【文献】
Highly Diastereoselective Formation of Ruthenium Complexes for Efficient Catalytic Asymmetric Transfer Hydrogenation,Angewandte Chemie International Edition,2007年,Vol. 46, P7651-7654
【文献】
Recent Applications of Chiral Ferrocene Ligands in Asymmetric Catalysis,Angewandte Chemie International Edition,2006年,Vol. 45, No. 46, P7674-7715
【文献】
Angew. Chem. Int. Ed.,2008年,47,1770−1773
【文献】
2-(Aminomethyl)pyridine-Phosphine Ruthenium(2) Complexes Novel Highly Active Transfer Hydrogenation Catalysts,Organometallics,2005年,Vol. 24, No. 7, P1660-1669
【文献】
Pincer and Diamine Ru and Os Diphosphane Complexes as Efficient Catalysts for the Dehydrogenation of Alcohols to Ketones,Chemistry A European Journal,2011年,Vol. 17, P3474-3481
【文献】
Osmium Pyme Complexes for Fast Hydrogenation and Asymmetric Transfer Hydrogenation of Ketones,Chemistry A European Journal,2008年,Vol. 14, P2557-2563
【文献】
A simple synthesis of trans-RuCl(CCR)(dppe)2 complexes and representative molecular structures,Journal of Organometallic Chemistry,2009年,Vol. 694, No. 15, P2350-2358
【文献】
Unusual Ru(3) Chloro Complexes Containing Bis-dentate Ligands,Bulletin- Korean Chemical Society,2009年,Vol. 30, No. 10, P2461-2463
【文献】
Eur. J. Inorg. Chem.,2010年,1419−1423
【文献】
Chem. Eur. J.,2008年,14,9148−9160
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
一態様において、本発明は、[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体の調製方法であって、
リン配位子L
1及び二座N,N配位子L
2と[M (X)
2 (L)
3]錯体をケトン溶媒中で反応させて、[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を形成する工程を含む方法を提供し、
ここで、
Mは、ルテニウム又はオスミウムであり、
Xは、陰イオン配位子であり、
Lは、単座リン配位子であり、
L
1は、Lとは異なる単座リン配位子、又は二座リン配位子であり、
mは、1又は2であり、ここで、
mが1の場合、L
1は、二座リン配位子であり、
mが2の場合、各L
1は、単座リン配位子であり、かつ
L
2は、窒素含有ヘテロアリール基、及びアミノ基を含む二座N,N配位子である。
【0027】
金属Mは、ルテニウム及びオスミウムから選択される白金族金属である。
【0028】
一実施態様では、Mは、ルテニウムである。Mがルテニウムの場合、MはRu(II)であってよい。別の実施態様では、Mは、オスミウムである。Mがオスミウムの場合、Mは、Os(II)であってよい。
【0029】
Xは、陰イオン配位子、好ましくは-Cl、-Br、及び-I.のようなハロゲン化物である。好ましくは、Xは、-Clである。
【0030】
Lは、単座リン配位子であり、各Lは、同じであるか、又は異なっていてもよい。好ましくは、 Lは、第三級ホスフィン配位子 PR
1R
2R
3である。R
1、R
2、及びR
3 は、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
1−20−アルコキシ、置換C
1−20−アルコキシ、無置換C
5−20−アリール、置換C
5−20−アリール、無置換C
1−20−ヘテロアルキル、置換C
1−20−ヘテロアルキル、無置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、無置換C
4−20−ヘテロアリール、及び置換C
4−20−ヘテロアリールからなる群より独立して選択されてもよく、R
1、R
2、及びR
3は、独立して置換されているか若しくは無置換であって分岐鎖状又は直鎖状の、アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、 sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリル)、シクロアルキル基(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル)、あるいはアリール基(例えばフェニル、ナフチル又はアントラシル)であってもよい。一実施態様において、アルキル基は、一若しくは複数の置換基(例えばハロゲン化物(F、Cl、Br又はI))、又はアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ又はプロキシ)で置換されていてもよい。アリール基は、一若しくは複数(例えば、1、2、3、4、又は5個)の置換基、例えばハロゲン化物(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−アルキル(例えばメチル)、C
1−C
10アルコキシ、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−(ジアルキル)アミノ、C
3−10ヘテロシクロアルキル基(例えばモルホリニル及びピペラジニル)、又はトリ(ハロ)メチル(例えばF
3C−)で置換されていてもよい。また、ピリジルのような置換又は無置換のヘテロアリール基が使用されてもよい。代替実施態様において、R
1、R
2、及びR
3のうちのいずれか二つは、連結してリン原子とともに環構造(好ましくは4〜7員環)を形成していてもよい。好ましくは、R
1、R
2、及びR
3は、同じで、且つフェニルであって、すなわち、PR
1R
2R
3は、トリフェニルホスフィンである。あるいは、R
1、R
2、及びR
3は、同じで、且つトリルであって、すなわち、PR1R2R3は、トリトリルホスフィン(例えばオルト−、メタ−又はパラ−トリトリルホスフィン)である。
【0031】
一実施態様において、[M (X)
2 (L)
3]錯体は、[ルテニウム (Hal)
2 (PR
1R
2R
3)
3]錯体であってもよく、R
1、R
2、及びR
3は、無置換C
5−20−アリール及び置換C
5−20−アリールから独立して選択される。好ましい一実施態様において、[M (X)
2 (L)
3]錯体は、[Ru Cl
2 (PPh
3)
3]であってもよい。別の実施態様において、[M (X)
2 (L)
3]錯体は、[Ru Cl
2 (P(トリル)
3)
3]であってもよい。
【0032】
別の実施態様において、[M (X)
2 (L)
3]錯体は、[オスミウム (Hal)
2 (PR
1R
2R
3)
3]錯体であってもよく、R
1、R
2、及びR
3は、無置換C
5−20−アリール及び置換C
5−20−アリールから独立して選択される。好ましい一実施態様において、[M (X)
2 (L)
3]錯体は、[Os Cl
2 (PPh
3)
3]であってもよい。別の実施態様において、[M (X)
2 (L)
3]錯体は、[Os Cl
2 (P(トリル)
3)
3]であってもよい。
【0033】
L
1は、Lとは異なる単座リン配位子である。この場合、mは、2である。あるいは、L
1は、二座リン配位子であり、この場合、mは1である。
【0034】
M原子による配位子と金属の相互作用を形成することができる任意の適切なリン化合物を使用してもよい。配位子中、各リン原子は、3個の炭素原子(第三級ホスフィン)か、又はn個のヘテロ原子及び3−n個の炭素原子(n=1,2又は3)のいずれかに共有結合している。好ましくは、ヘテロ原子は、N及びOからなる群より選択される。
【0035】
リン配位子は、PPh
3等の単座であってもよく、又は二座であってもよい。リン配位子は、多くの場合、キラルであることが好ましいが、キラル又はアキラルであってもよい。様々なキラルリン配位子が記載されており、総説が入手可能である。例えば、W. Tang及びX. Zhang, Chem Rev. 2003, 103, 3029 - 3070、並びにJ.C. Carretero, Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 7674-7715を参照されたい。本発明で使用され得るリン配位子は、限定されないが、以下の構造形式を含む。
【0036】
上記の構造で、−PR
2は、−P(アルキル)
2(この場合アルキルは、好ましくはC
1−C
10アルキルである)、
−P(アリール)
2(この場合アリールは、置換若しくは無置換であってもよいフェニル及びナフチルを含む)、又は−P(O−アルキル)
2及び−P(O−アリール)
2(アルキル及びアリールは、上に定義の通りである)であってもよい。-PR
2はまた、置換又は無置換-P(ヘテロアリール)
2であってもよく、この場合ヘテロアリールはフラニル(例えば2−フラニル又は3−フラニル)を含む。
−好ましくは、PR
2は、P(アリール)
2(ここで、アリールはフェニル、トリル、キシリル又はアニシルを含む
−)、又は−P(O−アリール)
2のいずれかである。−PR
2 が−P(O−アリール)
2の場合、最も好ましいO−アリール基は、キラル又はアキラル置換1,1’−ビフェノール及び1,1’−ビナフトールをベースとするものである。あるいは、P原子上のR基は、環状構造の一部として連結していてもよい。
【0037】
置換基は、リン配位子中の、アルキル又はアリール置換基上に存在してもよい。通常、このような置換基は、分岐状又は直鎖状のC
1−6アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert ブチル、及びシクロヘキシルである。
【0038】
リン配位子は、好ましくは、単一鏡像異性体の形態で使用される。一般に、このようなリン配位子は、商業的に入手可能であり、その調製が知られている。例えば、PARAPHOS配位子の調製は、国際公開第04/111065号に、Bophoz配位子の調製は、国際公開第02/26750号及び米国特許第6906212号に、並びにJosiphos配位子の調製は、欧州特許(EP)第564406号及び同第612758号に示されている。
【0039】
リン配位子L
1は、好ましくは、Binap配位子、PPhos配位子、PhanePhos配位子、QPhos配位子、Josiphos配位子、及びBophoz配位子を含む。
【0040】
L
1がBinap配位子である場合、この配位子は、式(Ia)又は(Ib)のものであってもよく、
式中、
R
20及びR
21は、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
5−20−アリール、及び置換C
5−20−アリールからなる群よりそれぞれ独立して選択される。一実施態様において、R
20及びR
21は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはアダマンチル等のシクロアルキル基、又はフェニル、ナフチル若しくはアントラシル等のアリール基からなる群よりそれぞれ独立して選択される。一実施態様において、シクロアルキル基は、一若しくは複数の置換基(例えばハロゲン化物(F、Cl、Br若しくはI))、又はアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ若しくはプロキシ)で置換されていてもよい。アリール基は、一若しくは複数(例えば、1、2、3、4又は5個)の置換基、例えばハロゲン化物(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−アルキル(例えばメチル)、C
1−C
10アルコキシ、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−(ジアルキル)アミノ、C
3−10ヘテロシクロアルキル基(例えばモルホリニル及びピペラジニル)、又はトリ(ハロ)メチル(例えばF
3C−)で置換されていてもよい。好ましくは、R
20及びR
21は、同じであって、且つフェニル、トリル(o−、m−又はp−、好ましくはp−トリル)及びキシリル(例えば3,5−キシリル)からなる群より選択される。
【0041】
L
1がJosiphos配位子である場合、この配位子は、式(IIa)又は(IIb)のものであってもよく、
式中、
R
22及びR
23は、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
1−20−アルコキシ、置換C
1−20−アルコキシ、無置換C
5−20−アリール、置換C
5−20−アリール、無置換C
1−20−ヘテロアルキル、置換C
1−20−ヘテロアルキル、無置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、無置換C
4−20−ヘテロアリール、及び置換C
4−20−ヘテロアリールからなる群より独立して選択され、
R
24及びR
25は、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
1−20−アルコキシ、置換C
1−20−アルコキシ、無置換C
5−20−アリール、置換C
5−20−アリール、無置換C
1−20−ヘテロアルキル、置換C
1−20−ヘテロアルキル、無置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、無置換C
4−20−ヘテロアリール、及び置換C
4−20−ヘテロアリールからなる群より独立して選択され、
R
26は、無置換C
1−20−アルキル及び置換C
1−20−アルキルからなる群より選択される。
【0042】
一実施態様において、R
22及びR
23は、置換又は無置換であって分岐鎖状又は直鎖状の、アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリル)、シクロアルキル基(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル)、アリール基(例えばフェニル、ナフチル又はアントラシル)、及びフリルなどのヘテロアリール基からなる群より独立して選択される。一実施態様において、アルキル基は、一若しくは複数の置換基(例えばハロゲン化物(F、Cl、Br又はI))、又はアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ又はプロキシ)で置換されていてもよい。アリール基は、 一若しくは複数(例えば、1、2、3、4又は5個)の置換基、例えばハロゲン化物(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−アルキル(例えばメチル)、C
1−C
10アルコキシ、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−(ジアルキル)アミノ、C
3−10ヘテロシクロアルキル基(例えばモルホリニル及びピペラジニル)、又はトリ(ハロ)メチル(例えばF
3C−)で置換されていてもよい。ヘテロアリール基は、一若しくは複数(例えば、1、2、3、4又は5個)の置換基、例えばハロゲン化物(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−アルキル(例えばメチル)、C
1−C
10アルコキシ、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−(ジアルキル)アミノ、又はトリ(ハロ)メチル(例えばF
3C−)で置換されていてもよい。好ましくは、R
22及びR
23は、同じであって、且つtert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、1−ナフチル、3,5−キシリル、2−メチルフェニル、及び2−フリルからなる群、もっとも好ましくはtert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、1−ナフチル、及び2−フリルからなる群より選択される。
【0043】
一実施態様において、R
24及びR
25は、置換若しくは無置換であって分岐鎖状又は直鎖状のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリル)、シクロアルキル基(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル)、アリール基(例えばフェニル、ナフチル又はアントラシル)、又はフリルなどのヘテロアリール基からなる群より独立して選択される。一実施態様において、アルキル基は、一若しくは複数の置換基(例えばハロゲン化物(F、Cl、Br又はI))、又はアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ又はプロキシ)で置換されていてもよい。アリール基は、一若しくは複数(例えば、1、2、3、4又は5個)の置換基、例えばハロゲン化物(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−アルキル(例えばメチル)、C
1−C
10アルコキシ、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−(ジアルキル)アミノ、C
3−10ヘテロシクロアルキル基(例えばモルホリニル及びピペラジニル)、又はトリ(ハロ)メチル(例えばF
3C−)で置換されていてもよい。ヘテロアリール基は、一若しくは複数(例えば、1、2、3、4又は5個)の置換基、例えばハロゲン化物(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−アルキル(例えばメチル)、C
1−C
10アルコキシ、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−(ジアルキル)アミノ、又はトリ(ハロ)メチル(例えばF
3C−)で置換されていてもよい。好ましくは、R
24及びR
25は、同じであって、且つtert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、1−ナフチル、3,5−キシリル、2−メチルフェニル、及び2−フリルからなる群、もっとも好ましくはtert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、3,5−キシリル、及び2−メチルフェニルからなる群より選択される。
【0044】
一実施態様において、R
26は、無置換の分岐鎖状又は直鎖状アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリルである。好ましくは、R
26は、メチルである。
【0045】
一実施態様において、式(IIa)の配位子は、以下からなる群より選択される。
(R)−1−[(S)−2−ジ(フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ(フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ(シクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ(シクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ(フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ−(4−メトキシ−3,5−ジメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ(シクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ−((4−トリフルオロメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ−(4−メトキシ−3,5−ジメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ−(2−フリル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ−(2−フリル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ(1−ナフチル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ(1−ナフチル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ−(4−メトキシ−3,5−ジメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ−(4−メトキシ−3,5−ジメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−(2−メチルフェニル)ホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ−(2−フリル)ホスフィノフェロセニル]エチルジ−(2−メチルフェニル)ホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ(tert−ブチルホスフィノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジ(tert−ブチルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−(2−メチルフェニル)ホスフィン
(R)−1−[(S)−2−ジフェニルホスフィノフェロセニル]エチルジフェニルホスフィン
【0046】
一実施態様において、式(IIb)の配位子は、以下からなる群より選択される。
(S)−1−[(R)−2−ジ(フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ(フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ(シクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ(シクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ(フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ−(4−メトキシ−3,5−ジメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ(シクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ−((4−トリフルオロメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ−(4−メトキシ−3,5−ジメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ−(2−フリル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ−(2−フリル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ(1−ナフチル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ(1−ナフチル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ−(4−メトキシ−3,5−ジメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ−(4−メトキシ−3,5−ジメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−(2−メチルフェニル)ホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ−(2−フリル)ホスフィノフェロセニル]エチルジ−(2−メチルフェニル)ホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ(tert−ブチルホスフィノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジ(tert−ブチルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−(2−メチルフェニル)ホスフィン
(S)−1−[(R)−2−ジフェニルホスフィノフェロセニル]エチルジフェニルホスフィン
【0047】
好ましい一実施態様において、式(IIa)の配位子は、
(R)−1−[(S)−2−ジフェニルホスフィノフェロセニル]エチルジフェニルホスフィンである。別の好ましい実施態様において、式(IIb)の配位子は、(S)−1−[(R)−2−ジフェニルホスフィノフェロセニル]エチルジフェニルホスフィンである。
【0048】
また、リン配位子L
1は、好ましくはPPh
3、PCy
3(トリシクロヘキシルホスフィン)、dppf(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)、dppp(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)、dppb(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)、Dipfc(1,1’−ビス(ジ−イソプロピルホスフィノ)フェロセン)、dCyPfc(1,1’−ビス(ジ−シクロヘキシルホスフィノ)フェロセン、及びDB
tPF(1,1’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセン)を含む。別の実施態様において、リン配位子L
1は、無置換である。別の実施態様において、リン配位子L
1は、置換されている。
【0049】
特に好ましいリン配位子L
1は、dppf、dppp、dppb、及びdCyPfcからなる群より選択されうる。
【0050】
L
2は、窒素含有ヘテロアリール基、及びアミノ基を含む二座N,N配位子である。窒素含有ヘテロアリール基は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリミジル、インドリル 又はキノリニル基含み、好ましくはピリジニルである。アミノ基は、第一級、第二級又は第三級アミノ基を含み、好ましくは-NH
2である。
【0051】
二座N,N−配位子は、以下の配位子(1)、(2)、及び(3)からなる群より選択されうる。
【0052】
一実施態様において、二座N,N−配位子は、配位子(1)である。別の実施態様において、二座N,N−配位子は、配位子(2)である。さらに別の実施態様において、二座N,N−配位子は、配位子(3)である。
【0053】
式(1)、(2)又は(3)の二座N,N配位子は、遊離塩基として、又は塩(例えば塩酸塩)として、反応混合物に添加してもよい。ただし、塩を用いる場合、反応混合物は、遊離塩基を形成するために塩基(トリエチルアミン等)を含んでもよい。
【0054】
配位子(1)、(2)、及び(3)は、各配位子がアミノ及びピリジノ官能基を介してM原子に配位する二座配位子である。
【0055】
R
31及びR
32は、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
1−20−アルコキシ、置換C
1−20−アルコキシ、無置換C
5−20−アリール、置換C
5−20−アリール、無置換C
1−20−ヘテロアルキル、置換C
1−20−ヘテロアルキル、無置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、無置換C
4−20−ヘテロアリール、及び置換C
4−20−ヘテロアリールからなる群より独立して選択されてもよく、好ましくは、R
31及びR
32は、-H、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
5−20−アリール、及び置換C
5−20−アリール(例えば-H、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘプチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、又はステアリル)、シクロアルキル基(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル)、又はアリール基(例えばフェニル、ナフチル又はアントラシル)からなる群より独立して選択される。一実施態様において、アルキル基は、一若しくは複数の置換基(例えばハロゲン化物(−F、−Cl、−Br又は−I))、又はアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ又はプロキシ)で置換されていてもよい。アリール基は、一若しくは複数(例えば、1、2、3、4又は5個)の置換基、例えばハロゲン化物(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−アルキル、C
1−C
10アルコキシ、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−(ジアルキル)アミノ、C
3−10ヘテロシクロアルキル基(例えばモルホリニル及びピペラジニル)、又はトリ(ハロ)メチル(例えばF
3C−)で置換されていてもよい。
【0056】
一実施態様において、R
31及びR
32のうちの一方は、-Hであり、もう一方は、-H、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
1−20−アルコキシ、置換C
1−20−アルコキシ、無置換C
5−20−アリール、置換C
5−20−アリール、無置換C
1−20−ヘテロアルキル、置換C
1−20−ヘテロアルキル、無置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、無置換C
4−20−ヘテロアリール、及び置換C
4−20−ヘテロアリールからなる群より選択される。好ましい一実施態様において、R
31及びR
32のうちの一方は、-Hであり、もう一方は、-H、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
5−20−アリール、及び置換C
5−20−アリール(例えば-H、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘプチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、又はステアリル)、シクロアルキル基(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル)、又はアリール基(例えばフェニル、ナフチル又はアントラシル)からなる群より選択される。一実施態様において、アルキル基は、一若しくは複数の置換基(例えばハロゲン化物(−F、−Cl、−Br又は−I))、又はアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ又はプロキシ)で置換されていてもよい。アリール基は、一若しくは複数(例えば、1、2、3、4又は5個)の置換基、例えばハロゲン化物(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−アルキル、C
1−C
10アルコキシ、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−(ジアルキル)アミノ、C
3−10ヘテロシクロアルキル基(例えば、モルホリニル及びピペラジニル)、又はトリ(ハロ)メチル(例えば、F
3C−)で置換されていてもよい。
【0057】
好ましい一実施態様において、R
31及びR
32は、いずれも-Hである。
【0058】
R
33及びR
34は、同じであるか、又は異なっていてもよい。R
33及びR
34が異なる場合、配位子(1)は、キラル中心を含有する。配位子(1)は、ラセミ混合物として、単一鏡像異性体としてか、又は鏡像異性体の混合物としてのいずれかで、好ましくは単一鏡像異性体として使用することができる。配位子(1)の鏡像異性体は、例えば配位子(1)のラセミ混合物の分解により、鏡像異性的に純粋な形態で得ることができる。
【0059】
R
33及びR
34は、-H、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
1−20−アルコキシ、置換C
1−20−アルコキシ、無置換C
5−20−アリール、置換C
5−20−アリール、無置換C
1−20−ヘテロアルキル、置換C
1−20−ヘテロアルキル、無置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、無置換C
4−20−ヘテロアリール、及び置換C
4−20−ヘテロアリールからなる群より独立して選択されてもよい。好ましくは、R
31及びR
32は、-H、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
5−20−アリール、及び置換C
5−20−アリール(例えば-H、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘプチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、又はステアリル)、シクロアルキル基(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル)、又はアリール基(例えばフェニル、ナフチル又はアントラシル)からなる群より独立して選択される。一実施態様において、アルキル基は、一若しくは複数の置換基(例えばハロゲン化物(−F、−Cl、−Br又は−I))、又はアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ又はプロキシ)で置換されていてもよい。アリール基は、一若しくは複数(例えば、1、2、3、4又は5個)の置換基、例えばハロゲン化物(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−アルキル、C
1−C
10アルコキシ、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−(ジアルキル)アミノ、C
3−10ヘテロシクロアルキル基(例えばモルホリニル及びピペラジニル)、又はトリ(ハロ)メチル(例えばF
3C−)で置換されていてもよい。より好ましくは、R
33及びR
34は、-H、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、及びフェニルから独立して選択される。
【0060】
一実施態様において、R
33及びR
34のうちの一方は、-Hであり、もう一方は、-H、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
1−20−アルコキシ、置換C
1−20−アルコキシ、無置換C
5−20−アリール、置換C
5−20−アリール、無置換C
1−20−ヘテロアルキル、置換C
1−20−ヘテロアルキル、無置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、無置換C
4−20−ヘテロアリール、及び置換C
4−20−ヘテロアリールからなる群より選択される。好ましい一実施態様において、R
33及びR
34のうちの一方は、-Hであり、もう一方は、-H、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
5−20−アリール、及び置換C
5−20−アリール(例えば-H、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘプチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリル)、シクロアルキル基(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル)、又はアリール基(例えばフェニル、ナフチル又はアントラシル)からなる群より選択される。一実施態様において、アルキル基は、一若しくは複数の置換基(例えばハロゲン化物(−F、−Cl、−Br又は−I))、又はアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ又はプロキシ)で置換されていてもよい。アリール基は、 一若しくは複数(例えば、1、2、3、4、又は5個)の置換基、例えばハロゲン化物(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−アルキル、C
1−C
10アルコキシ、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−(ジアルキル)アミノ、C
3−10ヘテロシクロアルキル基(例えばモルホリニル及びピペラジニル)、又はトリ(ハロ)メチル(例えばF
3C−)で置換されていてもよい。より好ましくは、R
33及びR
34は、-H、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、及びフェニルから独立して選択される。より好ましくは、R
33及びR
34のうちの一方は、-Hであり、R
33及びR
34のうちのもう一方は、-H、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、及びフェニルからなる群より選択される。
【0061】
R
35は、存在していても、存在していなくてもよい。R
35が存在しない場合、cは、0であり、すなわちピリジン環は置換されていない。R
35が存在する場合、cは、1、2、3又は4でありうる。cが2、3又は4の場合、各R
35は、同じであるか、又は互いに異なっていてもよい。R
35(単数又は複数)の各々は、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換
C3−20−シクロアルキル、無置換C
1−20−アルコキシ、置換C
1−20−アルコキシ、無置換C
5−20−アリール、置換C
5−20−アリール、無置換C
1−20−ヘテロアルキル、置換C
1−20−ヘテロアルキル、無置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、無置換C
4−20−ヘテロアリール、及び置換C
4−20−ヘテロアリールからなる群より独立して選択されうる。好ましくは、R
35、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
5−20−アリール、及び置換C
5−20−アリール(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘプチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、又はステアリル)、シクロアルキル基(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル)、又はアリール基(例えばフェニル、ナフチル又はアントラシル)からなる群より独立して選択される。一実施態様において、アルキル基は、一若しくは複数の置換基(例えばハロゲン化物(−F、−Cl、−Br又は−I))、又はアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ又はプロキシ)で置換されていてもよい。アリール基は、 一若しくは複数(例えば、1、2、3、4又は5個)の置換基、例えばハロゲン化物(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−アルキル、C
1−C
10アルコキシ、直鎖状又は分岐鎖状のC
1−C
10−(ジアルキル)アミノ、C
3−10ヘテロシクロアルキル基(例えばモルホリニル及びピペラジニル)、又はトリ(ハロ)メチル(例えばF
3C−)で置換されていてもよい。好ましくは、cは、0であり、すなわちR
35は存在せず、ピリジン環は無置換である。
【0062】
R
41及びR
42は、R
31及びR
32の場合に上記した基から独立して選択されうる。
【0063】
R
43及びR
44は、同じであるか、又は異なっていてもよい。R
43及びR
44が異なる場合、配位子(2)は、キラル中心を含有する。配位子(2)は、ラセミ混合物として、単一鏡像異性体としてか、又は鏡像異性体の混合物としてのいずれかで、好ましくは単一鏡像異性体として使用することができる。配位子(2)の鏡像異性体は、例えば配位子(2)のラセミ混合物の分解により、鏡像異性的に純粋な形態で得ることができる。R
43及びR
44は、R
33及びR
34の場合に上記した基から独立して選択されうる。
【0064】
R
45は、存在していても、存在していなくてもよい。R
45が存在しない場合、dは、0である。R
45が存在する場合、dは、1、2又は3でありうる。dが2又は3の場合、各R
45は、同じであるか、又は互いに異なっていてもよい。R
45(単数又は複数)の各々は、R
35の場合に上記した基から選択されうる。好ましくは、dは、0であり、すなわちR
45は存在しない。
【0065】
R
46は、存在していても、存在していなくてもよい。R
46が存在しない場合、eは、0である。R
46が存在する場合、eは、1、2、3、4又は5でありうる。dが2、3、4又は5である場合、各R
46は、同じであるか、又は互いに異なっていてもよい。R
46(単数又は複数)の各々は、R
35の場合に上記した基から選択されうる。好ましい一実施態様において、eは、0であり、すなわちR
45は存在しない。別の好ましい実施態様において、R
46は、1であり、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチルからなる群より選択され、好ましくは4−Meである。
【0066】
R
51及びR
52は、R
31及びR
32の場合に上記した基から独立して選択されうる。
【0067】
R
53及びR
54は、同じであるか、又は異なっていてもよい。R
53及びR
54が異なる場合、配位子(3)は、キラル中心を含有する。配位子(3)は、ラセミ混合物として、単一鏡像異性体としてか、又は鏡像異性体の混合物としてのいずれかで、好ましくは単一鏡像異性体として使用することができる。配位子(3)の鏡像異性体は、例えば配位子(3)のラセミ混合物の分解により、鏡像異性的に純粋な形態で得ることができる。R
53及びR
54は、R
33及びR
34の場合に上記した基から独立して選択されうる。
【0068】
R
55は、存在していても、存在していなくてもよい。R
55が存在しない場合、fは、0である。R
55が存在する場合、fは、1又は2でありうる。fが2の場合、各R
45は、同じであるか、又は互いに異なっていてもよい。R
55(単数又は複数)の各々は、R
35の場合に上記した基から選択されうる。好ましくは、fは、0であり、すなわちR
55は存在しない。
【0069】
R
56は、存在していても、存在していなくてもよい。R
56が存在しない場合、gは、0である。R
56が存在する場合、gは、1又は2でありうる。gが2の場合、各R
56は、同じであるか、又は互いに異なっていてもよい。R
56(単数又は複数)の各々は、R
35の場合に上記した基から選択されうる。好ましい一実施態様において、gは、0であり、すなわちR
56は存在しない。
【0070】
R
57は、存在していても、存在していなくてもよい。R
57が存在しない場合、hは、0である。R
57が存在する場合、 hは、1、2、3又は4であリうる。dが2、3、又は4である場合、各R
57は、同じであるか、又は互いに異なっていてもよい。R
57(単数又は複数)の各々は、R
35の場合に上記した基から選択されうる。好ましい一実施態様において、hは、0であり、すなわちR
57は存在しない。
【0071】
好ましい一実施態様において、二座N,N−配位子は、以下からなる群より選択される。
【0072】
特に好ましい一実施態様において、二座N,N−配位子は、2−アミノメチルピリジン(AMPY)である。
【0073】
特に好ましい一実施態様において、[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体は、以下からなる群より選択されうる。
[Ru Cl
2 (dppp) AMPY]
[Ru Cl
2 (dppb) AMPY]
[R Cl
2 (dppf) AMPY]
[Ru Cl
2 (DCyPFc) AMPY]
[Ru Cl
2 (DiPFc) AMPY]
[Ru Cl
2 (DB
tPFc) AMPY]
[Ru Cl
2 (Josiphos
*) AMPY]
[Ru Cl
2 (TolBINAP) AMPY]
【0074】
リン配位子L
1及び二座N,N配位子L
2と[M (X)
2 (L)
3]錯体をケトン溶媒中で反応させて、[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を形成する。「ケトン溶媒」とは、大気圧下(すなわち1.0135x10
5Pa)で160℃未満、より好ましくは120℃未満の沸点を有する液体ケトンを意味する。好ましい例は、アセトン、2−ブタンノンとしても知られているメチルエチルケトン(MEK)、4−メチル−2−ペンタノンとしても知られているメチルイソブチルケトン(MIBK)、及び3−ペンタノンとしても知られているジエチルケトンである。特に好ましいケトン溶媒は、MEKである。もう一つの特に好ましいケトン溶媒は、アセトンである。
【0075】
ケトン溶媒の使用に関連する利点がいくつかある。一つの利点としては、アセトン等のケトン溶媒は非塩素系で、毒性である可能性が低いことである。
【0076】
もう一つの利点としては、反応溶媒量が、ジクロロメタンを使用する先行技術の溶媒と比較して、削減されることである。
【0077】
さらには、トルエンを使用する先行技術の溶媒とは異なり、一般的にケトン溶媒は、エバポレーションにより除去することが容易である。その上、二座N,N−配位子L
2が2−アミノメチルピリジンである場合、ケトン溶媒は、濾過するのに長時間を要するペースト状生成物を生成せず、また、乾燥して、粉末を生成するのにさらなる処理(例えば粉砕)を要するセラミックス様生成物にならない。これらのすべての利点は、トルエンの使用とは対照的である。
【0078】
本発明の方法の一実施態様において、錯体は、ケトン溶媒中でスラリー化されている。「スラリ−」とは、ケトン溶媒中の錯体(単数又は複数)の少なくとも一部の不均一な混合物を意味する。したがって、「スラリー」は、ケトン溶媒中、部分的に溶解している錯体(単数又は複数)と、部分的に固体として存在している錯体(単数又は複数)との混合物を含む。スラリー化することができる錯体は、[M (X)
2 (L)
3]出発物質、中間体金属錯体、及び/又は[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]生成物を含む。
【0079】
さらに別の利点としては、ケトン溶媒は、反応中に[M (X)
2 (L)
3]出発物質から放出される単座リン配位子Lを大量に除去することができるということである。例えば、[Ru Cl
2 (PPh
3)
3]を出発物質として、アセトンをケトン溶媒として使用する場合、PPh
3のほぼ完全な除去が可能である。この点に関して、金属錯体は、反応混合物中で通常は固体の形態であり(なぜなら、ケトン溶媒中でスラリーを形成するため)、一方配位子Lは、未反応配位子L
1とともに、ケトン溶媒にほぼ溶解している。
【0080】
対照的に、ジクロロメタンを溶媒として使用する場合、反応の成分が溶解しているため、反応混合物は溶液中にある。したがって、生成錯体は通常、反応混合物からの沈殿を必要とする。この点に関して、ジクロロメタン/アルコール、ジクロロメタン/アルカン又はトルエン/アルカン溶媒混合物は通常、大きな収量低下及び/又は不純生成物の形成をもたらす。
【0081】
別の実施態様において、[M (X)
2 (L)
3]出発物質は、ケトン溶媒とともにスラリーを形成するが、リン配位子L
1又は二座N,N配位子L
2との反応に際しては、ケトン溶媒に可溶である中間体金属錯体、及び/又は[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]生成物を形成しうる。この場合でも、ケトン溶媒は、反応中に[M (X)
2 (L)
3]出発物質から放出される単座リン配位子Lを大量に除去することができる。任意の固体[M (X)
2 (L)
3]出発物質が反応終了時にも残っている場合、[M (X)
2 (L)
3]出発物質は、濾過、デカンテーション又は遠心分離により、可溶性[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]生成物から分離されうる。
【0082】
ケトン溶媒の任意の適切な量が使用されうる。例えば、ケトン溶媒の[M (X)
2 (L)
3]錯体に対する比率は、約3〜約35mL/gであってもよい。特定の実施態様において、該比率は、約3〜約20mL/gであってもよい。特定の実施態様において、該比率は、約20〜約35mL/gであってもよい。
【0083】
反応物は任意の適切な順序で添加することができるが、本発明の一つの好ましい方法では、リン配位子L
1は、ケトン溶媒中の[M (X)
2 (L)
3]錯体の混合物に(例えば少しずつ)添加することができ、適切な時間及び適切な温度で撹拌した後、二座N,N配位子L
2を(例えば少しずつ)添加することができる。所望の場合には、二座N,N配位子L
2は、ケトン溶媒中の溶液として反応混合物に添加することができる。次いで、反応物をさらに適切な時間、適切な温度で撹拌してもよい。所望の場合には、ケトン溶媒は、反応混合物に添加する前に、不活性ガス(例えば窒素)で飽和させてもよい。
【0084】
本発明の別の好ましい方法では、二座N,N配位子L
2は、ケトン溶媒中の[M (X)
2 (L)
3]錯体の混合物に(例えば少しずつ)添加することができ、適切な時間及び適切な温度で撹拌した後、リン配位子L
1を(例えば少しずつ)添加することができる。所望の場合には、二座N,N配位子L
2は、ケトン溶媒中の溶液として反応混合物に添加することができる。次いで、反応物をさらに適切な時間、適切な温度で撹拌してもよい。所望の場合には、ケトン溶媒は、反応混合物に添加する前に、不活性ガス(例えば窒素)で飽和させてもよい。
【0085】
リン配位子L
1は、化学量論的に又はわずかに[M (X)
2 (L)
3]錯体より過剰に存在しうる。化学量論的量が用いられる場合、その技法は、過剰な配位子の使用を必要とせず、それにより全工程が商業生産のために非常に効率的で、原子を節約するものになる。わずかな過剰量が用いられる場合、リン配位子L
1:[M (X)
2 (L)
3]錯体の比率は、約1.05〜約1.2:約1、例えば約1.05:約1、約1.1:約1、約1.15:約1、又は約1.2:約1であってもよい。
【0086】
二座N,N配位子L
2は、化学量論的に又はわずかに[M (X)
2 (L)
3]錯体より過剰に存在しうる。化学量論的量が用いられる場合、その技法は、過剰な配位子の使用を必要とせず、それにより方法全体が商業生産のために非常に効率的で、原子を節約するものになる。わずかな過剰量が用いられる場合、二座N,N配位子L
2:[M (X)
2 (L)
3]錯体の比率は、約1.05〜1.2:約1、例えば約1.05:約1、約1.1:約1、約1.15:約1、又は約1.2:約1であってもよい。
【0087】
反応は、不活性雰囲気下、例えば窒素下又はアルゴン下、好ましくは窒素下で実施してもよい。
【0088】
本発明の方法は、ケトン溶媒が、好ましくは約−10℃から還流温度までの範囲の一又は複数の温度、例えば約120℃で実施してもよい。より好ましくは、本発明の方法は、約−5℃から約80℃、例えば約0℃から約50℃、例えば15℃から約30℃、例えば室温で実施してもよい。温度は分解温度未満に維持されることが好ましいとされているので、[M (X)
2 (L)
3]出発物質及び/又は[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]生成物が上記の温度範囲内で分解することがわかっている場合、温度は分解温度より低く維持するべきである。
【0089】
反応は数分から約72時間にわたって実施されうるが、通常、約24時間以内には完了する。完了すると、[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]生成物は、生成物の物理的形状に応じて任意の適切な方法により反応混合物から分離される。一般的に、[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体が固体である場合、該錯体は、濾過、デカンテーション又は遠心分離により反応混合物から収集されうる。[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を収集する前に、所望であれば、室温より高くてケトン溶媒の反応温度より低い温度(例えばケトン溶媒がメチルエチルケトンの場合、約45〜50℃)まで反応混合物を冷却してもよい。反応混合物が温かいうちに[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を収集することは、遊離リン配位子L
1及び/又はその酸化物(存在すれば)が温かいケトン溶媒中でより可溶性であるという利点を有し、ゆえに[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体の反応混合物からの分離を容易にする。遊離リン配位子L
1及び/又はその酸化物が存在する場合、これらの化合物の存在により[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]生成物を着色することができる。この場合、[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を、ケトン溶媒(例えばアセトン)中で、 遊離リン配位子L
1及び/又はその酸化物がほぼ除去されるまで一回以上(例えば1、2又は3回)撹拌する。その代わりに、又はそれに加えて、[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体をケトン溶媒で一回以上(例えば1、2又は3回)洗浄する。[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を洗浄する前に、ケトン溶媒のアリコートを(例えば45〜50℃に)温める。次いで、周知の方法を用いて、例えば10〜60℃、好ましくは20〜40℃の温度で、1〜30ミリバール真空下で1時間から5日間、[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を乾燥させる。一般に必要ではないが、所望であれば、錯体を再結晶化することができる。
【0090】
あるいは、残ったケトン溶媒中にさらに濃縮された[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]生成物が得られるまで、[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]生成物の溶液から(例えば蒸留又はストリッピング法により)ケトン溶媒を除去してもよい。次いで、錯体の沈殿を引き起こすために、低沸点アルコール又はアルカンから選択される抗溶媒を添加してもよい。好適なアルコールは、160℃未満の沸点、より好ましくは120℃未満の沸点を有する。アルコール系溶媒は、限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール異性体(例えばn−プロパノール又はイソ−プロパノール)、ブタノール異性体(例えばn−ブタノール、イソブタノール又はtert−ブタノール)、ペンタノール異性体(例えば1−プロパノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、ネオペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、イソ−ペンチルアルコール又はシクロプロパノール)、及びヘキサノール異性体(例えば1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール又はシクロヘキサノール)を含む。好ましい例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール又はtert−ブタノールである。特に好ましいアルコール系溶媒は、イソプロパノールである。好適なアルカンは、大気圧で0から150℃の沸点を有する。用いるアルカンは、低沸点アルカン、例えばペンタン異性体、ヘキサン異性体、ヘプタン異性体又はオクタン異性体でありうる。アルカンは、好ましくはn−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン又はn−ヘプタンであり、より好ましくはシクロヘキサンである。次いで、周知の方法を用いて、例えば10〜60℃、好ましくは20〜40℃の温度で、1〜30ミリバール真空下で1時間から5日間、[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を乾燥させる。一般に必要ではないかもしれないが、所望であれば、錯体を再結晶化することができる。
【0091】
[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体は大規模に調製することができ、この点で、本発明者らは、最大2kgの規模で本発明の方法を実施した。
【0092】
得られた[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体は、残留ケトン溶媒を含有していてもよい。したがって、このようにして得られる錯体は、ケトン溶媒を用いる用途のための触媒として好適でありうる。
【0093】
本発明の方法に従って調製された[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体は、実質的にトランス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]であり、すなわち[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体が以下の構造を含む。
【0094】
トランス-という用語は、陰イオン配位子の方向に基づいて決定される。
この点において、八面体錯体は、陰イオン配位子が互いに180℃である場合にトランス-として記載される。逆に、陰イオン配位子が互いに隣接している場合、八面体錯体はシス-として記載される。
【0095】
一実施態様では、[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体は、以下からなる群より選択されうる。
トランス-[Ru Cl
2 (dppp) AMPY]
トランス-[Ru Cl
2 (dppb) AMPY]
トランス-[Ru Cl
2 (dppf) AMPY]
トランス-[Ru Cl
2 (DCyPFc) AMPY]
トランス-[Ru Cl
2 (Josiphos
*) AMPY]
【0096】
別の態様では、本発明は、[M (X)
2 (L)
2 (L
2)]錯体の調製方法であって、
[M (X)
2 (L)
3]錯体をケトン溶媒中で二座N,N配位子L
2 と反応させて、[M (X)
2 (L)
2 (L
2)]錯体を形成する工程を含む方法を提供し、
ここで、
Mは、ルテニウム又はオスミウムであり、
Xは、陰イオン配位子であり、
Lは、単座リン配位子であり、かつ
L
2は、窒素含有ヘテロアリール基、及びアミノ基を含む二座N,N配位子である。
【0097】
M、X、L、L
2、[M (X)
2 (L)
3]錯体、[M (X)
2 (L)
2 (L
2)]錯体、ケトン溶媒、反応条件、及び[M (X)
2 (L)
2 (L
2)]錯体の収集については、上に大まかに記載している。
【0098】
さらに別の態様において、本発明は、[M (X)
2 L (L
1)
m]錯体の調製方法であって、
[M (X)
2 (L)
3]錯体をケトン溶媒中でリン配位子L
1と反応させて、[M (X)
2 [M (X)
2 L (L
1)
m]錯体を形成する工程を含む方法を提供し、
ここで、
Mは、ルテニウム又はオスミウムであり、
Xは、陰イオン配位子であり、
Lは、単座リン配位子であり、
L
1は、Lとは異なる単座リン配位子又は二座リン配位子であり、
mは、1又は2であり、ここで、
mが1の場合、L
1は、二座リン配位子であり、
mが2の場合、各L
1は、単座リン配位子である。
【0099】
M、X、L、L
1、m、[M (X)
2 (L)
3]錯体、[M (X)
2 L(L
1)
m]錯体、ケトン溶媒、反応条件、及び[M (X)
2 L (L
1)
m]錯体の収集については、上に大まかに記載している。
【0100】
また、リン配位子L
1は、好ましくはPPh
3、dppf(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)、dppp(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)、dppb(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)、Dipfc(1,1’−ビス(ジ−イソプロピルホスフィノ)フェロセン)、dCyPfc(1,1’−ビス(ジ−シクロヘキシルホスフィノ)フェロセン)、キサントホス(4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン)、及びDPEPhos(ビス[(2−ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル)を含む。一実施態様において、リン配位子L
1は、無置換である。別の実施態様において、リン配位子L
1は、置換されている。
【0101】
別の態様において、本発明は、シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体の調製方法であって、
a)トランス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体をアルコール溶媒中で処理する工程、及び
b)その反応混合物を加熱して、シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を形成する工程
を含む方法を提供し、
ここで、
Mは、ルテニウム又はオスミウムであり、
Xは、陰イオン配位子であり、
L
1は、単座リン配位子又は二座リン配位子であり、
mは、1又は2であり、ここで、
mが1の場合、L
1は、二座リン配位子であり、
mが2の場合、各L
1は、単座リン配位子であり、かつ
L
2は、窒素含有ヘテロアリール基、及びアミノ基を含む二座N,N配位子である。
【0102】
シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体の調製における利点は、いくつかの実施態様では、触媒用途においてより触媒的に活性でありうるということである。
【0103】
M、X、L
1、m、L
2、及び[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体は、上に大まかに記載されている。
【0104】
トランス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を溶媒中で処理する。トランス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体は、アルコール溶媒とともに溶液を形成するか、又はスラリーを形成する。「スラリ−」とは、アルコール溶媒中の錯体(単数又は複数)の少なくとも一部の不均一な混合物を意味する。したがって、「スラリー」は、アルコール溶媒中、部分的に溶解している錯体(単数又は複数)と、部分的に固体として存在している錯体(単数又は複数)との混合物を含む。スラリー化することができる錯体は、トランス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]出発物質、及び/又はシス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]生成物を含む。
【0105】
「アルコール溶媒」とは、 大気圧下(すなわち1.0135x10
5Pa)で160℃未満、より好ましくは120℃未満の沸点を有する液体アルコールを意味する。アルコール系溶媒は、限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール異性体(例えばn−プロパノール又はイソ−プロパノール)、ブタノール異性体(例えばn−ブタノール、イソブタノール又はtert−ブタノール)、ペンタノール異性体(例えば1−プロパノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、ネオペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、イソ−ペンチルアルコール又はシクロプロパノール)、及びヘキサノール異性体(例えば1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール又はシクロヘキサノール)を含む。好ましい例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール又はtert−ブタノールである。特に好ましいアルコール系溶媒は、イソプロパノールである。アルコールの混合溶媒を用いてもよいが、通常はアルコール単独が適している。アルコール溶媒は、乾燥しているのが好ましい。
【0106】
アルコール溶媒の任意の適切な量が使用されうる。例えば、アルコール溶媒のトランス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体に対する比率は、約3〜約25mL/g、例えば約4〜約20mL/gであってもよい。
【0107】
トランス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体は、残留ケトン溶媒を含有していてもよい。この場合、残留ケトンを除去するために、最初にIアルコール溶媒の一部を(例えば蒸留により)部分的にストリップすることが望ましい。所望の場合、ストリッピングにより除去された量を補うために、追加分のアルコール溶媒を反応混合物に添加してもよい。
【0108】
該反応混合物を加熱し、シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を形成させる。一実施態様では、該反応混合物を加熱還流してもよい。トランス錯体のシス錯体への変換は、NMRによりモニターすることができる。
【0109】
工程(a)は、リン配位子L
1をさらに含みうる。したがって、この点において、工程(a)は、トランス-[M(X)
2(L
1)
m(L
2)]錯体及びリン配位子L
1をアルコール溶媒中で処理することを含む。トランス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体は、副生成物として[M (X)
2 (L)
2 (L
2)]錯体を含みうる。例えば、本発明者らは、トランス-[Ru Cl
2 (dppb) (AMPY)]の合成中、未反応出発物質[RuCl
2 (PPh
3)
3]へのAMPY配位子の挿入に由来して、様々な量(例えば5〜10%)のトランス-[Ru Cl
2 (PPh
3)
2 (AMPY)]が形成されうることを発見した。したがって、トランス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体をリン配位子L
1とともにアルコール溶媒中で加熱することには、二重の利点がある。この点において、理論に縛られるのを望むものではないが、本発明者らは、リン配位子L
1 は、(存在するのであれば)[M (X)
2 (L)
2 (L
2)]副生成物を[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体に変換し、次にリン配位子L
1は、トランス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体をシス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体に異性化すると考える。本発明者らが注目したのは、トランス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体をアセトン等のケトン溶媒中で加熱するとき、異性化が全く起きないようだということである。
【0110】
リン配位子L
1の量は、トランス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体のモル量の約0.001から約0.7モル当量、例えば約0.002から約0.5モル当量でありうる。
【0111】
反応は数分から約90時間にわたって実施されうるが、通常、約24時間以内には完了する。完了すると、シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]生成物は、生成物の物理的形状に応じて任意の適切な方法により反応混合物から分離される。一般的に、シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体が固体である場合、該錯体は、濾過、デカンテーション又は遠心分離により反応混合物から収集されうる。シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を収集する前に、所望であれば、室温より上でアルコール溶媒の還流温度より下の温度(例えば、アルコール溶媒がイソプロパノールの場合、約50℃)まで反応混合物を冷却してもよい。反応混合物が温かいうちにシス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を収集することは、遊離リン配位子L
1及び/又はその酸化物(存在すれば)が温かいアルコール溶媒中でより可溶性であるという利点を有し、ゆえにシス-[M(X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体の反応混合物からの分離を容易にする。遊離リン配位子L
1及び/又はその酸化物が存在する場合、これらの化合物の存在によりシス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]生成物を着色することができる。この場合、シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)] 錯体を、上記のケトン溶媒のうちの一つ(例えばアセトン)を用い、遊離リン配位子L
1及び/又はその酸化物がほぼ除去されるまで一回以上(例えば1、2又は3回)撹拌する。その代わりに、又はそれに加えて、シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体をアルコール溶媒(例えばイソプロパノール)で一回以上(例えば1、2又は3回)洗浄する。シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を洗浄する前に、アルコール溶媒のアリコートを(例えば50℃に)温める。次いで、周知の方法を用いて、例えば10〜60℃、好ましくは20〜40℃の温度で、1〜30ミリバール真空下で1時間から5日間、シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を乾燥させる。一般に必要ではないが、所望であれば、錯体を再結晶化することができる。
【0112】
あるいは、残ったアルコール溶媒中にさらに濃縮されたシス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]生成物が得られるまで、シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]生成物の溶液から(例えば蒸留又はストリッピング法により)アルコール溶媒を除去してもよい。次いで、錯体の沈殿を引き起こすために、低沸点アルカンから選択される抗溶媒を添加してもよい。好適なアルカンは、大気圧で0から150℃の沸点を有する。用いるアルカンは、低沸点アルカン、例えばペンタン異性体、ヘキサン異性体、ヘプタン異性体又はオクタン異性体でありうる。アルカンは、好ましくは、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン又はn−ヘプタンであり、より好ましくはシクロヘキサンである。次いで、周知の方法を用いて、例えば10〜60℃、好ましくは20〜40℃の温度で、1〜30ミリバール真空下で1時間から5日間、シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を乾燥させる。一般に必要ではないかもしれないが、所望であれば、錯体を再結晶化することができる。
【0113】
シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体は大規模に調製することができ、この点で、本発明者らは、最大1.9kgの規模で本発明の方法を実施した。
【0114】
別の態様において、本発明は、シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体の調製方法であって、
[M (X)
2 (L)
2 (L
2)]錯体をアルコール溶媒中でリン配位子L
1と反応させて、シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を形成させる工程を含む方法を提供し、
ここで、
Mは、ルテニウム又はオスミウムであり、
Xは、陰イオン配位子であり、
Lは、単座リン配位子であり、
L
1は、Lとは異なる単座リン配位子又は二座リン配位子であり、
mは、1又は2であり、ここで、
mが1の場合、L
1は、二座リン配位子であり、
mが2の場合、各L
1は、単座リン配位子であり、かつ
L
2は、窒素含有ヘテロアリール基、及びアミノ基を含む二座N,N配位子である。
【0115】
M、X、L、L
1、m、L
2、[M (X)
2 (L)
2 (L
2)]錯体、シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体、アルコール溶媒、反応条件、及びシス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体の収集については、上に大まかに記載している。
【0116】
シス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体は、組み合わせ法で、すなわち最初にケトン溶媒を用いてトランス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]又は[M (X)
2 (L)
2 (L
2)]錯体すること、次にアルコール溶媒を用いてシス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体を調製することにより調製することができる。そうすることの利点は、純粋なシス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]錯体が得られることである。その理由としては、ケトン溶媒を使用する方法が遊離リン配位子の除去を容易にし、これにより、より良質のトランス-[M (X)
2 (L
1)
m (L
2)]又は[M (X)
2 (L)
2 (L
2)]生成物が生成し、またアルコール溶媒を使用する方法が(所望なら)一つのリン配位子の別の配位子との交換を容易にし、且つトランス錯体からシス錯体への異性化も容易にするためである。これらの利点は、トランス錯体及びその後続の異性化がワンポット法で生じる、トルエンを使用する方法にはないことである。
【0117】
本発明の方法により得られる錯体は純粋で、所望の場合は、得られたままで触媒用途に使用することができる。該錯体は、残留アルコールを少量含有することがある。該触媒は、得られたままで、又はさらに乾燥させて、触媒用途に使用することができる。本発明者らは、アルコールが減圧下での乾燥時に、トルエン等の芳香族溶媒よりも除去しやすいことを発見した。さらに、本方法を用いて得られる 錯体は、濾過しやすく、したがって大規模製造に適している。
【0118】
別の態様において、本発明は、[M (X)
2 (L
1) (L
2)]錯体を提供し、ここで、
Mは、ルテニウム又はオスミウムであり、
Xは、陰イオン配位子であり、
L
1は、以下の(i)から(iii):
(i)式(Ia)又は(Ib)の配位子;
(式中、
R
20及びR
21は、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
5−20−アリール、及び置換C
5−20−アリールからなる群よりそれぞれ独立して選択される。)
(ii)式(IIa)又は(IIb)の配位子;
(式中、
R
22及びR
23は、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
1−20−アルコキシ、置換C
1−20−アルコキシ、無置換C
5−20−アリール、置換C
5−20−アリール、無置換C
1−20−ヘテロアルキル、置換C
1−20−ヘテロアルキル、無置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、無置換C
4−20−ヘテロアリール、及び置換C
4−20−ヘテロアリールからなる群より独立して選択され、
R
24及びR
25は、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
1−20−アルコキシ、置換C
1−20−アルコキシ、無置換C
5−20−アリール、置換C
5−20−アリール、無置換C
1−20−ヘテロアルキル、置換C
1−20−ヘテロアルキル、無置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、無置換C
4−20−ヘテロアリール、及び置換C
4−20−ヘテロアリールからなる群より独立して選択され、
R
26は、無置換C
1−20−アルキル及び置換C
1−20−アルキルからなる群より選択される。)
(iii)1,1’−ビス(ジ−イソプロピルホスフィノ)フェロセン、1,1’−ビス(ジ−シクロヘキシルホスフィノ)フェロセン及び1,1’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセンからなる群より選択される配位子
からなる群より選択される二座リン配位子であり、
かつ、
L
2は、以下の配位子(1)、(2)、及び(3):
(式中、
R
31及びR
32、R
41及びR
42、並びにR
51及びR
52は、-H、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
1−20−アルコキシ、置換C
1−20−アルコキシ、無置換C
5−20−アリール、置換C
5−20−アリール、無置換C
1−20−ヘテロアルキル、置換C
1−20−ヘテロアルキル、無置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、無置換C
4−20−ヘテロアリール、及び置換C
4−20−ヘテロアリールからなる群より独立して選択され、
R
33及びR
34、R
43及びR
44、並びにR
53及びR
54は、-H、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
1−20−アルコキシ、置換C
1−20−アルコキシ、無置換C
5−20−アリール、置換C
5−20−アリール、無置換C
1−20−ヘテロアルキル、置換C
1−20−ヘテロアルキル、無置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、無置換C
4−20−ヘテロアリール、及び置換C
4−20−ヘテロアリールからなる群より独立して選択され、
R
35、R
45、R
46、R
55、R
56及びR
57は、-H、無置換C
1−20−アルキル、置換C
1−20−アルキル、無置換C
3−20−シクロアルキル、置換C
3−20−シクロアルキル、無置換C
1−20−アルコキシ、置換C
1−20−アルコキシ、無置換C
5−20−アリール、置換C
5−20−アリール、無置換C
1−20−ヘテロアルキル、置換C
1−20−ヘテロアルキル、無置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C
2−20−ヘテロシクロアルキル、無置換C
4−20−ヘテロアリール、及び置換C
4−20−ヘテロアリールからなる群より独立して選択され、
cは、0、1、2、3又は4であり、
dは、0、1、2又は3であり、
eは、0、1、2、3、4又は5であり、
fは、0、1又は2であり、
gは、0、1又は2であり、
hは、0、1、2、3又は4である。)
からなる群より選択される二座N,N配位子である。
【0119】
M、X、式(Ia)、(Ib)、(IIa)、(IIb)の配位子、1,1’−ビス(ジ−イソプロピルホスフィノ)フェロセン、1,1’−ビス(ジ−シクロヘキシルホスフィノ)フェロセン、1,1’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセン、及びL
2は、上に大まかに記載されている。
【0120】
[M (X)
2 (L
1) (L
2)]錯体は、トランス-[M (X)
2 (L
1) (L
2)]錯体又はシス-[M (X)
2 (L
1) (L
2)]錯体でありうる。
【0121】
該錯体は、以下からなる群より選択されうる。
[Ru Cl
2(1,1’−ビス(ジ−シクロヘキシルホスフィノ)フェロセン)(2−(アミノメチル)ピリジン)]
[Ru Cl
2(1,1’−ビス(ジ−イソプロピルホスフィノ)フェロセン)(2−(アミノメチル)ピリジン)]
[Ru Cl
2(1,1’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセン)(2−(アミノメチル)ピリジン)]
[Ru Cl
2(1−[2−ジフェニルホスフィノフェロセニル]エチルジフェニルホスフィン)(2−(アミノメチル)ピリジン)]
[Ru Cl
2(TolBINAP)(2−(アミノメチル)ピリジン)]
【0122】
本発明は、以下の実施例を参照することによりさらに説明される。
【実施例】
【0123】
実施例
すべての実施例は、高純度の窒素を用いて不活性条件下で行われた。
溶媒と2−(アミノメチル)ピリジン試薬は、商用グレードである。実施例で用いるRuCl
2(PPh
3)
3は、Johnson Matthey Catalysis and Chiral Technologies社からRu−100として市販されている。特に断りのない限り、CDCl
3をNMR分析用に使用した。NMRアッセイは、試料の調製からまもなく、又はすぐに行われた。
【0124】
【0125】
実施例1
トランス-RuCl2(dppb)(AMPY)の調製
窒素雰囲気下、1Lの丸底フラスコに、RuCl
2(PPh
3)
3(100.0g)及びアセトン(600mL)を導入した。その混合物をRTで撹拌し、dppb(1.1eq)を少量ずつ(1回につき10.0g)添加した。RTで3時間の撹拌後、AMPY(1.0eq)を添加し、その反応混合物を一晩RTで撹拌した。18時間後、沈殿物を濾過し、減圧下で乾燥させた(黄色い固体)。表題生成物を
31P NMR(CDCl
3、RT)により分析した。
シス-RuCl
2(dppb)(AMPY)の調製
窒素雰囲気下、1Lの丸底フラスコに、トランス-RuCl
2(dppb)(AMPY)(73.0g)、dppb(0.5eq)及び乾燥IPA(350mL)を導入した。その反応混合物を一晩還流させた。15時間後、該反応混合物をRTに冷却し、沈殿物を濾過した。沈殿物を丸底フラスコに収集し、アセトン(約150mL)中、RTで2時間撹拌した。固体を濾過し、減圧下で乾燥させた(黄色い固体)。表題生成物を
31P NMR(CDCl
3、RT)により分析した。
【0126】
実施例2
トランス-RuCl
2(PPh
3)
2(AMPY)の調製
1Lの丸底フラスコに、RuCl
2(PPh
3)
3 (100.0g)及びアセトン(500mL)を導入した。該混合物を、窒素雰囲気下で1時間、RTで脱気し、撹拌した。AMPY(1.2eq)を滴下し、その反応混合物をRTで一晩撹拌した。沈殿物を濾過し、アセトンで洗浄し、減圧下で乾燥させた(黄色い固体)。表題生成物を
31P NMR(CDCl
3、RT)により分析した。
シス-RuCl
2(dppb)(AMPY)の調製
400mLのシュレンク管中、窒素雰囲気下で、トランス-RuCl
2(PPh
3)
2(AMPY)(30.0g)、dppb(1.2eq)、及び乾燥IPA(200mL)を還流させた。2時間後、該反応混合物をRTに冷却し、1時間撹拌した。沈殿物を濾過し、減圧下で乾燥させた。緑色の固体を、アセトン中RTで2時間撹拌した。沈殿物を濾過したが、まだ薄緑色がある(遊離ホスフィン及びその酸化物のため)ので、黄色い固体になるまででアセトン中で再撹拌し、減圧下で乾燥させた。表題生成物を
31P NMR(CDCl
3、RT)により分析した。
【0127】
実施例3
トランス-RuCl
2(dppf)(AMPY)の調製
窒素雰囲気下、250mLの丸底フラスコに、RuCl
2(PPh
3)
3 (3.155g)及びアセトン(600mL)を導入した。該混合物をRTで撹拌し、dppf(2.0g)を添加した。RTで3時間の撹拌後、AMPY(0.34mL)を添加し、その反応混合物を週末を通してRTで撹拌した。沈殿物を濾過し、減圧下で乾燥させ、黄色い固体を得た。表題生成物を
31P NMR(CDCl
3、RT)により分析した。
シス-RuCl
2(dppf)(AMPY)の調製
400mLのシュレンク管中、窒素雰囲気下で、トランス-RuCl
2(dppf)(AMPY)(20.0g)及び乾燥IPA(120mL)を導入した。その混合物を一晩還流させた。該反応混合物をRTに冷却し、沈殿物を濾過し、減圧下で乾燥させ、黄色い固体(19g)を得た。表題生成物を
31P NMR(CDCl
3、RT)により分析した。
【0128】
実施例4
トランス-(PPh
3)
2 RuCl
2 AMPY](AMPY/Ru−100=1.1)の調製
2Lの撹拌ガラス反応器に、固体のRuCl
2(PPh
3)
3を300g、続いてMEKを1.2L導入する。すぐに撹拌を開始し、スラリーを4時間撹拌する。別の反応器中で、MEK150mlを37.225gのAMPYと混合する。この混合物を、RuCl
2(PPh
3)
3 スラリーに20分にわたり添加する。完了したら、第二の反応器を150mlのMEKで2回再充填し、その内容物を各10分にわたりメインの反応器に添加する。この反応混合物を17時間撹拌する。得られる粘度の高いスラリーを、ブフナー漏斗と濾紙を用いて、湿った生成物ケーキが得られるまで吸引濾過する。(所要時間25分未満)MEK濾液が無色になるまで、MEKで洗浄を継続する。黄色い生成物を、10ミリバール、30℃で48時間乾燥させる。
1H NMRにより3%(w/w)のMEKを含有する微粉末として、トランス-[(PPh
3)
2 RuCl
2 AMPY](255g)を得る。
【0129】
実施例5
シス-[dppp RuCl
2 AMPY]の調製
効率的な還流冷却器を備えた1Lの撹拌ガラス反応器に、トランス-[(PPh
3)
2 RuCl
2 AMPY](実施例4の生成物)を80.407g及びdppp配位子(Ruに対して1.2eq)を49.495g導入する。600mLのIPA を添加し、撹拌したスラリーを107℃に設定したオイルバスで加熱する。これが、IPA溶媒の還流をもたらす。反応温度に達してまもなく、スラリー状固体の外観がより明るい黄色に変わる。加熱を60時間続けた後スイッチを切り、スラリーを50℃に冷却する。この熱いスラリーを、ブフナー漏斗と濾紙を用いて、湿った生成物ケーキが得られるまで吸引濾過する。3x100mlのIPA(使用前に50℃に加熱した溶媒アリコート)を用い、このケーキをさらに洗浄する。黄色い生成物を、10ミリバール、60℃で48時間乾燥させる。乾燥後、該生成物(70.1g)は、4%(w/w)のIPAを保持している。文献:Organometallics 2005, 24, 1660 (化合物5)と合致する
1H及び
31P{
1H}NMRデータ。
【0130】
実施例6
トランス-[dppp RuCl
2 AMPY]の調製
1Lの撹拌ガラス反応器に、トランス-[(PPh
3)
2 RuCl
2 AMPY](実施例4の生成物)を80.407g及びdppp配位子(Ruに対して1.2eq )を49.495g導入する。600mLのMEKを添加し、撹拌したスラリーを60℃に設定したオイルバスで加熱する。加熱を60時間続けた後スイッチを切り、スラリーを45℃に冷却する。この熱いスラリーを、ブフナー漏斗と濾紙を用いて、湿った生成物ケーキが得られるまで吸引濾過する。3x100mlのMEK(使用前に50℃に加熱した溶媒アリコート)を用い、このケーキをさらに洗浄する。赤色のMEK濾液を廃棄する。黄色い生成物(68.7g)を、10ミリバール、30℃で48時間乾燥させる。乾燥後、該生成物(68.7g)は、MEKを保持している。
該固体の同定については、トランス-[(dppp RuCl
2 AMPY]であることが
1H及び
31P{
1H}NMR分析により確認される:
1H NMR: δ 8.37 (1H, AMPYピリジンの6位のCH), 7.71 - 6.62 (23 H, 複数の多重線, 残留ピリジン及びフェニル CH), 4.30 ( 2H, 広幅一重線, AMPYのCH
2-N), 2.64及び1.85 (6H, 広幅多重線, 配位されたdpppのCH
2), NH
2共鳴は非常に幅広い。
31P{
1H}-NMR: 44.58 (d, J = 49 Hz), 34.69 (d, J = 49 Hz)。
実施例6は、ケトン溶媒MEKの60℃での使用によりdppp/PPh
3配位子交換は可能になるが、トランス--[dppp RuCl
2 AMPY]生成物の異性化は可能にならないことを実証する。
【0131】
実施例7
シス-[dppp RuCl
2 AMPY]の調製
効率的な還流冷却器を備えた1Lの撹拌ガラス反応器に、実施例6で得たトランス-[dppp RuCl
2 AMPY]を60g及びdppp配位子3.00gを導入し、600mLのIPAを添加する。撹拌したスラリーを107℃に設定したオイルバスで加熱する。これが、IPA溶媒の還流をもたらす。加熱を60時間続けた後スイッチを切り、スラリーを50℃に冷却する。この熱いスラリーを、ブフナー漏斗と濾紙を用いて、湿った生成物ケーキが得られるまで吸引濾過する。IPA(使用前に50℃に加熱した溶媒アリコート)を用い、IPA濾液が無色になるまでこのケーキをさらに洗浄する。黄色い生成物を、10ミリバール、 60℃で48時間乾燥させる。乾燥後、該生成物(57.3g)は、4.5%(w/w)のIPAを保持している。実施例5で得られるものと合致する
1H及び
31P{
1H}NMRデータ。
【0132】
実施例8
シス-[dppf RuCl
2 AMPY]の調製
効率的な還流冷却器を備えた1Lの撹拌ガラス反応器に、トランス-[(PPh
3)
2 RuCl
2 AMPY](実施例4の生成物)を80.407g及びdppf配位子(Ruに対して1.2eq)を66.527g導入する。600mLのIPAを添加し、撹拌したスラリーを107℃に設定したオイルバスで加熱する。これが、IPA溶媒の還流をもたらす。加熱を80時間続けた後スイッチを切り、スラリーを50℃に冷却する。この熱いスラリーを、ブフナー漏斗と濾紙を用いて、湿った生成物ケーキが得られるまで吸引濾過する。3x200mlのIPA(使用前に50℃に加熱した溶媒アリコート)を用い、このケーキをさらに洗浄する。黄色い生成物(85.3g)を、10ミリバール、 60℃で48時間乾燥させる。乾燥後、該生成物(85.3g)は、3%(w/w)のIPAを依然として保持している。文献:Chemistry - A European Journal, 2011, 17, 3474(化合物9)と合致する
1H及び
31P{
1H}NMRデータ。
【0133】
実施例9
トランス-[dppf RuCl
2 AMPY]の調製
1Lの撹拌ガラス反応器に、固体のRuCl
2(PPh
3)
3を100g及びdppfを63.6g、続いてアセトンを0.5L導入する。すぐに撹拌を開始し、スラリーを18時間撹拌する。100mlのアセトンで1時間希釈後、AMPYを11.280g添加し、続いて100mlのアセトンを添加し、生成物スラリーが効率的に撹拌され続けるようにする。この反応混合物を24時間撹拌する。得られる粘度の高いスラリーを、ブフナー漏斗と濾紙を用いて、湿った生成物ケーキが得られるまで吸引濾過する。アセトン濾液が無色になるまで、アセトンで洗浄を継続する。黄色い生成物を、10ミリバール、30℃で48時間乾燥させる。
1H NMRにより4%(w/w)のアセトンを含有する微粉末として、トランス-[dppf RuCl
2 AMPY](84g)を得る。文献:Chemistry - A European Journal, 2011, 17, 3474(化合物8)と合致する
1H及び
31P{
1H}NMRデータ。
【0134】
実施例10
シス-[dppf RuCl
2 AMPY]の調製
効率的な還流冷却器を備えた1Lの撹拌ガラス反応器に、トランス-[(dppf RuCl
2 AMPY](実施例9の生成物)を40g導入する。800mLのIPAを添加し、撹拌したスラリーを107℃に設定したオイルバスで加熱する。これが、IPA溶媒の還流をもたらす。加熱を20時間続けた後スイッチを切り、スラリーを50℃に冷却する。この熱いスラリーを、ブフナー漏斗と濾紙を用いて、湿った生成物ケーキが得られるまで吸引濾過する。3x200mlのIPA(使用前に50℃に加熱した溶媒アリコート)を用い、このケーキをさらに洗浄する。黄色い生成物を、10ミリバール、60℃で48時間乾燥させる。乾燥後、該生成物(39.4g)は、2%(w/w)のIPAを保持している。実施例8で得られたシス-(dppf RuCl
2 AMPY]と合致する
1H及び
31P{
1H}NMRデータ。
【0135】
実施例11
トランス-[dppb RuCl
2 AMPY]の調製
20Lの撹拌ガラス反応器に、固体のRuCl
2(PPh
3)
3を1000g及びdppbを490g、続いてアセトンを13L導入する。すぐに撹拌を開始し、スラリーを4時間撹拌する。別の反応器中で、アセトン1Lを124.03gのAMPYと混合する。この混合物を、20L反応器中の該スラリーに30分にわたり添加する。完了したら、第二の反応器を0.5Lのアセトンで2回再充填し、その内容物を各10分にわたりメインの反応器に添加する。この反応混合物を16時間撹拌する。得られる粘度の高いスラリーを、ブフナー漏斗と濾紙(Whatman 541)を用いて、湿った生成物ケーキが得られるまで吸引濾過する。この処理は、120分を要する。アセトン濾液が無色になるまで、アセトンで洗浄を継続する。黄色い生成物を、10ミリバール、30℃で48時間乾燥させる。
1H NMRにより4%(w/w)のアセトンを含有する微粉末として、トランス-[dppb RuCl
2 AMPY](648g)を得る。文献:Organometallics 2005, 24, 1660(化合物2)と合致する
1H及び
31P{
1H}NMRデータ。
【0136】
実施例12
トランス-[dppb RuCl
2 AMPY]の大規模調製
20Lの撹拌ガラス反応器に、固体のRuCl
2(PPh
3)
3を2000g及びdppbを980g、続いてMEKを13L導入する。すぐに撹拌を開始し、スラリーを4時間撹拌する。別の反応器中で、MEK1Lを248.1gのAMPYと混合する。この混合物を、20L反応器中の該スラリーに30分にわたり添加する。完了したら、第二の反応器を0.5LのMEKで2回再充填し、その内容物を各10分にわたりメインの反応器に添加する。この反応混合物を16時間撹拌する。得られる粘度の高いスラリーを、ブフナー漏斗と濾紙(Whatman 541)を用いて、湿った生成物ケーキが得られるまで吸引濾過する。この処理は、10分を要する。MEK濾液が無色になるまで、MEKで洗浄を継続する。黄色い生成物を、10ミリバール、30℃で48時間乾燥させる。
1H NMRにより5%(w/w)のMEKを含有する微粉末として、トランス-[dppb RuCl
2 AMPY](1320g)を得る。
該固体の同定については、実施例11で得られるもの同じであることが
1H及び
31P{
1H}NMR分析により確認される。
【0137】
実施例13(比較例)
反応溶媒としてトルエンを用いた[dppb RuCl
2 AMPY]の大規模調製
20Lの撹拌ガラス反応器に、固体のRuCl
2(PPh
3)
3を2000g及びdppbを980g、続いてトルエンを13L導入する。すぐに撹拌を開始し、スラリーを4時間撹拌する。別の反応器中で、トルエン1Lを248.1gのAMPYと混合する。この混合物を、20L反応器中の該スラリーに30分にわたり添加する。完了したら、第二の反応器を0.5Lのトルエンで2回再充填し、その内容物を各10分にわたりメインの反応器に添加する。この反応混合物を16時間撹拌する。得られた粘度の高いスラリーを、ブフナー漏斗と濾紙(Whatman 541)を用いて、湿った生成物ケーキが得られるまで吸引濾過する。この処理は、510分を要する。濾過に長時間を要することに対処するため、トルエンでの洗浄は一回のみとする。得られる濾過ケーキは大体積であり、実施例11又は12における10%未満と比較して、トルエンを50重量%保持する。該濾過ケーキを10ミリバール、30℃で120時間乾燥させ、生成物(1375g)を一個の乾き切った固体塊として得る。この塊は、乳鉢と乳棒で粉砕することにより非常に微細な固体に砕かれ、
1H及び
31P{
1H}NMR分析により、トランス-[dppb RuCl
2 AMPY]及びシス-[dppb RuCl
2 AMPY]の9:1混合物であることが確認される。
本実験を実施例12と比較すると、トルエンの(ケトン溶媒の代わりの)使用は、例えば濾過時間が著しく長くなる、生成物の乾燥がより高温で長時間を要する、乾燥後の生成物の形態がより扱いづらく、微粉末にするために追加の処理が必要である、またシス異性体がトランス生成物中に存在するといった多くの不都合な点を有することがわかる。したがって、この方法は、大規模製造には適さない。
【0138】
実施例14
シス-[dppb RuCl
2 AMPY]の大規模調製
効率的な還流冷却器を備えた撹拌ガラス反応器に、トランス-[dppb RuCl
2 AMPY](反応溶媒としてアセトンを用いて作られた生成物)を1900g及びdppbを1.9g導入する。10LのIPAを添加し、撹拌したスラリーを107℃に設定したオイルバスで加熱する。これが、IPA溶媒の還流をもたらす。加熱を3時間続けた後スイッチを切り、スラリーを50℃に冷却する。この熱いスラリーを、ブフナー漏斗と濾紙を用いて、湿った生成物ケーキが得られるまで吸引濾過する。このケーキを、2x5LのIPAでさらに洗浄する。生成物を、10ミリバール、60℃で48時間乾燥させる。乾燥後、該生成物(1790g)は、4%(w/w)のIPAを保持している。文献:Organometallics 2005, 24, 1660(化合物7)と合致する
1H及び
31P{
1H}NMRデータ。
【0139】
実施例15
[dppb RuCl
2 AMPY]の大規模調製
20Lの撹拌ガラス反応器に、固体のRuCl
2(PPh
3)
3を2000g及びdppbを980g、続いてMEKを13L導入する。すぐに撹拌を開始し、スラリーを4時間撹拌する。別の反応器中で、MEK1Lを236.8gのAMPYと混合する。この混合物を、20L反応器中の該スラリーに30分にわたり添加する。完了したら、第二の反応器を0.5LのMEKで2回再充填し、その内容物を各10分にわたりメインの反応器に添加する。この反応混合物を16時間撹拌する。得られる粘度の高いスラリーを、ブフナー漏斗と濾紙(Whatman 541)を用いて、湿った生成物ケーキが得られるまで吸引濾過する。この処理は、10分を要する。MEK濾液が無色になるまで、MEKで洗浄を継続する。黄色い生成物を、10ミリバール、30℃で48時間乾燥させる。
1H NMRにより3%(w/w)のMEKを含有する微粉末として、トランス-[dppb RuCl
2 AMPY](1320g)を得る。
【0140】
実施例16
シス-[dppb RuCl
2 AMPY]の調製
蒸留と溶媒還流の双方が可能な装置の付いた撹拌ガラス反応器に、トランス-[(dppb RuCl
2 AMPY]を42.81g及びdppbを0.105g導入する。530mLのIPAを添加し、撹拌したスラリーを112℃に設定したオイルバスで加熱する。これによりIPA溶媒の蒸留が開始され、100mlの溶媒が収集されるまで行われる。次いで、該装置を溶媒還流に切り替え、オイルバスを107℃に設定する。加熱を36時間続けた後スイッチを切り、スラリーを50℃に冷却する。該スラリーを、ブフナー漏斗と濾紙を用いて、湿った生成物ケーキが得られるまで50℃で吸引濾過する。このケーキを、2x100mLのIPAでさらに洗浄する。生成物を、10ミリバール、60℃で48時間乾燥させる。乾燥後、該生成物(42.7g)は、5%(w/w)のIPAを依然として保持している。
【0141】
実施例17
シス-[dppb RuCl
2 AMPY]の調製
トランス-[dppb RuCl
2 AMPY](反応溶媒としてアセトンを用いて調製)30g、dppb2g、及びIPA200mlを3時間加熱還流させる。得られるスラリーを濾過し、少量のIPAで洗浄する。生成物を
31P{
1H}NMRにより分析すると、シス-[dppb RuCl
2 AMPY](残留トランス異性体2%未満)で構成されることが示される。文献:Organometallics 2005, 24, 1660(化合物7)と合致する
1H及び
31P{
1H}NMRデータ。
【0142】
実施例18(比較例)
シス-[dppb RuCl
2 AMPY]の調製
トランス-[dppb RuCl
2 AMPY]30g、dppb2g、及びトルエン200mlを5時間加熱還流させる。得られるスラリーを濾過する。生成物を
31P{
1H}NMRにより分析すると、わずか20%のシス-[dppb RuCl
2 AMPY]と80%のトランス-[dppb RuCl
2 AMPY]で構成されることが示される。濾液と濾過ケーキを再混合し、さらに15時間加熱還流させ、異性化を完了する。
実施例17及び18を比較すると、イソプロパノール中でのトランス-[dppb RuCl
2 AMPY]のシス-[dppb RuCl
2 AMPY]への異性化は、より短時間(20時間に対して3時間)のうちに、イソプロパノールの沸点がトルエンの場合の110〜111℃に比べて82℃というように、より低い温度で起こることがわかる。
【0143】
実施例19
[DPEPhos RuCl
2 PPh
3]の調製
400mLの撹拌ガラス反応器に、固体のRuCl
2(PPh
3)
3を25.9g及びDPEPhosを16.0g、続いてMEKを300mL導入する。すぐに撹拌を開始し、スラリーを18時間撹拌する。得られる黄色がかった橙色のスラリーを、ブフナー漏斗と濾紙を用いて、湿った生成物ケーキが得られるまで濾過する。MEK濾液が無色になるまで、MEKで洗浄を継続する。黄色い生成物を、10ミリバール、30℃で48時間乾燥させる。該生成物は、ほぼ定量的収率で、
1H NMRにより0.2%(w/w)のMEKを含有する微粉末として得られる。
1H及び
31P{
1H}NMRにより該固体を分析する。
【0144】
実施例20
[キサントホス RuCl
2 PPh
3]の調製
400mLの撹拌ガラス反応器に、固体のRuCl
2(PPh
3)
3を24.0g及びキサントホスを16.0g、続いてMEKを300mL導入する。すぐに撹拌を開始し、スラリーを18時間撹拌する。得られる黄色がかった橙色のスラリーを、ブフナー漏斗と濾紙を用いて、湿った生成物ケーキが得られるまで濾過する。MEK濾液が無色になるまで、MEKで洗浄を継続する。橙色がかった黄色の生成物を、10ミリバール、30℃で48時間乾燥させる。該生成物は、ほぼ定量的収率で、
1H NMRにより0.4%(w/w)のMEKを含有する微粉末として得られる。
1H及び
31P{
1H}NMRにより該固体を分析する。
【0145】
実施例21
[DCyPFc RuCl
2 AMPY]の調製
200mLの撹拌ガラス反応器に、固体のRuCl
2(PPh
3)
3を3.2g及びDCyPFcを2.32g、続いて窒素飽和MEKを100mL導入する。すぐに撹拌を開始し、スラリーを28時間撹拌する。反応混合物からの試料をC
6D
6で希釈することにより得られるNMR試料の
31P{
1H}NMR分析は、DCyPFcはすべて反応し、唯一の遊離ホスフィンはRuCl
2(PPh
3)
3から放出されたPPh
3であることを示す。
MEK10mlで10分間希釈後、MEK中のスラリー状中間体にAMPYを0.42g添加する。この反応混合物を60時間撹拌する。得られる粘度の高い褐色のスラリー状生成物を、ブフナー漏斗と濾紙を用いて、湿った生成物ケーキが得られるまで吸引濾過する。MEK濾液が無色になるまで、MEKで洗浄を継続する。黄色い生成物を、10ミリバール、30℃で48時間乾燥させる。試料をIPA中でスラリー化し、再び濾過した。
固体の同定については、
1H及び
31P{
1H}NMR分析の組み合わせにより確認される。
31P{
1H}NMR分析により、δ=5ppm(大きな広幅共鳴)及びδ=48ppm(小さな広幅共鳴)を有する二つの異性体が表示される。大きな錯体のAMPY共鳴は、δ =9.94 (d), 7.73 (t), 7.40 (t), 7.35 (t) (すべて0.75 Hとして積分) 5.07 (s, 1.5 H)であり、小さな錯体のAMPY共鳴は、δ = 9.80 (d), 8.06 (t), 7.93 (t), 7.64 (t) (すべて0.25 Hとして積分), 5.01 (s, 0.5 H)である。フェロセンの2x4 CH共鳴は、δ =4.23 (m), 4.08 (m)である。シクロヘキシルの残留共鳴-共鳴(44)は、δ=2.2~0.94ppmの連続する広幅多重線である。
【0146】
実施例22
[Josiphos
* RuCl
2 AMPY]の調製
400mLの撹拌ガラス反応器に、固体のRuCl
2(PPh
3)
3を10g及びJosiphos
*を6.8g、続いて窒素飽和MEKを250mL導入する。すぐに撹拌を開始し、75℃に保たれたオイルバスにより18時間、スラリーを撹拌、加熱する。室温に冷却後、橙色がかった外観のふわふわした沈殿物とともに、澄んだ溶液が得られる。CDCl
3との反応混合物からの試料の
31P{
1H}NMR分析は、RuCl
2(PPh
3)
3から放出され大部分が遊離しているPPh
3が少量の残留Josiphos
*(過剰量で使用された)とともに存在することを示す。この[Josiphos
* RuCl
2]中間体(異性体の混合物)は、二重線共鳴の特徴的パターンとみられる。
31P{
1H}NMR分析で、δ = 69.95 (d), 67.0 (d), 65.35 (d), 60.9 (d), 55.05 (d), 52.8 (d), 43.9 (d), 32.8 (d), 8.6 (d), 6.4 (d)。
MEK100mlで30分間希釈後、MEK中のスラリー状中間体にAMPYを1.28g添加する。該反応混合物を35時間撹拌し、橙色がかった褐色の沈殿物が得られるようである。ガラス焼結フィルタを通しての濾過の際、焼結物上には何も残らない。濾過した溶液を、30mlの溶液になるまで部分的にストリップさせ、これを300mlのシクロヘキサンで処理し、
1H NMR及び
31P{
1H}NMR分析によりPPh
3をわずか10%(w/w)しか含有しない、生成物の黄褐色の結晶(4g)を得る。
31P{
1H}NMR分析は、[Josiphos
* RuCl
2 AMPY]の異性体が形成され、[Josiphos
* RuCl
2 ]のAMPYとの交換が完了したことを示す。ストリッピングさせた濾液の分析は、それが(母液から予想される通り)より大量の遊離ホスフィン及び[Josiphos
* RuCl
2 AMPY]の同じ異性体混合物を含有することを示す。
31H NMR データ δ = 72.29 (d), 37.98 (d) 大きな異性体 1; 60.53 (d), 43.23 (d) 異性体 2; 51.09 (d), 43.75 (d) 異性体 3; 70.64 (d), 35.81 (d) 異性体 4; 71.17 (d), 53.11 (d) 異性体 5; 57.76 (d), 46.94 (d) 異性体 6、他。
固体[Josiphos
* RuCl
2 AMPY]の1グラムの試料をIPA(15mlのIPA中に1g)中、120℃のオイルバス温度まで15時間加熱する。この反応が澄んだ赤色溶液を形成し、それを濾過し、次いでストリップさせ、残留物を10ミリバール、50℃で2時間乾燥させる。塩素系溶媒でも非常に不溶性である[Josiphos
* RuCl
2 AMPY]の大きな異性体が、
1H及び
31P{
1H}NMR分析により得られる。
31H NMR データ δ = 72.29 (d), 37.98 (d) 大きな異性体 1; 60.53 (d), 43.23 (d) 異性体 2; 異性体の比率9/ 1。