、過度に不良なモルフォロジのため、格下げを必要とした。
【0092】
不十分なロッド対重量分布のため、予定になかった修正(基板の解体)を実施した。この修正の最中、フィードガスシステム内のシリコン破片およびシリコンチャンクを特定し、除去した。
【実施例】
【0093】
[実施例1]
グリッド付きでオフガスバスケットなしのノズルを用いた堆積
グリッド付きのノズルのため、グリッドのメッシュアパーチャーのサイズより小さいシリコン破片およびシリコンチャンクのみが、フィードガスシステムに進入することができる。しかしながら、これらの破片およびチャンクは、簡単なバックフラッシングによって除去することができる。従って、フィードガス導管内で面倒な内視鏡検査法を行って、シリコン破片およびシリコンチャンクを除去することは、不要になる。
【0094】
内視鏡検査法によって発見されなかったSiチャンクは、オフガスシステム内に依然として存在する可能性があり、オフガス導管を部分的に閉塞する恐れがある。この結果、2つのロッド対重量分布の群が順に得られた。
【0095】
第1の群において、バッチの平均ロッド対重量に基づいた最も太いロッド対と最も細いロッド対との偏差は、約3%だった。この群は、合計のうちの90%を占めており、フィードガスシステムおよびオフガスシステム内にシリコン破片およびシリコンチャンクが含まれていなかった。
【0096】
第2の群において、バッチの平均ロッド対重量に基づいた最も太いロッド対と最も細いロッド対との偏差は、約6%だった。この群は、合計のうちの10%を占めており、オフガスシステム内に破片があった。この群の材料の15%は、過度に不良なモルフォロジのため、格下げを必要とした。
【0097】
[実施例2]
グリッドなしでオフガスバスケット付きのノズルを用いた堆積
オフガス用開口部内にオフガスバスケットがあるため、オフガスバスケットの穴直径より小さいシリコン破片およびシリコンチャンクのみが、オフガスシステムに進入することができる。しかしながら、これらの破片およびチャンクは、簡単なバックフラッシングによって除去することができる。従って、オフガス導管内で面倒な内視鏡検査法を行って、シリコン破片およびシリコンチャンクを除去することは、不要になる。
【0098】
内視鏡検査法によって発見されなかったSiチャンクは、フィードガスシステム内に依然として存在する可能性がある。この結果、2つのロッド対重量分布の群が順に得られた。
【0099】
第1の群において、バッチの平均ロッド対重量に基づいた最も太いロッド対と最も細いロッド対との偏差は、約3%だった。この群は、合計のうちの90%を占めており、フィードガスシステムおよびオフガスシステム内にシリコン破片およびシリコンチャンクが含まれていなかった。
【0100】
第2の群において、バッチの平均ロッド対重量に基づいた最も太いロッド対と最も細いロッド対との偏差は、約5%だった。この群は、合計のうちの10%を占めており、オフガスシステム内に破片があった。この群の材料の10%は、過度に不良なモルフォロジのため、格下げを必要とした。
【0101】
[実施例3]
グリッドおよびオフガスバスケット付きのノズルを用いた堆積
グリッドおよびオフガスバスケット付きのノズルがオフガス用開口部にあるため、グリッドのメッシュアパーチャーのサイズより小さいシリコン破片およびシリコンチャンクのみが、フィードガスシステムおよびオフガスシステムに進入することができる。しかしながら、これらの破片およびチャンクは、簡単なバックフラッシングによって除去することができる。従って、フィードガス導管およびオフガス導管内で面倒な内視鏡検査法を行って、シリコン破片およびシリコンチャンクを除去することは、不要になる。
【0102】
バッチの平均ロッド対重量に基づいた最も太いロッド対と最も細いロッド対との偏差が約3%である、ロッド対重量分布が均一な唯一の群が、得られた。
【0103】
不良なモルフォロジを原因とした材料の格下げは、必要でなかった。
【0104】
説明のための実施形態に関する上記の記述は、例示的なものであると理解すべきである。この記述によってなされた開示は、当業者が、本発明および本発明に関する利点を理解できるようにするものであり、当業者にとって明白である、記述された構造および方法の代替形態および修正形態も包含する。
【0105】
従って、すべてのこのような代替形態および修正形態ならびに均等物は、特許請求の範囲の保護範囲によって包含されるべきである。