特許第6619281号(P6619281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6619281コンタクト一体型コネクタケース、電気コネクタ及び電気コネクタの組立て方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619281
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】コンタクト一体型コネクタケース、電気コネクタ及び電気コネクタの組立て方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/72 20110101AFI20191202BHJP
【FI】
   H01R12/72
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-70717(P2016-70717)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-183152(P2017-183152A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(72)【発明者】
【氏名】丸石 理敏
(72)【発明者】
【氏名】長濱 正幸
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 友紀雄
(72)【発明者】
【氏名】増山 仁一
【審査官】 杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−173089(JP,A)
【文献】 特開平08−017495(JP,A)
【文献】 特許第2794527(JP,B2)
【文献】 登録実用新案第3170687(JP,U)
【文献】 特開平08−145019(JP,A)
【文献】 特開2015−090941(JP,A)
【文献】 特開2001−237575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタと嵌合する電気コネクタ用のコンタクト一体型コネクタケースであって、
複数の接点部を形成した電子部品が装入可能な開口を有し、該開口を通じて前記電子部品を収容する収容ケースと、
該収容ケースに係合して前記開口を閉鎖する蓋カバーと、
前記電子部品に対向して前記接点部と分離可能に弾性接触する複数のコンタクトと、
を備え、
前記収容ケースが、前記相手側コネクタを構成する先端挿入部材の挿抜が可能な角筒状に形成された嵌合部と、前記収容ケースと前記蓋カバーとが係合したケース組立状態で、前記電子部品を収容し、前記嵌合部から後方に延び、前記蓋カバー及び前記収容ケースで区画形成した内部空間を有する収容部とを備え、
前記蓋カバーが、前記ケース組立状態で、前記開口を閉鎖する閉鎖部と、該閉鎖部に一体的に形成され、前記嵌合部内に挿入される挿入部とを備え、
前記挿入部が、前記複数のコンタクトを保持するように構成されていることを特徴とするコンタクト一体型コネクタケース。
【請求項2】
前記収容ケースの前記収容部又は前記蓋カバーの前記閉鎖部が、前記電子部品を圧入固定により保持するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンタクト一体型コネクタケース。
【請求項3】
前記複数のコンタクトが、2種類のコンタクトで構成され、
前記2種類のコンタクトのうち、一方のコンタクトが、記挿入部に圧入固定により保持され、他方のコンタクトが、部分的に、記挿入部の壁部内に埋設されて保持されることを特徴とする請求項2に記載のコンタクト一体型コネクタケース。
【請求項4】
前記電子部品の接点部が、USB規格に準拠して配置されているパッドであり、
前記一方のコンタクトは、前記電子部品のUSB3.0用のパッドと接触し、
前記他方のコンタクトは、前記電子部品のUSB2.0用のパッドと接触することを特徴とする請求項3に記載のコンタクト一体型コネクタケース。
【請求項5】
前記収容ケースの、前記嵌合部と前記収容部とは一体又は別体に形成されていることを特徴とする請求項2、3又は4に記載のコンタクト一体型コネクタケース。
【請求項6】
複数の接点部を形成した電子部品と、
前記電子部品が装入可能な開口を有し、前記電子部品を収容した収容ケースと、該収容ケースに係合して前記開口を閉鎖する蓋カバーと、前記収容ケースと前記蓋カバーとが係合したケース組立状態で、前記電子部品に対向して前記接点部と分離可能に弾性接触している複数のコンタクトと、を有するコンタクト一体型コネクタケースと、
を備え、
前記電子部品は、前記収容ケースと前記蓋カバーとの間で挟持されており、
前記収容ケースが、相手側コネクタを構成する先端挿入部材の挿抜が可能な角筒状に形成された嵌合部と、前記収容ケースと前記蓋カバーとが係合したケース組立状態で、前記電子部品を収容し、前記嵌合部から後方に延び、前記蓋カバー及び前記収容ケースで区画形成した内部空間を有する収容部とを備え、
前記蓋カバーが、前記ケース組立状態で、前記開口を閉鎖する閉鎖部と、該閉鎖部に一体的に形成され、前記嵌合部内に挿入される挿入部とを備え、
前記挿入部が、前記複数のコンタクトを保持していることを特徴とする相手側コネクタと嵌合する電気コネクタ。
【請求項7】
複数の接点部を形成した電子部品と、
前記電子部品が挿入可能な開口を有し、前記電子部品を収容した収容ケース、該収容ケースに係合して前記開口を閉鎖する蓋カバー、及び前記収容ケースと前記蓋カバーとが係合したケース組立状態で、前記電子部品に対向して前記接点部と分離可能に弾性接触している、記蓋カバーに保持されている複数のコンタクト、を有するコンタクト一体型コネクタケースであって、
前記収容ケースが、相手側コネクタを構成する先端挿入部材の挿抜が可能な角筒状に形成された嵌合部と、前記収容ケースと前記蓋カバーとが係合したケース組立状態で、前記電子部品を収容し、前記嵌合部から後方に延び、前記蓋カバー及び前記収容ケースで区画形成した内部空間を有する収容部とを備え、
前記蓋カバーが、前記ケース組立状態で、前記開口を閉鎖する閉鎖部と、該閉鎖部に一体的に形成され、前記嵌合部内に挿入される挿入部とを備え、
前記挿入部が、前記複数のコンタクトを保持している
コンタクト一体型コネクタケースと、を備える相手側コネクタと嵌合する電気コネクタの組立て方法であって、
前記電子部品を、前記収容ケース又は前記蓋カバーに取り付け、
前記蓋カバーを前記収容ケースに係合させる
ことを特徴とする電気コネクタの組立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手側コネクタと嵌合する電気コネクタ用のコンタクト一体型コネクタケース、電気コネクタ及び電気コネクタの組立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
相手側コネクタに着脱自在に嵌合する電気コネクタとして、例えばUSB規格に準拠したUSB(Universal Serial Bus)機器が知られている。USB機器は、記憶装置や無線装置、TVチューナ等、種々の装置に用いられている。最近では、USB2.0よりも高速なUSB3.0の規格に準拠する製品も増えてきた。
USBは、上位互換性を持っており、USB3.0の規格に準拠したUSB機器は、USB2.0の規格に準拠する相手側のUSB機器と通信を行うことが可能である。USB機器のうち、例えばプラグコネクタとしてのUSBコネクタを備えるUSBメモリは、レセプタクルコネクタに嵌合することで互いに電気的に通信することができる。
【0003】
特許文献1に記載されているUSBメモリは、USBコネクタ、コントローラ、メモリパッケージ等を搭載した電子部品(基板)が、2つのケース部(上ケース及び下ケース)からなるケースに収容された構成である。USBコネクタは、USBソケットを備えたホスト機器(相手側コネクタ)との接続のためのインタフェースであり、USB3.0でのデータ転送用の端子(コンタクト)とUSB2.0でのデータ転送用の端子(コンタクト)との両方を備えている。USBコネクタは、通常、ケースへの収容前に、予め電子部品上に、例えば半田付け等により実装されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−216077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているUSBメモリのような電気コネクタにおいて、USBコネクタは、半田付けすることにより電子部品に実装されている。特にUSBコネクタは、材料コストが高い。さらに、USBコネクタを、電子部品へ半田付けにより実装する必要があるため、USBコネクタを用いた場合、電気コネクタの製造の作業コストも極めて大きかった。また、USBコネクタと電子部品との半田付けの際に、位置ずれが生じた場合、最終的に電気コネクタとして、相手側コネクタと接続した場合に接続信頼性が低くなるおそれもあった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、コンタクトと電子部品(例えば基板)との接続に、専用の接続コネクタを用いず、かつ電子部品との半田付けを不要とし、簡単な構造でコンタクトと電子部品との接続を可能にして、部品点数(接続コネクタ)及び製造工程数(半田付け)を減じ、電気コネクタの製造にかかるコストを大幅に減じることができ、電気コネクタとして接続信頼性を高めることができる、電気コネクタ用のコンタクト一体型コネクタケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下の通りである。
【0008】
(1)相手側コネクタと嵌合する電気コネクタ用のコンタクト一体型コネクタケースは、複数の接点部を形成した電子部品が装入可能な開口を有し、該開口を通じて前記電子部品を収容する収容ケースと、該収容ケースに係合して前記開口を閉鎖する蓋カバーと、前記電子部品に対向して前記接点部と分離可能に弾性接触する複数のコンタクトと、を備え、前記収容ケース又は前記蓋カバーのいずれかが、前記複数のコンタクトを保持し、かつ前記収容ケース又は前記蓋カバーのいずれかが、前記前記電子部品を保持するように構成されていることを特徴とするコンタクト一体型コネクタケースである。
【0009】
(2)前記収容ケースが、前記相手側コネクタを構成する先端挿入部材の挿抜が可能な角筒状に形成された嵌合部と、前記収容ケースと前記蓋カバーとが係合したケース組立状態で、前記電子部品を収容し、前記嵌合部から後方に延び、前記蓋カバー及び前記収容ケースで区画形成した内部空間を有する収容部とを備え、前記蓋カバーが、前記ケース組立状態で、前記開口を閉鎖する閉鎖部と、該閉鎖部に一体的に形成され、前記嵌合部内に挿入される挿入部とを備え、前記嵌合部又は前記挿入部が、前記複数のコンタクトを保持するように構成されていて、前記収容部又は前記閉鎖部が、前記電子部品を圧入固定により保持するように構成されていることを特徴とする上記(1)に記載のコンタクト一体型コネクタケースである。
【0010】
(3)前記複数のコンタクトが、2種類のコンタクトで構成され、前記2種類のコンタクトのうち、一方のコンタクトが、前記嵌合部又は前記挿入部に圧入固定により保持され、他方のコンタクトが、部分的に、前記嵌合部又は前記挿入部の壁部内に埋設されて保持されることを特徴とする上記(2)に記載のコンタクト一体型コネクタケースである。
【0011】
(4)前記電子部品の接点部が、USB規格に準拠して配置されているパッドであり、前記一方のコンタクトは、前記電子部品のUSB3.0用のパッドと接触し、前記他方のコンタクトは、前記電子部品のUSB2.0用のパッドと接触することを特徴とする上記(3)に記載のコンタクト一体型コネクタケースである。
【0012】
(5)前記収容ケースの、前記嵌合部と前記収容部とは一体又は別体に形成されていることを特徴とする特徴とする上記(2)、(3)又(4)に記載のコンタクト一体型コネクタケースである。
【0013】
(6)前記蓋カバーが、前記複数のコンタクト及び前記電子部品を保持するように構成されていることを特徴とする上記(1)から(5)までのいずれか1項に記載のコンタクト一体型コネクタケースである。
【0014】
(7)前記収容ケースが、前記複数のコンタクト及び前記電子部品を保持するように構成されていることを特徴とする上記(1)から(5)までのいずれか1項に記載のコンタクト一体型コネクタケース。
【0015】
(8)複数の接点部を形成した電子部品と、前記電子部品が装入可能な開口を有し、前記電子部品を収容した収容ケースと、該収容ケースに係合して前記開口を閉鎖する蓋カバーと、前記収容ケースと前記蓋カバーとが係合したケース組立状態で、前記電子部品に対向して前記接点部と分離可能に弾性接触している複数のコンタクトと、を有するコンタクト一体型コネクタケースと、を備え、前記収容ケース又は前記蓋カバーのいずれかが、前記複数のコンタクトを保持し、かつ前記収容ケース又は前記蓋カバーのいずれかが、前記電子部品を保持し、前記電子部品は、前記収容ケースと前記蓋カバーとの間で挟持されていることを特徴とする相手側コネクタと嵌合する電気コネクタである。
【0016】
(9)複数の接点部を形成した電子部品と、前記電子部品が挿入可能な開口を有し、前記電子部品を収容した収容ケース、該収容ケースに係合して前記開口を閉鎖する蓋カバー、及び前記収容ケースと前記蓋カバーとが係合したケース組立状態で、前記電子部品に対向して前記接点部と分離可能に弾性接触している、前記収容ケース又は前記蓋カバーに保持されている複数のコンタクト、を有するコンタクト一体型コネクタケースと、を備える相手側コネクタと嵌合する電気コネクタの組立て方法であって、前記電子部品を、前記収容ケース又は前記蓋カバーに取り付け、前記蓋カバーを前記収容ケースに係合させることを特徴とする電気コネクタの組立て方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に従う電気コネクタ用のコンタクト一体型コネクタケースによれば、複数の接点部を形成した電子部品が装入可能な開口を有し、開口を通じて電子部品を収容する収容ケースと、収容ケースに係合して開口を閉鎖する蓋カバーと、電子部品に対向して接点部と分離可能に弾性接触する複数のコンタクトと、を備え、収容ケース又は蓋カバーのいずれかが、複数のコンタクトを保持し、かつ収容ケース又は蓋カバーのいずれかが、電子部品を保持するように構成されていることにより、収容ケースにカバーを係合させてケース組立状態を確保するだけで、コネクタと電子部品との接続構造を形成することが可能になるので、従来、コンタクトと電子部品との接続のために必要であった専用の接続コネクタを省略することができ、コンタクトと電子部品との接続を簡単かつ低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、電気コネクタの部分断面斜視図である。
図2図2は、電気コネクタの分解斜視図である。
図3図3は、電気コネクタ用のコンタクト一体型コネクタケースの分解斜視図であり、コネクタを取り除いて示す図であり、図3(A)は蓋カバーを裏面側から示す図であり、図3(B)は収容ケースを開口側から示す図である。
図4図4は、コンタクト一体型コネクタケースの蓋カバーを、表面側から見た斜視図である。
図5図5は、2種類のコンタクトの斜視図であり、図5(A)はUSB3.0用のコンタクトの斜視図であり、図5(B)はUSB2.0用のコンタクトの斜視図である。
図6図6は、電気コネクタの相手側コネクタとの嵌合状態における長手方向断面図であり、図6(A)は、USB3.0用のコンタクトにおける断面図であり、図6(B)は、USB2.0用のコンタクトにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に従うコンタクト一体型コネクタケースを用いた電気コンタクトの実施形態について、図面を参照しながら以下で説明する。なお、以下に示す実施形態は一つの例示であり、本発明の範囲において、種々の形態をとりうる。
【0020】
図1は、電気コネクタを部分的に断面にして斜視的に示す。図2は、電気コネクタを、収容ケース、蓋カバー及び電子部品に分解して斜視的に示す。図3は、コンタクトを取り除いた状態でコンタクト一体型コネクタケースを斜視的に示し、図3(A)は蓋カバーを裏面側から示し、図3(B)は、収容ケースを開口側から示す。図4は、コンタクト一体型コネクタケースの蓋カバーを、表面側から斜視的に示す。図5は、コンタクトを斜視的に示し、図5(A)は、USB3.0用のコンタクトを示し、図5(B)は、USB2.0用のコンタクトを示す。図6は、電気コネクタ10の相手側コネクタ20との嵌合状態を長手方向に沿って断面して示し、図6(A)は、USB3.0用のコンタクト7における部分を断面にして示し、図6(B)は、USB2.0用のコンタクト8における部分を断面にして示す。
【0021】
<電気コネクタの構成>
電気コネクタ10は、例えばUSB規格に準拠したUSB装置であり、記憶装置や無線装置、TVチューナ等、種々の装置において用いられている。図1に示す実施形態では、USB装置10は、プラグコネクタとして構成されており、何らかの情報処理を行うICが実装又は内蔵されている電子部品1と、電子部品1に分離可能に弾性接触しているコンタクト6を有するコンタクト一体型コネクタケース3と、を備えている。
また、電子部品1は、コンタクト一体型コネクタケース3に接続されているケーブル(図示略)等に接続されていてもよい。
なお、USB装置10の全体で見て、先後(前後)方向(長さ方向又は長手方向、ともいう)をXとして、前方をX1、後方をX2と定義する。また、横方向(幅方向又は短手方向、ともいう)をYと定義し、厚さ方向(高さ方向ともいう)をZとする。
【0022】
(電子部品)
図2に示す実施形態では、電子部品1は基板である。基板1は、後述するコンタクト一体型コネクタケース3の収容ケース4に収容されていて、基材としては、プラスチックのような合成樹脂材料から形成されている。基板1は、その表面に、相手側コネクタ20との電気的な通信を可能にする複数の接点部2を形成している。
また、図2に示す基板1においては接点部2を覆わない位置に、コントローラや、メモリパッケージ等の電子システムが設けられている構造であるが、基板1は、上記の種々の電子システムを内蔵する、図示しないSiP(System in Package)構造であってもよい。
【0023】
基板1の接点部2は、図示の実施形態では、USB規格に準拠して配置された4つのUSB2.0用のパッド2a及び5つのUSB3.0用のパッド2bで構成されている。USB2.0用のパッド2a及びUSB3.0用のパッド2bは、基板1に交互に配置されている。
なお、パッド2a、2bは、コンタクト6との接触が可能になるのであれば、図示するような矩形状に限定されるものではなく、円形、楕円形等のあらゆる形状を採用することができる。
【0024】
(コンタクト一体型コネクタケース)
本発明の構成上の主な特徴は、コンタクト一体型コネクタケース3の構成の適正化を図ることにあり、具体的には、相手側コネクタ20と嵌合する電気コネクタ10用のコンタクト一体型コネクタケース3が、複数の接点部2を形成した電子部品1が装入可能な開口41を有し、開口41を通じて電子部品1を収容する収容ケース4と、収容ケース4に係合して開口41を閉鎖する蓋カバー5と、電子部品1に対向して接点部2と分離可能に弾性接触する複数のコンタクト6と、を備え、収容ケース4又は蓋カバー5のいずれかが、複数のコンタクト6を保持し、かつ収容ケース4又は蓋カバー5のいずれかが、電子部品1を保持するように構成されていることにある。この構成により、基板1の接点部2とコンタクト6とは、従来のように、コネクタケース内に基板を収容する前に、コンタクトと基板とを予め半田付けする必要はなく、また、コンタクトと基板とを接続する専用のコネクタも必要ない。これにより、コンタクト一体型コネクタケース3は、簡単な構造で、基板1の接点部2とコンタクト6との接触精度の高い接続を低コストで実現することができる。さらに、基板1に障害が発生した場合であっても、収容ケース4と蓋カバー5との係合を解除して基板1を取り外すだけで、基板1を簡単に交換することができる。
また、図2に示すように、蓋カバー5が、複数のコンタクト6及び基板1を保持していることが好ましい。この構成により、蓋カバー5を収容ケース4と係合させる前に、基板1とコンタクト6とを蓋カバー5において互いに接続させておくことができる。コンタクト一体型コネクタケース3の組立ては、基板1を保持した蓋カバー5を、収容ケース4に係合させるだけでよく、より簡単になる。
【0025】
[収容ケース]
収容ケース4は、図2及び図3(A)に示すように、基板1が挿入可能な開口41を有し、基板1を開口41を通じて収容する。より具体的には、収容ケース4は、相手側コネクタ20を構成する先端挿入部材21(図6参照)の挿抜が可能な角筒状に形成された嵌合部42と、収容ケース4及び蓋カバー5が互いに係合したケース組立状態で、基板1を収容し、嵌合部42から後方X2側に延び、蓋カバー5及び収容ケース4で区画形成した内部空間を有する収容部43とを備えている。
ここで、「収容ケース4の収容部43に基板1を収容する」とは、収容部43に直接基板1が装入される場合、及び基板1が蓋カバー5に保持された状態で、収容部43に装入される場合を意味する。
【0026】
嵌合部42は、相手側コネクタ20と嵌合可能な、例えば角筒状に構成されていて、その中空部42aは、相手側コネクタ20の先端挿入部材21が挿抜可能な寸法を有している。
さらに、嵌合部42の外表面には、相手側コネクタ20の所定の弾性部材と係合する、嵌合部42を貫通していない、2つの係合部42bが形成されている。係合部42bは、嵌合部42を貫通した係合孔として形成されていてもよく、係合部42bの形状や配設個数等は、必要に応じて適宜選択して配設することができる。
【0027】
収容部43は、基板1を収容する部分であり、内部空間が、嵌合部42の中空部42aに連通するようにして嵌合部42から後方X2側に延びている。また、収容部43は、基板1の出し入れを可能にする開口41を有している。収容部43は、主に電子システムと共に基板1全体を収容する。
収容部43の内面には、ケース組立状態において、蓋カバー5に保持されている基板1を、蓋カバー5と共に挟持する、3つの押さえ部材44、45、45が形成されている。具体的には、収容部43の内部空間の前方X1側、つまり嵌合部42側で、幅方向Yにおいて収容部43の中央に1つの押さえ部材44が形成されている。さらに、収容部43の後方X2側で、前後方向Xの位置が同じ位置で幅方向Yにおいて互いに間隔をあけて2つの押さえ部材45、45が形成されている。
押さえ部材44、45が、コンタクト一体型コネクタケース3の組立て時に、後述する蓋カバー5に保持されている基板1を、蓋カバー5とは反対側から押さえ付ける。これにより、コンタクト6と基板1の接点部2との接触はより確実になる。
また、収容部43の両側壁部の後方X2側には、蓋カバー5の一対の係合部56が係合して、ケースの組立状態を維持する、凹状に形成された一対の被係合部46が設けられている。
【0028】
収容ケース4の、嵌合部42と収容部43とは一体又は別体に形成されている。図示の実施形態においては、収容ケース4は、嵌合部42及び収容部43を、例えばプラスチックのような合成樹脂を射出成形することにより一体成形品として形成されているが、嵌合部42を金属部材として、収容部43にモールド成形により一体に形成することもできる。
【0029】
(蓋カバー)
蓋カバー5は、収容ケース4に係合して、ケース組立状態で開口41を閉鎖し、図2図4に示すように、ケース組立状態で、開口41を閉鎖する閉鎖部51と、閉鎖部51に一体的に形成され、嵌合部42内に挿入される挿入部52とを備えている。
蓋カバー5は、例えばプラスチックのような合成樹脂を射出成形することにより閉鎖部51及び挿入部52を一体にして形成されている。
【0030】
[閉鎖部]
閉鎖部51は、収容部43の開口41を実際に閉鎖するものである。
閉鎖部51は、基板1を保持するように構成されている。具体的には、閉鎖部51の、ケース組立状態において収容部43の内部空間を臨む面(以下、「裏面」ともいう)に、基板1を保持する4つの圧入保持部材53が一体に形成されている。基板1は、圧入保持部材53に圧入されて、蓋カバー5から落下しないように適切な位置で位置固定されて保持されている。ここで「適切な位置」とは、蓋カバー5の後述する挿入部52に保持されているコンタクト6が、圧入保持部材53に保持されている基板1の接点部2と、位置ずれなく接触する位置のことである。
圧入保持部材53は、ケース組立状態において、収容ケース4の押さえ部材44、45と協働して基板1を、コンタクト一体型コネクタケース3において挟持している。
【0031】
圧入保持部材53は、閉鎖部51の裏面において、挿入部52側で、前後方向Xの位置が同じ位置で幅方向Yにおいて互いに間隔をおいて2つ、後方X2側で、前後方向Xの位置が同じ位置で幅方向Yにおいて互いに間隔をおいて2つの合計4つ形成されている。
圧入保持部材53は、平面視においてL字形及び逆(L字形の鏡面対称)L字形をなして配置されている壁部53aを有し、壁部53aの角隅に台座53bを有している。各圧入保持部材53は互いに角隅を向かい合わせて設けられている。
台座53bの高さは、ケース組立状態において基板1を保持した圧入保持部材53において、例えば基板1が壁部53aを超えないように寸法設定されている(図6(A)参照)。
各圧入保持部材53の壁部53aの内面にはそれぞれ、高さ方向Zに延在する複数の凸条部53cが形成されている。圧入保持部材53において基板1は、その角縁部が凸条部53cと接触することで摩擦抵抗が生じ、これにより、圧入保持部材53において圧入保持されることになる。
なお、圧入保持部材53の構成は、基板1が圧入保持されるのであれば、上記の構成に限定されない。
【0032】
閉鎖部51の裏面の両側部には、前後方向Xに沿って延在している条片部55が形成されている。条片部55は、閉鎖部51の各側部において、前後方向Xに並んでいる2つの圧入保持部材53の間を延在し、後方X2側に位置する圧入保持部材53を少し超えて延在している。条片部55は、蓋カバー5と収容ケース4とを係合させてケースを組み立てる際に、収容ケース4の収容部43の側壁に接触して、蓋カバー5を収容ケース4に円滑に係合させる。
また、ケース組立状態において、収容ケース4の収容部43に形成されている一対の被係合部46に対応する条片部55の位置に、凸状の係合部56が形成されている。蓋カバー5の係合部56は、ケース組立状態において、収容ケース4の被係合部46に係合して、蓋カバー5を収容ケース4において確実に係止する。
【0033】
[挿入部]
挿入部52はその裏面側で、後述する複数のコンタクト6を一体に保持しているように構成されている。具体的には、2種類のコンタクトで構成されている複数のコンタクト6のうち、一方は、挿入部52に圧入固定により保持されている第1コンタクト7であり、他方は、部分的に挿入部52の壁部内に埋設されて保持されている第2コンタクト8である。
挿入部52は、閉鎖部51側に壁厚を大きくした肉厚部分57を有していて、第1コンタクト7は肉厚部分57で圧入固定されている。具体的には、図3に示すように、肉厚部分57には、少なくとも第1コンタクト7の数に対応した溝57aが形成されていて、第1コンタクト7はそれぞれ溝57aに圧入されている。より具体的には、図6(A)に示すように、各溝57aをそれぞれ仕切る仕切壁57bの間に、第1コンタクト7の後述するU字部71の形状に対応した、第1コンタクト7と係合する係合壁部57cが設けられている。
挿入部52の仕切壁57bの壁部内には、図6(B)に示すように、第2コンタクト8が、例えばモールド成形により部分的に埋設されて挿入部52と一体に形成されている。また、第2コンタクト8の、相手側コネクタ20と接触する接触部81は、図2に示すように、挿入部52の前方X1側において、表面が露出するようにして挿入部52に一体に成形されている。
【0034】
なお、図3においては、説明の便宜上、第1コンタクト7及び第2コンタクト8を取り除いて、コンタクト一体型コネクタケース3を示した。
また、両方の第1コンタクト7及び第2コンタクト8のいずれもが、挿入部52において圧入により保持されていてもよく、又は、挿入部52の壁部内に部分的に埋設されて保持されていてもよい。
挿入部52の表面は、図4に示すように、閉鎖部51の表面より閉鎖部51の裏面側に位置している。これにより、挿入部52の表面側で、挿入部52と閉鎖部51との移行部は段状に形成されている。移行部が段状に形成されていることにより、挿入部52の移行部が収容ケース4の嵌合部42に当接するので、挿入部52は嵌合部42に安定的に挿入された状態を維持することができる。
【0035】
[コンタクト]
コンタクト6は、上述のように、2種類の第1コンタクト7及び第2コンタクト8で構成されている。また、コンタクト6の材質は、バネ性や導電性を有していればよく、特に限定はしないが、例えば黄銅、ベリリウム銅、リン青銅等を挙げることができる。
【0036】
第1コンタクト7は、側面から見て、略Ω状に形成されていて、図5(A)に示すように、蓋カバー5の挿入部52における係合壁部57cに係合するU字部71と、U字部71の一方の端部から前方X1側に延在する第1脚部72と、他方の端部から後方X2側に延在する第2脚部73と、を有している。
U字部71の各端部間の間隔wは、挿入部52の係合壁部57cの、前後方向Xでの長さ以下の寸法である。第1脚部72は先端側に、図6(A)に示すように、相手側コネクタ20の先端挿入部材21に設けられたUSB3.0用のコンタクト22と弾性接触する、湾曲して形成された接触部72aを有している。また、第2脚部73は先端側に、基板1のUSB3.0用のパッド2bと弾性接触する、湾曲して形成された接触部73aを有している。
第1脚部72及び第2脚部73はそれぞれ、予付勢を掛けられて、U字部71との連結部から先端側へとU字部71の膨出側に向かって斜めに延在している。
【0037】
第2コンタクト8は、図5(B)に示すように、前方X1側に、相手側コネクタ20の先端挿入部材21に設けられたUSB2.0用のコンタクト23と接触する平板状に形成された接触部81を有し、後方X2側に、基板1のUSB2.0用のパッド2aと弾性接触する脚部82を有している。脚部82の先端側は湾曲して形成された接触部82aを有し、接触部82aは、基板1のUSB2.0用のパッド2aに弾性接触する。
なお、図5(B)に示すように、第2コンタクト8の接触部81には、大きさの異なる2つの接触部があるが、その用途及び機能については同じである。
【0038】
<電気コネクタの組立て方法>
次に、電気コネクタ10の組立て方法について説明する。
まず、基板1を、蓋カバー5の閉鎖部51に形成されている4つの圧入保持部材53の内側に圧入して固定する。この状態において、基板1に形成されている各接点部2は、蓋カバー5の挿入部52に保持されているコンタクト6と適切に接触している。
次いで、蓋カバー5を、収容ケース4に係合させる。具体的には、蓋カバー5の挿入部52を、収容ケース4の嵌合部42内に開口41側から挿入し、蓋カバー5の閉鎖部51に形成されている係合部56を、収容ケース4の収容部43に形成されている被係合部46と係合させる。このケース組立状態において、基板1は、収容ケース4の収容部43に形成されている押さえ部材44、45により、収容ケース4側から蓋カバー5に向かって押さえ付けられ、コンタクト6と基板1の接点部2との接触がより確実になる。
以上で、コンタクト一体型コネクタケース3を用いた電気コネクタ10の組立ては完了する。
【0039】
<変形例1>
次に、コンタクト一体型コネクタケース3の変形例1(図示略)を、コンタクト一体型コネクタケース3と異なる点についてのみ説明する。
上記のコンタクト一体型コネクタケース3とは異なり、複数のコンタクト6は、蓋カバー5の挿入部52に保持されておらず、収容ケース4の嵌合部42に保持されている。つまり、コンタクト一体型コネクタケース3においてコンタクト6を保持していた構成、具体的には肉厚部分57が、収容ケース4の嵌合部42に形成されている。さらに、基板1は、蓋カバー5の閉鎖部51に圧入保持されているのではなく、収容ケース4の収容部43に圧入保持されている。つまり、コンタクト一体型コネクタケース3において蓋カバー5に形成されていた圧入保持部材53が、収容ケース4の収容部43に形成されている。
変形例1のコンタクト一体型コネクタケースを用いて、電気コネクタを組み立てる場合、まず、基板1を、収容ケース4の収容部43に形成されている4つの圧入保持部材の内側に圧入して固定する。この状態において、基板1に形成されている各接点部2は、収容ケース4の嵌合部42に保持されているコンタクト6と適切に接触している。
次いで、蓋カバー5を、収容ケース4に係合させて、コンタクト一体型コネクタケースを用いた電気コネクタの組立ては完了する。
【0040】
<変形例2>
次に、コンタクト一体型コネクタケース3の変形例2(図示略)を、コンタクト一体型コネクタケース3と異なる点についてのみ説明する。
上記のコンタクト一体型コネクタケース3とは異なり、基板1は、蓋カバー5の閉鎖部51に圧入保持されているのではなく、収容ケース4の収容部43に圧入保持されている。つまり、コンタクト一体型コネクタケース3において蓋カバー5に形成されていた圧入保持部材53が、収容ケース4の収容部43に形成されている。
なお、複数のコンタクト6は、蓋カバー5の挿入部52に保持されている。
変形例2のコンタクト一体型コネクタケースを用いて、電気コネクタを組み立てる場合、まず、基板1を、収容ケース4の収容部43に形成されている4つの圧入保持部材の内側に圧入して固定する。
次いで、蓋カバー5を、収容ケース4に係合させる。この状態において初めて、基板1に形成されている各接点部2が、蓋カバー5の挿入部52に保持されているコンタクト6と適切に接触する。以上で、コンタクト一体型コネクタケースを用いた電気コネクタの組立ては完了する。
【0041】
<変形例3>
次に、コンタクト一体型コネクタケース3の変形例3(図示略)を、コンタクト一体型コネクタケース3と異なる点についてのみ説明する。
複数のコンタクト6は、変形例1と同様に収容ケース4の嵌合部42に保持されているので、説明は省略する。なお、基板1は、蓋カバー5の閉鎖部51に圧入保持されている。
変形例3のコンタクト一体型コネクタケースを用いて、電気コネクタを組み立てる場合、まず、基板1を、蓋カバー5の閉鎖部51に形成されている4つの圧入保持部材に圧入して固定する。
次いで、蓋カバー5を、収容ケース4に係合させる。この状態において初めて、基板1に形成されている各接点部2が、収容ケース4の嵌合部42に保持されているコンタクト6と適切に接触する。以上で、コンタクト一体型コネクタケースを用いた電気コネクタの組立ては完了する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に従うコンタクト一体型コネクタケース3によれば、従来のように、コネクタケース内に基板を収容する前に、コンタクトと基板とを予め半田付けする必要はなく、また、コンタクトを基板に接続する専用のコネクタも必要ない。これにより、コンタクト一体型コネクタケース3は、簡単な構造でかつ低コストで、基板1の接点部2とコンタクト6との接続を実現することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 電子部品又は基板
2 接点部
2a USB2.0用のパッド
2b USB3.0用のパッド
3 コンタクト一体型コネクタケース
4 収容ケース
5 蓋カバー
6 コンタクト
7 第1コンタクト
8 第2コンタクト
10 電気コネクタ
20 相手側コネクタ
41 開口
42 嵌合部
43 収容部
51 閉鎖部
52 挿入部
図1
図2
図3
図4
図5
図6