(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御ユニットは、前記変速機の前記初期シフトを制限すべく、且つ、前記トルクコンバータがロック状態に在ることを決定したとき、または、その後で、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の前記第1の増大の割合を制御すべく、構成される、請求項1に記載のシフト抑制的制御システム。
前記戻りモードは、前記慣性保持モードにおいて前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度が増大するにつれて前記増速入力が減少するときに起動される、請求項12に記載のシフト抑制的制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の種々の特徴の実施例を実現する装置、システム及び方法が、図面を参照して記述される。図面及び関連記載は、本発明の幾つかの実施例を例証するために提供されるものであり、本発明の有効範囲を限定するものでない。各図の全体にわたり、参照番号は、参照された要素間の対応関係を表すべく再使用される。
【0013】
図1は、本発明の実施例に係る、乗用車のためのシフト抑制的制御システム1の構成要素のブロック図を示している。シフト抑制的制御(SRC)システム1は、例えば、増速ペダルであり得る増速入力部2を含み得る。例えば、増速ペダルの踏込みの比率に対応する増速入力部2の増速入力量を、増速入力センサ9が検出する。本出願の全体にわたり、増速入力またはペダル増速に対して参照が為されるが、本発明の方法及び/またはシステムは、斯かる入力に限定されない。上記方法及びシステムは、加速、減速、パワー出力、速度、または、それらの組み合わせに関する運転者の意図または要求に対応するパラメータの検出に基づいてシフト操作を制限するものである。例えば、上記方法及び/またはシステムは更に、本発明の有効範囲を制限することなく、増速ペダルに限られない他の種類の増速入力を解析し、且つ/又は、減速を検出すべく制動動作を解析し得る。
【0014】
SRCシステム1は、エンジン制御ユニット(“ECU”)10、及び/または、メモリ11を含んでいる。ECU10は、運転者による増速要求に対して応答するために、増速入力センサ9に対して接続され得る。ECU10は、メモリ11内に記憶されたデータ、及び、種々のセンサにより検出されたデータに基づき、自動車の種々の動作を制御する一つ以上のプロセッサを含み得る。メモリ11内に記憶されたデータは、以下において
図11、
図13及び
図14に関して考察されるルックアップ・テーブルに対応するデータを含み得る。
【0015】
自動車1は更に、スロットル・ユニット3を含み得る。該スロットル・ユニット3は、例えば、エンジン4に対して接続され得る。スロットル・ユニット3は、選択的に、例えば、仮想的スロットル、及び/または、スロットル・バルブを含み得る。スロットル・ユニット3は、エンジン4における燃料の燃焼のために、該エンジン4に対する空気流を制御する。
【0016】
一実施例において、ECU10は、種々の検出状態に基づいて目標スロットル開度または空気流量目標値を設定することにより、スロットル補償の量を決定し得る。一実施例において、ECU10は、増速入力センサ9により検出されたデータ、及び、検出された車速を含み得る種々の検出済みデータに基づいて駆動力目標値を達成すべく、要求されたスロットル位置を算出して操作する並列的なシステム及び/または方法を使用する。
【0017】
(例えば内燃エンジンなどの)エンジン4は、スロットル・ユニット3により供給される空気流を利用し得る。エンジン4の出力回転速度を検出するために、エンジン出力速度(NE)センサ12が配備され得る。ECU10は、スロットル補償の量を決定し得る。例えば、ECU10は、スロットル・ユニット3内におけるスロットル・バルブの位置、及び/または、スロットル・ユニット3によりエンジン4に対して提供される空気流の量を制御し得る。
【0018】
変速機7は、無段変速機(CVT)であり得る。変速機7は、変速機入力速度を検出する変速機入力速度センサ13に対して接続され得る。変速機7は、各車輪8を駆動し得る。エンジン4を変速機7に対し、トルクコンバータ5が接続し得る。トルクコンバータ5に対して係合されたとき、エンジン4は、トルクコンバータ5におけるインペラを駆動すべく、且つ、該トルクコンバータ5内における流体を駆動すべく使用され得る。エンジン出力トルクは、トルクコンバータ5における流体の流体力学的な抵抗を克服する。トルクコンバータ5は、ロック状態もしくはロック解除状態で動作し得る。
【0019】
本出願における入力軸速度に対する参照は、(例えば、変速機入力速度センサ13により検出された)変速機7の入力軸の速度、または、エンジン4と変速機7との間の接続に対応する。代替的に、入力軸速度とは、トルクコンバータ5がロックされたときにおけるエンジン出力速度を指し得る。上記変速機入力速度は、例えば、トルクコンバータ5内のタービンの回転に対応し得る。
【0020】
概略的に、変速機入力速度がエンジン出力速度に近づくにつれ、トルクコンバータ内の流体の流体力学的な抵抗は減少される。選択的に、例えば、滑り及び動力損失を排除もしくは最小限度に抑えるために、トルクコンバータ5を純粋な機械的継手へと実効的に変化させるために該トルクコンバータ5のインペラ及びタービンを物理的に連結し得るロックアップ・クラッチ6が配備され得る。本発明の有効範囲を制限することなく、ロックアップ・クラッチありで、または、無しで、他の形態のトルクコンバータが使用され得る。
【0021】
SRCシステム及び/または方法1は、トルクコンバータ5がロックされないときにエンジン出力速度が制御される如く、調節及び較正され得る。変速機出力速度及び/または車速を検出または決定するために、変速機出力速度及び/または車速センサ14が配備され得る。
【0022】
ECU10は、トルクコンバータ5がロック位置に在るか否かに依存して、異なる論理で動作し得る。本発明の一つの目的は、トルクコンバータ5がロックされているときに変速機レシオをシフトすることによりエンジン出力速度(NE)を制御することである。トルクコンバータ5がロックされないとき、ECU10は、較正により、本明細書中に記述される所望の効果に到達し得る。
【0023】
図2は、本発明の実施例に係る、増速入力に基づいてエンジン出力速度及び/または変速機入力速度を制御するシフト抑制的制御のシステム及び方法を示している。
図2は、X軸上に、経時的なペダル増速入力20を示している。エンジン出力速度または入力軸速度は、Y軸上にプロットされている。
【0024】
上記SRCシステム及び方法は、自動車1の幾つかの前提条件が達成もしくは満足されたときに起動され、増速状態を検出し、且つ、論理的完了状態が達成もしくは満足されるまで、動的な変速機速度目標値を定義し得る。
【0025】
本発明のシフト抑制的制御なしでの制御ロジックにおいて、“原始的(original)”な入力軸速度24は、
図2に示された如く急激に非線形的に増大することで、(シフトの間及び/または後におけるエンジン出力速度の急激な変化の結果として)エンジン速度を急激に上げると共に、エンジンの突発的感覚に繋がり得る。本明細書中で使用される“原始的”という語句は、本発明の制御システム及び/または方法とは異なる制御システム及び/または方法であって、少なくともシフト抑制的制御に関して本明細書中に記述されたSRCシステム及び方法の利点を提供しないという制御システム及び/または方法の下での動作を指している。上記SRCシステムは入力軸速度26を制御する複数の段階を有することから、“初期”という語句は、目標速度に到達する前における開始ダウンシフトを、(以下に記述される慣性保持の如き)次続的段階から区別すべく使用される。本明細書中で使用される“制御された”という語句は、上記SRCシステム及び/または方法の下での動作/実施形態を指している。ECU10は、初期シフト、慣性制御、及び、本明細書中に記述される他の操作を実施するために、記述されたSRCロジックを作動させる。
【0026】
実施例において、ECU10は、例えば、初期ダウンシフト26aの間における制御された入力軸速度26の増大の最大量を制御すべく、初期ダウンシフトに対する最大保護値23を設定し得る。一実施例において、ECU10は、初期ダウンシフト26aの間において入力軸速度26が到達し得る最大入力軸速度目標値を設定し得る。最大保護値23を設定する一つの目的は、エンジンの突発さを低減するために初期ダウンシフト26aの量を制御することである。最大保護値23はまた、急激で非効率的な上昇を回避する効率も高める。初期ダウンシフト26aに対する最大保護値23は、増速入力値20、車速、及び/または、入力軸速度に基づいて決定され得る。その故に、燃料経済性と運転性とをバランスさせるために、最大保護値23は較正されることで、更に大きなまたは更に小さなダウンシフト量を提供し得る。
【0027】
一実施例において、上記SRCシステム及び方法は、スタンドアロンの制御器として動作し、且つ、初期ダウンシフト26aの間におけるシフト速度特性を定義する。一実施例において、初期ダウンシフト26aの特性は、SRCシステム及び/または方法が作動される前において動作している基本的/従前的な制御ロジックと同一または同様である。一実施例において、初期ダウンシフト26aの間において、上記SRCロジックは、変速機入力速度またはエンジン速度を設定し得るが、当該シフト速度において変速機がレシオを変化させるというシフト速度は設定しない、と言うのも、従前的/基本的な制御ロジックがシフト速度を決定するからである。従前的/基本的ロジックが入力軸速度の増大の割合を設定して最大保護値23を達成し得ると共に、上記SRCシステム及び/または方法は、初期ダウンシフト26aの終了時に、エンジンまたは入力軸速度を設定する。従前的/基本的ロジックは、本明細書中に記述される上記SRCシステム及び/または方法と同時的に動作し続け得るか、または、SRCシステム及び/または方法が有効であるときに動作を停止し得る。
【0028】
一実施例において、上記システム及び/または方法は、目標となる入力軸速度またはエンジン出力速度を設定し、且つ、(例えば速度変化の割合などの)動的特性を制御することで、最初は比較的に迅速なレシオ変更/シフトにより且つその後は所定の割合の増大または減少により、その目標値に到達する。
【0029】
図2に示された如く、原始的な制御方法/システムにおける迅速なダウンシフトの故に、原始的なエンジンまたは入力軸速度24は、慣性制御なしで、区域21及び27内において、非線形的に入力軸速度目標値22まで増大する。本明細書中で使用される慣性という語句は、経時的なエンジン出力速度または入力軸速度の変化の割合を指し得る。経時的に区域21及び27内で制御されるエンジン出力速度または入力軸速度26は、慣性保持モードの間における慣性制御された入力軸速度26bの制御された上昇を示す。線形の増大の故に、慣性浪費量は相当に低減される。慣性を制御する上記SRCロジックは、(例えば8ミリ秒などの)サンプリング時間を有し得る。差分のエンジンもしくは入力軸の速度は、サンプリング時間当たりにおける入力軸速度の変化量または増分として決定され得る。
図2において、差分入力軸速度または入力軸速度増分は示されない、と言うのも、差分入力軸速度または入力軸速度増分は、非常に小さな時的間隔内における小さな変化に対応するからである。但し、
図2には、慣性制御された入力軸速度26bを制御する累積的効果が示される。
【0030】
差分のエンジンもしくは入力軸の速度を利用することにより、上記SRCロジックは、エンジンまたは入力軸の速度が、例えば
図2に示された目標入力軸速度22に到達しまたは接近するまで、慣性を制御する。差分のエンジンもしくは入力軸の速度は、較正されてエンジン速度上昇割合を決定することで、直接的な運転性の感覚を向上させると共に、エンジン速度における非効率的で急激な上昇を回避し得る。例えば、差分のエンジンまたは入力軸速度の差分入力速度が、8ミリ秒のサンプリング速度にて、毎秒当たり、125RPM(回転/分)のエンジン速度/入力軸速度変化割合に達する如く、上記SRCシステム及び/または方法は較正され得る。
【0031】
一実施例において、慣性制御された入力軸速度26bの増大の割合は、初期ダウンシフト時の入力軸速度26aの増大の割合よりも低くされ得る、と言うのも、初期ダウンシフトに対する増大割合またはシフト速度は、ハードウェアの能力の許容範囲内で増大割合またはシフト速度を変化させ得る基本的/従前的な制御ロジックにより設定され得るからである。
【0032】
一実施例において、駆動力出力及び加速度を維持するために、スロットル開度及び燃料供与量が調節される。一実施例において、ECU10は駆動力制御ロジックを利用する。例えば、ECU10は、上記SRCの動作に基づき、必要とされるスロットル補償量を決定し得る。上記SRCロジックとは別体の制御ロジックを用いるスロットル補償に対し、ECU10は、スロットル補償の許容量を制御する利得係数を設定し得る。所定の時点においては、制御された入力軸速度と原始的な入力軸速度との間には差異が生じ得ることから、機械的なトルク比は斯かる時点にて減少され、且つ、スロットル・ユニット3は、付加的な変速機入力トルクを提供するためにスロットル・バルブ開度を増大する。
【0033】
一実施例においては、スロットル補償のために、現在条件に基づき、目標スロットル開度または空気流量が設定され得る。別実施例においては、上記SRCロジックと並列的に動作する制御ロジックが、増速入力値及び車速に基づき、要求されたスロットル位置を算出して作動させることで駆動力目標値を達成する。
【0034】
一実施例においては、例えば、エンジンもしくは入力軸の原始的な目標速度と、エンジンまたは入力軸の制御された目標速度との差に基づき、特定のスロットル補償量が設定される。例えば、原始的な目標変速機レシオが1.0であり、且つ、制御された目標変速機レシオが0.8であるなら、ECU10は、要求されたスロットル補償量をマップに基づいて決定し得るか、要求されたスロットル補償量を算出することで、原始的な駆動力を達成し得る。一実施例においては、車速及び増速ペダル位置に基づいて目標駆動力を設定すべく、別体的な制御ロジックが利用されて、上記目標駆動力が達成され得る。上記駆動力ロジックは、スロットルを制御することで、補償のための目標駆動力を達成し得る。
【0035】
図3は、増速入力センサ9が、“ロールオン”または中程度の踏み込み速度に対応するペダル増速入力値32を検出したときにおける、シフト抑制的制御ロジックの下での動作を示している。初期ダウンシフト36aの後、慣性は、エンジンもしくは入力軸の目標速度37が達成されるまで、エンジン速度または入力軸速度36が上昇する間において制御される。
図3はまた、本発明の慣性制御が無いとき、エンジンもしくは入力軸の原始的速度34の上昇が在るであろう状態、及び、スロットル補償が無いとき、原始的スロットル位置40が在るであろう状態も示している。更に多量の空気流のスロットル補償により消費される燃料は、更に低い慣性により節約される燃料と略々同一であり得る。上記制御ロジックはまた、エンジン速度または入力軸速度が、運転者により意図された目標を行き過ぎる可能性が低い様に、運転者の制御性も向上させる。
【0036】
一実施例において、ECU10は、スロットル補償制御ロジックを利用することで、特定の条件に対し、制御されたスロットル位置38を設定し、且つ、要求された補償のレベルを較正し得る。結果として、シフト量、シフト割合、及び、スロットル補償量の較正により、燃料経済性がバランスされ得る。上記SRCシステム及び方法は、特定の検出状態に対して要求されるスロットル補償量のレベルを較正し、且つ、シフト量、シフト割合、及びスロットル補償量の較正により燃料経済性をバランスさせ得る。上記SRCシステム及び方法は更に、入力軸速度またはエンジン出力速度が、運転者により意図された目標を行き過ぎる可能性を低減することにより、運転者の制御性を向上させる。
【0037】
図4は、増速入力値42が徐々に且つ一様に増大されるときのロールオン増速の間における上記シフト抑制的制御システム/方法の下での動作を示している。(
図4に示された如き)ロールオン増速の下での、エンジンもしくは入力軸の原始的速度44と、エンジンもしくは入力軸の制御された速度46との間の間隔は、部分的に、(
図3に示された如き)小さな増速入力の増大の間における、エンジンもしくは入力軸の原始的速度34と、エンジンもしくは入力軸の制御された速度36との間の間隔より小さい、と言うのも、増速ペダルのロールオン操作は、本来的に、シフト速度を減少させるからである。エンジンもしくは入力軸の制御された速度46により示された如く、初期ダウンシフト46aの後、慣性は、エンジンもしくは入力軸の制御された速度46が(46bにより示された如く)エンジンもしくは入力軸の目標速度47に到達するまで、制御される。制御されたスロットル開度48は、原始的スロットル位置50に関して示され、48と50との間の間隔は、
図2及び
図3に関して上記に考察された如く駆動力を維持するためのスロットル補償量を表している。
【0038】
図5は、本発明の実施例に係る、運転者が大きなもしくは最大のパワー出力に対応する増速入力、または、増速要求を提供したときにおける上記シフト抑制的制御システム/方法の下での動作を示している。例えば、ペダル増速入力値52の比較的に大きい急激な増大は、運転者が、大きなもしくは最大のパワー出力または加速度が付与されることを意図していることを表し得る。一実施例において、急激な増大が、本明細書中に記述された制御ロジックの動作範囲を超過したとき、上記SRCロジックは起動されない。例えば、
図5に示された如く、エンジンもしくは入力軸の原始的速度54は、エンジンもしくは入力軸の制御された速度56に対し、それらが実質的に同一グラフ上に位置する如く、合致し、または、忠実に対応し得る。従って、制御されたスロットル開き位置58は原始的なスロットル開き位置60に厳密に合致する、と言うのも、例えば
図2、
図3及び
図4に示された、制御された入力軸速度と原始的な入力軸速度との間の間隔は、此処では、存在せず、または、最小限だからである。その故に、上記方法及びシステムは、運転者が最大のパワー出力もしくは加速度の付与を意図することを該方法及びシステムが検出したとき、大きなまたは最大のパワー出力を提供する。例えば、上記方法及びシステムは斯かる意図を、例えば
図5に示された如く急激で大きなペダル増速量の増大が検出されたときに検出し得る。
【0039】
例えば、別体的な制御ロジックは、40%超(または、35%〜45%超)の増速入力ペダルの踏み込み量に対して、動作し得る。このスレッショルド値もしくは範囲は、事前決定され得るか、または、種々の条件に基づいてリアルタイムで設定され得る。40%の踏み込みスレッショルド値は、スレッショルド値の単なる一例であり、他の踏み込み比率、または、踏み込み比率の変化の割合が利用され得る。一実施例においては、上記別体的な制御ロジックが実施されたときでさえも、上記SRCロジックは初期条件(例えば、初期ダウンシフトまたは初期慣性制御)を設定し得る。一実施例においては、増速入力値52の大きい急激な増大に応じ、最速の可能的なシフトが実行される。但し、他の動作ロジックに関わらず、上記SRCシステム及び方法は、ペダルまたは速度の動作範囲の如き一定の開始条件を設定し得る。
【0040】
図6は、ペダル増速入力値62が増大し且つ次続的に減少したときにおける戻り機能の間におけるシフト抑制的制御ロジックの下での動作を示している。
【0041】
最も一般的には、シフトは完了されると共に、エンジンまたは入力軸の実際速度は、同一の原始的なエンジンまたは入力軸の実際速度、すなわち、目標速度(例えば、夫々、
図4、
図5及び
図6におけるエンジンもしくは入力軸の目標速度37、47または57)に到達する。但し、
図6に示された戻り機能において、運転者が増速ペダルをその元の位置まで戻すことは想定され得ないので、SRCプロセスを完了するためにタイマが使用される。一実施例において、上記タイマは、エンジンまたは入力軸の速度が、原始的制御のエンジンまたは入力軸の静的な速度の目標値と同一であり得るというエンジンまたは入力軸の静的な速度の目標値に到達したときに、使用される。但し、最終的なシフトが達成されないなら、慣性または変速機レシオは、依然として制御かつ維持されることで、逆向きの突発的変化(エンジン速度の低下を引き起こす急激なアップシフト)を緩和する。
【0042】
入力軸速度またはエンジン出力速度が初期シフト点に到達したとき、エンジンもしくは入力軸の速度66の二次的な変化の割合が定義される。低下の割合の絶対値は、慣性保持操作段階66の増大の割合と同一であるか、それよりも小さいものであり得る。低下の割合の絶対値は、慣性保持操作段階66の増大の割合より大きいことも可能である。検出されたパラメータ(例えば、初期シフト点、及び、入力軸もしくはエンジンの目標出力速度など)及び設計事項(結果的な突発的変化、または、逆向きの突発的変化)に依存して、低下の割合が慣性保持操作段階66の増大の割合より大きいことは好適なこともあり、そうでないこともある。上記戻り機能は、急激なエンジン速度の動きを最小限度に抑えることで、慣性損失を低減すると共に、線形の運転性の感覚を向上させる。
【0043】
図6に示された如く、一実施例において、初期ダウンシフト66aは、入力軸速度またはエンジン出力速度の上昇を制御する慣性保持66bにより追随される。もし、入力軸速度またはエンジン出力速度が目標値に到達する前に増速入力値62が低下したなら、入力軸速度増大プロセスは取り消され、戻り機能が起動される。戻り入力軸速度66cの変化の割合は制御されることで、逆向きの突発的変化が回避されると共に、慣性浪費量が低減される。エンジンもしくは入力軸の制御された速度66とエンジンもしくは入力軸の原始的速度64との間の間隔は、本明細書中に記述される制御ロジックにおいて回避または排除される慣性浪費量に対応する。一実施例において、もしエンジンもしくは入力軸の実際の速度66が、エンジンもしくは入力軸の目標速度を達成するなら、上記SRCロジックは、一定の時的間隔が経過した後に、取り消され、または、作動停止される。例えば、エンジンもしくは入力軸の実際の速度66が、エンジンもしくは入力軸の目標速度を達成し、または、それに接近したとき、タイマが設定され得る。スロットル補償量は、制御されたスロットル開度68と原始的なスロットル開度70との間の差に対応する。回避された慣性浪費量によれば、全体的な燃料効率は低減されない様に、制御されたスロットル開度68の結果として、低減された燃料効率が補償される。
【0044】
図7は、本発明の実施例に係る、ペダル増速入力値72が反復的に増大し且つ減少するという状態の間における上記シフト抑制的制御ロジックの下での動作を示している。原始的な制御操作の下で、エンジンもしくは入力軸の原始的速度74は、急激に減少する前に高レベルまで上昇し、相当の慣性浪費量及び非効率さに帰着する。上記SRCシステム及び方法の下で、エンジンもしくは入力軸の制御された速度76は、慣性制御ロジックの故に、更に小さい及び/または線形の慣性変化に委ねられる。エンジンもしくは入力軸の原始的速度74とエンジンもしくは入力軸の制御された速度76との間の間隔は、回避された慣性浪費量に対応する。
【0045】
一実施例において、初期ダウンシフト76a、慣性制御された入力軸速度76b、及び、戻り入力軸速度76cは、夫々、
図6に関して上記で論じられた66a、66b及び66cと同様に制御される。一実施例において、エンジンまたは入力の速度が目標速度に接近したとき、または、その後、タイマが始動される。上記目標は、増速入力値72に基づき変化し得ることから、ECU10は、この状態においてタイマを継続的にリセットし得る。もし、エンジンもしくは入力軸の速度74が減少している間にペダル増速入力72が増大したなら、上記タイマはリセットされ得ると共に、慣性が再び制御される。エンジンもしくは入力軸の速度74に依存して、ダウンシフトが再び実行され得る。
【0046】
一実施例において、ダウンシフトは、上記ロジックの開始時において、または、(エンジンまたは入力軸の速度が、一旦、初期シフト速度より低く低下したならば開始される)戻り操作段階からのみ実行されるべく制御され得る。その故に、回転速度が初期シフト速度より高く留まる限り、上記割合は、慣性保持モードにより定義される。戻り操作段階の間において(例えば
図7に示された如く)増速入力値が反復的に増大かつ減少されることで別のダウンシフトが引き起こされることはあり得るが、上記SRCロジックは、迅速なシフトは実行されず且つ速度は定義された割合で増大もしくは減少する様に、最大ダウンシフト量を設定する。例えば、上記定義された割合は、メモリ11内に記憶されたルックアップ・テーブルにおけるデータに対応し得る。
【0047】
図2から
図7に関して上述されたSRCロジックは、エネルギ効率及び運転性において相当の向上を提供する。無段変速機の各プーリは比較的に高重量であることから、慣性損失の減少は、効率の相当な向上に繋がり得る。更に、初期ダウンシフトに関する慣性制御及び最大保護は、運転性及び加速(直接的)感覚の向上に繋がる。例えば、上記SRCロジックは、
図2から
図7に関して上記で論じられた如く、突発的感覚/逆向きの突発的感覚を低減する。
【0048】
一実施例において、穏やかな増速入力に対する慣性は、徐々に変化すべく制御され得るが、増速入力が急激に上昇するとき、慣性は、制御されないか、高速で変化すべく設定され得る。一実施例においては、運転性の感覚を向上させるために、慣性目標を設定する代わりに、慣性量が変更され得る。
【0049】
一実施例においては、戻り操作段階の取り消し段階の間おけるシフト速度が制御され得る。例えば、ECU10は、増速入力が急激に減少したとき、段階的な取り消しを制御し得る。ECU10は、(
図4に示されたロールオン状態の逆である)ロールオフ状態に対して低速での取り消しを制御し得る。該取り消しは更に、車両の種類に依存し得る。
【0050】
図8は、本発明の実施例に係る、シフト抑制的制御(SRC)システム及び方法100の複数のモード間の関係を示している。最初、上記シフト抑制的制御は、シフト抑制オフ・モード102に示された如く、起動されない。初期シフト・モード104においては、例えば、
図2から
図7に関して記述された如く、初期ダウンシフトが制御され得る。慣性保持モードまたは操作段階106においては、例えば、
図2から
図7に関して記述された如く、慣性が制御される。戻り機能モード108は、
図6及び
図7に関して上記で論じられた。一実施例において、ロジックの流れ同士の間の優先順位は、以下の如くである:(A)、(B)、(C)、次に、(D)。その後、上記プロセスは反復され得る。上記ロジックの流れは、他の実施例においては異なる順序であり得る。上記ロジックの流れはまた、他の実施例において、これらの段階の内の一つ以上を省略し得る。一実施例においては、増速入力値及び他の検出状態に依存して、別体的なロジックの流れの順序が追随され得る。
【0051】
図9は、本発明の実施例に係る、当該動作の間に複数の前提条件が決定かつチェックされるという、上記シフト抑制的制御システム方法の下での動作のフローチャートを示している。実施例において、上記前提条件がチェックされる、と言うのも、斯かる条件が満足されなければ、エンジン速度または入力軸速度を制御するためには、別体的な制御ロジックが更に良好に適するからである。
【0052】
ステップ110において、上記ECUは、エンジン速度及び変速機入力速度が同一である如く、トルクコンバータのロックアップ・クラッチが滑っていないことを表す、選択的な開始フラグがオフであるか否かをチェックする。一実施例においては、滑りが在るときには、上記SRCロジックに関して上述されたのと同様の特性が達成される如く、上記SRCロジック以外の制御ロジックが動作され得る。例えば、斯かる制御ロジックは、滑り量に基づいてエンジン特性を制御することにより、運転性と、機械的接続対流体連結の効率とを制御し得る。
【0053】
一実施例において、本明細書中に記述されたSRCロジックは、トルクコンバータがロックされたときにのみ実現されると共に、トルクコンバータがロックされないときには、改変されたSRCロジックまたは別体的な制御ロジックが作動される。上記SRCロジックの目的は、トルクコンバータがロックされないときに変速機レシオをシフトさせることによりエンジン速度を制御することなので、油圧的な滑りからの可変性は、更に複雑な計算及び付加的なセンサを必要とする。例えば、上記別体的な制御システム/方法は、トルクコンバータの滑りが在るときに起動される変速機制御を補償する制御システム及び方法であり得る。一実施例において、トルクコンバータがロック状態に無いとき、較正により同様の効果が達成され得る。
【0054】
図9を参照すると、一実施例において、ステップ112にてECU10は、パドル・シフタ、または、シフト・レバー上の手動ゲートのいずれかにより、手動シフトが要求されたか否かを決定する。例えば、手動シフトに対しては、上記SRCシステム及び方法よりも、代替的な制御システム及び方法が更に良好に適することもある。ステップ114において、ECU10は、シフト・レンジが二次的制動モードに在るか否かを決定する。二次的制動モードにおいて、エンジン速度は、高速に維持されることで、エンジン・ブレーキを提供する。ステップ116において、ECU10は、シフト・レンジが、更に大きなエンジン速度により、車両を更に積極的に減速するという一次的制動モードに在るか否かを決定する。一実施例において、もし、これらの前提条件が満足されるなら、上記プロセスはシフト抑制的制御オフ・モード102へと移動し、これは次に、
図8に示された如く、初期シフト104により追随される。この実施方式の一つの理由は、上記前提条件が満足されない状況展開に対しては、更に良好に適する制御ロジックが既に実現されている、ということである。
【0055】
図10は、本発明の実施例に係る、初期ダウンシフト・モード117における上記シフト抑制的制御システム及び方法の下での動作のフローチャートを示している。更に詳細には、
図10に関して記述される各ステップは、
図8における(A)に対応する。ステップ102に示された如く、上記SRCシステム及び方法は最初はオフであり、且つ、ステップ118〜134に関して以下に論じられる如く、初期シフト104が完了される。一実施例において、ダウンシフトは、初期ダウンシフト・モード117の完了時に実行される。前提条件が満足されたとき、初期ダウンシフト・モード117は、種々の条件をチェックし且つ初期シフト量を算出することが許容される。
【0056】
ステップ118において、ECU10は、運転状態が通常的であるか否か、及び、他の制御システム及び方法が有効でないことチェックする。例えば、ECU10は、品質管理システム及び方法、または、安定性制御システム及び方法が有効でないことを確実とし得る、と言うのも、上記SRCシステム及び方法は、それらの夫々の動作を阻害し得るからである。
【0057】
ステップ120において、ECU10は、トルクコンバータがロックアップ状態であることを確実とし得る。ステップ122にて、ECU10は、
図9のステップ110に関して上記に示された理由の故に、選択的ロックアップの間に何らかの滑りが在るか否かを決定し得る。ステップ124において、ECU10は、運転者が実際に増速ペダルを介して増速を要求しているか否かを決定する。例えば、ECU10は、増速ペダルとの関係により設定されたスロットル開き角度を決定し得る。例えば、ECU10は、現在条件に基づき、スロットル開き角度がルックアップ・テーブルにおける値を超過しているか否かを決定し得る。上記ルックアップ・テーブルは、種々の状態に対する増速を確実とすべく較正された複数のスロットル開度を含み得る。ECU10は、スロットル開き角度が、増速を確実とすべく較正されたスロットル開度を超過したとき、増速状態フラグをオン状態に設定し得る。
【0058】
ステップ126において、ECU10は、エンジン速度、入力軸速度、または、車速が、提案されたシステム及び方法の速度動作範囲内であるか否かを決定する。例えば、上記SRCシステム及び方法に対する動作範囲は、2〜180マイル/時であり得る。本発明の有効範囲を限定することなく、(例えば、キロメートル/時などの)他の速度の尺度における他の動作範囲、または、他のパラメータが利用され得る。
【0059】
ステップ128において、ECU10は、エンジンもしくは入力軸の目標速度が、計算された初期シフト目標値より大きいか否かを決定する。一実施例において、上記初期シフト目標値は、現在のエンジン/入力軸の実際速度からのオフセット量、及び、変速機の出力速度の如き現在の車両状態に対する速度テーブルから検索された値の内の最小値であり得る。もし目標回転速度が、計算された初期シフト量よりも大きいなら、ステップ104においてシフトが実行される。エンジンまたは入力軸の静的な速度目標値は、増速入力値に依存する最終速度であり、且つ、上記SRCシステム及び方法は、
図2から
図7に関して上記に示された如く、最初は、初期シフト量に対して設定された最大保護値を以て、次に、慣性を制御すべく定義された上昇割合を以て、その目標速度に到達する特性を設定する。一実施例において、もし、エンジンもしくは入力軸の静的な速度目標値が初期シフト量よりも大きくないなら、上記SRCシステム及び方法は動作されず、基本ソフトウェアを介して(小さな)シフトが完了される。
【0060】
図11は、本発明の実施例に係る、メモリ11内に記憶されると共に、上記シフト抑制的制御システム及び方法の初期シフト量に対する最大保護値に対応するルックアップ・テーブル148を示している。一実施例において、上記最大保護値は、例えば、
図2に関して上記で論じられた最大保護値23であり得る。一実施例において、各テーブル値150は、
図7に関して上記で論じられた状態の如き動作による反復的なシフトを制限する最大ダウンシフト量150に対応し得る。もしエンジン速度が比較的に大きいなら、駆動力を生成する初期シフトは必要とされず、且つ、慣性保持操作段階が直ちに開始される。テーブル148は、車速または変速機の出力速度のx行値149及び増速ペダル位置のy列値148に対する最大ダウンシフト量150を表している。テーブル148は2,500RPMまでの同一の最大ダウンシフト量を有するが、該テーブル148は、種々の車速及びペダル入力に対して最大ダウンシフト量が考慮され得る様に設計される。大きな車速及びペダル踏み込み量にては、大きなダウンシフト速度が容認可能であり得る。2,500の最大ダウンシフト量は、単に、例示目的での一例として提供される。上記値は、本発明の有効範囲を制限することなく、特定の車両または動力伝達系に対して較正され得る。概略的に、ダウンシフト値150は、設計の要件に基づいて変更され得る。
【0061】
図10を戻り参照すると、ステップ132において、SRCシステム及び方法は、基本ソフトウェアにおいて定義された平滑化関数を用い、動的なエンジンもしくは入力軸の回転速度目標値を設定する。この平滑化関数は、平滑化パラメータを用いて、シフト動作において急激な変化が無いことを確実とする。ステップ134において、上記SRCは、マップを用いて、エンジンまたは入力軸の静的な回転速度目標値を、基本ソフトウェアと同一に維持する。
【0062】
図12は、本発明の実施例に係る、慣性保持モード161における上記シフト抑制的制御システム及び方法の下での動作のフローチャートを示している。更に詳細には、
図12に関して記述される各ステップは、初期シフト104から慣性保持106に移行する、
図8における(B)に対応する。
【0063】
ステップ153において、上記SRCシステム及び方法は、エンジンまたは変速機入力の実際速度が、計算された初期ダウンシフト目標値以上であるか否かを決定する。例えば、ステップ153において、上記SRCシステム及び方法は、
図2及び
図3に関して上記で論じられたプロセスと同様に、エンジンまたは変速機入力の実際速度を、上記最大保護値と比較し得る。ステップ153は、
図10に関して上記で論じられたステップ128であって、その間において目標回転速度が、計算された初期ダウンシフト量と比較されるというステップ128から区別される。静的な目標速度は、(例えば、ペダル位置などの)増速入力により即時的に設定され、且つ、ステップ128において、ECU10は、シフトが要求されるか否かを決定する。しかし、この時点において、実際の入力軸速度は依然として、その元の位置に在る。上記初期シフトが実行されると共に、実際の入力軸速度は、その初期シフト点まで上昇する。回転速度が、その初期シフト量に一旦到達したなら、慣性保持操作段階が始まり、且つ、入力軸速度は、上記目標速度まで、但し、上記SRCシステム及び方法により定義された割合にて、シフトし続ける。
【0064】
エンジンまたは入力軸の回転速度が、初期シフト量に一旦到達したなら、慣性保持操作段階が開始し、且つ、入力軸またはエンジンの速度は、定義された割合にて、エンジンまたは変速機入力の静的な目標速度は、エンジンまたは変速機入力の静的な目標速度へとシフトし続け、慣性保持モード106により表された如く慣性を制御する。
【0065】
ステップ156にて、上記SRCシステム及び方法は、エンジンまたは入力軸の静的な回転速度目標値を、基本マップにより定義された値と同一に設定する。ステップ158において、エンジンまたは変速機入力の静的な目標速度が、(例えば、エンジンまたは変速機入力の現在速度などの)エンジンまたは変速機入力の動的な目標速度よりも、次の値よりも大きい(例えば、+100RPMなどの)値だけ大きい限りにおいて、次の動的な目標または実際の変速機入力速度が計算される。
【0066】
例えば、上述の計算は、
図13に示されたルックアップ・テーブル152に基づき得る。
図13は、本発明の実施例に係る、上記メモリ内に記憶されると共に、上記シフト抑制的制御システム及び方法の下での入力軸速度またはエンジン出力速度の増大の割合に対応するルックアップ・テーブルを示している。例えば、毎秒当たりの回転速度の増大値155は、与えられた増速ペダル位置のx値151と、与えられた車速または変速機出力速度のy値154とに基づいて決定され得る。所望の増大の割合が、種々の現在条件に依存して異なり得るならば、毎秒当たりの回転速度の増大値155は、設計要件に基づいて決定され得る。
【0067】
同様に、運転者が増速ペダルを解放したので静的な目標値が更に低いなら(例えば、−100RPM)、次の動的目標値または実際の入力速度値が計算される。但し、もし静的な目標速度と実際の入力軸速度との間の差が、次の増分よりも小さいなら、動的な目標値は単に、静的な目標値となり、シフトは完了される。一実施例において、増大及び減少の割合は、設計要件に依存して、同一であり得るか、異なる様に設定され得る。
【0068】
図14は、本発明の実施例に係る、上記メモリ内に記憶されると共に、上記シフト抑制的制御システム及び方法の下での入力軸速度またはエンジン出力速度の減少の割合に対応するルックアップ・テーブルを示している。換言すると、ルックアップ・テーブル170は、
図13に示されたテーブル152と類似しているが、毎秒当たりの増大値152の代わりに、テーブル170は、毎秒当たりの減少値の例を示している。例えば、毎秒当たりの回転速度の減少値171は、与えられた増速ペダル位置のx値168、及び、与えられた車速または変速機出力速度のy値169に基づいて決定され得る。
【0069】
図15は、本発明の実施例に係る、戻り機能モードにおける上記シフト抑制的制御システム及び方法の下での動作のフローチャートを示している。更に詳細には、
図15に関して記述される各ステップは、慣性保持操作段階106から戻り機能操作段階108へと移行する
図8における(C)に対応する。
【0070】
ステップ172において、(実際の入力軸速度に対応し得る)動的な速度目標値が初期ダウンシフト点まで減少するなら、戻り機能操作段階108が開始される。結果として、ステップ174においては、静的な目標速度が維持される。該静的な目標速度は、基本ソフトウェアにより基本マップを以て定義された如く維持され得る。ステップ176において、ECU10は、動的な目標値を、平滑化関数により、但し所定の割合を以て、設定する。該所定の割合は、
図16に示された如きルックアップ・マップ180から獲得され得る。
【0071】
図16は、与えられた増速ペダル位置のx行値177と、車速または変速機の出力速度の与えられたy列値178とに対する戻り操作段階の間におけるエンジン速度減少割合179を参照するルックアップ・マップ・テーブルを示している。
【0072】
図17は、本発明の実施例に係る、第2シフト・モード181において動作するシフト抑制的制御方法を示している。更に詳細には、
図17に関して記述される各ステップは、戻り機能状態108から初期シフト状態104へと移行する
図8における(D)に対応する。
【0073】
ステップ182において、ペダル増速フラグは、初期ダウンシフトの間において、
図10のステップ124に関して上述された如くチェックされる。ステップ184において、ECU10は、ダウンシフトが反復される前に、静的な入力軸速度が、(
図10のステップ128に関して上述された如き)計算された初期ダウンシフト目標値より大きいか否かを決定する。これらの条件は、
図10の初期シフト条件と同一であるが、これらの条件は、戻り操作段階内に存在することから、先ず前提条件操作段階に完全に戻ることなく、必要であれば、初期シフトが実行されることを許容する。
【0074】
故に、
図2から
図7に示された如く、且つ、
図8から
図10、
図12、
図15及び
図17のプロセスに関して論じられた如く、ECU10は、初期シフト、慣性保持、戻り機能、及び/または、第2シフトの間において、エンジン速度または変速機入力速度の変化割合を制御することにより、エンジン・ノイズ及び非線形的な加速感覚を低減し得る。駆動力は、初期ダウンシフト操作及びスロットル補償により維持される。慣性損失の減少に依り、燃料経済性が影響されるのは最小限であり得る。一実施例において、上記方法は、一定の前提条件が満足されたときに起動され得ると共に、上記システム及び方法の制御ロジックは、ロジック完了条件が満足されるまで、増速入力に基づき、変速機入力速度、エンジン出力速度、及び/または、変速機レシオを制御し得る。一実施例において、上記システム/方法は、目標となる静的な入力軸速度またはエンジン出力速度を設定すると共に、最初は、比較的に迅速なレシオ変更/シフトにより、次に、定義された割合の増大もしくは減少により、(例えば速度変更の割合などの)動的特性を制御することで、静的な目標値に到達する。結果として、上記シフト抑制的制御システム/方法は、慣性浪費、及び、運転者に対する非線形的で突発的な感覚を減少しながらも、燃料経済性を維持または改善する。
【0075】
当業者であれば、本明細書中に開示された各例に関して記述された種々の例示的な論理ブロック、モジュール及びアルゴリズム段階は、電子的ハードウェア、コンピュータ・ソフトウェア、または、両者の組み合わせとして実現され得ることを理解し得よう。更に、本発明はまた、プロセッサまたはコンピュータに一定の機能を実施または実行させる機械可読媒体上でも具現され得る。
【0076】
このハードウェアとソフトウェアとの互換性を明確に例証するために、上記にては、種々の例示的な構成要素、ブロック、モジュール、回路、及び、段階が、それらの機能性に関して概略的に記述された。斯かる機能性がハードウェアとして実現されるかソフトウェアとして実現されるかは、特定の用途、及び、全体的なシステムに課される設計制約条件に依存する。当業者であれば、記述された機能性を、特定の用途毎に種々の様式で実現し得ようが、斯かる実現の判断は、開示された装置及び方法の有効範囲からの逸脱を引き起こすものと解釈されるべきでない。
【0077】
本明細書中に開示された各例に関して記述された種々の例示的な論理ブロック、ユニット、モジュール及び回路は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)もしくは他のプログラマブルな論理デバイス、個別ゲートもしくはトランジスタ・ロジック、個別ハードウェア構成要素、または、本明細書中に記述された機能を実施すべく設計されたそれらの任意の組合せにより、実現もしくは実施され得る。汎用プロセッサはマイクロプロセッサであり得るが、代替例においては、上記プロセッサは、任意の習用のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、または、状態マシンであり得る。プロセッサはまた、例えば、DSPとマイクロプロセッサとの組み合わせなどの複数のコンピュータ・デバイスの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと協働する一つ以上のマイクロプロセッサ、または、他の任意の斯かる構成としても実現され得る。
【0078】
本明細書中に開示された各例に関して記述された方法またはアルゴリズムの各段階は、ハードウェアにおいて直接的に、または、プロセッサにより実行されるソフトウェア・モジュールにおいて、または、両者の組み合わせにおいて具現され得る。上記方法またはアルゴリズムの各段階はまた、各例中に提供されたものに対する代替的な順序でも実施され得る。ソフトウェア・モジュールは、RAMメモリ、フラッシュ・メモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブル・ディスク、CD-ROM、または、業界公知である他の任意の形態の記憶媒体内に存在し得る。上記プロセッサに対しては、該プロセッサが、当該記憶媒体から情報を読取り、且つ、該媒体に対して情報を書き込み得る如く、例示的な記憶媒体が結合される。上記代替例において、上記記憶媒体は、上記プロセッサに対して一体的であり得る。
【0079】
開示された各例の上述の説明は、当業者が、開示された方法及び装置を作成または使用し得るべく提供される。当業者であれば、これらの例に対する種々の改変は容易に明らかであり、且つ、本明細書中に定義された原理は、開示された方法及び装置の精神または有効範囲から逸脱せずに、他の例に対して適用され得る。記述された各実施例は全ての観点において例示的であり、限定的ではないと考慮されることから、本発明の有効範囲は、上述の説明ではなく、添付の各請求項により表される。各請求項の意味及び均等性の範囲内で到来する全ての変更は、それらの有効範囲内に包含されるものとする。
[構成1]
増速入力を検出する増速入力センサと、
エンジン出力速度を有するエンジンと、
前記エンジンに対して接続されたトルクコンバータと、
前記トルクコンバータに対して接続されると共に、変速機入力速度を有する変速機と、
少なくとも、前記増速入力センサ、前記エンジン、及び、前記変速機に対して接続された制御ユニットであって、
前記増速入力センサが前記増速入力の変化を検出したとき、または、その後で、前記変速機の初期シフトを制限し、
前記初期シフトの後、前記変速機入力速度の、または、前記エンジン出力速度の、変化の割合を制御して、慣性浪費を低減する、
ように構成された、という制御ユニットと、
を備える、自動車のシフト抑制的制御システム。
[構成2]
当該シフト抑制的制御システムは、前記制御ユニットに対して接続され且つ制御データを記憶すべく構成されたメモリを更に備え、
前記制御ユニットは更に、
目標変速機入力速度または目標エンジン出力速度を決定し、
前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度が、夫々、前記目標変速機入力速度または前記目標エンジン出力速度に在るか、もしくは、その近傍内となるまで、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の増大の割合であって、前記メモリ内に記憶された前記制御データに基づくという増大の割合を制御し、
前記増速入力センサが、前記増速入力の減少を検出したことに応じ、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の増大を取り消す、
ように構成される、構成1に記載のシフト抑制的制御システム。
[構成3]
前記制御ユニットは更に、
前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の増大が取り消されたとき、または、その後で、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の減少の割合であって、前記メモリ内に記憶された前記制御データに基づくという減少の割合を制御する、
ように構成される、構成2に記載のシフト抑制的制御システム。
[構成4]
前記制御ユニットは、
初期シフトの間において前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の最大増大量を制限する最大シフト量を決定し、
前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度が、前記最大シフト量だけ増大するまで、前記初期シフトの間において、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度を増大させる、
ように構成される、構成1に記載のシフト抑制的制御システム。
[構成5]
当該シフト抑制的制御システムは、前記エンジン及び前記制御ユニットに対して接続されたスロットル・ユニットを更に備え、
前記スロットル・ユニットは、スロットル・バルブ開度を含み、
前記スロットル・ユニットは、該スロットル・ユニットの前記スロットル・バルブ開度を増大させて、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の前記変化の割合における制限を補償するように構成される、構成1に記載のシフト抑制的制御システム。
[構成6]
前記制御ユニットは更に、前記初期シフトが完了された後で、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の前記変化の割合を線形に設定して、非線形的なエンジンの突発的変化及び慣性浪費を低減する様に構成される、構成1に記載のシフト抑制的制御システム。
[構成7]
前記制御ユニットは、前記変速機の前記初期シフトを制限すべく、且つ、前記トルクコンバータがロック状態に在ることを決定したとき、または、その後で、前記変速機入力速度または前記エンジン速度の前記変化の割合を制御すべく、構成される、構成1に記載のシフト抑制的制御システム。
[構成8]
前記制御ユニットは、
速度増分を決定し、
複数の連続的なサンプリング期間の各々に対し、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度を前記速度増分だけ連続的に増大させることにより、前記初期シフトの後における前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の前記変化の割合を制御する、
ように構成される、構成1に記載のシフト抑制的制御システム。
[構成9]
前記制御ユニットは、
前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度が、前記目標変速機入力速度または前記目標エンジン出力速度に在るか、または、その近傍内に在るとき、または、その後で、タイマを開始または設定し、
前記タイマが満了したとき、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の前記増大の制御を完了する、
ように構成される、構成2に記載のシフト抑制的制御システム。
[構成10]
当該シフト抑制的制御システムは、制御データを記憶すべく構成されたメモリを更に備え、
前記制御ユニットは、
前記増速入力に基づき、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度に対する静的な目標速度を決定し、
最大ダウンシフト値を決定し、
前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度が初期ダウンシフト・モードにおいて前記最大ダウンシフト値だけ増大するまで、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度を制御し、
前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度が前記静的な目標速度に到達するまで、または、取り消し条件が満足されるまで、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の動的な増大の割合であって、前記メモリ内に記憶された前記制御データに基づくという動的な増大の割合を制御する、
ように構成される、構成1に記載のシフト抑制的制御システム。
[構成11]
前記制御ユニットは、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の動的な減少の割合であって、前記メモリ内に記憶された前記制御データに基づくという動的な減少の割合を制御して、戻り機能モードにおける前記エンジン出力速度の急激な減少を低減もしくは阻止し、
前記戻り機能モードは、前記入力変速機入力速度または前記エンジン出力速度の増大の間において前記増速入力が減少したときに起動される、構成10に記載のシフト抑制的制御システム。
[構成12]
増速入力を検出する増速入力センサと、
エンジン出力速度を有するエンジンと、
前記エンジンに対して接続されたトルクコンバータと、
前記トルクコンバータに対して接続されると共に、変速機入力速度を有する変速機と、
前記センサ、前記エンジン、及び、前記変速機に対して接続された制御ユニットであって、
自動車に対する複数の前提条件が満足されるか否かを決定し、
初期ダウンシフト・モードにおいては、前記第1センサが前記増速入力の増大を検出し且つ前記自動車に対する前記複数の前提条件が満足されたとき、または、その後で、前記変速機の初期ダウンシフトを制限し、
慣性保持モードにおいては、前記初期ダウンシフトの後、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の増大の割合を制御して慣性浪費を低減し、
戻りモードにおいては、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の減少の割合を制御する、
ように構成された、という制御ユニットと、
を備える、自動車のシフト抑制的制御システム。
[構成13]
前記複数の前提条件が満足されるか否かを決定する前記段階は、前記トルクコンバータがロック状態に在るか否かを決定する段階を含む、構成12に記載のシフト抑制的制御システム。
[構成14]
前記戻りモードは、前記慣性保持モードにおいて前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度が増大するにつれて前記増速入力が減少するときに起動される、構成12に記載のシフト抑制的制御システム。
[構成15]
エンジン出力速度を有するエンジンを、変速機入力速度を有する変速機に対して接続するトルクコンバータを配備する段階と、
増速入力センサを用い、増速入力を検出する段階と、
少なくとも、前記増速入力センサ、前記エンジン及び前記変速機に対して接続された制御ユニットを用い、前記増速入力センサが前記増速入力の変化を検出したとき、または、その後で、前記変速機の初期シフトを制限する段階と、
前記制御ユニットを用い、前記初期シフトの後、前記変速機の変速機入力速度または前記エンジン出力速度の変化の割合を制御して、慣性浪費を低減させる段階と、
を有する、自動車の変速機シフトを抑制的に制御する方法。
[構成16]
前記制御ユニットに対して接続されたメモリ内に、制御データを記憶する段階と、
前記制御ユニットを用いて、目標変速機入力速度または目標エンジン出力速度を決定する段階と、
前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度が、夫々、前記目標変速機入力速度または前記目標エンジン出力速度に在るか、もしくは、その近傍内となるまで、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の増大の割合であって、前記メモリ内に記憶された前記制御データに基づくという増大の割合を、前記制御ユニットを用いて制御する段階と、
を更に有する、構成15に記載の方法。
[構成17]
前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の前記増大が取り消されたとき、または、その後、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の減少の割合であって、前記メモリ内に記憶された前記制御データに基づくという減少の割合を、前記制御ユニットを用いて制御する段階を更に有する、構成15に記載の方法。
[構成18]
初期シフトの間において、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の最大増大量を制限する最大シフト量を、前記制御ユニットを用いて決定する段階と、
前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度が前記最大シフト量だけ増大するまで、前記初期シフトの間において前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度を、前記制御ユニットを用いて増大させる段階と、
を更に有する、構成15に記載の方法。
[構成19]
前記エンジン及び前記制御ユニットに対して接続されると共に、スロットル・バルブ開度を含むスロットル・ユニットを配備する段階と、
前記スロットル・ユニットを用いて前記スロットル・バルブ開度を増大し、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の前記変化の割合における前記制限を補償する段階と、
を更に有する、構成15に記載の方法。
[構成20]
前記制御ユニットを用い、前記変速機入力速度または前記エンジン出力速度の前記変化の割合を線形に設定し、非線形的な運転感覚を低減し且つ慣性浪費を低減する段階を更に有する、構成15に記載の方法。