(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。全図を通じて同一の要素には同一の符号を付す。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るカメラ1は、
図1に示すように、カメラ本体2と、カメラ本体2に装着される円筒状のレンズ鏡筒10とを備える。
【0014】
カメラ本体2は、光軸Oを中心とする概ね矩形の撮像面を被写体側に向けた撮像素子6を有する。撮像素子6は、撮像面に結像する像に応じた電気信号を出力する素子であって、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどから構成される。
【0015】
レンズ鏡筒10は、カメラ本体2に装着可能に構成されるとともに、光軸Oに沿って被写体側から順に並ぶ3枚のレンズG1,G2,G3を保持する。レンズG1,G2,G3は、被写体の像を撮像素子6の撮像面に結像する。レンズG1は、被写体側に露出した被写体側レンズである。レンズG2,G3はレンズ鏡筒10の内部に保持される内蔵レンズである。本実施の形態に係る3枚のレンズG1,G2,G3の各々は、被写体側の面が球面であり、撮像素子側の面が平面の凸レンズである。
【0016】
なお、各レンズG1,G2,G3に採用されるレンズ面は、球面、平面、非球面のいずれで形成されてもよい。レンズ面が球面又は平面の場合、各レンズG1,G2,G3の加工、後述するレンズ保持枠13への組み立て調整などが容易になり、加工及び組立調整の誤差による光学性能の変化を防ぐことができる。レンズ面が非球面の場合、非球面は、研削加工による非球面、ガラスを型で非球面形状に形成したガラスモールド非球面、ガラスの表面に樹脂を非球面形状に形成した複合型非球面のいずれの非球面であってもよい。また、レンズ面は回折面としてもよく、各レンズG1,G2,G3は、屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)であってもよく、プラスチックレンズであってもよい。
【0017】
さらに、レンズG1,G2,G3のレンズ面には、必要に応じて、種々の加工が施されてもよい。この加工の例として、レンズ面の曇り防止、レンズ面での水滴形成の防止などのために、レンズ面を光触媒などによって親水化することを挙げることができる。また、外部にさらされる可能性がある部位に対して、レンズ面の曇り防止、レンズ面での水滴形成の防止などのために、レンズ面を光触媒などによって親水化することを挙げることができる。
【0018】
なお、内蔵レンズは、2枚に限られず、何枚設けられてもよい。また、内蔵レンズは、設けられなくてもよい。
【0019】
詳しくは、レンズ鏡筒10は、被写体側端部とその近傍を示す
図2および被写体側端部及びその近傍の拡大断面図である
図3に示すように、有底または無底の円筒状に形成されるレンズ保持枠13と、レンズ保持枠13を内部に挿入し、レンズ保持枠13とともにレンズG1を保持する、筒状のレンズ保持部材11と、レンズ鏡筒10内への水等の異物の侵入を抑制するシール部材20とを備える。レンズ保持部材11およびレンズ保持枠13は、例えば、プラスチック、金属などを材料として作られる。シール部材20は、例えば、ゴムなどの弾性を有する材料により作られる。
【0020】
図3は、
図2に示すA−A−B−B部分の断面図であって、レンズ鏡筒10における被写体側レンズG1を保持する部分を拡大して示す。本実施の形態に係るレンズ鏡筒10は、その周方向に沿って同一の
図3に示す断面を有する。
【0021】
レンズ保持部材11は、レンズ保持枠13の一端部としての被写体側端部が内部に嵌め合わされる筒部11eと、筒部11eに接続しており、レンズG1が嵌まる孔を形成するレンズ嵌合部11bと、レンズ嵌合部11bの一端としての被写体側の端部から延びて、レンズG1の一方の面としての被写体側の面を押さえ付ける押圧片部11cとを備える。例えば、レンズ保持枠13の一端部は被写体側の端部であって、レンズ保持枠13の他端部は撮像素子6側の端部である。
【0022】
筒部11eの内周面には、ねじ溝11aが形成されている。レンズ保持枠13の外周面には、レンズ保持部材11のねじ溝11aに螺合するねじ山13aが形成されている。レンズ保持部材11のねじ溝11aがレンズ保持枠13のねじ山13aに螺合することで、レンズ保持枠13に対してレンズ保持部材11が光軸O方向に抜けないように嵌め合わされる。
【0023】
レンズ嵌合部11bは、円環状をなすとともに、筒部11eの被写体側の端部から光軸Oに向かって延出し、
図2および
図3に示すように、レンズG1の周囲を囲む。レンズ保持部材11がレンズ保持枠13に嵌め合わされた状態において、レンズ嵌合部11bは、レンズ保持枠13の被写体側(
図3の左側)に位置する。押圧片部11cは、レンズ嵌合部11bの内周面の被写体側の端部から光軸Oに向けて延出する。
【0024】
レンズ嵌合部11bは、
図3に示すように、レンズG1を内部に保持する。具体的には、レンズ嵌合部11bの内周面S1と、レンズG1の外周部に位置する側周面S2とが面接触している。レンズG1の内面(光軸Oに直交する方向に延びる他方の面)は、レンズ保持枠13の被写体側の端面に接触している。押圧片部11cは、レンズG1の被写体側の面の外周端部近傍に接触することで、レンズG1の被写体側への面をレンズ保持枠13へ押さえつける。これにより、レンズG1は、レンズ保持枠13とレンズ保持部材11とによって、レンズ鏡筒10内に保持される。
【0025】
レンズ保持枠13は、
図3に示すように、レンズG1及びレンズ保持部材11のレンズ嵌合部11bの間に一連の間隙を形成する凹部13bを被写体側端部に備える。
【0026】
詳しくは、凹部13bは、光軸Oを中心とする概ね環状の溝であり、被写体側に開放している。凹部13bの底部(撮像面素子側の面部)は、レンズ嵌合部11bの内周面S1とレンズG1の側周面S2とが接触する部分と対向する位置に形成されている。
【0027】
シール部材20は、凹部13bに沿う形状を有し、レンズ保持枠13の凹部13bの中に配置される。シール部材20は、レンズG1、レンズ嵌合部11bおよび凹部13bに密着する。シール部材20は、凹部13bの底面に接着剤などを用いて接着され、これによって、凹部13b内に固定されてもよい。
【0028】
本実施形態に係るシール部材20は、
図3の断面図に示すように、本体部21と、本体部21に設けられ、被写体側又は撮像素子側へ突き出す第1突条部22a、第2突条部22b、第3突条部22cおよび第4突条部22dとを有する。シール部材20は、上述の通り、凹部13bに沿う形状を有するので、本実施の形態では概ね環状をなす。そのため、シール部材20は、光軸Oを含む平面における断面が同一である。
【0029】
詳細には、本体部21は、光軸O方向から見て環状をなし、断面が
図3に示すように長方形である。
図3に示すように、本体部21は、その断面の長辺がレンズ鏡筒10の径方向(光軸Oに直交する方向)に沿う向きで、凹部13b内に配置される。レンズ鏡筒10の径方向における本体部21の両端と凹部13bの側周面(光軸Oに沿って延びる面)との間には隙間が形成されている。
【0030】
第1突条部22a、第2突条部22b、第3突条部22cおよび第4突条部22dの各々は、光軸O方向から見て、凹部13bに沿う連続した突条をなす。そのため、本実施の形態では、第1突条部22a、第2突条部22b、第3突条部22cおよび第4突条部22dの各々は、光軸O方向から見て、光軸Oを中心とする環状をなす。第1突条部22a、第2突条部22b、第3突条部22cおよび第4突条部22dの各々は、
図3に示すように、断面が半円状であり、各々の頂点が、光軸Oの方向において本体部21から最も離間している。
【0031】
第1突条部22aは、第2突条部22bよりも、光軸Oから離間した位置に設けられている。第1突条部22aは、レンズ保持部材11のレンズ嵌合部11bへ向けて突き出している。第2突条部22bは、レンズG1へ向けて突き出している。
【0032】
第3突条部22cは、第4突条部22dよりも、光軸Oから離間した位置に設けられている。第3突条部22c及び第4突条部22dの各々は、本体部21に設けられ、凹部13bの底面へ向けて突き出している。
【0033】
レンズ保持部材11をレンズ保持枠13にねじ込むにつれて、レンズG1およびレンズ嵌合部11bと、凹部13bの底面との間の距離が小さくなる。
【0034】
レンズ嵌合部11bと凹部13bの底面との距離が小さくなると、光軸Oが延びる方向に並んで本体部21から突き出た第1突条部22aおよび第3突条部22cは、レンズ嵌合部11bと凹部13bの底面とにより、光軸Oが延びる方向に圧縮される。その結果、第1突条部22aは、レンズ嵌合部11bの、凹部13bに対向する面に密着する。第2突条部22bは、レンズG1の撮像素子側の面のうち、外縁部近傍に密着する。第1突条部22aがレンズ嵌合部11bに密着する位置と、第2突条部22bがレンズG1に密着する位置との間に、レンズ嵌合部11bの内周面S1とレンズG1の側周面S2との接触部が位置する。
【0035】
また、レンズG1と、凹部13bの底面との間の距離が小さくなると、光軸Oが延びる方向に並んで本体部21から突き出た第2突条部22bおよび第4突条部22dは、レンズG1の内面と凹部13bの底面とにより、光軸Oが延びる方向に圧縮される。その結果、第3突条部22cおよび第4突条部22dの各々は、凹部13bの底面(光軸Oに直交する方向に延びる面)に密着する。
【0036】
従って、レンズ保持部材11をレンズ保持枠13にねじ込むことによって、シール部材20に圧縮力が加わり、これにより、シール部材20は、水などの異物を通過させない程度にレンズG1、レンズ嵌合部11bおよびレンズ保持枠13に密着する。
【0037】
以上により、凹部13b内において、第1突条部22aと第2突条部22bとの間の空間は密閉される。このため、たとえ、レンズG1の側周面S2およびレンズ嵌合部11bの内周面S1の隙間から水又は塵埃が侵入した場合であっても、第1突条部22aはレンズ嵌合部11bに密着することで光軸Oから離間する方向への異物の侵入を抑制し、第2突条部22bはレンズG1に密着することで光軸Oへ向かう方向への異物の侵入を抑制することができる。
以上、説明した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0038】
(1)シール部材20は、レンズG1、レンズ保持部材11およびレンズ保持枠13に密着する。シール部材20の密着によってレンズG1とレンズ保持部材11との間の隙間を介したレンズ鏡筒10内への水又は塵埃の侵入が抑制される。このため、レンズ鏡筒10の防水性および防塵性が高められる。
【0039】
(2)シール部材20は、凹部13bに沿う形状を有する本体部21と、レンズ保持部材11に密着する第1突条部22aと、レンズG1に密着する第2突条部22bとを備える。第1突条部22aおよび第2突条部22bは、光軸Oに直交する方向に互いに離間して設けられる。第1突条部22aは、接触部から侵入した水等の異物がシール部材20を超えて光軸Oから離間する方向へ侵入することを抑制する。第2突条部22bは、接触部から侵入した水等の異物がシール部材20を超えて光軸Oへ向かう方向へ侵入することを抑制する。このように、第1突条部22aおよび第2突条部22bにそれぞれ単一の機能を持たせることで、その機能がより確実に担保される。具体的には、
図3に示すように、レンズ鏡筒10の形状誤差や組み付け誤差によって、第1突条部22aが接するレンズ嵌合部11bの面と、第2突条部22bが接するレンズG1の面との間に段差Lが生じる場合がある。この場合であっても、本体部21が段差Lに応じて弾性変形することで、第1突条部22aがレンズ嵌合部11bに密着し、第2突条部22bがレンズG1に密着した状態が保たれる。このため、レンズ鏡筒10の防水性および防塵性が確保される。
【0040】
(3)シール部材20は、レンズG1およびレンズ保持部材11が互いに接触する部分(接触部)と凹部13bの底面との間に配置される。これにより、1つのシール部材20で、レンズ保持部材11とレンズ保持枠13との間への水等の異物の侵入、およびレンズG1とレンズ保持枠13との間への水等の異物の侵入を抑制することができる。このため、シール部材20をレンズ保持部材11とレンズ保持枠13との間、およびレンズ保持枠13とレンズG1との間にそれぞれ設ける必要がなく、レンズ鏡筒10の防水性および防塵性を確保しつつ部品点数を削減することができる。また、部品点数の削減に伴い、レンズ鏡筒10、ひいてはカメラ1の小型化を図ることができる。カメラ1は搭載スペースが限られた車両に装着される場合、小型化は特に有利な効果である。
【0041】
(4)凹部13bは、光軸Oの延出方向において接触部に対向する位置に凹状に形成され、その内部にシール部材20が収容される。凹部13bが形成されることで、シール部材20のレンズ保持枠13への装着が容易となる。
【0042】
(5)上記実施形態では、レンズ鏡筒10を備えたカメラ1は車外に装着される。この種のカメラ1は、雨等に晒されるため、より高い防水性および防塵性が要求される。この点、上記実施形態のレンズ鏡筒10は、防水性および防塵性が高いため、特に車外に装着されるカメラに適している。
【0043】
(6)レンズ鏡筒10の径方向における本体部21の両端と凹部13bの側周面(光軸Oに沿って延びる面)との間には隙間が形成されている。よって、第1〜第4突条部22a〜22dからレンズG1、レンズ嵌合部11bおよび凹部13bの底面に加わる力が分散されることが抑制され、防水性および防塵性が向上する。
【0044】
(7)レンズ保持部材11をレンズ保持枠13に螺合することで、レンズ保持部材11とレンズ保持枠13との間にレンズG1が保持される。ここで、レンズ保持部材がない構成においては、レンズG1を保持するため、レンズ保持枠の樹脂を溶かす熱かしめを行うことが考えられる。この方法においては、熱かしめを利用するため、レンズG1を保持する部分の形状精度が低く、この部分が想定よりレンズG1の表面中央側に形成されるおそれもある。このため、この方法は、広い画角が必要となる広角レンズには適していない。その点、上記実施形態では、レンズ保持部材11をレンズ保持枠13に螺合することで、高い形状精度で、レンズ保持部材11を通じてレンズG1をレンズ鏡筒10に装着することができる。このため、上記実施形態のレンズ鏡筒10は、広い画角が必要となる広角レンズにも適している。
【0045】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係るレンズ鏡筒210について
図4および
図5を参照して説明する。ここで、第2実施形態に係るレンズ鏡筒210が備える構成のうち、第1実施形態と同じ構成についてはその説明を省略し、第1実施形態と異なる構成についてのみ説明する。
【0046】
本実施形態に係るレンズ鏡筒210は、
図4の断面図に示すように、弾性変形可能な例えばゴムなどの弾性を有する材料で作られたシール部材30を備える。本実施の形態に係るシール部材30は、断面が円形のOリングである。シール部材30は、レンズG1およびレンズ嵌合部11bと、凹部13bの底面との間で圧縮されることによって、
図4に示すように変形している。
【0047】
レンズ嵌合部11bは、レンズ嵌合部11bの撮像素子側端部において、レンズ嵌合部11bの被写体側端部から撮像素子側端部へ向かって、レンズG1が嵌まる孔を次第に拡大するように傾斜した第1斜面部11dを有する。言い換えると、第1斜面部11dは、レンズ嵌合部11bの内周面S1とレンズG1の側周面S2との境界面に近づくにつれて、凹部13bの底面から離れて被写体側へ向かうように傾斜している。
【0048】
第1斜面部11dは、例えば、レンズ嵌合部11bのうち凹部13b内に露出する角部が面取りされることで形成される。
【0049】
レンズG1は、その撮像素子側の面に、レンズG1の外縁部へ向かって厚みを薄くするように傾斜した第2斜面部G1aを有する。言い換えると、第2斜面部G1aは、レンズ嵌合部11bの内周面S1とレンズG1の側周面S2との境界面に近づくにつれて、凹部13bの底面から離れて被写体側へ向かうように傾斜している。
【0050】
第2斜面部G1aは、例えば、レンズG1のうち凹部13b内に露出する角部が面取りされることで形成される。
【0051】
レンズG1の側周面S2とレンズ嵌合部11bの内周面S1とが面接触した状態では、第1斜面部11dと第2斜面部G1aとによって、
図4に示すように、断面が三角形の穴形状を有するシール保持穴部25が形成される。
【0052】
シール部材30は、凹部13bの底面と、第1斜面部11dおよび第2斜面部G1aとの間で圧縮される。このとき、シール部材30の一部が密着部30aとしてシール保持穴部25に応じた形状に弾性変形しつつ、第1斜面部11dおよび第2斜面部G1aに密着する。
【0053】
詳しくは、
図5(a)に示すように、第2斜面部G1aは、シール部材30の密着部30aの下部(第1部分)を上方へ、すなわち、第1斜面部11dへ向かう力F2で押圧する。第1斜面部11dは、
図5(a)に示すように、シール部材30の密着部30aの上部(第2部分)を下方へ、すなわち、第2斜面部G1aへ向かう力F1で押圧する。これらの力F1,F2によって、シール部材30の密着部30aが第1斜面部11dおよび第2斜面部G1aのそれぞれに密着した状態に保たれる。また、シール部材30の密着部30aは、第1斜面部11dおよび第2斜面部G1aに挟まれることによって、シール保持穴部25内に保持されている。
【0054】
以上、説明した第2実施形態によれば、上記(2)を除く第1実施形態の効果に加え、特に以下の効果を奏する。
【0055】
(8)レンズG1には、レンズG1の側周面S2に近づくにつれて被写体側に向かう方向に傾斜した、シール部材30が密着する第1斜面部11dが形成されている。レンズ保持部材11には、レンズG1の側周面S2と接触する面に近づくにつれて被写体側に向かう方向に傾斜した、シール部材30が密着する第2斜面部G1aが形成されている。そして、シール部材30の密着部30aは、光軸Oに直交する方向において、レンズ嵌合部11bの第1斜面部11dおよびレンズG1の第2斜面部G1aの間に位置する。
【0056】
例えば、
図5(b)に示すように、シール部材30とレンズG1との製造誤差や組み付け誤差によって、シール部材30が接するレンズ嵌合部11bの内面と、シール部材30が接するレンズG1の内面との間に段差Lが生じることがある。この場合には、第1斜面部11dと第2斜面部G1aとを接続する部分にも段差が形成される。
【0057】
しかし、このような場合であっても、第1斜面部11dは、シール部材30の密着部30aの上部を下方へ、すなわち、第2斜面部G1aへ向かう力F1で押圧する。また、第2斜面部G1aは、シール部材30の密着部30aの下部を上方へ、すなわち、第1斜面部11dへ向かう力F2で押圧する。
【0058】
このように、レンズ嵌合部11bとレンズG1との間に段差Lが生じた場合であっても、第1斜面部11dおよび第2斜面部G1aが形成されることで、力F1,F2によって、シール部材30がレンズ嵌合部11bおよびレンズG1に密着した状態が保たれる。このため、シール部材30とレンズG1との製造誤差や組み付け誤差に伴う防水性および防塵性の低下が抑制される。
【0059】
(9)本実施形態では、シール部材30は、断面が円形のOリングが利用されている。この種のOリングは規格品であるため入手が容易であり、レンズ鏡筒210の製造が容易となる。
【0060】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係るレンズ鏡筒310について
図6を参照して説明する。ここで、第3実施形態に係るレンズ鏡筒310が備える構成のうち、第2実施形態と同じ構成についてはその説明を省略し、第2実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0061】
本実施形態のレンズ鏡筒310は、
図6の断面図に示すようなシール部材40を備える。シール部材40は、断面が長方形の本体部40aと、断面が半円状の突条部40bとを有する。
【0062】
本体部40aは、
図6に示す断面において、その長辺がレンズ鏡筒310の径方向に沿う向きで、凹部13bの底面に配置されている。突条部40bは、本体部40aの被写体側の側周面に設けられる。突条部40bの下部は、第2斜面部G1aに密着している。突条部40bの上部は、第1斜面部11dに密着している。
【0063】
以上、説明した第3実施形態によれば、(9)を除く第2実施形態の効果に加え、特に以下の効果を奏する。
【0064】
(10)シール部材40の本体部40aは、断面が長方形状で形成されている。このため、シール部材40の本体部40aと凹部13bの底面との接触面積を大きくすることができる。したがって、凹部13b内でシール部材40の位置がずれることが抑制される。
【0065】
<変形例>
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
【0066】
第2実施形態では、レンズG1に第2斜面部G1aが形成され、レンズ嵌合部11bに第1斜面部11dが形成されていたが、さらに、
図7に示すように、凹部13bの底面に第3斜面部13cおよび第4斜面部13dが形成されてもよい。
【0067】
第3斜面部13cは、シール部材30を挟んで第2斜面部G1aに対向する。第4斜面部13dは、シール部材30を挟んで第1斜面部11dに対向する。第3斜面部13cおよび第4斜面部13dによって、
図7に示すように、断面が三角形である凹みが形成される。この凹みは、光軸Oに直交する方向において、接触部に対向する位置で最も深くなるように形成されている。
【0068】
シール部材30は、第3斜面部13cおよび第4斜面部13dによって挟まれることで、
図5(a)に示す第2の実施形態の第1斜面部11dおよび第2斜面部G1aと同様に作用して、第3斜面部13cおよび第4斜面部13dに密着した状態が保たれる。これにより、シール部材30の位置ずれが抑制され、ひいてはシール部材30の防水性および防塵性の低下が抑制される。この変形例は、第1および第3実施形態にも適用可能である。
【0069】
上記各実施形態においては、シール部材20,30,40は、凹部13b内に収容されていたが、この凹部13bを省略してもよい。この場合でも、接着剤等で、シール部材20,30,40をレンズ保持枠13に接着することで、上記各実施形態と同等の防水性および防塵性が得られる。
【0070】
第1の実施の形態において、シール部材20の第1突条部22a、第2突条部22b、第3突条部22cおよび第4突条部22dのうち、いずれかを省略してもよい。
【0071】
上記各実施形態に係るレンズ鏡筒10,210,310,410を備えるカメラ1は、例えば、車外に搭載される車載カメラ、屋外に設置される監視カメラなど、防水性および防塵性が要求される屋外用のカメラに好適に適用される。
【0072】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。