(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定の乾燥条件は、前記強制解除から前記所定時間が経過するという第一乾燥条件、または、前記増幅手段で調整された増幅度が所定範囲内であり、かつ、前記伝搬時間計測手段で計測された伝搬時間が所定範囲となる第二乾燥条件であり、
前記制御手段は、前記遮断手段によるガスの遮断を強制解除した後に、前記第一乾燥条件、または、前記第二乾燥条件、のいずれかが成立すれば、前記遮断手段により再度ガスを遮断させることを特徴とする、
請求項1または2に記載のガス遮断装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る代表的なガス遮断装置は、計測流路の上流側および下流側にそれぞれ設置された一対の超音波送受信器と、前記一対の超音波送受信器の送受信を切り替える切替手段と、前記切替手段により受信側に設定された前記超音波送受信器において、受信した超音波の信号が所定範囲の振幅になるように、信号の増幅度を調整して増幅する増幅手段と、前記超音波送受信器の一方から送信された超音波が、他方の前記超音波送受信器に受信されるまでの伝搬時間を計測する伝搬時間計測手段と、前記伝搬時間計測手段で計測された伝搬時間からガス流量を算出する流量演算手段と、前記増幅手段により調整される増幅度および前記伝搬時間計測手段で計測された前記伝搬時間に基づいてセンサ異常を判定するセンサ異常判定手段と、少なくとも前記センサ異常判定手段によりセンサ異常が判定されたときには、ガスを遮断する遮断手段と、操作入力手段と、制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記操作入力手段において所定操作または所定入力が行われれば、前記遮断手段によるガスの遮断を復帰させ、前記操作入力手段において前記所定操作または所定入力とは異なる特別操作または特別入力が行われれば、前記遮断手段によるガスの遮断を強制解除するとともに、強制解除した後には、所定の乾燥条件が成立するまでは前記遮断手段による再度の遮断を禁止する構成である。
【0011】
前記構成によれば、制御手段は、遮断手段によるガスの遮断を通常の手法で復帰させるだけでなく、通常の手法ではない特別な手法によりガスの遮断を強制的に解除するよう構成されている。また、ガスの遮断を強制的に解除した後には、遮断手段の再遮断を一定期間禁止する。それゆえ、例えば大規模な冠水といった有事が発生した場合に計測流路が浸水してセンサ異常が生じても、遮断手段によるガスの遮断を強制解除すれば、暫定的にガス流量を計測することができる。しかも、ガスの遮断を強制解除してガスを流し続けることにより、水が浸入した計測流路を乾燥させることも可能となる。これにより、計測流路内が浸水しても、ガス遮断装置を暫定的に再使用することができる。
【0012】
前記構成のガス遮断装置においては、前記所定の乾燥条件は、浸水した前記計測流路の内部の乾燥が完了する条件に基づいて決定される構成であってもよい。
【0013】
また、前記構成のガス遮断装置においては、前記所定の乾燥条件は、前記強制解除から前記所定時間が経過するという第一乾燥条件、または、前記増幅手段で調整された増幅度が所定範囲内であり、かつ、前記伝搬時間計測手段で計測された伝搬時間が所定範囲となる第二乾燥条件であり、前記制御手段は、前記遮断手段によるガスの遮断を強制解除した後に、前記第一乾燥条件、または、前記第二乾燥条件、のいずれかが成立すれば、前記遮断手段により再度ガスを遮断させる構成であってもよい。
【0014】
また、前記構成のガス遮断装置においては、前記第二乾燥条件における前記増幅度の前記所定範囲は、出荷時に設定された増幅度の初期値に基づいて決定される構成であってもよい。
【0015】
また、前記構成のガス遮断装置においては、前記第一乾燥条件または前記第二乾燥条件が成立したときに、前記計測流路の内部の乾燥が完了したと報知する報知手段をさらに備えている構成であってもよい。
【0016】
以下、本発明の代表的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0017】
(実施の形態1)
[ガス遮断装置の構成]
本実施の形態1に係るガス遮断装置は、
図1に示すように、計測流路1に設置される一対の超音波送受信器2,3と、流量計測手段20と、制御手段21と、遮断手段22と、操作入力手段23とを備えている。流量計測手段20は、切替手段4、送信手段5、受信手段6、増幅手段7、基準比較手段8、基準電圧設定手段9、到達点判定手段10、伝搬時間計測手段11、流量演算手段12、およびセンサ異常判定手段13を備えている。なお、計測流路1、超音波送受信器2,3、流量計測手段20、制御手段21、遮断手段22の具体的構成は特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。
【0018】
計測流路1は、ガス管30の一部に設けられており、天面(上面)である設置面1aと、設置面1aに対向する底面(下面)である対向面1bとを有している。超音波送受信器2,3は、いずれも計測流路1の同一側面となる設置面1aに設置されており、上流側には第一の超音波送受信器2が位置し、下流側には第二の超音波送受信器3が位置している。したがって、本実施の形態では、超音波送受信器2,3はVパス方式で配置されている。
【0019】
図1に示すように、超音波は、上側の設置面1aから下側の対向面1bに向かって送信され、対向面1bで設置面1aに向かって反射される。したがって、設置面1aは超音波の送信面または受信面(送受信面)であり、対向面1bは超音波の反射面である。なお、
図1に示す超音波の送受信例では、超音波送受信器2が送信側であり超音波送受信器3が受信側であるが、後述するように、切替手段4により送受信は切り替えられる。
【0020】
図1に示す矢印P1は、送信側の超音波送受信器2から送信されて対向面1bに達する超音波(送信波)の伝搬経路であり、矢印P2は、送信波が対向面1bで反射されて反射波となり、受信側の超音波送受信器3に達するまでの伝搬経路である。送信波は、ガスの流れ方向Vに対して角度θをなしている。
【0021】
切替手段4は、超音波送受信器2,3の一方を送信側に他方を受信側に切り替える。送信手段5は、切替手段4により送信側に切り替えられた超音波送受信器2,3から超音波を送信させる。受信手段6は、切替手段4により受信側に切り替えられた超音波送受信器3,2に超音波の反射波を受信させる。増幅手段7は、受信側の超音波送受信器2,3において、受信した超音波の信号(受信信号)が所定範囲の振幅になるように、受信信号の増幅度(ゲイン)を調整して増幅する。
【0022】
基準比較手段8は、増幅手段7で増幅された受信信号と予め設定される基準電圧とを比較する。基準電圧設定手段9は、増幅手段7の出力に基づく基準電圧を、基準比較手段8に対して出力する。到達点判定手段10は、基準比較手段8の出力と増幅手段7で増幅された受信信号とから、超音波の到達点を判定する。伝搬時間計測手段11は、到達点判定手段10の出力から超音波の伝搬時間を計測する。流量演算手段12は、伝搬時間計測手段11で計測された伝搬時間からガス流量を算出する。
【0023】
センサ異常判定手段13は、増幅手段7で調整された増幅度に基づいて、増幅手段7により調整される増幅度および伝搬時間計測手段11で計測された伝搬時間に基づいてセンサ異常を判定する。制御手段21は、前記構成の流量計測手段20による流量計測動作およびセンサ異常判定動作を制御するとともに、遮断手段22によるガス管30の遮断動作を制御する。
【0024】
例えば、センサ異常判定手段13は、増幅手段7で調整した増幅度が想定外となり、かつ、伝搬時間計測手段11で計測した伝搬時間が所定範囲内にあるときには、センサ異常判定手段13は、センサ異常であると判定する。制御手段21は、センサ異常の判定に基づいて、遮断手段22を動作させてガスを遮断する。なお、センサ異常判定手段13は、センサ異常が継続的であるか一過的な可能性があるかを判定し、一過的であると判定すれば、センサ異常であるとの判定を解除する信号を生成してもよい(特許文献1参照)。制御手段21は、解除の信号に基づいて、遮断手段22によるガスの遮断を復帰(解除)する。
【0025】
遮断手段22は、制御手段21の制御によりガス管30内でのガス供給を遮断する。この遮断手段22は、操作入力手段23において所定操作または所定入力(所定操作等)が行われれば、制御手段21の制御によりガスの遮断を復帰する。また、操作入力手段23において所定操作等とは異なる特別操作または特別入力(特別操作等)が行われれば、制御手段21の制御により、ガスの遮断を強制解除するとともに、強制解除した後には、所定の乾燥条件が成立するまでは再度のガスの遮断を禁止する。
【0026】
なお、
図1(並びに、後述する実施の形態2で参照する
図5)では、操作入力手段23に対する所定操作等を、図示の便宜上、白抜きのブロック矢印M1で示し、特別操作等を、網掛けのブロック矢印M2で示している。
【0027】
操作入力手段23は、ユーザによる操作または入力により制御手段21に対して種々の情報を入力する。本実施の形態では、前記の通り、遮断手段22によるガスの遮断を復帰するための所定操作等と、遮断手段22によるガスの遮断を強制解除するための特別操作等と、を実行可能な構成であればよい。操作入力手段23の具体的な構成は特に限定されないが、例えば、各種のスイッチのような操作機器であってもよいし、通信電文を入力可能とする通信機器であってもよいし、これらの組合せであってもよい。
【0028】
所定操作等の具体的な手法は特に限定されず、例えば、操作入力手段23が公知のスイッチであれば、このスイッチを単純に押す操作を挙げることができる。また、特別操作等は、所定操作等とは異なる手法であればよいが、ガスの遮断を強制解除するための特別な操作等であるため、通常の操作等では実施しないような、所定操作等よりも煩雑な手法を挙げることができる。例えば、操作入力手段23が公知のスイッチであれば、特別操作等としては、このスイッチを長時間押し続けたり、複数のスイッチを同時に押し続けたりする操作等を挙げることができる。
【0029】
前記構成のガス遮断装置において、制御手段21の制御による流量計測手段20での流量計測について説明する。制御手段21は、流量計測の開始に伴って送信手段5を動作させ、超音波送受信器2,3の一方、例えば、第一の超音波送受信器2から超音波を送信させるとともに、伝搬時間計測手段11を動作させて計時を開始する。第一の超音波送受信器2からの送信波(矢印P1)は、計測流路1内のガス中を伝搬し、対向面1bで反射されて反射波(矢印P2)となり、第二の超音波送受信器3で受信される。
【0030】
受信された超音波の信号(受信信号)は、受信手段6を介して増幅手段7に出力される。増幅手段7では、制御手段21の制御により、受信信号の増幅度(ゲイン)を調整して、受信信号の波形が一定の振幅になるように増幅する。なお、増幅度の調整方法については後述する。
【0031】
増幅手段7で増幅された受信信号は、基準比較手段8、基準電圧設定手段9、到達点判定手段10に出力される。基準電圧設定手段9は増幅手段7の出力のピーク電圧に対して所定比率の基準電圧を発生し、基準比較手段8へ出力する。基準比較手段8は増幅手段7の出力(増幅された受信信号)と基準電圧設定手段9からの出力(基準電圧)とを比較し、比較結果を到達点判定手段10に出力する。到達点判定手段10では、後述するゼロクロス点を超音波の到達点として判定し、伝搬時間計測手段11に出力する。伝搬時間計測手段11は、計時開始から到達点までの時間を伝搬時間として計測する。
【0032】
制御手段21は、超音波送受信器2,3の送受信を切替手段4で切り替え、前記と同様に、第二の超音波送受信器3から超音波を送信し、第一の超音波送受信器2で受信させるとともに、伝搬時間計測手段11により伝搬時間を計測させる。そして、前述した一連の超音波送受信動作を予め設定された回数繰り返し行う。計測された伝搬時間は流量演算手段12に出力され、流量値が算出される。なお、流量値の算出方法は、公知の方法を好適に用いることができるので、具体的な説明は省略する。
【0033】
[増幅度の調整]
次に、増幅手段7における増幅度の調整方法の代表的な一例と、増幅度による結露判定とについて、到達点判定手段10による到達点判定方法とともに、
図2(A),(B)並びに
図3を参照して具体的に説明する。
【0034】
図2(A)に示すように、受信信号Aの波形(増幅信号の出力)は複数のピークを有しているが、到達点判定手段10では、通常、受信から何番目かの波を特定して、その波において、受信信号Aの符号が正から負に変わる「最初の負のゼロクロス点p」を到達点として判定する。本実施の形態では、第4波のゼロクロス点pを判定する。
【0035】
基準電圧設定手段9は、第4波のゼロクロス点pを判定するために、受信信号Aの第3波および第4波のピーク電圧値の中点となる電圧値を基準電圧Dとして設定する。基準比較手段8は、受信信号Aと基準電圧Dとを比較し、
図2(A)の信号出力タイミングtに示すように、これらの大小関係が反転した時点で到達点判定手段10に出力信号Bを出力する。到達点判定手段10では、
図2(A)に示す最初の負のゼロクロス点pを超音波の到達点として判定し、出力信号Cを伝搬時間計測手段11に出力する。
【0036】
ここで、受信信号Aは、増幅手段7により一定の振幅となるように増幅されたものである。増幅手段7は、例えば
図2(B)に示すように、受信信号Aの第4波の最大電圧値(ピーク値)が、所定の電圧範囲(電圧範囲の下限R1および上限R2の間)に入るように、増幅度(ゲイン値、増幅率)を調整する。
【0037】
図2(B)において実線の受信信号A0は、所定の電圧範囲に入っているが、長破線の受信信号A1は、最大電圧値が電圧範囲の下限R1を下回っており、短破線の受信信号A2は、最大電圧値が電圧範囲の上限R2を上回っている。このような場合には増幅手段7は、制御手段21の制御により、最大電圧値が所定の電圧範囲内に入るように、増幅度を調整する。受信信号A1であれば増幅度を上昇させ、受信信号A2であれば増幅度を下降させる。このような増幅度の調整動作は、流量計測毎に行われる。
【0038】
ここで、水の存在とガス種の変更との間では、超音波の伝搬時間に相違があることが明らかとなった。水の存在では、増幅度が上昇しても伝搬時間そのものは大きく変化しない。これに対して、ガス種の変更では、通常、増幅度の上昇とともに伝搬時間も大きく変化する。そこで、センサ異常判定手段13では、例えば、増幅手段7で調整された増幅度が所定範囲から外れ、かつ、伝搬時間計測手段11で計測された伝搬時間が所定範囲である場合に、計測流路1が浸水していると判定する。なお、センサ異常判定手段13では、調整された増幅度の変化が所定値以上であり、伝搬時間が所定範囲内である場合に、計測流路1が浸水していると判定してもよい。
【0039】
[ガスの遮断の強制解除]
次に、制御手段21によるガスの遮断を強制解除する制御の代表的な一例について、具体的に説明する。本実施の形態では、制御手段21は、遮断手段22によるガスの遮断を強制解除した後に、所定の乾燥条件が成立した場合に、計測流路1の乾燥が完了したと判定して、遮断手段22によりガスを再遮断させる。この乾燥条件としては、例えば、強制解除から所定時間が経過するという第一乾燥条件、または、増幅手段7で調整された増幅度が所定範囲内であり、かつ、伝搬時間計測手段11で計測された伝搬時間が所定範囲となる第二乾燥条件、を挙げることができる。
【0040】
まず、第一乾燥条件に基づいて乾燥の完了を判定する例について、
図3を参照して説明する。流量計測手段20のセンサ異常判定手段13がセンサ異常であることを判定し、
図3に示すように、制御手段21がセンサ異常判定の結果を取得すると(ステップS11)、制御手段21は、遮断手段22を動作させてガス供給を遮断する(ステップS12)。その後、ユーザが操作入力手段23により特別操作等を行うことにより、制御手段21に強制解除の指令が入力されれば(ステップS13)、制御手段21は、遮断手段22によるガスの遮断を強制解除するとともに、遮断手段22による再遮断を禁止する(ステップS14)。
【0041】
その後、制御手段21は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS15)。所定時間が経過していなければ(ステップS15でNO)、遮断手段22による再遮断の禁止を継続する(ステップS14に戻る)。一方、所定時間が経過していれば(ステップS15でYES)、遮断手段22を動作させてガスを再遮断し(ステップS16)、強制解除の制御を終了する。ガスが再遮断された後に、ユーザが操作入力手段23を所定操作等すれば、計測流路1の乾燥は(実質的に)完了しているため、ガスの遮断を復帰させることができる。
【0042】
ここで、ガスの遮断を強制解除した後に経過を判定する所定時間は、特に限定されないものの、浸水した計測流路1が乾燥する時間に基づいて決定することができる。例えば、浸水した計測流路1のモデルを準備し、ガスを継続的に流し続けて乾燥するまでの時間(乾燥時間)を、実験またはシミュレーションにより求め、この時間を所定時間として設定することができる。また、ガスの遮断を強制解除するということは、有事の暫定使用を可能とすることである。そのため、所定時間としては、実際に乾燥が完了していなくても、暫定使用のために乾燥したと見なせるような時間として設定することもできる。これにより、所定時間が経過すれば、制御手段21(ガス遮断装置)は、計測流路1が乾燥したものと自動的に判定することができる。
【0043】
次に、第二乾燥条件に基づいて乾燥の完了を判定する例について、
図4を参照して説明する。
図4に示すように、制御手段21がセンサ異常判定の結果を取得すると(ステップS21)、制御手段21は、遮断手段22を動作させてガス供給を遮断する(ステップS22)。その後、ユーザが操作入力手段23により特別操作等を行うことにより、制御手段21に強制解除の指令が入力されれば(ステップS23)、制御手段21は、遮断手段22によるガスの遮断を強制解除するとともに、遮断手段22による再遮断を禁止する(ステップS24)。ここまでは
図3に示す例と同様である。
【0044】
その後、制御手段21は、増幅手段7から調整された増幅度を取得し(ステップS25)、この増幅度が所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS26)。増幅度が所定範囲内でなければ(ステップS26でNO)、計測流路1内に水が残存している可能性があるため、遮断手段22による再遮断の禁止を継続する(ステップS24に戻る)。一方、増幅度が所定範囲内であれば(ステップS26でYES)、制御手段21は、伝搬時間計測手段11から伝搬時間を取得する(ステップS27)。
【0045】
制御手段21は、取得した伝搬時間が所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS28)。伝搬時間が所定範囲内でなければ(ステップS28でNO)、計測流路1内に水が残存している可能性があるため、遮断手段22による再遮断の禁止を継続する(ステップS24に戻る)。一方、伝搬時間が所定範囲内であれば(ステップS28でYES)、遮断手段22を動作させてガスを再遮断し(ステップS29)、強制解除の制御を終了する。ガスが再遮断された後に、ユーザが操作入力手段23を所定操作等すれば、計測流路1の乾燥は(実質的に)完了しているため、ガスの遮断を復帰させることができる。
【0046】
なお、乾燥条件は、第一乾燥条件または第二乾燥条件に限定されず、これら以外にも、計測流路1の乾燥を判定できる条件があれば、制御手段21による計測流路1の乾燥の自動判定に利用することができる。また、
図3または
図4に示す例では、増幅度は1回の調整値であり、伝搬時間は1回の計測値であるが、これらに限定されず、増幅度および伝搬時間の少なくとも一方は、所定期間内の平均値であってもよい。
【0047】
さらに、第二乾燥条件における増幅度の所定範囲は、出荷時に設定された増幅度の初期値に基づいて決定することができる。例えば、増幅度の初期値を中央値として、水の存在下における増幅度の変化を考慮して上限および下限を設定すればよい。また、第二乾燥条件における伝搬時間の所定範囲は、計測対象になるガス種に応じて適宜決定すればよい。
【0048】
このように、本実施の形態に係るガス遮断装置では、制御手段21は、遮断手段22による遮断を通常の手法で復帰させるだけでなく、通常の手法ではない特別な手法によりガスの遮断を強制的に解除するよう構成されている。また、遮断を強制的に解除した後には、遮断手段22の再遮断を一定期間禁止する。これにより、計測流路1内が浸水した状態であっても、ガス流量の計測を再開してガスメータとして暫定的な使用が可能となる。
【0049】
例えば、ある地域全体が大規模に冠水する有事が発生したとする。このとき、当該地域に設置されるほとんど全てのガスメータも冠水すれば、それぞれのガスメータでは、計測流路1内が浸水したり、浸水に至らなくても無視できない量の水が浸入したりすることになる。このような場合、理想的には、当該地域に設置される全てのガスメータを交換することになる。しかしながら、大規模な冠水の場合、例えば数百〜数万台にも及ぶガスメータが冠水することになる。このような大量のガスメータを短期間に交換することは非常に難しい。
【0050】
そこで、冠水したガスメータを暫定的に使用するとしても、計測流路1内に水が浸入した状態では、ガスメータは、通常、センサ異常と判定してガスを遮断してしまう。そこで、例えば特許文献1に開示されるように、ガスの遮断を復帰させる機能をガスメータに搭載したとしても、水の浸入は一過性の異常ではないため、復帰後すぐにセンサ異常と判定され、ガスが再遮断されてしまう。このような状況では、ガスメータを暫定的に使用することができない。
【0051】
また、ガスメータが冠水した状況では、前記の通り遮断手段22によりガスが遮断される。そこで、ガス管30からガスメータ(もしくは流量計測手段20)を取り外して計測流路1から水を抜き、再びガス管30に取り付けることになる。このとき、水を抜いたとしても計測流路1内には少量の水が残存するため、ガスメータはセンサ異常と判定してしまう。この場合、ガス供給を再開してガスを流し続けることにより、計測流路1を乾燥させることが可能となる。ところが、計測流路1内に水が存在すればセンサ異常と判定されるので、ガス供給を再開することができず、計測流路1を乾燥させることが困難となる。
【0052】
これに対して、本実施の形態では、前記の通り、特別操作等によりガスの遮断を強制解除することができる。そこで、ガスが遮断されている状態でガスメータを取り外して計測流路1から水を抜き、ガスメータを取り付けた後に特別操作等することで、ガスを暫定的に流すことができる。これにより、ガスの再遮断が生じることなく計測流路1を乾燥させることができる。
【0053】
また、本実施の形態では、前記の通り、所定時間が経過したり(第一乾燥条件)増幅度および伝搬時間が所定範囲内に入ったり(第二乾燥条件)すれば、計測流路1が乾燥したと判定する。これにより、ガスメータ(ガス遮断装置)が計測流路1の乾燥を自己判定できるので、ガスの遮断を強制解除して放置しておくだけで、それぞれのガスメータが計測流路1を乾燥させ、ガスの流量計測を暫定的に再開することができる。
【0054】
このように、本実施の形態によれば、大規模な冠水といった有事が発生した場合に計測流路1が浸水してセンサ異常が生じても、遮断手段22によるガスの遮断を強制解除すれば、暫定的にガス流量を計測することができる。しかも、ガスの遮断を強制解除してガスを流し続けることにより、水が浸入した計測流路1を乾燥させることも可能となる。これにより、計測流路1内が浸水しても、ガス遮断装置を暫定的に再使用することができる。
【0055】
また、本実施の形態では、第一乾燥条件飲み、または第二乾燥条件のみで計測流路1が乾燥したと判定するガス遮断装置についてそれぞれ説明したが、第一乾燥条件または第二乾燥条件のいずれかで計測流路1が乾燥したと判定するガス遮断装置であってもよい。
【0056】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、制御手段21は、遮断手段22によるガスの遮断を強制解除し、計測流路1が乾燥したと自動判定してから、遮断手段22を動作させてガスを再遮断しているが、本実施の形態2では、計測流路1の乾燥を自動判定すれば、ユーザに対して乾燥を報知する構成となっている。このような構成の一例について、
図5および
図6を参照して具体的に説明する。
【0057】
図5に示すように、本実施の形態に係るガス遮断装置は、前記実施の形態1に係るガス遮断装置と同様に、計測流路1に設置される一対の超音波送受信器2,3と、流量計測手段20と、制御手段21と、遮断手段22と、操作入力手段23と、報知手段24とを備えている。
【0058】
報知手段24は、制御手段21の制御により、少なくとも計測流路1が乾燥したことをユーザに報知する。前記実施の形態1では、計測流路1の乾燥は、第一乾燥条件または第二乾燥条件に基づいて判定しているので、報知手段24は、これらいずれかの乾燥条件(もしくは他の乾燥条件)が成立したときに、計測流路1の内部の乾燥が完了したことを報知できればよい。
【0059】
報知手段24は、計測流路1の乾燥の完了だけを報知するのではなく、さまざまな情報をユーザに対して報知するように構成されていればよい。具体的な報知手段24としては、公知のディスプレイ等の表示機器、公知の発光素子等であればよいが、ガスユーザまたはガス供給事業者に対して、公共または専用の通信手段により通報する通信機器であってもよい。また、この通信機器は、インターネットを利用して通報する構成であってもよい。さらに、操作入力手段23に通信機器が含まれる場合、この通信機器が、操作入力手段23および報知手段24を兼用してもよい。
【0060】
次に、制御手段21によるガスの遮断を強制解除するとともに計測流路1の乾燥の完了を報知する制御の代表的な一例について、
図6を参照して具体的に説明する。
【0061】
図6に示すように、制御手段21がセンサ異常判定の結果を取得すると(ステップS31)、制御手段21は、遮断手段22を動作させてガス供給を遮断する(ステップS32)。その後、ユーザが操作入力手段23により特別操作等を行うことにより、制御手段21に強制解除の指令が入力されれば(ステップS33)、制御手段21は、遮断手段22によるガスの遮断を強制解除するとともに、遮断手段22によるガスの再遮断を禁止する(ステップS34)。
【0062】
その後、制御手段21は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS35)。所定時間が経過していなければ(ステップS35でNO)、遮断手段22による再遮断の禁止を継続する(ステップS34に戻る)。一方、所定時間が経過していれば(ステップS35でYES)、制御手段21は、計測流路1の乾燥が完了したことを報知手段24に報知させる(ステップS36)。その後、制御手段21は、遮断手段22を動作させてガスを再遮断し(ステップS37)、強制解除の制御を終了する。
【0063】
このように、本実施の形態では、所定時間が経過したり(第一乾燥条件)、増幅度および伝搬時間が所定範囲内に入ったり(第二乾燥条件)すれば、計測流路1が乾燥したと判定するとともに、報知手段24が計測流路1の乾燥の完了を報知することになる。これにより、ガスメータ(ガス遮断装置)が計測流路1の乾燥を自己判定するだけでなく、ガスメータが計測流路1の乾燥が乾燥したことをユーザに報知することができる。それゆえ、ガスの遮断を強制解除して放置しておくだけで、それぞれのガスメータが計測流路1を乾燥させ、かつ、乾燥の完了をユーザに報知することになる。その結果、有事を復旧する作業員にとって、ガスメータを容易に暫定使用することができるとともに、暫定使用できないガスメータを交換することも容易となる。
【0064】
なお、前記実施の形態1および本実施の形態2では、計測流路1に設置される超音波送受信器2,3は、
図1または
図5に例示するようにVパス方式で設置されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、超音波送受信器2,3はZパス方式で設置されてもよい。
【0065】
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。