(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の一般的な建設機械の油圧駆動装置においては、旋回操作時にフロント作業機の
姿勢によって上部旋回体の慣性モーメントが変化してもそれに対する対応がなされていなかった。そのため、超小旋回、後方小旋回といった機械後端部の小さな機械では、フロント作業機の
姿勢により上部旋回体の慣性モーメントが大きく変化し、旋回操作上の不具合が生じていた。例えば、慣性モーメントが小さいときに方向切換弁の操作性能を適応させると、慣性モーメントが大きくなったときに旋回速度が遅くなり、反対に、慣性モーメントが大きいときに方向切換弁の操作性能を適応させると、慣性モーメントが小さくなったときに旋回速度が速くなり、オペレータの揺れが旋回用の操作レバーに伝わり、ハンチングを起こすという不具合が発生していた。
【0005】
特許文献1に記載の油圧駆動装置では、リモコン弁と方向切換弁の間に2段リリーフ弁を組み込むことで、上部旋回体の慣性モーメントが小さくなったときに発生する旋回ハンチングを防止できるようにしている。
【0006】
しかし、特許文献1の構成では、方向切換弁がフルストロークしてしまうため、方向切換弁のブリードオフ開口の閉じ切り点などのメータリングの変曲点や、上部旋回体の位置合わせのために旋回用の操作レバー装置をフル操作した状態から少し戻したりした場合の方向切換弁のメータリングの変化に対応することができない。また、上部旋回体の慣性モーメントが大きいときと小さいときとで方向切換弁の切換時間が変わるため、上部旋回体の慣性モーメントが大きいときと小さいときとで旋回の加速性や操作性が変わってしまうという問題もある。
【0007】
本発明の目的は、旋回用方向切換弁のブリードオフ開口の閉じ切り点などのメータリングの変曲点や、上部旋回体の慣性モーメントの大小で旋回の加速性や操作性に影響を与えること無く、上部旋回体の慣性モーメントの変化によって発生する旋回ハンチングを防止することができる建設機械の油圧駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の油圧ポンプと、前記複数の油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータと、前記複数の油圧ポンプから前記複数のアクチュエータに供給される圧油の流れをそれぞれ制御するオープンセンタ型の複数の方向切換弁と、パイロット油圧源に接続され、このパイロット油圧源の油圧を元圧として前記複数の方向切換弁を操作するための制御パイロット圧を生成する複数の操作レバー装置とを備え、前記複数のアクチュエータは、前記複数の油圧ポンプの少なくとも1つの油圧ポンプの吐出油が供給され、建設機械のフロント作業機が上下動可能に取り付けられた上部旋回体を駆動するための旋回モータを含み、前記複数の方向切換弁は前記旋回モータに供給される圧油の流れを制御する旋回用の方向切換弁を含み、前記複数の操作レバー装置は前記旋回用の方向切換弁を操作するための制御パイロット圧を生成する旋回用の操作レバー装置を含む建設機械の油圧駆動装置において、前記旋回用の操作レバー装置によって生成される旋回用の制御パイロット圧を前記旋回用の方向切換弁に導く油路に配置され、電磁弁を含む制御パイロット圧補正装置と、前記フロント作業機の姿勢によって変化する前記上部旋回体
における旋回動作時の慣性モーメントに応じて前記制御パイロット圧補正装置の電磁弁を駆動する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記フロント作業機の姿勢を検出する姿勢検出装置と、前記姿勢検出装置の検出値に基づいて、前記フロント作業機が前記上部旋回体
における旋回動作時の慣性モーメントが所定値より小さくなる姿勢にあるかどうかを判定し、前記フロント作業機が前記上部旋回体
における旋回動作時の慣性モーメントが前記所定値より小さくなる姿勢にあると判定したときに前記制御パイロット圧補正装置の電磁弁を駆動するコントローラとを備え、前記制御パイロット圧補正装置は、前記コントローラによって前記電磁弁が駆動されることで、前記旋回用の方向切換弁の最大ストロークをフルストロークより小さい所定のストロークに制限
するとともに、前記旋回用の方向切換弁の最大ストロークをブリードオフ開口の閉じ切り点よりも小さくするように前記旋回用の制御パイロット圧を補正するものとする。
【0009】
このように制御パイロット圧補正装置と制御装置を設け、旋回用の方向切換弁の最大ストロークをフルストロークより小さい所定のストロークに制限
するとともに、前記旋回用の方向切換弁の最大ストロークをブリードオフ開口の閉じ切り点よりも小さくするように旋回用の制御パイロット圧を補正することにより、フロント作業機を含む上部旋回体
における旋回動作時の慣性モーメントが所定値より小さくなる姿勢にフロント作業機があるとき、旋回用方向切換弁はフルストロークせず、
最大ストロークがブリードオフ開口の閉じ切り点よりも小さくなるため、旋回用方向切換弁のブリードオフ開口は閉じ切らず、ブリードオフ開口が閉じ切られる場合に、油圧ポンプの吐出油の全量が旋回モータへ流入する際のショックが発生せず、旋回ハンチングを防止することができる。また、上部旋回体の位置合わせのために旋回用の操作レバー装置の操作レバーをフル操作した状態から少し戻したりした場合にもスプールはブリードオフ開口の閉じ切り点を通らないため、メータリングの変曲点の影響を受けず、旋回用方向切換弁のメータリングの変化に対応することができる。更に、上部旋回体
における旋回動作時の慣性モーメントが大きい場合と小さい場合とでメータイン開口のメータリング特性が変化しないため、上部旋回体
における旋回動作時の慣性モーメントの大小で旋回の加速性や操作性に影響を与えること無く、上部旋回体の慣性モーメントの変化によって発生する旋回ハンチングを防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、旋回用方向切換弁のメータイン開口の閉じ切り点などのメータリングの変曲点や、上部旋回体
における旋回動作時の慣性モーメントの大小で旋回の加速性や操作性に影響を与えること無く、上部旋回体の慣性モーメントの変化によって発生する旋回ハンチングを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
【0013】
<第1の実施の形態>
〜構成〜
図1は本発明の第1の実施の形態である建設機械の油圧駆動装置を示す油圧回路図である。本実施の形態において、建設機械は小型の油圧ショベルである。
【0014】
図1において、本実施の形態の油圧駆動装置は、原動機(例えばディーゼルエンジン、以下エンジンという)1と、原動機1によって駆動されるメインポンプである第1油圧ポンプP1、第2油圧ポンプP2及び第3油圧ポンプP3と、第1,第2及び第3油圧ポンプP1,P2,P3と連動してエンジン1により駆動されるパイロットポンプP4と、第1油圧ポンプP1から吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータ17,18,19と、第2油圧ポンプP2から吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータ15,16と、第3油圧ポンプP3から吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータ12,13,14と、コントロールバルブ2とを備えている。
【0015】
第1及び第2油圧ポンプP1,P2は可変容量型の油圧ポンプである。また、第1及び第2油圧ポンプP1,P2は共通のレギュレータ41を備えたスプリットフロータイプの油圧ポンプ42によって構成され、スプリットフロータイプの油圧ポンプ42の2つの吐出ポートが第1及び第2油圧ポンプP1,P2を提供している。第3油圧ポンプP3は固定容量型の油圧ポンプである。レギュレータ41は、第1、第2及び第3油圧ポンプP1,P2,P3の吐出圧が導かれ、それらの圧力の上昇によって第1及び第2油圧ポンプP1,P2の傾転(容量)を減少させるトルク制御(馬力制御)ピストン41a,41b,41cと、第1、第2及び第3油圧ポンプP1,P2,P3が利用可能な最大トルクを設定するバネ41eとを備えている。小型の油圧ショベルでは設置スペースの制約からスプリットフロータイプの油圧ポンプ42を含む3ポンプシステムにて油圧駆動装置を構成することが有効である。
【0016】
アクチュエータ12はブレードシリンダであり、アクチュエータ13は旋回モータであり、アクチュエータ14はスイングシリンダであり、アクチュエータ15,17は右左の走行モータであり、アクチュエータ16はアームシリンダであり、アクチュエータ18はブームシリンダであり、アクチュエータ19はバケットシリンダである。
【0017】
コントロールバルブ2は、第1油圧ポンプP1の圧油供給油路に接続され、第1油圧ポンプP1からアクチュエータ17,18,19に供給される圧油の方向をそれぞれ制御するオープンセンタ型の複数の方向切換弁9,10,11と、第2油圧ポンプP2からアクチュエータ15,16に供給される圧油の方向をそれぞれ制御するオープンセンタ型の複数の方向切換弁7,8と、第3油圧ポンプP3からアクチュエータ12,13,14に供給される圧油の方向をそれぞれ制御するオープンセンタ型の複数の方向切換弁3,4,5と、第1,第2及び第3油圧ポンプP1,P2,P3の圧油供給油路に設けられ第1油圧ポンプP1の吐出圧を制限するメインリリーフ弁26と、第2油圧ポンプP2の吐出圧を制限するメインリリーフ弁27と、第3油圧ポンプP3の吐出圧を制限するメインリリーフ弁28とを有している。メインリリーフ弁26,27,28の出側はコントロールバルブ2内でタンク油路30に接続され、タンクTに接続されている。すなわち、本実施の形態の油圧駆動装置はオープンセンタ型の方向切換弁3〜11を備えたオープンセンタシステムとして構成されている。
【0018】
また、本実施の形態の油圧駆動装置は、パイロットポンプP4の圧油供給油路に接続され、パイロットポンプP4の圧力を一定に保つパイロットリリーフ弁29と、パイロットポンプP4の圧油供給油路に接続され、パイロットポンプP4の油圧を元圧として方向切換弁3〜11を操作するための制御パイロット圧a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k,l,m,n,o,pを生成するためのリモコン弁を備えた操作レバー装置20,21,22及び操作ペダル装置23,24とを備えている。操作レバー装置20はブーム用操作レバー装置20aとバケット用操作レバー装置20bとを有し、操作レバー装置21はアーム用操作レバー装置21aと旋回用操作レバー装置21bとを有している。操作レバー装置22はブレード用である。操作ペダル装置23は右走行用操作ペダル装置23aと左走行用操作ペダル装置23bとを有している。操作ペダル装置24はスイング用である。
【0019】
図2は本実施の形態に係わる小型の油圧ショベルの外観を示す図である。
図2において、油圧ショベルは、上部旋回体300と、下部走行体301と、フロント作業機302とを備え、上部旋回体300は下部走行体301を旋回モータ13の回動によって旋回が可能である。上部旋回体300の前部にはスイングポスト303が取り付けられ、このスイングポスト303にフロント作業機302が上下動可能に取り付けられている。フロント作業機302は多関節構造のブーム306、アーム307、バケット308を有し、操作レバー装置20,21の操作レバーを操作しブームシリンダ18、アームシリンダ16、バケットシリンダ19を伸縮させることでブーム306、アーム307、バケット308が回動し、フロント作業機302の姿勢が変化する。下部走行体301は左右のクローラ式走行装置301a,301bを備え、走行モータ15,17によって走行装置301a,301bを駆動することで走行を行う。左右のクローラ式走行装置301a,301b間の中央フレームにはブレード304が取り付けられ、ブレード304はブレードシリンダ12の伸縮により上下動作を行う。
【0020】
本実施の形態に係わる小型の油圧ショベルは、図示の如く機械後端部が小さく走行装置301a,301bの後端部より前側に位置している後方小旋回型の油圧ショベルであり、旋回時に後端旋回半径が車幅(左右のクローラ式走行装置301a,301b間の全幅)内に納まるように構成されている。ここで、一般に、後方小旋回型の油圧ショベルとは、旋回時に車体後方の安全が確保されるよう後端旋回半径比(後端旋回半径×2を車幅で除した値×100)が120%以内で、 フロント最小旋回半径比(フロント最小旋回半径または機体前部の旋回中心からの最大距離×2を車幅で除した値×100)が120%を超えるショベルであると定義されている。なお、本発明が適用される小型の油圧ショベルは、後端旋回半径比、フロント最小旋回半径比ともに120%以内である超小旋回型であってもよい。
【0021】
超小旋回、後方小旋回といった機械後端部の小さな機械では、フロント作業機302の
姿勢により上部旋回体300
における旋回動作時の慣性モーメント
(以下適宜、単に「慣性モーメント」ということがある)が大きく変化し、旋回操作上の不具合が生じていた。例えば、慣性モーメントが小さいときに旋回用方向切換弁4の操作性能を適応させると、慣性モーメントが大きくなったときに旋回速度が遅くなり、反対に、慣性モーメントが大きいときに旋回用方向切換弁4の操作性能を適応させると、慣性モーメントが小さくなったときに旋回速度が速くなり、オペレータの揺れが旋回用の操作レバー装置21bの操作レバーに伝わり、ハンチングを起こすという不具合が発生していた。
【0022】
図1に戻り、本実施の形態の油圧駆動装置はそのような課題を解決するものであり、上記構成に加え、旋回用操作レバー装置21bによって生成される旋回用の制御パイロット圧g,hを旋回用方向切換弁4の受圧部に導くパイロットライン(油路)に配置された電磁減圧弁31a,31bを含む制御パイロット圧補正装置31と、フロント作業機302の姿勢によって変化する上部旋回体300の慣性モーメントに応じて制御パイロット圧補正装置31の電磁減圧弁31a,31bを駆動する制御装置44とを備え、制御パイロット圧補正装置31は、制御装置44によって電磁減圧弁31a,31bが駆動されることで、旋回用方向切換弁4の最大ストロークをフルストロークより小さい所定のストローク(後述する位置IIIのストロークS4)に制限するように旋回用の制御パイロット圧g,hを補正する。
【0023】
制御装置44は、ブーム306とアーム307の回動支点にそれぞれ設けられた角度センサ32,33と、コントローラ34とを備えている。角度センサ32,33はフロント作業機302の姿勢を検出する姿勢検出装置である。姿勢検出装置として、角度センサ32,33に代えてブームシリンダ18及びアームシリンダ16のストロークを検出する位置センサを設けてもよい。
【0024】
コントローラ34は、角度センサ32,33(姿勢検出装置)の検出値に基づいて、フロント作業機302が上部旋回体300の慣性モーメントが所定値より小さくなる姿勢にあるかどうかを判定し、フロント作業機302が上部旋回体300の慣性モーメントが所定値より小さくなる姿勢にあると判定したときに制御パイロット圧補正装置31の電磁減圧弁31a,31bを駆動する。制御パイロット圧補正装置31は、コントローラ34によって電磁減圧弁31a,31bが駆動されることで、旋回用方向切換弁4の最大ストロークを上記所定のストロークに制限するように旋回用の制御パイロット圧g,hを補正する。
【0025】
図3はコントローラ34の演算機能を示すブロック図である。コントローラ34はフロント作業機姿勢判定部34aと電磁減圧弁駆動信号出力部34bとを有している。
【0026】
フロント作業機姿勢判定部34aは、角度センサ32,33の検出信号に基づいて、フロント作業機302がフロント作業機302を含む上部旋回体300の慣性モーメントが所定値より小さくなる姿勢にあるかどうかを判定する。この判定は、例えば上部旋回体300の慣性モーメントが所定値より小さくなる姿勢にあるときのブーム306の角度θb0とアーム307の角度θa0をしきい値として予め求めておき、角度センサ32で検出したブーム306の角度θbがθb0より大きく(θb>θb0)、角度センサ33で検出したアーム307の角度θaがθa0より小さい(θa<θa0)ときにフロント作業機302を含む上部旋回体300の慣性モーメントが所定値より小さくなる姿勢であると判定する。ここで、
図2に示すように、ブーム306の角度θbは水平方向に対するブーム306の角度として定義し、アーム307の角度θaはブーム306に対するアーム307の角度として定義する。また、上部旋回体300の慣性モーメントの所定値とは、オペレータが旋回用操作レバー装置21bの操作レバーをフル操作したときに、旋回速度が速くなり過ぎてハンチングを起こす慣性モーメントよりも小さく、その範囲内で最大の慣性モーメント或いはその最大の慣性モーメントよりも余裕値分だけ小さい慣性モーメントである。コントローラ34にはそのような慣性モーメントの値が図示しないメモリに記憶され、フロント作業機姿勢判定部34aはその値を用いて上記判定を行う。
【0027】
電磁減圧弁駆動信号出力部34bは、フロント作業機姿勢判定部34aにおいて、フロント作業機302がフロント作業機302を含む上部旋回体300の慣性モーメントが所定値より小さくなる姿勢にないと判定されたときは電磁減圧弁31a,31bをスタンバイ状態とする最小電流値を駆動信号(電気信号)として出力する。一方、電磁減圧弁駆動信号出力部34bは、フロント作業機302がフロント作業機302を含む上部旋回体300の慣性モーメントが所定値より小さくなる姿勢にあると判定されたときは、電磁減圧弁31a,31bに減圧目標圧力を設定するための電流値を駆動信号(電気信号)として出力する。減圧目標圧力とは、旋回用方向切換弁4の最大ストロークを上記所定のストロークに制限する圧力である。
【0028】
電磁減圧弁駆動信号出力部34bから電磁減圧弁31a,31bをスタンバイ状態とする最小電流値が駆動信号(電気信号)として出力されるとき、電磁減圧弁31a,31bは
図1に示す位置に保持され、旋回用操作レバー装置21bによって生成される旋回用の制御パイロット圧g,hはそのまま制御パイロット圧q,rとして出力される。電磁減圧弁駆動信号出力部34bから電磁減圧弁31a,31bに減圧目標圧力を設定するための電流値が駆動信号(電気信号)として出力されるとき、電磁減圧弁31a,31bは
図1に示す位置から旋回用操作レバー装置21bによって生成される旋回用の制御パイロット圧g,hをその減圧目標圧力に減圧する位置に切り換わる。このとき、旋回用操作レバー装置21bによって生成される旋回用の制御パイロット圧g,hが減圧目標圧力より低い場合はその旋回用の制御パイロット圧g,hはそのまま制御パイロット圧q,rとして出力され、旋回用の制御パイロット圧gが減圧目標圧力より高い場合はその旋回用の制御パイロット圧g,hはその減圧目標圧力に減圧され制御パイロット圧q,rとして出力される。
【0029】
図4はオープンセンタ型の旋回用方向切換弁4の開口面積特性を示す図である。
図4において、45は旋回用方向切換弁4のブリードオフ開口の開口面積特性であり、46は旋回用方向切換弁4のメータイン開口の開口面積特性であり、47は旋回用方向切換弁4のメータアウト開口の開口面積特性である。また、BOはブリードオフ開口、MIはメータイン開口、MOはメータアウト開口である。
【0030】
図4において、ブリードオフ開口BOの開口面積特性45、メータイン開口MIの開口面積特性46及びメータアウト開口MOの開口面積特性47はそれぞれ次のように設定されている。
【0031】
<ブリードオフ開口BOの開口面積特性45>
旋回用方向切換弁4が中立位置にあり、スプールストロークがS0のゼロであるとき、ブリードオフ開口は全開であり、開口面積は最大である。旋回用方向切換弁4が操作され、スプールストロークが増大するにしたがってブリードオフ開口は閉じて行き、開口面積は減少する。このとき、スプールストロークがS1までは開口面積の減少割合は大きく、スプールストロークがS1を超えると開口面積の減少割合は小さくなって開口面積は緩やかに減少し、スプールストロークがS3に達するとブリードオフ開口は全閉する。スプールストロークがS1からS3の開口面積の減少割合の小さい区間はブリードオフの流量をスプールストロークに応じて減少させるメータリング領域である。ブリードオフ開口が全閉するスプールストロークS3はブリードオフ開口の閉じ切り点であり、フルストロークSmaxよりも所定量だけ小さいストロークに設定されている。
【0032】
<メータイン開口MIの開口面積特性46>
スプールストロークがS0のゼロであるとき、メータイン開口は閉じており、開口面積はゼロである。旋回用方向切換弁4が操作され、スプールストロークがブリードオフ開口の開口面積の減少割合が変化するストロークであるS1に達するとメータイン開口は開き始め、スプールストロークが更に増大するにしたがってメータイン開口の開口面積は小さな増加割合で緩やかに増大し、スプールストロークがブリードオフ開口の閉じ切り点であるS3より少し手前のS2を超えるとメータイン開口の開口面積の増加割合は大きくなってメータイン開口の開口面積は急峻に増大し、フルストロークSmaxよりも少し手前でメータイン開口の開口面積は最大となる。スプールストロークがS1からS2の開口面積の増加割合の小さい区間はメータイン流量をスプールストロークに応じて増大させるメータリング領域である。
【0033】
<メータアウト開口MOの開口面積特性37>
スプールストロークがS0のゼロであるとき、メータアウト開口は閉じており、開口面積はゼロである。旋回用方向切換弁4が操作され、スプールストロークがS1に達するとメータアウト開口は開き始め、スプールストロークが更に増大するにしたがってメータアウト開口の開口面積はメータイン開口の開口面積の増加割合よりも小さな増加割合で緩やかに増大し、フルストロークSmaxよりも少し手前のストロークS3付近でメータアウト開口の開口面積は最大となる。スプールストロークがS1からS3の開口面積の増加割合の小さい区間はメータアウト流量をスプールストロークに応じて増大させるメータリング領域である。
【0034】
旋回用方向切換弁4は、旋回用方向切換弁4の操作レバーが操作されていないとき中立位置Iにあり、ブリードオフ開口は全開で、メータイン開口及びメータアウト開口は全閉である。旋回用方向切換弁4の操作レバーが
図1の左方向又は右方向にフル操作されるとき、電磁減圧弁31a,31bが
図1に示す位置に保持されている場合は、旋回用の制御パイロット圧g,hはそのまま出力され、旋回用方向切換弁4は
図4の左側又は右側のフルストロークSmaxの位置IIに切り換わり、ブリードオフ開口は全閉で、メータイン開口及びメータアウト開口は全開となる。一方、旋回用方向切換弁4の操作レバーが
図1の左方向又は右方向にフル操作されるとき、電磁減圧弁31a,31bが
図1に示す位置から減圧位置に切り換わっている場合は、旋回用の制御パイロット圧g,hは電磁減圧弁31a,31bの減圧目標圧力に減圧され、旋回用方向切換弁4の最大ストロークはフルストロークSmaxより小さいストロークS4に制限され、旋回用方向切換弁4はストロークS4の位置IIIに切り換わる。このとき、ブリードオフ開口は非常に小さいが閉じ切っておらず、メータイン開口はメータリング領域直後の開口面積の増加割合が増大し始めた状態にあり、メータアウト開口は全開直前の状態にある。
【0035】
〜動作〜
次に、本実施の形態の動作を説明する。
【0036】
<基本動作>
操作レバー装置20a,20bの操作レバー及び操作ペダル装置23bの操作ペダルが中立であるとき、方向切換弁9,10,11は中立位置にあり、第1油圧ポンプP1の吐出油は方向切換弁9,10,11を介してタンクTに戻される。操作レバー装置20a,20bの操作レバー及び操作ペダル装置23bの操作ペダルのいずれかを操作すると方向切換弁9,10,11が切り換えられ、各アクチュエータ(走行モータ17、ブームシリンダ18、バケットシリンダ19)に対する圧油の流入・排出方向と流量を制御し、各アクチュエータ(走行モータ17、ブームシリンダ18、バケットシリンダ19)を作動させる。
【0037】
操作レバー装置21aの操作レバー及び操作ペダル装置23aの操作ペダルが中立であるとき、方向切換弁7,8は中立位置にあり、第2油圧ポンプP2の吐出油は方向切換弁7,8を介してタンクTに戻される。操作レバー装置21aの操作レバー及び操作ペダル装置23aの操作ペダルのいずれかを操作すると、方向切換弁7,8が切り換えられ、各アクチュエータ(走行モータ15、アームシリンダ16)に対する圧油の流入・排出方向を制御し、各アクチュエータ(走行モータ15、アームシリンダ16)を作動させる。
【0038】
第3油圧ポンプP3についても同様であり、操作レバー装置21b,22の操作レバー及び操作ペダル装置24の操作ペダルが中立であるとき、第3油圧ポンプP3の吐出油は方向切換弁3,4,5を介してタンクTに戻される。操作レバー装置21b,22の操作レバー及び操作ペダル装置24の操作ペダルのいずれかを操作すると方向切換弁3,4,5が切り換えられ、各アクチュエータ(ブレードシリンダ12、旋回モータ13、スイングシリンダ14)に対する圧油の流入・排出方向を制御し、各アクチュエータ(ブレードシリンダ12、旋回モータ13、スイングシリンダ14)を作動させる。
【0039】
<旋回操作時の動作>
旋回操作を意図して、旋回用操作レバー装置21bの操作レバーを図示左方向に操作した場合、フロント作業機302の姿勢に応じて次のように動作する。
【0040】
フロント作業機302が、フロント作業機302を含む上部旋回体300の慣性モーメントが所定値以上となる姿勢、例えばフロント作業機302がMAXリーチとなる姿勢である場合、コントローラ34のフロント作業機姿勢判定部34aにおいて、角度センサ32,33で検出したブーム306の角度θbが角度θb0より小さく、角度センサ33で検出したアーム307の角度θaが角度θa0より大きく、フロント作業機302がフロント作業機302を含む上部旋回体300の慣性モーメントが所定値より小さくなる姿勢にないと判定され、電磁減圧弁駆動信号出力部34bから電磁減圧弁31a,31bをスタンバイ状態とする最小電流値の駆動信号(電気信号)が出力され、電磁減圧弁31a,31bは
図1に示す位置に保たれる。これにより旋回用操作レバー装置21bから出力された制御パイロット圧gは減圧されずに制御パイロット圧qとして旋回用方向切換弁4の
図1下側の受圧部に作用し、旋回用方向切換弁4はフルストロークし、
図4の位置Iからフルストロークの位置IIに切り換わり、第3油圧ポンプP3の吐出油が旋回モータ13へ流入し、旋回モータ13を駆動する。
【0041】
フロント作業機302が、フロント作業機302を含む上部旋回体300の慣性モーメントが所定値より小さくなる姿勢、例えばフロント作業機302を抱え込んだ姿勢である場合、コントローラ34のフロント作業機姿勢判定部34aにおいて、角度センサ32,33で検出したブーム306の角度θbが角度θb0より大きく、角度センサ33で検出したアーム307の角度θaが角度θa0より小さく、フロント作業機302がフロント作業機302を含む上部旋回体300の慣性モーメントが所定値より小さくなる姿勢にあると判定され、電磁減圧弁駆動信号出力部34bから電磁減圧弁31a,31bに減圧目標圧力を設定するための電流値が駆動信号(電気信号)として出力され、電磁減圧弁31a,31bを
図1に示す位置から減圧位置に切り換える。これにより旋回用操作レバー装置21bから出力された制御パイロット圧gは減圧されて制御パイロット圧qとして旋回用方向切換弁4の
図1下側の受圧部に作用し、旋回用方向切換弁4はフルストロークせず、
図4の位置Iから最大ストロークが制限された位置IIIとなり、第3油圧ポンプP3の吐出油が旋回モータ13へ流入し、旋回モータ13を駆動する。
【0042】
このとき旋回用方向切換弁4は位置IIへとフルストロークしないため、旋回用方向切換弁4のブリードオフ開口は閉じ切らず、ブリードオフ開口が閉じ切られる場合に第3油圧ポンプP3の吐出油の全量が旋回モータ13へ流入する際のショックが発生せず、旋回ハンチングを防止することができる。また、上部旋回体300の位置合わせのために旋回用の操作レバー装置21bの操作レバーをフル操作した状態から少し戻したりした場合にもスプールはブリードオフ開口の閉じ切り点S3を通らないため、メータリングの変曲点の影響を受けず、旋回用方向切換弁4のメータリングの変化に対応することができる。更に、上部旋回体300の慣性モーメントが小さくなっても、スプールストロークS1からS4間における旋回用方向切換弁4のメータイン開口のメータリング特性は上部旋回体300の慣性モーメントが大きい場合と同じであり、上部旋回体300の慣性モーメントが大きい場合と小さい場合とでメータイン開口のメータリング特性が変化しないため、上部旋回体300の慣性モーメントの大小で旋回の加速性や操作性に影響を与えること無く、上部旋回体300の慣性モーメントの変化によって発生する旋回ハンチングを防止することができる。
【0043】
旋回用操作レバー装置21bの操作レバーを図示右方向に操作した場合の動作も同じであり、同様の効果が得られる。
【0044】
〜効果〜
以上のように本実施の形態によれば、旋回用方向切換弁4のメータイン開口の閉じ切り点などのメータリングの変曲点や、上部旋回体300の慣性モーメントの大小で旋回の加速性や操作性に影響を与えること無く、上部旋回体300の慣性モーメントの変化によって発生する旋回ハンチングを防止することができる。
【0045】
<第2の実施の形態>
図5は、本発明の第2の実施の形態である建設機械の油圧駆動装置を示す油圧回路図である。第2の実施の形態は制御パイロット圧補正装置の構成を第1の実施の形態のものと異ならせたものである。
【0046】
図5において、本実施の形態は制御パイロット圧補正装置38を備えており、制御パイロット圧補正装置38は、電磁切替弁36aと減圧弁36bとからなるバルブユニット36と、電磁切替弁37aと減圧弁37bとからなるバルブユニット37とを有している。
【0047】
減圧弁36b,37bは、旋回用操作レバー装置21bにより生成された旋回用の制御パイロット圧g,hを減圧するバルブであり、電磁切替弁37aがコントローラ34によって駆動されることで減圧弁36b,37bの出力圧が選択され、旋回用方向切換弁4の最大ストロークを上記所定のストロークに制限するように旋回用の操作レバー装置21bにより生成された旋回用の制御パイロット圧g,hが補正され、制御パイロット圧q,rとして出力される。
【0048】
制御装置44の構成は、コントローラ34の電磁減圧弁駆動信号出力部34bにおいて、フロント作業機302がフロント作業機302を含む上部旋回体300の慣性モーメントが所定値より小さくなる姿勢にあると判定されたときに、減圧目標圧力を設定する電流値の駆動信号(電気信号)を出力する代わりに、電磁切替弁36a,36bをONする(
図5の図示左側の位置から図示右側の位置に切り換える)ための電流値の駆動信号(電気信号)を出力する点を除いて、第1の実施の形態と同じである。
【0049】
以上のように構成した本実施の形態においても、旋回操作を意図して、旋回用操作レバー装置21bの操作レバーを図示左方向に操作した場合の動作は第1の実施の形態と実質的に同じである。すなわち、フロント作業機302が、フロント作業機302を含む上部旋回体300の慣性モーメントが所定値より小さくなる姿勢にあるときは、旋回用操作レバー装置21bから出力された制御パイロット圧g,hは減圧されて制御パイロット圧q,rとして出力され、旋回用方向切換弁4はフルストロークせず、
図4の位置Iから最大ストロークが制限された位置IIIとなり、第3油圧ポンプP3の吐出油が旋回モータ13へ流入し、旋回モータ13を駆動する。
【0050】
したがって、本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果が得られる。また、本実施の形態によれば、高価な電磁減圧弁を使用しないので、安価な構成で意図する効果を得ることができる。
【0051】
〜その他〜
以上の実施の形態では、3つの油圧ポンプP1、P2、P3のうち第1及び第2油圧ポンプP1,P2をスプリットフロータイプの油圧ポンプ42によって構成したが、共通のレギュレータを有する別々の油圧ポンプであってもよい。
【0052】
また、上記実施の形態では、3つの油圧ポンプP1、P2、P3を備える油圧駆動装置に本発明を適用したが、油圧駆動装置は2つの油圧ポンプを備えるものであってもよい。