特許第6619273号(P6619273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619273
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】光電変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0747 20120101AFI20191202BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20191202BHJP
   H01L 31/0216 20140101ALI20191202BHJP
【FI】
   H01L31/06 455
   H01L31/04 262
   H01L31/04 240
【請求項の数】8
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-57951(P2016-57951)
(22)【出願日】2016年3月23日
(65)【公開番号】特開2017-174924(P2017-174924A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年9月20日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発 先端複合技術型シリコン太陽電池、高性能CIS太陽電池の技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100112715
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】酒井 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】東川 誠
(72)【発明者】
【氏名】辻埜 和也
(72)【発明者】
【氏名】鄒 柳民
(72)【発明者】
【氏名】肥後 輝明
(72)【発明者】
【氏名】松本 雄太
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0020342(US,A1)
【文献】 特開2001−267610(JP,A)
【文献】 特開2014−212339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型を有し、少なくとも一方の面にテクスチャ構造を有する半導体基板と、
前記半導体基板の一方の面に形成され、前記第1の導電型を有する第1の非晶質半導体層と、
前記半導体基板の面内方向において前記第1の非晶質半導体層に隣接して前記半導体基板の一方の面に形成され、前記第1の導電型と異なる第2の導電型を有する第2の非晶質半導体層と、
前記第1の非晶質半導体層上に配置された第1の電極と、
前記第2の非晶質半導体層上に配置された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間において、前記半導体基板の一方の面に形成された反射防止層とを備え
前記反射防止層は、絶縁性の反射防止層であり、更に、前記半導体基板の面内方向において、前記第1の電極の端部の上と前記第2の電極の端部の上とに配置されている、光電変換装置。
【請求項2】
前記第1および第2の電極の少なくとも一方は、透明導電膜と、前記透明導電膜よりも幅が狭い金属電極とを順次積層した構造からなる、請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記第1および第2の電極の各々は、金属からなるグリッド部と、金属からなるフィンガー部とを有し、
前記第1の電極のグリッド部および前記第2の電極のグリッド部は、前記半導体基板の端部に配置される、請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記第1の電極は、
前記第1の非晶質半導体層上に形成された第1の透明導電膜と、
前記半導体基板の面内方向において離間して前記第1の透明導電膜の端部側において前記第1の透明導電膜上に形成され、前記フィンガー部を構成する第1および第2の金属電極とを含み、
前記第2の電極は、
前記第2の非晶質半導体層上に形成された第2の透明導電膜と、
前記半導体基板の面内方向において離間して前記第2の透明導電膜の端部側において前記第2の透明導電膜上に形成され、前記フィンガー部を構成する第3および第4の金属電極とを含み、
前記反射防止層は、前記第1の透明導電膜の部と前記第1および第2の金属電極とを覆うとともに、前記第2の透明導電膜の部と前記第3および第4の金属電極とを覆う、請求項3に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記半導体基板と前記第1および第2の非晶質半導体層との間に配置されたi型非晶質半導体層を更に備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記第1および第2の電極の各々は、長さ方向において、複数の部分に離間されており、
前記反射防止層は、更に、前記第1の電極の長さ方向における前記第1の電極の前記複数の部分の隣接する部分間、および前記第2の電極の長さ方向における前記第2の電極の前記複数の部分の隣接する部分間に配置されている、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光電変換装置を備えた太陽光発電システム。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光電変換装置を備えたモバイル太陽電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光電変換装置に関する。なお、本明細書における光電変換装置は、光電変換素子、光電変換素子を用いた光電変換モジュール、および光電変換モジュールを備えた太陽光発電システムを含む広い概念での装置である。
【背景技術】
【0002】
従来、n型の結晶シリコン基板とp型の非晶質シリコン層との間に真性(i型)の非晶質シリコンを介在させて、界面での欠陥を低減し、ヘテロ接合界面での特性を改善させた光電変換装置が知られている。この光電変換装置は、ヘテロ接合型太陽電池と呼ばれている。
【0003】
特許文献1に記載されているヘテロ接合型太陽電池は、シリコン基板と、真性非晶質半導体層と、n型非晶質半導体層と、p型非晶質半導体層と、n電極と、p電極とを備える。
【0004】
真性非晶質半導体層、n型非晶質半導体層およびn電極がシリコン基板の一部の領域上に順次積層される。また、真性非晶質半導体層、p型非晶質半導体層およびp電極がシリコン基板の一部の領域と異なる領域上に順次積層される。
【0005】
ヘテロ接合型太陽電池においては、シリコン基板中で発生した多数キャリアである電子は、n型非晶質半導体層へ拡散し、n電極で収集される。また、少数キャリアである正孔は、p型非晶質半導体層へ拡散し、p電極で収集される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/133005号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のヘテロ接合型太陽電池においては、裏面から入射した光は、発電に寄与できないという問題がある。
【0008】
そこで、この発明の実施の形態によれば、裏面から入射した光が発電に寄与できる光電変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の実施の形態によれば、光電変換装置は、半導体基板と、第1の非晶質半導体層と、第2の非晶質半導体層と、第1の電極と、第2の電極と、反射防止層とを備える。半導体基板は、第1の導電型を有し、少なくとも一方の面にテクスチャ構造を有する。第1の非晶質半導体層は、半導体基板の一方の面に形成され、第1の導電型を有する。第2の非晶質半導体層は、半導体基板の面内方向において第1の非晶質半導体層に隣接して半導体基板の一方の面に形成され、第1の導電型と異なる第2の導電型を有する。第1の電極は、第1の非晶質半導体層上に配置される。第2の電極は、第2の非晶質半導体層上に配置される。反射防止層は、第1の電極と第2の電極との間において、半導体基板の一方の面に形成される。
【0010】
この発明の実施の形態による光電変換装置においては、半導体基板の表面のうち、第1および第2の非晶質半導体層が形成された面において、第1の電極と第2の電極との間に反射防止層が形成されているので、光が光電変換装置の裏面から反射防止層を介して半導体基板に入射する。
【0011】
従って、光電変換装置の裏面から入射した光が発電に寄与できる。
【0012】
好ましくは、第1および第2の電極の少なくとも一方は、透明導電膜と、透明導電膜よりも幅が狭い金属電極とを順次積層した構造からなる。
【0013】
光は、光電変換装置の裏面から反射防止層を介して半導体基板に入射するとともに、金属電極を除く透明導電膜を介して半導体基板に入射する。
【0014】
従って、光電変換装置の裏面から入射した光が発電に寄与する割合を大きくできる。
【0015】
好ましくは、第1および第2の電極の各々は、金属からなるグリッド部と、金属からなるフィンガー部とを有し、第1の電極のグリッド部および第2の電極のグリッド部は、半導体基板の端部に配置される。
【0016】
半導体基板のうち、光電変換特性が悪い周辺部にグリッド部が配置されるので、光電変換特性が良い半導体基板の中央部には、より多くの光が光電変換装置の裏面から入射する。
【0017】
従って、電変換素子の裏面から入射した光が発電に寄与する割合を大きくできる。
【0018】
好ましくは、第1の電極は、第1の非晶質半導体層上に形成された第1の透明導電膜と、半導体基板の面内方向において離間して第1の透明導電膜上に形成され、フィンガー部を構成する第1および第2の金属電極とを含む。また、第2の電極は、第2の非晶質半導体層上に形成された第2の透明導電膜と、半導体基板の面内方向において離間して第2の透明導電膜上に形成され、フィンガー部を構成する第3および第4の金属電極とを含む。そして、反射防止層は、更に、第1の透明導電膜の一部と第1および第2の金属電極とを覆うとともに、第2の透明導電膜の一部と第3および第4の金属電極とを覆う。
【0019】
透明導電膜、金属電極および反射防止層の積層構造が形成され、この積層構造においては、金属電極以外の領域からの入射光量が多くなる。
【0020】
従って、電変換素子の裏面から入射した光が発電に寄与する割合を大きくできる。
【0021】
好ましくは、光電変換装置は、半導体基板と第1および第2の非晶質半導体層との間に配置されたi型非晶質半導体層を更に備える。
【0022】
半導体基板とi型非晶質半導体層との界面におけるキャリアの再結合が抑制される。
【0023】
従って、光電変換装置の裏面から入射した光が発電に寄与する割合を更に大きくできる。
【発明の効果】
【0024】
光電変換装置の裏面から入射した光が発電に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明の実施の形態1による光電変換装置の構成を示す断面図である。
図2図1に示す光電変換装置の裏面側から見た平面図である。
図3図1に示す光電変換装置の製造方法を示す第1の工程図である。
図4図1に示す光電変換装置の製造方法を示す第2の工程図である。
図5図1に示す光電変換装置の製造方法を示す第3の工程図である。
図6図1に示す光電変換装置の製造方法を示す第4の工程図である。
図7】配線シートの平面図である。
図8図1に示す光電変換装置の裏面から見た別の平面図である。
図9】電極を形成するためのメタルマスクの平面図である。
図10】実施の形態2による光電変換装置の構成を示す断面図である。
図11図10に示す光電変換装置の裏面側から見た平面図である。
図12】実施の形態2による別の光電変換装置の構成を示す平面図である。
図13】実施の形態2による更に別の光電変換装置の構成を示す平面図である。
図14】実施の形態2による更に別の光電変換装置の構成を示す平面図である。
図15】実施の形態3による光電変換装置の構成を示す平面図である。
図16図15に示すn型非晶質半導体層を形成するためのメタルマスクの平面図である。
図17図15に示すp型非晶質半導体層を形成するためのメタルマスクの平面図である。
図18図15に示す透明導電膜を形成するためのメタルマスクの平面図である。
図19図15に示すフィンガー部およびグリッド部を形成するためのメタルマスクの平面図である。
図20】実施の形態3による別の光電変換装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0027】
この明細書においては、非晶質半導体層は、微結晶相を含んで良いものとする。微結晶相は、平均粒子径が1〜50nmである結晶を含む。
【0028】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による光電変換装置の構成を示す断面図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1による光電変換装置10は、半導体基板1と、パッシベーション層2,4と、反射防止層3,9と、n型非晶質半導体層5と、p型非晶質半導体層6と、電極7,8とを備える。
【0029】
半導体基板1は、例えば、n型単結晶シリコン基板からなる。半導体基板1は、例えば、100〜150μmの厚さを有する。そして、半導体基板1は、両方の表面にテクスチャ構造が形成されている。
【0030】
パッシベーション層2は、半導体基板1の一方の表面に接して配置される。
【0031】
反射防止層3は、パッシベーション層2に接して配置される。パッシベーション層2および反射防止層3が順次積層された表面(半導体基板1のZ軸の負方向の表面)を「受光面」と言う。
【0032】
パッシベーション層4は、半導体基板1の受光面と反対側の表面(裏面)に接して配置される。
【0033】
n型非晶質半導体層5は、パッシベーション層4に接して配置される。
【0034】
p型非晶質半導体層6は、半導体基板1の面内方向(X軸方向)においてn型非晶質半導体層5に隣接して配置される。より詳しくは、p型非晶質半導体層6は、半導体基板1の面内方向(X軸方向)においてn型非晶質半導体層5との間で所望の間隔を隔てて配置される。
【0035】
そして、n型非晶質半導体層5およびp型非晶質半導体層6は、半導体基板1の面内方向(X軸方向)に交互に配置される。
【0036】
電極7は、n型非晶質半導体層5上にn型非晶質半導体層5に接して配置される。
【0037】
電極8は、p型非晶質半導体層6上にp型非晶質半導体層6に接して配置される。
【0038】
そして、電極7,8は、Y軸方向に一繋がりになっている。
【0039】
反射防止層9は、電極7と電極8との間においてパッシベーション層4に接して配置される。
【0040】
パッシベーション層2は、例えば、i型非晶質半導体層およびn型非晶質半導体層が順次積層された構造からなる。
【0041】
i型非晶質半導体層は、i型非晶質シリコン、i型非晶質シリコンゲルマニウム、i型非晶質ゲルマニウム、i型非晶質シリコンカーバイド、i型非晶質シリコンナイトライド、i型非晶質シリコンオキサイド、i型非晶質シリコンオキシナイトライド、およびi型非晶質シリコンカーボンオキサイド等からなる。
【0042】
n型非晶質半導体層は、n型非晶質シリコン、n型非晶質シリコンゲルマニウム、n型非晶質ゲルマニウム、n型非晶質シリコンカーバイド、n型非晶質シリコンナイトライド、n型非晶質シリコンオキサイド、n型非晶質シリコンオキシナイトライド、およびn型非晶質シリコンカーボンオキサイド等からなる。
【0043】
反射防止層3は、例えば、シリコン窒化膜からなり、例えば、60nmの膜厚を有する。
【0044】
パッシベーション層4は、例えば、非晶質シリコン、非晶質シリコンの酸化物、非晶質シリコンの窒化物、非晶質シリコンの酸窒化物、および多結晶シリコンのいずれかからなる。
【0045】
パッシベーション層4が非晶質シリコンの酸化物からなる場合、パッシベーション層4は、シリコンの熱酸化膜からなっていてもよいし、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法等の気相成膜法によって形成されたシリコンの酸化物からなっていてもよい。
【0046】
パッシベーション層4は、例えば、1〜20nmの膜厚を有し、好ましくは、1〜3nmの膜厚を有する。そして、パッシベーション層4がシリコンの絶縁膜からなる場合、パッシベーション層4は、キャリア(電子および正孔)がトンネル可能な膜厚を有する。実施の形態1においては、パッシベーション層4は、i型非晶質シリコンからなるものとする。
【0047】
n型非晶質半導体層5は、n型の導電型を有し、水素を含有する非晶質半導体層である。n型非晶質半導体層5は、例えば、n型非晶質シリコン、n型非晶質シリコンゲルマニウム、n型非晶質ゲルマニウム、n型非晶質シリコンカーバイド、n型非晶質シリコンナイトライド、n型非晶質シリコンオキサイド、n型非晶質シリコンオキシナイトライド、およびn型非晶質シリコンカーボンオキサイド等からなる。
【0048】
n型非晶質半導体層5は、例えば、n型ドーパントとしてリン(P)を含む。そして、n型非晶質半導体層5は、例えば、3〜50nmの膜厚を有する。
【0049】
p型非晶質半導体層6は、p型の導電型を有し、水素を含有する非晶質半導体層である。p型非晶質半導体層6は、例えば、p型非晶質シリコン、p型非晶質シリコンゲルマニウム、p型非晶質ゲルマニウム、p型非晶質シリコンカーバイド、p型非晶質シリコンナイトライド、p型非晶質シリコンオキサイド、p型非晶質シリコンオキシナイトライド、およびp型非晶質シリコンカーボンオキサイド等からなる。
【0050】
p型非晶質半導体層6は、例えば、p型ドーパントとしてボロン(B)を含む。そして、p型非晶質半導体層6は、例えば、5〜50nmの膜厚を有する。
【0051】
電極7,8は、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)およびこれらの合金からなる。
【0052】
反射防止層9は、絶縁性の反射防止層であり、例えば、シリコン窒化膜からなる。そして、反射防止層9は、例えば、60nmの膜厚を有する。
【0053】
図2は、図1に示す光電変換装置10の裏面側から見た平面図である。図2の(a)を参照して、n型非晶質半導体層5およびp型非晶質半導体層6は、半導体基板1の面内方向(X軸方向)に交互に所望の間隔で配置される。
【0054】
電極7,8の各々は、半導体基板1の面内方向(Y軸方向)に一繋がりになっている。そして、電極7,8は、それぞれ、n型非晶質半導体層5およびp型非晶質半導体層6上に配置される。
【0055】
図2の(b)を参照して、反射防止層9は、半導体基板1の面内方向(X軸方向)において、電極7,8間に配置される。従って、半導体基板1の面内方向(X軸方向)における反射防止層9の両端部は、n型非晶質半導体層5の一部およびp型非晶質半導体層6の一部の上に配置される。
【0056】
図3から図6は、それぞれ、図1に示す光電変換装置10の製造方法を示す第1から第4の工程図である。
【0057】
図3を参照して、光電変換装置10の製造が開始されると、バルクのシリコンからワイヤーソーによって100〜300μmの厚さを有するウェハーを切り出す。そして、ウェハーの表面のダメージ層を除去するためのエッチングと、厚さを調整するためのエッチングとを行い、半導体基板1’を準備する(図3の工程(a)参照)。
【0058】
そして、半導体基板1’をNaOHおよびKOH等のアルカリ溶液(例えば、KOH:1〜5wt%、イソプロピルアルコール:1〜10wt%の水溶液)を用いてエッチングする。これによって、半導体基板1’の両面が異方性エッチングされ、ピラミッド形状のテクスチャ構造が形成される。これによって半導体基板1が得られる(図3の工程(b)参照)。
【0059】
その後、プラズマCVD法を用いて半導体基板1の受光面にi型非晶質シリコンおよびn型非晶質シリコンを順次堆積してパッシベーション層2を形成する(図3の工程(c)参照)。
【0060】
i型非晶質シリコンは、次のように形成される。半導体基板1の温度を130〜180℃に設定し、0〜100sccmの水素(H2)ガスおよび40sccmのシラン(SiH4)ガスを反応室に流し、反応室の圧力を40〜120Paに設定する。その後、RFパワー密度が5〜15mW/cm2である高周波電力(13.56MHz)を平行平板電極に印加する。これによって、i型非晶質シリコンが半導体基板1の受光面上に形成される。
【0061】
また、n型非晶質シリコンは、次のように形成される。半導体基板1の温度を130〜180℃に設定し、0〜100sccmのH2ガス、40sccmのSiH4ガス、および40sccmのホスフィン(PH3)ガスを反応室に流し、反応室の圧力を40〜120Paに設定する。その後、RFパワー密度が5〜15mW/cm2である高周波電力(13.56MHz)を平行平板電極に印加する。なお、PH3ガスは、水素によって希釈されており、PH3ガスの濃度は、例えば、1%である。これによって、n型非晶質シリコンがi型非晶質シリコン上に形成される。
【0062】
図3の工程(c)の後、スパッタリング法、EB(Electron Beam)蒸着およびTEOS法等を用いてパッシベーション層2に接してシリコン窒化膜を形成する。これによって、反射防止層3がパッシベーション層2上に形成される(図3の工程(d)参照)。
【0063】
図3の工程(d)の後、プラズマCVD法を用いてi型非晶質シリコンを半導体基板1の裏面上に堆積することによってパッシベーション層4を半導体基板1の裏面に形成する(図4の工程(e)参照)。なお、i型非晶質シリコンは、上述した条件を用いて半導体基板1の裏面上に堆積される。
【0064】
その後、パッシベーション層4上にメタルマスク30を配置する(図4の工程(f)参照)。メタルマスク30は、例えば、ステンレス鋼からなり、厚さが200μmであり、開口幅が400μmである。
【0065】
そして、プラズマCVD法によってn型非晶質シリコンをパッシベーション層4上に堆積することによってn型非晶質半導体層5をパッシベーション層4上に形成する(図4の工程(g)参照)。n型非晶質シリコンは、上述した条件を用いてパッシベーション層4上に堆積される。
【0066】
図4の工程(g)の後、メタルマスク31をパッシベーション層4およびn型非晶質半導体層5上に配置する(図5の工程(h)参照)。メタルマスク31は、メタルマスク30と同じ材料からなり、メタルマスク30と同じ開口幅および厚さを有する。
【0067】
そして、半導体基板1の温度を130〜180℃に設定し、0〜100sccmのH2ガス、40sccmのSiH4ガス、および40sccmのジボラン(B26)ガスを反応室に流し、反応室の圧力を40〜120Paに設定する。その後、RFパワー密度が5〜15mW/cm2である高周波電力(13.56MHz)を平行平板電極に印加する。なお、B26ガスは、水素によって希釈されており、B26ガスの濃度は、例えば、2%である。
【0068】
これによって、メタルマスク31によって覆われていないパッシベーション層4の領域にp型非晶質シリコンが堆積され、p型非晶質半導体層6がパッシベーション層4上に形成される(図5の工程(i)参照)。
【0069】
図5の工程(i)の後、メタルマスク31に代えてメタルマスク32をパッシベーション層4と、n型非晶質半導体層5およびp型非晶質半導体層6の一部の上とに配置する(図5の工程(j)参照)。メタルマスク32は、材質および厚さがメタルマスク30と同じである。
【0070】
そして、スパッタリング法、蒸着法およびイオンプレーティング法等を用いて、メタルマスク32によって覆われていない領域に電極を形成する。これによって、電極7,8がそれぞれn型非晶質半導体層5およびp型非晶質半導体層6上に形成される(図6の工程(k)参照)。
【0071】
その後、メタルマスク33を電極7,8上に配置する(図6の工程(l)参照)。メタルマスク33は、材質および厚さがメタルマスク30と同じである。
【0072】
そして、スパッタリング法およびプラズマCVD法等を用いて、メタルマスク33によって覆われていない領域にシリコン窒化膜を堆積して反射防止層9を形成する。これによって、光電変換装置10が完成する(図6の工程(m)参照)。
【0073】
光電変換装置10においては、光は、光電変換装置10の受光面(反射防止層3が形成された表面)から半導体基板1に入射するとともに、光電変換装置10の裏面(n型非晶質半導体層5およびp型非晶質半導体層6が形成された表面)の反射防止層9を介して半導体基板1に入射する。
【0074】
従って、半導体基板1中で光励起されるキャリア数が増加して短絡電流が向上し、光電変換装置10の裏面から入射した光が発電に寄与できる。
【0075】
図7は、配線シートの平面図である。図7を参照して、配線シート70は、絶縁基材710と、配線材71〜87とを含む。
【0076】
絶縁基材710は、電気絶縁性の材質であればよく、特に限定なく用いることができる。絶縁基材710は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリビニルフルオライド(PVF)およびポリイミド等からなる。そして、絶縁基材710は、太陽光を透過できるように透明であり、できるだけ透光性が高いことが好ましい。
【0077】
また、絶縁基材710の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは、25μm以上150μm以下である。そして、絶縁基材710は、1層構造であってもよく、2層以上の多層構造であってもよい。
【0078】
配線材71は、バスバー部711と、フィンガー部712とを有する。フィンガー部712は、その一方端がバスバー部711に接続される。
【0079】
配線材72は、バスバー部721と、フィンガー部722,723とを有する。フィンガー部722は、その一方端がバスバー部721に接続される。フィンガー部723は、バスバー部721に対してバスバー部721とフィンガー部722との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部721に接続される。
【0080】
配線材73は、バスバー部731と、フィンガー部732,733とを有する。フィンガー部732は、その一方端がバスバー部731に接続される。フィンガー部733は、バスバー部731に対してバスバー部731とフィンガー部732との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部731に接続される。
【0081】
配線材74は、バスバー部741と、フィンガー部742,743とを有する。フィンガー部742は、その一方端がバスバー部741に接続される。フィンガー部743は、バスバー部741に対してバスバー部741とフィンガー部742との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部741に接続される。
【0082】
配線材75は、バスバー部751と、フィンガー部752,753とを有する。フィンガー部752,753は、バスバー部751の長さ方向において隣接して配置され、その一方端がバスバー部751の同じ側においてバスバー部751に接続される。
【0083】
配線材76は、バスバー部761と、フィンガー部762,763とを有する。フィンガー部762は、その一方端がバスバー部761に接続される。フィンガー部763は、バスバー部761に対してバスバー部761とフィンガー部762との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部761に接続される。
【0084】
配線材77は、バスバー部771と、フィンガー部772,773とを有する。フィンガー部772は、その一方端がバスバー部771に接続される。フィンガー部773は、バスバー部771に対してバスバー部771とフィンガー部772との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部771に接続される。
【0085】
配線材78は、バスバー部781と、フィンガー部782,783とを有する。フィンガー部782は、その一方端がバスバー部781に接続される。フィンガー部783は、バスバー部781に対してバスバー部781とフィンガー部782との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部781に接続される。
【0086】
配線材79は、バスバー部791と、フィンガー部792,793とを有する。フィンガー部792,793は、バスバー部791の長さ方向において隣接して配置され、その一方端がバスバー部791の同じ側においてバスバー部791に接続される。
【0087】
配線材80は、バスバー部801と、フィンガー部802,803とを有する。フィンガー部802は、その一方端がバスバー部801に接続される。フィンガー部803は、バスバー部801に対してバスバー部801とフィンガー部802との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部801に接続される。
【0088】
配線材81は、バスバー部811と、フィンガー部812,813とを有する。フィンガー部812は、その一方端がバスバー部811に接続される。フィンガー部813は、バスバー部811に対してバスバー部811とフィンガー部812との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部811に接続される。
【0089】
配線材82は、バスバー部821と、フィンガー部822,823とを有する。フィンガー部822は、その一方端がバスバー部821に接続される。フィンガー部823は、バスバー部821に対してバスバー部821とフィンガー部822との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部821に接続される。
【0090】
配線材83は、バスバー部831と、フィンガー部832,833とを有する。フィンガー部832,833は、バスバー部831の長さ方向において隣接して配置され、その一方端がバスバー部831の同じ側においてバスバー部831に接続される。
【0091】
配線材84は、バスバー部841と、フィンガー部842,843とを有する。フィンガー部842は、その一方端がバスバー部841に接続される。フィンガー部843は、バスバー部841に対してバスバー部841とフィンガー部842との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部841に接続される。
【0092】
配線材85は、バスバー部851と、フィンガー部852,853とを有する。フィンガー部852は、その一方端がバスバー部851に接続される。フィンガー部853は、バスバー部851に対してバスバー部851とフィンガー部852との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部851に接続される。
【0093】
配線材86は、バスバー部861と、フィンガー部862,863とを有する。フィンガー部862は、その一方端がバスバー部861に接続される。フィンガー部863は、バスバー部861に対してバスバー部861とフィンガー部862との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部861に接続される。
【0094】
配線材87は、バスバー部871と、フィンガー部872とを有する。フィンガー部872は、その一方端がバスバー部871に接続される。
【0095】
配線材71は、フィンガー部712が配線材72のフィンガー部722と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0096】
配線材72は、フィンガー部722が配線材71のフィンガー部712と噛み合い、フィンガー部723が配線材73のフィンガー部732と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0097】
配線材73は、フィンガー部732が配線材72のフィンガー部723と噛み合い、フィンガー部733が配線材74のフィンガー部742と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0098】
配線材74は、フィンガー部742が配線材73のフィンガー部733と噛み合い、フィンガー部743が配線材75のフィンガー部752と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0099】
配線材75は、フィンガー部752が配線材74のフィンガー部743と噛み合い、フィンガー部753が配線材76のフィンガー部762と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0100】
配線材76は、フィンガー部762が配線材75のフィンガー部753と噛み合い、フィンガー部763が配線材77のフィンガー部772と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0101】
配線材77は、フィンガー部772が配線材76のフィンガー部763と噛み合い、フィンガー部773が配線材78のフィンガー部782と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0102】
配線材78は、フィンガー部782が配線材77のフィンガー部773と噛み合い、フィンガー部783が配線材79のフィンガー部792と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0103】
配線材79は、フィンガー部792が配線材78のフィンガー部783と噛み合い、フィンガー部793が配線材80のフィンガー部802と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0104】
配線材80は、フィンガー部802が配線材79のフィンガー部793と噛み合い、フィンガー部803が配線材81のフィンガー部812と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0105】
配線材81は、フィンガー部812が配線材80のフィンガー部803と噛み合い、フィンガー部813が配線材82のフィンガー部822と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0106】
配線材82は、フィンガー部822が配線材81のフィンガー部813と噛み合い、フィンガー部823が配線材83のフィンガー部832と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0107】
配線材83は、フィンガー部832が配線材82のフィンガー部823と噛み合い、フィンガー部833が配線材84のフィンガー部842と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0108】
配線材84は、フィンガー部842が配線材83のフィンガー部833と噛み合い、フィンガー部843が配線材85のフィンガー部852と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0109】
配線材85は、フィンガー部852が配線材84のフィンガー部843と噛み合い、フィンガー部853が配線材86のフィンガー部862と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0110】
配線材86は、フィンガー部862が配線材85のフィンガー部853と噛み合い、フィンガー部863が配線材87のフィンガー部872と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0111】
配線材87は、フィンガー部872が配線材86のフィンガー部863と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0112】
配線材71〜87の各々は、電気導電性のものであればよく、特に限定されない。配線材71〜87の各々は、例えば、Cu,Al,Agおよびこれらを主成分とする合金からなる。
【0113】
また、配線材71〜87の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上80μm以下が好適である。10μm未満では、配線抵抗が高くなり、80μmを超えると、光電変換装置10と貼り合わせるときに印加される熱によって配線材とシリコン基板との熱膨張係数の違いに起因してシリコン基板に反りが発生する。
【0114】
絶縁基材710の形状は、図7に示す形状に限定されず、適宜、変更可能である。また、配線材71〜87の表面の一部に、Ni,Au,Pt,Pd,Sn,InおよびITO等の導電性材料を形成してもよい。このように、配線材71〜87の表面の一部に、Ni等の導電性材料を形成するのは、配線材71〜87と光電変換装置10の電極7,8との電気的接続を良好なものとし、配線材71〜87の耐候性を向上させるためである。更に、配線材71〜87は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。
【0115】
電極7が配線材71のフィンガー部712に接続され、電極8が配線材72のフィンガー部722に接続されるように光電変換装置10を領域REG1上に配置し、電極7が配線材72のフィンガー部723に接続され、電極8が配線材73のフィンガー部732に接続されるように光電変換装置10を領域REG2上に配置する。以下、同様にして光電変換装置10を配線材73〜87上に配置する。これによって、16個の光電変換装置10が直列に接続される。そして、光電変換装置10の反射防止層9は、領域REG1においてフィンガー部712とフィンガー部722との間に配置され、領域REG2においてフィンガー部723とフィンガー部732との間に配置される。他の領域においても同様である。
【0116】
光電変換装置10の電極7,8は、接着剤によって配線材71〜87に接続される。接着剤は、例えば、半田樹脂、半田、導電性接着剤、熱硬化型Agペースト、低温硬化型銅ペースト、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)および絶縁性接着剤(NCP:Non Conductive Paste)からなる群から選択された1種類以上の接着材からなる。
【0117】
例えば、半田樹脂としては、タムラ科研(株)製のTCAP−5401−27等を用いることができる。
【0118】
絶縁性接着剤としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂およびウレタン樹脂等を用いることができ、熱硬化型および光硬化型の樹脂を用いることができる。
【0119】
導電性接着剤としては、錫およびビスマスの少なくとも一方を含む半田粒子等を用いることができる。より好ましくは、導電性接着剤は、錫と、ビスマス、インジウムおよび銀等との合金である。これにより、半田融点を抑えることができ、低温による接着プロセスが可能になる。
【0120】
上述したように、配線シート70上に配置した光電変換装置10を、ガラス基板上に配置されたエチレンビニルアセテート樹脂(EVA樹脂)と、PETフィルム上に配置されたEVA樹脂との間に配置する。そして、ラミネータ装置を用いて真空圧着によりガラス基板側のEVA樹脂を光電変換装置10に圧着させるとともに、PETフィルム側のEVA樹脂を光電変換装置10に圧着させた状態で125℃に加熱し、硬化させた。これにより、ガラス基板とPETフィルムとの間で硬化したEVA樹脂中に、配線シート70が付いた光電変換装置10が封止されることによって光電変換モジュールを作製することができる。
【0121】
そして、光電変換モジュールにおいては、光電変換装置10の反射防止層9は、上述したようにフィンガー部712,722間等に配置され、絶縁性基板710は、上述したように透光性である。従って、光電変換モジュールにおいては、光が裏面から光電変換装置10に入射し、その入射した光が発電に寄与できる。
【0122】
図8は、図1に示す光電変換装置10の裏面から見た別の平面図である。図8の(a)を参照して、電極7,8は、Y軸方向において、複数の部分に離間している。Y軸方向において隣接する電極7,7間の距離および電極8,8間の距離は、例えば、2mm以下に設定される。半導体基板1のキャリアの拡散長は、約2mmであるので、電極7,7間の距離および電極8,8間の距離は、キャリアの拡散長以下に設定される。
【0123】
図8の(b)を参照して、反射防止層9は、X軸方向における電極7,8間、Y軸方向における電極7,7間、およびY軸方向における電極8,8間に配置される。
【0124】
これによって、電極7の離間部分および電極8,8の離間部分からも光が光電変換装置10に入射して発電に寄与できる。
【0125】
従って、電極7,8がY軸方向に離間して配置された場合の方が、電極7,8がY軸方向に繋がっている場合よりも、裏面から入射した光が発電に寄与できる割合を大きくできる。
【0126】
これは、図8に示す電極7,8の配置パターンを有する光電変換装置10を配線シート70上に配置して作製した光電変換モジュールについても同様である。
【0127】
反射防止層9は、反射防止層9と半導体基板1との間に形成された非晶質半導体層との組み合わせでライフタイムを向上させることができる。即ち、反射防止層9と半導体基板1との間に形成された非晶質半導体層による化学的なパッシベーション効果と、反射防止層9を構成するシリコン窒化膜(SiNx、0<x≦4/3)による電界パッシベーション効果とによってキャリアのライフタイムが向上する。
【0128】
従って、反射防止層9を構成するシリコン窒化膜(SiNx)は、CVD法によって形成されたものであることが好ましい。
【0129】
このようにすることによって、反射防止層9と半導体基板1との間に形成された非晶質半導体層(i型非晶質半導体層)の膜厚を薄くして非晶質半導体層(i型非晶質半導体層)による短波長の光の吸収を低減し、短波長領域における外部量子効率を向上できる。
【0130】
図9は、電極7,8を形成するためのメタルマスクの平面図である。図9を参照して、メタルマスク100は、複数の開口部101を有する。メタルマスク100は、上述したメタルマスク30と同じ材質および厚さを有する。
【0131】
複数の開口部101の各々は、長方形を有する。そして、複数の開口部101の各々は、短辺の長さに対する長辺の長さの比であるアスペクト比として300以下を有する。このように、アスペクト比を300以下に設定することによって、開口部101の長方形の形状のように、角が角ばった形状の複数の電極7および複数の電極8を形成することができる。
【0132】
図8に示す電極7,8のパターンを形成する場合、図5の工程(j)において、メタルマスク100を配置し、電極7,8を形成する。
【0133】
なお、光電変換装置10においては、反射防止層9は、X軸方向における電極7の端部の上と電極8の端部の上とに配置されていてもよい。このようにすることによって、光電変換装置10を配線シート70等と接着する際に、導電性のゴミ等によって電極7,8が短絡するのを防止できる。
【0134】
[実施の形態2]
図10は、実施の形態2による光電変換装置の断面図である。図10を参照して、実施の形態2による光電変換装置10Aは、図1に示す光電変換装置10の電極7,8をそれぞれ電極7A,8Aに代えたものであり、その他は、光電変換装置10と同じである。
【0135】
電極7Aは、透明導電膜7aと、金属電極7bとを含む。透明導電膜7aは、n型非晶質半導体層5に接してn型非晶質半導体層5上に配置される。金属電極7bは、透明導電膜7aに接して透明導電膜7a上に配置される。そして、金属電極7bは、金属細線からなり、金属電極7bの幅は、少なくとも、半導体基板1の面内方向(X軸方向)における透明導電膜7aの幅よりも小さい。そして、好ましくは、金属電極7bの幅は、配線シート70のフィンガー部712,722等の幅以下である。金属電極7bの幅は、例えば、100μmである。
【0136】
金属電極7bの幅が、少なくとも、半導体基板1の面内方向(X軸方向)における透明導電膜7aの幅よりも小さければ、反射防止層9に加え、透明導電膜7aのうち、金属電極7bが配置された領域以外の領域からも、光が半導体基板1に入射し、発電に寄与できる割合を大きくできるからである。
【0137】
また、金属電極7bの幅が配線シート70のフィンガー部712,722等の幅以下であれば、光電変換装置10Aを配線シート70上に配置した構造からなる光電変換モジュールにおいて、反射防止層9に加え、透明導電膜7aのうち、金属電極7bが配置された領域以外の領域からも、光が半導体基板1に入射し、発電に寄与できる割合を大きくできるからである。
【0138】
上記のように、金属電極7bの幅は、入射光量を大きくするために、断線が生じず、直列抵抗が大きく上昇しない範囲で狭い方がよく、好ましくは、30μm以下である。
【0139】
電極8Aは、透明導電膜8aと、金属電極8bとを含む。透明導電膜8aは、p型非晶質半導体層6に接してp型非晶質半導体層6上に配置される。金属電極8bは、透明導電膜8aに接して透明導電膜8a上に配置される。そして、金属電極8bは、金属電極7bの金属細線と同じ幅を有する金属細線からなる。
【0140】
透明導電膜7a,8aの各々は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、ZnOおよびIWO(Indium Tungsten Oxide)等からなる。
【0141】
金属電極7b,8bの各々は、Al,Ag,Cu、およびこれらの合金からなる。そして、透明導電膜7a,8aとの密着性を向上させるために、透明導電膜7a,8aと金属電極7b,8bとの界面にTiを挿入してもよく、透明導電膜7a,8aと金属電極7b,8bとの界面をTi合金としてもよい。
【0142】
図11は、図10に示す光電変換装置10Aの裏面側から見た平面図である。図11を参照して、電極7Aは、半導体基板1の平面方向(X軸方向)において電極8Aと所定の間隔を隔てて配置される。そして、電極7A,8Aは、半導体基板1の平面方向(X軸方向)に交互に配置される。
【0143】
金属電極7b,8bは、それぞれ、透明導電膜7a,8aよりも狭い幅を有し、半導体基板1の面内方向(X軸方向)において透明導電膜7a,8aの略中央に配置される。
【0144】
反射防止層9は、電極7A,8A以外の領域に配置される。従って、反射防止層9は、パッシベーション層4(i型非晶質半導体層)に接する。
【0145】
光電変換装置10Aにおいては、光は、金属電極7b,8b以外の領域から半導体基板1に入射し、発電に寄与する。従って、光電変換装置10Aにおいては、裏面から入射する光が発電に寄与する割合を光電変換装置10よりも大きくできる。
【0146】
光電変換装置10Aは、図3から図6に示す工程(a)〜工程(m)に従って製造される。この場合、図5の工程(j)において、スパッタリング法を用いて透明導電膜7a,8aがそれぞれn型非晶質半導体層5およびp型非晶質半導体層6上に形成され、次に、蒸着法等によって金属電極7b,8bがそれぞれ透明導電膜7a,8a上に形成される。
【0147】
光電変換装置10Aを配線シート70に配置して光電変換モジュールを上述した方法によって作製する。そして、上述したように、配線シート70のフィンガー部712,722等以外の領域は、透光性であり、金属電極7b,8bの幅は、フィンガー部712,722等の幅以下であるので、光電変換装置10Aを用いた光電変換モジュールにおいても、裏面から入射した光が発電に寄与する割合を、光電変換装置を用いた光電変換モジュールよりも大きくできる。
【0148】
図12は、実施の形態2による別の光電変換装置の構成を示す平面図である。実施の形態2による光電変換装置は、図12に示す光電変換装置10A−1であってもよい。
【0149】
図12を参照して、光電変換装置10A−1は、光電変換装置10Aの電極8Aを金属電極8Bに代えたものであり、その他は、光電変換装置10Aと同じである。
【0150】
金属電極8Bは、p型非晶質半導体層6上に配置される。そして、金属電極8Bは、Al,Ag,Cu、およびこれらの合金からなる。
【0151】
光電変換装置10A−1においては、電極7Aおよび金属電極8B以外の領域には、反射防止層9が配置される。
【0152】
その結果、光電変換装置10A−1においては、光は、金属電極7b,8B以外の領域から半導体基板1に入射し、発電に寄与する。
【0153】
従って、裏面から入射した光が発電に寄与する割合を光電変換装置10よりも大きくできる。
【0154】
また、光電変換装置10A−1を配線シート70上に配置して作製した光電変換モジュールにおいても、裏面から入射した光が発電に寄与する割合を、光電変換装置10を用いた光電変換モジュールよりも大きくできる。
【0155】
図13は、実施の形態2による更に別の光電変換装置の構成を示す平面図である。実施の形態2による光電変換装置は、図13に示す光電変換装置10A−2であってもよい。
【0156】
図13を参照して、光電変換装置10A−2は、光電変換装置10Aの電極7Aを金属電極7Bに代えたものであり、その他は、光電変換装置10Aと同じである。
【0157】
金属電極7Bは、n型非晶質半導体層5上に配置される。そして、金属電極7Bは、Al,Ag,Cu、およびこれらの合金からなる。
【0158】
光電変換装置10A−2においては、金属電極7Bおよび電極8A以外の領域には、反射防止層9が配置される。
【0159】
従って、光電変換装置10A−2においては、光は、金属電極7B,8b以外の領域から半導体基板1に入射し、発電に寄与する。
【0160】
その結果、裏面から入射した光が発電に寄与する割合を光電変換装置10よりも大きくできる。
【0161】
また、光電変換装置10A−2を配線シート70上に配置して作製した光電変換モジュールにおいても、裏面から入射した光が発電に寄与する割合を、光電変換装置10を用いた光電変換モジュールよりも大きくできる。
【0162】
図14は、実施の形態2による更に別の光電変換装置の構成を示す平面図である。実施の形態2による光電変換装置は、図14に示す光電変換装置10A−3であってもよい。
【0163】
図14を参照して、光電変換装置10A−3は、光電変換装置10Aの電極7A,8Aをそれぞれ電極7C,8Cに代えたものであり、その他は、光電変換装置10Aと同じである。
【0164】
電極7Cは、複数の透明導電膜7cと、複数の金属電極7dとを含む。複数の透明導電膜7cは、半導体基板1の面内方向(Y軸方向)に離間して配置される。半導体基板1の面内方向(Y軸方向)において、隣接する2つの透明導電膜7c間の距離は、半導体基板1中のキャリアの拡散長よりも短く、例えば、2mm以下である。
【0165】
2本の金属電極7dは、1つの透明導電膜7c上に平行に配置される。半導体基板1の面内方向(X軸方向)において、2本の金属電極7dの配置領域の幅Wは、配線シート70のフィンガー部712,722等の幅以下である。
【0166】
電極8Cは、複数の透明導電膜8cと、複数の金属電極8dとを含む。電極8Cの構造は、電極7Cの構造と同じであり、電極7Cの説明において、透明導電膜7cを透明導電膜8cと読み替え、金属電極7dを金属電極8dと読み替えればよい。
【0167】
透明導電膜7c,8cの各々は、透明導電膜7aと同じ材料からなる。金属電極7d,8dの各々は、金属電極7b,8bと同じ材料からなる。
【0168】
光電変換装置10A−3においては、電極7C,8C以外の領域には、反射防止層9が配置される。
【0169】
従って、光電変換装置10A−3においては、光は、金属電極7d,8d以外の領域から半導体基板1に入射し、発電に寄与する。
【0170】
その結果、裏面から入射した光が発電に寄与する割合を光電変換装置10よりも大きくできる。また、1つの透明導電膜7c,8c上に2つの金属電極7d,8dが配置されるので、直列抵抗が低下し、曲線因子(F.F.)を向上できる。
【0171】
更に、光電変換装置10A−3を配線シート70上に配置して作製した光電変換モジュールにおいても、裏面から入射した光が発電に寄与する割合を、光電変換装置10を用いた光電変換モジュールよりも大きくできる。
【0172】
なお、光電変換装置10A−3は、光電変換装置10Aの電極7A,8Aのいずれかを電極7Cまたは電極8Cに代えたものであってもよく、光電変換装置子10A−1の電極7Aを電極7Cに代えたものであってもよく、光電変換装置10A−2の電極8Aを電極8Cに代えたものであってもよい。
【0173】
また、光電変換装置10A−3においては、n型非晶質半導体層5およびp型非晶質半導体層6のうち、幅が広い方の非晶質半導体層上に形成される電極を電極7Cまたは電極8Cによって構成したものであってもよい。
【0174】
更に、1つの透明導電膜7c,8c上に配置される金属電極7d,8dの本数は、2本に限らず、3本以上であってもよく、一般的には、複数本であればよい。但し、半導体基板1の面内方向(X軸方向)において、複数本の金属電極7dまたは複数本の金属電極8dの配置領域の幅は、配線シート70のフィンガー部712,722等の幅以下である。
【0175】
上記においては、光電変換装置10A,10A−1〜10A−3について説明した。従って、実施の形態2による光電変換装置は、n型非晶質半導体層5およびp型非晶質半導体層6の少なくとも1つの上に配置された電極が、透明導電膜および金属電極(金属細線)を順次積層した構造からなっていればよい。
【0176】
[実施の形態3]
図15は、実施の形態3による光電変換装置の構成を示す平面図である。図15を参照して、実施の形態3による光電変換装置10Bは、図1に示す光電変換装置10のn型非晶質半導体層5をn型非晶質半導体層5Aに代え、p型非晶質半導体層6をp型非晶質半導体層6Aに代え、電極7,8をそれぞれ電極7D,8Dに代えたものであり、その他は、光電変換装置10と同じである。
【0177】
n型非晶質半導体層5Aは、櫛形形状を有する。そして、n型非晶質半導体層5Aは、グリッド部51と複数のフィンガー部52とを有する。グリッド部51は、半導体基板1の面内方向(X軸方向)に沿って配置される。複数のフィンガー部52は、半導体基板1の面内方向(Y軸方法)に沿って配置される。複数のフィンガー部52の一方端は、グリッド部51に連結される。
【0178】
p型非晶質半導体層6Aは、櫛形形状を有する。そして、p型非晶質半導体層6Aは、グリッド部61と複数のフィンガー部62とを有する。グリッド部61は、半導体基板1の面内方向(X軸方向)に沿って配置される。複数のフィンガー部62は、複数のフィンガー部52と噛み合うように、半導体基板1の面内方向(Y軸方法)に沿って配置される。複数のフィンガー部62の一方端は、グリッド部61に連結される。
【0179】
n型非晶質半導体層5Aは、n型非晶質半導体層5と同じ材料からなり、n型非晶質半導体層5と同じ膜厚を有する。
【0180】
p型非晶質半導体層6Aは、p型非晶質半導体層6と同じ材料からなり、p型非晶質半導体層6と同じ膜厚を有する。
【0181】
電極7Dは、櫛形形状を有し、n型非晶質半導体層5A上に配置される。電極7Dは、透明導電膜7eと、フィンガー部7fと、グリッド部7gとを含む。透明導電膜7eは、n型非晶質半導体層5Aのフィンガー部52上に配置される。フィンガー部7fは、透明導電膜7e上に配置され、その一方端がグリッド部7gに連結される。グリッド部7gは、n型非晶質半導体層5Aのグリッド部51上に配置される。
【0182】
電極8Dは、櫛形形状を有し、p型非晶質半導体層6A上に配置される。電極8Dは、透明導電膜8eと、フィンガー部8fと、グリッド部8gとを含む。透明導電膜8eは、p型非晶質半導体層6Aのフィンガー部62上に配置される。フィンガー部8fは、透明導電膜8e上に配置され、その一方端がグリッド部8gに連結される。グリッド部8gは、p型非晶質半導体層6Aのグリッド部61上に配置される。
【0183】
透明導電膜7e,8eは、透明導電膜7a,8aと同じ材料からなる。フィンガー部7f,8fおよびグリッド部7g,8gは、金属電極からなり、上述した金属電極7b,8bと同じ材料からなる。
【0184】
なお、図15においては、反射防止層9が図示されていないが、反射防止層9は、透明導電膜7e,8e、フィンガー部7f,8fおよびグリッド部7g,8g以外の領域に配置される。
【0185】
フィンガー部7f,8fの幅は、少なくとも、半導体基板1の面内方向(X軸方向)における透明導電膜7e,8eの幅よりも小さい。好ましくは、フィンガー部7f,8fの幅は、配線シート70のフィンガー部712,722等の幅以下である。
【0186】
グリッド部7g,8gは、より詳細には、半導体基板1のうち、光電変換特性が半導体基板1の中央部における光電変換特性よりも悪い半導体基板1の周辺部に配置される。その結果、透明導電膜7e,8eは、半導体基板1の光電変換特性の良い領域に配置される。従って、光電変換装置10Bの裏面からの光を半導体基板1の光電変換特性の良い領域に入射させることができ、裏面からの入射光を効率的に光電変換することができる。
【0187】
図16は、図15に示すn型非晶質半導体層5Aを形成するためのメタルマスクの平面図である。
【0188】
図16を参照して、メタルマスク200は、開口部201を有する。開口部201は、櫛形形状を有する。メタルマスク200は、上述したメタルマスク30と同じ材料からなり、メタルマスク30と同じ厚さを有する。
【0189】
図17は、図15に示すp型非晶質半導体層6Aを形成するためのメタルマスクの平面図である。
【0190】
図17を参照して、メタルマスク300は、開口部301を有する。開口部301は、櫛形形状を有する。メタルマスク300は、上述したメタルマスク30と同じ材料からなり、メタルマスク30と同じ厚さを有する。
【0191】
図18は、図15に示す透明導電膜7e,8eを形成するためのメタルマスクの平面図である。
【0192】
図18を参照して、メタルマスク400は、開口部401A,401Bを有する。開口部401Aは、透明導電膜8eを形成するための開口部であり、開口部401Bは、透明導電膜7eを形成するための開口部である。メタルマスク400は、上述したメタルマスク30と同じ材料からなり、メタルマスク30と同じ厚さを有する。
【0193】
図19は、図15に示すフィンガー部7f,8fおよびグリッド部7g,8gを形成するためのメタルマスクの平面図である。
【0194】
図19を参照して、メタルマスク500は、開口部501A,501Bを有する。開口部501Aは、フィンガー部8fおよびグリッド部8gを形成するための開口部であり、開口部401Bは、フィンガー部7fおよびグリッド部7gを形成するための開口部である。メタルマスク500は、上述したメタルマスク30と同じ材料からなり、メタルマスク30と同じ厚さを有する。
【0195】
光電変換装置10Bは、図3から図6に示す工程(a)〜工程(m)に従って製造される。
【0196】
この場合、図4の工程(f)において、メタルマスク200がパッシベーション層4上に配置され、n型非晶質半導体層5AがプラズマCVD法によってパッシベーション層4上に形成される。
【0197】
また、図5の工程(h)において、メタルマスク300がパッシベーション層4およびn型非晶質半導体層5A上に配置され、p型非晶質半導体層6AがプラズマCVD法によってパッシベーション層4上に形成される。
【0198】
更に、図5の工程(j)において、メタルマスク400がパッシベーション膜4上と、n型非晶質半導体層5Aおよびp型非晶質半導体層6Aの一部の上とに配置され、スパッタリング法等によって透明導電膜7e,8eがそれぞれn型非晶質半導体層5Aのフィンガー部52およびp型非晶質半導体層6Aのフィンガー部62上に形成され、その後、メタルマスク500が透明導電膜7e,8e上に配置され、蒸着法等によって、フィンガー部7f,8fがそれぞれ透明導電膜7e,8e上に形成され、グリッド部7g,8gがそれぞれn型非晶質半導体層5Aのグリッド部51およびp型非晶質半導体層6Aのグリッド部61上に形成される。
【0199】
光電変換装置10Bにおいては、光は、フィンガー部7f,8fおよびグリッド部7g,8g以外の領域から半導体基板1に入射し、発電に寄与する。
【0200】
その結果、裏面から入射した光が発電に寄与する割合を光電変換装置10よりも大きくできる。
【0201】
また、光電変換装置10Bを配線シート70上に配置して作製した光電変換モジュールにおいても、裏面から入射した光が発電に寄与する割合を、光電変換装置10を用いた光電変換モジュールよりも大きくできる。
【0202】
図20は、実施の形態3による別の光電変換装置の構成を示す断面図である。実施の形態3による光電変換装置は、図20に示す光電変換装置10B−1であってもよい。図20を参照して、光電変換装置10B−1は、図10に示す光電変換装置10Aの電極7A,8Aをそれぞれ電極7E,8Eに代え、反射防止層9を反射防止層9Aに代えたものであり、その他は、光電変換装置10Aと同じである。
【0203】
電極7E,8Eは、それぞれ、n型非晶質半導体層5およびp型非晶質半導体層6上に配置される。
【0204】
電極7Eは、電極7Aの金属電極7bを金属電極7h,7iに代えたものであり、その他は、電極7Aと同じである。電極8Eは、電極8Aの金属電極8bを金属電極8h,8iに代えたものであり、その他は、電極8Aと同じである。
【0205】
金属電極7h,7i,8h,8iは、金属電極7b,8bと同じ材料からなる。
【0206】
金属電極7h,7iは、図15に示すフィンガー部7fを構成する。そして、金属電極7h,7iは、半導体基板1の面内方向(X軸方向)において、所定の間隔を隔てて透明導電膜7a上に配置される。
【0207】
金属電極8h,8iは、図15に示すフィンガー部8fを構成する。そして、金属電極8h,8iは、半導体基板1の面内方向(X軸方向)において、所定の間隔を隔てて透明導電膜8a上に配置される。
【0208】
反射防止層9Aは、電極7E,8E間において、パッシベーション層4と、n型非晶質半導体層5およびp型非晶質半導体層6の一部とに接するとともに、透明導電膜7a,8aの一部と、金属電極7i,7h,8i,8hとを覆う。
【0209】
光電変換装置10B−1においては、透明導電膜7a、金属電極7i,7hおよび反射防止層9Aが順次積層された構造、および透明導電膜8a、金属電極8i,8hおよび反射防止層9Aが順次積層された構造が形成される。
【0210】
このような構造を形成することによって、金属電極7i,7h,8i,8h以外の領域における入射光量を大きくすることができる。
【0211】
従って、光電変換装置10B−1の裏面側から半導体基板1に入射した光が発電に寄与する割合を高くできる。
【0212】
また、光電変換装置10B−1を用いた光電変換モジュールにおいて、裏面側から半導体基板1に入射した光が発電に寄与する割合を高くできる。
【0213】
上述した特性が向上している実施の形態1〜実施の形態3による光電変換装置のいずれかを備えることにより、太陽光発電システムの性能を向上させることができる。
【0214】
例えば、光電変換モジュールと、パワーコンディショナーと、分電盤と、電力メーターとを備えた太陽光発電システムにより、「ホーム・エネルギー・マネジメント・システム(HEMS:Home Energy Management System)」、「ビルディング・エネルギー・マネジメント・システム(BEMS:Building Energy Management System)」等の機能を付加することができる。これにより、太陽光発電システムの発電量の監視、太陽光発電システムに接続される各電気機器類の消費電力量の監視・制御等を行うことができ、エネルギー消費量を削減することができる。
【0215】
また、裏面からの入射光を有効に発電できるため、ユーザーの利用シーンに応じて、光電変換装置の表面が太陽光入射面になるシーン、または光電変換装置の裏面が太陽光の入射面になるシーンが想定される場合、光電変換装置を備えた、高性能なモバイル太陽電池システムを提供することが可能となる。
【0216】
例えば、手帳型のスマートフォンカバーのスマートフォンの画面と接する部分に光電変換装置を備えることで、ユーザーがスマートフォンを使用している(画面を見ている)シーンも、ユーザーがスマートフォンを操作していない(画面を見ていない)シーンも、効率よく発電することが可能となる。前記モバイル太陽電池システムは、リチウムイオンバッテリーを備えたシステムでもよく、USB端子等の充電用端子を備えたモバイル太陽電池システムであってもよい。USB端子等の充電用端子を備えていることで、光電変換装置が発電した電気を、ユーザーがスマートフォンを使用している(画面を見ている)シーンにおいても、ユーザーがスマートフォンを操作していない(画面を見ていない)シーンにおいても、スマートフォンに効率よく充電することができる。
【0217】
このように、上述した特性が向上している実施の形態1〜実施の形態3による光電変換装置のいずれかを備えることにより、モバイル太陽光発電システムの性能を向上させることができる。
【0218】
上記においては、半導体基板1は、両面にテクスチャ構造を有すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、半導体基板1は、少なくとも一方の面(裏面)にテクスチャ構造を有すればよい。
【0219】
また、上記においては、半導体基板1は、n型の導電型を有すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、半導体基板1は、p型の導電型を有していてもよい。
【0220】
上述した実施の形態1から実施の形態3によれば、この発明の実施の形態による光電変換装置は、次の構成を有する。
【0221】
(構成1)
この発明の実施の形態によれば、光電変換装置は、半導体基板と、第1の非晶質半導体層と、第2の非晶質半導体層と、第1の電極と、第2の電極と、反射防止層とを備える。半導体基板は、第1の導電型を有し、少なくとも一方の面にテクスチャ構造を有する。第1の非晶質半導体層は、半導体基板の一方の面に形成され、第1の導電型を有する。第2の非晶質半導体層は、半導体基板の面内方向において第1の非晶質半導体層に隣接して半導体基板の一方の面に形成され、第1の導電型と異なる第2の導電型を有する。第1の電極は、第1の非晶質半導体層上に配置される。第2の電極は、第2の非晶質半導体層上に配置される。反射防止層は、第1の電極と第2の電極との間において、半導体基板の一方の面に形成される。
【0222】
構成1によれば、半導体基板の表面のうち、第1および第2の非晶質半導体層が形成された面において、第1の電極と第2の電極との間に反射防止層が形成されているので、光が光電変換装置の裏面から反射防止層を介して半導体基板に入射する。
【0223】
従って、光電変換装置の裏面から入射した光が発電に寄与できる。
【0224】
(構成2)
構成1において、第1および第2の電極の少なくとも一方は、透明導電膜と、透明導電膜よりも幅が狭い金属電極とを順次積層した構造からなる。
【0225】
構成2によれば、光は、光電変換装置の裏面から反射防止層を介して半導体基板に入射するとともに、金属電極を除く透明導電膜を介して半導体基板に入射する。
【0226】
従って、光電変換装置の裏面から入射した光が発電に寄与する割合を大きくできる。
【0227】
(構成3)
構成1において、第1および第2の電極の各々は、金属からなるグリッド部と、金属からなるフィンガー部とを有し、第1の電極のグリッド部および第2の電極のグリッド部は、半導体基板の端部に配置される。
【0228】
構成3によれば、半導体基板のうち、光電変換特性が悪い周辺部にグリッド部が配置されるので、光電変換特性が良い半導体基板の中央部には、より多くの光が光電変換装置の裏面から入射する。
【0229】
従って、光電変換装置の裏面から入射した光が発電に寄与する割合を大きくできる。
【0230】
(構成4)
構成3において、第1の電極は、第1の非晶質半導体層上に形成された第1の透明導電膜と、半導体基板の面内方向において離間して第1の透明導電膜上に形成され、フィンガー部を構成する第1および第2の金属電極とを含む。また、第2の電極は、第2の非晶質半導体層上に形成された第2の透明導電膜と、半導体基板の面内方向において離間して第2の透明導電膜上に形成され、フィンガー部を構成する第3および第4の金属電極とを含む。そして、反射防止層は、更に、第1の透明導電膜の一部と第1および第2の金属電極とを覆うとともに、第2の透明導電膜の一部と第3および第4の金属電極とを覆う。
【0231】
構成4によれば、透明導電膜、金属電極および反射防止層の積層構造が形成され、この積層構造においては、金属電極以外の領域からの入射光量が多くなる。
【0232】
従って、電変換素子の裏面から入射した光が発電に寄与する割合を大きくできる。
【0233】
(構成5)
構成1から構成4のいずれかにおいて、光電変換装置は、半導体基板と第1および第2の非晶質半導体層との間に配置されたi型非晶質半導体層を更に備える。
【0234】
構成5によれば、半導体基板とi型非晶質半導体層との界面におけるキャリアの再結合が抑制される。
【0235】
従って、電変換素子の裏面から入射した光が発電に寄与する割合を更に大きくできる。
【0236】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0237】
この発明は、光電変換装置に適用される。
【符号の説明】
【0238】
1 半導体基板、2,4 パッシベーション層、3,9,9A 反射防止層、5,5A n型非晶質半導体層、6,6A p型非晶質半導体層、7,8,7A,8A、7C,8C,7D,8D,7E,8E 電極、7a,8a,7c,8c,7e,8e 透明導電膜、7b,8b、7B,8B,7d,8d,7h,7i,8h,8i 金属電極、7f,8f,52,62 フィンガー部、7g,8g,51,61 グリッド部、10,10A,10A−1,10A−2,10A−3,10B,10B−1 光電変換装置、70 配線シート、71〜87 配線材、100,200,300,400,500 メタルマスク、101,201,301,401A,401B,501A,501B 開口部、710 絶縁基材、711,721,731,741,751,761,771,781,791,801,811,821,831,841,851,861,871 バスバー部、712,722,723,732,733,742,743,752,753,762,763,772,773,782,783,792,793,802,803,812,813,822,823,832,833,842,843,852,853,862,863,872,873 フィンガー部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20