特許第6619303号(P6619303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619303
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】ガス遮断装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/00 20060101AFI20191202BHJP
   G01F 1/66 20060101ALI20191202BHJP
   G01F 3/22 20060101ALI20191202BHJP
   F23K 5/00 20060101ALI20191202BHJP
   F23N 5/26 20060101ALI20191202BHJP
   F23N 5/24 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   G01F1/00 T
   G01F1/66 101
   G01F3/22 B
   F23K5/00 304
   F23N5/26 101B
   F23N5/24 101A
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-155821(P2016-155821)
(22)【出願日】2016年8月8日
(65)【公開番号】特開2018-25410(P2018-25410A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩田 和希
(72)【発明者】
【氏名】安田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】岩本 龍志
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕史
(72)【発明者】
【氏名】木場 康雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 守
(72)【発明者】
【氏名】小牧 充典
(72)【発明者】
【氏名】大和久 崇
(72)【発明者】
【氏名】浅田 昭治
(72)【発明者】
【氏名】増田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】西口 一弘
(72)【発明者】
【氏名】深澤 拓也
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5531993(JP,B2)
【文献】 特許第5857179(JP,B2)
【文献】 特許第5872654(JP,B2)
【文献】 特許第6250316(JP,B2)
【文献】 特許第5758066(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F
F23K
F23N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測流路の上流側および下流側にそれぞれ設置された一対の超音波送受信器と、
前記一対の超音波送受信器の送受信を切り替える切替手段と、
前記切替手段により受信側に設定された前記超音波送受信器において、受信した超音波の信号が所定範囲の振幅になるように、信号の増幅度を調整して増幅する増幅手段と、
前記超音波送受信器の一方から送信された超音波が、他方の前記超音波送受信器に受信されるまでの伝搬時間を計測する伝搬時間計測手段と、
前記伝搬時間計測手段で計測された伝搬時間からガス流量を算出する流量演算手段と、
前記増幅手段で調整された増幅度が、前記伝搬時間に応じて設定される判定値を超えて変化した場合に、前記計測流路内に結露が発生していると判定する、結露判定手段と、
を備えていることを特徴とする、
ガス遮断装置。
【請求項2】
さらに、前記計測流路内のガス温度を計測する温度計測手段を備え、
前記判定値は、前記伝搬時間とガス温度とに応じて設定されていることを特徴とする、
請求項1に記載のガス遮断装置。
【請求項3】
前記判定値は、予め設定される前記伝搬時間の複数の所定範囲にそれぞれ対応付けられて複数設定されていることを特徴とする、
請求項1または2に記載のガス遮断装置。
【請求項4】
前記結露判定手段で用いられる前記増幅度および前記伝搬時間は、それぞれ、1回の計測値、または、第一の所定時刻を起点として設定される所定の計測時間内で計測された複数回の計測値の平均値であることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載のガス遮断装置。
【請求項5】
さらに、ガスを遮断する遮断手段、および、結露の発生を報知する報知手段の少なくともいずれかを備えており、
前記結露判定手段により前記計測流路内に結露が発生していると判定されたときには、前記遮断手段および前記報知手段の少なくともいずれかは、第二の所定時刻に動作することを特徴とする、
請求項1から4のいずれか1項に記載のガス遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波によってガス流量を計測する計測流路内に結露が発生したことを判定したときに、ガス供給を遮断するガス遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス遮断装置は、一般的には、ガス流量を計測する流量計測手段と、ガス供給を遮断する遮断手段とを備えている。ガス流量の計測方式としては、代表的には、超音波方式が挙げられる。超音波方式の流量計測手段では、計測流路に一対の超音波送受信器が設けられており、これらの送受信を切り替えて超音波の伝搬時間を計測し、この伝搬時間からガス流量を算出している。
【0003】
計測流路内に結露が発生した場合には、ガス流量の正確な計測が妨げられるので、ガス供給を遮断する必要性が生じる。そこで、従来から、計測流路内での結露の発生を判定する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、期間補正判定部で所定期間中に所定値以上のゲイン値(増幅度、増幅率)の増加の有無を判定する流量計測装置が開示されている。期間補正判定部は、短期間でゲイン値の上昇の有無を判定することにより、結露によるゲイン値の急上昇を警報レベルまたは遮断レベルに至る前に検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−193966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、超音波方式での流量計測手段では、ガスの自由化に伴ってガス種が変更されると、結露の発生時と同様に増幅度が大幅に上昇する可能性がある。ガス遮断装置においては、ガス種の変更により増幅度が短期間で上昇しても、結露の発生と誤判定してガス供給を誤遮断しないようにする必要がある。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、ガス種の変更を結露の発生と誤判定するおそれを有効に回避することができるガス遮断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガス遮断装置は、前記の課題を解決するために、計測流路の上流側および下流側にそれぞれ設置された一対の超音波送受信器と、前記一対の超音波送受信器の送受信を切り替える切替手段と、前記切替手段により受信側に設定された前記超音波送受信器において、受信した超音波の信号が所定範囲の振幅になるように、信号の増幅度を調整して増幅する増幅手段と、前記超音波送受信器の一方から送信された超音波が、他方の前記超音波送受信器に受信されるまでの伝搬時間を計測する伝搬時間計測手段と、前記伝搬時間計測手段で計測された伝搬時間からガス流量を算出する流量演算手段と、前記増幅手段で調整された増幅度が、前記伝搬時間に応じて設定される判定値を超えて変化した場合に、前記計測流路内に結露が発生していると判定する、結露判定手段と、を備えている構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、以上の構成により、ガス種の変更を結露の発生と誤判定するおそれを有効に回避することができるガス遮断装置を提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係るガス遮断装置の構成例を示すブロック図である。
図2】(A)は、図1に示すガス遮断装置での受信信号からのゼロクロス点の判定動作例を説明する模式図であり、(B)は、増幅手段による増幅度の調整例を説明する模式図である。
図3図1に示すガス遮断装置において、伝搬時間の違いに伴う、結露判定用の増幅度の判定値を説明する模式図である。
図4図1に示すガス遮断装置における結露判定の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態2に係るガス遮断装置の構成例を示すブロック図である。
図6図5に示すガス遮断装置における結露判定の一例を示すフローチャートである。
図7図4に示す結露判定の他の例を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態3に係るガス遮断装置における結露判定の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る代表的なガス遮断装置は、計測流路の上流側および下流側にそれぞれ設置された一対の超音波送受信器と、前記一対の超音波送受信器の送受信を切り替える切替手段と、前記切替手段により受信側に設定された前記超音波送受信器において、受信した超音波の信号が所定範囲の振幅になるように、信号の増幅度を調整して増幅する増幅手段と、前記超音波送受信器の一方から送信された超音波が、他方の前記超音波送受信器に受信されるまでの伝搬時間を計測する伝搬時間計測手段と、前記伝搬時間計測手段で計測された伝搬時間からガス流量を算出する流量演算手段と、前記増幅手段で調整された増幅度が、前記伝搬時間に応じて設定される判定値を超えて変化した場合に、前記計測流路内に結露が発生していると判定する、結露判定手段と、を備えている構成である。
【0011】
前記構成によれば、増幅手段による受信信号の増幅度が大きく上昇しているだけでなく、超音波の伝搬時間に応じて設定される増幅度の判定値を超えていれば、計測流路内に結露が発生したと判定する。増幅度の大きな変化は、計測流路内に結露が発生している場合だけでなく、ガス種が変更された場合にも生じ得るが、ガス種の変更では、結露の発生に比べて増幅度の増加の程度が小さくなる。ガス種が異なれば超音波の伝搬時間にも違いが生じるので、伝搬時間に対して増幅度の上限値を設定し、この上限値をガス種の変更または結露の発生を区別するための判定値として用いる。これにより、結露の発生とガス種の変更とを区別することができるので、ガス種の変更を結露の発生と誤判定するおそれを有効に回避することができる。
【0012】
前記構成のガス遮断装置においては、さらに、前記計測流路内のガス温度を計測する温度計測手段を備え、前記判定値は、前記伝搬時間とガス温度とに応じて設定されている構成であってもよい。
【0013】
また、前記構成のガス遮断装置においては、前記判定値は、予め設定される前記伝搬時間の複数の所定範囲にそれぞれ対応付けられて複数設定されている構成であってもよい。
【0014】
また、前記構成のガス遮断装置においては、前記結露判定手段で用いられる前記増幅度および前記伝搬時間は、それぞれ、1回の計測値、または、第一の所定時刻を起点として設定される所定の計測時間内で計測された複数回の計測値の平均値である構成であってもよい。
【0015】
また、前記構成のガス遮断装置においては、さらに、ガスを遮断する遮断手段、および、結露の発生を報知する報知手段の少なくともいずれかを備えており、前記結露判定手段により前記計測流路内に結露が発生していると判定されたときには、前記遮断手段および前記報知手段の少なくともいずれかは、第二の所定時刻に動作する構成であってもよい。
【0016】
以下、本発明の代表的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0017】
(実施の形態1)
[ガス遮断装置の構成]
まず、本実施の形態1に係るガス遮断装置の代表的な構成について、図1を参照して具体的に説明する。
【0018】
本実施の形態1に係るガス遮断装置は、図1に示すように、計測流路1に設置される一対の超音波送受信器2,3と、流量計測手段20と、制御手段21と、遮断手段22と、報知手段23とを備えている。流量計測手段20は、切替手段4、送信手段5、受信手段6、増幅手段7、基準比較手段8、基準電圧設定手段9、到達点判定手段10、伝搬時間計測手段11、流量演算手段12、および結露判定手段13を備えている。なお、計測流路1、超音波送受信器2,3、流量計測手段20、制御手段21、遮断手段22、報知手段23の具体的構成は特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。
【0019】
計測流路1は、ガス管30の一部に設けられており、天面(上面)である設置面1aと、設置面1aに対向する底面(下面)である対向面1bとを有している。超音波送受信器2,3は、いずれも計測流路1の同一側面となる設置面1aに設置されており、上流側には第一の超音波送受信器2が位置し、下流側には第二の超音波送受信器3が位置している。したがって、本実施の形態では、超音波送受信器2,3はVパス方式で配置されている。
【0020】
図1に示すように、超音波は、上側の設置面1aから下側の対向面1bに向かって送信され、対向面1bで設置面1aに向かって反射される。したがって、設置面1aは超音波の送信面または受信面(送受信面)であり、対向面1bは超音波の反射面である。なお、図1に示す超音波の送受信例では、超音波送受信器2が送信側であり超音波送受信器3が受信側であるが、後述するように、切替手段4により送受信は切り替えられる。
【0021】
図1に示す矢印P1は、送信側の超音波送受信器2から送信されて対向面1bに達する超音波(送信波)の伝搬経路であり、矢印P2は、送信波が対向面1bで反射されて反射波となり、受信側の超音波送受信器3に達するまでの伝搬経路である。送信波は、ガスの流れ方向Vに対して角度θをなしている。
【0022】
切替手段4は、超音波送受信器2,3の一方を送信側に他方を受信側に切り替える。送信手段5は、切替手段4により送信側に切り替えられた超音波送受信器2,3から超音波を送信させる。受信手段6は、切替手段4により受信側に切り替えられた超音波送受信器3,2に超音波の反射波を受信させる。増幅手段7は、受信側の超音波送受信器2,3において、受信した超音波の信号(受信信号)が所定範囲の振幅になるように、受信信号の増幅度(ゲイン)を調整して増幅する。
【0023】
基準比較手段8は、増幅手段7で増幅された受信信号と予め設定される基準電圧とを比較する。基準電圧設定手段9は、増幅手段7の出力に基づく基準電圧を、基準比較手段8に対して出力する。到達点判定手段10は、基準比較手段8の出力と増幅手段7で増幅された受信信号とから、超音波の到達点を判定する。伝搬時間計測手段11は、到達点判定手段10の出力から超音波の伝搬時間を計測する。流量演算手段12は、伝搬時間計測手段11で計測された伝搬時間からガス流量を算出する。
【0024】
結露判定手段13は、増幅手段7で調整された増幅度が、伝搬時間に応じて設定される判定値を超えて変化した場合に、計測流路1内に結露が発生していると判定する(結露判定を行う)。結露判定の詳細については後述する。制御手段21は、前記構成の流量計測手段20による流量計測動作および結露判定動作を制御するとともに、遮断手段22によるガス管30の遮断動作を制御する。遮断手段22は、制御手段21の制御によりガス管30内でのガス供給を遮断する。
【0025】
報知手段23は、制御手段21の制御により結露の発生を報知する。なお、報知手段23は、結露の発生だけでなく、これに伴うガス供給の遮断も報知するように構成されてもよいし、結露の発生、ガス供給の遮断に加えて、他の異常を報知するように構成されてもよい。報知手段23は、ガス遮断装置に表示器、発光素子、または音声警報器等を設けて異常を報知する形態であってもよいし、ガスユーザまたはガス供給事業者に対して、公共または専用の通信手段により通報する形態であってもよいし、インターネットを利用して通報する形態であってもよい。また、報知手段23はガス遮断装置の必須構成ではないので、例えば、公知の表示装置、発光装置、または音声警報装置を報知手段23として増設してもよい。
【0026】
前記構成のガス遮断装置において、制御手段21の制御による流量計測手段20での流量計測について説明する。制御手段21は、流量計測の開始に伴って送信手段5を動作させ、超音波送受信器2,3の一方、例えば、第一の超音波送受信器2から超音波を送信させるとともに、伝搬時間計測手段11を動作させて計時を開始する。第一の超音波送受信器2からの送信波(矢印P1)は、計測流路1内のガス中を伝搬し、対向面1bで反射されて反射波(矢印P2)となり、第二の超音波送受信器3で受信される。
【0027】
受信された超音波の信号(受信信号)は、受信手段6を介して増幅手段7に出力される。増幅手段7では、制御手段21の制御により、受信信号の増幅度(ゲイン)を調整して、受信信号の波形が一定の振幅になるように増幅する。なお、増幅度の調整方法については後述する。
【0028】
増幅手段7で増幅された受信信号は、基準比較手段8、基準電圧設定手段9、到達点判定手段10に出力される。基準電圧設定手段9は増幅手段7の出力のピーク電圧に対して所定比率の基準電圧を発生し、基準比較手段8へ出力する。基準比較手段8は増幅手段7の出力(増幅された受信信号)と基準電圧設定手段9からの出力(基準電圧)とを比較し、比較結果を到達点判定手段10に出力する。到達点判定手段10では、後述するゼロクロス点を超音波の到達点として判定し、伝搬時間計測手段11に出力する。伝搬時間計測手段11は、計時開始から到達点までの時間を伝搬時間として計測する。
【0029】
制御手段21は、超音波送受信器2,3の送受信を切替手段4で切り替え、前記と同様に、第二の超音波送受信器3から超音波を送信し、第一の超音波送受信器2で受信させるとともに、伝搬時間計測手段11により伝搬時間を計測させる。そして、前述した一連の超音波送受信動作を予め設定された回数繰り返し行う。計測された伝搬時間は流量演算手段12に出力され、流量値が算出される。なお、流量値の算出方法は、公知の方法を好適に用いることができるので、具体的な説明は省略する。
【0030】
[増幅度の調整]
次に、増幅手段7における増幅度の調整方法の代表的な一例、並びに、増幅度による結露判定について、到達点判定手段10による到達点判定方法とともに、図2(A),(B)並びに図3を参照して具体的に説明する。
【0031】
図2(A)に示すように、受信信号Aの波形(増幅信号の出力)は複数のピークを有しているが、到達点判定手段10では、通常、受信から何番目かの波を特定して、その波において、受信信号Aの符号が正から負に変わる「最初の負のゼロクロス点p」を到達点として判定する。本実施の形態では、第4波のゼロクロス点pを判定する。
【0032】
基準電圧設定手段9は、第4波のゼロクロス点pを判定するために、受信信号Aの第3波および第4波のピーク電圧値の中点となる電圧値を基準電圧Dとして設定する。基準比較手段8は、受信信号Aと基準電圧Dとを比較し、図2(A)の信号出力タイミングtに示すように、これらの大小関係が反転した時点で到達点判定手段10に出力信号Bを出力する。到達点判定手段10では、図2(A)に示す最初の負のゼロクロス点pを超音波の到達点として判定し、出力信号Cを伝搬時間計測手段11に出力する。
【0033】
ここで、受信信号Aは、増幅手段7により一定の振幅となるように増幅されたものである。増幅手段7は、例えば図2(B)に示すように、受信信号Aの第4波の最大電圧値(ピーク値)が、所定の電圧範囲(電圧範囲の下限R1および上限R2の間)に入るように、増幅度(ゲイン値、増幅率)を調整する。
【0034】
図2(B)において実線の受信信号A0は、所定の電圧範囲に入っているが、長破線の受信信号A1は、最大電圧値が電圧範囲の下限R1を下回っており、短破線の受信信号A2は、最大電圧値が電圧範囲の上限R2を上回っている。このような場合には増幅手段7は、制御手段21の制御により、最大電圧値が所定の電圧範囲内に入るように、増幅度を調整する。受信信号A1であれば増幅度を上昇させ、受信信号A2であれば増幅度を下降させる。このような増幅度の調整動作は、流量計測毎に行われる。
【0035】
ところで、ガス温度よりも計測流路1の温度が低くなる場合には、計測流路1内に結露が発生するおそれがある。例えば、流量計測手段20を備えるガス遮断装置は地上に設置されているが、その上流側となるガス管30は地中に埋設されていることが多い。地中のガス管30内は、冬季であっても温度変化が少なく外気よりも暖かな環境にあるが、ガス遮断装置が外気にさらされる環境にあれば、流量計測手段20およびこれが備える計測流路1が冷え切ってしまうことがある。
【0036】
このように上流側と下流側とでガス流路に温度差が生じ、かつ、ガスが湿っていると計測流路1に結露が発生する。結露により生じた水(結露水)が計測流路1内に存在すると、増幅度が通常よりも大幅に上昇する。結露は、湿ったガスの流入により発生するため、時間または日単位で増幅度が急激に増加する。ところが、ガス種が変更されると、結露の発生と同様に増幅度が大幅に上昇する可能性がある。ガスの自由化に伴い、ガス遮断装置においては、熱量調整または原料調達先の多様化等により、計測対象となるガス種が変わることを想定する必要がある。
【0037】
ここで、結露が発生したときの増幅度の増加は、超音波の伝搬時間に基づけば、図3に模式的に示すように、ガス種の変更による増幅度の増加から区別できることが明らかとなった。
【0038】
図3に示すグラフは、縦軸を増幅度(ゲイン値)、横軸を超音波の伝搬時間としている。例えば、ガス種として、ガスi、ガスii、ガスiii、ガスivおよびガスvの5種類が存在しており、これらガス種それぞれの伝搬時間が、それぞれ0〜t1秒(所定範囲P−i)、t1〜t2秒(所定範囲P−ii)、t2〜t3秒(所定範囲P−iii)、t3〜t4秒(所定範囲P−iv)、t4秒以上(所定範囲P−v)の範囲に入るとする。
【0039】
増幅手段7では、増幅度の初期値としてd0が出荷時に設定されているが、ガスi〜vにおける増幅度の上限値はそれぞれ異なっている。また、ガスi〜vにおける増幅度の上限値(判定値)は、それぞれd5,d4,d3,d2,およびd1であり、d5>d4>d3>d2>d1>d0である。図3に示す例では、ガスi〜vの順で伝搬時間が長くなり、その増幅度の上限値が下がっていく。したがって、増幅度−伝搬時間のグラフは下降する階段状となる。これを近似曲線にすれば、図3の長破線のグラフになる。
【0040】
ガス遮断装置においてガス種が変更されたとき、例えば、当初のガス種からガスiiに変更されたときに、その伝搬時間txがt1〜t2の範囲内に入るとする。この場合、増幅度が時間または日単位で上昇しても上限値d4以下(基本的には近似曲線以下)になる(例えば、白丸シンボルの位置)。これに対して、結露が発生すれば、伝搬時間が同じtxであっても、増幅度は上限値d4を超えるまで上昇する(例えば、黒丸シンボル)。
【0041】
つまり、伝搬時間が同じ範囲内であっても、結露が発生したときには、ガス種が変更されたときよりも、その増幅度は想定される上限値を超えて大幅に上昇する。そこで、流量計測手段20の結露判定手段13は、増幅手段7で調整された増幅度が、伝搬時間(図3では、例えばt1〜t2の範囲内)に応じて設定される判定値(図3では、例えば上限値d4)を超えて変化した場合に、計測流路1内に結露が発生していると判定する。この判定値は、前記の通り、予め設定される伝搬時間の複数の所定範囲(図3では、所定範囲P−i〜P−v)にそれぞれ対応付けられて複数設定されていればよい(図3では、上限値d5〜d1)。
【0042】
[結露判定]
次に、結露判定手段13による結露判定の代表的な一例について、図4を参照して具体的に説明する。
【0043】
まず、結露判定手段13は、増幅手段7で変更された増幅度を取得する(ステップS11)とともに、伝搬時間計測手段11で計測された伝搬時間を取得する(ステップS12)。そして、取得した増幅度が、取得した伝搬時間に対して設定される増幅度の判定値を超えているか否かを判定する(ステップS13)。増幅度が判定値を超えていなければ(ステップS13でNO)結露判定を終了する。
【0044】
増幅度が判定値を超えていれば(ステップS13でYES)、結露判定手段13は、計測流路1内に結露が発生していると判定し(ステップS14)、結露判定を終了する。結露が発生すると、ガス流量を正確に計測できなくなる。ガス流量を正確に計測できない場合には、ガス供給を遮断する必要があるので、制御手段21は、結露判定手段13で結露の発生が判定されれば、遮断手段22を動作させてガス供給を遮断するとともに、報知手段23により結露の発生を報知させる。
【0045】
このように、本実施の形態では、増幅手段7による受信信号の増幅度(ゲイン値)が大きく上昇しているだけでなく、超音波の伝搬時間に応じて設定される増幅度の判定値を超えていれば、計測流路1内に結露が発生したと判定する。増幅度の大きな変化は、計測流路1内に結露が発生している場合だけでなく、ガス種が変更された場合にも生じ得るが、ガス種の変更では、結露の発生に比べて増幅度の増加の程度が小さくなる。ガス種が異なれば超音波の伝搬時間にも違いが生じるので、伝搬時間に対して増幅度の上限値を設定し、この上限値をガス種の変更または結露の発生を区別するための判定値として用いる。これにより、結露の発生とガス種の変更とを区別することができるので、ガス種の変更を結露の発生と誤判定するおそれを有効に回避することができる。
【0046】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、結露判定手段13は、ガス種の変更または結露の発生を区別するための判定値を、ガス種により異なる伝搬時間に基づいて複数設定していたが、本実施の形態2では、伝搬時間および計測流路1内のガス温度に基づいて、判定値を複数設定している。このような構成の一例について、図5図7を参照して具体的に説明する。
【0047】
図5に示すように、本実施の形態に係るガス遮断装置は、前記実施の形態1に係るガス遮断装置と同様に、計測流路1に設置される一対の超音波送受信器2,3と、流量計測手段20と、制御手段21と、遮断手段22と、報知手段23とを備えており、流量計測手段20は、切替手段4、送信手段5、受信手段6、増幅手段7、基準比較手段8、基準電圧設定手段9、到達点判定手段10、伝搬時間計測手段11、流量演算手段12、および結露判定手段13に加えて、計測流路1内のガス温度を計測する温度計測手段14を備えている。
【0048】
温度計測手段14は、計測流路1内のガス温度を計測して結露判定手段13に出力できるものであればよく、その具体的な構成は特に限定されない。温度計測手段14としては、例えば、公知の種々の温度センサー等を好適に用いることができる。判定値は、伝搬時間およびガス温度に応じて複数設定されているので、結露判定手段13は、伝搬時間計測手段11から伝搬時間を取得するとともに、温度計測手段14からガス温度を取得し、これら伝搬時間およびガス温度に対して設定される判定値と、増幅手段7で調整された増幅度とを比較する。増幅度が判定値を超えて変化していれば、計測流路1内に結露が発生していると判定する。
【0049】
ガス温度は、ガス遮断装置の使用条件または使用環境等に応じて、複数の範囲に設定されていればよい。ガス温度の範囲の一例としては、例えば、−10℃未満(所定範囲T−i)、−10℃以上〜+20℃未満(所定範囲T−ii)、+20℃以上〜+40℃未満(所定範囲T−iii)、および+40℃以上(所定範囲T−iv)等を挙げることができるが、特に限定されない。複数の判定値としては、例えば、前記実施の形態1で説明した所定範囲P−i(0〜t1秒)の伝搬時間に対して、所定範囲T−i,T−ii,T−iiiおよびT−ivそれぞれに上限値d51,d52,d53およびd54が設定される構成を挙げることができる。これら複数の判定値は、テーブル化されて図示しない記憶手段(例えば制御手段21が備える)に記憶され、結露判定手段13が適時参照できるように構成されてもよい。
【0050】
次に、結露判定手段13による結露判定の代表的な一例について、図6を参照して具体的に説明する。
【0051】
図6に示すように、まず、結露判定手段13は、増幅手段7で変更された増幅度を取得し(ステップS21)、伝搬時間計測手段11から伝搬時間を取得し(ステップS22)、さらに温度計測手段14からガス温度を取得する(ステップS23)。そして、初期値以上と判定された増幅度が、取得された伝搬時間およびガス温度に対して設定される判定値を超えているか否かを判定する(ステップS24)。
【0052】
増幅度が判定値を超えていなければ(ステップS24でNO)結露判定を終了する。増幅度が判定値を超えていれば(ステップS24でYES)、結露判定手段13は、計測流路1内に結露が発生していると判定し(ステップS25)、結露判定を終了する。制御手段21は、結露判定手段13で結露の発生が判定されれば、遮断手段22を動作させてガス供給を遮断するとともに、報知手段23により結露の発生を報知させる。
【0053】
音速は温度の変化によって変化し得るため、計測流路1内において、例えば外気の影響によりガス温度が変化すると、ガス中を伝搬する超音波の音速も変化し、伝搬時間も変化し得る。常温の範囲内であれば、ガス温度の変化による伝搬時間の変化は実質的に無視できることも多い。しかしながら、ガス遮断装置の使用環境、あるいは、変更され得る具体的なガス種等によっては、結露判定においてガス温度の変化による伝搬時間の変化を考慮した方が好ましい場合がある。そこで、本実施の形態のように、伝搬時間およびガス温度に対して複数の判定値を設定することより、さらに一層良好な結露判定を実現することができる。
【0054】
なお、本実施の形態における結露判定では、増幅手段7で変更された増幅度が初期値以上であるか否かを判定するステップが含まれてもよい。具体的には、図7に示すように、結露判定手段13は、増幅手段7で変更された増幅度を取得し(ステップS21)、この増幅度が初期値以上であるか否かを判定する(ステップS26)。初期値以上でなければ(ステップS26でNO)結露判定を終了し、初期値以上であれば(ステップS26でYES)、前述した伝搬時間の取得(ステップS22)以降の結露判定を実施する。なお、以降の結露判定は図6に示すフローと同様であるため、その説明は省略する。
【0055】
流量計測手段20では、ガス流量を計測する限り、伝搬時間計測手段11が超音波の伝搬時間を取得するが、温度計測手段14によるガス温度の計測は、ガス流量の計測には必須ではない。結露判定手段13において、取得した増幅度が初期値未満であるときに結露判定を終了させれば、ガス温度を取得する必要がなくなるので、温度計測手段14によるガス温度の計測頻度を減らすことができる。また、増幅度が初期値以上であるか否かを判定するのであれば、判定値は、増幅度の上限としての絶対値ではなく、初期値に上乗せする値として設定することができる。この場合、上乗せ値のみを伝搬時間およびガス温度に基づいて分類してテーブル化することができる。
【0056】
(実施の形態3)
前記実施の形態1および2では、結露判定手段13は、結露判定に用いられる伝搬時間(実施の形態2では伝搬時間およびガス温度)が1回の計測値であったが、本実施の形態3では、伝搬時間(およびガス温度)として、所定時刻を起点とした所定時間内で複数回計測した計測値の平均値を用いている。このような構成の一例について、図8を参照して具体的に説明する。
【0057】
図8に示すように、まず、結露判定手段13は、所定時刻を起点として、増幅度、伝搬時間、およびガス温度を取得し(ステップS31)、所定の計測時間が経過したか否かを判定する(ステップS32)。経過していなければ(ステップS32でNO)、結露判定手段13は、増幅度、伝搬時間、およびガス温度の取得を繰り返す(ステップS31に戻る)。経過していれば(ステップS32でYES)、計測時間内に取得された増幅度、伝搬時間、およびガス温度の計測値の平均値を算出する(ステップS33)。
【0058】
これらの平均値が得られれば、結露判定手段13は、初期値以上と判定された増幅度の平均値が、伝搬時間およびガス温度の平均値に対して設定される判定値を超えているか否かを判定する(ステップS34)。増幅度の平均値が判定値を超えていなければ(ステップS34でNO)結露判定を終了する。増幅度の平均値が判定値を超えていれば(ステップS34でYES)、結露判定手段13は、計測流路1内に結露が発生していると判定し(ステップS35)、結露判定を終了する。制御手段21は、結露判定手段13で結露の発生が判定されれば、遮断手段22を動作させてガス供給を遮断するとともに、報知手段23により結露の発生を報知させる。
【0059】
本実施の形態では、平均値は、所定時刻を起点として設定される所定の計測時間内で計測された複数の計測値(取得値)の平均値となっている。また、制御手段21は、遮断手段22および報知手段23を所定時刻に動作するように制御することができる。具体的な所定時刻は適宜設定することができるが、平均値を取得する起点となる第一の所定時刻としては、深夜の時間帯に属する時刻を設定することができ、遮断手段22および報知手段23を動作させる第二の所定時刻としては、朝または午前中の時間帯に属する時刻を設定することができる。
【0060】
結露は、たいてい外気温が低下する夜間に発生しやすい。ここで、特に深夜の場合、ガスユーザは就寝していることが多いため、ガスの使用量は非常に少ないことが想定される。また、ガス供給事業者も、深夜は通常休業していることが想定される。それゆえ、結露判定手段13は、深夜の時間帯に属する第一の所定時刻を起点として、所定の計測時間内に、増幅度、伝搬時間、およびガス温度について複数の計測値(取得値)を取得して平均値を算出し、結露を判定することで、より好適なタイミングで結露判定を実施することができる。
【0061】
また、第二の所定時刻を朝または午前中の時間帯に属する時刻として設定することにより、制御手段21は、ガスユーザが起床し、ガス供給事業者が営業を開始した時間帯を見計らって遮断手段22および報知手段23を動作させることになる。それゆえ、ガスユーザまたはガス供給事業者が対応できない時間帯に、ガス供給を遮断して結露の発生を報知するような事態を回避することができる。
【0062】
このように、伝搬時間(およびガス温度)として、複数回の計測値の平均値を用いることにより、伝搬時間(あるいはガス温度)の計測のばらつき)に由来する誤判定を有効に抑制することができるので、より正確に結露判定を行うことができる。また、所定時刻を起点として、増幅度および伝搬時間(並びにガス温度)の平均値を算出することにより、好適なタイミングで結露判定を実施することができる。
【0063】
ここで、本実施の形態では、増幅度、伝搬時間、およびガス温度のいずれについても平均値を算出しているが、前記実施の形態1のようにガス温度を用いる必要のない構成であれば、増幅度および伝搬時間について、計測値の平均値を算出すればよい。また、平均値は、所定時刻を起点として複数回計測された計測値を用いて算出されればよく、計測値の計測回数は特に限定されない。
【0064】
また、前記実施の形態1および2、並びに、本実施の形態3では、計測流路1に設置される超音波送受信器2,3は、図1または図5に例示するようにVパス方式で設置されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、超音波送受信器2,3はZパス方式等で設置されてもよい。
【0065】
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、結露判定が必要なガス遮断装置等の分野に広く用いることができ、特に、ガス種の変更に対応可能なガス遮断装置等の分野に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 計測流路
1a 設置面
1b 対向面
2 超音波送受信器
3 超音波送受信器
4 切替手段
5 送信手段
6 受信手段
7 増幅手段
8 基準比較手段
9 基準電圧設定手段
10 到達点判定手段
11 伝搬時間計測手段
12 流量演算手段
13 結露判定手段
14 温度計測手段
20 流量計測手段
21 制御手段
22 遮断手段
23 報知手段
30 ガス管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8