(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る測定装置の概略構成を示す斜視図である。本実施形態に係る測定装置100は、外観上、装着部110と、センサ部120と、突出部130とを備える。
図1に示すように、測定装置100における装着部110は、図に示すZ軸正方向を向く裏面111と、Z軸負方向を向く表面112とを有する。
【0024】
図2は、測定装置100を被検者に装着した状態を示す概略図である。
図2は、
図1に示した測定装置100を、Z軸正方向に向かって(装着部110の表面112側から)見た図である。測定装置100は、装着部110の裏面111側を被検者の生体の被検部位に装着して使用される。このため、
図2に示すように、被検者が測定装置100における装着部110を装着した状態では、被検者は、装着部110の表面112を見ることができる。
図2においては、一例として、測定装置100を用いて、被検者の掌(左手)側の手首を被検部位として、当該被検部位にセンサ部120を接触させて、生体情報を測定している様子を示している。
【0025】
図2に示すように、装着部110は、被検者に装着された状態で使用される。このため、装着部110は、図に示す筐体本体(装着部110)のみならず、例えばバンド部114,115のような部材を含めて構成するのが好適である。
図1および
図2においては、一例として、被検者の腕などに巻きつけて使用するバンド部114,115を示してある。このようなバンド部114,115は、
図1および
図2に示したような構成に限定されず、被検者に装着可能な任意の構成とすることができる。このように、本実施形態において、装着部110は、被検者の手首に装着されるバンドとすることができる。
【0026】
図1に示すように、測定装置100における装着部110は、その裏面111の中央付近に開口部を有し、当該開口部からはセンサ部120がZ軸正方向に突出する構造を有する。センサ部120は、被検部位の生体情報を取得する。センサ部120は、装着部110に支持されて、被検者の被検部位に接触した状態で被検者の生体情報を取得する。センサ部120は、後述するように、弾性体を介して装着部110に支持される。このため、測定装置100における装着部110が被検者の被検部位に押しつけられると、その押圧に応じて、センサ部120の突出度合いは若干減少する。そのため、センサ部120は、被
検者の被検部位に一定の押圧力で接触する。
【0027】
本実施形態に係る測定装置100においては、センサ部120の周りに、突出部130が配置される。
図1に示すように、突出部130は、被検者の被検部位側に向かって、すなわちZ軸正方向に、突出し、広がる形状を有するようにする。
【0028】
図3は、測定装置100の外観を示す正面図および側面図である。
図3(A)は、測定装置100における装着部110の外観を主に示す正面図である。すなわち、
図3(A)は、
図1に示した測定装置100を、Z軸負方向に向かって(装着部110の裏面111側から)見た図である。
図3(B)は、測定装置100における装着部110の外観を主に示す側面図である。すなわち、
図3(B)は、
図1に示した測定装置100を、Y軸正方向に向かって見た図である。
図3(A)および
図3(B)においては、バンド部114,115の一部のみを示してある。
【0029】
図3(A)および
図3(B)に示すように、測定装置100における装着部110は、その裏面111の中央付近に開口部を有し、当該開口部からはセンサ部120がZ軸正方向に突出する。また、センサ部120の周りには突出部130が配置され、この突出部130も、Z軸正方向に突出する構造を有する。さらに、突出部130は、被検者の被検部位側に向かって、すなわちZ軸正方向に、広がる形状を有している。
図3(B)においては、突出部130は、Z軸正方向に曲線的に広がる形状を有しているが、このような形状には限定されず、例えばZ軸正方向に直線的に広がる形状としてもよい。
【0030】
図4は、
図3(A)におけるI−I線またはII−II線に沿った断面図である。以下、I
−I線に沿った断面とII−II線に沿った断面とはほぼ同じ構成を有するものとしてまとめ
て説明するが、本実施形態はこのような構成に限定されず、それぞれ断面が異なる構成とすることもできる。なお、
図4においては、バンド部114,115図示は省略してある。
【0031】
図4に示すように、測定装置100における装着部110の内部において、センサ部120は、弾性体140を介して装着部110に支持される構造を有する。また、突出部130は、センサ部120の周りに配置され、被検者の被検部位側(Z軸正方向)に突出する構造を有する。また、本実施形態において、突出部130は、センサ部120が被検者の被検部位に接触していない状態においては、その被検部位側にセンサ部120よりも(距離Dだけ)突出する構造を有する。
【0032】
以下、
図4を参照しながら、測定装置100を構成する各要素について、さらに説明する。
【0033】
装着部110は、測定装置100の筐体の本体部分を構成し、さらにバンド部114,115を含めた上で、全体として、被検者の手首などに装着されるバンドとすることができる。測定装置100の筐体の本体部分としての装着部110は、例えばプラスチック、合成樹脂、任意の金属など、比較的堅牢な材料を用いて構成するのが好適である。この装着部110は、全体を一体成型することにより構成してもよいし、任意の個数の部品を組み立てることにより構成してもよい。また、この装着部110は、
図1〜
図4に示したような形状に限定されるものではなく、各種の用途および仕様などに応じて、種々の形状とすることができる。
【0034】
一方、測定装置100の筐体の本体部分としての装着部110と共に使用するバンド部114,115については、被検者に装着される際、被検者の手首などに巻き付けて使用するため、全体として曲げることができる構成とする必要がある。このバンド部114,115は、
図1に示したように、腕時計のリストバンドに採用されるような構成とすることができる。しかしながら、バンド部114,115は、
図1に示したような構成または形状に限定されず、種々の構成または形状とすることができる。バンド部114,115は、被検者の手首等の被検部位に着脱可能であり、測定時には被検部位にしっかり固定されるような構成とするのが好適である。バンド部114,115は、例えばエラストマー、合成繊維、天然皮革または人造皮革のような各種素材で構成することができる。
【0035】
センサ部120は、被検者の被検部位に接触した状態で被検者の生体情報を取得する各種のセンサで構成することができる。例えば、センサ部120は、被検部位に光を照射する1つ以上の発光素子を含めて構成することができる。また、センサ部120は、例えば発光素子により照射されて生体内を経た光を検出する1つ以上の受光素子を含めて構成することもできる。
図1〜4において、センサ部120は、四角柱状の要素として図示したが、このような形状に限定されるものではなく、各種の用途および仕様などに応じて、種々の形状とすることができる。例えば、センサ部120は、四角柱状ではなく、例えば直方体、円柱、または楕円柱などのような形状としてもよい。センサ部120の被検部位に接触する部位は、凸形状を含んで構成するのが好適である。センサ部120の被検部位に接触する部位を、凸形状を含んで構成することにより、センサ部120は、被
検者の被検部位に対して安定した接触状態を維持することが可能である。センサ部120は、その他、多種多様な構成とすることが可能であるが、本実施形態による測定装置100に用いるセンサ部120の具体例の詳細については、後述する。
【0036】
突出部130は、
図4に示すように、少なくとも一部が被検者の被検部位側に向かって広がる形状を含む。突出部130は、上述したように、センサ部120が被検者の被検部位に接触していない状態においては、その被検部位側にセンサ部120よりも突出している。
図4においては、突出部130が、被検部位側にセンサ部120よりも距離Dだけ突出している様子を示してある。突出部130は、後述するように、被検部位の皮膚に接触した後に、さらに被検部位の皮膚に押圧されることで、もともと被検部位側に向かって広がっていた形状が、さらに広がるようになる。このため、突出部130の少なくとも一部は、弾性または可撓性を有するように構成するのが好適である。突出部130は、測定装置100を装着する際の皮膚への押圧により変形するような適当な硬さを備え、反発弾性率が高く、繰り返しの変形による亀裂が生じにくく、耐水性に優れた素材を用いるとよい。突出部130は、例えばシリコンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、エチレン酢酸ビニルゴムなどのような素材で構成することができる。
【0037】
弾性体140は、
図4に示すように、装着部110とセンサ部120との間に介在させるようにできる。弾性体140は、センサ部120に弾性力を与えることで、センサ部120を被検部位側の方向に(Z軸正方向)に押し出す作用を有する。この弾性体140は、例えば、ウレタン、ゴム、スプリング、板バネなど、各種の弾性部材を用いて構成することができる。
図4においては、弾性体140は、押圧力に応じた反発力を、センサ部120が位置を復元する力として利用している。しかしながら、弾性体140は、このような構成に限定されるものではなく、例えば、センサ部120を、当該センサ部120が開口部から突出する方向に引っ張る作用を有するスプリングなどにより構成してもよい。
【0038】
回路152,154は、測定装置100がセンサ部120を用いて生体情報を測定するのに必要な各種の回路である。例えば、回路152,154は、センサ部120の駆動回路とすることができる。回路152,154は、センサ部120が取得した生体情報に各種の情報処理を行う処理部とすることもできる。回路152,154は、センサ部120が取得した生体情報または当該生体情報の処理結果などを記憶する記憶部とすることもできる。さらに、回路152,154は、センサ部120が取得する生体情報以外の情報を取得する他のセンサ部とすることもできる。一方、測定装置100において、センサ部120が取得した生体情報をそのまま外部に出力するような構成の場合、回路152,154を設けないことも可能である。このような構成においては、例えば取得した生体情報を無線で外部に出力するための送信部を備えたり、または取得した生体情報を有線で出力するインタフェース(端子など)を備えたりすることもできる。以下の説明においては、回路152,154の図示は省略する。
【0039】
次に、本実施形態に係る測定装置100を用いた生体情報の測定について説明する。
【0040】
図5は、測定装置100を被検部位に押圧する様子を示す側方断面図である。
図5は、
図4に示した測定装置100を、被検者の被検部位に接触させて測定する様子を説明する図である。
図5に示す参照符号などは基本的に
図4と同様である。
【0041】
図5(A)は、測定装置100による測定を開始するに際し、突出部130の先端が被検者の被検部位の周囲の皮膚に接触した様子を示す。
図5(B)は、
図5(A)の状態から例えばバンド部114,115を締める等して、装着部110が被検者の被検部位に向けて押圧される様子を示す。
図5(C)は、
図5(B)の状態から例えばバンド部114,115をさらに締める等して、装着部110が被検者の被検部位に向けてさらに押圧される様子を示す。
【0042】
図5(A)は、被検者が測定装置100による生体情報の測定を開始するに際し、被検者の皮膚Sにおける被検部位S1に対してセンサ部120の位置決めをした状態の例を示している。この時点では、突出部130の先端部(被検者の皮膚Sに接触する部分)は、被検部位S1の周囲において被検者の皮膚Sに軽く接触している状態である。この状態においては、センサ部120の検出面は、まだ被検部位S1に接触しておらず、センサ部120の検出面と被検部位S1とは距離Dだけ離間している。
【0043】
図5(A)に示すように、被検者の皮膚S上には、例えば皮膚のシワ、皮膚表面の角質の溝、毛穴、または汗孔など種々の要因によって凹凸が存在し、平滑な状態ではないのが通常である。このような状態でセンサ部120の検出面を被検者の皮膚Sに密着させると、例えば皮膚のシワまたは皮膚表面の角質の溝などを含んだまま、センサ部120の検出面を被検部位S1に接触させることになる。このように、センサ部120の検出面に皮膚のシワまたは皮膚表面の角質の溝などが位置すると、生体情報の正確な測定の阻害要因となり、測定装置100による測定の精度は低下することになる。そこで、本実施形態に係る測定装置100においては、突出部130の作用により、被検部位S1の皮膚を伸張させて、凹凸、溝、シワなどの影響を低減した状態で、センサ部120の検出面を密着させる。例えば、センサ部120が発光素子を含めて構成された場合、本実施形態による測定装置100は、生体情報の正確な測定の阻害要因となる皮膚のシワまたは角質の溝などからの光の散乱を低減することができる。その結果、測定装置100による測定の精度は向上することになる。
【0044】
図5(B)は、
図5(A)に示した状態から、
図5(A)に示す矢印の方向(Z軸正方向)に、装着部110を被検部位S1に向けて押圧した様子を示す図である。装着部110を被検部位S1に向けて押圧すると、突出部130が曲がることにより、センサ部120の検出面と被検部位S1との距離Dは小さくなる。
図5(B)おいては、この距離Dがゼロになった状態、つまりセンサ部120の検出面と被検部位S1とが接触した状態を示している。
【0045】
本実施形態では、
図5(A)に示した状態から
図5(B)に示す状態に移行すると、被検部位S1側に向かって広がる形状をしていた突出部130が、
図5(B)に示す矢印の方向(Z軸に垂直な方向)に、さらに広がる。ここで、突出部130の先端部分は、被検部位S1の周辺の皮膚Sに接触した状態で、突出部130が曲がって先端部分がさらに広がることにより、被検者の皮膚Sの被検部位S1を含む部分は引き伸ばされる。したがって、
図5(A)に示すように、もともと凹凸を有していた皮膚Sの少なくとも被検部位S1を含む部分は、
図5(B)に示すように、平滑な状態になる。
【0046】
図5(C)は、
図5(B)に示した状態から、さらにZ軸正方向に、装着部110を被検部位S1に向けて押圧した様子を示す図である。装着部110を被検部位S1に向けてさらに押圧すると、突出部130はさらに広がり、センサ部120の検出面は被検部位S1に押しつけられて密着する。このように、突出部130は、センサ部120の検出面が被検部位S1に押しつけられる際にも、さらに皮膚Sの被検部位S1を含む部分を引き伸ばそうと作用する。センサ部120の検出面と被検部位との間の距離Dはゼロより小さくはならないため、
図5(B)に示した後の更なる押圧力は、
図5(C)に示すように弾性体140が吸収する。このように、弾性体140は、センサ部120の検出面が被検部位S1に押しつけられる力が過度に強くならないように、適度な押圧力で密着させる緩衝材としての機能も果たす。
【0047】
本実施形態において、突出部130は、センサ部120が被検者の被検部位に接触していない状態(
図4参照)においては、センサ部120よりも被検部位側に突出している。また、本実施形態において、突出部130は、センサ部120が被検者の被検部位S1に接触するに際し、被検部位S1の周りに接触して、被検部位S1側に向かって広がる形状が更に広がるように変形する(
図5(A)〜(C)参照)。すなわち、突出部130は、装着部110が被検者に装着される際に、センサ部120が被検部位S1に接触する前に被検部位S1の周りに接触して変形することにより、センサ部120が接触する被検部位S1の皮膚を伸張する。
【0048】
ここで、突出部130が広がるように変形する構成は、
図5に示したものの他、種々の構成を想定することができる。上述したように、突出部130の少なくとも一部が弾性または可撓性を有するように構成するのが典型例である。その他、例えば、
図5に示す突出部130の断面図において、その一部の厚さを変更する(例えば断面の一箇所のみが薄くなるように構成する)などして、その箇所において曲がり易くするように構成することもできる。また、このような厚さを変更する箇所を複数設けることもできる。さらに、
図5に示す突出部130の断面において、複数の堅さの異なる素材を複数積層させて形成することにより、特定の方向に曲がり易くするように構成することもできる。
【0049】
また、突出部130の先端部(被検者の皮膚Sに接触する部分)は、センサ部120が接触する被検部位S1の皮膚を伸張する部分になる。したがって、突出部130の先端部は、被検者の皮膚Sを適切に伸張することができるよう、被検者の皮膚Sに対して滑らずグリップするような構成にするのが好適である。皮膚Sに対して滑らずグリップするような構成は、例えば、突出部130の先端部に凹凸のパターンを形成したり、突出部130の先端部にシリコンアクリル樹脂等のコーティング剤を塗布したりすることにより実現できる。
【0050】
上述したように、センサ部120の検出面を被検者の被検部位S1に適切に密着させないと、測定結果に含まれるノイズが増大する傾向にある。センサ部120の検出面を被検者の被検部位S1に密着させる際に、被検者の肌表面の角質の溝などが存在すると、その上から単にセンサ部120を被検部位S1に押し当てるのみでは、適切な密着を達成することはできない。本実施形態に係る測定装置100は、センサ部120の周りに突出部130を配置し、この突出部130は、センサ部120が被検部位S1に接触する際に、被検部位S1を伸張させる。これにより、本実施形態に係る測定装置100は、被検者の肌表面の角質の溝などを伸張させた状態で、センサ部120を被検部位に密着させることができる。したがって、本実施形態に係る測定装置100によれば、測定の際のノイズを低減させることができ、生体情報の測定精度を向上させることができる。
【0051】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0052】
図3(A)に示した例においては、突出部130は、センサ部120の周囲を包囲する構成を有するものとして説明した。このような構成においては、例えば突出部130を遮光性の樹脂などで構成すると、生体情報の測定の際に、センサ部120に含まれる発光素子などからの光が漏れなくなるという利点を有する。また、さらに、センサ部120に含まれる受光素子が、周囲から入射する光の影響をうけなくなるという利点も有する。このように、突出部130は、装着部110が被
検者に装着された状態において、センサ部120に周囲光が入射することを防ぐように構成してもよい。
【0053】
本実施形態に係る突出部130は、センサ部120が接触する被検部位S1の皮膚を伸張するという観点からは、突出部130全体を必ずしも遮光性の素材で構成する必要はない。例えば、突出部130の少なくとも一部を遮光性の樹脂で構成したとしても、被検部位S1の皮膚を伸張する機能は何ら減殺されない。
【0054】
図6は、測定装置100の他の例の外観を示す正面図である。本実施形態に係る測定装置100において、突出部130の構成は、
図3に示したようなものに限定されず、例えば
図6(A)および
図6(B)に示すような構成とすることもできる。
図6(A)および
図6(B)の双方ともに、
図3(A)に示した測定装置100の外観を示す正面図に対応している。
【0055】
突出部130が完全な遮光性を求められない場合、
図3(A)に示したように突出部130を一体成型するのではなく、例えば
図6(A)に示すように、突出部130を複数の部品131,132,133,134で構成することもできる。
図3(A)に示した例においては、突出部130の被検部位側に向かって広がる形状が変形してさらに広がるためには、少なくとも突出部130の先端部(被検者の皮膚に接触する部分)は、伸張する素材で構成する必要がある。しかしながら、
図6(A)に示すような突出部131,132,133,134であれば、これらの装着部110の裏面111に接合する部分が可動であれば、その他の部分は特段の弾性または可撓性は必要なくなる。この場合、可動である突出部130の接合部分以外は、ある程度堅いプラスチック等の素材を用いて構成したり、弾性または可撓性を有する素材の内部にある程度の堅さの芯となる部品を埋め込むこともできる。
【0056】
また、
図6(A)においては、突出部130が複数(4つ)の部品で構成される例を説明したが、例えば突出部130を一体成型としつつ、突出部130の少なくとも一部がスリットを有するように構成してもよい。すなわち、
図6(A)に示す例に似せて、突出部130の四隅において完全に分離するようなスリットを形成しても良い。また、突出部130が装着部110の裏面111に接合する部分は一体成型としつつ、突出部130の先端部(被検者の皮膚に接触する部分)に向かう途中からスリットが形成されるようにしてもよい。このようなスリットの数も、任意に構成することができる。
【0057】
さらに、センサ部120が接触する被検部位S1の皮膚を伸張するという観点からは、突出部130は、例えば
図6(B)に示すように、少なくとも一方向の被検部位S1の皮膚を伸張するような突出部130の構成としてもよい。
図6(B)に示す例では、測定の際に装着部110を被検部位S1に押圧すると、X軸方向の皮膚は伸張せずに、Y軸方向の皮膚のみを伸張することができる。
【0058】
このように、本実施形態において、突出部130は、非検者の被検部位S1側にセンサ部120よりも突出した部位が被検部位S1を除く部位に接触することにより、被検部位S1の皮膚Sを伸張する。また、センサ部120は、このように伸張された被検部位S1の皮膚Sに接触した状態で、非検者の生体情報を取得する。
【0059】
次に、測定装置100により被検者の脈波伝播速度を測定する具体例を説明する。
【0060】
上述したように、測定装置100は、被検者が測定装置100を装着した状態で、被検者の生体情報を測定する。測定装置100が測定する生体情報は、測定部120が測定可能な任意の生体情報とすることができる。そこで、以下、本実施形態に係る測定装置100の具体例として、被検者の2か所の脈波を取得して脈波伝播速度を測定する例を説明する。
【0061】
図7は、測定装置100が2つのセンサ部を有する例を示す図である。
図7は、
図3(A)および
図6と同様に、測定装置100の外観を示す正面図である。
【0062】
図7に示すように、本例に係る測定装置100は、上述したセンサ部120として、第1センサ部120aおよび第2センサ部120bを備えている。
図7(A)は、第1センサ部120aおよび第2センサ部120bの2つのセンサ全体の周りに1つの突出部130を設けた例を示している。
図7(B)は、第1センサ部120aの周りに突出部130aを設け、第2センサ部120bの周りに突出部130bを設けた例を示している。このような複数のセンサ部120は2つに限定されず、測定の要求および仕様などに応じて任意の数とすることができるが、ここでは2つのセンサ部120を備える例について説明する。
【0063】
図7(A)に示す例において、突出部130は、第1センサ部120aおよび第2センサ部120bがそれぞれ接触する被検部位の皮膚を伸張して測定を行うことができる。さらに、
図7(A)に示す例において、突出部130は、第1センサ部120aと第2センサ部120bとの間の皮膚をも伸張して測定を行うことができる。一方、
図7(B)に示す例において、突出部130aおよび突出部130bは、第1センサ部120aと第2センサ部120bとの間の皮膚を伸張して測定することはできない。しかしながら、
図7(B)に示す例において、突出部130aおよび突出部130bは、第1センサ部120aおよび第2センサ部120bがそれぞれ接触する被検部位の皮膚を別個独立に伸張して測定を行うことができる。このように、本実施形態において、測定装置100は、センサ部120を複数備え、突出部130は複数のセンサ部120a,120bの周りに配置されるように構成してもよい。
【0064】
2つのセンサ部120a,120bは、被検者の生体情報を取得する生体センサを備える。
図7は、センサ部120a,120bにおける生体センサの配置の一例を示す図である。なお、
図7に示す装着部110、センサ部120、および突出部130は、図示した形状に限定されるものではなく、測定の要求および仕様などに応じて種々の形状とすることができる。
【0065】
センサ部120a,120bは、被検者の被検部位に接触した状態で、被検者の生体情報を測定する。
図7に示すように、本例において、第1センサ部120aおよび第2センサ部120bの2つの生体センサは、所定間隔で配置される。第1センサ部120aと第2センサ部120bとの間隔は、例えば10〜30mmとすることができる。第1センサ部120aおよび第2センサ部120bは、それぞれ異なる被検部位における脈波を光学的手法により取得する。脈波とは、血液の流入によって生じる血管の容積時間変化を体表面から波形としてとらえたものである。本例では、複数のセンサ部120a,120bは、生体情報である脈波を光学的に取得する。このように、本実施形態において、センサ部120が取得する被検者の生体情報は脈波とすることができる。
【0066】
図7(A)に示すように、第1センサ部120aは、例えば、2つの発光部121a,122aと受光部123aとを備える。第2センサ部120bは、例えば、2つの発光部121b,122bと受光部123bとを備える。また、
図7(B)についても同様の構成とすることができる。それぞれの発光部121a,122aおよび121b,122bから被検部位に測定光を射出し、その光が体内を通過して受光部123aおよび123bにそれぞれ到達した散乱光を受光して、脈波を取得する。発光部121a,122aおよび121b,122bは、例えば、LED(発光ダイオード:Light emitting diode)またはLD(レーザダイオード:Laser Diode)等の発光素子を含む。また、受光部123a,123bは、例えば、PD(フォトダイオード:Photodiode)またはPT(フォトトランジスタ:Phototransistor)等の受光素子を含む。
【0067】
なお、上述の構成においては、各センサ部120において、2つの発光部および1つの受光部を有する場合について説明したが、本例では、各センサ部120において、発光部および受光部をそれぞれ1つずつ有する構成によっても測定を行うことができる。しかしながら、以下、2つの発光部および1つの受光部を有する構成を想定して説明する。
【0068】
発光部121a,122aおよび121b,122bは、例えば、緑色(波長:500〜550nm)、赤色(波長:630〜780nm)、近赤外(波長800〜1600nm)のいずれかの光を発光する。長波長の光は短波長の光と比べて、体のより深い位置まで光が減衰しないので、近赤外光の発光素子を用いて生体情報の測定を行うと、測定精度が向上することが期待できる。
【0069】
次に、
図8を参照しながら、測定装置100の使用方法について説明する。
【0070】
図8は、
図7に示した測定装置100を被検者に装着した状態を示す概略図である。
図2において説明したのと同様に、被検者は、測定装置100における装着部110を手首に巻きつけて、測定装置100による測定を行う。被検者は、測定装置100における装着部110(または装着部110のバンド部114,115)を手首に巻きつける際に、センサ部120a,120bの位置を調整した上で、装着部110を手首に巻きつけるようにする。この際、被検者は、センサ部120a,120bの発光部から、生体情報を取得する尺骨動脈または橈骨動脈などの所定の血管Vに測定光が射出されるように、装着部110の位置決めをする。2つのセンサ部120a,120bは、装着部110の表面112側ではなく裏面111側に位置するため、
図8においては、センサ部120a,120bは破線により示してある。
【0071】
図8に示したように、測定装置100は、第1センサ部120aおよび第2センサ部120bの2つのセンサ部が、例えば手首のような被検部位に接触した状態で、被検者に装着される。特に、第1および第2のセンサ部120aおよび120bは、被検者が自ら装着時に調整することにより、尺骨動脈または橈骨動脈に測定光が射出される位置で、手首に接触させることが好ましい。この時、2つのセンサ部120a,120bは、装着部110が被
検者に装着された状態において、被
検者の所定の血管Vに沿って配置されるようにするのが好適である。
図8においては、例えば尺骨動脈または橈骨動脈のような被
検者の所定の血管Vを、破線により概略的に示してある。
【0072】
図8に示す例においても、
図2に示したように、装着部110(バンド部114,115を含む)は細長い帯状のバンドとすることができる。生体情報の測定は、例えば被検者が測定装置100における装着部110を手首に巻きつけた状態で行う。具体的には、被検者は、複数のセンサ部120a,120bが被検部位に接触するように装着部110を手首に巻きつけて、生体情報の測定を行う。測定装置100は、被検者の手首において、尺骨動脈または橈骨動脈を流れる血液の脈波伝播速度を測定する。
【0073】
次に、
図9を参照して、上述のような構成により取得された2つの脈波に基づいて、手首至近距離間のPWV(脈波伝播速度:Pulse Wave Velocity)を測定する方法について説明する。
【0074】
図9は、2つの生体センサで取得された脈波の一例を示す図である。なお、測定装置100において、第1センサ部120aおよび第2センサ部120bは、
図8に示した例に倣い、被検者の橈骨動脈上に配置するように調整されているものとする。
【0075】
図9は、橈骨動脈上の第1の被検部Aに接触する第1センサ部120aにおいて取得された脈波Aと、橈骨動脈上の第2の被検部Bに接触する第2センサ部120bにおいて取得された脈波Bとを、上下に並べて比較して示す図である。
図9の縦軸に示すパワーPaとは、例えば、第1および第2センサ部120aおよび120bにおける受光部の受光素子からの出力電圧の強度とすることができる。取得された2つの脈波は時間で同期されている。取得された2つの脈波におけるピーク時間の間隔ΔT(ミリ秒)、および第1センサ部120aと第2センサ部120bとの配置間隔ΔD(mm)を用いて、脈波伝搬速度PWV(m/秒)は以下の式で求めることができる。
PWV=ΔD/ΔT
【0076】
次に、測定装置100による脈波伝播速度の測定について、機能的な観点から説明する。
【0077】
図10は、
図1に示した測定装置100の概略構成を示す機能ブロック図である。測定装置100は、第1センサ部120aと、第2センサ部120bと、制御部160と、電源部170と、記憶部180と、通信部190とを備える。本実施形態では、第1センサ部120a、第2センサ部120b、制御部160、電源部170、記憶部180および通信部190は、それぞれ装着部110の内部に含めて構成することができる。また、本実施形態では、第1センサ部120aおよび第2センサ部120b以外の、制御部160、電源部170、記憶部180および通信部190の各機能部は、適宜装着部110の外部に設けてもよい。
【0078】
第1センサ部120aおよび第2センサ120bは、上述のようにそれぞれ生体センサを含み、被検部位から生体情報を取得する。第1センサ部120aは、発光部121a,122aと受光部123aとを含む。第2センサ部120bは、発光部121b,122bと受光部123bとを含む。
【0079】
制御部160は、測定装置100の各機能ブロックをはじめとして、測定装置100の全体を制御および管理するプロセッサである。また、制御部160は、生体情報として取得された脈波に基づいて脈波伝搬速度を算出するプロセッサである。制御部160は、制御手順を規定したプログラムおよび脈波伝搬速度を算出するプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成され、かかるプログラムは、例えば記憶部180等の記憶媒体に格納することができる。このように、本実施形態において、測定装置100は、センサ部120が取得する被検者の生体情報である脈波に基づいて脈波伝搬速度を算出する制御部160を備えてもよい。
【0080】
電源部170は、例えばリチウムイオン電池ならびにその充電および放電のための制御回路等を備え、測定装置100全体をはじめとして、特にセンサ部120に電力を供給する。
【0081】
記憶部180は、半導体メモリまたは磁気メモリ等で構成することができ、各種情報や測定装置100を動作させるためのプログラム等を記憶するとともに、ワークメモリとしても機能する。記憶部180は、例えばセンサ部120による生体情報の測定結果を記憶してもよい。
【0082】
通信部190は、外部装置と有線通信または無線通信を行うことにより、各種データの送受信を行う。通信部190は、例えば、被検者の生体情報を記憶する外部装置と通信を行い、測定装置100が測定した生体情報の測定結果を、当該外部装置に送信する。
【0083】
次に、本実施形態に係る測定装置100を含む測定システムについて説明する。
【0084】
図11は、上述した実施形態に係る測定装置100を含む測定システム100を概略的に示す図である。測定システム1は、上述した本発明に係る測定装置100の他に、サーバ200と、表示部300とを含むものとして構成することができる。
【0085】
サーバ200は、測定装置100によって取得された生体情報を集約し、種々の情報処理を行う。このような生体情報の集約の際は、測定装置100が、有線または無線通信ネットワークを介して、サーバ200にデータを送信することにより行うことができる。このサーバ200は、測定装置100のような各種端末と情報の交換を行うことができる、一般的な機能を有するサーバ装置を用いて構成することができる。
【0086】
表示部300は、測定装置100で取得された生体情報に基づいて、サーバ200が情報処理した結果を表示する。すわなち、表示部300は、測定装置100で取得された生体情報に基づく情報を表示する。この表示部300は、例えばLCDまたは有機ELもしくは無機ELディスプレイなどの単独の表示端末により構成することができる。また、表示部300は、このような表示装置を備えるスマートフォン、タブレット端末、ノートPC、デスクトップPCなど、表示装置を有する任意の端末により構成することもできる。
【0087】
より具体的には、測定装置100の制御部160は、測定装置100において取得した生体情報を、測定装置100の通信部190からサーバ200に送信する。測定装置100から送信された生体情報を受信すると、サーバ200は、サーバ200が内蔵する制御部において、受信した被検者の生体情報に基づいて、種々の情報処理を行う。例えば、サーバ200の制御部は、測定装置100において取得した生体情報を、例えば当該生体情報を取得した時間の情報に関連付けた時系列のデータとして、サーバ200の記憶部に記憶することができる。
【0088】
そして、サーバ200の制御部は、例えば、これらの記憶されたデータと、サーバ200の記憶部に記憶した同一被検者の過去のデータまたは他の被検者のデータとの比較を行い、その結果に基づいて、被検者に最適なアドバイスを生成することができる。次に、サーバ200の通信部は、取得された被検者の時系列のデータおよび生成されたアドバイスの情報を表示部300に送信することができる。このようにして送信された情報を表示部300が受信すると、表示部300は、受信したデータおよびアドバイスを画面に表示することができる。このように、本実施形態に係る測定システム1は、本実施形態に係る測定装置100と、測定装置100で取得された生体情報に基づく情報を表示する表示部300と、を備える。
【0089】
上述した測定システム1においては、測定装置100、サーバ200、表示装置300が、それぞれ独自の制御を行うことができることを想定して説明したが、本実施形態に係る測定システム1は、このような構成に限定されない。例えば、本実施形態に係る測定システム1は、サーバ200が内蔵する記憶部および制御部と同様の機能を有する機能部を、測定装置100または表示部300が備えるものとしてもよい。この場合、測定システム1は、必ずしもサーバ200の機能を介することなく、測定装置100と表示装置300との間で直接情報交換を行うことができる。
【0090】
なお、本発明は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0091】
例えば、上述した実施形態において、測定装置100は、1つのセンサ部120を備える構成、および、第1センサ部120aおよび第2センサ部120bの2つのセンサ部を備える構成について説明した。しかしながら、本発明において、複数のセンサ部は1つまたは2つのセンサ部に限定されず、2つより多い任意の数のセンサ部を備えるようにしてもよい。この場合は、センサ部の数に応じて、装着部110の形状などの構成も適宜変更するのが望ましい。
【0092】
また、測定装置100は、被検者に生体情報の測定結果を通知する通知部を備えていてもよい。通知部は、被検者が認識可能な任意の方法により、通知を行うことができる。
ここで、通知部が行う通知とは、所定の測定が開始した旨または終了した旨を知らせる通知、所定の測定の結果を知らせる通知、あるいは所定の警告を知らせる通知など、各種の通知とすることができる。通知部は、例えば、音声、画像、振動またはこれらの組合せにより通知を行うことができる。なお、通知部による通知方法は、これらの例に限られない。
【0093】
また、上記実施形態において、測定装置100は、被検者の手首に巻きつけた状態で使用すると説明したが、測定装置100の使用態様はこれに限られない。測定装置100は、被検部位の位置に応じて、例えば、足首等の手首以外の生体に装着された状態で使用されるものであってもよい。また、本実施形態において、測定装置100のセンサ部120は、被
検者の被検部位に接触した状態で生体情報を測定する例を示したが、本発明はこれに限られない。測定装置100の突出部130によって被検部位の皮膚を伸ばして、被検部位の凸凹、溝、シワなどの影響を低減すれば、センサ部120が被
検者の被検部位に接触せずとも、測定装置100は測定の際のノイズを低減することができる。
【0094】
また、上記実施形態において、測定装置100は脈波伝搬速度を測定する装置を一例として示したが、本発明はこれに限られない。測定装置100は、脈波を高い精度で取得することができるので、脈波に基づいて生体情報を測定する装置であってもよい。測定装置100は、例えば、取得された脈波から血圧を測定するものであってもよい。測定装置100は、例えば、取得された脈波から脈拍を測定するものであってもよい。測定装置100が測定する生体情報は、脈波に限られない。測定装置100は、例えば、血流量を測定するものであってもよい。測定装置100は、例えば、血中酸素量または血中酸素濃度を測定するものであってもよい。
【0095】
また、上記実施形態において、測定装置100は被検部位に光を照射して生体情報を測定する装置を一例として示したが、本発明はこれに限られない。測定装置100は、例えば、被検部位に超音波を照射して生体情報を測定するものであってもよい。