(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
作製する三次元造形物の表面の模様や三次元形状を表すとともに、作製する三次元造形物の各構成部位を判断することが可能な形式の三次元データを、各構成部位毎の三次元データに分割する分割手段と、
前記分割手段により分割した構成部位毎の三次元データを所定の方向に所定の間隔でスライスしたときの断面形状に基づくとともに、断面形状が位置するピクセルを黒で表し、断面形状が位置しないピクセルを白で表したスライスデータを作成するスライスデータ作成手段と、
前記スライスデータ作成手段が作成したスライスデータを用いて、所定の方向における最下層のスライスデータから順にピクセルの白黒を確認し、白が黒で挟まれているピクセルがある場合にオーバーハングを検出し、かつ、白が黒で挟まれているピクセルがない場合にはオーバーハングを検出しないオーバーハング検出手段と、
前記オーバーハング検出手段がオーバーハングを検出すると、オーバーハングを検出したスライスデータの構成部位について、硬化層を積層して三次元造形物を作製するための断面データを作成する断面データ作成手段と、
前記オーバーハング検出手段がオーバーハングを検出しないと、オーバーハングを検出しないスライスデータの構成部位について、切削加工により三次元造形物を作製するための切削データを作成する切削データ作成手段と
を有することを特徴とするデータ作成装置。
作製する三次元造形物の表面の模様や三次元形状を表すとともに、作製する三次元造形物の各構成部位を判断することが可能な形式の三次元データを、各構成部位毎の三次元データに分割する分割工程と、
前記分割工程で分割した構成部位毎の三次元データを所定の方向に所定の間隔でスライスしたときの断面形状に基づくとともに、断面形状が位置するピクセルを黒で表し、断面形状が位置しないピクセルを白で表したスライスデータを作成するスライスデータ作成工程と、
前記スライスデータ工程で作成したスライスデータを用いて、所定の方向における最下層のスライスデータから順にピクセルの白黒を確認し、白が黒で挟まれているピクセルがある場合にオーバーハングを検出し、かつ、白が黒で挟まれているピクセルがない場合にはオーバーハングを検出しないオーバーハング検出工程と、
前記オーバーハング検出工程でオーバーハングを検出すると、オーバーハングを検出したスライスデータの構成部位について、硬化層を積層して三次元造形物を作製するための断面データを作成する断面データ作成工程と、
前記オーバーハング検出工程でオーバーハングを検出しないと、オーバーハングを検出しないスライスデータの構成部位について、切削加工により三次元造形物を作製するための切削データを作成する切削データ作成工程と
を有することを特徴とするデータ作成方法。
【背景技術】
【0002】
従来より、三次元造形物を作製するための装置として、切削データに基づいてワークを切削加工して三次元造形物を作製する三次元造形装置(以下、「ワークを切削加工して三次元造形物を作製する三次元造形装置」を、「切削加工機」と適宜に称する。)や、三次元造形物の断面データに基づいて硬化層を形成し、形成した硬化層を積層して三次元造形物を作製する三次元造形装置(以下、「形成した硬化層を積層して三次元造形物を作製する三次元造形装置」を、「積層造形機」と適宜に称する。)が知られている。
【0003】
こうした切削加工機および積層造形機においては、それぞれ長所と短所とがある。
【0004】
具体的には、切削加工機では、長所として、作製される三次元造形物の表面が滑らかである点、作製される三次元造形物の強度が高い点などが挙げられ、短所として、材料を切削するためのツールの径より細かい凹形状を形成できない点、コストがかかる点などが挙げられる。
【0005】
また、積層造形機では、長所として、例えば、フィラメント樹脂を溶解して積層する熱溶解積層方式や粉末材料により形成された硬化層を積層する粉末固着積層方式などではコストが安価である点、細かい凹凸形状を形成可能である点などが挙げられ、短所として、作製される三次元造形物の表面が粗い点、作製される三次元造形物の強度が低い点などが挙げられる。
【0006】
そして、作業者は、三次元造形物を作製する際には、こうした各種の三次元造形装置における長所や短所、作製する三次元造形物に求められる特性などを考慮しながら、切削加工機または積層造形機のどちらを使用するのかを判断しなければならなかった。
【0007】
しかしながら、こうした判断は、作業に習熟していない作業者にとっては、適切に判断することが難しいものであった。
【0008】
また、作製する三次元造形物において、例えば、三次元造形物の一部の構成部位が複雑な形状であり、その他の構成部位については、簡素な形状である場合などでは、作業者が、専用のソフトなどを用いて、複雑な形状の構成部位については、積層造形機で加工するように断面データを作成しなければならず、簡素な形状の構成部位については、切削加工機で加工するように切削データを作成しなければならず、こうした作業が、作業にとって負担となっていた。
【0009】
このため、三次元造形物の各構成部位において、その形状に応じて断面データあるいは切削データを作成するようにしたデータ作成装置およびデータ作成方法の提案が望まれていた。
【0010】
さらに、こうしたデータ作成装置を備えた三次元造形システムの提案が望まれていた。
【0011】
なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、本願明細書に記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるデータ作成装置およびデータ作成方法ならびに三次元造形システムの実施の形態の一例を説明するものとする。
【0021】
図1には、本発明によるデータ作成装置を備えた三次元造形システムのブロック構成説明図が示されている。
【0022】
この
図1に示す三次元造形システム10は、作製する三次元造形物の表面の模様や三次元形状を表す三次元データに基づいて、三次元造形物における各構成部位を形成するための出力データを作成するデータ作成部12と、データ作成部12で作成された出力データたる切削データに基づいて、ワークを切削加工して当該切削データに基づく形状を成形する切削加工機14と、データ作成部12で作成された出力データたる断面データに基づいて、硬化層を形成し、硬化層を積層して当該断面データに基づく形状を成形する積層造形機16と、データ作成部12で作成された出力データたる印刷データおよびカッティングデータに基づいて、当該印刷データおよびカッティングデータに基づく印刷およびカッティングを行って、ステッカーを作成するプリンタ18とを有して構成されている。
【0023】
なお、データ作成部12と、切削加工機14、積層造形機16およびプリンタ18とは、ネットワークを介して接続され、データ作成部12には、切削加工機14、積層造形機16およびプリンタ18から待機中、印刷中、切削中などの機体ステータスおよびワークエリアサイズ、分解能、出力種別などの機体パラメータが出力され、切削加工機14、積層造形機16およびプリンタ18には、それぞれデータ作成部12で作成した切削データ、断面データ、印刷データおよびカッティングデータが出力される。
【0024】
より詳細には、切削加工機14は、データ作成部12で作成されて出力された切削データに基づいて、ツールによりワークを切削加工して当該切削データに基づく形状を成形するものである。
【0025】
なお、こうした切削加工機14については、従来より公知の切削加工機を用いることができるため、その詳細な説明については省略することとする。
【0026】
積層造形機16は、例えば、フィラメント樹脂を溶解して積層する熱溶解積層方式や粉末材料により形成された硬化層を積層する粉末固着積層方式の三次元造形装置であり、データ作成部12で作成されて出力された複数の断面データに基づいて、各断面データに基づく硬化層を積層することで当該複数の断面データに基づく形状を成形するものである。
【0027】
なお、こうした積層造形機16については、従来より公知の積層造形機を用いることができるため、その詳細な説明については省略することとする。
【0028】
プリンタ18は、データ作成部12で作成されて出力された印刷データに基づいてメディアに対して印刷を行うとともに、データ作成部12で作成されて出力されたカッティングデータに基づいて印刷後のメディアをカットして、印刷データおよびカッティングデータに基づくステッカーを作成するものである。
【0029】
なお、こうしたプリンタ18については、従来より公知のカッティングプリンタを用いることができるため、その詳細な説明については省略することとする。
【0030】
また、データ作成部12には、切削加工機14および積層造形機16で使用する三次元造形物を作製するための材料、切削加工機14のツール、切削加工機14および積層造形機16において用いられる消耗材などの各種の補助データが記憶されている。
【0031】
そして、データ作成部12は、別体に設けられたパーソナルコンピューター(図示せず。)などから、作製する三次元造形物の表面の模様や三次元形状を表す三次元データが入力され、こうした三次元データおよび記憶した各種の補助データに基づいて、三次元造形物の各構成部位における切削加工機14、積層造形機16あるいはプリンタ18に出力するための出力データを作成することとなる。
【0032】
ここで、データ作成部12に入力される三次元データは、AMF(Additive Manufacturing File)形式のデータやCAD(Computer Aided Design)データなどの三次元造形物における各構成部位(以下、「構成部位」を、単に「部位」と適宜に称することとする。)を判断することが可能な三次元データである。
【0033】
そして、このデータ作成部12は、入力された三次元データを、各部位毎に分割する分割部20と、分割した部位の三次元データからテクスチャデータを抽出する抽出部22と、抽出したテクスチャデータに基づいて印刷データおよびカッティングデータを作成する印刷データ作成部24と、分割した部位の三次元データの形状から、切削データあるいは断面データのどちらを作成するのかを判定する判定部26と、分割した部位の三次元データから切削データを作成する切削データ作成部28と、分割した部位の三次元データから断面データを作成する断面データ作成部30とを備えている(
図2を参照する。)。
【0034】
分割部20は、作製する三次元造形物の三次元データについて、各部位毎の三次元データを抽出することで、作製する三次元造形物の三次元データを各部位毎の三次元データに分割することとなる。
【0035】
抽出部22は、各部位の三次元データの表面に形成されたテクスチャデータを抽出する。
【0036】
印刷データ作成部24については、従来より公知の技術を用いて、印刷データおよびカッティングデータを作成するため、その詳細な説明は省略することとする。
【0037】
また、切削データ作成部28および断面データ作成部30についても、従来より公知の技術を用いて、それぞれ切削データ、断面データを作成するため、その詳細な説明は省略することとする。
【0038】
判定部26は、部位の三次元データをスライスして当該三次元データで表される形状の断面形状を表すスライスデータを作成するスライスデータ作成部32と、作成したスライスデータを用いてオーバーハングの検出を行うオーバーハング検出部34と、切削加工機14のツールにより凹形状が形成可能か否かの判定を行う形成判定部36とを有している(
図2を参照する。)。
【0039】
より詳細には、スライスデータ作成部32は、分割部20において分割した部位の三次元データを所定の方向に所定の間隔でスライスしたときの断面形状に基づいて複数のスライスデータを作成する。なお、このスライスデータ作成部32で作成されたスライスデータでは、ピクセルに番号が付されており、各ピクセルにおいて、断面形状が位置するピクセルは黒で表され、断面形状が位置しないピクセルは白で表される。
【0040】
オーバーハング検出部34は、スライスデータ作成部32で作成したスライスデータを用いて、所定の方向における最下層のスライスデータから順にピクセルの白黒を確認して、スライスデータが作成された部位におけるオーバーハングの検出を行うこととなる。
【0041】
具体的には、所定の部位が、側面に凹部が形成された形状であり、スライスデータ作成部32において、3つの断面形状を表す3つのスライスデータが作成されたとすると(
図3(a)を参照する。)、ピクセルP1においては、最下層では「黒」となり、第2層では「白」となり、最上層では「黒」となる。
【0042】
このように、最下層のスライスデータから順にピクセルの白黒を確認した際に、「黒」、「白」、「黒」の順となるピクセルがある場合には、このスライスデータが作成された部位においてオーバーハングが形成されると判断され、オーバーハングを検出する。
【0043】
即ち、最下層のスライスデータから順に所定のピクセルの白黒を確認した際に、「白」が「黒」で挟まれているようなピクセルが存在すると、オーバーハングを検出することとなる。
【0044】
また、所定の部位が、略直方体形状であり、スライスデータ作成部32において、3つの断面形状を表す3つのスライスデータが作成されたとすると(
図3(b)を参照する。)、ピクセルP2を含む全てのピクセルにおいて、最下層では「黒」となり、第2層では「黒」となり、最上層では「黒」となる。
【0045】
また、所定の部位が、略四角錐台であり、スライスデータ作成部32において、3つの断面形状を表す3つのスライスデータが作成されたとすると(
図3(c)を参照する。)、ピクセルP3においては、最下層では「黒」となり、第2層では「黒」となり、最上層では「白」となり、ピクセルP5においては、最下層では「黒」となり、第2層では「白」となり、最上層では「白」となる。
【0046】
このように、最下層のスライスデータから順にピクセルの白黒を確認した際に、「黒」、「黒」、「黒」の順となるピクセル、「黒」、「黒」、「白」となるピクセルおよび「黒」、「白」、「白」となるピクセルのみとなる場合には、このスライスデータが作成された部位においてオーバーハングが形成されないと判断され、オーバーハングを検出しない。
【0047】
即ち、最下層のスライスデータから順に所定のピクセルの白黒を確認した際に、「白」が確認された層よりも上方側の層に「黒」が確認されないピクセルのみであると、オーバーハングを検出しないこととなる。
【0048】
さらに、所定の部位が、略二十面体形状であり、スライスデータ作成部32において、3つの断面形状を表す3つのスライスデータが作成されたとすると(
図3(d)を参照する。)、ピクセルP4においては、最下層では「白」となり、第2層では「黒」となり、最上層では「白」となる。
【0049】
このように、最下層のスライスデータから順にピクセルの白黒を確認した際に、「白」、「黒」の順となるピクセルがある場合には、このスライスデータが作成された部位においてオーバーハングが形成される可能性があるものと判断され、所定の部位の向きを変えて、再度オーバーハングの検出を行う。
【0050】
即ち、最下層のスライスデータから順に所定のピクセルの白黒を確認した際に、「白」が「黒」に挟まれず、かつ、「白」が確認された層よりも上方側の層に「黒」が確認されるようなピクセルが存在すると、所定の部分の向きを変えて、再度オーバーハングの検出を行うこととなる。
【0051】
なお、オーバーハングの再検出では、分割部20において分割した部位の三次元データを、例えば、所定の方向に90°回転し、スライスデータ作成部32においてこの回転した三次元データのスライスデータを作成し、その後、再度、所定の方向における最下層のスライスデータから順にピクセルの白黒を確認して、オーバーハングの検出を行うこととなる。
【0052】
形成判定部36は、切削加工機14のツールの径に基づいて、部位の凹形状を形成することが可能か否かの判定を行う。
【0053】
具体的には、形成判定部36は、部位における凹形状の幅を測定し(
図7(a)を参照する。)、測定した値が、予め補助データとして記憶されている切削加工機14に用いるツールの径以下であるか否かの判断を行う。
【0054】
そして、測定値がツール径の値以下であると判断すると、部位の凹形状を形成することが可能であると判定し、測定値がツールの径の値よりも大きい値であると判断されると、部位の凹形状を形成することが不可能であると判定する。
【0055】
以上の構成において、三次元造形システム10により三次元造形物を作製する場合について、
図4乃至
図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0056】
この
図4乃至
図5のフローチャートは、本発明によるデータ作成装置を備えた三次元造形システムによる三次元造形物作製処理が示されている。
【0057】
作業者により、データ作成部12に、三次元造形物の表面の模様や三次元形状を表す三次元データが入力され、操作子(図示せず。)が操作されて三次元造形物の作製の開始が指示されると、三次元造形物作製処理が開始される。
【0058】
この三次元造形物作製処理が開始されると、まず、入力された三次元データに基づいて、作製する三次元造形物が複数の部材により構成されているか否かの判断を行う(ステップS402)。
【0059】
即ち、このステップS402の判断処理においては、分割部20により、AMF形式データやCADデータとして入力された三次元データについて、三次元造形物を構成する部材が複数あるか否かの判断を行うこととなる。
【0060】
そして、ステップS402の判断処理において、作製する三次元造形物が複数の部材により構成されていないと判断されると、後述するステップS406の処理に進む。
【0061】
また、ステップS402の判断処理において、作製する三次元造形物が複数の部材により構成されていると判断されると、三次元データを各部位毎に分割する(ステップS404)。
【0062】
即ち、このステップS404の処理では、分割部20により、作製する三次元造形物を表す三次元データを、各部位毎に分割し、各部位の三次元データを作成することとなる。
【0063】
その後、作製する部位の三次元データを選択し(ステップS406)、選択した部位の三次元データにテクスチャデータがあるか否かの判断を行う(ステップS408)。
【0064】
即ち、このステップS408の判断処理では、抽出部22により、選択した部位の三次元データの表面にテクスチャデータが存在するか否かの判断を行う。
【0065】
ステップS408の判断処理において、選択した部位の三次元データにテクスチャデータがないと判断されると、後述するステップS418に進む。
【0066】
また、ステップS408の判断処理において、選択した部位の三次元データにテクスチャデータがあると判断されると、選択した部位の三次元データについて、テクスチャデータと三次元データとを分割する(ステップS410)。
【0067】
即ち、このステップS410の処理では、抽出部22により、ステップS406の処理で選択した作製する部位の三次元データから、テクスチャデータを抽出して、テクスチャデータと三次元データとに分割する。
【0068】
次に、分割したテクスチャデータから印刷データおよびカッティングデータを作成する(ステップS412)。
【0069】
即ち、このステップS412の処理では、印刷データ作成部24により、ステップS410の処理で分割したテクスチャデータに基づいて印刷データを作成するとともに、当該テクスチャデータのアウトラインを抽出して、抽出したアウトラインに基づいてカッティングデータを作成する。
【0070】
その後、作成した印刷データおよびカッティングデータをプリンタ18に出力し(ステップS414)、プリンタ18により、印刷データおよびカッティングデータに基づいたステッカーを作製して(ステップS416)、後述するステップS418の処理に進む。
【0071】
ステップS418の処理では、部位の三次元形状を表す三次元データについて、形成される凹形状が形成可能か否かの判断を行う。
【0072】
即ち、このステップS418の判断処理では、形状判定部36により、部位の三次元データにおける凹形状の幅を測定し、測定した値が、切削加工機14のツールの径以下であるか否かの判断を行うこととなる。
【0073】
そして、凹形状の幅がツールの径以下であれは、凹形状を形成することが可能であると判断され、凹形状の幅がツールの径より大きければ、凹形状を形成することが不可能であると判断される。
【0074】
ステップS418の判断処理において、形成される凹形状が形成不可能であると判断されると、後述するステップS430に進む。
【0075】
一方、ステップS418の判断処理において、形成される凹形状が形成可能であると判断されると、オーバーハング検出処理が開始される(ステップS420)。
【0076】
ここで、
図6のフローチャートには、このステップS420の処理におけるオーバーハング検出処理の詳細な処理内容が示されており、このオーバーハング検出処理においては、まず、部位の三次元形状を表す三次元データのスライスデータを作成する(ステップS602)。
【0077】
即ち、このステップS602の処理では、スライスデータ作成部32により、部位の三次元形状を表す三次元データを、所定の方向に所定の間隔で分割して、当該部位の断面を表す複数のスライスデータを作成することとなる。
【0078】
ステップS602の処理でスライスデータを作成すると、次に、オーバーハング検出部34により、断面データにおけるピクセルの番号を示す「n」を「1」に初期化する(ステップS604)。
【0079】
その後、オーバーハング検出部34により、最下層のスライスデータから順に第n番目のピクセルの白黒の確認を行う(ステップS606)。
【0080】
そして、オーバーハング検出部34により、「白」が確認された層よりも上方側の層に「黒」が確認されたか否かの判断を行う(ステップS608)。
【0081】
ステップS608の判断処理において、「白」が確認された層よりも上方側の層に「黒」が確認されなかったと判断されると、全てのピクセルについて白黒の確認を行ったか否かの判断を行う(ステップS610)。
【0082】
即ち、ステップS610の判断処理においては、白黒の確認を行ったピクセルの番号が、断面データの各ピクセルに付された最後の番号であるか否かの判断を行うこととなる。
【0083】
このステップS610の判断処理において、全てのピクセルについて確認していないと判断されると、nを「1」だけインクリメントして(ステップS612)、ステップS606の処理に戻り、ステップS606以降の処理を行う。
【0084】
また、ステップS610の判断処理において、全てのピクセルについて確認したと判断されると、オーバーハングが検出されなかったものとし(ステップS614)、後述するステップS422の処理に進む。
【0085】
一方、ステップS608の判断処理において、「白」が確認された層よりも上方側の層に「黒」が確認されたと判断されると、次に、「白」が「黒」に挟まれているか否かの判断を行う(ステップS616)。
【0086】
このステップS616の判断処理において、「白」が「黒」で挟まれていないと判断されると、部位の三次元形状を表す三次元データを、ステップS602の処理でスライスデータを作成したときの姿勢から、所定の角度(例えば、90°である。)だけ回転して(ステップS618)、ステップS602の処理に戻り、ステップS602以降の処理を行う。
【0087】
また、ステップS616の判断処理において、「白」が「黒」で挟まれていると判断されると、オーバーハングが検出されたものとし(ステップS620)、後述するステップS422の処理に進む。
【0088】
ステップS420の処理によるオーバーハング検知処理がなされると、ステップS422の処理に進み、オーバーハング検出処理によりオーバーハングが検出されたか否かの判断を行う。
【0089】
即ち、このステップS422の判断処理では、オーバーハング検出処理のステップS614の処理でオーバーハングを検出しないとされると、オーバーハングが検出されなかったと判断され、オーバーハング検出処理のステップS620の処理でオーバーハングを検出したとされると、オーバーハングが検出されたと判断される。
【0090】
このステップS422の判断処理において、オーバーハングが検出されないと判断されると、切削データ作成部28により、部位の三次元形状を表す三次元データから切削データを作成する(ステップS424)。
【0091】
その後、切削データを切削加工機14に出力し(ステップS426)、切削加工機14において、切削データに基づいて部位を成形して(ステップS428)、後述するステップS436に進む。
【0092】
また、ステップS422の判断処理において、オーバーハングが検出されたと判断されると、断面データ作成部30により、部位の三次元形状を表す三次元データから断面データを作成する(ステップS430)。
【0093】
即ち、このステップS430の処理では、オーバーハングが検出されている際には、断面データ作成部30により、部位の三次元データにサポート材を付加し、このサポート材が付加された三次元データの複数の断面データを作成することとなる。
【0094】
その後、断面データを積層造形機16に出力し(ステップS432)、積層造形機16において、断面データに基づいて部位を成形する(ステップS434)。
【0095】
そして、部位の成形が完了すると、成形していない部位があるか否かの判断を行い(ステップS436)、成形していない部位があると判断されると、ステップS406の処理に戻り、ステップS406以降の処理を行い、成形していない部位がないと判断されると、この三次元造形物作製処理を終了する。
【0096】
以上において説明したように、本発明によるデータ作成装置を備えた三次元造形システム10は、用いることにより得られる利点が異なる切削加工機14と積層造形機16と備えるようにした。
【0097】
そして、三次元造形物の各部位を判断することが可能な形式で入力された三次元データを、各部位毎に分割し、切削加工機14におけるツールの径に対する部位に形成される凹形状の幅やオーバーハングの有無を判断することで、データ作成部12により、切削データあるいは断面データのいずれか一方を作成するようにした。
【0098】
これにより、本発明によるデータ作成装置を備えた三次元造形システム10においては、作業者を介することなく、部位の形状に基づいて、切削データあるいは断面データを作成することができるようになる。
【0099】
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(9)に示すように変形するようにしてもよい。
【0100】
(1)上記した実施の形態においては、カッティングプリンタとしてプリンタ18を設け、データ作成部12で作成された印刷データおよびカッティングデータに基づいてステッカーを作成するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、三次元造形物の表面に直接印刷を行うことができるプリンタを設けるようにしてもよい。
【0101】
この場合には、データ作成部12においては、印刷データ作成部24により印刷データのみを作成することとなる。
【0102】
(2)上記した実施の形態においては、硬化層を積層して三次元造形物を作製する三次元造形装置たる積層造形機16として、フィラメント樹脂を溶解して積層する熱溶解積層方式や粉末材料により形成された硬化層を積層する粉末固着積層方式の三次元造形装置を用いたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0103】
即ち、積層造形機16としては、従来より公知の三次元造形装置を用いることが可能であり、貯留槽に貯留された液状の光硬化性樹脂に、三次元造形物の断面形状を表す硬化層を形成し、形成した硬化層を積層して三次元造形物を作製する光造形方式などの各種の方式による三次元造形装置を用いるようにしてもよい。
【0104】
(3)上記した実施の形態においては、判定部26により、部位の凹形状を形成可能か否かの判断を行うとともに、部位の三次元データのスライスデータを作成し、作成したスライスデータから部位におけるオーバーハングの有無を検出することで、切削データおよび断面データのどちらを作成するのかを判定するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0105】
即ち、部位の凹形状を形成可能か否かの判断を行うとともに、予め記憶された形状データと比較することで、切削データおよび断面データのどちらを作成するのかを判定するようにしてもよい。
【0106】
つまり、この場合には、データ作成部12では、切削データを作成すべき複数の形状データが記憶された切削データ形状データベースと、断面データを作成すべき複数の形状データが記憶された断面データ形状データベースとを設ける。
【0107】
そして、ステップS418の処理の後に、部位の三次元データと、切削データ形状データベースおよび断面データ形状データベースに記憶された形状データとを比較して、部位の三次元データが最も近似する形状データを探す(
図7(b)を参照する。)。
【0108】
その後、最も形状が近似する形状データが、切削データ形状データベースに記憶されていると、ステップS424の処理に進み、部位の三次元データから切削データを作成するようにし、断面データ形状データベースに記憶されていると、ステップS430の処理に進み、部位の三次元データから複数の断面データを作成するようにする。
【0109】
つまり、この場合には、ステップS418の判断処理で凹形状の形成が可能であると判断され、かつ、部位の形状が切削データ形状データベースに記憶された形状に近似していると判断されると、切削データを作成するようにし、ステップS418の判断処理で凹形状の形成が可能または不可能に関わらず、部位の形状が断面データ作成データベースに記憶された形状に近似していると判断されると、断面データを作成するようにするものとなる。
【0110】
(4)上記した実施の形態においては、三次元造形システム10における三次元造形装置として、切削加工機14を1台、積層造形機16を1台設けるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、切削加工機14を複数台設けるようにしてもよいし、積層造形機16を複数台設けるようにしてもよいし、切削加工機14および積層造形機16ともに複数台設けるようにしてもよい。
【0111】
なお、この場合には、例えば、小さい部位の成形に適した三次元造形装置や大きい部位の成形に適した三次元造形装置を混ぜて設けるようにするとよい。
【0112】
また、例えば、金属材料により部位を成形する三次元造形装置や樹脂材料により部位を成形する三次元造形装置を混ぜて設けるようにして、部位の形状だけでなく、部位を形成する材料に基づいて、データ作成部12で作成したデータの出力先を決定するようにしてもよい。
【0113】
(5)上記した実施の形態においては、特に記載しなかったが、部位が大きいような場合には、分割部20において、その大きな部位を複数のパーツに分けるようにしてもよく、この場合、分けたパーツ毎に切削データあるいは断面データを作成する。
【0114】
なお、部位を複数のパーツに分けるようにする技術については、例えば、特開2007−76037号公報に開示された技術を用いることができるので、その詳細な説明は省略することとする。
【0115】
(6)上記した実施の形態においては、特に記載しなかったが、データ作成部12は、切削加工機14、積層造形機16およびプリンタ18に設けられた予測時間(つまり、切削データおよび断面データに基づいて造形物を作製する際に要する時間の予測値、また、印刷データおよびカッティングデータに基づいてステッカーを作製する際に要する時間の予測値である。)の算出機能を利用して、作成した各部位の切削データおよび断面データを、短時間に効率的に全ての部位を作製することができるように、どのような順番で、どの三次元造形装置に出力するのかを決定する出力部を備えるようにしてもよい。
【0116】
例えば、上記(4)(5)の変形例と組み合わせた際に、下記の条件で部位A〜Dを成形する場合には、出力部は、
図8に示すようにして、各データが切削加工機14、積層造形機16およびプリンタ18に各種データを出力することとなる。
【0117】
三次元造形システム10において、データ作成部12に、切削加工機、積層造形機1、積層造形機2、積層造形機3およびプリンタがネットワークを介して接続される。
部位Aにおけるパーツa−1:積層データ、予測時間6時間
部位Aにおけるパーツa−2:積層データ、予測時間4時間30分
部位B :切削データ、予測時間4時間
部位C :切削データ、予測時間1時間30分
部位Dにおけるパーツd−1:積層データ、予測時間2時間30分
部位Dにおけるパーツd−2:積層データ、予測時間5時間
部位Dにおけるパーツd−3:印刷データ、予測時間3時間
【0118】
即ち、上記した条件で部位A〜Dを成形する場合には、出力部は、積層造形機1に部位Aにおけるパーツa−1の積層データを出力し、積層造形機2に部位Aにおけるパーツa−2の積層データを出力した後に部位Dにおけるパーツd−1の積層データを出力し、積層造形機3に部位Dにおけるパーツd−2の積層データを出力することとなる。
【0119】
また、出力部は、切削加工機に部位Bの切削データを出力した後に部位Cの切削データを出力し、プリンタに部位Dにおけるパーツd−3の印刷データを出力することとなる。
【0120】
これにより、短時間で効率的に部位を成形することが可能となる。
【0121】
(7)上記した実施の形態においては、オーバーハング検出処理の前に、凹形状を形成可能か否かの判断を行うようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0122】
即ち、凹形状を形成可能か否かの判断の前に、オーバーハング検出処理を行い、オーバーハングが検出されていないと判断された後に、凹形状を成形可能か否かの判断を行うようにし、この判断処理で、凹形状が形成できないと判断されると、断面データを作成するようにし、凹形状が形成できると判断されると、切削データを作成するようにするようにしてもよい。
【0123】
(8)上記した実施の形態においては、特に記載しなかったが、上記したように、切削加工機14、積層造形機16およびプリンタ18には、予測時間の算出機能が設けられているため、こうした機能を利用して、予測時間に応じて、切削データを作成した部位について、断面データを作成するようにしてもよいし、断面データを作成した部位について、切削データを作成するようにしてもよい。
【0124】
(9)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(8)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。