特許第6619258号(P6619258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6619258X線検出器、X線CT装置、X線検出方法、及びX線検出プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619258
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】X線検出器、X線CT装置、X線検出方法、及びX線検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20191202BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   A61B6/03 320Q
   A61B6/03 350H
   A61B6/03 373
   A61B6/00 333
   A61B6/03 350D
【請求項の数】14
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-37237(P2016-37237)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-153547(P2017-153547A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】昆野 康隆
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−50716(JP,A)
【文献】 特開2012−231210(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0020475(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を検出する検出素子を二次元配列した検出素子群を複数有し、該検出素子群を1画素に対応させて複数配列した検出部と、
前記検出素子の出力信号の加算率を決定する加算率決定部と、
前記検出素子群に属する前記検出素子の出力信号を前記加算率に応じて加算することにより投影像の画素毎の信号値を算出する加算部と、
前記画素と当該画素に対応する検出素子群に属する前記検出素子との位置関係を示す画素位置情報と、前記検出素子群に含まれる欠陥素子の位置を示す欠陥素子位置情報とを記憶した位置情報記憶部と、を備え、
前記加算率決定部が、前記画素位置情報及び前記欠陥素子位置情報に基づいて、信号値を算出する画素に含まれる前記欠陥素子の出力信号の加算率と、信号値を算出する画素の中心に対して当該欠陥素子と対称に位置する対角検出素子の出力信号の加算率とを、同一かつ他の検出素子の加算率よりも低い値となるように決定し、他の前記検出素子の加算率を略同一の値となるように決定するX線検出器。
【請求項2】
前記位置情報記憶部が、前記検出素子の面積または面積比から成る面積情報を具備し、
前記加算率決定部が、前記面積情報に基づいて、前記欠陥素子及び前記対角検出素子の前記加算率を決定する請求項1記載のX線検出器。
【請求項3】
前記加算部が、
前記検出素子の出力信号をデジタル信号に変換するデジタル変換部を備え、
前記検出素子群に属する前記検出素子のデジタル信号を前記加算率に応じて加算することにより投影像の画素毎の信号値を算出する請求項1記載のX線検出器。
【請求項4】
前記加算部が、
前記検出素子からのアナログの出力信号を前記加算率に応じて画素毎に加算してアナログ出力値を算出するアナログ信号加算部と、
前記画素のアナログ出力値をデジタル信号に変換するデジタル変換部と、を備え、
前記加算率決定部が、スイッチであり該スイッチのオンまたオフ操作により、前記加算率を決定する請求項1記載のX線検出器。
【請求項5】
前記欠陥素子及び前記対角検出素子の加算率が0である請求項1記載のX線検出器。
【請求項6】
前記加算率決定部が、前記検出素子群における前記欠陥素子の配列位置を特定し、
前記検出素子群において前記欠陥素子が中央以外に位置するとき、
前記欠陥素子及び前記対角検出素子の加算率を夫々0に決定する請求項1記載のX線検出器。
【請求項7】
前記加算率決定部が、前記検出素子群における前記欠陥素子の配列位置を特定し、
前記検出素子群において前記欠陥素子が角に位置するとき、
前記欠陥素子及び前記対角検出素子の加算率を0に決定する請求項6記載のX線検出器。
【請求項8】
前記位置記憶部が、各前記検出素子の前記加算率を加算率情報として予め記憶し、
前記加算率決定部が、前記加算率情報を用いて各前記検出素子の加算率を決定する請求項1記載のX線検出器。
【請求項9】
前記投影像の画素毎の信号値に対して、前記検出素子群に属する検出素子の加算率の合計値に基づいて規格化する規格部をさらに備えた請求項1記載のX線検出器。
【請求項10】
前記検出素子が、X線を検出して、検出したX線からX線フォトンのエネルギーに応じた信号を発生し、
前記デジタル変換部が、前記エネルギーを2以上のエネルギー範囲に分別してX線フォトン数のデジタル信号を出力し、
前記加算部が、前記エネルギー範囲毎に前記画素の信号値を算出する請求項3記載のX線検出器。
【請求項11】
前記欠陥素子と前記対角検出素子の少なくとも一方の前記加算率が、前記エネルギー範囲に応じて異なる請求項10記載のX線検出器。
【請求項12】
請求項1から請求項11の何れか1項に記載のX線検出器と、
X線を照射するX線発生部と、
前記X線検出器からの信号に対して再構成演算を行って再構成像を作成する再構成処理部と、
前記X線検出器、前記X線発生部、及び前記再構成処理部を制御する制御部と、を備えたX線CT装置。
【請求項13】
X線を検出する複数の検出素子が二次元配列された検出素子群を投影像の1画素に対応させて複数配列した検出部により、電荷量に応じて出力された出力信号について、
前記画素と当該画素に対応する検出素子群に属する前記検出素子との位置関係を示す画素位置情報と、前記検出素子群に含まれる欠陥素子の位置を示す欠陥素子位置情報とを記憶するステップと、
前記画素位置情報及び前記欠陥素子位置情報に基づいて、信号値を算出する画素に含まれる前記欠陥素子の出力信号の加算率と、信号値を算出する画素の中心に対して当該欠陥素子と対称に位置する対角検出素子の出力信号の加算率とを、同一かつ他の検出素子の加算率よりも低い値となるように決定すると共に、他の前記検出素子の加算率を略同一の値となるように決定するステップと、
前記検出素子群に属する前記検出素子の出力信号を前記加算率に応じて加算することにより投影像の画素毎の信号値を算出するステップと、を備えたX線検出方法。
【請求項14】
X線を検出する複数の検出素子が二次元配列された検出素子群を投影像の1画素に対応させて複数配列した検出部により、電荷量に応じて出力された出力信号について、
前記画素と当該画素に対応する検出素子群に属する前記検出素子との位置関係を示す画素位置情報と、前記検出素子群に含まれる欠陥素子の位置を示す欠陥素子位置情報とを記憶するステップと、
前記画素位置情報及び前記欠陥素子位置情報に基づいて、信号値を算出する画素に含まれる前記欠陥素子の出力信号の加算率と、信号値を算出する画素の中心に対して当該欠陥素子と対称に位置する対角検出素子の出力信号の加算率とを、同一かつ他の検出素子の加算率よりも低い値となるように決定すると共に、他の前記検出素子の加算率を略同一の値となるように決定するステップと、
前記検出素子群に属する前記検出素子の出力信号を前記加算率に応じて加算することにより投影像の画素毎の信号値を算出するステップと、をコンピュータに実行させるX線検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、X線検出器、特に、欠陥素子によって生じる出力信号の欠陥を補間するX線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の方向から撮影した被検体のX線透過像である投影像からX線吸収係数(線減弱計数)を算出し、被検体の断層像である再構成像を得るX線CT装置が知られている。
このようなX線CT装置に適用される積分型のX線検出器は、複数の検出素子を備え、検出素子毎に被検体を透過したX線のエネルギーを電気信号に変換し、所定時間積分した積分信号を出力し投影像を得ている。ここで、複数の検出素子には欠陥を有する検出素子(以下、「欠陥素子」という)が含まれることがあり、欠陥素子によって画素のサンプリング位置がずれることで出力値がずれ、投影像においてアーチファクトが生じる虞がある。
そこで、例えば、特許文献1の画像撮影装置では、欠陥素子によって投影像に画素欠陥が生じた場合には、正常な検出素子の出力信号から欠陥素子の出力信号を推定すると共に、推定値に対してあらかじめ定めた影響量パラメータを用いて当該欠陥素子の周辺素子が当該欠陥素子から受ける影響を補正している。
【0003】
ところで、近年、X線フォトンの個数を計測するフォトンカウンティング型のX線検出器を搭載したX線CT装置が開発されている。X線CT装置にフォトンカウンティング型のX線検出器を搭載すると、積分型のX線検出器を搭載したX線CT装置では取得できなかったエネルギー毎の疑似単色の再構成像や、原子番号などの分布を示す吸収係数以外の再構成像(以下、これらの画像を「マルチエネルギー画像」という)を作成することができるという利点がある。
【0004】
フォトンカウンティング型の検出器を適用したX線CT装置の一形態では、一画素に対して微細な複数の検出素子を割り当て、検出素子毎にX線フォトンの個数を計測し、その出力値を加算することにより投影像の画素毎の出力を求める。フォトンカウンティング型の検出器を適用することにより、X線CT装置のように非常に高いX線線量率を用いる装置においても、パイルアップを抑えることが可能となる。また、検出素子を小さくすると、同一面積範囲を撮影する際に検出素子数が増えてしまうものの、フォトンカウンティング型の検出器側で、すなわち、投影像でX線CT装置において必要なサイズまで加算しておくことにより、X線CT装置側で処理すべきデータ量、処理回路、処理工数、処理時間などの増加を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−231210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように、フォトンカウンティング型の検出器では、一画素に対して微細な複数の検出素子を割り当てているため、積分型の検出器に比して検出素子数が多く、読出し回路や検出部等の異常等による欠陥素子の割合も高くなる。このため、欠陥素子によって投影像に画素欠陥が生じたときに、特許文献1の画像撮影装置のような画素欠陥を補間する技術をそのまま適用すると、より多くの処理時間、処理回路及び補間用データ等を必要とし、処理速度の低下、装置コストの増大及び作業工数の増加等を招来する。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、処理時間、処理回路及び補間用データ等を増大させることなく、欠陥素子に対する補間の精度を向上させ、簡易にアーチファクトを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、X線を検出する検出素子を二次元配列した検出素子群を複数有し、該検出素子群を1画素に対応させて複数配列した検出部と、前記検出素子の出力信号の加算率を決定する加算率決定部と、前記検出素子群に属する前記検出素子の出力信号を前記加算率に応じて加算することにより投影像の画素毎の信号値を算出する加算部と、前記画素と当該画素に対応する検出素子群に属する前記検出素子との位置関係を示す画素位置情報と、前記検出素子群に含まれる欠陥素子の位置を示す欠陥素子位置情報とを記憶した位置情報記憶部と、を備え、前記加算率決定部が、前記画素位置情報及び前記欠陥素子位置情報に基づいて、信号値を算出する画素に含まれる前記欠陥素子の出力信号の加算率と、信号値を算出する画素の中心に対して当該欠陥素子と対称に位置する対角検出素子の出力信号の加算率とを、同一かつ他の検出素子の加算率よりも低い値となるように決定し、他の前記検出素子の加算率を略同一の値となるように決定するX線検出器を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、処理時間、処理回路及び補間用データ等を増大させることなく、欠陥素子に対する補間の精度を向上させ、簡易にアーチファクトを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器を適用したX線CT装置の概略を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の検出部における検出素子の配列例を示す参考図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の概略を示すブロック図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器におけるサンプリングの様子の一例を示すグラフである。
図5】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の検出部における検出素子の配列例を示す参考図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の検出部における検出素子の配列例を示し、(a)は、欠陥素子の位置を示す欠陥素子位置情報の例であり、(b)は、欠陥素子位置情報の配列マップの例である。
図7】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の検出部における検出素子の配列例を示し、(a)は、画素と検出素子及び欠陥素子との位置関係を示す画素位置情報の例であり、(b)は、画素位置情報の配列マップの例である。
図8】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の加算部における加算処理の流れを示すフローチャートである。
図9】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の検出部における検出素子の配列例を示し、特に、加算率の重心を説明する説明図である。
図10】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の検出部における検出素子の配列例を示し、特に、検出素子の加算率を説明する説明図である。
図11】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の検出部における検出素子の加算率の例を示し、(a)は、図9における(−1,1)が欠陥素子であり、加算率を0とした場合の画素内の加算率を示し、(b)は、欠陥素子の(−1,1)とその対角検出素子(1,−1)の加算率を0とした加算率を示し、(c)〜(f)は外挿により加算率を算出した例を示す説明図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の加算率決定部における加算率決定処理の流れを示すフローチャートである。
図13】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の検出部における検出素子の配列例を示し、特に、検出素子の加算率を説明する説明図である。
図14】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の加算率決定部における他の加算率決定処理の流れを示すフローチャートである。
図15】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の検出部における検出素子の配列例を示し、特に、検出素子の加算率を説明する説明図である。
図16】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の検出部における検出素子の配列例を説明する説明図であり、(a)は画素中に2つの欠陥素子を有する例であり、(b)及び(c)は、画素中に1つの欠陥素子を有する場合の例を示す。
図17図16のように検出素子が配列された場合の加算率の例を示し、(a)は欠陥素子周辺の検出素子の加算率を増加させた例であり、(b)は、欠陥素子の対角検出素子の加算率を0とした例を示す。
図18】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の検出部における検出素子の配列例を説明する説明図であり、(a)は画素中に2つの欠陥素子を有する例であり、(b)及び(c)は、画素中に1つの欠陥素子を有する場合の例を示す。
図19】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の検出部における検出素子の配列例を説明する説明図である。
図20】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の検出部における検出素子の配列例を説明する説明図である。
図21】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の検出部における検出素子の配列例を説明する説明図である。
図22】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の検出部における検出素子の配列例を説明する説明図である。
図23】本発明の第1の実施形態に係るX線検出器の検出部における検出素子の配列例を説明する説明図である。
図24】本発明の第2の実施形態に係るX線検出器の概略を示すブロック図である。
図25】本発明の第2の実施形態に係るX線検出器の信号処理部の概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明に係るX線検出器は、X線を検出する検出素子を二次元配列した検出素子群を複数有し、該検出素子群を1画素に対応させて複数配列した検出部と、前記検出素子の出力信号の加算率を決定する加算率決定部と、前記検出素子群に属する前記検出素子の出力信号を前記加算率に応じて加算することにより投影像の画素毎の信号値を算出する加算部と、前記画素と当該画素に対応する検出素子群に属する前記検出素子との位置関係を示す画素位置情報と、前記検出素子群に含まれる欠陥素子の位置を示す欠陥素子位置情報とを記憶した位置情報記憶部と、を備え、前記加算率決定部が、前記画素位置情報及び前記欠陥素子位置情報に基づいて、信号値を算出する画素に含まれる前記欠陥素子の出力信号の加算率と、信号値を算出する画素の中心に対して当該欠陥素子と対称に位置する対角検出素子の出力信号の加算率とを、同一かつ他の検出素子の加算率よりも低い値となるように決定し、他の前記検出素子の加算率を略同一の値となるように決定する。
【0012】
以下、より具体的に本発明の実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
以下、本発明の実施形態に係るX線検出器について図面を参照して説明する。本実施形態では、X線検出器をX線CT装置に適用した例について説明する。
【0013】
図1に示すように、X線CT装置は、撮影系としての、X線源100と、X線検出器111と、これらX線源100及び検出器111の検出部104(後述)を対向配置し所定の回転軸を中心に回転するガントリー回転部101と、ガントリー回転部101の開口内に配置された寝台天板103と、これら撮影系の動作に伴いX線検出器111が取得した信号を処理する信号処理部112とを備えている。
【0014】
X線源100は、例えば管電圧で加速した電子ビームをタングステンやモリブデンなどのターゲット金属に衝突させ、その衝突位置(焦点)からX線を発生させる。
【0015】
ガントリー回転部101は、X線源100及び検出部104を互いに対向配置し、所定の回転軸を中心に回転する。ガントリー回転部101の中央には、被検体102が挿入される開口が設けられ、この開口内に、被検体102が寝かせられる寝台天板103が配置されている。寝台天板103とガントリー回転部101とは、所定の方向に相対的に移動可能となっている。
【0016】
X線検出器111は、入射したX線フォトンを検出し、2つのエネルギー範囲に分別して計数を行うフォトンカウンティング方式の検出素子400が複数配置された検出部104と、検出素子400から出力される投影像を収集する信号収集部108とを備えている。X線検出器111の詳細は、後述する。
【0017】
信号処理部112は、演算部105、表示部106、制御部107、主記憶部109及び入力部110を備えている。
演算部105は、収集した信号に所定の演算処理を行うため、信号収集部108で収集した信号に対して補正処理を行う補正処理部1052と、マルチエネルギー画像等の再構成像を作成する再構成処理部1053とを有している。
を備える。
【0018】
表示部106は、演算部105により生成された再構成像などを表示する。制御部107は、X線源100の発生駆動源の動作を制御するX線制御部、X線検出器111の信号読み出し動作を制御する読み出し制御部、ガントリー回転部101の回転と寝台天板103の移動を制御する撮影制御部、及びこれら各部全体を制御する全体制御部を備えている。主記憶部109は、演算部105のける演算処理に用いられるパラメータやデー等を記憶している。入力部110は、X線CT装置における撮影条件等の入力を行う。
【0019】
演算部105及び制御部107は、その一部又は全部をCPU(中央処理装置)、メモリ及び主記憶部109を含むシステムとして構築することができ、演算部105及び制御部107を構成する各部の機能は、予め記憶部に格納されたプログラムをCPUがメモリにロードし、実行することにより実現することができる。また機能の一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)や FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアで構成することも可能である。
【0020】
以下の説明においては、特に説明しない限り、上述した撮影系、制御部10及び信号処理部112を構成する要素は、公知のX線CT装置が備える要素と同様の構成を有し、同様の機能を持つ。
【0021】
続いて、X線検出器111について説明する。
X線検出器111は、検出部104と、検出部104の各検出素子400からの出力信号を投影像として収集する信号収集部108を備えている。
【0022】
検出部104は、X線を検出する複数の検出素子400が二次元配列された検出素子群を投影像の1画素に対応させて複数配列したものであり、検出部104に含まれる各検出素子400は、所謂フォトンカウンティング方式の検出素子であり、入射したX線フォトンを検出し、例えば、2つのエネルギー範囲に分別して計数を行う。
【0023】
検出部104は、例えば、図2に示すように、複数の同一のサイズの検出素子400(図2中の実線)が、チャネル方向とスライス方向に2次元的に配置され、それぞれの方向で等間隔に配置された構造を成している。検出素子400は、チャネル方向と回転方向を、スライス方向と回転軸方向を夫々一致させて配置されている。
【0024】
図2の破線で示す矩形は、検出素子400を二次元配列した検出素子群(画素)410を示しており、検出素子群410は、投影像における1画素に対応するようになっている(以下、検出素子群410を画素410と称する)。図2に示す例では、画素410は、チャネル方向に3素子、スライス方向に3素子の計9個の検出素子400で構成される。一画素に対する検出素子400の個数は一例であり、本発明を限定するものではない。
なお、図2では、検出部104に配置された検出素子400の一部を示し、チャネル方向に7個、スライス方向に6個分を切り出して例として示したものである。
【0025】
検出部104は、X線源100を略中心とした円弧状に複数配置されており、ガントリー回転部101の回転に伴い、X線源100との位置関係を保ちながら回転する。なお、図1では、説明の便宜上、検出部104が8個配列された例を示しているが、実際の装置では、例えば40個程度配置されている。また検出部104の前面にはX線グリッド(図示せず)が設置されており、X線源100から照射されたX線のうち、被検体102などで散乱されたX線が、検出部104に入射するのを防止する。
【0026】
検出部104の各検出素子400は、例えば図3に示すように、検出層401を挟むように正負の電極402、403が設けられ、各電極に読み出し回路405が接続された構造を有している。本実施形態では、正の電極402が、各検出素子400間で共通する所謂共通電極である。
【0027】
検出層401は、例えばCdTe(テルル化カドミウム)、CdZnTe(カドミジンクテルル)、Si(シリコン)などの半導体材料から成る。X線は、矢印404で示すように、正の電極402側から検出層401に入射し、X線フォトンを検出してそのエネルギーに応じた量の電荷を生じる。
【0028】
図3に示すように、検出部104からのアナログ信号は、信号収集部108に入力される。収集部108は、読出し回路405、加算率決定部407、位置情報記憶部406、加算部408、及び処理制御部409を備えている。
【0029】
読出し回路405は、X線の入射をトリガとして読み出し、エネルギー分別とデジタル変換を行う。読出し回路405では、入射した電荷で生じた電気信号を発生させ、所定の閾値により複数のエネルギー範囲に分別する。このとき、発生した電気信号の波高や発生量は、入射したX線フォトンのエネルギーに依存するため、X線フォトンに応じたエネルギー範囲に分別できる。次に分別結果を受けて、エネルギー範囲毎に入射したX線フォトン数をデジタルカウントし、デジタル信号を得る。
【0030】
この分別方法は、例えば、2つのエネルギー範囲を、所定の閾値未満であるエネルギー範囲(以下、低エネルギー範囲と記す)か、所定の閾値以上のエネルギー範囲(以下、高エネルギー範囲と記す)かによって判別する。このような判別をサンプリング毎に行い、X線フォトンが入射したときに高エネルギー範囲と低エネルギー範囲に分別して、それぞれのX線フォトン数をビュー毎にデジタル信号でカウントする。
【0031】
分別方法の一例について、図4を参照して説明する。図4は、発生電荷で生じた電圧120を示すグラフであり、横軸128が時間、縦軸129が電圧を示す。図示する例では、サンプリング時間123中にX線が入射してパルス出力121を生じ、サンプリング時間125中にX線が入射してパルス出力122を生じている。なお図4では、サンプリングはX線が入射するタイミングだけでなく、X線が入射しない場合(サンプリング時間124)でも周期的に行われる場合を示したが、X線フォトンが入射したタイミングでサンプリングが行われる場合も在り得る。
【0032】
読み出し回路405は、サンプリング毎に、その区間における出力電圧の最大値と、エネルギー閾値126とエネルギー閾値127と比較して分別する。このエネルギー閾値126は、入射したX線フォトンが高エネルギー範囲か低エネルギー範囲かに分別するものである。エネルギー閾値127は、X線フォトンの入力無しかを判定するものである。ここで出力電圧120は、X線が入力しないときにも検出部104の回路ノイズによって変動しているため、これをX線による信号と誤検出しないためには、エネルギー閾値127はゼロより大きな値が必要である。
【0033】
これらのエネルギー閾値を用いることで、例えば図4のサンプリング時間124では、出力電圧120はエネルギー閾値127以下のため、「X線フォトンの入力無し」と判断する。また、サンプリング時間125では、出力電圧120はエネルギー閾値126よりも大きいため、高エネルギー範囲のX線の「入射有り」と判断する。またサンプリング時間123では、出力電圧120はエネルギー閾値127よりも大きいがエネルギー閾値126以下のため、低エネルギー範囲のX線が入射したと判断する。以上のようにして、入射の有無とエネルギー範囲の分別を行う。
なおサンプリングでの最大値を用いて分別を行う代わりに、例えば、サンプリング中の出力電圧の積分値を用いてもよく、分別手法は上記手法に限定されない。
【0034】
位置情報記憶部406は、画素と当該画素に対応する検出素子群に属する検出素子との位置関係を示す画素位置情報と、検出器104が備える複数の検出素子に含まれる欠陥素子(欠陥を有する検出素子)の位置を示す欠陥素子位置情報とを記憶している。すなわち、画素位置情報とは、画素410毎に、何れの検出素子400が当該画素410のどこに位置しているかを示す情報であり、欠陥素子位置情報とは、欠陥素子が何れの検出素子群(画素)410に属し、当該画素410のどこに位置しているかを示す情報である。画素位置情報及び欠陥素子位置情報は、位置情報記憶部406に予め記憶させておくことができる。
【0035】
図5図7は、図2と同様に、検出部104の一部を示し、投影像の画素410と検出素子400の位置関係を示している。また、以下の説明において、図5図7に示す複数の検出素子のうち、検出素子400−1−4、400−5−2、400−4−5が欠陥素子であるものとする。
図6は、記憶部406に記憶された欠陥素子位置情報の一例を示し、図6(a)は、図5の検出素子400の配列において、正常な検出素子である場合は0、欠陥素子である場合は1として表現している。記憶部406は、欠陥素子位置情報として、例えば図6(b)の配列マップを記憶する。
【0036】
このような欠陥素子位置情報は、例えば被写体を設けずにX線を当てた際に、検出素子400の出力を得て、出力値が基準値より小さい場合を欠陥として判断して作成する。先に述べたように本実施形態に係るX線CT装置ではエネルギー範囲毎に出力値を得るが、その一方でも基準値より小さい場合、欠陥と判断する。この作成は、装置が自動に行っても、人が判断して行っても良い。
【0037】
また検出素子400の出力を加算せずに得る場合は、画素中の検出素子数倍(本実施形態では9倍)のデータを出力する必要があるが、例えば、加算部にて画素中の1個の検出素子400の出力値のみ出力して投影像を作り、この選択した検出素子400を画素内で切り替えて、画素中の検出素子数個(本実施形態では9個)の投影像を得れば良い。ただし、ここに記す欠陥素子位置情報の作成方法や計測方法は一例であり、欠陥素子の位置を示すあらゆる情報を適用するができる。
【0038】
図7は、画素位置情報の一例を示し、図7(a)は、図5の検出素子400の配列において、画素の中心の検出素子400の場合は3、角の場合は1、それ以外の場合は2として表現したものである。
【0039】
記憶部406は、画素位置情報として、例えば図7(b)の配列マップを記憶する。このような画素位置情報は一例であり、例えば、位置毎に、該当する検出素子400の位置情報を座標情報として記憶することもできる。更に、座標に周期性がある場合は、数式などの形態で記憶することもできる。また、画素の中心位置を、例えば座標や数式などで与えるものであっても良い。
【0040】
加算率決定部407は、位置情報記憶部406に記憶された欠陥素子位置情報及び画素位置情報に基づいて、画素410に属する検出素子400の加算率を夫々決定する。つまり、画素位置情報及び欠陥素子位置情報に基づいて、信号値を算出する画素410に含まれる欠陥素子の出力信号の加算率と、信号値を算出する画素410の中心に対して当該欠陥素子と対称に位置する検出素子の出力信号の加算率とを、同一かつ他の検出素子の加算率よりも低い値となるように決定し、他の検出素子の加算率を略同一の値となるように決定する。
【0041】
ここで加算率とは、0以上の数であり、1の場合は全ての出力信号を使用する場合、0の場合は全ての出力信号を使用しない場合である。例えば、欠陥素子の出力信号を全て使用しない場合は0とすれば良く、正常な検出素子の出力信号を全て使用する場合は1とすれば良い。加算率を決定する手順、加算率の具体例及び画素毎の出力値算出方法については後述する。
【0042】
加算部408では、加算率決定部407において決定した加算率に従って、画素410に属する各検出素子400の出力信号を重み付け加算することにより、投影像の画素毎の出力値として、画素410の出力値を算出する。本実施形態においては、一例として、チャネル方向に3素子、スライス方向に3素子の計9個の検出素子400で構成される画素410を示した(図2参照)。従って、加算部8は、9個の検出素子400の出力信号を夫々重み付け加算することにより画素410の出力値として算出する。
【0043】
この重み付け加算は、例えば、画素410の出力値をRcell、その中の検出素子400−i−j(i,jは1から3の整数)の出力をr(i,j)とし、それらの重みである加算率α(i,j)とするとき、以下の数式(1)に従って算出することができる。
【0044】
【数1】
【0045】
ここで、M(Mは自然数)は1つの画素中のチャネル方向の検出素子数、N(Nは自然数)は1つの画素中のチャネル方向の検出素子数であり、本実施形態では、MもNも3である。
他の画素の出力値も同様に、その画素の中の検出素子400の出力値に対して加算率で重み付け加算して算出する。これらの重み付け加算は、エネルギー範囲毎に行う。
【0046】
処理制御部409は、上述の処理を行うために信号収集部108に含まれる各部の制御を行う。信号収集部108において算出した画素410の出力値は、投影像として、演算部105に出力される。
【0047】
以上の構成を踏まえ、X線CT装置の一般的な撮影動作を説明する。なお、以下の説明において、説明の便宜上、フォトンのエネルギー範囲を2つとしているが、エネルギー範囲を3つ以上設けることができる。
まず撮影者が、入力部110から撮影条件を入力して実撮影の開始を入力すると、制御部107はX線源100からのX線の照射と、ガントリー回転部101を制御し撮影を開始する。
【0048】
このとき、例えば120kVの管電圧で電子ビームを加速してX線源100からX線が照射する。X線源100の焦点から照射されたX線は、寝台天板103に載った被検体300に向けて照射され、被検体300を透過したX線は検出部104で検出される。検出部104は、検出素子400毎に、入射X線のエネルギーに応じた電荷を発生する。信号収集部108は、前述したように、この電荷を高エネルギー範囲と低エネルギー範囲に分別し、エネルギー範囲毎及びビュー毎に、デジタルのカウント値を得る。更に投影像の画素毎に出力値を求め、演算部105に出力する。
【0049】
次に制御部107は、このような撮影を、ガントリー回転部101を回転方向に回転することで、被検体300に対するX線の照射角度を変化させる。このビューでも前ビューと同じように計測を行い、各エネルギー範囲でのカウント数として出力する。ここで、X線源100から発生されるX線は、ビューに同期したパルスX線でも良いし、連続X線でも良い。更にこのように回転駆動させながら、ビュー毎に焦点位置を変更させて撮影を繰り返し行い、360度分のデジタル信号を取得する。撮影は、例えば0.4度ごとに複数ビューの間、行う。このような撮影により、360度分の投影像を得ることができる。
【0050】
次いで、演算部105は、信号収集部108が収集した投影像に対し、所定の補正処理や演算処理を行い、マルチエネルギー投影像を作成する。補正処理では、例えばエア補正、演算処理では、例えば、密度画像作成、マルチエネルギー画像用投影像作成、再構成処理を行う。
【0051】
以下に、加算部408における加算方法の一例について図8のフローチャートに従って説明する。
図8に示すように、まずステップS110にて、加算部408は、加算率決定部407において撮影前に決定された加算率を読出す。これは、例えば、システムの立ち上げ時や、撮影開始の入力指示が行われ、実撮影を開始する前に行う。
【0052】
実撮影が開始されると、ステップS111では、加算部408が、読み出し回路405から1つのエネルギー範囲の1つの画素の全検出素子の出力を取得する。加算部408は、次のステップS112にて、加算率と検出素子の出力値から、1つのエネルギー範囲の1つの画素の出力値を求め、その結果を信号処理部112の演算部105に転送する。
【0053】
加算部408は、次のステップS113において、全てのエネルギー範囲の出力値を算出したかを判定する。判定結果がNOである場合、ステップS111に戻り、同一画素の検出素子であって、まだステップS112を行っていない他のエネルギー範囲の出力を読み出し回路405から得て、同様にステップS112における処理を行う。一方、ステップS113の判定結果がYESである場合には、次のステップS114に移行し、全ての画素の出力値を算出したかを判定する。
【0054】
ステップS114の判定結果がNOの場合、ステップS111に戻って同様に処理を行い、全エネルギー範囲の出力を読み出す。ステップS114の判定結果がYESの場合、処理を終了する。
【0055】
上記の加算方法は一例であり、例えば、本方法の処理の順番を異ならせたり、読み出しや演算を複数のデータ毎にまとめて行ったりすることもできる。また、処理を行うデータの単位が異なる場合であっても同世の処理を行うことができる。さらに、加算部408が、出力値を画素毎に信号処理部112に転送するのではなく、全画素全エネルギー範囲のデータを取得した後にまとめて信号処理部112へ転送することもできる。
【0056】
ここで、各検出素子の出力信号を重み付け加算して画素毎に出力値を得る場合における加算率α(i,j)とSNRの関係は以下のようになる。
すなわち、検出素子400−i−jの出力信号のSNR(snr(i,j)と記す)がすべて同一とし、重み付け加算後の画素の出力値のSNR(SNRcellと記す)とすると、これらは式(1)から、式(2)のような関係となる。
【0057】
【数2】
【0058】
(加算率決定方法について)
加算率決定部407における重み付け(加算率)の決定方法を、具体的に説明する。加算率の決定方法は、欠陥素子の有無とその位置によって異なる。
前提として、図5の画素410−1のように欠陥素子が無い場合、加算率は全ての検出素子400で1とする。一方、画素410−2、画素410−3、画素410−4のように欠陥素子が有る場合、加算率決定部407は欠陥素子の加算率を、正常な場合から1だけ低減して0とする。
【0059】
ところが、このままの加算率で重み付け合成を行うと、画素の出力値のサンプリング位置が画素中心からずれてしまう。つまり、例えば、画素410−4では、検出素子400−4−5が欠陥であるが、この画素の加算率を0とすると、サンプリング位置がチャネル方向に、検出素子400の1/9、画素の1/27だけずれる。ただしこの量は、検出素子間のすき間が無い場合の値である。
【0060】
サンプリング位置がずれてしまうと、以下のような影響が生じる。すなわち、例えば、被写体のエッジ付近などでは、隣接画素間で3倍程度出力が違う場合がある。この変化が指数的であると考え、サンプリング位置が検出素子400の1/9(画素の1/27)ずれた場合、出力は4%程度ずれてしまう。このようなずれは、特にX線CT装置では、アーチファクトの原因となる。
【0061】
このため、加算率決定部407は、欠陥素子の加算率を0とすると共に、サンプリング位置が画素の中心となるように、画素内の加算率の重心が中心となるように他の加算率を変更する。
ここで、加算率の重心とは、始点からそれぞれの検出素子400の中心へのベクトルとその加算率の積の総和を、その検出素子400の個数で規格化したものである。より具体的には、画素がN(Nは2以上の整数)個の検出素子から成り、検出素子k(kは1からNの整数)への始点からのベクトルをd(k)、その素子400の加算率をα(k)とする場合、加算率の重心Gは、式(6)のように表すことができる。
【0062】
【数3】
【0063】
ベクトルの始点を画素の中心にとる場合つまり、始点が画素の中心と重なる場合には、加算率の重心はゼロベクトルとなる。以下、このように、始点を画素の中心にとったこととして説明する。
【0064】
加算率の重心についての詳細を、図9を用いて説明する。図9は1つの画素内の9個の検出素子400を表し、記載された(i,j)(i,jは−1,0,1の整数)は、検出素子400間の長さを単位長さとしたときに、画素中心を原点とした際の座標を表す。またiはチャネル方向、jはスライス方向である。各検出素子400の加算率をα(i,j)とし、加算率の重心のチャネル方向の座標をx、スライス方向の座標をyとすると、それぞれは式(3)から、式(4−1)(4−2)(以下、併せて式(4)という)のように表すことができる。
【0065】
【数4】
【0066】
上記の画素410−1の場合は、全ての検出素子400は正常なので加算率は1となるので、加算率の重心(x,y)は(0,0)となり、画素の中心にあることが分かる。
【0067】
次に、欠陥素子が有る場合、加算率決定部407は、欠陥素子が画素のどの位置にあるかを判別し、画素内の検出素子400の位置に応じて加算率を決定する。欠陥素子が画素のどの位置にあるかについての判別は、記憶部406に記憶された欠陥素子位置情報及び画素位置情報に基づいて行う。
【0068】
具体的には、例えば、図6の欠陥位置情報では欠陥素子は1で表されているので、画素410−2には欠陥素子400−5−2があることが分かり、この検出素子400は図10の画素位置情報において数字が3であり、前述の定義から、画素の中心に位置することが分かる。
【0069】
次に、以下、欠陥素子の位置に応じて加算率を決定する例について、図10を用いて説明する。図10の検出素子400内に示す数字は欠陥素子が有る場合における各検出素子400の加算率を表す。また、以下において、正常な検出素子の加算率値1から低減した量を、加算率の低減量と定義する。すなわち、例えば、当該検出素子が欠陥素子であり、加算率を0とした場合、加算率の低減量は1となる。同様に、正常な検出素子の加算率値1から増加した量を、加算率の増加量と定義する。
【0070】
(欠陥素子が画素の角にある場合)
この場合は、例えば図6(a)における画素410−3は、検出素子400−1−4が欠陥素子であり、欠陥素子が画素410−3の角に位置している。これは図9における(−1,1)が欠陥素子の場合に相当する。従って、欠陥素子400−1−4の加算率のみを0とする、すなわち低減量と1とする場合、加算率の重心(x,y)は(1/9,−1/9)となり、画素の中心とならない。
【0071】
そこで、加算率の重心を画素中心に合致させるために、加算率決定部407は、図10に示すように、画素内において欠陥素子400−1−4の画素中心(図10では検出素子400−2−5)に対して対称な位置にある対角検出素子である検出素子400−3−6(図10中、破線で示す検出素子)の加算率も、同様に低減量を1として加算率を0にする。
【0072】
すなわち対角検出素子の加算率の低減量を、欠陥素子400−1−4と同一にする。このように加算率を決定することにより、加算率の重心(x,y)は(0,0)となり、画素中心と一致させることができる。
【0073】
このような方法は、所謂外挿を用いた方法よりも、SNRの点で優れる。図11(a)は、図9における(−1,1)が欠陥素子であり、加算率を0とした場合の画素内の加算率を示し、図11(b)は、図9の欠陥素子の(−1,1)とその対角検出素子(1,−1)の加算率を0とした場合の加算率を示している。このように加算率を定めた場合、欠陥素子が無く、全ての検出素子400の加算率が1の場合に対して、図11(a)の場合は5.7%、図11(b)の場合は11.8%、それぞれSNRが低下する。
【0074】
一方、図11(c)〜(f)に示す外挿により求めた加算率の場合、SNRの低下の程度は以下のようなる。図11(c)は、斜め方向に、(0,0)と(1,−1)の検出素子400の出力値を用いて、外挿により(−1,1)の欠陥素子の出力値を推定した場合の加算率である。このような加算率になることは、(0,0)の検出素子の出力値P(0,0)と(1,−1)の検出素子の出力値P(1,−1)から(−1,1)の検出素子の出力値P(−1,1)を推測するとき、出力値P(−1,1)の出力値は、以下の式(5)のように表すことができ、(0,0)の加算率を2だけ増加し、(1,−1)の加算率を1だけ低減する必要があることからも理解できる。また外挿を行った場合でも、対角検出素子の加算率は欠陥素子と同じ0となり、加算率の重心が画素の中心と一致する。
【0075】
【数5】
【0076】
図11(c)のような加算率の場合、欠陥素子が無く、全ての検出素子400の加算率が1の場合に対して22.5%ほどSNRが低下する。なお、SNRの低減率は、上述した式(2)から求めることができる。
【0077】
同様に、図11(d)は、同一行の(0,1)と(1,1)の検出素子400を用いて、外挿にて(−1,1)の出力値を求めた場合の加算率を示す。図11(e)は、同一列の(−1,1)と(−1,−1)の検出素子400を用いて、外挿により(−1,1)の出力値を求めた場合の加算率を示す。これらの場合も、図11(b)と同様に、欠陥素子が無く、全ての検出素子400の加算率が1の場合に対して22.5%ほどSNRが低下する。
【0078】
同様に、図11(f)は、同一行、同一列、斜めのそれぞれの外挿をそれぞれ行って、それらを1/3ずつ足し合わせて欠陥素子の出力値を求めるときの加算率である。このとき、このとき(1,1)と(1,−1)と(−1,−1)の加算率は1/3だけ低減して2/3となり、(0,1)と(0,0)と(1,0)の加算率は2/3だけ増加して5/3となる。この場合、欠陥素子が無く、全ての検出素子400の加算率が1の場合に対して12.2%だけ、SNRが低下する。
【0079】
以上述べた本実施形態におけるX線検出器の加算率決定部407において決定された加算率によって重み付け加算をして画素毎に出力値を算出した場合、所謂外挿よって定めた加算率を適用した場合に比して画素の出力値に対するSNRの低減を抑えることができる。
【0080】
これは、欠陥素子と対角検出素子以外の検出素子400の加算率が、同一である場合に、最も良好に低減を抑制できる。このように、本実施形態における加算率決定部407では、欠陥素子及び対角検出素子の加算率を、正常な検出素子の加算率に対して同じだけ低減し、他の検出素子400の加算率は一律に略同一の値、つまり、概ね一律とする。これにより、加算率の重心と画素の中心とを一致させ、SNRの低減を抑制することができる。なお、略同一の値、乃至は概ね一律とは、例えば加算率の違いが±10%以内程度の場合をいう。
【0081】
(欠陥素子が画素の角以外かつ中央以外にある場合)
例えば、図6(a)における画素410−4のように、検出素子400−4−5が欠陥素子である場合は、図9における(−1,0)が欠陥素子である場合に相当する。
このような画素では、欠陥素子400−4−5の加算率のみを0とする、すなわち低減量と1とする場合、加算率の重心(x,y)は(1/9,0)となり、加算率の重心と画素の中心とが一致しない。
【0082】
そこで、欠陥素子400−4−5の周辺素子の加算率を増加する。本実施形態では、図10に示すように、検出素子400−4−4と検出素子400−4−6(実線の太線で記された検出素子)の加算率を0.5だけ増加する。すなわち、検出素子400−4−4と検出素子400−4−6の加算率を1.5(すなわち加算量0.5)、欠陥素子400−4−5の加算率を0(すなわち低減量1)、他の検出素子400の加算率を1とする。
【0083】
これは検出素子400−4−4と検出素子400−4−6の出力信号から内挿により検出素子400−4−5の出力信号を求めた場合と同じである。このように加算率を決定することで、加算率の重心(x,y)は(0,0)となり、画素中心と一致させることができる。
【0084】
(欠陥素子が画素の中心にある場合)
例えば、図6(a)における画素410−3のように、検出素子400−5−2が欠陥素子であるは、加算率の重心(x,y)は(0,0)であり、中心となる検出素子が欠陥素子そのものであるため、欠陥素子400−4−5の加算率のみを0とし、他の検出素子400の加算率は低減せずにそのままの値とする。
上記した例のように加算率を定めることで、投影像の画素410のサンプリング位置が実際の位置とずれることなく、各画素の出力値を算出することができる。
【0085】
上述の各検出素子に対する加算率の決定処理は、概ね以下のように行われる。
まず、(1)全ての検出素子の加算率を1とし、全ての欠陥素子の加算率を1だけ低減する。次に、(2)欠陥素子の位置を欠陥素子位置情報に基づいて、画素中の角、中央、それ以外のどの位置にあるか判定する。続いて、(3)欠陥素子の位置が画素中の角の場合、対角検出素子の位置を決定し、対角検出素子が欠陥素子でない場合にはその加算率を1だけ低減する。欠陥素子の位置が画素中の角以外かつ中央以外の場合は、同一画素の周辺素子にて欠陥素子の出力を内挿するように、欠陥素子の周辺素子の加算率を増加させる。ただし、周辺素子が欠陥素子である場合などは、周辺素子にて欠陥素子の出力を内挿できない場合も有り得る。この場合は、欠陥素子の周辺素子の加算率は増加させずに、対角検出素子の加算率を1だけ低減する。
【0086】
これらの工程は、欠陥素子が複数ある場合、上記(2)と(3)の処理を、全欠陥素子に対して繰り返すことで、加算率を決定することができる。
上記した例では、欠陥素子の低減量と、欠陥素子の位置が画素中の角の場合の対角検出素子の低減量とを1とする例について説明したが、例えば、低減量を0より大きく1未満の値とすることもできる。そして、この場合にも、加算率の低減量を、対角検出素子と欠陥素子とで同一にする。
【0087】
以下、より詳細に、加算率決定部407において加算率を決定する処理について、図12のフローチャートを用いて説明する。
加算率を決定するために、まずステップS200において、加算率決定部407は、全検出素子の加算率を1とし、ステップS201に進み、全欠陥素子の加算率を1だけ低減する。このとき、検出素子が欠陥素子であるかの判定は、記憶部406に記憶された欠陥素子位置情報、すなわち、例えば、図6の配列マップに基づいて決定する。
【0088】
次に、ステップS202において、画素中の何れの位置に欠陥素子が位置するかの判別を行う。これは、記憶部406に記憶された欠陥素子位置情報及び画素位置情報に基づいて、すなわち、例えば図6及び図7に示す配列マップを用いて決定する。欠陥素子の位置を判別した結果、検出素子が画素の角にある場合は次のステップS203に進み、欠陥素子が画素の中心及び角以外にある場合はステップS205に進み、欠陥素子が画素の中心である場合はステップS209に進む。
【0089】
ステップS203では、欠陥素子の対角検出素子が欠陥素子であるかを判定し、対角にある検出素子が欠陥素子でない場合はステップS204に進み、欠陥素子の対角検出素子の加算率を1だけ低減し、次のステップS209に移行する。一方、ステップS203において、対角にある検出素子が欠陥素子であると判定された場合には、ステップS209に移行する。
【0090】
また、ステップS202において、検出素子が画素の中心及び角以外にある場合は、ステップS205〜S208にて、周辺素子にて欠陥素子の出力を内挿できるかどうかを判定して、加算率を決定する。具体的には、ステップS205では、欠陥素子と同一画素中において、欠陥素子の上下に検出素子があり、且つその上下の検出素子の双方が欠陥素子ではないことを判別する。これがYES、すなわち、欠陥素子と同一画素中であって上下に正常な検出素子がある場合は、ステップS206に進み、その欠陥素子の上下の検出素子の加算率を0.5だけ増加する。
【0091】
反対にステップS205の判定結果がNOの場合、すなわち、欠陥素子と同一画素中であり、その上下の少なくとも一方に正常な検出素子が無い場合は、ステップS207に移行する。ステップS207では、欠陥素子と同一画素中において、欠陥素子の左右に検出素子があり、かつその左右の検出素子の双方が欠陥素子ではないことを判別する。
【0092】
これがYES、すなわち、欠陥素子と同一画素中であって左右に正常な検出素子がある場合、ステップS208にて、その欠陥素子の左右の検出素子の加算率を0.5だけ増加する。反対にNOの場合、すなわち、欠陥素子と同一画素中であって、その左右の少なくとも一方に、正常な検出素子が無い場合、ステップS204にて、欠陥素子の対角検出素子の加算率を1だけ低減する。
【0093】
このような処理により、欠陥素子の上下の検出素子が正常な場合には、それらの出力から内挿にて欠陥素子の出力を求めることと同一となる。上下の検出素子の少なくとも一方が正常でない場合には、左右の検出素子を用いて、内挿にて欠陥素子の出力を求めることと同一となる。更に左右の検出素子にも、少なくとも一方が欠陥素子である場合は、欠陥素子が画素の角にある場合と同様に、対角検出素子の加算率を1だけ減らすことになる。
【0094】
次にステップS209にて、ステップS203で行った位置判定を全ての欠陥素子に対して行ったか判定する。行っていない場合、ステップS203に戻って、位置判定を行っていない次の欠陥素子に対して、ステップS203からステップS208を同様に行う。
【0095】
このようにして全ての欠陥素子に対して上記処理を行った場合、ステップS210にて移行して、加算率決定処理を終了する。以上の処理により、欠陥素子が複数存在する場合でも、全検出素子における加算率を決定することができる。
【0096】
上記した欠陥素子に隣接する検出素子の加算率を高める方法、すなわち周辺素子にて欠陥素子の出力を内挿できるかどうかを判定する方法は一例である。使用する周辺素子の増加量の重心が、欠陥素子の中心に位置するように決定すればよく、例えば、ステップS205とステップS207の判定の順序を異ならせることもでき、3つ以上の周辺素子で内挿できるか判定することもできる他、上下左右以外の他の周辺素子を用いることもできる。
【0097】
以上のように加算率決定部407により加算率を決定することで、故障などによって生じた欠陥素子によって、投影像の画素のサンプリング位置がずれて出力値がずれることを抑制し、延いてはアーチファクトが発生することを簡易に除去・低減することができ、正確な出力値を得ることができる。
【0098】
ところで、上述のように欠陥素子やその画素中心の対称位置の検出素子400の加算率を低下させると、欠陥素子を含む画素の出力値が低下する。従って、画素の加算率の合計を、画素毎に同一となるように、規格化する必要がある。このため、例えば、加算部408に規格化部を設け、規格化部において各画素に含まれる検出素子の出力信号に対する加算率を決定した後に、画素間の加算率の違いを規格化する。
【0099】
具体的には、例えば、画素に含まれる検出素子の加算率の合計で規格化することができる。すなわち、例えば、図10において、画素410−1の加算率の合計値は9であるので、加算部408が、上記の式(1)に示す加算方法により出力値を算出した後、規格化部により出力値を加算率の合計値としての9で除算する。同様に、例えば、画素410−2の加算率の合計値は8であるので、規格化部により出力値に対して加算率の合計である8で割る。このように規格化部は、加算部408で求めた画素の出力値に対して、すなわち投影像に対して規格化を行うことで、画素毎に使用する検出素子数が異なることに起因する画素毎の出力値の相違を補正することができる。
【0100】
この他、規格化部を設けずに、例えば、加算率決定部407において、各画素の加算率の合計が1となるように、各検出素子の加算率を予め決定しても良い。すなわち、例えば、図10において、画素410−1の加算率の合計値9を用いて、画素410−1に含まれる各検出素子の加算率を9で割って1/9とする、画素410−2の加算率の合計値8を用いて、画素410−2に含まれる各検出素子の加算率を8で割って1/8とすることができる。
【0101】
また、さらに他の方法として、演算部105における補正処理部1052において、エア補正と共に規格化に係る処理を行うことができる。
ここで、エア補正について簡単に説明する。エア補正とは、例えば、本撮影の事前に計測し作成して主記憶部109に保存しておいた感度・X線分布データを用いて、投影像をエネルギー範囲毎に除することで実現する。感度・X線分布データは、例えば、被検体を設けずにX線管100からX線を照射してエネルギー毎に投影像を取得し、投影像に対して検出素子400毎にビュー方向に加算平均を行い、検出部104での出力の平均値によって規格化することでエネルギー範囲毎に作成する。この補正処理は、それぞれのエネルギー範囲で取得した投影像毎に行う。
【0102】
また、他の例として、信号収集部108や演算部105が、欠陥素子と対角検出素子の加算率の低下分を規格化することもできる。これは、例えば正常な画素における検出素子の加算率の合計をS、欠陥素子のある画素における加算率の合計をTとするとき、欠陥素子がある画素の出力は、無い画素に比べてT/S倍の出力になるため、加算後の出力に対して、例えばS/T倍して規格化すれば良い。
【0103】
従って、例えば、補正処理部1052においてエア補正を行う際に、検出素子の感度が同一であるとき、規格化を行わない場合、当該検出素子に同一の線量が入力した際には、画素410−2の出力値は画素410−1の出力値の8/9倍になる。そして、感度・X線分布データにもおいても出力値の比は8/9倍となり、同様の重みがかかることになるため、エア補正を行うことで、同時に加算率も規格化されて画素410−1と画素410−2の出力を同一とすることができる。
【0104】
(加算率の決定を行うタイミングの他の例)
上記した第1の実施形態においては、加算率決定部40による加算率の決定を、撮影後、すなわち、投影像を作成する際に行う場合について説明した。加算率の決定は上記した例に限られず、例えば、撮影の事前に行うこともできる。このようにすることで、撮影後に、加算率を決定する必要が無く、撮影から投影像の完成までの時間を短縮することが可能となる。
【0105】
(欠陥素子の位置に応じた加算率決定方法の他の例)
上記した例では、欠陥素子が画素の角及び中央以外にある場合、欠陥素子の周辺素子の加算率を増加する例について説明したが、対角検出素子の加算率を低減しても良い。この場合、例えば、欠陥素子400−4−5と、その対角検出素子400−6−5の加算率を同程度低減すればよい。例えば、図13に、低減量が1であって加算率を0とする例を示す。なお、図13における検出素子400内の数字は加算率を示す。このようにすることで、加算率の重心(x,y)と画素の中心とを一致させることができる。
【0106】
上述の各検出素子に対する加算率の決定処理は、概ね以下のように行われる。
まず、(1)全ての検出素子の加算率を1とし、全ての欠陥素子の加算率を1だけ低減する。次に、(2)欠陥素子の位置を欠陥素子位置情報に基づいて、画素中の角、中央、それ以外のどの位置にあるか判定する。続いて、(3)欠陥素子の位置が画素中の角の場合、対角検出素子の位置を決定し、対角検出素子が欠陥素子でない場合にはその加算率を1だけ低減する。欠陥素子の位置が画素中の角以外かつ中央以外の場合は、欠陥素子位置が画素中の中央以外の場合、対角検出素子の位置を決定し、その加算率を1だけ低減する。
【0107】
以下、本例の加算率決定部407において加算率を決定する処理について、図14のフローチャートを用いて説明する。
図14に示すフローチャートでは、図12のフローチャートと同様にステップS300及びステップS301において、加算率決定部407は、全検出素子の加算率を1とし、ステップS201に進み、全欠陥素子の加算率を1だけ低減し、ステップS302の処理を行う。ステップS302では、欠陥素子が画素の中心に位置するか否かを判定する。
【0108】
ステップS302の判定結果がYES、すなわち欠陥素子が画素の中心に位置する場合には、ステップS305に進む。一方、ステップS302の判定結果がNO、すなわち欠陥素子が画素の中心にない場合には、ステップS303に移行し、欠陥素子の対角検出素子が欠陥素子であるかを判定する。
ステップS303の結果がNOの場合、すなわち欠陥素子の対角検出素子は正常な検出素子である場合はステップS304に移行して、欠陥素子の対角検出素子の加算率を1だけ低減し、その後にステップS309に移行する。
【0109】
一方、ステップS303の結果がYESの場合、すなわち欠陥素子の対角検出素子も欠陥素子である場合はステップS305に移行する。
次にステップS305では、全ての欠陥素子に対して位置判定を実施するように処理を反復する。このようにして全ての欠陥素子に実施した後に加算率決定処理を終了する。
このような処理は、上述した欠陥素子が画素の角及び中央以外にある場合に、欠陥素子の周辺素子の加算率を増加する例と比較すると、簡易な処理であり、SNRはやや劣るものの高速な処理に適している。
【0110】
SNRについて、例えば、欠陥素子が1つで、全ての検出素子400に一様にX線が入射した場合において、欠陥素子が画素の角及び中央以外にある場合に、欠陥素子の周辺素子の加算率を増加する例では、その画素のSNRは、全て正常の検出素子から成る画素に比べて約7.4%低下する。一方、欠陥素子が画素の角及び中央以外にある場合に、対角検出素子の加算率を低減する例では11.8%低下してしまう。
【0111】
従って、対角検出素子の加算率を低下して0にする方法は、検出素子400が画素の角にあるときなど、補間では加算率の重心を画素の中心にすることが難しいときに適用することが望ましい。
【0112】
なお、この他、例えば、欠陥素子が画素の角に位置するものの、隣接画素の検出素子を用いて加算率の重心が画素の中心となるように内挿により欠陥素子の出力信号の推定を行うことが可能な欠陥素子に対して、欠陥素子の周辺の検出素子の加算率を増加しても良い。すなわち、隣接の検出素子400から内挿して値を決定しても良い。ただし、加算率の重心を欠陥素子の中心にすることが難しい場合や、加算部408で隣接の画素の検出素子400の出力値を使用するのが難しい場合などには、欠陥素子の対角検出素子の加算率を低減する方が望ましい。
【0113】
このような場合の例としては、(1)加算部408の複数のブロック毎に回路が構成され、加算前に回路間でのデータのやり取りが困難である場合、(2)処理の遅延を生じる場合、(3)検出部104の端部の画素であることから、隣接の検出部104に属する検出素子の出力値を加算前にやり取りするのが困難である場合、(4)X線照射野の端部の画素で隣接画素はX線照射野外であって、隣接画素の検出素子を用いて内挿が実質的に難しい場合、(5)隣接画素まで距離があり隣接画素の検出素子を用いて内挿しても精度が低い場合、(6)実質的に挟む画素が存在しない場合、などが考えられる。
【0114】
また、欠陥素子が画素の中央にある場合、欠陥素子の加算率を1だけ低減して0にする例について説明したが、加算率の重心が画素の中心となるように加算率を定めれば、例えば、周辺の検出素子400から内挿して欠陥素子の値を求めるように、欠陥素子の周辺の加算率を増加することもできる。
【0115】
また、周辺の検出素子400の加算率を上げる場合は、画素内の欠陥素子以外の検出素子400の加算率が一律に近い方がSNRの低下は少なくなるが、画素内の欠陥素子以外の全ての検出素子400の出力値の平均から欠陥素子の出力値を求める場合、これは欠陥素子以外の画素内の全ての検出素子400の加算率が同一となり、最もSNRとして低減が少ない加算率の決定方法ということができる。
【0116】
(画素中の検出素子数の他の例)
以上の説明において、1つの画素の出力値を3×3個の検出素子から求めることとしたが、検出素子の数やその配列方法は種々考えられる。1画素を構成する検出素子が2個である場合には、一方の検出素子が欠陥素子であると、他方が対角検出素子となり、両者の加算率を0とすることにより画素の出力値が0となってしまう。従って、画素内の検出素子数は3個以上とすることが好ましい。
【0117】
SNRの観点からは、画素内の検出素子数が多いほど好ましい。例えば、図15に、画素410が6×6個の検出素子400から成る場合の例を示す。図15の例では、(2,2)の検出素子400を欠陥素子としている。
【0118】
この場合、欠陥素子のみの加算率を0とした場合、欠陥素子が無い場合に比べて、SNRは1.4%低下する。一方、欠陥素子と、対角検出素子(5,5)の加算率を0とした場合、欠陥素子が無い場合に比べて、SNRは2.8%低下する。
また、画素が3×3個の検出素子からなる場合には、SNRの低下が12%であった。
つまり、画素内の検出素子400の個数が多い場合は、欠陥素子と対角検出素子の両方の加算率を下げる方法を用いても、SNRの低下が小さく抑えられるということができる。
【0119】
(信号収集部108の搭載位置の他の例)
信号収集部108が回転部101に設けられている場合を記したが、一部が静止系に設けられていても良い。例えば、演算部105の一部であっても良い。
【0120】
(欠陥素子が画素中に複数個ある場合の例)
上述の例では、1画素を構成する複数の検出素子に、欠陥素子が1個だけ含まれる場合について説明した。1画素に、欠陥素子が複数含まれている場合には、例えば以下のように考えることができる。
【0121】
図16(a)において、(−1,1)と(0,1)の2つの検出素子400が欠陥素子であるとする。このとき、図16(a)は、図16(b)と図16(c)との組み合わせであると考えることができる。
図16(b)は、欠陥素子(−1,1)と、それに対して画素中心に対して対称な(1,−1)の検出素子400の加算率を1だけ低減する。
図16(c)は、欠陥素子の周辺の検出素子400である(−1,−1)と(1,−1)の加算率を0.5だけ増加する。このとき(1,−1)は、低減量が1で増加率が0.5となって、加算率は0.5(すなわち低減量0.5)となる。
【0122】
従って、図16(a)では、(1,−1)の検出素子400の加算率を0.5、(−1,−1)の検出素子400の加算率を1.5、(−1,1)の検出素子400の加算率を0、他の検出素子400の加算率を1とすれば良い。この時の加算率を図17(a)に示す。
【0123】
また、上述したように、図16(c)の場合に対して、対角検出素子である(1,0)の検出素子400の加算率を1下げて0としても良い。この時の加算率を図17(b)に示す。
【0124】
SNRの低下は、図17(a)の場合は14.8%であり、図17(b)の場合は25.5%となり、欠陥素子の周辺の検出素子の加算率を増加させる方が、SNRの低減が少ないことが分かる。
【0125】
また他の例として、図18(a)に示すように、1つの画素の、(−1,1)と(−1,0)の2つの検出素子400が欠陥素子である場合について考える。
同様に、図18(a)も、図18(b)と図18(c)との組み合わせであると考えることができる。
【0126】
図18(b)は、対角検出素子である(1,−1)の検出素子の加算率を1だけ低減する。
一方、図18(c)は、周辺素子である(−1,1)の検出素子400が欠陥素子であって内挿による推定ができないことから、図18(c)も、対角検出素子である(1,0)の検出素子の加算率を1だけ低減すれば良い。
【0127】
このように考えると、欠陥素子である(−1,1)(−1,0)と、対角検出素子である(1,0)(1,−1)の検出素子の加算率を0(すなわち低減量1)とし、他の検出素子400を1にすれば良い。
【0128】
更に、図19に、画素中心に対して対称な検出素子400同士が欠陥素子である例を示す。図19では、(−1,1)と(1,1)の検出素子が欠陥素子である。この場合は、欠陥素子のそれぞれの加算率を0とすれば、加算率の重心は画像の中心となっているので、他の検出素子に対して加算率を低減する必要はない。
このように、他の位置に2つの欠陥素子が有る場合や、3つ以上ある場合も、1つ1つに分けて、それらの組み合わせとして考えことで、加算率を低減する検出素子400を決定することができる。
【0129】
(欠陥素子の位置情報の他の例)
上記した例では、欠陥素子位置情報の例として図6に示す配列マップを挙げたが、この他、検出素子400が正常か欠陥かを示す数値や、配列マップの形状は種々考えられる。また、配列マップに限られず、例えば、欠陥素子のみ、または欠陥素子のみの、座標のような位置情報として記憶することもできる。なお、位置情報に加えて、欠陥素子と対応させて、当該欠陥素子の加算率を併せて記憶させておくこともできる。
【0130】
(対角検出素子の決定方法の他の例)
上述の例では、加算率を低減する対角検出素子の位置を、記憶部406に記憶した欠陥素子位置情報と、画素と検出素子400の位置関係を表す画素位置情報とに基づいて決定していた。画素位置情報としては、加算率を低減する対角検出素子の位置を、例えば、図20に示すような配列マップの形態で保存することもできる。
【0131】
図20は、欠陥素子が図6に示す位置に存在している場合の対角検出素子の位置を表す一例であり、太い矩形で示され検出素子内に「1」と示された検出素子400が対角検出素子である。欠陥素子の位置情報と同様に、様々な形態の配列マップや、例えば、座標のような位置情報などとして、記憶することもできる。
【0132】
また、加算率を低減する対角検出素子の位置情報を、欠陥素子位置情報と共に保存することもできる。すなわち、画素位置情報が欠陥素子位置情報を兼ねても良い。図21はその一例であり、欠陥素子の位置情報に、加算率を低減する対角検出素子を記したものと画素位置情報としている。図21において、加算率を低減する正常の検出素子400は2として示している。このとき加算率決定部407は、この欠陥素子の位置情報を読み込むことにより、同時に対角検出素子の位置情報を得ることができる。
【0133】
なお、図21において、正常な検出素子は0、欠陥素子は1、対角検出素子は2で区別して示したが、これは一例に過ぎない。
更に、欠陥素子の位置情報や画素位置情報は、欠陥素子や対角検出素子の位置情報だけでなく、加算率を有していても良い。図22はこの一例の画素位置情報であり、検出素子400内の数字は、加算率を表す。このとき加算率決定部407は、この欠陥素子の位置情報を読み込んで対角検出素子の位置と加算率を得れば、即座に全ての検出素子の加算率を決定できる。
【0134】
(加算率の決定方法の他の例)
欠陥素子の加算率を0としたが、例えば、0より大きく1未満の様々な値を適用することができる。このとき、各検出素子間において加算率の重心が画素の中心と一致させるために、画素中の検出素子400の大きさがすべて同一の場合、欠陥素子と対角検出素子の加算率に対する低減量を同じとする。
【0135】
また、上述の例では欠陥素子の加算率を、エネルギー範囲によらず同一としたが、欠陥素子の加算率の低減量をエネルギー範囲によって異ならせても良い。特に、フォトンカウンティング検出器では、例えば雑音が大きいため、低いエネルギー範囲では誤検出が多いため使用できないが、高いエネルギー範囲では正確に計数できる場合もある。
【0136】
このとき、低エネルギー範囲の加算率のみ0以上1未満に下げ、高エネルギー範囲の加算率は下げないように加算率を定めることもできる。また、高エネルギー範囲の加算率の低減量を、低エネルギー範囲の加算率の低減量よりも小さくなるように加算率を定めることもできる。
【0137】
この他、エネルギー範囲に応じて、対角検出素子の加算率の決定方法を異ならせても良い。例えば、図6(a)の画素410−4において、低エネルギー範囲では欠陥素子の周辺素子の加算率を増加させ、高エネルギー範囲では欠陥素子の対角に位置する検出素子の加算率を低減させることができる。このように、欠陥素子と対角検出素子の少なくとも一方の加算率が、エネルギー範囲に応じて異ならせることができる。
【0138】
(検出素子の配置及び形状の他の例)
本実施形態において、検出部104は、チャネル方向及びスライス方向のそれぞれに検出素子400が等間隔に配列された例を示したが、検出素子の配列が等間隔でない場合でも、上述の例と同様に加算率を決定することができる。また、検出素子400の形状についても必ずしも等方的な形状である必要はなく、非等方的な形状であっても、加算率の重心が画素の中心と一致するように加算率を決定することができる。そして、このようにすることで、処理時間、処理回路及び補間用データ等を増大させることなく、欠陥素子に対する補間の精度を向上させ、簡易にアーチファクトを抑制する
【0139】
(加算率の重心の他の計算方法)
上述の例では、加算率を用いて加算率の重心を算出、すなわち、式(3)を用いて算出した。加算率の重心は、加算率の低減量又は増加量からも算出することができる。この場合には、式(3)における検出素子400−k(kは1からNの整数)の加算率の低減量をβ(k)(=1−α(k))とすることにより、以下の、式(6)により加算率の重心を算出することができる。なお、低減量β(k)が負となった場合は、増加率を表すと見なせば良い。
【0140】
【数6】
【0141】
この式(6)は、全ての加算率が1の場合、加算率の重心は画素中心となりゼロベクトルとなることを利用して、式(3)から導出したものである。このような方法では、全ての検出素子を考える必要がなく、加算率を低減や増加する検出素子のみを考えれば良いので、計算がし易いという利点がある。
【0142】
(検出素子400のサイズが異なる場合の一例)
本実施形態では、画素を構成する検出素子がすべて同一の大きさである例について説明した。1画素を構成する検出素子の大きさは、必ずしもすべて同一である必要はなく、例えば、図23のように1画素に互いに異なる大きさの検出素子を混在させることもできる。
【0143】
この場合には、加算率の重心の求め方が異なる。1画素を構成する検出素子の大きさ、すなわち、面積がすべて同一である場合は、上述の式(3)に従って、始点からそれぞれの検出素子400の中心へのベクトルとその加算率の積の総和を、その検出素子400の個数で規格化することができる。
【0144】
しかしながら、検出素子の面積が一律でない場合、各検出素子の加算率に面積に応じた重み付けをする必要がある。すなわち、始点からそれぞれの検出素子の中心へのベクトルとその加算率の積に対して、面積の重み付けをする必要がある。従って、検出素子k(kは1からNの整数)の面積をS(k)、画素内の検出素子の全面積をSallとするとき、加算率の重心Gは、式(7)のように書ける。
【0145】
【数7】
【0146】
ここで面積S(k)に代えて、検出素子の面積比を用いても良い。このとき全面積Sallとして、面積比の合計を用いれば良い。このように考えると、図23の例では、欠陥素子である検出素子400−Aの加算率を0とする際には、(0,−1)と(1,−1)の検出素子の加算率も0とすれば良い。このとき、(0,−1)と(1,−1)の検出素子の面積の合計は、(0,−1)と(1,−1)の検出素子の間の空間411だけ検出素子400−Aよりも小さく見える。
【0147】
これは、例えば、検出素子が半導体材料で作製されている場合、空間411に入射したX線によって発生した電荷は、(0,−1)と(1,−1)の何れか一方の検出素子で検出されるため、空間411はおよそ0と考えることができる。従って、(0,−1)と(1,−1)の検出素子の面積の総和と検出素子400−Aの面積とは同一と見做すことができる。
【0148】
すなわち、画素内の検出素子が同じ大きさであれば、対角検出素子の加算率の低減量は欠陥素子と同じにする必要がある。一方、画素内の検出素子が同じ大きさでなければ、対角検出素子の加算率の低減量と面積との積が、欠陥素子の加算率の低減量と面積との積と同じとなるように対角検出素子の加算率の低減量を決める必要がある。
【0149】
言い換えると、欠陥素子と等しい面積に相当する対角検出素子の加算率の低減量を欠陥素子の加算率の低減量と同一にする場合、欠陥素子の面積と等しい面積になるように対角検出素子を選択する必要がある。つまり、対角検出素子の加算率の低減量は、欠陥素子の加算量の低減量に、欠陥素子の面積と対角検出素子の面積の比を乗じた値にする必要がある。この場合、低減量が1以上とならないように、対角検出素子の総面積が欠陥素子の面積と同一又は大きくなるように選択することが望ましい。更に別の言い方をすると、対角検出素子の面積は、欠陥素子の面積に、欠陥素子と対角検出素子の加算率の低減量の比を乗じた値にする必要がある。
【0150】
そして、このように1画素に含まれる検出素子の大きさが互いに異なる場合でも、画素内で、画素の中心に対して対称の位置の検出素子の大きさが同一の場合には、対称に位置する検出素子の加算率を低減する方法を用いることができる。
【0151】
なお、面積や面積比等の面積情報を考慮して加算率を決定するとき、例えば、以下のような手順で加算率を決定することができる。
(1)全ての検出素子の加算率を1とし、欠陥素子の加算率を1低減する。
(2)欠陥素子の位置が画素の何れに位置するか(角、中央、それ以外)を判定する。
(3)欠陥素子の位置が画素中の角の場合、対角検出素子の位置を決定し、欠陥素子の面積を対角検出素子の面積で除し、欠陥素子の加算率の低減量を乗じた分(=欠陥素子の面積÷対角検出素子の面積×欠陥素子の加算率の低減量)だけ、対角検出素子の加算率を低減する。欠陥素子の位置が画素中の角以外かつ中央以外の場合、周辺素子にて欠陥素子の出力を内挿するように、欠陥素子の周辺素子の加算率を増加させる。
(4)画素の加算率の合計値の違いを規格化する。
【0152】
上述の手順は、欠陥素子が複数ある場合、手順(2)と手順(3)とを、欠陥素子毎に繰り返すことで、加算率を決定できる。ここでは、手順(1)において全検出素子の加算率を1としたが、0より大きい値、且つ一律の値であれば良い。
【0153】
また、欠陥素子の位置が画素中の角以外かつ中央以外の場合に、対角検出素子の加算率を低減するとき、手順(3)に代えて以下の(3’)のようにすることが好ましい。
(3’)欠陥素子位置が画素中の中央以外の場合、対角検出素子の位置を決定し、欠陥素子の面積を対角検出素子の面積で割った値に欠陥素子の加算率の低減量を書けた分だけ、対角検出素子の加算率を低減する。
【0154】
(検出部の他の例)
本実施形態では、検出部104にX線を直接検出する半導体検出器を形容した例を示したが、例えば、シンチレータと半導体光検出器とから構成された検出器を適用することもできる。この場合には、X線を検出して光に変換し、半導体光検出器で光を電気信号に変換する。これらの変換をX線フォトン毎に行い、発生した電気信号にて、入射X線のエネルギーを分別する。
【0155】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態が、上述した第1の実施形態と異なる点は、X線検出器が、アナログ信号を加算した後にデジタル信号に変換する検出部104と信号収集部108とを備えた点であり、その一例として、所謂積分型のX線検出器を適用した例について説明する。
【0156】
図24に示すように、X線検出器111は、検出部104及び信号収集部108を備えている。信号収集部108は、処理制御部409、加算率決定部407、記憶部406、加算部408、アナログ−デジタル変換器414を備える。検出部104は、上述した第1の実施形態と同様の構成であるので、ここでの詳細な説明は省略する。また、加算率決定部407と記憶部406も第1の実施形態と同様であるのでここでの詳細な説明は省略する。
【0157】
加算部408は、複数のスイッチ412、複数の積分器143、及びスイッチ制御部415及びアナログ−デジタル変換器414を備えている。
【0158】
このような構成により、加算率決定部407で決定した加算率を実現するように、スイッチ制御部415が検出素子400毎にスイッチ412のオン/オフを決定し、オンとした検出素子400の電荷のみを積分器413が積分する。この積分によって、スイッチ412がオンである検出素子400の電荷が加算され、積分器413の出力電圧をデジタル−アナログ変換器414がデジタル信号に変換し、デジタル信号が演算部105に出力される。
【0159】
このように本実施形態では、スイッチ制御部415が、スイッチ412をオフすることで加算率0を、オンすることで加算率1を、それぞれ実現する。また加算率決定部407は、例えば実施形態1の場合と同様に、記憶部406に記憶された欠陥素子の位置情報を用いて、欠陥の検出素子とその対角検出素子の加算率を0(すなわち低減量1)に、他の検出素子の加算率を1に、それぞれ決定する。
【0160】
信号収集部108の構成部は、図25に示すように、処理制御部409によって制御される。すなわち、まず撮影の前に、記憶部406に記憶された欠陥素子の位置情報を用いて、加算率決定部407が加算率を決定するように制御する。次に、スイッチ制御部415を制御して加算率を実現し、後の撮影中も保持する。更に、実際の撮影の際には、積分器413でアナログ信号を積分し、アナログ−デジタル変換器414でデジタル信号に変化するように制御する。
【0161】
このような構成により、アナログ信号を加算した後にデジタル変換を行うX線検出器111を搭載するX線CT装置において、故障などによって生じた欠陥素子によって、投影像の画素のサンプリング位置がずれて出力値がずれてしまうこと、更にそのためにアーチファクトが発生することを簡単に除去・低減することができ、正しい出力値を得ることができる。
【0162】
(加算処理を行う検出素子数の他の例)
本実施形態では3つの検出素子毎に1つの積分器を設けたが、これに限られず、4個以上とすることもできる。また一次元方向のみの検出素子からの出力信号の加算に限らず、2次元的な方向での加算を行う場合も有り得る。
【0163】
(X線検出器の他の例)
本実施形態では、X線検出器111が積分型の場合を記したが、これは一例であり、本発明を限定するものではない。例えば、フォトンカウンティング方式の検出器であっても構わない。このときX線によって発生した電荷の積分とデジタル信号への変換は1つのX線フォトン毎に行う。更にX線検出器が、エネルギー分別型の検出器であっても良い。このとき、アナログ−デジタル変換器414にて、エネルギー分別とデジタル変換を行えば良い。
【0164】
(検出素子)のサイズが異なる場合の一例)
本実施形態では、画素を構成する検出素子がすべて同一の大きさである例について説明した。1画素を構成する検出素子の大きさは、必ずしもすべて同一である必要はない。上述した第1の実施形態と同様に、欠陥素子と対角検出素子のサイズが異なる場合、対角検出素子の加算率の低減量と面積との積が、欠陥素子の加算率の低減量と面積との積と同じとなるように対角検出素子の加算率の低減量を決めれば良い。
【0165】
本実施形態においては加算率を、スイッチ414のオンオフで実現するため、0または1しか実現できない。そのため本方法の適用は、欠陥素子と対角検出素子の面積比が整数比の場合が望ましい。ただし整数比でない場合でも、対角検出素子の加算率の低減量と面積との積が、欠陥素子の加算率の低減量と面積との積に近い値となるように対角検出素子の加算率の低減量を決めれば、加算率の重心は画素の中心に近づき、画素の出力値のずれは低減できる。
【0166】
(装置形態の他の例)
上述した第1及び第2の実施形態の例では、X線CT装置に、X線検出器を適用した例について説明したが、X線検出器111を単独で用いることができる他、他のX線撮影装置はもちろん、その他種々の装置に適用することができる。
【0167】
本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変形して実施することが可能である。更に、上記実施形態には様々な段階が含まれており、開示される複数の構成要素における適宜な組み合わせにより、多様な発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素が削除されても良い。その一例として、画像再構成処理を行わない装置や、X線源を有しない装置などが挙げられる。具体的には、X線画像診断装置、X線画像撮影装置、X線透視装置、マンモグラフィー、デジタルサブトラクション装置、X線検出器、放射線検出器等がある。
【0168】
更にX線や放射線に限らず、可視光や赤外線など、様々な波長のフォトンを検出する検出器や、それを搭載した検出装置、イメージング装置などである場合も有り得る。
【0169】
本発明によれば、複数の検出素子の出力を加算して投影像の画素の出力値を求めるX線検出器において、処理時間、処理回路及び補間用データ等を増大させることなく、欠陥素子によって画素のサンプリング位置がずれることで出力値がずれてしまうことを簡易に低減乃至は除去することができ、欠陥素子に対する補間の精度を向上させ、簡易にアーチファクトを抑制することができる。
【符号の説明】
【0170】
104・・・検出部、105・・・演算部、106・・・表示部、107・・・制御部、108・・・信号収集部、110・・・入力部、111・・・X線検出器、405・・・読み出し回路、406・・・記憶部、407・・・加算率決定部、408・・・加算部
図1
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