特許第6619274号(P6619274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619274
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】ボルテージレギュレータ
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20191202BHJP
【FI】
   G05F1/56 310F
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-58854(P2016-58854)
(22)【出願日】2016年3月23日
(65)【公開番号】特開2017-174116(P2017-174116A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕二
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−140113(JP,A)
【文献】 特開2007−187489(JP,A)
【文献】 特開2009−074850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の出力端子と第二の出力端子を備えたボルテージレギュレータであって、
前記第二の出力端子に設けられ、出力電圧に基づいた帰還電圧を出力する分圧回路と、
基準電圧と前記帰還電圧を比較する差動増幅器と、
ドレインが前記第一の出力端子に接続され、ソースに入力される電源電圧とゲートに入力される前記差動増幅器の出力電圧に基づく電圧から前記出力電圧を出力する出力トランジスタと、
前記差動増幅器の出力端子に設けられた位相補償回路及び位相補償容量テスト回路と、
前記第二の出力端子が負電圧になったことを検出すると検出信号を出力する負電圧検知回路と、を備え、
前記位相補償容量テスト回路は、前記負電圧検知回路の検出信号を受けて、前記位相補償回路の位相補償容量に充電された電荷を接地端子に放電する、
ことを特徴とするボルテージレギュレータ。
【請求項2】
ゲートが前記差動増幅器の出力端子に接続され、ドレインが前記出力トランジスタのゲートに接続された第一のトランジスタと、
前記第一のトランジスタのドレインに接続された第一の定電流回路と、を備え、
前記位相補償容量は、一端が前記第一のトランジスタのドレインに接続され、他端が前記位相補償容量テスト回路に接続された、
ことを特徴とする請求項1に記載のボルテージレギュレータ。
【請求項3】
前記位相補償容量テスト回路は、
前記差動増幅器の出力端子と前記位相補償容量の一端の間に設けられた第一のスイッチトランジスタと、
前記位相補償容量の一端と接地端子の間に直列に設けられた第二のスイッチトランジスタ及び第二の定電流回路と、を備え、
前記第一のスイッチトランジスタと前記第二のスイッチトランジスタのゲートは、前記負電圧検知回路の出力端子に接続され、
前記負電圧検知回路の検出信号を受けると、前記第一のスイッチトランジスタがオフし、前記第二のスイッチトランジスタがオンする
ことを特徴とする請求項2に記載のボルテージレギュレータ。
【請求項4】
前記位相補償容量は、一端が前記差動増幅器の出力端子に接続され、他端が前記位相補償容量テスト回路に接続された、
ことを特徴とする請求項1に記載のボルテージレギュレータ。
【請求項5】
前記位相補償容量テスト回路は、
前記位相補償容量の他端と前記出力トランジスタのドレインの間に設けられた第一のスイッチトランジスタと、
前記位相補償容量の他端と接地端子の間に直列に設けられた第二のスイッチトランジスタ及び第二の定電流回路と、を備え、
前記第一のスイッチトランジスタと前記第二のスイッチトランジスタのゲートは、前記負電圧検知回路の出力端子に接続され、
前記負電圧検知回路の検出信号を受けると、前記第一のスイッチトランジスタがオフし、前記第二のスイッチトランジスタがオンする
ことを特徴とする請求項4に記載のボルテージレギュレータ。
【請求項6】
前記位相補償容量テスト回路は、前記第二のスイッチトランジスタと前記第二の定電流回路の接続点に出力端子を設け、
ゲートが前記位相補償容量テスト回路の出力端子に接続され、ドレインが前記第一の出力端子に接続され、ソースが接地端子に接続された第二のトランジスタを備えた
ことを特徴とする請求項3または5に記載のボルテージレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テスト回路を有するボルテージレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
ボルテージレギュレータの重要特性は発振しないことである。
図5は、従来のボルテージレギュレータを示す回路図である。
従来のボルテージレギュレータ600は、差動増幅回路60と、位相補償回路である抵抗61と容量62と、電流源63と、分圧抵抗回路64と、PMOSトランジスタ65と、出力トランジスタ66と、基準電圧回路67を備えている。
位相補償回路は、形成するゼロ点を低周波数に発生させることで、応答性が良く、かつ、少ない出力容量でも安定動作させる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−62374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のボルテージレギュレータは、製造工程で実施されるテストにおいて、回路内部にある位相補償回路などは、酸化膜異常、コンタクト接続不良などの素子単体の不良を直接テストしずらいという課題があった。
例えば、位相補償回路にテスト端子を設けると、テスト用パッドによってチップ面積が大きくなったり、テスト用パッドによる寄生容量成分のため、位相補償回路の性能が損なわれる、と言う課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みて、テスト用パッドを新たに設けることなく、位相補償回路をテストすることが出来るボルテージレギュレータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来の課題を解決するため、本発明のボルテージレギュレータは以下のような構成とした。
第一の出力端子と第二の出力端子を備え、第二の出力端子に設けられ出力電圧に基づいた帰還電圧を出力する分圧回路と、基準電圧と帰還電圧を比較する差動増幅器と、ドレインが第一の出力端子に接続され、ソースに入力される電源電圧とゲートに入力される差動増幅器の出力電圧に基づく電圧から出力電圧を出力する出力トランジスタと、差動増幅器の出力端子に設けられた位相補償回路及び位相補償容量テスト回路と、第二の出力端子に設けられた負電圧検知回路と、を備え、負電圧検知回路は前記第二の出力端子が負電圧になったことを検出すると検出信号を出力し、位相補償容量テスト回路は負電圧検知回路の検出信号を受けて位相補償容量に充電された電荷を接地端子に放電する構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明のボルテージレギュレータによれば、位相補償回路に位相補償容量テスト回路と外部出力電圧調整端子に負電圧検出回路を備えたので、レギュレータとしての安定性を損ねることなく位相補償容量のテストが可能であり、テスト用パッドを追加する必要がないのでチップ面積が増加しない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第一実施形態のボルテージレギュレータの一例を示す回路図である。
図2】本発明の第一実施形態のボルテージレギュレータの他の例を示す回路図である。
図3】本発明の第二実施形態のボルテージレギュレータの一例を示す回路図である。
図4】本発明の2段増幅のボルテージレギュレータの一例を示す回路図である。
図5】従来のボルテージレギュレータを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態のボルテージレギュレータの一例を示す回路図である。
第一実施形態のボルテージレギュレータ100は、基準電圧回路17と、差動増幅回路10と、増幅段を形成するPMOSトランジスタ15と定電流回路13と、分圧回路14と、位相補償回路である位相補償抵抗11と位相補償容量12と、出力トランジスタ16と、位相補償容量テスト回路20と、負電圧検出回路30と、グラウンド端子101、電源端子102、出力端子103、外部出力電圧調整端子104を備えている。
【0010】
差動増幅回路10は、非反転入力端子が基準電圧回路17に接続され、反転入力端子が分圧回路14の出力端子に接続され、出力端子はPMOSトランジスタ15のゲートに接続されている。位相補償回路と位相補償容量テスト回路20は、差動増幅回路10の出力端子とPMOSトランジスタ15のドレインの間に接続されている。PMOSトランジスタ15と定電流回路13は、電源端子102とグラウンド端子101の間に直列に接続されている。出力トランジスタ16は、ゲートがPMOSトランジスタ15のドレインに接続され、ソースが電源端子102に接続され、ドレインが出力端子103に接続されている。分圧回路14は、外部出力電圧調整端子104とグラウンド端子101の間に接続されている。負電圧検出回路30は、外部出力電圧調整端子104と位相補償容量テスト回路20の間に接続されている。
【0011】
位相補償容量テスト回路20は、定電流回路23と、スイッチトランジスタ21及び22を備えている。スイッチトランジスタ21は、位相補償抵抗11と位相補償容量12の間に設けられている。直列に接続されたスイッチトランジスタ22と定電流回路23は、位相補償容量12とグラウンド端子101の間に設けられている。スイッチトランジスタ21スイッチトランジスタ22のゲートは、位相補償容量テスト回路20の入力端子に接続されている。位相補償容量12と位相補償容量テスト回路20の接続点をノードVAとする。
【0012】
負電圧検出回路30は、定電流回路31と、ディプレッションNMOSトランジスタ32と、信号を形成するインバータ回路33、34を備えている。ディプレッションNMOSトランジスタ32は、ゲートが外部出力電圧調整端子104に接続され、ドレインが定電流回路31を介して電源端子102に接続され、ソースがグラウンド端子101に接続されている。直列に接続されたインバータ回路33及び34は、ディプレッションNMOSトランジスタ32のドレインと位相補償容量テスト回路20の入力端子の間に設けられている。
【0013】
次に、第一実施形態のボルテージレギュレータ100の動作について説明する。
ボルテージレギュレータ100は、負電圧検出回路30と位相補償容量テスト回路20以外は一般的な電圧3段増幅のボルテージレギュレータなので、詳細な説明は省略する。
【0014】
負電圧検出回路30は、外部出力電圧調整端子104の電圧を検出する。外部出力電圧調整端子104に正の電圧が印加されると、定電流回路31の電流よりもディプレッションNMOSトランジスタ32の電流が大きくなるので、負電圧検出回路30は出力端子にLow信号を出力する。外部出力電圧調整端子104に負の電圧が印加されると、定電流回路31の電流よりもディプレッションNMOSトランジスタ32の電流が小さくなるので、負電圧検出回路30は出力端子にHigh信号を出力する。
【0015】
通常動作時では、出力端子103と外部出力電圧調整端子104は、接続されている。外部出力電圧調整端子104は、出力端子103の正の電圧が印加されるので、負電圧検出回路30は出力端子にLow信号を出力する。位相補償容量テスト回路20は、Low信号を受けると、スイッチトランジスタ21はON状態に、スイッチトランジスタ22はOFF状態になる。従って、位相補償抵抗11と位相補償容量12は接続されるので、ボルテージレギュレータ100は通常の動作が確保できる。
【0016】
次に、位相補償回路のテストについて説明する。
外部出力電圧調整端子104は、出力端子103と切り離してして、外部から電圧源を接続する。先ず、外部出力電圧調整端子104に電圧源から正電圧、例えばボルテージレギュレータ100の設定された出力電圧を印加し、ボルテージレギュレータ100を通常の動作状態にする。
【0017】
その後、電圧源の電圧を0Vに変更する。ゲートに0Vの電圧を印加されたディプレッションNMOSトランジスタ32の電流は定電流回路31の電流より大きいので、負電圧検出回路30はLow信号を出力し、位相補償容量テスト回路20は動作しない。ここで、分圧回路14の出力が0Vになるので、差動増幅回路10はHigh信号(≒VDD)を出力し、PMOSトランジスタ15はOFF状態になる。従って、ノードVAの電圧はHighレベル(≒VDD)になるので、位相補償容量12は充電される。
【0018】
位相補償容量12が十分に充電され後に、電圧源の電圧を負電圧に変更する。ディプレッションNMOSトランジスタ32がOFF状態になるので、負電圧検出回路30はHigh信号を出力する。位相補償容量テスト回路20は、スイッチトランジスタ21がOFFし、スイッチトランジスタ22がONするので、テスト状態となる。テスト状態では、ノードVAは定電流回路23と接続されるので、位相補償容量12は、定電流回路23によりノードVAの電圧が0Vになるまで放電電流を流す。電流が流れている時間Ttは、位相補償容量12の容量値をC、定電流回路23に流れる電流をIc、電源端子102の電圧をVDDとすると、以下の式で表される。
【0019】
Tt=C×(VDD)/Ic
従って、回路全体の消費電流から電流Icが流れている時間Ttを測定することで位相補償容量12の接続不良のテストが可能となる。
【0020】
例えば、上述のように外部の電圧源の電圧を切替えて、負の電圧に切替える前後に消費電流を測定し、定電流回路23の電流Icだけ消費電流が増加する期間が所望の時間Ttであることで良品の判断が可能である。
また例えば、外部の電圧源の電圧を負の電圧に切替える前後に測定した消費電流に差が無い場合には、位相補償容量12のコンタクトの接続不良を検出することができる。
【0021】
以上説明したように、第一実施形態のボルテージレギュレータ100は、レギュレータとしての安定性を損ねることなく位相補償容量12のテストが可能であり、テスト用パッドを追加する必要がないのでチップ面積が増加しない。更に、外部出力電圧調整端子104を用いているため、パッケージに組立てた後の出荷検査でもテストすることができる。
【0022】
図2は、本発明の第一実施形態のボルテージレギュレータの他の例を示す回路図である。
図2のボルテージレギュレータ200に示すように、負電圧検出回路30の定電流回路31は、電源端子102ではなく、出力端子103に接続されても良い。
【0023】
このように構成すると、負電圧検出回路30が負電圧を検出したときに、定電流回路31の電流が消費電流に影響しないと言う効果がある。更に、出力端子103に定電流回路31を接続することで、通常動作時に出力負荷の役割を果たし、無負荷時に出力電圧を安定させる効果が得られる。また、高温時には出力トランジスタ16のリーク電流による出力電圧の上昇を抑えることが出来る、という効果もある。
【0024】
[第二実施形態]
図3は、本発明の第二実施形態のボルテージレギュレータの一例を示す回路図である。
第二実施形態のボルテージレギュレータ300は、図1のボルテージレギュレータ100から位相補償容量テスト回路40に変更し、更にONOFF端子105と、OR回路41と、NMOSトランジスタ42と、インバータ回路43を追加した。
【0025】
位相補償容量テスト回路40は、スイッチトランジスタ22と定電流回路23の接続点を出力端子とする。インバータ回路43は、入力端子がONOFF端子105に接続されている。OR回路41は、入力端子にインバータ回路43の出力端子と位相補償容量テスト回路40の出力端子が接続され、出力端子はNMOSトランジスタ42のゲートに接続されている。NMOSトランジスタ42は、ドレインを出力端子103に接続され、ソースをグラウンド端子101に接続されている。
【0026】
通常動作時においては、ONOFF端子104はHigh信号を入力され、インバータ回路43はLow信号を出力する。位相補償容量テスト回路40は、出力端子からLow信号を出力する。従って、OR回路41はLow信号を出力し、NMOSトランジスタ42はOFFしている。
また、ONOFF端子にLow信号が入力された時は、OR回路41はHigh信号を出力してNMOSトランジスタ42をONして、外付けの出力容量の電荷を放電する。
【0027】
位相補償回路のテスト時においては、スイッチトランジスタ22がONするので、位相補償容量テスト回路40の出力端子は、位相補償容量12の状態によって出力する信号が変化する。
【0028】
位相補償容量12の状態が正常な時は、ノードVAの電圧がHighになっているので、位相補償容量テスト回路40の出力端子はHigh信号を出力する。OR回路41はHigh信号を出力し、NMOSトランジスタ42をON状態にする。このとき、出力端子103からNMOSトランジスタ42に電流が流れるので、消費電流が増加する。
【0029】
位相補償容量12が接続不良の時は、位相補償容量テスト回路40の出力端子はLow信号を出力して、NMOSトランジスタ42はOFF状態を維持するので、消費電流は増加しない。
従って、ボルテージレギュレータ300は、消費電流の大小によって良否を判定するので、テストを容易にすることが出来る。
【0030】
以上説明したように、本発明のボルテージレギュレータは、位相補償回路に位相補償容量テスト回路と外部出力電圧調整端子に負電圧検出回路を備えたので、レギュレータとしての安定性を損ねることなく位相補償容量のテストが可能であり、テスト用パッドを追加する必要がないのでチップ面積が増加しない。更に、外部出力電圧調整端子を用いているため、パッケージに組立てた後の出荷検査でもテストすることができる。
【0031】
なお、本発明のボルテージレギュレータは、上述した回路図に限るものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
例えば、以上の実施形態において電圧3段増幅のボルテージレギュレータを例にしたが、電圧2段増幅のボルテージレギュレータであって良い。図4に、2段増幅のボルテージレギュレータに本発明を適用した例としてボルテージレギュレータ400の回路図を示す。
【符号の説明】
【0032】
104 外部出力電圧調整端子
105 ONOFF端子
17 基準電圧回路
10 差動増幅回路
13、23、31 定電流回路
14 分圧回路
20、40 位相補償容量テスト回路
30 負電圧検出回路
図1
図2
図3
図4
図5