【実施例】
【0021】
[実施例1]
フッ化マグネシウム(純度99.9%、粒度15mm以下、かさ密度1.3g/cm
3以上)12500gに、フッ化鉛(純度98.0%、白色粉末)361.3gをスカベンジャーとして添加し、ポリエチレン製のボトル内に投入した。前述のポリエチレン製ボトルの内容物をボールミル処理することでフッ化マグネシウムとフッ化鉛を混合した。
【0022】
得られた混合物を、内径25mm×高さ内寸14mmの黒鉛製るつぼに投入して、乾燥機を用いて150℃で加熱した。その後、ブリッジマン法による結晶成長を行い、直径25mm×高さ10mmの円柱形状のフッ化マグネシウム単結晶を作製した。
【0023】
作製した単結晶の上面(円柱に存在する2つの底面のうち、蒸着装置内にセットした際装置側と接触しない面)に対し、平面研削盤による研削を行い上面を平滑化した。上記単結晶の上面の算術平均粗さ(Ra)を、接触式表面粗さ計で測定した。5回測定した平均値は895.66nmであった。
【0024】
上記研削加工後の単結晶を蒸着装置内にセットし、単結晶の上面に電子ビームを照射することで蒸着材を蒸発させて、蒸着材に対向配置されている直径30mmの基材に膜を形成させて成膜した。
【0025】
上記基材の成膜面を目視ならびに光学顕微鏡にて観察したところ、いずれも凝集物は認められなかった。
【0026】
更に、上記基材の成膜面をHIROX社製デジタルマイクロスコープKH−1300で写真撮影し、基材の中心から直径20mmの範囲を、フィルター異物検査システムを用いて倍率700倍で画像を解析した。絶対最大長2μm以上かつ針状比1.2以下の大きさを持つ、基材の成膜面に付着している凝集物を計数した結果、その数は6.9個であった。
【0027】
[実施例2]
実施例1と同様の方法でフッ化マグネシウム単結晶を作製し、平面研削盤による研削を行い平滑化した。その後、カーブジェネレーター(CG)を用いて、砥粒をちりばめたカップ砥石と単結晶を回転させながら荒摺り加工を行い更に平滑化した。接触式表面粗さ計で5回測定した、単結晶の上面の算術平均粗さ(Ra)の平均値は428.19nmであった。
【0028】
以上のように平滑化した単結晶を用いて実施例1と同様の方法で基材に成膜し、成膜した基材の成膜面を目視ならびに光学顕微鏡にて観察したところ、いずれも凝集物は認められなかった。
【0029】
次に、成膜面をHIROX社製デジタルマイクロスコープKH−1300で写真撮影し、実施例1と同様の方法で画像を解析した。基材の成膜面に付着している凝集物を計数した結果、その数は7.5個であった。
【0030】
[実施例3]
実施例1と同様の方法で単結晶を作製し、平面研削盤による研削を行い平滑化した。その後、砥粒の埋め込まれたペレットを貼り付けた研磨皿と単結晶を回転させながら精研削加工を行い、更に平滑化した。接触式表面粗さ計で5回測定した、単結晶の上面の算術平均粗さ(Ra)の平均値は8.28nmであった。
【0031】
実施例1と同様の方法で、平滑化した単結晶を用いて成膜し、成膜した基材の成膜面を目視ならびに光学顕微鏡にて観察したところ、いずれも凝集物は認められなかった。
【0032】
次に、成膜面をHIROX社製デジタルマイクロスコープKH−1300で写真撮影し、実施例1と同様の方法で画像を解析した。基材の成膜面に付着している凝集物を計数した結果、その数は4.4個であった。
【0033】
[実施例4]
実施例1と同様の方法で単結晶を作製し、平面研削盤による研削を行い平滑化した。その後、上記精研削加工を行った上で、パットを貼り付けた研磨皿と結晶体を回転させる研磨材による研磨を行い、更に平滑化した。接触式表面粗さ計で5回測定した、単結晶の上面の算術平均粗さ(Ra)の平均値は5.53nmであった。
【0034】
実施例1と同様の方法で、平滑化した単結晶を用いて成膜し、成膜した基材の成膜面を目視ならびに光学顕微鏡にて観察したところ、いずれも凝集物は認められなかった。
【0035】
次に、成膜面をHIROX社製デジタルマイクロスコープKH−1300で写真撮影し、実施例1と同様の方法で画像を解析した。基材の成膜面に付着している凝集物を計数した結果、その数は7.4個であった。
【0036】
[比較例1]
実施例1と同様の方法で単結晶を作製し、表面加工を行わず接触式表面粗さ計で上面の表面粗さを測定した。接触式表面粗さ計で5回測定した、単結晶の上面の算術平均粗さ(Ra)の平均値は1273.15nmであった。
【0037】
実施例1と同様の方法で、平滑化した単結晶を用いて成膜し、成膜した基材の成膜面の画像を解析した。実施例1と同様の方法で基材の成膜面に付着している凝集物を計数した結果、その数は36.0個であった。
【0038】
[比較例2]
実施例1と同様の方法で単結晶を作製し、上面に対してサンドブラストを用いた表面加工を行い、接触式表面粗さ計で表面粗さを測定した。接触式表面粗さ計で5回測定した、単結晶の上面の算術平均粗さ(Ra)の平均値は999.99nmであった。
【0039】
実施例1と同様の方法で、平滑化したペレットを用いて成膜し、成膜した基材の成膜面の画像を解析した。実施例1と同様の方法で基材の成膜面に付着している凝集物を計数したところ、その数は33.3個であった。
【0040】
以上の実施例及び比較例での平均粗さ(Ra)と凝集物の計数結果を下記の表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
以上詳しく説明したように、本発明の蒸着材の使用によれば、従来の表面粗さの大きい蒸着材を用いた蒸着を行うより、凝集物の少ない膜を作製することができる。