特許第6619196号(P6619196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619196
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】感圧センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20191202BHJP
   G01L 1/20 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   G01L5/00 101Z
   G01L1/20 B
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-199307(P2015-199307)
(22)【出願日】2015年10月7日
(65)【公開番号】特開2017-72472(P2017-72472A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】波多野 至
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−114308(JP,A)
【文献】 特開2012−057991(JP,A)
【文献】 特開昭61−277029(JP,A)
【文献】 特開2002−131155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00
G01L 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の長尺状の第1電極及び前記複数の第1電極を覆う第1導電層を有した第1シート部材と、複数の長尺状の第2電極及び前記複数の第2電極を覆う第2導電層を有した第2シート部材とを備え、複数の前記第1電極のそれぞれ複数の前記第2電極とが互いに交差し且つ対向するように、且つ、複数の前記第2電極のそれぞれと複数の前記第1電極とが互いに交差し且つ対向するように、前記第1シート部材と前記第2シート部材とが配置された感圧センサであり、
前記第1電極と前記第2電極とが互いに交差した交差部において、
前記第1導電層には、前記第2導電層に向かって複数の突起が形成され、
前記第2導電層には、前記第1導電層に向かって複数の突起が形成され、
前記第1導電層に形成された複数の突起が均一に分散し、
前記第1導電層に形成された複数の突起の頂部が同一平面上に位置しており、
前記第1導電層に形成された突起の高さが前記第2導電層に形成された突起の高さよりも高いことを特徴とする感圧センサ。
【請求項2】
前記第1電極の側面及び前記第2導電層に対向する面が前記第1導電層に覆われ、
前記第2電極の側面及び記第1導電層に対向する面が前記第2導電層に覆われていることを特徴とする請求項1に記載の感圧センサ。
【請求項3】
前記第1導電層の算術平均粗さRaが前記第2導電層の算術平均粗さRaの1.1倍以上10倍以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の感圧センサ。
【請求項4】
前記第1導電層の最大高さRzが前記第2導電層の最大高さRzの1.1倍以上10倍以下であることを特徴とする請求項に記載の感圧センサ。
【請求項5】
前記第1導電層に形成された複数の突起をこれらの突起の頂部を結んで形成される平面に平行な面で切断したときの断面積が、前記第2導電層に近付くにつれて小さく、
前記頂部が湾曲面状であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の感圧センサ。
【請求項6】
前記第1導電層に形成された複数の突起が全て同一形状であり且つ所定の間隔で並んでいることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の感圧センサ。
【請求項7】
前記第1導電層に形成された複数の突起が全て同一形状であり且つ隙間なく並んでいることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の感圧センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力を検出する感圧センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2枚のシート部材を重ね合わせた感圧センサが知られている(特許文献1,2参照)。2枚のシート部材の間には、導電層が塗布された複数の行電極と複数の列電極が交差して対向するように配置されている。
【0003】
感圧センサに圧力を加えると、導電層同士が接触することにより、導電層の表面形状が変形して接触面積が変化する。これにより導電状態が変化し、導電層の電気抵抗値が変化する。この電気抵抗値から感圧センサに加えられた圧力が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−57991号公報
【特許文献2】特開2012−57992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
感圧センサの電極はスクリーン印刷等によって形成されるが、この方法では電極表面に不規則な凹凸が形成される。例えば図12に示すように、上シートの電極812には、両端部に長い突起812a,812bが形成され、中央付近に短い突起812c,812dが形成される。ここに導電層813を形成すると、導電層813にも、電極812に追従した不規則な凹凸が形成される。同様に、下シートの電極822にも、両端部に長い突起822a,822bが形成され、中央付近に短い突起822c,822dが形成される。この電極822に導電層823を形成すると、導電層823にも電極822に追従した不規則な凹凸が形成される。
【0006】
ここに圧力を加えると、上下の凹凸が噛み合わず、接触位置が微妙に変化する。これにより、上下の導電層813,823の接触位置が不安定になる。その結果、センサを加圧する度に測定結果が変わることがある。また、導電層813,823の接触状態が悪いと、加圧時と抜圧時とで、同じ荷重を加えているにも関わらず測定結果が異なることがある。これらが原因で測定誤差が生じる。
【0007】
さらに、センサへの加圧を継続すると、凹凸が潰れることで導電層813,823の接触面積が急激に増加する。これにより導通状態が急激に変化することで、センサの出力が不安定になり、検出精度が低下する。
【0008】
そこで、本発明の目的は、測定誤差を生じにくくし且つ検出精度が高い感圧センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の感圧センサは、複数の長尺状の第1電極及び前記複数の第1電極を覆う第1導電層を有した第1シート部材と、複数の長尺状の第2電極及び前記複数の第2電極を覆う第2導電層を有した第2シート部材とを備え、複数の前記第1電極のそれぞれ複数の前記第2電極とが互いに交差し且つ対向するように、且つ、複数の前記第2電極のそれぞれと複数の前記第1電極とが互いに交差し且つ対向するように、前記第1シート部材と前記第2シート部材とが配置された感圧センサであり、前記第1電極と前記第2電極とが互いに交差した交差部において、前記第1導電層には、前記第2導電層に向かって複数の突起が形成され、前記第2導電層には、前記第1導電層に向かって複数の突起が形成され、前記第1導電層に形成された複数の突起が均一に分散し、前記第1導電層に形成された複数の突起の頂部が同一平面上に位置しており、前記第1導電層に形成された突起の高さが前記第2導電層に形成された突起の高さよりも高い。
【0010】
上記構成では、第1導電層の均一に分散した突起が第2導電層の短い突起に接触するため、接触状態が安定する。これにより測定誤差が生じにくい。また、第1導電層の突起が均一に分散しているとともに突起の頂部が全て同じ平面上に位置するため、感圧センサに加えられた力は各突起に均一に分散する。これによりセンサへの加圧を継続すると第1導電層の突起が全て同じように潰れていき、接触面積が急激に変化しにくい。したがって加圧を継続しても導電状態が安定し、センサ出力が安定するため、検出精度が高い。よって、測定誤差を生じにくくすることができるとともに検出精度を高くすることができる。
【0011】
また、上記構成において、前記第1電極の側面及び前記第2導電層に対向する面が前記第1導電層に覆われ、前記第2電極の側面及び記第1導電層に対向する面が前記第2導電層に覆われていることが好ましい。
また、上記構成において、前記第1導電層の算術平均粗さRaが前記第2導電層の算術平均粗さRaの1.1倍以上10倍以下であることが好ましい。これにより、接触状態がより安定するため、測定誤差をより生じにくくすることができる。また、感圧センサに加えられた力が各突起に均一に分散しやすくなるため、検出精度をより高くすることができる。
【0012】
さらに、上記構成において、前記第1導電層の最大高さRzが前記第2導電層の最大高さRzの1.1倍以上10倍以下であることが好ましい。これにより、接触状態がより安定するため、測定誤差をより生じにくくすることができる。また、感圧センサに加えられた力が各突起に均一に分散しやすくなるため、検出精度をより高くすることができる。
【0013】
また、上記構成において、前記第1導電層に形成された複数の突起をこれらの突起の頂部を結んで形成される平面に平行な面で切断したときの断面積が、前記第2導電層に近付くにつれて小さく、前記頂部が湾曲面状であることが好ましい。
【0014】
上記構成では第1導電層の突起が湾曲面状であるため、第2導電層への接触状態がより安定する。また、突起が急激に潰れないため、第1導電層と第2導電層の接触面積が急激に変化しにくい。これにより測定誤差がより生じにくくなるとともに、検出精度をより高くすることができる。
【0015】
さらに、上記センサにおいて、前記第1導電層に形成された複数の突起が全て同一形状であり且つ所定の間隔で並んでいることが好ましい。或いは、前記第1導電層に形成された複数の突起が全て同一形状であり且つ隙間なく並んでいることが好ましい。上記構成では突起を形成しやすいため、センサを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、第1導電層と第2導電層の接触状態を安定させることができるため測定誤差を生じにくくすることができる。また、センサへの加圧を継続したときに第1導電層と第2導電層の接触面積が急激に変化しにくいため、センサの出力が安定する。したがってセンサの検出精度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る感圧センサの斜視図である。
図2】(a)は第1シート部材の底面図であり、(b)は第2シート部材の平面図である。
図3】(a)は感圧センサの断面図(図1のIIIa-IIIa線に沿った断面図)であり、(b)は(a)の一部拡大図である。
図4】(a)は図3(b)の一点鎖線で囲んだ部分IVaの拡大図であり、(b)は図3(b)の第1導電層15の表面の拡大図(IVb矢視図)であり、(c)は図3(b)の一点鎖線で囲んだ部分IVcの拡大図である。
図5】(a)は本実施形態の第1シート部材の平板への接触面積の経時変化を示す図であり、(b)は従来の第1シート部材の平板への接触面積の経時変化を示す図である。
図6】導電層(第1導電層)の突起の変形例である。
図7】(a)〜(d)は導電層(第1導電層)の突起の他の変形例である。
図8】(a)実施例及び比較例で用いた第2シート部材の平面図であり、(b)は第1シート部材の平面図であり、(c)は第1シート部材の断面図(図8(b)のVIc-VIc線に沿った図)である。
図9】実施例及び比較例で用いた加圧装置の断面図である。
図10】実施例1、実施例2及び比較例1の応答性試験の結果である。
図11】実施例1、実施例2及び比較例1の応答性試験の結果である。
図12】従来の感圧センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について、図1〜5を参照しつつ説明する。
【0019】
感圧センサ(タクタイルセンサ)1は、図1に示すように、互いに対向して配置された2つのシート部材(第1シート部材10及び第2シート部材20)と、第1シート部材10及び第2シート部材20を固定するコネクタ30とを備えている。コネクタ30は圧力検出機能を備えた電源(図示せず)に接続されている。図1では、第1シート部材10が第2シート部材20の上方に配置されている。なお、本実施形態では、X軸及びY軸をシート部材(第1シート部材10、第2シート部材20)の平面内で互いに直交する軸とし、Z軸をX軸及びY軸に直交する軸としている。
【0020】
図2(a)には第1シート部材10の下面(第2シート部材20に対向する面)を示し、図2(b)には第2シート部材20の上面(第1シート部材10に対向する面)を示している。
【0021】
第1シート部材10は、図2(a)に示すように、フィルム状のシート基材11と、シート基材11の片面に形成された複数の長尺状の第1電極12と、複数の第1電極12の端部にそれぞれ接続された複数の配線13と、配線13の端部がそれぞれ接続された複数の端子14とを備えている。複数の第1電極(行電極)12はY軸方向に延在し、X軸方向に所定のピッチで並んでいる。端子14は図1のコネクタ30に接続されている。
【0022】
第2シート部材20は、図2(b)に示すように、フィルム状のシート基材21と、シート基材21の片面に形成された複数の長尺状の第2電極22と、複数の第2電極22の一端部にそれぞれ接続された複数の配線23と、複数の第2電極22の他端部にそれぞれ接続された複数の配線24と、配線23及び配線24の端部が接続された複数の端子25とを備えている。複数の第2電極(列電極)22は、X軸方向に延在し、Y軸方向に所定のピッチで並んでいる。端子25は図1のコネクタ30に接続されている。
【0023】
第1シート部材10には、図3(a)に示すように、第1電極12を覆うように第1導電層15が形成されている。第1導電層15は、第1電極12の側面及び底面を含む露出部分を覆っている。
【0024】
また、第2シート部材20にも第2電極22を覆うように第2導電層26が形成されている。第2導電層26は、第2電極22の側面及び上面を含む露出部分を覆っている。
【0025】
第1シート部材10及び第2シート部材20は、第1電極12と第2電極22とが交差して対向するように、対向して配置される(図1参照)。第1シート部材10及び第2シート部材20は、周縁部に形成された粘着層16,27により対向する第2シート部材20及び第1シート部材10に貼り付けられている(図3(a)参照)。
【0026】
図3(b)には、図3(a)の一点鎖線で囲んだ部分の拡大図を示している。また、図4(a)には図3(b)のIVa拡大図を示し、図4(b)には図3(b)のIVb矢視図を示し、図4(c)には図3(b)のIVc拡大図を示している。以下では、図3(b)及び図4(a)〜図4(c)を参照しつつ、第1電極12及び第2電極22の表面形状と第1導電層15及び第2導電層26の表面形状について説明する。
【0027】
図3(b)及び図4(a)に示すように、第1シート部材10の第1電極12の底面には、不規則な凹凸が形成されている。これは、第1電極12をスクリーン印刷等の印刷法によって形成した際に形成されたものである。
【0028】
第1電極12を覆う第1導電層15の底面には、第2シート部材20に向かって複数の突起35が形成されている。複数の突起35は同じ間隔i1で並んでいる(図4(a)及び図4(b)参照)。複数の突起35は第1シート部材10の平面方向に均一に分散している。突起35は半球状に形成され、全て同じ形状である。突起35の幅(直径)はw1であり、高さはh1である。全ての突起35の頂部35tはシート基材11の平面に平行な同一平面P1上に位置している。突起35を平面P1に平行な面で切断したときの断面積は、第2シート部材20に近付くにつれて小さい。なお、上記平面P1は、全ての突起35の頂部35tを結んで形成された平面でもある。
【0029】
図3(b)及び図4(c)に示すように、第2シート部材20の第2電極22の表面及び第2電極を覆う第2導電層26の表面には、不規則な凹凸が形成されている。これは、第2電極22及び第2導電層26をスクリーン印刷等の印刷法によって形成した際に形成されたものである。第2導電層26の凹凸は第2電極22の凹凸に沿った形状である。
【0030】
第2導電層26に形成された複数の突起46,146は幅も高さも異なり、規則性がない。また、突起46,146の間隔に規則性はなく、突起46,146は不均一に分散している。
【0031】
第1導電層15の突起35と第2導電層26の突起46,146を比較すると、第1導電層15の突起35は第2導電層26の突起46,146より幅が大きく、高さが高い。例えば、第2導電層26の突起146は第2導電層26に形成された複数の突起のうち最も大きいが、突起146と第1導電層15の突起35を比較すると、突起146の高さh2は突起35の高さh1より低く(h2<h1)、突起146の幅w2は突起35の幅w1より小さい(w2<w1)。
【0032】
また、第1導電層15の算術平均粗さRaが第2導電層26の算術平均粗さRaの1.1倍以上10倍以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.5倍以上4倍以下である。算術平均粗さRaはJIS B0601−2001で測定されたものに相当する。さらに、第1導電層15の最大高さRzが第2導電層26の最大高さRzの1.1倍以上10倍以下であることが好ましく、さらに好ましくは2倍以上6倍以下である。最大高さRzはJIS B0601−2001で測定されたものに相当する。
【0033】
例えば、第2導電層26の突起46,146の高さh2が約0.1μm以上1.0μm以下、幅w2が約0.1μm以上1.0μm以下のとき、第1導電層15の突起35の高さh1は0.3μm以上10μm以下が好ましく、幅w1は約1.0μm以上10μm以下が好ましい。また、第1導電層15の突起35の間隔i1は約1.0μm以上10μm以下が好ましい。ここで、第1導電層15の突起35は第2導電層26の突起46,146よりも高い。また、第1導電層15の算術平均粗さRaは第2導電層26の算術平均粗さRaの1.1倍以上10倍以下である。
【0034】
また、第2導電層26の表面粗さRa(算術平均粗さ)が約0.05μm以上1.0μm以下のとき、第1導電層15の表面粗さRa(算術平均粗さ)は約0.1μm以上10μm以下が好ましい。ここで、第1導電層15の算術平均粗さRaは、第2導電層26の算術平均粗さRaの1.1倍以上10倍以下である。
【0035】
第1シート部材10及び第2シート部材20は、例えば、次のようにして作製することができる。
第1シート部材10では、先ず、シート基材11にスクリーン印刷等の印刷法によって第1電極12を形成する。次に、第1電極12にスクリーン印刷等の印刷法によってインクを塗布し、これを乾燥させた後、モールドプレスを行うことで複数の突起35を形成する。これにより第1導電層15が形成される。なお、モールドプレスを行う前に、インクの表面をプレスすることにより平滑化してもよい。これにより、モールドプレスによる突起が形成されやすくなる。
第2シート部材20では、先ず、シート基材21にスクリーン印刷等の印刷法によって第2電極22を形成し、次に、第2電極22にスクリーン印刷等の印刷法によって第2導電層26を形成する。
【0036】
感圧センサ1を加圧すると、第1導電層15の凹凸と第2導電層26の凹凸とが接触する。このとき第1導電層15の均一に分散した高い突起35が第2導電層26の低い突起46,146や浅い凹部に接触することで、第1導電層15と第2導電層26の接触位置はそれほど変化せず、接触状態が安定している。
【0037】
次に、図5(a)及び図5(b)を参照しつつ、第1シート部材10の第1導電層15の接触状態及び接触面積を説明する。図5(a)及び図5(b)には、第1導電層を平板に接触させたときの、平板50における第1導電層との接触部分に色を付している。
【0038】
図5(b)には、従来の導電層を平板と接触させ、加圧したときを示している。従来の導電層は図12に示す構造であり、スクリーン印刷で形成されている。
【0039】
従来の構成では、接触当初、図5(b)の左図に示すように、主に導電層の周縁部周辺が平板に接触している。導電層の中心付近は部分的に平板に接触しているものの、殆どが平板に接触していない。接触部分Tは全体的に疎らである。
【0040】
所定時間が経過すると、接触部分Tが増加するが(図5(b)の右図参照)、接触部分の増加率に一定性がないと考えられる。導電層の周縁部周辺(図中の左右両側部)では接触部分が大幅に増加している。中央付近も、周縁部周辺のような大幅な増加ではないが、接触部分が増加している。これは、図12に示す導電層813の両端部の長い突起が潰れ、内側の突起同士が接触し始めたためと考えられる。
【0041】
加圧前後を比較すると、いずれも接触部分が不均一である。また、導電層と平板の接触状態が不安定であると考えられる。
【0042】
一方、本実施形態の第1導電層15を平板に接触させ、加圧すると、接触当初は、図5(a)の左図に示すように、複数の円形の接触部T1が所定の間隔で均一に並んでいる。
【0043】
所定時間が経過すると(図5(a)の右図参照)、接触部分が一定の割合で増加し、各接触部T1より大きい円形の接触部T2となる。接触部T2は加圧直後より狭い間隔で均一に並んでいる。
【0044】
加圧前後を比較すると、いずれも接触部分が均一に分散しており、第1導電層15と平板の接触状態が安定していると考えられる。
【0045】
これは、第1導電層15に複数の突起35が均一に分散して形成されていること(図4(a)参照)、及び、複数の突起35の頂部35tが同一平面P1上に存在していることから、センサに加えられた力が各突起35に均一に分散され、各突起35が同じ割合で潰れていったためと考えられる。
【0046】
なお、ここでは第1シート部材を平板に接触させたが、平板の代わりに第2シート部材20を用いても同様な結果が得られると考えられる。これは、平板の表面にも突起35より低い小さな凹凸が形成されており、平板の表面と第2導電層26の表面が同様な形状となっているためである。
【0047】
以上のように本実施形態によると以下の効果を奏する。
第1導電層15の均一に分散した複数の突起35が第2導電層26の短い突起46,146に接触するため、接触状態が安定する。これにより測定誤差が生じにくい。また、第1導電層15の突起35が均一に分散しているとともに突起35の頂部35tが全て同一平面P1上に位置するため、感圧センサ1に加えられた力は各突起35に均一に分散する。これにより感圧センサ1への加圧を継続すると、全ての突起35が同じように潰れていき、第1導電層15と第2導電層26の接触面積が急激に変化しにくい。したがって加圧を継続しても導電状態が安定し、センサ出力が安定するため、検出精度が高い。よって、測定誤差を生じにくくできるとともに検出精度を高くすることができる。
【0048】
また、第1導電層15の突起35は半球状に形成され、湾曲している。このため第1導電層15と第2導電層26との接触状態がより安定する。また、感圧センサ1に力を加えても突起35が急激に潰れないため、第1導電層15と第2導電層26の接触面積が急激に変化しにくい。したがって測定誤差が生じにくいとともに、検出精度をより高くすることができる。
【0049】
また、第1導電層15に形成された複数の突起35が全て同一形状であり且つ所定の間隔i1で並んでいる。このような構造は形成しやすいため、感圧センサ1を容易に製造することができる。
【0050】
なお、上述の実施形態では、複数の突起35が均一に分散している例として、複数の突起35が同じ間隔iで並び、突起35が規則的に配置されている場合を例示したが、上記に限られない。例えば、複数の突起35が均一に分散している例として、i)突起の間隔が異なる場合、及びii)突起が不規則に配置されている場合も挙げられる。
【0051】
i)突起の間隔が異なる場合として、例えば、図6に示すように、縦の間隔iLが横の間隔iSより狭い場合が挙げられる。図6でも、突起が規則的な配列でセンサ全体に分散しているため、感圧センサ1に加えられた力が各突起35に均一に分散する。これにより、全ての突起35が同じように潰れていくため、本実施形態の効果が得られる。また、i)突起の間隔が異なる場合の例として、縦の間隔iLが横の間隔iSより広い場合も挙げられる。
【0052】
また、ii)突起が不規則に配置されている場合として、例えば、単位面積当たりの突起の数が1万個/mm2以上、10万個/mm2以下である場合が挙げられる。これらを満たす場合は、突起がセンサ全体に分散しているため、感圧センサに加えられた力が各突起に均一に分散する。これにより本実施形態の効果が得られる。したがって、上記を満たす場合は、突起の間隔が同じでなくてもよく、突起が不規則に並んでいてもよい。
【0053】
また、上述の実施形態では、第1電極12をスクリーン印刷等の印刷法によって形成しているが、フォトリソグラフィ等によって第1電極12を形成してもよい。例えば、金属薄膜が形成されたシート基材11に、金属薄膜を覆うように感光性フィルム及び回路パターンフィルムを順に配置し、回路パターンフィルムをマスクとして感光性フィルムに光を照射する。そして、回路パターンフィルムを取り除き、感光性フィルムの露光部又は未露光部を溶解等して取り除く。残った未露光部又は露光部をマスクとして金属薄膜の露出領域をエッチングによって除去すると、残存した金属薄膜により第1電極12が形成される。
【0054】
また、上述の実施形態では、第1シート部材10を上方に配置し、第2シート部材20を下方に配置したが、これを上下反転させ、第1シート部材10を下方に配置し、第2シート部材20を上方に配置してもよい。
【0055】
さらに、上述の実施形態では突起35が所定の間隔i1で並んでいるが、図7(a)に示すように、導電層213に突起35が隙間なく形成されていてもよい。突起35の頂点は平面P1上に位置している。本構造は形成しやすいため、感圧センサを容易に製造することができる。
【0056】
また、突起35の形状は半球状に限らず、様々な形状へ変更可能である。例えば、突起を先細り形状にしてもよい。図7(b)に示す突起335は四角錐台状であり、図示しない第2シート部材に近付くにつれて先細り形状となっている。突起335は第1導電層315の平面方向に均一に分散し、所定の間隔i2で並んでいる。突起335の頂部335tはシート基材11の平面方向に平行な同一平面P2上に位置している。なお、突起335は隙間なく並んでいてもよい。
【0057】
また、突起を三角錐状に形成してもよい。図7(c)に示す突起435は、図示しない第2シート部材に向かって突出している。突起435は第1導電層415の平面方向に均一に分散し、所定の間隔i3で並んでいる。突起435の頂部435tはシート基材11の平面方向に平行な同一平面P3上に位置している。
【0058】
また、図7(d)に示すように三角錐状の突起535を隙間なく形成してもよい。第1導電層515の突起535は、図示しない第2シート部材に向かって突出している。突起535の頂部535tはシート基材11の平面方向に平行な同一平面P4上に位置している。
【0059】
図7(a)〜(d)に示す突起335,435,535の幅及び高さ、並びに、突起335,435の間隔i2,i3は、上述した突起35の幅w1、高さh1及び間隔i1と同様な大きさである。
【実施例】
【0060】
次に、本発明の実施例及び比較例を説明する。本発明のセンサシートと従来のセンサシートのクリープ率及びヒステリシスを調べた。
【0061】
実施例1,2(本発明)では、電極層をフォトリソグラフィによって作成した。そして、スクリーン印刷によって電極表面にインクを塗布し、インクを乾燥させた後、モールドプレスによって複数の突起を形成した。実施例1では、半球状の突起を隙間なく形成した(図7(a)参照)。実施例2では、半球状の突起を所定の間隔で形成した(図3(b)及び図4(a)参照)。
【0062】
一方、比較例1(従来)では、電極層はスクリーン印刷によって形成し、電極層表面にスクリーン印刷によって導電層を形成した。
【0063】
表1には第1シート部材の条件を示しており、表2には第2シート部材の条件を示している。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
実施例1,2(第1シート部材)のモールドプレスは、SCIVAX社製のナノインプリント装置「X−200」を用いて、60℃、456MPaで30秒間プレスした。モールドは、縦5mm×横5mm×厚み1mmのサイズで、Siからなる。モールドには複数の半球状の凹部が形成されている。凹部の径及び深さは突起の径及び高さとほぼ同一である。なお、実施例1,2ではモールドプレス前に導電層表面を一度プレスして平滑化した。平滑処理は60℃、456MPaで30秒間行った。
【0067】
なお、実施例1,2及び比較例1の第2シート部材では、モールドプレス等による突起の形成を行っていないが、スクリーン印刷工程で微小な突起が形成された。この突起高さは例えば0.12μm,0.16μm,0.17μmであり、実施例1,2の導電層の突起高さより低かった。
【0068】
また、表2の「導電層表面粗さRa」(算術平均粗さ)及び「導電層表面最大高さRz」を、レーザー顕微鏡(VK-8710、キーエンス社製)を用いて測定した。このとき対物レンズ100xを使用し、倍率を2000倍とした。
【0069】
本実験では図8(a)〜(c)に示す試験用シート部材を作製した。上シート部材(第2シート部材)620は円形部を有するシート基材621と、シート基材621の底面に形成された電極(第2電極)622と、電極622を覆った導電層(第2導電層)623とを有している。また、下シート部材(第1シート部材)610は円形部を有するシート基材611と、シート基材611の上面に形成された電極(第1電極)612と、電極612を覆った導電層(第1導電層)613とを有している。上シート部材620と下シート部材610を、導電層613と導電層623が対向するように配置した。表3には各部材の寸法を示している。
【表3】
【0070】
感圧センサの加圧には図9に示す加圧装置700を用いた。加圧装置700には、ゴムシート(NBR)701にブレード702(直径30mm)、感圧センサ703及びブレード704(直径25mm)が順に配置されている。一番上のブレード704を加圧することで、感圧センサ703を加圧する。ブレード702,704はSUSからなり、鏡面に仕上げられている。
【0071】
<クリープ率>
クリープ率は、一定時間、感圧センサを同じ力で加圧したときの出力の変化率であり、以下の式で表される。なお、出力は電圧に比例した値である。
クリープ率(%)=[(各保持時間後の出力値−2秒後の出力値)/2秒後の出力値]×100
本実験では一定荷重(1000kPa)をセンサに加え続けた。図10には出力の経時変化(クリープ率)を示している。横軸は加圧保持時間を示し、縦軸はクリープ率(出力変化率)を示している。出力は電圧に比例した値である。
【0072】
クリープ率(出力変化率)が変化するのは、導電層表面に形成された凹凸が潰れることで、第1シート部材と第2シート部材の接触面積が増加し、両電極間の抵抗値が小さくなるためと考えられる。また、導電層表面の凹凸により接触部分が逐次変化することも原因と考えられる。そうすると、クリープ率が大きい程、またクリープ率の増加率が大きいほど導電層の接触状態が不安定であるといえる。
【0073】
図10から実施例1,2は比較例1よりクリープ率が大幅に低く、比較例1の半分以下である。また、比較例1ではクリープ率が増加し続けているのに対し、実施例1では30秒程経過した後、クリープ率が殆ど増加していない。これは実施例1では導電層表面の突起が全て同じように潰れていき、接触面積が急激に変化しなかったためと考えられる。一方、比較例1では導電層表面の不規則な突起が潰れたことにより、接触面積が急激に増加したためと考えられる。これらの結果から、実施例1は比較例1より導電層表面の接触状態が安定しており、センサの検出精度が高いことがわかる。
【0074】
<ヒステリシス>
ヒステリシスは、低圧力から高圧力へ加圧したときと高圧力から低圧力へ抜圧したときとの出力差であり、以下の式で表される。
ヒステリシス(%)=[(抜圧時の出力値−加圧時の出力値)/最大加圧時の出力値]×100
上記式における抜圧時と加圧時の荷重は同じ値である。したがって、「抜圧時の出力値−加圧時の出力値」は「同荷重時における出力差」でもある。また、本実験では最大加圧を15.6MPaに固定しており、15.6MPaでの出力値を、その測定における最大加圧時の出力値としている。
【0075】
表4に示すように、4段階の加圧及び抜圧を行い、加圧時及び抜圧時の出力値を測定した。図11には表4の結果(出力値と荷重との関係)を示している。加圧時と抜圧時の理論曲線(2次曲線)を求め、理論曲線から加圧時の出力値及び抜圧時の出力値を算出し、ヒステリシスを求めた。表5には、理論曲線から算出した出力値及びヒステリシスを示している。
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
表5から、実施例1,2は比較例1よりヒステリシスが大幅に小さく、比較例1の1/2程度であった。したがって、実施例1,2は比較例1に比べて測定誤差が小さく、高精度で加圧を感知できるといえる。
【0079】
以上、本発明の実施形態及び実施例について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態及び実施例に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0080】
例えば、上述の実施形態では、第2導電層(下の導電層)26の突起46,146が不均一であるが、第2導電層(下の導電層)26の突起46,146を第1導電層(上の導電層)15の突起35より低くし、突起46,146を均一に分散させるとともに突起46,146の頂部をシート基材21の平面方向に平行な同一平面上に位置させてもよい。これにより、第1導電層と第2導電層の接触状態がより安定する。また、第1導電層と第2導電層の接触面積がより急激に変化しにくくなる。
【0081】
さらに、上述の実施形態では第1導電層15に形成された突起35が全て同じ形状であるが、突起35の頂部35tが同一平面P1上に位置する限り、突起35は全て同じ形状でなくてもよい。
【0082】
また、上述の実施形態ではシート基材11の片面(下面)に第1電極12及び第1導電層15が形成されているが、シート基材11の両面(上面及び下面)にそれぞれ電極及び導電層を形成してもよい。また、シート基材21についても同様に、実施形態ではシート基材21の片面(上面)に第2電極22及び第2導電層26が形成されているが、シート基材11の両面(上面及び下面)にそれぞれ電極及び導電層を形成してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 感圧センサ
10 第1シート部材
11,21 シート基材
12 第1電極
15,215,315,415,515 第1導電層
20 第2シート部材
22 第2電極
26 第2導電層
35,46,146,335,435,535 突起
35t,335t,435t,535t 頂部
1,P2,P3,P4 平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12