特許第6619181号(P6619181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619181
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】除電装置
(51)【国際特許分類】
   H05F 3/04 20060101AFI20191202BHJP
   H01T 23/00 20060101ALI20191202BHJP
   H01T 19/04 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   H05F3/04 A
   H01T23/00
   H01T19/04
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-173544(P2015-173544)
(22)【出願日】2015年9月3日
(65)【公開番号】特開2017-50197(P2017-50197A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 悠
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−253193(JP,A)
【文献】 特開2010−020908(JP,A)
【文献】 特開2013−065537(JP,A)
【文献】 特開平09−306690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05F 3/04
H01T 19/04
H01T 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクトと、
前記ダクトの内部を軸方向に流れる気流を発生させる送風機と、
極性が異なるイオンを発生する少なくとも一対の放電針を有する複数個のイオン発生器と、を備え、
前記イオン発生器は、前記ダクトに前記一対の放電針の少なくとも尖端が前記ダクトの内部に突出するように配置されており、
前記複数個のイオン発生器が前記ダクトの周方向に間隔をあけて配置され
前記ダクトの前記送風機と前記イオン発生器との間の部分には、前記ダクトの内部を周方向に前記放電針と同数の領域に分割するとともに前記気流を軸方向に整流する整流部材が備えられており、
前記整流部材で分割された各領域は少なくとも1個の前記放電針と軸方向に重なる除電装置。
【請求項2】
複数個の前記イオン発生器は、極性が異なる前記放電針が周方向に隣り合うように配置され、
全ての前記放電針が周方向に等間隔で配置される請求項1に記載の除電装置。
【請求項3】
前記送風機は、軸流プロペラと、前記軸流プロペラを回転駆動する電動機とを備えており、
前記電動機は前記ダクトの内部に設けられており、
前記電動機の外周面が前記放電針の先端と前記ダクトの径方向に対向する請求項1又は請求項2に記載の除電装置。
【請求項4】
前記ダクトは円形断面の円筒部と、前記円筒部と一体的に連結されているとともに前記イオン発生器が配置される取付部とを備えており、
前記取付部は前記放電部のそれぞれを取り付ける複数個の平面部分と、複数個の前記平面部分を周方向に連結する連結部分とを有している請求項1から請求項3のいずれかに記載の除電装置。
【請求項5】
前記取付部の軸と垂直な断面の断面積は、前記円筒部の軸と垂直な断面の断面積よりも小さく、前記円筒部から前記取付部に向かって小さくなる傾斜面が形成されている請求項4に記載の除電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電電極の放電で生じたイオンで除電する除電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の除電装置として、特許文献1に示すものがある。この除電装置は、箱型の本体の内部に前後面がほぼ八角形に開口した枠部と、前記枠部の内側にモータ付きファンを複数のリブにより保持するとともに、前記枠部の内周面にプラス・マイナス複数対の針状放電電極を稙設した構成を有している。この除電装置によると、前記針状放電電極の放電により生じたプラス・マイナスのイオンは前記ファンによる送風によって前方に送り出される。これにより、プラス・マイナスのイオンによって除電している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4410258号公報(段落0019〜0020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の除電装置の場合、前記針状放電電極を八角形状の枠部に稙設するものであるため、隣合う前記針状放電電極の間隔が狭い部分が存在する。ファンによる送風はらせん状の流れであるため、針状放電電極の間隔が狭い部分では、マイナスイオンとプラスイオンとの接触により中和されやすくなる。これにより、イオンバランスが悪くなってしまう恐れがある。
【0005】
また、前記枠体の大きさは、要求されるファンの風量によって変化する。そして、前記枠体の形状がほぼ八角形であることから、前記枠体の大きさが変化すると、辺の大きさも変化する。そのため、前記複数対の針状放電電極の設置位置を調整しなくてはならず、製造に手間と時間がかかる。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な構成で、プラスイオンとマイナスイオンとがバランスよく含まれる気流を送出することができる除電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、ダクトと、前記ダクトの内部を軸方向に流れる気流を発生させる送風機と、性が異なるイオンを発生する少なくとも一対の放電針を有する複数個のイオン発生器と、を備え、前記イオン発生器は、前記ダクトに前記放電針の少なくとも尖端が前記ダクトの内部に突出するように配置されており、前記複数個のイオン発生器が前記ダクトの周方向に間隔をあけて配置されている除電装置を提供する。
【0008】
この構成によると、ダクトの周方向にイオン発生器が配置されているので、ダクトの全体にイオンをいきわたらせることが可能である。
【0009】
上記構成において、隣合う前記放電針が異なる極性のイオンを発生するものであるとともに前記放電針の先端が前記周方向に等間隔に配列されていてもよい。このように配置することで、ダクト内でのイオンのバランス(濃度のバランス)を高めることが可能である。
【0010】
上記構成において、前記ダクトの前記送風機と前記イオン発生器との間の部分には、前記ダクトの内部を周方向に前記放電針と同数の領域に分割するとともに前記気流を軸方向に整流する整流部材が備えられており、前記整流部材で分割された各領域は少なくとも1個の前記放電針と軸方向に重なるようにしてもよい。このように構成することで、放電針に向けて流れる気流が軸方向であるとともに、領域ごとに放電針が設けられるので、放電針で発生したイオンを含む気流が隣の領域から流れた気流に含まれるイオンと衝突しにくく、イオンが中和されにくい。これにより、外部に吹出されるイオンの量が減少するのを抑制することができる。また、らせん状の流れを軸方向に整流しているため、より遠くまでインを届けることが可能である。
【0011】
上記構成において、前記送風機は、軸流プロペラと、前記軸流プロペラを回転駆動する電動機とを備えており、前記電動機は前記ダクトの内部に設けられており、前記電動機の外周面が前記放電針の先端と前記ダクトの径方向に対向するように配置されている。一般的に、軸流プロペラの気流吐出側の中心部分では、逆方向の流れが発生し渦が発生しやすくなっている。この渦が発生しやすい部分に電動機を配置することで、渦の発生を抑制する。これにより渦に巻き込まれるイオンを無くすとともに、渦に巻き込まれた異なる極性のイオンが中和されるのを抑制することが可能である。
【0012】
上記構成において、前記ダクトは円形断面の円筒部と、前記円筒部と一体的に連結されているとともに前記イオン発生器が配置される取付部とを備えており、前記取付部は前記放電部のそれぞれを取り付ける複数個の平面部分と、複数個の前記平面部分を周方向に連結する連結部分とを有していてもよい。
【0013】
上記構成において、前記連結部分が曲面であり、前記連結部分の曲率中心が前記ダクトの中心軸と重なるものであってもよい。
【0014】
上記構成において、前記取付部の軸と垂直な断面の断面積は、前記円筒部の軸と垂直な断面の断面積よりも小さく、前記円筒部から前記取付部に向かって小さくなる傾斜面が形成されていてもよい。
【0015】
上記構成において、前記取付部が前記イオン発生器の個数の2倍の辺を有する多角形であってもよい。
【0016】
上記構成において、前記ダクトの前記放電部よりも気流の下流側に前記ダクトの軸と垂直な1方向に偏平させた吐出部が設けられていてもよい。吐出部を着脱可能として、用途に合わせて付け替えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、簡単な構成で、プラスイオンとマイナスイオンとがバランスよく含まれる気流を送出することができる除電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明にかかるイオン発生装置を備えた除電装置の一例の正面図である。
図2図1に示す除電装置の側面図である。
図3図2に示す除電装置の断面図である。
図4図2に示す除電装置の分解斜視図である。
図5】本発明にかかるイオン発生装置に備えられるイオン発生器の一例を示す概略図である。
図6】除電装置のダクトを軸と垂直な面で切断した断面図である。
図7図6に示すダクトの軸に沿う面で切断した断面図である。
図8】本発明にかかる除電装置の他の例のダクトを軸方向に見た図である。
図9図8に示すダクトの軸に沿う面で切断した断面図である。
図10】発明にかかる除電装置のイオン発生器の配置状態を示す概略図である。
図11】発明にかかる除電装置のイオン発生器の配置状態を示す概略図である。
図12】本発明にかかる除電装置に用いられるルーバの一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明にかかるイオン発生装置を備えた除電装置の一例の正面図であり、図2図1に示す除電装置の側面図であり、図3図2に示す除電装置の断面図であり、図4図2に示す除電装置の分解斜視図である。図1図2に示すように、除電装置Aは送風機1、イオン発生装置2、吹出し口3、スタンド4及び基板収容部5を備えている。
【0021】
図2において、右側が背面側であり送風機1の正面側にイオン発生装置2が接触配置され、さらにイオン発生装置2の正面側に吹出し口3が接触配置されている。送風機1、イオン発生装置2及び吹出し口3はねじ等の締結具で固定されている。送風機1、イオン発生装置2及び吹出し口3は、中心軸が一致するように組み合わせられ、内部に軸方向に気流が流れるダクトDtが構成される。なお、ダクトDt内部では、気流は背面側から正面側に流れる。
【0022】
送風機1は、送風機ケース101、送風機カバー102、ファン103、ファンケース104、ステータ105(整流部材)、モータ106及びフィルタカバー107を備えている。送風機ケース101は、円筒形状の有底箱体であり、底部の中央部分に空気を吸入するための吸込口108を備えている。送風機ケース101の内部にはファンケース104が配置される。ファンケース104は円筒形状を有しており、気流のガイド(ダクトDtの一部)としての役割を果たす。
【0023】
ファンケース104の内部にはファン103が中心軸回りに回転可能に設けられている。ファン103は軸流ファン(ここではプロペラファン)であり、ファン103が回転することで、軸方向に流れる気流が発生する。ファン103で発生する気流は、らせん状の気流であり、周方向の速度成分と軸方向の速度成分がある。ファン103が円筒形状のファンケース104の内部で回転することで、気流が径方向外側に分散するのを抑制する。
【0024】
ファンケース104の気流の流れの下流側にファン103の羽根とは逆方向のらせん状の面を有する複数本(ここでは6本)のステータ105を備えている。複数本のステータ105は軸の周方向に一定間隔で配置されている。ファンケース104の下流側に気流の旋回方向と同方向にねじれたステータ105を設けることで、らせん状の気流の周方向の速度成分を軸方向の速度成分となるように整流する。なお、ステータ105はファン103と逆向きのらせん状の翼形状であってもよいし、平板状の部材であってもよい。ここでは、ファンケース104とステータ105とは一体で形成されているものとするが、ステータ105はファンケース104に取り付け固定されるものであってもよい。
【0025】
図3図4に示すように、モータ106はファンケース104の下流側に、ステータ105を挟んで本体が外側に突出するように固定されている。そして、モータ106の駆動軸はファンケース104の内部に突出しており、ファン103は駆動軸に固定されている。モータ106の駆動軸が回転することで駆動軸に固定されたファン103が回転する。図3図4に示すように、複数個のステータ105はモータ106をファンケース104の中央部分に配置するための支持部材の役割も果たす。
【0026】
ファン103及びモータ106が取り付けられたファンケース104は、ファン103が上流側、モータ106が下流側、すなわち、ファン103が背面側、モータ106が正面側になるように、送風機ケース101に取り付け固定される。なお、ファン103及びモータ106の中心が送風機ケース101の中心と一致する。そして、ファンケース104が送風機ケース101の吸込口108を囲むように配置されている。ファン103の回転によって気流が発生することで、吸込口108から吸い込まれた空気が無駄なくファンケース104に流入する。
【0027】
送風機ケース101の正面側の開口を覆うように送風機ケース102が配置される。送風機カバー102はファンケース104とともに送風機ケース101に、ねじ止めにて固定される。送風機ケース101に送風機カバー102を固定することで、ファンケース104が送風機ケース101の内部に固定される。送風機カバー102は中央部分に貫通孔110が形成されており、ファン103の回転で発生した気流は貫通孔110を通って送風機1の正面側に流れる。
【0028】
送風機カバー102の貫通孔110は、イオン発生装置2の後述する放電ユニット203の配置状態に合わせた形状を有している。具体的には、送風機ケース101の正面側に取り付けたときに、送風機ケース101の中心軸回りに法線が中心軸と直交するとともに等中心角度間隔に設けられた複数個の直線部分と、複数個の直線部分の端部同士を中心軸を中心とした円弧で結んだ形状を有している。そして、送風機カバー102を送風機ケース101に取り付けたとき、モータ106の本体部分は、貫通孔110を貫通する。
【0029】
送風機1は以上のような構成を有しており、モータ106を制御してファン103を回転させることで、軸方向の気流が発生し、送風機カバー102の貫通孔110から軸方向に向かう気流が発生する。また、送風ケース101の背面側には、不図示のフィルタが配置されており、そのフィルタが脱落しないように保持するフィルタカバー107が取り付けられている。すなわち、吸込口108の外側がフィルタに覆われ、吸込口108から空気を吸い込むときに、塵埃等の異物をフィルタで捕集する。これにより、送風装置1の内部に異物が吸い込まれるのを抑制できる。
【0030】
次にイオン発生装置2について説明する。イオン発生装置2は、ユニットケース201、ユニットカバー202、複数個(ここでは、3個)のイオン発生器21及びイオン検出器6を備えている。ユニットケース201は有底円筒形状を有しており、底面部分に送風機カバー102の貫通孔110と同じ形状の通気口203を備えている。通気口203の辺縁部には、イオン発生器21を保持するためのリブ204が軸方向に突出している。リブ204は、イオン発生器21を保持するとともに、送風機カバー102の貫通孔110から吹き出した気流が漏れるのを防ぐためのダクトDtの一部を構成する。
【0031】
イオン発生器21は、放電によりプラスイオン及びマイナスイオンを発生するイオン発生器である。イオン発生器203について図面を参照して説明する。図5は本発明にかかる除電装置に用いられるイオン発生器の一例を示す概略図である。イオン発生器21は、ケース211、プラス放電針212及びマイナス放電針213を備えている。また、ケース211の内部には、プラス放電針212とマイナス放電針213とに放電を発生させるための駆動回路(不図示)が設けられている。なお、駆動回路はプラス放電針212とマイナス放電針213との間に大きな電圧を印加するための昇圧トランスが備えられている。プラス放電針212及びマイナス放電針213とで放電を行うことで、プラスイオン及びマイナスイオンをそれぞれ発生させる。
【0032】
イオン発生器21は、ケース211の側面のうちの一面から、プラス放電針212とマイナス放電針213が距離L1となるように配置されている。イオン発生器21をユニットカバー202のリブ204にプラス放電針212とマイナス放電針213がダクトDt内に配置されるように、すなわち、軸方向から見てプラス放電針212とマイナス放電針213が通気口203と重なるように配置される。なお、本実施形態の除電装置Aに用いられるイオン発生装置2では、3個のイオン発生器21がダクトDtの周方向に、等中心角度(ここでは120°)をなすように配置されている。
【0033】
そして、ユニットケース201のリブ204にプラス放電針212及びマイナス放電針213がダクトDtの内部に突出するように3個のイオン発生器21を配置し、ユニットカバー202が取り付けられる。ユニットケース201とユニットカバー202とをねじ等の固定具で固定することで、イオン発生器21はずれないように保持される。なお、イオン発生器21の配置の詳細については、後述する。
【0034】
ユニットカバー202の中央部分には、円形状の貫通孔205が設けられており、貫通孔205の辺縁部より径方向に下流に向かって突出する円筒形状のリブ206が設けられている。リブ206はダクトDtの一部を構成する部材である。送風機1の送風機カバー102の貫通孔110から吹き出した気流がイオン発生装置2の内部に形成されたダクトDtの一部を軸方向に流れる。そして、ユニットカバー202のリブ206の下流側の開口から外部に吹出される。なお、イオン発生器21のプラス放電針212とマイナス放電針213の放電によって、プラスイオン及びマイナスイオンが発生する。そして、ダクトDtの内部でプラスイオン及びマイナスイオンを発生させることで、プラスイオン及びマイナスイオンを気流とともに外部に吹出す。
【0035】
イオン発生装置2のユニットカバー202の下流側には吹出し口3が設けられている。吹出し口3は、ルーバ301と、グリッド302とを備えている。グリッド302は、例えば、メッシュ状の部材であり、吹出し口3から使用者の手指等が入らないようにするための安全を保つための部材である。ルーバ301は、ユニットカバー202の下流に取り付けられるものであり、リブ206と同径の内径を有する貫通孔303を有する。そして、ルーバ301の貫通孔303から気流が正面側に吹出される。そのため、ルーバ301は、気流の吹出し方向を調整するための部材である。また、グリッド302を押えるための押え部材でもある。
【0036】
基板収容部5は、送風機ケース101の下部に一体的に形成されている直方体形状のケース501、送風機カバー102の下部に設けられた前カバー502を備えている。そして、送風機ケース101に送風機カバー102を取り付けることで、ケース501の前面を前カバー502で覆う。基板収容部5の内部には、送風機1のファン103の回転を制御するとともに、イオン発生装置2のイオン発生器21の放電を制御する制御回路を備えた基板Bdが配置されている。
【0037】
また、前カバー502には、使用者による操作を受け付ける操作部が設けられている。操作部は、例えば、物理的な操作入力が可能な押しボタンを備える構成を有している。そして、操作部は基板Bdに接続されており、操作部が操作されたときには、その操作が操作信号として基板Bdの制御回路に送られる。制御回路は、その操作信号に基づいて、ファン103の回転制御及びイオン発生器21の放電制御を行う。
【0038】
なお、本実施形態では、基板収容部5を送風機1と一体的に形成したものとしているが、別体で形成して、組み合わせる構成であってもよい。また、送風機1の内部に基板Bdを収納する構成とすることで、基板収容部5を省略することも可能である。
【0039】
そして、基板収容部5のケース501をスタンド4が枢支している。スタンド4は平行に配置された立脚部401と、ヒンジ部402とを備えている。除電装置Aが前後方向に回動するように基板収容部5のケース501を支持する。そして、使用者の所望する角度で停止することができる構成を有している。このような構成として、例えば、ゴムブッシュのような摩擦の大きな軸受けを取り付けて任意の位置で固定できるようにしたものや、ねじ止めで角度を固定することができるものを挙げることができる。
【0040】
以上のような構成の除電装置Aにおいて、イオン発生器21のプラス放電針212とマイナス放電針213とから放電させるとともに、ファン103を駆動することで、送風機1とイオン発生装置2とにまたがって形成されたダクトDtの内部に発生したプラスイオンとマイナスイオンを気流に乗せて外部に放出する。
【0041】
(第1実施形態)
次に本発明の要部である、イオン発生器21の配置について図面を参照して説明する。図6は除電装置のダクトを軸と垂直な面で切断した断面図であり、図7図6に示すダクトの軸に沿う面で切断した断面図である。なお、図6図7に示すダクトDtは、ダクトの一部であり、ファンケース104とイオン発生装置2のイオン発生器を保持するリブ204で構成されるダクトDtである。
【0042】
図6に示すように、除電装置Aはプラス放電針212とマイナス放電針213がダクトDt(ここでは、ユニットケース201のリブ204)の内側に突出するように配置されている。ダクトDtの内面は、3個のイオン発生器21が配置される部分が平面Dt1で形成されているとともに、隣合う平面Dt1を曲面Dt2で接続している。
【0043】
そして、3個のイオン発生器21はそれぞれ、ダクトDtの中心軸回りに、120°の角度をあけて配列されている。3個のイオン発生器21は、隣合う放電針が異なる極性になるように配置されている。つまり、各イオン発生器21のプラス放電針212とマイナス放電針213は周方向に同じ並びになっている。そして、イオン発生器21のプラス放電針212とマイナス放電針213の間は間隔L1であり、隣のイオン発生器21のプラス放電針212とマイナス放電針213の間も間隔L1になるように配列されている。
【0044】
このようにイオン発生器21を配列することで、各々のイオン発生器21におけるプラス放電針212とマイナス放電針213との電磁気的引力と、隣合うイオン発生器21のプラス放電針212またはマイナス放電針213との電磁気的引力との関係が等しくなり、ダクトDtの内部でプラスイオンとマイナスイオンの量(濃度)のばらつきが少ない、すなわちバランスが良くなるようにプラスイオンとマイナスイオンを発生させることができる。
【0045】
そして、ダクトDtのイオン発生器21の上流側には、ファン103の回転で発生する気流のねじれと逆方向にねじる面を有する6本のステータ105が周方向に等間隔に並んで配置されている。ステータ105によって、ファン103の回転で発生した気流を軸方向に流れる気流に整流する。そして、図6に示すように、ステータ105によってダクトDtが周方向に等分割されている。各ステータ105のダクトDt側の端部は、イオン発生器21のプラス放電針212とマイナス放電針213とを隔てる位置に設けられている。この等分割されている領域と各イオン発生器21のプラス放電針212又はマイナス放電針213の1つとが軸方向に重なるように配置されている。
【0046】
ダクトDtのステータ105で分割された空間を通過することで気流の流れ方向が軸方向であるとともに、各領域と軸方向に重なる位置にプラス放電針212又はマイナス放電針213が配置されている。これにより、隣合う放電針が逆極性のイオンを発生しても、気流によって逆極性のイオンが混ざり合いにくく、外部に吹出されるイオンの量を多くすることができる。
【0047】
また、図7に示すように、イオン発生器21のプラス放電針212及びマイナス放電針213がモータ106とダクトDtの軸方向に重なる位置に設けられている。換言すると、モータ106が全てのイオン発生器21のプラス放電針212及びマイナス放電針213とダクトDtの軸と交差する方向(径方向)に対向するように配置されている。モータ106は、ファン103で発生する気流の下流側で、ステータ105のさらに下流側に設けられている。
【0048】
プロペラファンの空気を吐出する側の近傍では、中心軸の回りにファンから送出される気流と逆方向の空気の流れが発生する。つまり、プロペラファンの下流側の中心軸の周りの領域では、渦等が発生しやすくなっている。この領域にイオンを含む気流が流れると、プラスイオンとマイナスイオンが混在するとともに、結びついて中和されイオンの量が減少する。そこで、ファン103の下流近傍のダクトDtの中央部分にモータ106を配置することで、逆方向の気流の発生を抑制する。これにより、渦の発生を抑え、除電装置Aの外部に吹出されるイオンが減少するのを抑制する。
【0049】
以上に示したように、本発明にかかる除電装置Aは、プラス放電針212とマイナス放電針213とを交互にダクトDtの周方向に等間隔で配置していることから、ダクト内でのプラスイオンとマイナスイオンの偏りを抑制することができる。
【0050】
また、ファン103で生成されたらせん状に流れる気流をステータ105で軸方向に流れる気流に修正していることから気流が混ざりにくい。そして、ダクトDtはステータ105で6等分されているとともに、各領域の下流側にはそれぞれ、プラス放電針212又はマイナス放電針213が1個ずつ設けられている。ステータ105で区切られた領域からは軸方向に流れる気流が流出するため、プラス放電針212とマイナス放電針213とを隣り合わせに配置しても、プラスイオンを含む気流とマイナスイオンを含む気流とが混ざりにくく、イオンが中和されにくい。
【0051】
そして、ステータ105で気流の周方向の速度成分を軸方向に変換することで、軸方向に送り出す力を増加させている。以上のことから、本発明にかかる除電装置Aでは、プラスイオンとマイナスイオンの偏りが少なく、(イオンが中和されにくいため)イオン濃度が高い気流を遠くまで吹き付けることができる。
【0052】
なお、イオン発生器21として、プラス放電針212とマイナス放電針213とを一対備えたものを例に説明しているが、これに限定されるものではなく、複数対のプラス放電針212とマイナス放電針213とを備えていてもよい。この場合、ステータ105で分割された領域と重なるように配置される放電針が複数個となる。なお、ステータ105で分割された領域と重なる放電針の本数は、全て同数とすることで、イオンの偏りを抑制できるので、好ましい。
【0053】
(第2実施形態)
本発明にかかる除電装置の他の例について図面を参照して説明する。図8は本発明にかかる除電装置の他の例のダクトを軸方向に見た図であり、図9図8に示すダクトの軸に沿う面で切断した断面図である。本実施形態にかかる除電装置は、ダクトDsの形状が異なる以外、第1実施形態の除電装置Aと同じであり、実質上同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0054】
図8図9に示すように、ダクトDsは、上流側に円筒形ダクトDs1と、下流側に下流に向かって断面積が狭くなるように形成されたテーパ形ダクトDs2とを備えている。そして、円筒形ダクトDs1とテーパ形ダクトDs2とは内面が連続するように一体的に形成されている。そして、テーパ形ダクトDs2は、円筒形ダクトDs1との連結部分が円環状の断面を有するとともに、先端に向かって所定の距離を持って次第に六角形状の断面を有するように変形している(絞っている)。
【0055】
このように円筒形状から六角形状に緩やかに変形していることで、イオン発生器21を六角形状に設置したときに、イオン発生器21による風路の妨げとなる部分を減らすことができる。これにより、気流の乱れを抑制し、効果的に偏りの少なくイオン濃度が高い(含まれるイオン量が多い)気流を外部に放出することができる。
【0056】
なお本実施形態では、イオン発生器21を3個備えているため、六角形状となるように絞っているが、絞る形状はイオン発生器21の個数に合せて変化するものであってもよい。また、多角形状ではなく第1実施形態の貫通孔110や通気口203の形状、すなわち、複数個(3個)の直線部と複数個(3個)の曲線部とを組み合わせた形状で絞るような形状であってもよい。
【0057】
(第3実施形態)
本発明にかかる除電装置のさらに他の例について図面を参照して説明する。図10は本発明にかかる除電装置のイオン発生器の配置状態を示す概略図である。除電装置は、除電対象によって気流の流量を決定している。第1実施形態及び第2実施形態では、3個のイオン発生器21を備えた構成であり、断面形状が六角形状或いは3個の直線を曲面で接続した形状を有している。このような断面形状で気流の流量を変更する場合、ファンの回転数を変更するか断面積を変更することで行われる。
【0058】
ファンの回転数を変更すると、気流の流速が変化してしまい、イオンの濃度が不十分になったり、遠くまで気流を送り込むことが困難になったりする。また、断面形状を変更することなく断面積を変更すると、放電針の間隔を変更する必要があり、イオン発生器の構成を変更しなくてはならず、製造コストが高くなる。
【0059】
そこで、本実施形態では、流量が異なる除電装置を形成する場合にイオン発生器21の個数を調整するとともに、イオン発生器21の配置及びダクトの形状を調整している。例えば、気流がイオン発生器21が2個で十分な流量の場合、図10に示すように、イオン発生器21をダクトDr1の中心軸を挟んで対称であり、4個の放電針の頂点で長さL1の正方形を形成するように配置するようにしてもよい。このように配置することで、形状、すなわち、プラス放電針212とマイナス放電針213の距離L1を変更することなく、気流の流量及びイオン濃度に合せた断面形状のダクトDsを形成することができる。
【0060】
また、同様にイオン発生器21が3個のときよりも多くの流量が要求される場合、図11に示すようにイオン発生器21を4個配置するとともに、各放電針が正八角形を形成するようにダクトDs2を構成する。これにより、イオン発生器21の形状を変更することなく、気流の流量を増やすことが可能である。
【0061】
本実施形態にかかる除電装置ではイオン発生器21の形状を変更することなく、ダクトの断面積を変更することができ、流量にかかわらず良好なイオンバランスの気流を吹出し口から吹き出すことができる。なお、ダクトの断面形状は、イオン発生器21の個数の2倍の正多角形状の放電針が配置されるものである。
【0062】
なお、予め気流の流量と断面形状(イオン発生器の個数)を決めたテーブルを用意しておき、そのテーブルに従って、断面形状及びイオン発生器の個数を決定するようにしてもよい。このようにすることで、ダクトの形状を容易に決定することができる。
【0063】
(第4実施形態)
本発明にかかる除電装置のさらに他の例について図面を参照して説明する。図12は本発明にかかる除電装置に用いられるルーバの一例を示す正面図である。除電装置は、イオンを吹き付けることで対象体を除電するものであり、除電の範囲は対象体によって変化する。図1等に示す除電装置では、気流が開口から軸方向に流れる構成であり、部分的に気流を吹き付けることができる。
【0064】
一方で、広い範囲にイオンを吹き付けようとすると、図1等に示す形状では気流の照射範囲が狭いため、除電装置を移動させてイオンを吹き付ける必要がある。この場合、除電装置の移動が安定しないと、吹き付けられるイオンの量(濃度)がばらつくことがあり、効果的な除電が困難になる場合がある。
【0065】
そこで、図12に示すようなルーバ7を用いている。ルーバ7は円筒形状の軸方向の一方の端部を軸と直交する1つの方向に偏平させた形状の吹出し部71を備えている。気流は吹出し部71の内面に沿って流れるため、吹出し部71を形成することで偏平方向に広がるような気流が流れる。これにより、一方向に広い範囲に気流を吹出すとともに気流に乗せて広い範囲にイオンを供給することができ、広い範囲を等しく或いは略等しく除電することができる。
【0066】
なお、除電装置Aの吹出し口3が、除電対象体(除電対象範囲)の大きさ、形状、除電に必要なイオンの濃度に合わせて取り替え可能になっていてもよい。例えば、除電範囲が狭い場合や除電対象体に高濃度のイオンを吹き付ける必要がある場合、図1等に示すようなルーバ301を用いようにしてもよい。また、除電範囲が広い場合や大きな除電対象体を均一又は略均一に除電をする必要がある場合、図12に示すようなルーバ7を用いるようにしてもよい。このようにルーバを取り換え可能とすることで、1台の除電装置で複数の要求に応じた除電を行うことが可能である。
【0067】
なお、上述の各実施形態では、ファンとして軸流ファン(プロペラファン)を用いたものとしているが、これに限定されるものではなく、遠心ファン(例えば、シロッコファン)を用いるものであってもよい。また、これら以外にも、気流を発生するファンを広く採用することができる。なお、気流が旋回しないファンを用いる場合、ステータを省略してもよい。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。
【0069】
以上説明した本発明にかかる除電装置は、ダクトと、前記ダクトの内部を軸方向に流れる気流を発生させる送風機と、極性が異なるイオンを発生する少なくとも一対の放電針を有する複数個のイオン発生器と、を備え、前記イオン発生器は、前記ダクトに前記放電針の少なくとも尖端が前記ダクトの内部に突出するように配置されており、前記複数個のイオン発生器が前記ダクトの周方向に間隔をあけて配置されている。
【0070】
上述した除電装置は、隣合う前記放電針が異なる極性のイオンを発生するものであるとともに前記放電針の先端が前記周方向に等間隔に配列されていてもよい。
【0071】
上述した除電装置は、前記ダクトの前記送風機と前記イオン発生器との間の部分には、前記ダクトの内部を周方向に前記放電針と同数の領域に分割するとともに前記気流を軸方向に整流する整流部材が備えられており、前記整流部材で分割された各領域は少なくとも1個の前記放電針と軸方向に重なってもよい。
【0072】
上述した除電装置は、前記送風機は、軸流プロペラと、前記軸流プロペラを回転駆動する電動機とを備えており、前記電動機は前記ダクトの内部に設けられており、前記電動機の外周面が前記放電針の先端と前記ダクトの径方向に対向してもよい。
【0073】
上述した除電装置は、前記ダクトは円形断面の円筒部と、前記円筒部と一体的に連結されているとともに前記イオン発生器が配置される取付部とを備えており、前記取付部は前記放電部のそれぞれを取り付ける複数個の平面部分と、複数個の前記平面部分を周方向に連結する連結部分とを有していてもよい。
【0074】
上述した除電装置は、前記連結部分が曲面であり、前記連結部分の曲率中心が前記ダクトの中心軸と重なってもよい。
【0075】
上述した除電装置は、前記取付部の軸と垂直な断面の断面積は、前記円筒部の軸と垂直な断面の断面積よりも小さく、前記円筒部から前記取付部に向かって小さくなる傾斜面が形成されていてもよい。
【0076】
上述した除電装置は、前記取付部が前記イオン発生器の個数の2倍の辺を有する多角形であってもよい。
【0077】
上述した除電装置は、前記ダクトの前記放電部よりも気流の下流側に前記ダクトの軸と垂直な1方向に偏平させた吐出部が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0078】
A 除電装置
1 送風機
101 送風機ケース
102 送風機カバー
103 ファン
104 ファンケース
105 ステータ
106 モータ
107 フィルタカバー
108 吸込口
110 貫通孔
2 イオン発生装置
201 ユニットケース
202 ユニットカバー
203 通気口
204 リブ
205 貫通孔
206 リブ
21 イオン発生器
211 ケース
212 プラス放電針
213 マイナス放電針
3 吹出し口
301 ルーバ
302 グリッド
4 スタンド
401 立脚部
402 ヒンジ部
5 基板収容部
501 ケース
502 前カバー
6 イオン検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12