特許第6619251号(P6619251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6619251コンプレッサおよびコンプレッサの支持方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619251
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】コンプレッサおよびコンプレッサの支持方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20191202BHJP
【FI】
   F04B39/00 102Q
   F04B39/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-17948(P2016-17948)
(22)【出願日】2016年2月2日
(65)【公開番号】特開2017-137789(P2017-137789A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】503369495
【氏名又は名称】帝人ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】善岡 幸司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎一
(72)【発明者】
【氏名】縄田 秀男
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/051017(WO,A1)
【文献】 実開昭55−066241(JP,U)
【文献】 特開2001−280242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00−39/16
F16F 15/00−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ駆動のコンプレッサのモータ回転軸に平行であり、且つ該コンプレッサの重心を通る軸線上の2点で防振部材Aを介して支持する支持部を備えたコンプレッサの支持方法であり、
該支持部が、防振部材Aとコンプレッサ側の当該防振部材Aの受け部、防振部材Aとコンプレッサを支持する筐体とを接続する固定軸を備えると共に、
コンプレッサのモータ回転軸に平行であり重心から離れた軸線上に防振部材Bの受け部および防振部材Bを介して固定軸を中心とするコンプレッサの回転を規制するコンプレッサ回転止め軸を備えた回転規制部を備えると共に、
防振部材Aの硬度に対して防振部材Bの硬度が低い素材であることを特徴とするコンプレッサの支持方法。
【請求項2】
該防振部材Bが、スポンジ、ゲル、またはフォーム素材からなる部材である、請求項1に記載のコンプレッサの支持方法。
【請求項3】
該防振部材Aおよび該防振部材Bの受け部が、コンプレッサのカバーの内空間に凹んだ凹部であることを特徴とする請求項1または2に記載のコンプレッサの支持方法。
【請求項4】
該コンプレッサが往復式コンプレッサであることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載のコンプレッサの支持方法。
【請求項5】
モータ駆動のコンプレッサのモータ回転軸に平行であり、且つ該コンプレッサの重心を通る軸線上の2点で防振部材Aを介して支持する支持部を備え、該支持部が、防振部材Aとコンプレッサ側の当該防振部材Aの受け部、防振部材Aとコンプレッサを支持する筐体とを接続する固定軸を備えると共に、コンプレッサのモータ回転軸に平行であり重心から離れた軸線上に防振部材Bの受け部および防振部材Bを介して固定軸を中心とするコンプレッサの回転を規制するコンプレッサ回転止め軸を備えた回転規制部を備えると共に、
防振部材Aの硬度に対して防振部材Bの硬度が低い素材であることを特徴とするコンプレッサ。
【請求項6】
該防振部材Bが、スポンジ、ゲル、またはフォーム素材からなる部材である、請求項に記載のコンプレッサ。
【請求項7】
該防振部材Aおよび該防振部材Bの受け部が、コンプレッサのカバーの内空間に凹んだ凹部であることを特徴とする請求項5または6に記載のコンプレッサ。
【請求項8】
該コンプレッサが往復式コンプレッサであることを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載のコンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンプレッサの支持方法に関する。更に詳細には、医療用の酸素濃縮装置などに搭載するモータ駆動のコンプレッサに関するものであり、駆動時の振動を抑え、機器の静穏化を実現するコンプレッサ支持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肺気腫、肺結核後遺症や慢性気管支炎などの慢性呼吸器疾患患者に対して、高濃度の酸素を吸入させる酸素吸入療法が行われている。酸素吸入療法とは前記疾病患者に高濃度の酸素ガス、もしくは酸素濃縮気体を吸入させる治療法である。その酸素ガス、濃縮酸素気体を患者に供給する手法として、高圧酸素ボンベ、液体酸素ボンベ、酸素濃縮装置等が挙げられるが、長時間の連続使用に耐え、使い勝手がよいなどの理由によって、酸素濃縮装置が用いられるケースが増加している。医療の質の向上が求められる中、酸素吸入を行ないながらも通常の生活ができるよう、ボンベ交換が不要で携帯可能な酸素濃縮装置の開発のニーズが高まっている。
【0003】
酸素濃縮装置は空気中の酸素を分離、濃縮することを可能にした装置である。酸素分離、濃縮する装置としては、高濃度の酸素が得られるという観点で、窒素を選択的に吸着し得る吸着剤を1個或いは、複数の吸着床に充填した吸着型酸素濃縮装置が広く知られている。その中でも、圧力変動装置としてコンプレッサを用いた圧力変動吸着型酸素濃縮装置が広く世の中に広まっている。
かかる装置は通常窒素を選択的に吸着する吸着剤を充填させた1個或いは複数の吸着床に対して、コンプレッサから圧縮空気を供給して吸着床内を加圧状態にして窒素を吸着させ、高濃度の酸素を得る吸着工程と、吸着床内を減圧して、窒素を脱着させる脱着工程からなり、これを一定サイクルで繰り返すことで、高濃度の酸素を得る装置である。
【0004】
酸素濃縮措置は、酸素吸入療法を行う呼吸器疾患患者に対して医師の処方に従い酸素を供給する装置として、基本的に患者が飲食時、就寝時問わず、終日連続使用するものであり、装置は患者の傍らに設置されている。そのため、かかる装置から発生する騒音や振動は、直接患者、患者の家族等の耳に入り、不快感を与える恐れがある。特に就寝時などは騒音の与える影響が大きく、患者、或いは患者の家族の睡眠を妨げ、メンタルヘルスにも悪影響を及ぼすことが懸念される。圧力変動吸着型酸素濃縮装置の最大の騒音および振動の発生要素はコンプレッサである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−278238号公報
【特許文献2】WO2014/051017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンプレッサの駆動に伴う振動が直接装置に伝達するのを防止するため、コンプレッサはコンプレッサ下部に設けた圧縮バネを介して装置内に搭載されている。コンプレッサには、ピストンの往復運動式コンプレッサや、ヘリカル式、スクロール式などの回転式コンプレッサがあり、種々の外観形状をしているが、通常は図1に示すように、コンプレッサをブラケットに搭載し、ブラケット下部の4点を支持することにより振動低減を行っている。また、圧縮バネのバネ支持点の少なくとも1つが、駆動用モータの回転軸の軸線上に備え、3点でのコンプレッサ支持方法も知られている(特許文献1)。
【0007】
従来のコンプレッサのマウント方法では、コンプレッサの低回転時における高振幅の振動を低減するために、通常、マウントに使用する圧縮バネのバネ定数を小さくすることによって対処する。しかし、バネ定数を小さくするとバネの坐屈が発生しやすくなり、装置を輸送する際に生じる振動に対して自立ができないなどの問題がある。また、コンプレッサの重心が高いため、横揺れに対しての振動が大きくなり、コンプレッサとその周辺部材とが接触する可能性があり、接触防止用のガードを設ける、周辺に空間を設けるなどの対策が必要となる。また、支持バランスが不安定であるため、バネを4個以上使用し、バネ支持位置をコンプレッサから離れた位置を支持する必要がある。
【0008】
さらに、コンプレッサを支えているバネを配置するためは、ブラケットの下部に空間を設ける必要がある。特に重量の大きいコンプレッサの場合には、土台との接触をさけるため荷重長を長くするため、バネの自然長を長くする必要があり、土台とブラケットの間隔を広くとる必要がある。このため、コンプレッサを収容するコンプレッサボックスの容積が大きくなり、その結果として装置全体が大型化する結果となる。
【0009】
小型で軽量化を図った酸素濃縮装置を携帯して使用する場合が増える中、従来の据置器と違い、酸素濃縮器を横置き、あるいは倒立状態とする場合も想定され、それに対応できるコンプレッサの支持方法が要求される。特許文献2には、コンプレッサのモータ回転軸に平行で、その重心を通る軸線上の2点で支持するコンプレッサの支持方法が開示され、矩形形状の防振部材を介して支持することで、モータの回転に伴う慣性力に対して、コンプレッサの回転、振動を抑制する装置が開示されている。かかる装置では支持軸の延長線上に支持部材および回転及び振動を規制する防振部材を配することになり、さらに防振部材の受け側の設置などの構造体を設ける必要があるなど、装置の小型化に制約がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決する方法として、本発明は以下のコンプレッサ支持方法を提供する。
[1]モータ駆動のコンプレッサのモータ回転軸に平行であり、且つ該コンプレッサの重心を通る軸線上の2点で防振部材Aを介して支持する支持部を備えたコンプレッサの支持方法であり、
該支持部が、防振部材Aとコンプレッサ側の当該防振部材Aの受け部、防振部材Aとコンプレッサを支持する筐体とを接続する固定軸を備えると共に、
コンプレッサのモータ回転軸に平行であり重心から離れた軸線上に防振部材Bの受け部および防振部材Bを介して固定軸を中心とするコンプレッサの回転を規制するコンプレッサ回転止め軸を備えた回転規制部を備えることを特徴とするコンプレッサの支持方法。
[2]防振部材Aの硬度に対して防振部材Bの硬度が低い素材であることを特徴とする上記1記載のコンプレッサの支持方法。
[3]該防振部材Bが、スポンジ、ゲル、またはフォーム素材からなる部材である、上記1または2に記載のコンプレッサの支持方法。
[4]該防振部材Aおよび該防振部材Bの受け部が、コンプレッサのカバーの内空間に凹んだ凹部にすることで、固定軸及び回転止め軸がコンプレッサのカバーの内空間に入り込み、コンプレッサ支持構造を省スペース化することを特徴とする上記1〜3の何れかに記載のコンプレッサの支持方法。
[5]該コンプレッサが往復式コンプレッサであることを特徴とする上記1〜4の何れかに記載のコンプレッサの支持方法。
[6]上記1〜5に記載のコンプレッサ支持方法を用いたコンプレッサ。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコンプレッサ支持方法は、コンプレッサの重心を通る軸上の2点で支持することでコンプレッサを搭載する装置の設置方向に左右されず支持することができる。また防振部材を介してコンプレッサを支持すると共に、防振部材を介して回転規制を行うことでモータの回転に伴う慣性力に対し、コンプレッサの回転、振動を抑制することができる。さらに防振部材を固定する受け部をコンプレッサのカバーの内空間に凹んだ凹部構造にすることで、コンプレッサ支持構造の省スペース化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来のピストン往復式圧縮機の支持例。
図2】本発明のピストン往復式圧縮機の支持例。
図3】本発明のピストン往復式圧縮機の支持部。
図4】本発明のピストン往復式圧縮機のコンプレッサカバー部。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のコンプレッサ支持方法を、図面を用いて説明する。本発明のコンプレッサ支持方法は、モータ駆動で作動するコンプレッサに適用するものである。
コンプレッサの1つとしてシリンダ内のピストンを往復運動させることにより空気を圧縮、逆に吸引する往復運動式コンプレッサがあり、モータの回転運動をクランクによりピストンの往復運動に変換している。ピストンが1つの1ヘッド、ピストンが左右2つの2ヘッドのものがあり、図2には2ヘッドタイプの往復運動式コンプレッサの支持方法を示す。
【0014】
往復運動式コンプレッサは、モータの回転をクランク部分でピストンの往復運動に変換し、シリンダ内でのピストンの往復運動により空気を圧縮し加圧空気を供給する。このタイプの場合には、図2のようにシリンダとモータ部分が90度の位置となる形状をとる場合が多い。コンプレッサの中ではモータ部分の重量が大きいが、シリンダ部分の重量等からコンプレッサの重心は、モータ回転軸から、シリンダ拠りに位置する。従って、モータ回転軸でコンプレッサを支持すると重心位置がずれるために振動が大きくなる。
【0015】
そこで本発明では、図3図4に示すように、コンプレッサのモータ回転軸に平行であり、且つ該コンプレッサの重心を通る軸線上の2点で左右に防振部材Aを介して、コンプレサを装置の筐体で支持する。これにより装置の設置方向が変化したとしても安定的にコンプレッサを保持することが出来、モータ回転に伴う振動を最小限に抑えることが出来る。
【0016】
防振部材Aとしては、コンプレッサの重量を保持しつつ、コンプレッサの動作および振動に対する防振性と安定性を考慮して、硬度40°〜50°、好ましくは硬度50°程度のゴム・エラストマ―部品を用いる。たとえば、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴムなどの素材部品を用いるのが好ましい。防振部材の硬度が高い方が、防振部材の変形が少ないので、軸方向、回転方向の動きを抑制することができる。硬度が高すぎると防振効果が低下する。コンプレッサ自体の発熱に対応するため弾性部材についても耐熱性が要求されることから、シリコーンゴムが特に好ましい。
2点支持の場合、支持軸に対して左右の軸方向、半径方向、円周(回転)方向の動きに対して防振効果を示す必要がある。本願発明のモータ回転軸と平行の位置でコンプレッサを左右2点支持することから、支持軸では回転方向の動きが支配的になる。
【0017】
本発明の支持方法では回転規制部として、コンプレッサの回転方向の動きを規制する為、コンプレッサのモータ回転軸に平行であり重心から離れた軸線上に防振部材Bを介してコンプレッサ回転止め軸を設ける。防振部材Bとしては、防振性に重点をおき、可能な限り低硬度のゴム・ゲル・フォーム材質、たとえば、ゴムスポンジなどが好ましい。硬度としては5°から25°の範囲が好ましい。防振部材Bを防振性の高い材質にすることにより、コンプレッサが回転方向に動き回転止め軸に負荷が掛かっても振動を最小限に抑えることができる。防振部材Aと同様に防振部材Bについても耐熱性の観点から、シリコーン素材であるシリコーンゴムスポンジが好ましい。
【0018】
かかる図3及び図4に示す実施態様例では、回転規制部である回転止め軸を、コンプレッサの両端に設け、2点で回転規制しているが、どちらか1点であっても良い。
防振部材の固定は、コンプレッサに固定されたコンプレッサカバーに防振部材の外形状に合わせた受け部2箇所を設け、受け部に防振部材A,Bを嵌め込む。スペースを有効利用するため、受け部はコンプレッサのケーシングを構成する両端の円形状のコンプレッサカバーの表面にケーシングの内空間に凹ませた凹部構造とするのが望ましい。
【0019】
嵌め込んだ防振部材には、固定軸,回転止め軸の形状と同様な穴を開け、筐体側フレームに固定したコンプレッサ固定軸と回転止め軸を防振部材に差込む構造にする。コンプレッサ左右を固定軸で防振材を介して挟み込む構造とすることで固定軸に対して左右方向、半径方向の動きが防振剤を介して拘束される。これにより、機器の向きにかかわらず、コンプレッサは防振材で振動絶縁された状態で筐体に支持される。防振部材の形状は円筒形状でも矩形形状などを用いることが可能であるが、回転方向に荷重が均一にかかるようの円筒形状を用いるのが好ましい。固定軸、回転止め軸の先端部が、軸方向の振動によりコンプレッサカバー表面に接触するのを防止するため、防振部材の一端は閉塞したキャップ形状であるのが好ましい。
【0020】
本発明のコンプレッサの支持方法は、コンプレッサの振動騒音の低減が求められる酸素濃縮装置に搭載するコンプレッサへの適用に有効である。特に、酸素よりも窒素を選択的に吸着する吸着剤を用いた吸着筒にコンプレッサを使用して加圧空気を供給し、窒素を吸着除去し酸素濃縮ガスを生成するする圧力変動吸着型酸素濃縮装置の騒音低減に有効であり、特に使用者が携帯して使用するために小型・軽量化が求められる、小型の携帯型酸素濃縮装置に適用され得るものである。
図1
図2
図3
図4