(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1せん断管と、前記第2せん断管と、前記第3せん断管とは、外周面同士が対向し、中心軸同士が略平行に配置されたことを特徴とする請求項8に記載の制震ダンパー装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態1〜4に係る制震ダンパー装置の採用部位として、橋梁を例に説明する。
[実施の形態1]
<制震ダンパー装置の構成>
図1は、実施の形態1に係る制震ダンパー装置を説明する側面図である。
図2は、実施の形態1に係る制震ダンパー装置の鉛直方向断面図である。
図3は、実施の形態1に係る制震ダンパー装置の
図2におけるA−A断面図である。
図4は、実施の形態1に係る制震ダンパー装置の
図2におけるB−B断面図である。
図5は、実施の形態1に係る制震ダンパー装置の
図2におけるC−C断面図である。
【0009】
図1において、橋梁の下部構造物である橋脚1と、上部構造物である上部工2との間に、制震ダンパー装置10および支承20が組み込まれている。
橋脚1は、例えば円柱形状の鉄筋コンクリート製であり、その上面は水平面として形成されている。上部工2は、例えば橋梁の水平方向に渡された主桁であり、鉄筋コンクリート製や鉄骨製の構造部材である。
なお、以下の説明の便宜上、橋梁(上部工2)の長手方向をX方向、橋梁(上部工2)の幅方向をY方向、橋脚1の上下方向をZ方向とし、X−Y面は水平面に平行であるとする。
【0010】
制震ダンパー装置10は、橋脚1の上面に設置される第1固定板11と、上部工2の下面に取り付けられる反力部材12とを有している。第1固定板11は、
図5に示すように例えば正方形の鋼板材である。また、反力部材12は、
図3に示すように、中央に矩形形状の凹部12aを有する、例えば鋼製部材として形成されている。
【0011】
制震ダンパー装置10は、
図3に示すように、反力部材12の凹部12a内に収納される第2固定板13を有している。第2固定板13は、反力部材12の凹部12aの内周面にその両端部が当接する例えば矩形形状の鋼板部材として構成されている。
第2固定板13と第1固定板11との間には、円筒形状の第1せん断管14と第2せん断管15と第3せん断管16とを各せん断管の中心軸同士が同軸上に重なるように配置されている。第1せん断管14と第2せん断管15と第3せん断管16とは、例えば鋼管製で形成されている。
【0012】
第1せん断管14は、3本のせん断管の中で最も細く、上端が第2固定板13に溶接等で固定されている。第1せん断管14の下端は円板状の第1接続板17(本発明の第1接続部に相当する)に溶接等で固定されている。
第1せん断管14の外周側には、第2せん断管15が配置されている。第2せん断管15の内径は、第1せん断管14の外径よりも大きく構成されている。第2せん断管15の下端は第1接続板17に溶接等で固定されている。第2せん断管15の上端は、リング形状の第2接続板18(本発明の第2接続部に相当する)に溶接等で固定されている。
【0013】
第2せん断管15の外周側には、第3せん断管16が配置されている。第3せん断管16の内径は、第2せん断管15の外径よりも大きく構成されている。第3せん断管16の下端は第1固定板11に溶接等で固定されている。第3せん断管16の上端は第2接続板18に溶接等で固定されている。
【0014】
このように、実施の形態1に係る制震ダンパー装置10は、第2固定板13と第1固定板11との間に、異なる外径の第1せん断管14と第2せん断管15と第3せん断管16とを各せん断管の中心軸同士が同軸上となるように配置し、各せん断管の各端部を第1接続板17と第2接続板18とを用いて順に接続している。
【0015】
支承20は、上部工2を橋脚1に対して移動可能に支持するものであって、橋脚1の上面に固定される下支承板20aと、上部工2の下面に設置される上支承板20bと、下支承板20aと上支承板20bとによって挟まれた支承球体20cと、を具備している。このとき、支承球体20cは球体であるから、何れの方向に向かっても回転することができるため、上部工2は、橋脚1に対して水平面内を何れの方向に向かっても移動可能に支持されている。
【0016】
<作用>
実施の形態1に係る制震ダンパー装置10に、地震力が作用した際の変形状態について、
図6、7を用いて説明する。
図6は、実施の形態1に係る制震ダンパー装置に水平外力F1が加わった際の鉛直断面図である。
実施の形態1に係る制震ダンパー装置10に水平外力が加わると、橋脚1と上部工2とに水平方向の相対的な変位が生じる。このとき、制震ダンパー装置10第1せん断管14と第2せん断管15と第3せん断管16とは、順番に異なる方向にせん断変形する。
【0017】
図6に示すように橋脚1に対して紙面上左側に水平外力F1が作用する場合、第3せん断管16に反力としてF1と同一のせん断力F2が作用する。このせん断力F2は、第2接続板18を介して、第2せん断管15に同一のせん断力F2として作用する。さらに、このせん断力F2は、第1接続板17を介して、第1せん断管14に同一のせん断力F2として作用する。そして、第1せん断管14から第2固定板13に伝わり、上部工2の反力部材12にせん断力F2と同一の反力F3として作用する。
【0018】
このときの、第1せん断管14と第2せん断管15と第3せん断管16に作用するせん断力と水平方向の変形量との関係を、
図6、7を用いて説明する。
図7は、実施の形態1に係る制震ダンパー装置に作用するせん断力と変形量の関係を説明した図である。
X軸に水平方向の変位を示し、Y軸に水平外力F1を示している。
はじめに、第1せん断管14、第2せん断管15、第3せん断管16のそれぞれについての変形を説明する。
【0019】
図7におけるラインaは、第1せん断管14のみに水平外力F1を加えたときの変位d1を示している。変位ゼロから水平外力F1に比例する弾性変形が発生し、その後、水平外力F1=f1となったときに水平外力F1が一定となる塑性変形に移行する。
同様に、ラインbは、第2せん断管15のみに水平外力F1を加えたときの変位d2を示し、ラインcは、第3せん断管16のみに水平外力F1を加えたときの変位d3を示している。ラインb、cもラインaと同様に、変位ゼロから水平外力F1に比例する弾性変形が発生し、その後、水平外力F1=f2、f3となったときに、水平外力F1が一定となる塑性変形にそれぞれ移行する。
【0020】
次に、実施の形態1に係る制震ダンパー装置10の変形について
図7を用いて説明する。
橋脚1に水平外力F1が作用すると、第1せん断管14と第2せん断管15と第3せん断管16とがそれぞれ弾性変形し、ラインAのように水平外力F1と比例して変形が進行する。次に、水平外力F1=f1となったときに、第1せん断管14が塑性変形に移行する。よって、ラインBのように水平外力F1=f1となって変形が進む。
第1せん断管14の塑性変形が終了すると、第2せん断管15と第3せん断管16が弾性変形するラインCとなる。そして、水平外力F1=f2となったときに、第2せん断管15が塑性変形に移行する。よって、ラインDのように水平外力F1=f2となって変形が進む。
【0021】
第2せん断管15の塑性変形が終了すると、第3せん断管16が弾性変形するラインEとなる。そして、水平外力F1=f3となったときに、第3せん断管16が塑性変形に移行する。よって、ラインFのように水平外力F1=f3となって変形が進む。
よって、
図6、7に示すように、最終的な水平方向の変位は、水平外力F1=f3となるときに、第1せん断管14の変位d1と、第2せん断管15の変位d2と、第3せん断管16の変位d3とを合計し、合計変位δ=d1+d2+d3となる。
【0022】
<効果>
実施の形態1に係る制震ダンパー装置10は、地震時に相対変位が大きくなる例えば橋脚1と上部工2との間に採用しても、複数のせん断部材が水平方向の大きな変位に対応することで、地震エネルギーの吸収能力を発揮することができる。すなわち、第1せん断管14、第2せん断管15、第3せん断管16の各端部を接続部材により変位に対して直列に接続したため、各せん断管のせん断変形量の合計寸法まで変位を許容することが可能となる。
また、大きい変位に対応するために長尺のせん断部材を採用することがないので、コンパクトな制震ダンパー装置となり、狭小な設置場所にも対応することが可能となる。
【0023】
さらに、制震ダンパー装置10は、任意の方向に作用する地震荷重に対して、地震荷重の方向に関わらず制振機能を発揮することができる。また、構造が簡素なため、例えば、ほこり、落葉、錆等に晒される橋梁に組み込まれた場合でも、メンテナンス(保守点検)が容易で、長期的に安定した制振機能を発揮することができる。
なお、上記実施の形態1の例では、第1せん断管14と第2せん断管15と第3せん断管16とを三重に重ねたせん断部材の構成としたが、鋼管等を複数重ねる構成であればこの例と同様の作用効果を発揮することが可能である。
【0024】
[実施の形態2]
<制震ダンパー装置の構成>
図8は、実施の形態2に係る制震ダンパー装置のY方向鉛直断面図(
図10のB−B断面)である。
図9は、実施の形態2に係る制震ダンパー装置のX方向鉛直断面図(
図10のC−C断面)である。
図10は、実施の形態2に係る制震ダンパー装置のZ方向水平断面図(
図9のA−A断面)である。
【0025】
実施の形態2においては、実施の形態1と同様に、橋梁の下部構造物である橋脚1と、上部構造物である上部工2との間に、制震ダンパー装置30および支承20が組み込まれている。
なお、以下の説明の便宜上、橋梁(上部工2)の長手方向をX方向、橋梁(上部工2)の幅方向をY方向、橋脚1の上下方向をZ方向とし、X−Y面は水平面に平行であるとする。
【0026】
制震ダンパー装置30は、橋脚1の上面に設置される第1固定板31と、上部工2の下面に取り付けられる一対の反力部材32とを有している。第1固定板31は、例えば長方形の鋼板材である。また、反力部材32は、
図8−10に示すように、一面に矩形形状の凹部32aを有する、例えば直方体状の鋼製部材として形成されている。
【0027】
制震ダンパー装置30は、
図8に示すように、反力部材32の凹部32a内に収納される第2固定板33を有している。第2固定板33は、凹部32aの内周面に当接する例えば矩形形状の鋼板部材として構成されている。また、X方向における第2固定板33と反力部材32の凹部32aとの間には、第2固定板33が摺動することが可能な隙間32bが形成されている。この隙間32bのX方向寸法は例えば20mm程度とすることができる。隙間32bを設ける理由は、橋梁(上部工2)の長手方向における鋼材の熱膨張を吸収する逃げとして必要なためである。
第2固定板33と第1固定板31との間には、円筒形状の第1せん断管34と第2せん断管35とが、外周面同士を対向させた状態で並列に配置されている。すなわち、第1せん断管34と第2せん断管35とは中心軸同士が平行に離間した状態で並んで配置されている。第1せん断管34と第2せん断管35とは、例えば鋼管で形成されている。
【0028】
第1せん断管34の下端は、第1固定板31の上面に例えば溶接にて固定されている。第1せん断管34の上端は矩形状の第1接続板37に例えば溶接にて固定されている。
第2せん断管35の上端は、第2固定板33の下面に例えば溶接にて固定されている。第2せん断管35の下端は矩形状の第2接続板38に例えば溶接にて固定されている。
第1接続板37と第2接続板38とは、鉛直方向に平行に配置された一対の第3接続板39に例えば溶接にて固定されている。
なお、第1接続板37と第2接続板38と第3接続板とが一体となった構成を本発明の第1接続部とする。
【0029】
このように、実施の形態2に係る制震ダンパー装置30は、第2固定板33と第1固定板31との間に、第1せん断管34と第2せん断管35とを、第1接続板37と第2接続板38と第3接続板39と(本発明の第1接続部)を介して配置している。
【0030】
<作用>
実施の形態2に係る制震ダンパー装置30に、橋梁の長手方向(X方向)の地震力が作用した際の変形状態について、
図11〜13を用いて説明する。
図11は、実施の形態2に係る制震ダンパー装置の一方側からX方向の水平外力が加わった際のY方向鉛直断面図(
図10のB−B断面)である。
図12は、実施の形態2に係る制震ダンパー装置の他方側からX方向の水平外力が加わった際のY方向鉛直断面図(
図10のB−B断面)である。
図13は、実施の形態2に係る制震ダンパー装置に作用するX方向の水平外力と水平変位との関係を説明した図である。
【0031】
実施の形態2に係る制震ダンパー装置30にX方向の水平外力が加わると、橋脚1と上部工2とに水平方向の相対的な変位が生じる。このとき、制震ダンパー装置30の第1せん断管34と第2せん断管35とは、同一方向にせん断変形する。
図11に示すように橋脚1に対して紙面上左側に水平外力F1が作用する場合、第1せん断管34に反力としてF1と同一のせん断力F2が作用する。このせん断力F2は、第1接続板37、第3接続板39、第2接続板38を順に介して、第2せん断管35に同一のせん断力F2として作用する。そして、第2せん断管35から第2固定板33に伝わり、上部工2に配置された反力部材32にせん断力F2と同一の反力F3として作用する。
【0032】
次に、
図12に示すように、橋脚1に対して
図11とは反対側から紙面上右側に水平外力F1が作用する場合も
図11と同様に、第1せん断管34に反力としてF1と同一のせん断力F2が作用する。このせん断力F2は、第1接続板37、第3接続板39、第2接続板38を順に介して、第2せん断管35に同一のせん断力F2として作用する。そして、第2せん断管35から第2固定板33に伝わり、上部工2に配置された反力部材32にせん断力F2と同一の反力F3として作用する。
【0033】
このとき、第1せん断管34と第2せん断管35に作用するせん断力と水平方向の変位との関係を、
図13を用いて説明する。
図13は、実施の形態2に係る制震ダンパー装置に作用するX方向の水平外力と水平変位との関係を説明した図である。
X軸に水平方向の変位を示し、Y軸に水平外力F1を示している。
【0034】
橋脚1に橋梁の長手方向(X方向)の水平外力F1=200kNが作用した例について説明する。
橋脚1に水平外力F1=200kNが作用すると、制震ダンパー装置30は原点から凹部32aの隙間32b(例えば20mm)内を移動し、点aまで水平移動する。このとき発生するせん断力はゼロである。
【0035】
次に、点aにて第2固定板33が一方の反力部材32に当接すると、せん断力が立ち上がり、第1せん断管34と、第2せん断管35とが弾性変形を開始する。点bでせん断力が200kNに達すると、点cまでの間、塑性変形が進行する。なお、点cでは、
図11に示す制震ダンパー装置30の変形形状となっている。点cでは、原点からの変位が例えば60mmとなっており、変位の内訳は初期スライド量として隙間32bで20mm、第1せん断管34の弾性変形と塑性変形との和が20mm、第2せん断管35の弾性変形と塑性変形との和が20mmとなっている。
【0036】
次に、点cから水平外力F1の作用方向が逆転すると、第1せん断管34と、第2せん断管35とが弾性変形を開始し、点dまで形状が回復する。点dから点eまでは隙間32b内をスライド量40mm分(隙間32bの長さ20mm×2箇所)水平移動する。
次に、点eにて第2固定板33が他方の反力部材32に当接すると、せん断力が立ち上がり、第1せん断管34と、第2せん断管35とが弾性変形を開始する。点fでせん断力が200kNに達すると、点gまでの間、塑性変形が進行する。なお、点gでは、
図12に示す制震ダンパー装置30の変形形状となっている。点gでは、原点からの変位が例えば60mmとなっており、変位の内訳は隙間32bで20mm、第1せん断管34の弾性変形と塑性変形との和が20mm、第2せん断管35の弾性変形と塑性変形との和が20mmとなっている。
【0037】
次に、点gから水平外力F1の作用方向が逆転すると、第1せん断管34と、第2せん断管35とが弾性変形を開始し、点hまで形状が回復する。点hから点iまでは隙間32b内をスライド量40mm分(隙間32bの長さ20mm×2箇所)水平移動する。点iにて第2固定板33が一方の反力部材32に再び当接すると、せん断力が立ち上がり、第1せん断管34と、第2せん断管35とが弾性変形を開始する。点jでせん断力が200kNに達すると、点cまでの間、塑性変形が進行する。
実施の形態2に係る制震ダンパー装置30は、このような変形のサイクルを繰り返し、橋梁の長手方向(X方向)の振幅(地震エネルギー)を吸収する。
【0038】
次に、橋脚1に橋梁の長手方向(X方向)の水平外力F1=400kNが作用した例について説明する。
この場合も、水平外力F1=200kNが作用した例と同様のサイクルを描くが、制震ダンパー装置30に作用するせん断力と変位が水平外力F1=200kNの場合と比較して増大する。すなわち、点c’→点d’→点e’→点f’→点g’→点h’→点i’→点j’→点c’の順に第1せん断管34と、第2せん断管35とが弾性変形と塑性変形を繰り返し、橋梁の長手方向(X方向)の振幅(地震エネルギー)を吸収する。
【0039】
次に、実施の形態2に係る制震ダンパー装置30に、橋梁の短手方向(Y方向)の地震力が作用した際の変形状態について、
図14〜16を用いて説明する。
図14は、実施の形態2に係る制震ダンパー装置の一方側からY方向の水平外力が加わった際のX方向鉛直断面図(
図10のC−C断面)である。
図15は、実施の形態2に係る制震ダンパー装置の他方側からY方向の水平外力が加わった際のX方向鉛直断面図(
図10のC−C断面)である。
図16は、実施の形態2に係る制震ダンパー装置に作用するY方向の水平外力と水平変位との関係を説明した図である。
【0040】
実施の形態2に係る制震ダンパー装置30にY方向の水平外力が加わると、橋脚1と上部工2とに水平方向の相対的な変位が生じる。このとき、制震ダンパー装置30の第1せん断管34と第2せん断管35とは、同一方向にせん断変形する。
図14に示すように橋脚1に対して紙面上左側に水平外力F1が作用する場合、第1せん断管34に反力としてF1と同一のせん断力F2が作用する。このせん断力F2は、第1接続板37、第3接続板39、第2接続板38を順に介して、第2せん断管35に同一のせん断力F2として作用する。そして、第2せん断管35から第2固定板33に伝わり、上部工2に配置された反力部材32にせん断力F2と同一の反力F3として作用する。
【0041】
次に、
図15に示すように、橋脚1に対して
図14とは反対側から紙面上右側に水平外力F1が作用する場合も
図14と同様に、第1せん断管34に反力としてF1と同一のせん断力F2が作用する。このせん断力F2は、第1接続板37、第3接続板39、第2接続板38を順に介して、第2せん断管35に同一のせん断力F2として作用する。そして、第2せん断管35から第2固定板33に伝わり、上部工2に配置された反力部材32にせん断力F2と同一の反力F3として作用する。
【0042】
このとき、第1せん断管34と第2せん断管35に作用するせん断力と水平方向の変位との関係を、
図16を用いて説明する。
図16は、実施の形態2に係る制震ダンパー装置に作用するY方向の水平外力と水平変位との関係を説明した図である。
X軸に水平方向の変位を示し、Y軸に水平外力F1を示している。
【0043】
橋脚1に橋梁の短手方向(Y方向)の水平外力F1=200kNが作用した例について説明する。
橋脚1に水平外力F1=200kNが作用すると、制震ダンパー装置30は、原点にて第2固定板33が一方の反力部材32に当接する。すると、せん断力が立ち上がり、第1せん断管34と、第2せん断管35とが弾性変形を開始する。点aでせん断力が200kNに達すると、点bまでの間、塑性変形が進行する。なお、点bでは、
図14に示す制震ダンパー装置30の変形形状となっている。点bでは、原点からの変位が例えば40mmとなっており、変位の内訳は、第1せん断管34の弾性変形と塑性変形との和が20mm、第2せん断管35の弾性変形と塑性変形との和が20mmとなっている。
【0044】
次に、点bから水平外力F1の作用方向が逆転すると、第1せん断管34と、第2せん断管35とが弾性変形を開始し、点cまで形状が回復する。
次に、点cにて第2固定板33が他方の反力部材32に当接すると、せん断力が立ち上がり、第1せん断管34と、第2せん断管35とが弾性変形を開始する。点dでせん断力が200kNに達すると、点eまでの間、塑性変形が進行する。なお、点eでは、
図15に示す制震ダンパー装置30の変形形状となっている。点eでは、原点からの変位が例えば40mmとなっており、変位の内訳は、第1せん断管34の弾性変形と塑性変形との和が20mm、第2せん断管35の弾性変形と塑性変形との和が20mmとなっている。
【0045】
次に、点eから水平外力F1の作用方向が逆転すると、第1せん断管34と、第2せん断管35とが弾性変形を開始し、点fまで形状が回復する。点fにて第2固定板33が一方の反力部材32に再び当接すると、せん断力が立ち上がり、第1せん断管34と、第2せん断管35とが弾性変形を開始する。点gでせん断力が200kNに達すると、点bまでの間、塑性変形が進行する。
実施の形態2に係る制震ダンパー装置30は、このような変形のサイクルを繰り返し、橋梁の短手方向(Y方向)の振幅(地震エネルギー)を吸収する。
【0046】
次に、橋脚1に橋梁の短手方向(Y方向)の水平外力F1=400kNが作用した例について説明する。
この場合も、水平外力F1=200kNが作用した例と同様のサイクルを描くが、制震ダンパー装置30に作用するせん断力と変位が水平外力F1=200kNの場合と比較して増大する。すなわち、点b’→点c’→点d’→点e’→点f’→点g’→点b’の順に第1せん断管34と、第2せん断管35とが弾性変形と塑性変形を繰り返し、橋梁の短手方向(Y方向)の振幅(地震エネルギー)を吸収する。
【0047】
<効果>
実施の形態2に係る制震ダンパー装置30は、地震時に相対変位が大きくなる例えば橋脚1と上部工2との間に採用しても、複数のせん断部材が水平方向の大きな変位に対応することで、地震エネルギーの吸収能力を発揮することができる。すなわち、複数の第1せん断管34と第2せん断管35の各端部を接続部材により変位に対して直列に接続したため、各せん断管のせん断変形量の合計寸法まで変位を許容することが可能となる。
また、大きい変位に対応するために長尺のせん断部材を採用することがないので、コンパクトな制震ダンパー装置となり、狭小な設置場所にも対応することが可能となる。
【0048】
さらに、制震ダンパー装置10は、任意の方向に作用する地震荷重に対して、地震荷重の方向に関わらず制振機能を発揮することができる。また、構造が簡素なため、例えば、ほこり、落葉、錆等に晒される橋梁に組み込まれた場合でも、メンテナンス(保守点検)が容易で、長期的に安定した制振機能を発揮することができる。
なお、上記実施の形態2の例では、第1せん断管34と第2せん断管35とを2本並列に配置したせん断部材の構成としたが、鋼管等を複数並列に並べる構成であればこの例と同様の作用効果を発揮することが可能である。
【0049】
[実施の形態3]
<制震ダンパー装置の構成>
図17は、実施の形態3に係る制震ダンパー装置の
図18におけるB−B断面図である。
図18は、実施の形態3に係る制震ダンパー装置の
図17におけるA−A断面図である。
【0050】
実施の形態3においては、実施の形態1と同様に、橋梁の下部構造物である橋脚1と、上部構造物である上部工2との間に、制震ダンパー装置40および支承20が組み込まれている。
なお、以下の説明の便宜上、橋梁(上部工2)の長手方向をX方向、橋梁(上部工2)の幅方向をY方向、橋脚1の上下方向をZ方向とし、X−Y面は水平面に平行であるとする。
【0051】
制震ダンパー装置40は、橋脚1の上面に設置される第1固定板41と、上部工2の下面に取り付けられる一対の反力部材42とを有している。第1固定板41は、例えば長方形の鋼板材である。また、反力部材42は、
図17、18に示すように、一面に矩形形状の凹部42aを有する、例えば直方体状の鋼製部材として形成されている。
【0052】
制震ダンパー装置40は、
図17に示すように、両端部を反力部材42の凹部42a内に収納される第2固定板43を有している。第2固定板43は、反力部材42の凹部42aの内周面に両端部が当接する例えば矩形形状の鋼板部材として構成されている。
第2固定板43と第1固定板41との間には、円筒形状のせん断管44が配置されている。せん断管44の外周側には、せん断管44の外径よりも大きい内径を有する補剛管45(本発明の補強部材に相当する)が配置されている。せん断管44と補剛管45とは、例えば鋼管で形成されている。
【0053】
せん断管44の下端は、第1固定板41の上面に自由状態で載置されているか、もしくは、溶接等にて固定されている。また、せん断管44の上端は、第2固定板43の下面に例えば溶接にて固定されている。補剛管45の下端は矩形状の第1固定板41の上面に例えば溶接で固定されている。また、補剛管45の上端は、第2固定板43の下面から距離を置いて形成されている。
なお、補剛管45は、第2固定板43の下面に例えば溶接で固定され、補剛管45の下端が第1固定板41の上面と距離をおいて形成される形状でもよい。
【0054】
<作用>
実施の形態3に係る制震ダンパー装置40に、地震力が作用した際の変形状態について、
図19を用いて説明する。
図19は、実施の形態3に係る制震ダンパー装置に作用するせん断力と変形量の関係を説明した図である。
X軸に水平方向の変位を示し、Y軸に水平外力F1を示している。
【0055】
橋脚1に橋梁の長手方向(X方向)の水平外力F1=200kNが作用した例について説明する。
橋脚1に水平外力F1=200kNが作用すると、制震ダンパー装置30は、原点にて第2固定板43が一方の反力部材32に当接する。すると、せん断力が立ち上がり、せん断管44が弾性変形を開始する。点aでせん断力が200kNに達すると、点bまでの間、塑性変形が進行する。点bでは、原点からの変位が例えば20mmとなっており、変位の内訳は、せん断管44の弾性変形と塑性変形との和が20mm進行した状態となっている。
【0056】
次に、点bから水平外力F1の作用方向が逆転すると、せん断管44が弾性変形を開始し、点cまで形状が回復する。
次に、点cにて第2固定板43が他方の反力部材32に当接すると、せん断力が立ち上がり、せん断管44が弾性変形を開始する。点dでせん断力が200kNに達すると、点eまでの間、塑性変形が進行する。点eでは、原点からの変位が例えば20mmとなっており、変位の内訳は、せん断管44の弾性変形と塑性変形との和が20mm進行した状態となっている。
【0057】
次に、点eから水平外力F1の作用方向が逆転すると、せん断管44が弾性変形を開始し、点fまで形状が回復する。点fにて第2固定板43が一方の反力部材42に再び当接すると、せん断力が立ち上がり、せん断管44が弾性変形を開始する。点gでせん断力が200kNに達すると、点bまでの間、塑性変形が進行する。
実施の形態3に係る制震ダンパー装置40は、このような変形のサイクルを繰り返し、橋梁の長手方向(X方向)の振幅(地震エネルギー)を吸収する。
【0058】
次に、橋脚1に橋梁の長手方向(Y方向)の水平外力F1=400kNが作用した例について説明する。
この場合も、水平外力F1=200kNが作用した例と同様のサイクルを描くが、制震ダンパー装置40に作用するせん断力と変位が水平外力F1=200kNの場合と比較して増大する。すなわち、点b’→点c’→点d’→点e’→点f’→点g’→点b’の順にせん断管44が弾性変形と塑性変形を繰り返し、橋梁の短手方向(Y方向)の振幅(地震エネルギー)を吸収する。
【0059】
<効果>
実施の形態3に係る制震ダンパー装置40は、せん断管44の外周側に補剛管45が配置されている。このため、地震時に相対変位が大きくなる例えば橋脚1と上部工2との間に採用しても、補剛管45がせん断管44の変形をある程度の範囲内に収める働きをする。
すなわち、補剛管45がせん断管44の塑性変形を許容範囲内に抑制することで、せん断管44の形状の座屈を防ぎ、時間の長い振幅にも対応することが可能となる。
【0060】
なお、実施の形態3に係る補剛管45は、例えば実施の形態1に係る第1せん断管14、第2せん断管15、第3せん断管16の外周側や、実施の形態2に係る第1せん断管34、第2せん断管35の外周側に配置することで、実施の形態3に係る制震ダンパー装置40と同様の効果を奏することが可能である。
【0061】
[実施の形態4]
<制震ダンパー装置の構成>
図20は、実施の形態4に係る制震ダンパー装置の平面図である。
図21は、実施の形態4に係る制震ダンパー装置の側面図である。
図22は、実施の形態4に係る制震ダンパー装置に水平外力が加わり変形した際の側面図である。
【0062】
実施の形態4においては、実施の形態1と同様に、橋梁の下部構造物である橋脚1と、上部構造物である上部工2との間に、制震ダンパー装置50および支承20が組み込まれている。
【0063】
制震ダンパー装置50は、橋脚(図示しない)の上面に設置される第1固定板51と、上部工(図示しない)の下面に取り付けられる反力部材(図示しない)とを有している。第1固定板51は、例えば長方形の鋼板材である。
【0064】
制震ダンパー装置50は、両端部を反力部材の凹部内等に収納される第2固定板53を有している。第2固定板53は、反力部材の凹部の内周面に両端部が当接する例えば矩形形状の鋼板部材として構成されている。
第2固定板53と第1固定板51との間には、円筒形状のせん断管54が配置されている。せん断管54は、例えば鋼管で形成されている。せん断管54の外周側には、せん断管54の外面から離間して一対のせん断変形拘束部材55a(本発明の補強部材に相当する)が配置されている。一対のせん断変形拘束部材55aは、
図20、21に示すようにせん断管54を挟んで対向する位置に第1固定板51から立設されている。せん断変形拘束部材55aは、例えば平板状の鋼板で形成されている。
【0065】
せん断管54の下端は、第1固定板51の上面に例えば溶接にて固定されている。また、せん断管54の上端は、第2固定板53の下面に例えば溶接にて固定されている。せん断変形拘束部材55aの下端は矩形状の第1固定板51の上面に例えば溶接で固定されている。また、せん断変形拘束部材55aの上端は、第2固定板53の下面から微少距離、離間して形成されている。
【0066】
<せん断変形拘束部材の変形例>
図23は、実施の形態4に係る制震ダンパー装置の変形例1を示す平面図である。
図24は、実施の形態4に係る制震ダンパー装置の変形例2を示す平面図である。
図25は、実施の形態4に係る制震ダンパー装置の変形例3を示す平面図である。
図26は、実施の形態4に係る制震ダンパー装置の変形例4を示す平面図である。
図27は、実施の形態4に係る制震ダンパー装置の変形例4を示す側面図である。
図28は、実施の形態4に係る制震ダンパー装置の変形例4に水平外力が加わり変形した際の側面図である。
上記せん断変形拘束部材55aは平板状の鋼材を2枚対向させて配置した構成としたが、この他にも例えば
図23に示すように矩形形状の第1固定板51と第2固定板53の四隅に長方形形状のせん断変形拘束部材55b(本発明の補強部材に相当する)を4本柱状に立設して制震ダンパー装置50を構成することができる。
【0067】
また、例えば
図24に示すように矩形形状の第1固定板51と第2固定板53の四辺に沿って平板形状のせん断変形拘束部材55c(本発明の補強部材に相当する)を4枚に立設して制震ダンパー装置50を構成することができる。
また、例えば
図25に示すように円筒形状のせん断変形拘束部材55d(本発明の補強部材に相当する)をせん断管54の周囲に立設して制震ダンパー装置50を構成することができる。
【0068】
さらに、
図26〜28に示すように、円筒形状のせん断変形拘束部材55e(本発明の補強部材に相当する)をせん断管54の内部に収納して制震ダンパー装置50を構成することも可能である。
【0069】
<作用効果>
実施の形態4に係るせん断管54は、水平外力F1を繰り返し受けて変形し座屈すると急激に耐力を失い、エネルギー吸収能が減少する。これを防止するために、せん断変形拘束部材55をせん断管54の周囲または内部に配置する。せん断変形拘束部材55によって、せん断管54の上部と下部とに配置された第1固定板51と第2固定板53との間隔を一定に拘束する。すなわち、せん断管54が変形し、第1固定板51と第2固定板53とが平行な位置から傾斜した場合に、せん断変形拘束部材55の上端が第2固定板53の下面に当接し、傾斜角度が大きくなることを防止する。
【0070】
すると、繰り返し水平外力F1を受けて、せん断管54が変形する場合でも、せん断管54の座屈が防止される。よって、第1固定板51と第2固定板53とが平行な位置から傾斜して大きな変位が生じた場合でも、せん断管54の塑性変形状態を保持し、エネルギー吸収能力を維持することができる。
【0071】
なお、実施の形態4に係るせん断変形拘束部材55は、例えば実施の形態1に係る第1せん断管14、第2せん断管15、第3せん断管16の外周側または内周側や、実施の形態2に係る第1せん断管34、第2せん断管35の外周側または内周側に配置することで、実施の形態4に係る制震ダンパー装置50と同様の効果を奏することが可能である。
【0072】
[実施の形態5]
<制震ダンパー装置の構成>
図29は、実施の形態5に係る制震ダンパー装置のY方向鉛直断面図(
図30のB−B断面)である。
図30は、実施の形態5に係る制震ダンパー装置のX方向鉛直断面図(
図29のA−A断面)である。
【0073】
実施の形態5においては、実施の形態1と同様に、橋梁の下部構造物である橋脚1と、上部構造物である上部工2との間に、制震ダンパー装置30および支承20が組み込まれている。
なお、以下の説明の便宜上、橋梁(上部工2)の長手方向をX方向、橋梁(上部工2)の幅方向をY方向、橋脚1の上下方向をZ方向とし、X−Y面は水平面に平行であるとする。
【0074】
制震ダンパー装置60は、橋脚1の上面に設置される第1固定板61と、上部工2の下面に取り付けられる一対の反力部材62とを有している。第1固定板61は、例えば長方形の鋼板材である。また、反力部材62は、
図29、30に示すように、一面に矩形形状の凹部62aを有する、例えば直方体状の鋼製部材として形成されている。
【0075】
制震ダンパー装置60は、
図29に示すように、反力部材62の凹部62a内に収納される第2固定板63を有している。第2固定板63は、凹部62aの内周面に当接する例えば矩形形状の鋼板部材として構成されている。
なお、X方向における第2固定板63と反力部材62の凹部62aとの間には、第2固定板63が摺動することが可能な隙間が形成されていてもよい。隙間を設ける理由は、橋梁(上部工2)の長手方向における鋼材の熱膨張を吸収するためである。
第2固定板63と第1固定板61との間には、円筒形状の第1せん断管64aと、第2せん断管64bと、第3せん断管64cとが、外周面同士を対向させた状態で並列に配置されている。すなわち、第1せん断管64aと、第2せん断管64bと、第3せん断管64cとは、中心軸同士が平行に離間した状態で並んで配置されている。第1せん断管64aと、第2せん断管64bと、第3せん断管64cとは、例えば鋼管で形成されている。
【0076】
第1せん断管64aの下端は、第1固定板61の上面に例えば溶接にて固定されている。第1せん断管64aの上端は、長尺形状の第1接続板65の下面に取り付けられた取付管65a内に挿入されて、例えば溶接にて固定されている。
第2せん断管64bの上端は、第1接続板65の下面に例えば溶接にて固定されている。第2せん断管64bの下端は長尺形状の第2接続板66の上面に例えば溶接にて固定されている。
第3せん断管64cの下端は、第2接続板66の上面に取り付けられた取付管66a内に挿入されて、例えば溶接にて固定されている。第3せん断管64cの上端は、第2固定板63の下面に例えば溶接にて固定されている。
【0077】
ここで、第1せん断管64aと、第2せん断管64bと、第3せん断管64cの各中心軸は、
図30に示す平面視で略正三角形となるように配置される。すなわち、第1接続板65と第2接続板66とが
図30に示す平面視でV字形状となるように配置される。
【0078】
このように、実施の形態5に係る制震ダンパー装置60は、第2固定板63と第1固定板61との間に、第1せん断管64aと第2せん断管64bと第3せん断管64cとを、第1接続板65と第2接続板66とを介して配置している。
【0079】
<作用>
実施の形態5に係る制震ダンパー装置60に、橋梁の長手方向(X方向)の地震力が作用した際の変形状態について、
図31〜34を用いて説明する。
図31は、実施の形態5に係る制震ダンパー装置の一方側からX方向の水平外力が加わった際のY方向鉛直断面図(
図32のB−B断面)である。
図32は、実施の形態5に係る制震ダンパー装置のZ方向水平断面図(
図31のA−A断面)である。
図33は、実施の形態5に係る制震ダンパー装置の他方側からX方向の水平外力が加わった際のY方向鉛直断面図(
図34のB−B断面)である。
図34は、実施の形態5に係る制震ダンパー装置のZ方向水平断面図(
図33のA−A断面)である。
【0080】
実施の形態5に係る制震ダンパー装置60にX方向の水平外力が加わると、橋脚1と上部工2とに水平方向の相対的な変位が生じる。このとき、制震ダンパー装置60の第1せん断管64aと第3せん断管64cとは、
図31に示すように同一方向にせん断変形し、第2せん断管64bは、第1せん断管64aと第3せん断管64cの逆方向にせん断変形する。
図31、32に示すように橋脚1に対して紙面上左側に水平外力F1が作用する場合、第1せん断管64aに反力としてF1と同一のせん断力F2が作用する。このせん断力F2は、第1接続板65、第2せん断管64b、第2接続板66、を順に介して、第3せん断管64cに同一のせん断力F2として作用する。そして、第3せん断管64cから第2固定板63に伝わり、上部工2に配置された反力部材62にせん断力F2と同一の反力F3として作用する。
【0081】
次に、
図33、34に示すように、橋脚1に対して
図31とは反対側から紙面上右側に水平外力F1が作用する場合も
図31と同様に、第1せん断管64aに反力としてF1と同一のせん断力F2が作用する。このせん断力F2は、第1接続板65、第2せん断管64b、第2接続板66、を順に介して、第3せん断管64cに同一のせん断力F2として作用する。そして、第3せん断管64cから第2固定板63に伝わり、上部工2に配置された反力部材62にせん断力F2と同一の反力F3として作用する。
【0082】
このとき、第1せん断管64aと第2せん断管64bと第3せん断管64cとに作用するせん断力と水平方向の変位との関係は、実施の形態2に係る
図16と同様に変化する。
このように第1せん断管64aと第2せん断管64bと第3せん断管64cとが弾性変形と塑性変形とを繰り返し、振幅(地震エネルギー)を吸収する。
【0083】
<効果>
実施の形態5に係る制震ダンパー装置60は、地震時に相対変位が大きくなる例えば橋脚1と上部工2との間に採用しても、複数のせん断部材が水平方向の大きな変位に対応することで、地震エネルギーの吸収能力を発揮することができる。すなわち、複数の第1せん断管64aと第2せん断管64bと第3せん断管64cの各端部を接続部材により変位に対して直列に接続したため、各せん断管のせん断変形量の合計寸法まで変位を許容することが可能となる。
また、大きい変位に対応するために長尺のせん断部材を採用することがないので、コンパクトな制震ダンパー装置となり、狭小な設置場所にも対応することが可能となる。
【0084】
さらに、制震ダンパー装置60は、任意の方向に作用する地震荷重に対して、地震荷重の方向に関わらず制振機能を発揮することができる。また、構造が簡素なため、例えば、ほこり、落葉、錆等に晒される橋梁に組み込まれた場合でも、メンテナンス(保守点検)が容易で、長期的に安定した制振機能を発揮することができる。
なお、上記実施の形態5の例では、第1せん断管64aと第2せん断管64bと第3せん断管64cとを3本並列に配置したせん断部材の構成としたが、鋼管等を複数並列に並べる構成であればこの例と同様の作用効果を発揮することが可能である。