特許第6619150号(P6619150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6619150炭素繊維強化・改質ポリエチレンテレフタレート樹脂の発泡成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619150
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】炭素繊維強化・改質ポリエチレンテレフタレート樹脂の発泡成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20191202BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20191202BHJP
   D01F 9/12 20060101ALI20191202BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20191202BHJP
【FI】
   C08J9/04CFD
   B29C44/00 E
   D01F9/12
   B29K67:00
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-88766(P2015-88766)
(22)【出願日】2015年4月7日
(65)【公開番号】特開2016-199730(P2016-199730A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】599168257
【氏名又は名称】エフテックス有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 隆
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−007212(JP,A)
【文献】 特開2000−169613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/04
B29C 44/00
D01F 9/12
B29K 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:ポリエチレンテレフタレート100重量部、
(B)成分:表面にカルボキシル基を有する炭素繊維5〜150重量部、
(C)成分分子内に2個以上のエポキシ基を含有し且つ1,000〜300,000の重量平均分子量を有する多官能エポキシ化合物0.1〜2重量部、
(D)成分結合反応触媒0.01〜1重量部から構成される組成物を、反応押出法により、ポリエチレンテレフタレートの融点以上の温度で加熱して高溶融粘度の炭素繊維強化・改質ポリエチレンテレフタレート樹脂とした後に、発泡剤と分子内に2個以上のエポキシ基を含有し且つ1,000〜300,000の重量平均分子量を有する多官能エポキシ化合物と結合反応触媒とを加えるか又は発泡剤と分子内に2個以上のエポキシ基を含有し且つ1,000〜300,000の重量平均分子量を有する多官能エポキシ化合物および結合反応触媒を含むマスターバッチとを加え加熱して水平押出方式で発泡させることを特徴とする炭素繊維強化・改質ポリエチレンテレフタレート樹脂の発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
前記ポリエチレンテレフタレート、回収されたポリエチレンテレフタレート成形品の再循環物の一種類以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化・改質ポリエチレンテレフタレート樹脂の発泡成形体の製造方法。
【請求項3】
前記炭素繊維が、ラージトウPAN系炭素繊維チョップおよび回収されたPAN系炭素繊維チョップからなる群の一種類以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の炭素繊維強化・改質ポリエチレンテレフタレート樹脂の発泡成形体の製造方法。
【請求項4】
前記マスターバッチが、非結晶性ポリエステルまたはポリオレフィンからなる群の一種類以上を含有する樹脂を基体とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭素繊維強化・改質ポリエチレンテレフタレート樹脂の発泡成形体の製造方法。
【請求項5】
前記発泡剤が、炭酸ガスおよび窒素ガスからなる群から選択される揮発性発泡剤、加熱分解型発泡剤ならびに低沸点の炭化水素系化合物からなる群の一種類以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭素繊維強化・改質ポリエチレンテレフタレート樹脂の発泡成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリエステル(A)、炭素繊維(B)、多官能性エポキシ樹脂系結合剤(C)および触媒(D)を該ポリエステルの融点以上の温度に加熱して高溶融粘度化した炭素繊維強化・改質ポリエステル樹脂の発泡成形体を製造する方法を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱可塑性ポリエステルは、例えば芳香族飽和ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート(以下に、PET又はペットと称す。)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)等がある。これらは、熱可塑性樹脂として透明性、機械的強度、剛性等に優れた物性を有し、繊維、フィルム、プラスチックス等として広範囲に使用されている。特に、プラスチックス分野では、成形品がボトル、シート、容器、日用品、自動車内装材、機械部品、電気・電子材料、建材、土木材、各種工業用品等に広く活用されている。
また、それらのポリエステルは、更にガラス繊維または炭素繊維を混合して熱可塑性複合材にする事に依り、機械的強度や耐熱性等の諸特性が改善され、一層高級な用途に使用されて来ている。特に、ガラス繊維が安価であるので、これで強化されたPET複合材、PBT複合材、PC複合材が大量に使用されている。一方、炭素繊維は高強度であるがあまりにも高価格であるために、これらのポリエステル複合材は、特殊用途に少量にしか使用されて来なかった。
【0003】
近年、土木・建築、自動車産業、新幹線車両業、宇宙航空産業、リニヤーモーターカー等の先端産業分野に於いては、構成材料の機械的強度の改善による一層の軽量化・省エネルギー化をはじめ、耐食性、電気特性、耐熱性、放熱性等の一層の性能改善が求められている。
合成樹脂は、一般に分子量を増大すれば、成形加工性および物性が改善される。しかしながら、ポリエステルは、その製造法が重縮合法であることに起因して、例えば5万以上の高分子量体が得られ難く、溶融状態では水飴状であり、水平押出法による押出成形体、特に押出発泡成形体を安定に製造することが、極めて困難である。また、このポリエステルの中分子量体を2倍程度の高分子量化する固層重合法は、数時間を必要とするために生産性が低った。さらに、石油化学コンビナートの大規模製造設備を必要とする弱点があった。
【0004】
本発明者らは、特許文献1、特許文献2および特許文献3に示される様に、これらポリエステルで末端にカルボキシル基を保有する中分子量体を反応押出法を採用し、エポキシ樹脂系結合剤(鎖延長剤、増粘剤とも称す)および触媒に依り、ポリエステル同士を反応させて数分以下の短時間で高分子量化する高生産性を実現し、コンパクトで安価な設備を使用する反応押出法による製造法を提供した。しかしながら、ポリエステルの溶融張力の増大による成形加工性については画期的な進歩があったが、一方機械的物性の改善については、当初に本発明で期待されていた効果は殆ど見られなかった。
また、本発明者は、特許文献4および特許文献5に示される様に、ポリエチレンテレフタレート(PET)に回収炭素繊維・6mm長の15および30重量%をエポキシ樹脂系結合剤(鎖延長剤)および触媒の存在下に二軸押出機で反応押出法にて反応させて、回収炭素繊維強化・改質ペット樹脂とし、それらの機械的強度を引張強度で約2倍から2.4倍および曲げ弾性率で約4倍から6.8倍に大幅改善している。また、本発明者は、特許文献6では、太番手のPAN系レーヨンを原料とした安価な新品炭素繊維・6mm長(ZOLTEK社製)を使用し、同様にしてZOLTEK炭素繊維強化・改質ペット樹脂とし、それらの機縅的強度を引張強度で約3倍から4倍および曲げ弾性率で約6倍から10倍に一層大幅に改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】第3503952号公告
【特許文献2】国際公開WO2009/004745A1
【特許文献3】米国8258239B2号登録
【特許文献4】特願2014−179595号
【特許文献5】特願2014−225597号
【特許文献6】特願2015−024685号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
土木・建築、自動車産業、新幹線車両業、航空宇宙産業、リニヤーモーターカー等の先端産業分野に於ける構成材料の機械的強度の改善による一層の軽量化・省エネルギー化をはじめ、耐食性、電導性、耐熱囲、放熱性等の一層の性能改善をすることが求められている。特に、本発明は、強度の不足している合成木材の強度改善による住宅屋外の構造物、高層建築の軽量化資材、沿岸高速道路の高強度・耐食資材、海洋構築物の耐食・高強度資材、水上飛行艇などの耐食資材等の用途開発を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、強度の改善された炭素繊維強化・改質ペット樹脂を発泡させて、軽量化された新材料を製造する方法を提供することを目的とする。即ち、本発明は、熱可塑性ポリエステル(A)、炭素繊維(B)、多官能性エポキシ樹脂系結合剤(C)、触媒(D)を加熱混合して結合反応させることに依り、高溶融粘度化して成形加工性の改善された炭素繊維強化ポリエステル樹脂を製造し、次いで発泡成形法により軽量化されて機械的強度、耐食性等の諸物性も向上させた発泡成形体を製造する方法を提供するものである。
【0008】
本発明は、更に詳しくは下記の製造方法を提供するものである。
本発明は、第1に(A)成分のポリエステル100重量部、(B)成分の炭素繊維5〜150重量部、(C)成分の結合剤として該分子内に2個以上のエポキシ基を含有する多官能エポキシ化合物0.1〜2重量部、(D)成分の結合反応触媒0.01〜1重量部から構成される組成物を、該ポリエステルの融点以上の温度で加熱して高溶融粘度の炭素繊維強化・改質ポリエステル樹脂とした後に、発泡剤を加えて発泡させることを特徴とする炭素繊維強化・改質ポリエステル樹脂の発泡成形体の製造方法を提供するものである。
【0009】
本発明は、第2に(A)成分のポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートまたはそれらの回収された成形品の再循環物のいずれか一種類以上を含有することを特徴とする炭素繊維強化・改質ポリエステル樹脂の発泡成形体の製造方法を提供するものである
【0010】
本発明は、第3に(B)成分の炭素繊維が、回収された炭素繊維の短繊維または粉末状繊維、再生された炭素繊維の短繊維または粉末状繊維からなる群のいずれか一種類以上を含有することを特徴とする炭素繊維強化・改質ポリエステル樹脂の発泡成形体の製造方法を提供するものである。
【0011】
本発明は、第4に(B)成分の炭素繊維が、工業製品の炭素繊維の短繊維または粉末状繊維、電気化学的に酸化処理された工業製品の炭素繊維の短繊維または粉末状繊維または化学的酸化処理された工業製品の炭素繊維の短繊維または粉末状繊維のいずれか一種類以上を含有することを特徴とする炭素繊維強化・改質ポリエステル樹脂の発泡成形体の製造方法を提供するものである。
【0012】
本発明は、第5に発泡剤が、揮発性発泡剤であり、不活性ガスの炭酸ガスおよびまたは窒素ガスであることを特徴とする炭素繊維強化・改質ポリエステル樹脂の発泡成形体の製造方法を提供するものである。
【0013】
本発明は、第6に発泡剤が、加熱分解発泡剤であることを特徴とする炭素繊維強化・改質ポリエステル樹脂の発泡成形体の製造方法を提供するものである。
【0014】
本発明は、第7に発泡剤が、低沸点の炭化水素系化合物であることを特徴とする炭素繊維強化・改質ポリエステル樹脂の発泡成形体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、最初にポリエステルの分子末端のカルボキシル基を触媒の存在下に結合剤としての多官能性エポキシ樹脂のエポキシ環の開裂を伴う化学反応で新たにヒドロキシ基を含むエステル結合を形成させて巨大分子量とし、かつ高溶融粘度のポリエステル樹脂に改質することが出来る。
なお、本発明の炭素繊維強化・改質ポリエステル樹脂は、JIS法メルトフローレート(280℃、荷重2.16Kg)が20ないし40g/10分のペレットが、ストランド切れが少なくて高速度で製造し易い。しかしながら、水平押出方式の発泡法では溶融粘度が不足気味場合は成形安定性が良くない。そこで、本発明では、成形加工時に(C)成分の結合剤および(D)成分の結合反応触媒をそのままか、あるいは非結晶性ポリエステルまたはポリオレフィンからなる群のいずれか一種類以上を含有する樹脂を基体とするマスターバッチを、発泡成形時に併用する製造法を提供している。マスターバッチの添加量は、炭素繊維強化ポリエステル樹脂に対して1ないし10重量部、好ましくは2ないし6重量部である。JIS法メルトフローレート(280℃、荷重2.16Kg)で、0.1ないし20g/10分が押出発泡成形に好ましい。
本発明では、安価な産業用炭素繊維、一層安価な回収炭素繊維および航空機端材の炭素繊維強化複合材(CFRP)からの再生炭素繊維などが原料として好適に使用する事が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分のポリエステル]
本発明における主原料としての(A)成分のポリエステルは、芳香族飽和ポリエステルである。この系列のポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、イソフタール酸を少量共重合した低融点PET、エチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸の共重合体(PETG)、ポリテトラメチレンテレフタレート(ポリブチレンテレフタレート、PBT)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等が挙げられる。ポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましい。大量生産され極めて安価なポリエチレンテレフタレート(PET)が、特に好ましい。
また、本発明において主原料としての(A)成分のポリエステルは、他の系列のものとしてビスフェノールAを主原料とするポリカーボネート(PC;ポリ−4,4‘−イソプロピレンジフェニルカーボネート)が使用出来る。
【0017】
本発明で使用できる代表的ポリエステルとしてのPETは、1,1,2,2−テトラクロロエタン/フェノール(1:1)混合溶媒に溶解して25℃で測定した固有粘度が0.50dl/g以上(繊維用)であることが好ましく、0.70dl/g以上(シート用)であることがより好ましく、0.80dl/g以上(ボトル用)であることが更に一層好ましい。固有粘度が0.50dl/g未満であると、本発明によっても結合反応が困難であり、得られるポリエステル・炭素共重合体が必ずしも優れた機械的強度を得ることができない恐れがある。固有粘度の上限は、特に制限されないが、通常1.1dl/g以下、好ましくはペットボトル用として大量生産され比較的安価な0.80dl/g前後である。市販PETの入手可能の上限は、固有粘度が1.25dl/gであるが、単独使用では成形加工性が悪化するので、本発明では固有粘度が0.600.80dl/gのものと混合して使用することが好ましい。
【0018】
[(B)成分の炭素繊維]
本発明における(B)成分の炭素繊維は、その表面に酸素含有官能基、特にカルボキシル基を保有するものが好ましい。炭素繊維は、第一系列としてPAN系工業製品を使用する事が好ましい。例えば、米国ZOLTEK社の安価な炭素繊維チョップ(米国・ZOLTEK社のラージトウ(LT)PAN系炭素繊維「Panex35」6mm長)が特に好ましい。東レ(株)の航空機用の高性能炭素繊維「トレカ」T500、T600、T700シリーズも使用できる。また、産業用途のカットファイバーのT008シリーズ、T010シリーズ、TS12−006(カット長312mm)、または「トレカ」ミルドファイバーのMLDシリーズ(繊維長30150μm)なども原料として使用できる。また、一般的にこれらの炭素繊維工業製品は、カルボキシル基の含有量が比較的多く存在する。第二系列として(株)クレハおよび大阪ガスケミカル(株)のピッチ系炭素繊維の工業製品も使用することが出来る。これらは比較的に官能基の含有量が多いが、強度がやや小さい。成形品の強度に等方性の利点を持つので、好ましく使用できる。
【0019】
本発明の(B)成分の炭素繊維は、第三系列として炭素繊維強化熱硬化性エポキシ樹脂複合材(CFRP)から回収される再生炭素繊維を好ましく使用することが出来る。素原料となる炭素繊維強化熱硬化性エポキシ樹脂複合材(CFRP)は、現状では航空機を組立てる時に約40%副生する端材、そのボーリング時に副生するドリルの切粉、その他に釣り竿、ゴルフティ等から得られる。将来は、大型航空機の機体の約65%を占めるCFRPのスクラップから大量に派生すると予想される。
その他、航空機機体などの製造時に半端品として回収されるボビン巻の長繊維のカットファイバー(カット長312mm)は、良質で極めて安価なので、良好に使用できる。
再生炭素繊維は、実施例の製造例1に例示される様に、八戸・高専の杉山教授法に準じて反応条件の制御下で電解酸化処理等をする事に依り、多数のカルボキシル基を導入した物を特に好適に使用することが出来る。本発明の再生炭素繊維のカルボキシル基量は、通常、0.010.20mmol/gの範囲を含有する。好ましく使用できる範囲は、0.020.15mmol/gである。
再生炭素繊維の繊維長は、航空機等のCFRP製端材の寸法および組立時のボーリングによる切粉の大きさに従属する。本発明では、繊維長として長繊維(100mm以上)、中繊維(3100mm)または粉末状繊維(3mm以下)と呼称する。いずれも、本発明で好ましく使用できる。
【0020】
[(C)成分の結合剤]
本発明の(C)成分の結合剤は、重量平均分子量が1,000〜300,000であることが好ましく、該分子内に2〜100個のエポキシ基を含有する高分子型多官能エポキシ化合物を単独または2種類以上の混合体として使用することができる。高分子量の骨格を形成する樹脂にエポキシ環を含むグリシジル基をペンダント状に吊下げたものや分子内にエポキシ基を含むものの市販品、例えば、日油(株)の「マープルーフ」シリーズ、BASFジャパン(株)の「ジョンクリルADR」シリーズを使用することができる。骨格となる樹脂は、アクリル樹脂系やスチレンアクリル樹脂系がポリオレフィン系(PP、PS、PE)よりも好ましい。何故ならば、樹脂の溶解度パラメーターは、原料PET 10.7、エポキシ樹脂10.8、ポリアクリル酸メチル10.2、ポリアクリル酸エチル9.4、ポリプロピレン(PP)9.3、ポリメタクリル酸エチル9.0、ポリス散れ(PS)8.9、ポリエチレン(PE)8.0であり、数値が近いほど混合性が良いからである。
なお、ポリオレフィン系は12%の混合でも、PET系樹脂のフィルム・シートを白濁させるので、成形品が透明性を必要とする場合には適さない。しかしながら、発泡体とパイプあるいは220℃耐熱・耐油性容器などは白色であるので、それら透明性を必要としない用途と本発明の黒色成形体には使用出来る。
【0021】
(C)成分の多官能エポキシ化合物の配合量は、(A)成分のポリエステル100重量部に対して0.1〜5重量部である。それは、(C)成分の種類と(B)の炭素繊維の種類と添加量に依って大幅に異なる。一般的には、0.1重量部未満では分子量と溶融粘度の増加効果が不充分のため、成形加工性も不充分で成形品の基本物性や機械的特性が劣ることになる。2重量部を越えると逆に成形加工性が悪化し、樹脂の黄変・着色とゲルやフィッシュアイ(FE)が副生したりする。
【0022】
[(D)成分の結合反応触媒]
本発明における(D)成分としての結合反応触媒は、(1)アルカリ金属の有機酸塩、炭酸塩および炭酸水素塩、(2)アルカリ土類金属の有機酸塩、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群から選ばれた一種類以上を含有する触媒である。有機酸塩としては、カルボン酸塩、酢酸塩等が使用できるが、カルボン酸塩の中で特にステアリン酸塩が好ましい。カルボン酸の金属塩を形成する金属としては、リチウム、ナトリウムおよびカリウムのようなアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムのようなアルカリ土類金属を使用できる。
この結合反応触媒としてのカルボン酸塩の配合量は(A)成分のポリエステル100重量部に対して0.01〜1重量部である。特に、0.1〜0.5重量部であることが好ましい。0.01重量部未満では触媒効果が小さく、共重合反応が未達となって分子量が充分増大しないことがある。1重量部を超えると局部反応によるゲル生成や加水分解の促進による溶融粘度の急上昇による押出成形機内のトラブルなどを惹起させる。
【0023】
本発明では、(C)成分の結合剤および(D)成分の結合反応触媒が、非結晶性ポリエステルまたはポリオレフィンからなる群のいずれか一種類以上を含有する樹脂を基体とするマスターバッチの形態で使用されることができる。その実例を、製造例2および製造例3に例示した。
【0024】
本発明では、展着剤を有効に使用できるが、(A)成分のポリエステルおよび(B)成分の炭素繊維が粉体の場合に特に有効である。通常、パラフィンオイル、流動パラフィン、トリメチルシラン等が使用できる。流動パラフィンが、無極性で高沸点であり適度の粘着流体であるために特に好ましい。添加量は、(A)成分に対して0.011重量部である。これらの展着剤は、(B)成分の炭素繊維を(A)成分のポリエステルのペレットまたは粉体に、均一付着させるために必要であり、また炭素繊維・粉体が大気中に舞い上がり人体や電気計装機器に悪影響を与えることを防止するために必要欠くべからざる助剤である。
【0025】
本発明の発泡剤は、従来から一般にしられた発泡剤を使用することが出来る。例えば、揮発性発泡剤として、不活性ガスの炭酸ガスおよびまたは窒素ガスを使用することが出来る。これらは、火災を起こさず、防爆仕様の装置を必要としないので、中小企業の町工場でも操業できる。本発明の低発泡倍率の発泡体の工業生産に適する。
本発明の発泡剤として、加熱分解発泡剤を使用することが出来る。ポリエステル樹脂の融点が200℃を越えるので、実際に使用できる化学物質は少ない。ポリプロピレンの低発泡に使用される重曹系の発泡剤が使用できる。しかし、水蒸気の発生を伴うので、加水分解し易いポリエステル樹脂の発泡成形では短期的な装置整備が必要となる。
低沸点の炭化水素系化合物、例えばフロパン、ブタン、ヘキサン等も使用できる。520倍の高発泡用に適する。しかし、発泡倍率の増大に従って発泡体の強度が激減するので、課題が残る。可燃性ガスの取扱いにより、設備や建屋の防爆が必要となり、大規模事業者しか操業できないという課題が残る。
【0026】
[配合方法、反応押出方法]
次に、本発明のポリエステル樹脂を配合する方法に付いて説明する。(A)成分のポリエステルは、通常のバージンペレット、回収したフレーク、粒状物、粉末、チップ等の任意形状のものが使用し得る。一般的には、主成分のポリエステルを乾燥する方が好ましい。各成分をタンブラーやヘンシェルミキサー等の混合機で混和させてから、トップフィード法として押出装置に供給する。炭素繊維が粉体状の場合に適する。加熱溶融する温度は、ポリエステルの融点の250度以上で300度以下であることが反応押出法の観点から望ましい。特に、280℃以下が好ましく、特に好ましくは265℃である。300℃を越えると炭素繊維の表面処理剤やサイジング剤の変質およびポリエステルの変色や熱分解が生じることがある。
上記の同時に混合する方法以外に、サイドフィード法として二軸押出装置に(A)成分のポリエステルと(C)成分の結合剤と(D)成分の触媒を供給して反応押出をしながら、二軸押出装置の出口部分に(B)成分の炭素繊維を注入して、炭素繊維の切断を防いで複合材を生産することが出来る。炭素繊維が短繊維の場合に適する。
反応押出装置としては、単軸押出機、二軸押出機、それらの組合せの二段押出機等を使用することができる。単軸押出機は、安価であり、炭素繊維が粉体状の場合に適する。二軸押出機は、高価であるが、短繊維の炭素繊維をサイドフィードする場合に適する。
【0027】
本発明の高強度・軽量の低発泡体の用途例としては、当面は住宅の屋外デッキ資材および海洋構築物資材が想定される。特に、米国と欧州における住宅の屋外デッキ資材は年間260万トンに達する。従来は、天然木材に依存して来たが、南洋材や南米材の資源枯渇に直面して回復の見通しが無い。現在、木粉/ポリエチレンと木粉/ポリプロピレンの合成木材が使用されている。しかしながら、天然木材の強い強度(曲げ弾性率614GPa)に比べると、木粉/ポリエチレン(13GPa)と木粉/ポリプロピレン(約5GPa)の合成木材の強度が弱すぎる。しかしながら、北米の合成木材の市場は約69万トン/2013年で木粉/ポリエチレン83パーセント、木粉/ポリプロピレン9%、木粉/塩化ビニル7%、その他1%とされている。
本発明の炭素繊維強化・改質ポリエステル樹脂は、固体成形体の強度が大きい(ZOLTEK 30%で曲げ弾性率22GPa)ので、その低倍率の発泡成型体の開発が期待されている。
【実施例】
【0028】
次に本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。本発明のポリエステルおよびポリエステル・炭素繊維複合材についての評価方法は以下の通りである。
(1)PET等の固有粘度(IV値)の測定法
1,1,2,2−テトラクロロエタンとフェノールの等重量の混合溶媒を使用し、キャノンフエンスケ粘度計で25℃にて測定した。または、メーカーのカタログ値を採用した。
(2)メルトフローレート(MFR)の測定法
JIS K7210の条件20に従い、温度280℃、または温度260℃、荷重2.16kgの条件で測定した。但し、樹脂は予め120℃×12時間または140℃×4時間で、熱風乾燥または真空乾燥されたものを使用した。
(3)比重の測定法
JIS K7112のA法(水中置換法)に従い、樹脂ペレットまたは成形体の小片についてアルコールを液体として測定した。または、JIS K7222の寸法測定法でも測定した。
(4)機械的強度の測定法
試作ペレットが少量の場合は小型試験片を作成して実施した。
例えば、住友重機械工業(株)製の射出成形機SE18DUZ(型締め圧18トン、スクリュー径16mm)を使用し、成形温度270℃、金型温度35℃、冷却時間1520秒の条件で成形した。
試験片の形状:引張試験片 JIS K7162 5A型(厚み2mm)
曲げ試験片 短冊型 80mm×10mm(厚み4mm)
試作ペレットが多量の場合(3Kg以上)は多目的試験片を作成して実施した。
試験片の形状:ISO 20753、JIS K7139 A1型
全長さ120mm、厚み4mm、チャック部幅20mm、くびれ部幅10mm、
同その長さ80mm(Zランナー方式)
引張試験:引張強度は、試験速度2mm/分にて実施し、35点の平均値で評価した。ヤング率は、最大荷重の25%と75%の直線回帰により算出した(JIS K7073ほか)。
曲げ試験:曲げ強度は、3点曲げを試験速度5mm/分にて実施し、35点の平均値で評価した。
曲げ弾性率は、最大荷重の25%と75%の直線回帰により算出した(JIS K7074ほか)。
(5)酸性官能基量およびカルボキシル基量の測定法
JIS K 0070に準じ、Boehm法で測定した。炭素繊維またはポリエステルのサンプルに水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムを個々に加え、電位差自動測定装置を使用して塩酸溶液を用いて逆滴定をした。全酸性官能基量(全酸量)を水酸化ナトリウム添加後の塩酸溶液による逆滴定で、また強酸性官能基量(カルボキシル基量)を炭酸水素ナトリウム添加後の塩酸溶液による逆滴定で測定した。なお、弱酸性官能基量(フェノール系水酸基量)は、全酸量―カルボキシル基量から求めた。例えば、カルボキシル基量は、電池負極のカーボン材の表面では0.010.15mmol/g、PET樹脂で0.04以下mmol/gである。
【0029】
本発明に係わる特徴的な素材についての製造例を示す。本発明の主たる構成要素である(B)成分の炭素繊維については、ポリエステル樹脂との密着性と改質剤との結合反応性のために酸性官能基およびカルボキシル基を含有させることが好ましい。なお、新品工業製品にも、大小はあるが酸性官能基およびカルボキシル基が含有されている。
【0030】
[製造例1]
(B)成分の酸性官能基およびカルボキシル基を含有する再生炭素繊維の製造
[再生炭素繊維の焼成法およびアルカリ液の電解酸化法に依る製造例と分析例]
特許文献(特開2013−249386号)に準じて、航空機組立時に副生したCFRPの端材約30Kgを10cm角以下に裁断し、電気炉で400500℃にて熱硬化性エポキシ樹脂部分を焼成除去して再生炭素繊維(集結体)約15Kgを得た。
再生炭素繊維(集結体)5gを500ccのビーカーに入れ、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液200mLに浸漬させた。再生炭素繊維集結体側を陽極とし、陰極側をチタニウム電極として、3V×0.5Aにて直流電解反応を1時間実施した。この電解酸化処理に依り開繊した再生炭素繊維を中性になるまで水洗し、乾燥してから保管した。これを3回繰り返した。
再生炭素繊維1gを各200ccの三角フラスコに秤量し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液または炭酸水素ナトリウム水溶液の各50mLに浸漬させた。栓をしてからその2体を24時間浸透機にかけた。各容器の上澄み液5mLを0.05mol/L塩酸水溶液で滴定し、全酸量とカルボキシル基量とを同定した。このBoehm法に依る分析を焼成後の再生炭素繊維と新品炭素繊維についても実施し、その結果を比較して以下に示す。
【表1】
カルボキシル基は、新品炭素繊維には極めて微量にしか存在しないが、本発明の焼成後の再生炭素繊維には0.030.05mmol/gも存在し、電解酸化後の再生炭素繊維にはその23倍の0.10mmol/gにまで増加していた。尚、PET樹脂では0.04以下mmol/gであるので、本発明の再生炭素繊維のカルボキシル基量は充分である。
【0031】
上記で得た再生炭素繊維集結体約1Kgを10Lの電解槽に入れ、水酸化カリウム水溶液を張込んだ。この再生炭素繊維集結体を銅製の陽極側とし、陰極側をチタニウム製電極として、低電流・低電圧の直流電解反応を4時間実施した。再生炭素繊維集結体は、殆どが開繊していたが、更に機械的に開繊して黒色光沢性の再生炭素繊維を得た。繊維長は、510cmであった。約50%のアルカリ水を含む再生炭素繊維を酸性溶液で中和し、水洗した後に180℃で一夜乾燥して保管した。同様操作を数回繰り返し、再生炭素繊維5Kgを製造した。
【0032】
[製造例2]
(C)成分および(D)成分の改質剤マスターバッチ(MB−G)
[(C)成分および(D)成分にPETGを基体に使用した改質剤マスターバッチ(MB−G)の製造例]
改質剤マスターバッチ(MB−G)は、通常(C)成分の結合剤マスターバッチおよび(D)成分の触媒マスターバッチについて、それらペレットの1対1の配合から構成される。
[1](C)成分の結合剤マスターバッチの製造例
(C)成分の結合剤として、分子内に2個以上のエポキシ基を含有する多官能エポキシ化合物の代表例として日油(株)の「マープルーフ G−0130SP」(エポキシ数 10個/数平均分子量、数平均分子量5,500、エポキシ等量530g/eq.:略称「EP−A」)を採用し、基体樹脂としてイーストマン社の非結晶性コポリエステル「Eastar PETG 6763」を使用した。
まず、このEP−Aの15重量部(15Kg、白色粉末)、基体樹脂としてPETG 6763の粉砕された白色粉末50重量部(50Kg)、PETG 6763の透明ペレット50重量部(50Kg)および展着剤としての流動パラフィン0.1重量部(0.10Kg)の配合物115.1Kgをヘンシェルミキサーで混合した。
東芝機械(株)製の同方向2軸押出機(スクリュー口径70mm、L/D=32、2ベント式)を使用し、シリンダーとダイスの設定温度を100220℃およびスクリュー回転数160rpmとし、配合物115Kgをホッパーから容量フィーダーを経てトップフィードした。ストランド金型の樹脂圧力は4.95.0MPaで、金型出口から水盤中へのストランドは直線状で安定し、吐出速度は117Kg/hであった。
この温かい白色ペレットA剤((C)成分の結合剤マスターバッチ)を直ちに70℃のホッーに移送して一夜流動乾燥して後に、紙・アルミ・ポリエチレンの三層防湿袋に貯蔵した。収量は107Kgであった。
【0033】
[2](D)成分の触媒マスターバッチの製造例
結合反応用触媒の代表例としてのステアリン酸カルシウム50%、ステアリン酸リチウム25%およびステアリン酸ナトリウム25%から成る白色粉末状複合触媒(略称:「C10」)10重量部(10Kg)、基体樹脂としてPETG 6763の粉砕された白色粉末50重量部(50Kg)、PETG 6763の透明ペレット50重量部(50Kg)および展着剤としての流動パラフィン0.2重量部(0.20Kg)の配合物110.2Kgをヘンシェルミキサーで混合した。これを押出機上のホッパーに移納した。前記とほぼ同様操作にて押出を実施した。ストランド金型の樹脂圧力は7.19.6MPaで、金型出口から水盤中への白色ストランドは直線状で安定し、吐出速度は200Kg/hであった。この温かい白色ペレットB剤((D)成分の触媒マスターバッチ)を直ちに70℃のホッーに移送して一夜流動乾燥して後に、紙・アルミ・ポリエチレンの三層防湿袋に貯蔵した。収量は102Kgであった。
この(C)成分の結合剤マスターバッチA剤100Kgおよび(D)成分の触媒マスターバッチB剤100Kgの白色ペレットを1対1に配合し、改質剤マスターバッチ(MB−G)200Kgを製造した。
【0034】
[製造例3]
(C)成分および(D)成分の改質剤マスターバッチ(MB−E)
[(C)成分および(D)成分にポリエチレンを基体に使用した改質剤マスターバッチ(MB−E)の製造例]
改質剤マスターバッチ(MB−E)は、通常(C)成分の結合剤マスターバッチおよび(D)成分の触媒マスターバッチについて、それらペレットの2対1の配合から構成される。
[1](C)成分の結合剤マスターバッチの製造例
基体樹脂としてPETGの代わりに、低密度ポリエチレンの粉砕物(MI 2)を使用し、(C)成分の結合剤:略称EP−Aの15重量部および結晶核剤としてタルク1重量部の濃度にして、製造例2と同様に実施した。この温かい白色ペレットAE剤((C)成分の結合剤マスターバッチ)を直ちに70℃のホッパーに移送して一夜流動乾燥して後に、紙・アルミ・ポリエチレンの三層防湿袋に貯蔵した。収量は約100Kgであった。
[2](D)成分の触媒マスターバッチの製造例
基体樹脂としてPETGの代わりに、低密度ポリエチレンの粉砕物(MI 2)を使用し、(D)成分の複合触媒:略称C10の10重量部の濃度にして、製造例2と同様に実施した。この温かい白色ペレットBE剤((D)成分の触媒マスターバッチ)を直ちに70℃のホッパーに移送して一夜流動乾燥して後に、紙・アルミ・ポリエチレンの三層防湿袋に貯蔵した。収量は約100Kgであった。
この(C)成分の結合剤マスターバッチAE剤および(D)成分の触媒マスターバッチBE剤の白色ペレットを2対1に配合し、改質剤マスターバッチ(MB−E)150Kgを製造した。
【0035】
[製造例4]
[ペット樹脂と炭素繊維チョップ15%と改質剤から成るZOLTEK炭素繊維強化・改質ペット樹脂ペレットR1の製造]
A成分のポリエステルとして汎用ペット樹脂ペレット(ボトルグレード:台湾・南亜3802T、IV値0.80)100重量部(乾燥後の水分含有率 約100ppm以下)とC成分の結合剤として多官能エポキシ樹脂0.60重量部、D成分の結合反応の混合触媒0.16重量部とE成分の展着剤としての流動パラフィン0.06重量部をスーパーミキサーで均一混合した。これらを主体樹脂押出用の第1ホッパーに入した。一方、B成分の炭素繊維としてLT炭素繊維チョップ(米国・ZOLTEK社のラージトウ(LT)レーヨンからのPAN系炭素繊維「Panex35」6mm長)をサイドフィーダー用の第2ホッパーに入した
東芝機械(株)製の同方向2軸押出機(口径60mm、1ベント式)を使用し、この押出機の10ブロックから成るシリンダーとダイスの設定温度を150270℃およびスクリュー回転数150rpmとした。重量式計量フィーダーを使用し、第1ホッパーからA成分とC成分とD成分等の混合樹脂を100Kg/hの速度で反応押出を行い、また第2ホッパーから炭素繊維チョップを17.6Kg/h(炭素繊維の含有量15%)の速度で連続的にサイドフィードした。
ストランドを口径3mmの斜め下方向のノズルから水中に連続的に押出し、回転カッターで切断して黒色樹脂ペレットR1約180Kgを製造した。金型出口から水盤中へのストランドは直線状であり溶融張力が増加していた。その形状は、円柱状で直径約3.4mm×長さ約6mmであった。また、MFR(260℃、荷重2.16Kg)は、6.2g/10分であった。
この炭素繊維強化・改質ペット樹脂の黒色ペレットR1を120℃一夜熱風乾燥し、日精樹脂工業(株)製のハイブリッド式射出成形機FNZ60(型締め圧140トン、スクリュー径60mm)を使用し、成形温度280℃、金型温度130145℃、射出圧力53MPa、射出速度12mm/s、スクリュー回転数80rpmおよび冷却時間20秒の条件にて、下記の射出成形体を成形した。
多目的試験片の形状:ISO 20753、JIS K7139 A1型
全長さ120mm、厚み4mm、チャック部の幅20mm、くびれ部の幅10mm、
同その長さ80mm(Zランナー方式)
尚、このZOITEK炭素繊維(CF15%)強化・改質ペット樹脂ペレットR1は、バリの副生が無くて良好な射出成型性を示した。試験片の表面は平滑で艶があった。引張速度2mm/分および曲げ速度5mm/分での試験を実施した。このペレットの物性値を表1に示した。
製造例8のペット樹脂のみの透明ペレットP1に比べると、本例R1のZOLTEK炭素繊維約15%の混合効果は、引張強さ2.9倍、ヤング率4.1倍、曲げ強さ3.5倍、曲げ弾性率5.7倍である。
【0036】
[製造例5]
[ペット樹脂と炭素繊維チョップ30%と改質剤から成るZOLTEK炭素繊維強化・改質ペット樹脂ペレットR2の製造] ZOL 30%
前記の製造例4とほぼ同一条件にて、ペレットR2の製造を実施した。但し、炭素維繊チョップの含有量を約30%にする為にサイドフィードの速度を2倍にした。A成分のポリエステルとして汎用ペット樹脂ペレット(ボトルグレード:台湾・南亜3802T、IV値0.80)100重量部(乾燥後の水分含有率 約100ppm以下)とC成分の結合剤として多官能エポキシ樹脂0.56重量部、D成分の結合反応の混合触媒0.16重量部とE成分の展着剤としての流動パラフィン0.06重量部をスーパーミキサーで均一混合した。これらを主体樹脂押出用の第1ホッパーに入した。一方、B成分の炭素繊維としてLT炭素繊維チョップ(米国・ZOLTEK社のラージトウPAN系炭素繊維「Panex35」6mm長)をサイドフィーダー用の第2ホッパーに入した。
同方向2軸押出機(口径60mm、1ベント式)を使用し、この押出機の10ブロックから成るシリンダーとダイスの設定温度を150270℃およびスクリュー回転数150rpmとした。重量式計量フィーダーを使用し、第1ホッパーからA成分とC成分とD成分等の混合樹脂を100Kg/hの速度で反応押出を行い、また第2ホッパーから炭素繊維チョップを42Kg/h(炭素繊維の含有量30%)の速度で連続的にサイドフィードした。
ストランドを口径3mmの斜め下方向のノズルから水中に連続的に押出し、回転カッターで切断して黒色樹脂ペレットR2約250Kgを製造した。金型出口から水盤中へのストランドは直線状であり溶融張力が増加していた
その形状は、円柱状で直径約3.4mm×長さ約6mmであった。また、MFR(260℃、荷重2.16Kg)は、6.7g/10分であった。この炭素繊維(CF15%)強化・改質ペット樹脂ペレットR2は、バリの副生が無くて良好な射出成型性を示し、試験片の表面はほぼ平滑で艶があった。このペレットの物性値を表1に示した。製造例8のPET樹脂のみの透明ペレットP1に比べると、本例R2のZOLTEK炭素繊維約30%の混合効果は、引張強さ3.5倍、ヤング率6.1倍、曲げ強さ3.9倍、曲げ弾性率10.3倍であった。射出成形性が良好で、機械的強度が大幅改善された炭素繊維強化・改質ペット樹脂ペレットが得られた。
【0037】
【表2】
【0038】
[製造例6]
[ペット樹脂と回収炭素繊維チョップ約15%と改質剤マスターバッチから成る回収炭素繊維強化・改質ペット樹脂ペレットR3の製造]
A成分のポリエステルとして市販ペット(PET)樹脂ペレット(汎用ボトルグレード:IV値0.80、MFR 35g/10分、280℃・2.16Kg)100重量部(120Kg;120℃・12時間での熱風乾燥後の水分含有率 約100ppm)と改質剤マスターバッチ(MB−G:PETG基体、製造例2)6重量部(7.2Kg;C成分の結合体としての多官能エポキシ樹脂:EP−Aの0.45重量部、D成分の結合反応触媒:C10の0.30重量部)とをタンブラーを使用して、30rpm×10分間にわたり混合した。これらを第1ホッパーに入した。
B成分の炭素繊維として回収炭素繊維チョップ(ボビン巻のPAN系炭素繊維の回収品を集めて、6mm長に裁断したもの。40Kg)を第2ホッパーに入した。
ドイツ・ベルストルフ社製の同方向2軸押出機(ZE40E:スクリュー口径42mm、L/D=38)を使用し、この押出機の10ブロックから成るシリンダーとダイスの設定温度を150270℃およびスクリュー回転数100rpmとし、回収炭素繊維チョップを第5ブロックに連続的に注入した。
重量式計量単軸フィーダーを使用し、第1ホッパーからA成分とC成分とD成分の混合樹脂ペレットを18.02Kg/hの速度で、また第2ホッパーから回収炭素繊維チョップを3.0Kg/h(炭素繊維の含有量14.3%)の速度で押出機に投入した。
ストランドを口径3mmの斜め下方向のノズルから三本を水中に連続的に押出し、引取り速度20m/分にて、回転カッターで切断して黒色樹脂ペレットRを製造した。ストランド金型の樹脂圧力は0.901.2MPaで、金型出口から水盤中へのストランドは直線状であり溶融張力が増加していた。
この温かい黒色樹脂ペレット収量は(20.6Kg)R3を直ちに120℃一夜熱風乾燥して後に、紙・アルミ・ポリエチレンの三層防湿袋に貯蔵した。その形状は、円柱状で直径約2.5mm×長さ約4.5mmであった。また、MFR(280℃、荷重2.16Kg)は、35g/10分であった。
【0039】
この回収炭素繊維(15%)強化・改質ペット樹脂の黒色ペレットR3を真空下に再乾燥し、住友重機械工業(株)製の射出成形機SE18DUZ(型締め圧18トン、スクリュー径16mm/SLスクリュー)を使用し、成形温度270280℃、金型温度3738℃、射出圧力6470MPa、射出速度20mm/s、スクリュー回転数100rpmおよび冷却時間15秒の条件にて、下記の射出成形体を成形した。
射出成形体の形状:引張試験用小型片 JIS K7162 5A型(厚み2mm)また、同じ成形装置を使用し、ほぼ同様条件ではあるが、射出圧力115123MPaおよび冷却時間20秒の条件にて、下記の射出成形体を成形した
射出成形体の形状:曲げ試験用小型片の短冊型 長さ80mm×巾10mm(厚み4mm)両者共、バリの副生が無くて良好な射出成型性を示した。このペレットR3の物性値を表2に示した。製造例8のペっと樹脂のみの透明ペレットP1に比べると、引張強さ2.0倍、ヤング率2.1倍、曲げ強さ2.3倍、曲げ弾性率3.9倍であった。
【0040】
[製造例7]
[ペット樹脂と回収炭素繊維チョップ約30%と改質剤マスターバッチから成る回収炭素繊維強化ペット樹脂ペレットR4の製造]
前記の製造例6とほぼ同一条件にて、ペレットR4の製造を実施した。但し、回収炭素維繊チョップの含有量を約30%にする為にその供給速度を2倍にし、ペット樹脂の供給速度を低下させた。
即ち、A成分のポリエステルとして市販ペット(PET)樹脂ペレット(汎用ボトルグレード:IV値0.80、MFR 25g/10分、280℃・2.16Kg)100重量部(120Kg;120℃・12時間での熱風乾燥後の水分含有率 約100ppm)と改質剤マスターバッチ(MB−G:PETG基体、製造例2)6重量部(7.2Kg;C成分の結合体として多官能エポキシ樹脂0.45重量部、D成分の結合反応触媒0.30重量部)とをタンブラーを使用して、30rpm×10分間にわたり混合した。これらを第1ホッパーに入した。B成分の炭素繊維として回収炭素繊維チョップ(ボビン巻のPAN系炭素繊維の回収品を集めて、6mm長に裁断したもの。40Kg)を第2ホッパーに入した。
ドイツ・ベルストルフ社製の同方向2軸押出機(ZE40E:スクリュー口径42mm、L/D=38)を使用し、この押出機の10ブロックから成るシリンダーとダイスの設定温度を150270℃およびスクリュー回転数150rpmとし、回収炭素繊維チョップを第5ブロックに連続的に注入した。
重量式計量単軸フィーダーを使用し、第1ホッパーからA成分とC成分とD成分の混合樹脂ペレットを14.84Kg/hの速度で、また第2ホッパーから回収炭素繊維チョップを6.0Kg/h(炭素繊維の含有量28.8%)の速度で押出機に投入した。
ストランドを口径3mmの斜め下方向のノズルから三本を水中に連続的に押出し、引取り速度20m/分にて、回転カッターで切断して黒色樹脂ペレットRを製造した。ストランド金型の樹脂圧力は1.11.2MPaで、金型出口から水盤中へのストランドは直線状であり溶融張力が増加していた。
この温かい黒色樹脂ペレットR465Kgを直ちに120℃一夜熱風乾燥して後に、紙・アルミ・ポリエチレンの三層防湿袋に貯蔵した。その形状は、円柱状で直径約3mm×長さ約5mmであった。また、MFR(280℃、荷重2.16Kg)は、25g/10分であった。
この黒色ペレットR4を真空下に再乾燥し、住友重機械工業(株)製の射出成形機SE18DUZ(型締め圧18トン、スクリュー径16mm/SLスクリュー)を使用し、製造例6とほぼ同様条件ではあるが、射出圧力116121MPaの条件にて、下記の射出成形体を成形した。射出成形体の形状:引張試験片用 JIS K7162 5A型(厚み2mm)。また、同じ成形装置を使用し、製造例6とほぼ同様条件ではあるが、射出圧力120124MPaの条件にて、下記の射出成形体を成形した:射出成形体の形状:曲げ試験片用の短冊型 長さ80mm×巾10mm(厚み4mm)。
尚、この炭素繊維強化ペット樹脂ペレットRは、製造例8のPET樹脂のみの透明ペレットP1に比べると、回収炭素繊維(6mm長のチョップ)約30%の混合効果は、引張強さ2.4倍、ヤング率5.0倍、曲げ強さ2.8倍、曲げ弾性率6.8倍であった。
【0041】
[製造例
ペット樹脂のみによるペレットP1の製造]
A成分のPET樹脂(ペットボトル用市販汎用品のペレット:IV値0.80、MFR 35g/10分、280℃・2.16Kg)100重量部(3Kg)のみを使用し、製造例4と5とほぼ同様な押出条件にてペレットP1を製造し、透明ペレット2.9Kgを得た。ストランドは、金型出口から水面までに弓状に垂れ、水盤中では蛇行して溶融張力が小さいことを示した。この透明ペレットP1は、円柱状で直径約3mm×長さ約5mmであった。また、MFR(280℃、荷重2.16Kg)は、57g/10分で、比較的低溶融粘度であった。
このPET樹脂のみのペレットP1を、射出成形して製造例6および7と同様にして引張試験片および曲げ試験片を成形した。引張強さ59MPa、ヤング率1.9GPaおよび曲げ強さ84MPa、曲げ弾性率2.1GPaであった。
【0042】
【表3】
【0043】
[製造例9]
[ペットボトル・フレークと回収炭素繊維チョップ15%と改質剤から成る回収炭素繊維強化・改質ペットボトル・フレークのペレットR5(99%がリサイクル品)の製造]
A成分のポリエステルとして市販ペットボトル・フレーク((株)西東京通商の汎用品:IV値0.73、MFR 57g/10分、280℃・2.16Kg)100重量部(120℃・2時間での真空乾燥後の水分含有率 約100ppm以下)、C成分の結合剤として多官能エポキシ樹脂(EP−A)0.70重量部、D成分の結合反応の混合触媒0.15重量部およびE成分の展着剤としての流動パラフィン0.05重量部をタンブラーで均一混合した。これらを主体樹脂押出用の第1ホッパーに入した。一方、回収炭素繊維チョップ(ボビン巻のPAN系炭素繊維の回収品を集めて、6mm長に裁断したもの)をサイドフィーダー用の第2ホッパーに入した。
日立造船(株)製の同方向2軸押出装置(口径35mm、L/D35)を使用し、この押出機のシリンダーとストランド金型の設定温度を150270℃およびスクリュー回転数150rpmとした。容量式計量フィーダーを使用し、第1ホッパーからA成分とC成分とD成分等の組成物を17Kg/hの速度で反応押出を行い、また第2ホッパーから計量機を使用して炭素繊維チョップを3Kg/h(炭素繊維の含有量15%)の速度で連続的にサイドフィードした。
ストランドを口径3mmの斜め下方向のノズルから水中に連続的に押出し、回転カッターで切断して黒色樹脂ペレットR5約200Kgを製造した。金型出口から水盤中へのストランドは直線状であり溶融張力が増加していた。その形状は、円柱状で直径約3.4mm×長さ約6mmであった。また、MFR(260℃、荷重2.16Kg)は、4.2g/10分であり、充分に高溶融粘度化されていた。
【0044】
[実施例1]
[ペット樹脂と新品炭素繊維チョップ15%と改質剤から成るZOLTEK炭素繊維強化・改質ペット樹脂ペレットR1組成物からの水平式押出法による細平板および発泡板の製造]
ZOLTEK炭素繊維(15%)強化ペット樹脂の乾燥した黒色ペレットR1(MFR 6.2g/10分:260℃、荷重2.16Kg)100重量部、結合剤(EP−A)ゼロまたは0.4重量部、触媒(C10)ゼロまたは0.2重量部および化学発泡剤ペレットEE405F(永和化成工業(株)製、重曹系のポリエチレン基体、ガス発生量66ml/g、主として炭酸ガス)ゼロまたは2.5重量部、および展着剤として流動パラフィン0.1重量部を事前に混合し、ホッパーに投入した。
(株)テクノベル製の2軸押出機(口径15mm、L/D30)に、原料供給機、異形金型、樹脂圧力測定センサー、空冷機、ステンレス製滑行板、水盤、引取り機を設置した。上記の配合物を、スクリュー温度245280℃、回転数1150rpm、金型温度250260℃において、ペレット等の配合物の供給速度12Kg/h、引取り速度12m/分にて水平方向に押出した。樹脂の溶融粘性、流動性および引け等を考慮して、異形金型は、細平板用には太鼓形(巾25mm:中央部間隙2.5mm、両端部間隙1.5mm)を、また発泡板用には鼓形(巾25mm:中央部間隙2.5mm、両端部間隙4.5mm)を使用した。試験結果を表3にまとめて示した。
この水平式押出法による異形成形においては、樹脂圧力が高くなるほどに成形体の製造が安定し、また成形体が異形金型の巾(25mm)および間隙(25mm)に近づくほど、成形加工が成功に近づく。本発明では、発泡倍率として1.53倍が好ましい。天然木材や合成木材の巨大用途を目標としている。
本例1−S1の細平板製造では、樹脂圧力0.1MPaと樹脂の溶融張力低くて細平板の左右と上下にネックインが生じ、成形体が細くて薄くなった。本例1−F1の発泡板製造では、発泡剤2.5重量部を添加したら巾と厚みが夫々大きくなったが、不充分であった。更に、本例1−F2の発泡板製造では、発泡剤2.5重量部の外に改質剤として結合剤(EP−A)0.4および触媒(C10)0.2重量部を添加したら、樹脂圧力が倍増すると共に発泡板の巾(19mm)と厚み(2.3mm)も増大し、発泡倍率も1.5倍に到達した。これらは、更に発泡剤の添加量2.5重量部を3重量部に増加させれば、一層改善・制御が出来る。特に、本例1−F2の発泡板は、寸法調整金型を使用しないのに係わらず表面平滑性が良くて、成形状態も安定し、改質剤の添加効果が顕著であった。
【0045】
【表4】
【0046】
[実施例2]
[ペット樹脂と新品炭素繊維チョップ30%と改質剤から成るZOLTEK炭素繊維強化・改質ペット樹脂ペレットR2等の組成物からの水平式押出法による細平板および発泡板の製造]
実施例1と同様な押出条件と操作にて、細平板および発泡板の製造を実施した。試験結果を表3にまとめて示した。ZOLTEK炭素繊維(30%)強化ペット樹脂の乾燥した黒色ペレットR2(MFR 6.7g/10分: 260℃、荷重2.16Kg)100重量部、結合剤(EP−A)ゼロまたは0.4重量部、触媒(C10)ゼロまたは0.2重量部および化学発泡剤ペレットEE405F(永和化成工業(株)製、ガス発生量 66ml/g)ゼロまたは2.5重量部、および展着剤として流動パラフィンゼロまたは0.1重量部を事前に混合し、ホッパーに投入した。
本例2−S2の細平板製造では、樹脂圧力0.2MPaと樹脂の溶融張力がやや低くて細平板に左右と上下にやはりネックインが生じ、成形体が細くて薄くなった。次に、本例2−F3の発泡板の製造では、発泡剤2.5重量部を添加したら巾(18mm)と厚み(2.1mm)が夫々大きくなり、発泡倍率も1.5倍に到達した。また、本例2−F4の発泡板の製造では、発泡剤2.5重量部の外に更に改質剤として結合剤0.4重量部と触媒0.2重量部を添加したら、樹脂圧力が10倍の2.3MPaに増加すると共に発泡板の巾(18mm)と厚み(2.1mm)も増大し、発泡倍率も当面の目標の2.0倍に到達した。本例諸例から解る様に発泡板の製造においては、改質剤の添加が必要かつ不可欠である。
【0047】
[実施例3]
[ペット樹脂と回収炭素繊維チョップ15%と改質剤マスターバッチから成る回収炭素繊維強化・改質ペット樹脂ペレットR3からの押出法による細平板と広幅発泡板の製造]
回収炭素繊維(15%)強化・改質ペット樹脂の乾燥した黒色ペレットR3(MFR 35g/10分:280℃、荷重2.16Kg)は、MFRが大きいので溶融粘度が比較的小さい。そこで実例1と同様に細平板を水平押出して発泡用に必要不可欠な改質剤マスターバッチの添加量を予め試験・決定した。実例1の試験設備を使用し、黒色ペレットR3の100重量部、改質剤マスターバッチ(MB−E)ゼロ、2、4重量部で細平板を水平押出した。但し、樹脂の溶融粘性、流動性および引け等を考慮して、異形金型は、矩形形(巾25mm:中央部間隙1.5mm)とした。試験結果を表4にまとめて示した。改質剤(MB−G)の添加量を増加させるに連れて、樹脂圧力が増加すると共に細平板の巾と厚みが顕著に増大したので、最適添加量を6重量部とした。
(株)創研製のTダイ式フィルム・シート押出製造装置を使用して、広幅発泡板の製造をした(本例3−F5)。主押出機は、単軸スクリュー、口径30mm、L/D38、副押出機は、単軸スクリュー、口径25mm、L/D25である。Tダイは、巾250mm、リップギャップ1.5mm、垂直式、フィードブロック方式である。ポリッシング・ロールは鏡面仕上げのステンレス製で、オイル式温度制御である。ガイドロールは温水制御である。引取り機は、空気圧制御式のゴムロールである。
乾燥した回収炭素繊維(15%)強化・改質ペット樹脂の黒色ペレットR3(MFR 35g/10分:280℃、荷重2.16Kg)100重量部、改質剤マスターバッチ(MB−E)6重量部、化学発泡剤ペレットEE405F(永和化成工業(株)製、ガス発生量 66ml/g)2.5重量部、滑材としてステアリン酸カルシウム0.1重量部および展着剤として流動パラフィン0.05重量部を事前に混合し、主押出機のホッパーに投入した。副押出機は加熱停止させた。シリンダー温度255265℃、Tダイの温度245260℃、スクリュー回転70rpm、ロール温度4070℃で、引取り速度0.4m/分にて、広幅発泡板を製造した。樹脂圧力は、5.5MPaであった。広幅発泡板は、幅25cmでネックインが無く、厚みは2.8mmとリップギャップの倍で、発泡倍率は2.1倍であった。本例発明により、ほぼ目標の発泡体が製造出来た(例3−F5)。
【0048】
【表5】
【0049】
[実施例4]
[ペット樹脂と回収炭素繊維チョップ30%と改質剤マスターバッチから成る回収炭素繊維強化・改質ペット樹脂ペレットR4からの押出法による細平板と2種3層広幅発泡板の製造]
回収炭素繊維(30%)強化・改質ペット樹脂の乾燥した黒色ペレットR4(MFR 25g/10分: 280℃、荷重2.16Kg)は溶融粘度が比較的小さいので、実例3と同様に細平板を水平押出して発泡用に必要不可欠な改質剤マスターバッチの添加量を予め試験・決定した。実例1の試験設備を使用し、黒色ペレットR4の100重量部、改質剤マスターバッチ(MB−E)4、6重量部、滑材としてステアリン酸カルシウム0.1重量部および展着剤として流動パラフィン0.05重量部の組成物を事前混合し、水平押出法で細平板を製造した。試験結果を表5にまとめて示した。細平板は、改質剤(MB−G)の添加量を増加させるに連れて、樹脂圧力が増加すると共に細平板の厚みが若干増大したので、最適添加量を6重量部とした。
2種3層の広幅発泡板の製造は、実施例3の(株)創研製のTダイ式フィルム・シート押出製造装置を使用して実施した(本例4−F6)。主押出機で、樹脂R4に改質剤、発泡剤、滑材としてステアリン酸カルシウム0.1重量部および展着剤として流動パラフィン0.05重量部の組成物を単層発泡板に押出した。一方、副押出機から同一樹脂R4、滑材としてステアリン酸カルシウム0.1重量部および展着剤として流動パラフィン0.05重量部の組成物を押出し、フィードブロック式Tダイでスキン層として外側から覆って、2種3層の広幅発泡板とした。乾燥した回収炭素繊維(30%)強化・改質ペット樹脂の黒色ペレットR4(MFR 25g/10分: 280℃、荷重2.16Kg)100重量部、改質剤マスターバッチ(MB−E)6重量部および化学発泡剤ペレットEE405F(永和化成工業(株)製、ガス発生量 66ml/g)2.5重量部を事前に混合し、主押出機のホッパーに投入した。主押出機のシリンダー温度255265℃、Tダイの温度245260℃、スクリュー回転70rpm、樹脂圧力5MPa、ロール温度4070℃とした。一方、副押出機のホッパーにペレットR4を投入し、シリンダー温度を260270℃に設定し、スクリュー回転15rpm、樹脂圧力3MPaとした。この結果、引取り速度0.4m/分にて、2種3層の広幅発泡板を製造出来た。この広幅発泡板は、幅24cmで若干ネックインがあり、厚みは3.0mmとリップギャップの倍で、発泡倍率は3層体の平均として1.9倍であった。本例発明により、ほぼ目標の2種3層の発泡体が製造出来た(例4−F6)。
【0050】
【表6】
【0051】
[実施例5]
[ペットボトル・フレークと回収炭素繊維チョップ15%と改質剤から成る回収炭素繊維強化・改質ペットボトル・フレークのペレットR5(99%がリサイクル品)の炭酸ガス法による発泡ボードの製造]
日立造船(株)製の2軸押出機(口径60mm、L/D40)に、第1ホッパーおよび重量式計量機、第2ホッパーおよび容量式計量機、ベント式真空ライン、温度制御装置、炭酸ガス注入装置と注入ライン、ギヤーポンプ、Tダイ(巾1,200mm、水平押出し用)、冷却装置、引取り装置、自動裁断機などを設置した。
第1ホッパーには、未乾燥の回収炭素繊維強化・改質ペットボトル・フレークのペレットR5(MFR4.2g/10分:260℃、荷重2.16Kg)を投入し、第2ホッパーには改質剤ペレット(MB−E)を投入した。押出機は、シリンダー、ギヤーポンプおよびTダイの温度を240280℃に設定し、高真空引き下に、樹脂組成物の押出速度75Kg/h、炭酸ガス注入量2.55g/分とした。第2ホッパーの改質剤ペレット(MB−E)の添加量を制御して、スクリュー先端圧力を67MPaに制御した。この様にして、巾120cm、平均厚み2.22.4mm、発泡倍率24倍の発泡ボードを製造した。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、炭素繊維強化・改質ポリエステル樹脂の製造に際し、改質剤(結合剤と触媒)を併用させることに依り、その溶融粘度を高める事に依り、従来異形押出成形が困難だった水平押出法の成形体を極めて安定に製造できる様になった。また、この新素材は、炭素繊維強化により、機械的強度を飛躍的に高めることが出来、また発泡により軽量化出来た。耐食性、耐熱性、伝熱性導電性、耐油性、耐候性等の諸物性も向上させることが出来る。また、回収炭素繊維、炭素繊維強化エポキシ樹脂複合材からの再生炭素繊維および安価な新品炭素繊維も使用することが出来る。
本発明は、当面は土木・建築資材の用途を対象とする。近い将来は鉄道車両、自動車産業、新幹線車両業、リニヤーモーターカー、航空宇宙産業等の先端産業分野に於ける内装材料や構成材料の強度改善による一層の軽量化・省エネルギー化の用途を対象とする。また、電波吸収性、導電性、耐熱性、放熱性等の一層の性能改善ができるので、この機能性材料分野の利用可能性が大きい。