(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
モータの目標回転速度に対応する指示信号と前記モータのロータの回転位置に対応する検出信号とに基づいて、前記モータを駆動させるための駆動制御信号を出力する制御回路部と、
前記制御回路部から出力された前記駆動制御信号に基づいて、前記モータに駆動信号を出力するモータ駆動部とを備え、
前記制御回路部は、
前記指示信号と前記モータの回転速度とを比較し、
前記モータの駆動が開始されてから、前記モータの回転速度が前記目標回転速度に対応する速度に達するまで、前記指示信号と前記検出信号とに基づいて生成した第1駆動制御信号を前記駆動制御信号として出力し、
前記モータの回転速度が前記目標回転速度に対応する速度に達したとき、前記指示信号から算出した前記モータのロータの回転位置に関する理論値に基づいて生成した第2駆動制御信号を前記駆動制御信号として出力し、
前記指示信号は、前記目標回転速度に対応する周期の信号であり、
前記理論値は、前記指示信号の周期と、前記モータが所定角度だけ回転する期間に対応するFG信号のパルス数とに基づいて算出される
モータ駆動制御装置。
前記制御回路部は、前記モータの回転速度が前記目標回転速度に対応する速度から外れたとき、前記第1駆動制御信号を前記駆動制御信号として出力する、請求項1に記載のモータ駆動制御装置。
モータの目標回転速度に対応する指示信号と前記モータのロータの回転位置に対応する検出信号とに基づいて、前記モータを駆動させるための駆動制御信号を出力し、前記駆動制御信号に基づいて前記モータに駆動信号を出力するモータ駆動制御装置の制御方法であって、
前記指示信号と前記モータの回転速度とを比較する比較ステップと、
前記モータの駆動が開始されてから、前記モータの回転速度が前記目標回転速度に対応する速度に達するまで、前記指示信号と前記検出信号とに基づいて生成した第1駆動制御信号を前記駆動制御信号として出力する第1出力ステップと、
前記モータの回転速度が前記目標回転速度に対応する速度に達したとき、前記指示信号から算出した前記モータのロータの回転位置に関する理論値に基づいて生成した第2駆動制御信号を前記駆動制御信号として出力する第2出力ステップとを含み、
前記指示信号は、前記目標回転速度に対応する周期の信号であり、
前記理論値は、前記指示信号の周期と、前記モータが所定角度だけ回転する期間に対応するFG信号のパルス数とに基づいて算出される、モータ駆動制御装置の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ホール素子等の位置検出素子の取り付け精度等に起因する回転ムラに関しては、例えば特許文献1に記載されているように、1つのホール素子の情報に基づいて制御を行うことで、改善することができる可能性がある。しかしながら、このような場合には、複数のホール素子を用いて制御を行う場合と比較して、ホール素子から得られる回転速度情報が少なくなるため、精度が下がるという問題がある。
【0008】
また、近年では、回転ムラとして、モータの組立精度のバラツキが要因となる1回転成分の回転ムラや、ホール取り付け精度のバラツキが要因となる高調波成分の回転ムラといった周波数成分に起因する回転ムラが回転速度の精度を低下させる要因として、改善することが必要になってきている。
【0009】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、モータの回転ムラ及びモータの回転ムラの周波数成分を低減させることができ、高精度でモータを駆動させることができるモータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、モータ駆動制御装置は、モータの目標回転速度に対応する指示信号とモータのロータの回転位置に対応する検出信号とに基づいて、モータを駆動させるための駆動制御信号を出力する制御回路部と、制御回路部から出力された駆動制御信号に基づいて、モータに駆動信号を出力するモータ駆動部とを備え、制御回路部は、指示信号とモータの回転速度とを比較し、モータの駆動が開始されてから、モータの回転速度が目標回転速度に対応する速度に達するまで、指示信号と検出信号とに基づいて生成した第1駆動制御信号を駆動制御信号として出力し、モータの回転速度が目標回転速度に対応する速度に達したとき、指示信号から算出したモータのロータの回転位置に関する理論値に基づいて生成した第2駆動制御信号を駆動制御信号として出力する。
【0011】
好ましくは、制御回路部は、モータの回転速度が目標回転速度に対応する速度から外れたとき、第1駆動制御信号を駆動制御信号として出力する。
【0012】
好ましくは、目標回転速度に対応する速度は、目標回転速度を含む所定の範囲の速度である。
【0013】
好ましくは、制御回路部は、指示信号とモータの回転速度とを比較してモータのトルクに関する指令信号を出力する速度制御回路と、検出信号に基づいて、モータのロータの回転位置に対応する第1回転速度信号を出力する位置/回転速度検出回路と、指示信号に基づいて、モータのロータの回転位置に理論上対応する理論値を算出し、理論値を第2回転速度信号として出力する理論値算出回路と、速度制御回路の比較結果に応じて第1回転速度信号と第2回転速度信号とのいずれか一方を出力するセレクタとを有し、セレクタから出力された第1回転速度信号と第2回転速度信号とのいずれか一方と、速度制御回路から出力された指令信号とに基づいて、駆動制御信号を出力する。
【0014】
好ましくは、モータは、3相のモータであり、検出信号は、ロータの磁極の位置に対応する3相のホール信号であり、制御回路部は、3相のホール信号を合成して得られたFG信号に基づいて第1駆動制御信号を生成し、指示信号は、目標回転速度に対応する周期の信号であり、理論値は、指示信号の周期と、モータが所定角度だけ回転する期間に対応するFG信号のパルス数とに基づいて算出される。
【0015】
この発明の他の局面に従うと、モータ駆動制御装置の制御方法は、モータの目標回転速度に対応する指示信号とモータのロータの回転位置に対応する検出信号とに基づいて、モータを駆動させるための駆動制御信号を出力し、駆動制御信号に基づいてモータに駆動信号を出力するモータ駆動制御装置の制御方法であって、指示信号とモータの回転速度とを比較する比較ステップと、モータの駆動が開始されてから、モータの回転速度が目標回転速度に対応する速度に達するまで、指示信号と検出信号とに基づいて生成した第1駆動制御信号を駆動制御信号として出力する第1出力ステップと、モータの回転速度が目標回転速度に対応する速度に達したとき、指示信号から算出したモータのロータの回転位置に関する理論値に基づいて生成した第2駆動制御信号を駆動制御信号として出力する第2出力ステップとを含む。
【発明の効果】
【0016】
これらの発明に従うと、モータの回転ムラ及びモータの回転ムラの周波数成分を低減させることができ、高精度でモータを駆動させることができるモータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態におけるモータ駆動制御装置について説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動制御装置1の回路構成を示す図である。
【0021】
図1に示すように、モータ駆動制御装置1は、ブラシレスモータ20(以下、単にモータ20という)を例えば正弦波駆動により駆動させるように構成されている。本実施の形態において、モータ20は、例えば3相のブラシレスモータである。モータ駆動制御装置1は、モータ20に正弦波駆動信号を出力してモータ20の電機子コイルLu,Lv,Lwに周期的に正弦波状の駆動電流を流すことで、モータ20を回転させる。
【0022】
モータ駆動制御装置1は、インバータ回路2a及びプリドライブ回路2bを有するモータ駆動部2と、制御回路部3とを有している。なお、
図1に示されているモータ駆動制御装置1の構成要素は、全体の一部であり、モータ駆動制御装置1は、
図1に示されたものに加えて、他の構成要素を有していてもよい。詳細は後述するが、制御回路部3は、モータ20の目標回転速度に対応するクロック信号(指示信号の一例)Scとモータ20のロータの回転位置に対応する検出信号Srとに基づいて、モータ20を駆動させるための駆動制御信号を出力する。また、モータ駆動部2は、制御回路部3から出力された駆動制御信号Sdに基づいて、モータ20に駆動信号を出力する。そして、制御回路部3は、クロック信号Scとモータ20の回転速度とを比較し、モータ20の駆動が開始されてから、モータ20の回転速度が目標回転速度に対応する速度に達するまで、クロック信号Scと検出信号Srとに基づいて生成した第1駆動制御信号を駆動制御信号Sdとして出力し、モータ20の回転速度が目標回転速度に対応する速度に達したとき、クロック信号Scから算出したモータ20のロータの回転位置に関する理論値に基づいて生成した第2駆動制御信号を駆動制御信号Sdとして出力する。
【0023】
本実施の形態において、モータ駆動制御装置1は、その全部がパッケージ化された集積回路装置ICである。なお、モータ駆動制御装置1の一部が1つの集積回路装置としてパッケージ化されていてもよいし、他の装置と一緒にモータ駆動制御装置1の全部又は一部がパッケージ化されて1つの集積回路装置が構成されていてもよい。
【0024】
インバータ回路2aとプリドライブ回路2bとは、モータ駆動部2を構成する。インバータ回路2aは、プリドライブ回路2bから出力された出力信号に基づいてモータ20に駆動信号を出力し、モータ20が備える電機子コイルLu,Lv,Lwに通電する。インバータ回路2aは、例えば、直流電源Vccの両端に設けられた2つのスイッチ素子の直列回路の対が、電機子コイルLu,Lv,Lwの各相(U相、V相、W相)に対してそれぞれ配置されて構成されている。2つのスイッチ素子の各対において、スイッチ素子同士の接続点に、モータ20の各相の端子が接続されている。
【0025】
プリドライブ回路2bは、制御回路部3による制御に基づいて、インバータ回路2aを駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路2aに出力する。出力信号としては、例えば、インバータ回路2aの各スイッチ素子に対応する6種類の信号Vuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlが出力される。インバータ回路2aは、これらの出力信号が入力されることで、それぞれの信号に対応するスイッチ素子がオン、オフ動作を行い、モータ20に駆動信号が出力されてモータ20の各相に電力が供給される(図示せず)。
【0026】
制御回路部3には、モータ20から、モータ20のロータの回転位置に対応する検出信号Srが入力される。検出信号Srは、例えば、3つのホール信号Hu,Hv,Hwである。ホール信号Hu,Hv,Hwは、例えば、モータ20に配置された3つのホール(HALL)素子25u,25v,25wの出力信号である。制御回路部3は、ホール信号Hu,Hv,Hwを用いて、モータ20の回転位置や、回転数情報(FG信号など)などの情報を得ることでモータ20の回転状態を検出し、モータ20の駆動を制御する。
【0027】
3つのホール素子25u,25v,25w(以下、これらをまとめてホール素子25ということがある)は、例えば、互いに略等間隔(隣り合うものと120度の間隔で)でモータ20の回転子の回りに配置されている。ホール素子25u,25v,25wは、それぞれ、回転子の磁極を検出し、ホール信号Hu,Hv,Hwを出力する。
【0028】
なお、制御回路部3には、このようなホール信号Hu,Hv,Hwに代えて、モータ20のロータの回転位置に対応する他の信号が検出信号Srとして入力されるように構成されていてもよい。例えば、エンコーダやレゾルバなどを設け、その検出信号が入力されるようにしてもよい。
【0029】
制御回路部3には、クロック信号(指示信号の一例)Scが入力される。クロック信号Scは、例えば、制御回路部3の外部から入力される。クロック信号Scは、例えば、モータ20の目標回転速度に対応する周期の信号である。換言すると、クロック信号Scは、モータ20の目標回転速度を指定する指示信号である。
【0030】
制御回路部3は、例えば、マイクロコンピュータ等で構成されている。制御回路部3は、クロック信号Scと、検出信号Srとに基づいて、モータ20を駆動させるための駆動制御信号Sdをプリドライブ回路2bに出力する。制御回路部3は、駆動制御信号Sdをモータ駆動部2に出力してモータ駆動部2を制御することで、モータ20の回転制御を行う。モータ駆動部2は、制御回路部3から出力された駆動制御信号Sdに基づいて、モータ20に正弦波駆動信号を出力してモータ20を駆動させる。
【0032】
図2は、第1の実施の形態における制御回路部3の構成を示すブロック図である。
【0033】
図2に示されるように、制御回路部3は、速度制御回路31と、正弦波駆動回路35とを含んでいる。また、制御回路部3は、位置/回転速度検出回路32と、理論値算出回路33と、セレクタ(選択回路)34とを含んでいる。これらの各回路は、デジタル回路である。なお、
図2において、各回路間での信号や情報等の送受は、駆動制御信号Sdの生成に関する説明に係るものが示されている。以下に詳述するように、制御回路部3において、速度制御かいろ31は、クロック信号(指示信号の一例)Scとモータ20の回転速度とを比較してトルク指令信号(モータ20のトルクに関する指令信号の一例)S1を出力しと、位置/回転速度検出回路32は、検出信号Srに基づいて、モータ20のロータの回転位置に対応する第1回転速度信号S2を出力し、理論値算出回路33は、クロック信号Scに基づいて、モータ20のロータの回転位置に理論上対応する理論値を算出し、理論値を第2回転速度信号S3として出力する。そして、セレクタ34は、速度制御回路31から出力される回転速度判定信号(速度制御回路の比較結果の一例)に応じて第1回転速度信号S2と第2回転速度信号S3とのいずれか一方を出力し、正弦波駆動回路35は、セレクタ34から出力された第1回転速度信号S2と第2回転速度信号S3とのいずれか一方と、速度制御回路31から出力されたトルク指令信号S1とに基づいて、駆動制御信号Sdを出力する。
【0034】
速度制御回路31には、検出信号Sr(ホール信号Hu,Hv,Hw)が入力される。速度制御回路31は、クロック信号Scと、検出信号Srとに基づいて、モータ20の回転速度に関するトルク指令信号(指令信号の一例)S1を出力する。具体的には、例えば、速度制御回路31は、入力された検出信号Srに基づいてモータ20の回転速度を検出する。そして、速度制御回路31は、検出信号Srに基づいて検出されるモータ20の回転速度が、クロック信号Scに対応する目標回転速度となるように、トルク指令信号S1を生成する。換言すると、速度制御回路31は、クロック信号Scに対応する目標回転速度とモータ20の回転速度とを比較してトルク指令信号S1を出力する。このとき、速度制御回路31は、進角制御を行ってトルク指令信号S1を出力するようにしてもよい。
【0035】
また、速度制御回路31は、クロック信号Scに対応する目標回転速度とモータ20の回転速度とを比較して、回転速度判定信号(比較結果の一例)S4を出力する。回転速度判定信号S4は、セレクタ34に入力される。なお、回転速度判定信号S4についての詳細は、後述する。
【0036】
正弦波駆動回路35には、トルク指令信号S1と、セレクタ34から入力されるベース信号S5が入力される。正弦波駆動回路35は、トルク指令信号S1とベース信号S5とに基づいて、モータ駆動部2を駆動させるための駆動制御信号Sdを生成する。駆動制御信号Sdがモータ駆動部2に出力されることで、モータ駆動部2からモータ20に正弦波駆動信号が出力され、モータ20が駆動される。すなわち、速度制御回路31と正弦波駆動回路35とで、クロック信号Scに基づいて駆動制御信号Sdが生成され、モータ駆動部2に出力される。
【0037】
セレクタ34には、位置/回転速度検出回路32から出力される第1回転速度信号S2と、理論値算出回路33から出力される第2回転速度信号(理論値の一例)S3とが入力される。セレクタ34は、回転速度判定信号S4に応じて、第1回転速度信号S2と第2回転速度信号S3とのいずれか一方をベース信号S5として出力する。出力されるベース信号S5は、正弦波駆動回路35に入力される。
【0038】
図3は、検出信号Srと第1回転速度信号S2との関係及びクロック信号Scと第2回転速度信号S3との関係を説明する図である。以下に詳述するように、制御回路部3は、3相のホール信号を合成して得られたFG信号(3相合成信号)に基づいて第1駆動制御信号を生成し、 クロック信号Scは、目標回転速度に対応する周期の信号であり、理論値は、クロック信号Scの周期と、モータ20が所定角度だけ回転する期間に対応するFG信号のパルス数とに基づいて算出される。
【0039】
図2に示されるように、位置/回転速度検出回路32には、検出信号Srが入力される。そして、
図3に示されるように、位置/回転速度検出回路32は、入力された検出信号Srすなわち3相のホール信号Hu,Hv,Hwを合成してFG信号(3相合成信号)を生成する。そして、生成したFG信号に基づいて第1回転速度信号S2を生成する。具体的には、例えば、FG信号の周期を所定の数で分割することにより、第1回転速度信号S2を生成する。生成された第1回転速度信号S2は、セレクタ34に入力される。
【0040】
理論値算出回路33には、クロック信号Scが入力される。理論値算出回路33は、
図3に示されるように、クロック信号Scに基づいて、モータのロータの回転位置に関する理論値を算出する。そして、算出した理論値を、第2回転速度信号S3として出力する。出力された第2回転速度信号S3は、セレクタ34に入力される。
【0041】
ここで、理論値は、以下に示されるように、クロック信号Scの周期と、モータ20が所定角度だけ回転する期間に対応するFG信号のパルス数とに基づいて算出される。クロック信号Scの周波数が400(Hz)であり、ロータ1回転当たりのFG信号のパルス数=45(pulse/rev)であり、モータ20が10極モータである(N極とS極とが5組設けられている)場合を想定する。
【0042】
このとき、クロック信号Scの周期は、次式のようになる。
【0044】
また、電気角360度の期間、すなわちそれぞれのホール信号Hu,Hv,Hwの周期は、クロック信号Scの周期と、ロータ1回転当たりのFG信号のパルス数と、モータ20の磁極の数と基づいて求められる。具体的には、次式のようになる。
【0045】
2.5(ms)*45(pulse/rev)/5(組)=22.5(ms)
【0046】
そうすると、FG信号の半周期は、ホール信号の周期の6分の1であるため、次式のようになる。
【0047】
22.5(ms)/6=3.75(ms)
【0048】
理論値は、FG信号の半周期を第1回転速度信号S2と同じようにベース信号の分解能X(ms)で除して求められ、次式のようになる。
【0049】
3.75(ms)/X(ms)=(理論値(ms))
【0050】
クロック信号Scに対応する目標回転速度とモータ20の回転速度とが一致しているとき、このようにクロック信号Scに基づいて求められる理論値は、モータ20のロータの回転位置に理論上対応しているものであるといえる。
【0051】
セレクタ34は、このように位置/回転速度検出回路32から入力された第1回転速度信号S2と、理論値算出回路33から入力された第2回転速度信号S3との一方を、回転速度判定信号S4に基づいて選択し、選択した信号をベース信号S5として出力する。換言すると、速度制御回路31は、回転速度判定信号S4を出力することにより、正弦波駆動回路35に入力されるベース信号S5として第1回転速度信号S2と第2回転速度信号S3とのいずれを用いるかを切り替える。
【0052】
本実施の形態において、速度制御回路31は、回転速度判定信号S4を出力することにより、検出信号Srに基づいて検出されるモータ20の回転速度がクロック信号Scに対応する目標回転速度に対応する速度であるか否かに応じて、ベース信号S5を切り替える。具体的には、モータ20の回転速度が目標回転速度に対応する速度ではないとき、セレクタ34は、ベース信号S5として第1回転速度信号S2を出力し、モータ20の回転速度が目標回転速度に対応する速度であるとき、ベース信号S5として第2回転速度信号S3を出力する。すなわち、本実施の形態において、速度制御回路31は、回転速度が、目標回転速度を含む所定の範囲の速度である(以下、単に所定速度範囲内であるということがある。)場合に、回転速度が目標回転速度に対応する速度であると判定して、判定結果として回転速度判定信号S4を出力する。そして、セレクタ34は、モータ20の回転速度が所定速度範囲内ではないとき、ベース信号S5として第1回転速度信号S2を出力し、モータ20の回転速度が所定速度範囲内であるとき、ベース信号S5として第2回転速度信号S3を出力する。所定速度範囲は、例えば、目標回転速度の上下数パーセントの範囲とすることができるが、これに限られるものではない。
【0053】
本実施の形態におけるモータ駆動制御装置1の制御方法は、以下に記述するように、クロック信号(指示信号の一例)Scとモータ20の回転速度とを比較する比較ステップと、第1駆動制御信号を駆動制御信号Sdとして出力する第1出力ステップと、第2駆動制御信号を駆動制御信号Sdとして出力する第2出力ステップとを含んでいる。
【0054】
本実施の形態において、制御回路部3は、以下のようにして駆動制御信号Sdを出力する。すなわち、制御回路部3(速度制御回路31)は、クロック信号Scとモータの回転速度とを比較する(比較ステップ)。制御回路部3(正弦波駆動回路35)は、モータ20の駆動が開始されてから、モータ20の回転速度が目標回転速度に対応する速度に達するまで、クロック信号Scと検出信号Srとに基づいて生成した第1駆動制御信号を駆動制御信号Sdとして出力する(第1出力ステップ)。その後、制御回路部3(正弦波駆動回路35)は、モータ20の回転速度が目標回転速度に対応する速度に達したとき、クロック信号Scから算出したモータ20のロータの回転位置に関する理論値に基づいて生成した第2駆動制御信号を駆動制御信号Sdとして出力する(第2出力ステップ)。このような動作を、以下に具体的に説明する。
【0055】
図4は、モータ駆動制御装置1の動作を示すフローチャートである。
【0056】
図4に示されているように、ステップS11において、モータ20の駆動が行われていないとき、クロック信号Scが入力されると、制御回路部3は、それを検知する。
【0057】
ステップS12において、制御回路部3は、モータ20を起動する。このとき、速度制御回路31が回転速度判定信号S4を出力することにより、セレクタ34からベース信号S5として第1回転速度信号S2が出力される。正弦波駆動回路35は、第1回転速度信号S2とトルク指令信号S1とに基づいて、駆動制御信号Sdを生成し、出力する(第1出力ステップの一例)。このとき生成される駆動制御信号Sdは、クロック信号Scと検出信号Srとに基づいて生成された第1駆動制御信号である。速度制御回路31によりトルク指令信号S1が出力されることにより、モータ20の回転速度が目標回転速度になるように制御が行われる。クロック信号Scと検出信号Srとに基づいて、モータ20が駆動される(通常駆動)。
【0058】
ステップS13において、制御回路部3は、クロック信号Scの入力が停止されたか否かを検知する。クロック信号Scの入力が停止されたことを検知しなければ、ステップS14に進む。クロック信号Scの入力が停止されたことを検知したときには、ステップS18に進む。
【0059】
ステップS14において、速度制御回路31は、回転速度が所定速度範囲内(所定値以内)であるか否かを判断する(比較ステップの一例)。回転速度が所定速度範囲内であればステップS15に進む。回転速度が所定速度範囲内でなければ、ステップS12以降の処理を繰り返す。
【0060】
モータ20の駆動が開始されてから、回転速度が所定速度範囲に達すると(ステップS14でYES)、ステップS15において、理論値を用いた駆動が行われる(理論値駆動)。すなわち、回転速度が所定速度範囲内であれば、速度制御回路31が回転速度判定信号S4を出力することにより、セレクタ34からベース信号S5として第2回転速度信号S3が出力される。正弦波駆動回路35は、クロック信号Scに基づいて算出された理論値である第2回転速度信号S3とトルク指令信号S1とに基づいて、駆動制御信号Sdを生成し、出力する(第2出力ステップの一例)。このとき生成される駆動制御信号Sdは、クロック信号Scから算出したモータ20のロータの回転位置に関する理論値に基づいて生成された第2駆動制御信号である。
【0061】
ステップS16において、理論値駆動が行われている場合にも、ステップS14と同様に、速度制御回路31は、回転速度が所定速度範囲内(所定値以内)であるか否かを判断する。回転速度が所定速度範囲内でなければ、ステップS12に進む。すなわち、負荷がかかったり目標回転速度が変更されたりして回転速度が所定速度範囲外となった場合には、通常駆動(ステップS12)に戻る。通常駆動に戻ると、セレクタ34からベース信号S5として第1回転速度信号S2が出力され、正弦波駆動回路35から第1駆動制御信号が駆動制御信号Sdとして出力される。他方、回転速度が所定速度範囲内であればステップS17に進む。
【0062】
ステップS17において、ステップS13と同様に、制御回路部3は、クロック信号Scの入力が停止されたか否かを検知する。クロック信号Scの入力が停止されたことを検知しなければ、ステップS15以降の処理を繰り返す。クロック信号Scの入力が停止されたことを検知したときには、ステップS18に進む。
【0063】
ステップS18において、制御回路部3は、フリーラン停止を開始させる。すなわち、速度制御回路31からトルク指令信号S1が出力されて駆動制御信号Sdが出力されることにより、モータ20の全相についてオフとされる。これにより、モータ20がフリーラン停止する。なお、停止する際、ショートブレーキ等を行う制御が行われるようにしてもよい。
【0064】
以上説明したように、
図3に示されるように、第1回転速度信号S2は検出信号Srに基づくタイミングで生成されるものであり、第1回転速度信号S2には、例えば、ホール素子25の取り付け精度によるばらつきや、モータ20のマグネットの着磁ムラによるばらつきが含まれる可能性がある。第1回転速度信号S2にばらつきがあると、それに基づいて出力される駆動制御信号Sdにも影響し、モータ20の回転ムラが生じることとなる。モータ20の回転ムラの周波数成分毎の特徴として、モータ20の組立精度やマグネットの着磁ムラによるばらつきは、モータ20が1回転する毎に周期的に生じる1回転成分のムラとなり、ホール素子25の取り付け精度によるばらつきは、モータ20が1回転する間に磁極の組数だけ周期的に生じる高調波成分のムラ(例えば、磁極が5組の場合、W5成分のムラ)となる。
【0065】
これに対して、本実施の形態においては、モータ20の回転速度が所定速度範囲内であるとき、正弦波駆動回路35で用いるベース信号S5として、クロック信号Scを基に算出された理論値(第2回転速度信号S3)が用いられる。クロック信号Scに基づいて算出される理論値には、モータ20の組立精度のばらつき、モータ20のマグネットの着磁ムラによるばらつき、ホール素子25の取り付け精度によるばらつきなどが含まれない。そのため、第2回転速度信号S3に基づいて出力される駆動制御信号Sdによってモータ20を駆動することにより、上記のような、モータ20のモータ20の組立精度やマグネットの着磁ムラによるばらつきが要因となって生じる回転ムラの周波数成分(1回転成分)およびホール素子25の取り付け精度によるばらつきが要因となって生じる回転ムラの周波数成分(高調波成分)を抑制することができる。
【0066】
モータ20の回転速度が所定速度範囲内になるまでには、検出信号Srに基づくベース信号S5を用いて通常駆動が行われる。したがって、起動時など、目標回転速度と実際の回転速度との間に大きな差がある場合であっても、適切に目標回転速度で回転するように制御が行われる。検出信号Srとしては、3相のホール信号Hu,Hv,Hwを用いることができるので、モータ20の回転位置に応じて高い精度でモータ20を駆動させることができる。
【0067】
制御回路部3は、モータ20の回転速度が目標回転速度に対応する速度から外れたとき、第1駆動制御信号を駆動制御信号Sdとして出力する。すなわち、一旦モータ20の回転速度が所定速度範囲内になり、理論値駆動が行われても、その後、モータ20の回転速度が所定速度範囲から外れたときには、通常駆動が行われるようにベース信号S5が切り替えられる。そして、セレクタ34は、ベース信号S5として第1回転速度信号S2が出力され、正弦波駆動回路35は、モータ20の回転速度が目標回転速度に対応する速度に達するまで、クロック信号Scと検出信号Srとに基づいて生成した第1駆動制御信号を駆動制御信号Sdとして出力する。そのため、例えば、理論値駆動が行われているときに、外乱による負荷変動が生じてモータ20の回転速度が大きく変化した場合であっても、実際のモータ20の回転位置に対応する第1回転速度信号S2に基づいて、高精度に、目標回転速度で回転するように制御が行われる。
【0068】
第2回転速度信号S3を理論値として算出することができるので、正弦波駆動等に用いるベース信号S5の分解能を変更したり、モータ駆動制御装置1の構成を磁極数の異なるモータ等の駆動に転用したりすることを容易に行うことができる。理論値算出回路33は、マイクロコンピュータにより実現したり、ICにより実現したり、ソフトウエアの処理により実現したりするなど、様々な方法で実現することができる。そのため、モータ駆動制御装置1の汎用性を高めることができる。
【0069】
ベース信号S5の出力に際しては、補正値を用いたり回転ムラを検出する回路等を設けたりして補正処理等を行う必要がない。したがって、そのような補正処理に要する補正値をモータ駆動制御装置1で記憶しておく必要や、新たな検出回路等を設ける必要はなく、モータ駆動制御装置1の構成を簡素なものにすることができる。
【0071】
制御回路部は、上述に示されるような回路構成に限定されない。本発明の目的にあうように構成された、様々な回路構成が適用できる。
【0072】
上述のフローチャートは具体例であって、このフローチャートに限定されるものではなく、例えば、各ステップ間に他の処理が挿入されていてもよいし、処理が並列化されていてもよい。
【0073】
上述の実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータの相数は、3相に限られない。また、ホール素子の数は、3個に限られない。
【0074】
モータの回転速度の検出方法は特に限定されない。例えば、ホール素子を用いず、モータの逆起電力を用いて回転速度を検出するようにしてもよい。
【0075】
モータの駆動方式は、正弦波駆動方式に限定されない。例えば、矩形波駆動方式や、台形波、あるいは、正弦波に特殊な変調をかけた駆動方式に適用することもできる。
【0076】
上述の実施の形態における処理の一部又は全部が、ソフトウエアによって行われるようにしても、ハードウェア回路を用いて行われるようにしてもよい。すなわち、モータ駆動制御装置の各構成要素は、少なくともその一部がハードウェアによる処理ではなく、ソフトウエアによる処理により実現されるように構成されていてもよい。
【0077】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。