(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
機器に挿入されるタブ部材を有する機器側コネクタと、前記機器と信号の送受信をする装置に挿入される接続部を有する装置側コネクタと、前記装置に前記機器の識別情報を伝達するために、前記機器との間で通信手順を実行する電子回路と、を有するアップル社製のLightningケーブルに相当するケーブルにおいて、
前記装置側コネクタは、USBコネクタであって、
前記装置側コネクタ内には、前記電子回路が設けられ、
前記機器側コネクタ内には、信号および電力供給を制御する回路が設けられていない、
ことを特徴とするケーブル。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スマートフォンに対し信号の送受信と電力の供給を行うためのアップル社製のLightningケーブル(登録商標)が開示されている。LightningケーブルのLightningコネクタ(登録商標)は、スマートフォンに挿入されるタブを有し、タブに連接する本体には、接続先のスマートフォンの識別情報を読み取るためなどの電子回路が内蔵されている。
【0003】
アップル社製のLightningコネクタは、
図15の中段に示すように、プリント回路板(PCB)304によって配線が構成され、プリント回路板(PCB)304の一方の端部に配置される導体ボンディングパッド310のセットと、反対側の端部に配置される接点ボンディングパッド312(1)〜312(8)のセットで構成されている。プリント回路板(PCB)304には、
図15の上段に示す導電性フレームとしての接地リング305が被せられ、
図15の下段に示すように、接点アッセンブリ316a,316bによる8つの接点306(1)〜306(8)が設けられた成形フレーム315が配設される。プリント回路板(PCB)304には、構成要素ボンディングパッド314を有し、電子回路である電子構成要素308a,308bが配設される。
図16はLightningコネクタの完成品の状態を示す。
【0004】
また、
図17および
図18に示すように、アップル社製のLightningケーブルは、導電金属シールド345a,345bと、本体の筐体となるエンクロージャ349とを有する。このようなアップル社製のLightningケーブルでは、Lightningコネクタのプリント回路板(PCB)304にエポキシ樹脂等を保護封入材として塗布し、その部分を導電金属シールド345a、345bやエンクロージャ349で覆うことによって、絶縁性や強度を確保している。特に、
図15の下段および
図16に示すように、本体(エンクロージャ349)内に高密度の電子回路である電子構成要素308a,308bを有するため、エポキシ樹脂等を保護封入材として塗布し、その部分を導電金属シールド345a、345bやエンクロージャ349で覆うことによって、絶縁性や強度を確保することは必須である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のアップル社製のLightningケーブルは、上述したように、エンクロージャ349内に高密度の電子回路である電子構成要素308a,308bを有すると共に、プリント回路板(PCB)304にエポキシ樹脂等を保護封入材として塗布し、その部分を導電金属シールド345a、345bやエンクロージャ349で覆うことによって、絶縁性や強度を確保している。このため、本体のサイズを現状以上に小型化することが難しい。これにより、タブを機器に挿入したときに、機器から本体が突出する長さを現状以上に短くすることができない。機器から本体が長く突出していると、本体に外部から力が加えられたときに、テコの原理が働いて、タブにも大きな力が加わり、さらにはタブが接触している機器側の接点部材を破損するといった問題が生じる可能性がある。
【0007】
また、タブに連接する本体(エンクロージャ349内)に高密度の電子回路(電子構成要素308a,308b)を有するため、ユーザの誤操作による過大な電圧の印加などによりこの高密度の電子回路が発熱または短絡するような不測の事態が生じたときに、タブが挿入されているスマートフォン本体にも悪影響が及ぶ可能性が大きい。
【0008】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、タブを機器に挿入したときに、機器から突出する部分の長さを短くすることができる、ユーザの誤操作などによる機器に接続されたコネクタ内の電子回路の発熱または短絡に際し、機器に悪影響を及ぼさないようにすることができる、という目的のひとつまたは複数を達成することができるケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、機器に挿入されるタブ部材を有する機器側コネクタと、機器と信号の送受信をする装置に挿入される接続部を有する装置側コネクタと、装置に機器の識別情報を伝達するために、機器
との間
で通信手順を実行する電子回路と、を有するアップル社製のLightningケーブルに相当するケーブルにおいて、装置側コネクタは、USBコネクタであって、装置側コネクタ内には、電子回路が設けられ、機器側コネクタ内には、信号および電力供給を制御する回路が設けられていないものである。
【0010】
上述のケーブルにおいて、タブ部材は、互いに平行となるように一列に配置される複数の接触子と、複数の接触子が配置される方向に対して平行な1つの面および配置される方向に対して垂直かつ接触子の配置両端を挟む2つの面を有し複数の接触子と非接触に配置される金属ケースと、複数の接触子と金属ケースを内包して形成され接触子の一部および金属ケースの一部が外部に露出する合成樹脂製の絶縁体と、を有することができる。
【0011】
または、上述のケーブルにおいて、タブ部材は、プリント回路板と、プリント回路板上に配設される端子と、を包含し、合成樹脂によって一体成形されるようにしてもよい。
【0012】
上述のケーブルにおいて、機器側コネクタは、タブ部材の一部を内包する保持部材を有し、タブ部材が機器に挿入される方向を前方向とし、その反対方向を後方向とするとき、タブ部材の後方向に保持部材が設けられ、タブ部材の最前端から保持部材の最後端までの長さは18ミリメートル以内であるようにすることができる。
【0013】
また、上述のケーブルにおいて、保持部材からみて
保持部材に内包されていない部分のタブ部材が外部に延伸される方向と、保持部材からみて電線が外部に引き出される方向と、が同一方向であり、
保持部材に内包されていない部分のタブ部材が外部に延伸される位置と電線が外部に引き出される位置とは
、並列する方向に所定の距離離れているようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、タブ部材を機器に挿入したときに、機器から突出する部分の長さを短くすることができる、ユーザの誤操作などによる機器に接続されたコネクタ内の電子回路の発熱または短絡に際し、機器に悪影響を及ぼさないようにすることができる、という目的のひとつまたは複数を達成することができるケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係るケーブルの全体構成図である。
【
図2】特開2017−107866号公報に開示されたコネクタの構成を説明するための図であり、複数のリードを示す図である。
【
図3】特開2017−107866号公報に開示されたコネクタの構成を説明するための図であり、リードが絶縁体に内包された状態および金属ケースを示す図である。
【
図4】特開2017−107866号公報に開示されたコネクタの構成を説明するための図であり、絶縁体と金属ケースとリードを示す図である。
【
図5】特開2017−107866号公報に開示されたコネクタの構成を説明するための図であり、一体成形されたコネクタを示す図である。
【
図6】
図1の保持部材に作用する力のモーメントを説明するための図である。
【
図7】比較例としてアップル社製のLightningケーブルに作用する力のモーメントを説明するための図である。
【
図8】その他の実施の形態に係るコネクタの構成を説明するための図である。
【
図9】
図8のコネクタの完成品の状態を示す図である。
【
図10】その他の実施の形態に係るケーブルの構成図であり、
図5および
図9に示すコネクタを使用し、タブ部材を機器に挿入したときに、機器から突出する部分の長さを短くすることができるケーブルの完成図である。
【
図11】
図10のケーブルがスマートフォンである機器に接続された状態を示す斜視図である。
【
図13】
図12のケーブルがスマートフォンである機器に接続された状態を示す図である。
【
図14】
図12のケーブルがスマートフォンとは異なる機器に接続された状態を示す図である。
【
図15】アップル社製のLightningコネクタの構成を説明するための図である。
【
図16】アップル社製のLightningコネクタの完成品の状態を示す図である。
【
図17】アップル社製のLightningケーブルの構成を示す図であり、導電金属シールドと、エンクロージャとを分解して示す図である。
【
図18】アップル社製のLightningケーブルの構成を示す図であり、導電金属シールドと、エンクロージャとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係るケーブル1の全体構成を
図1に示す。ケーブル1は、
図1に示すように、機器に挿入されるタブ部材10を有する機器側コネクタ11と、機器との間で通信手順を実行する電子回路80と、機器に対し機器側コネクタ11を介して信号の送受信および/または電力の供給をする元となる装置に接続される装置側コネクタ12と、を有するアップル社製のLightningケーブルに相当するケーブル1であって、電子回路80は、機器側コネクタ11内よりも広い実装スペース(装置側基板70)を有する装置側コネクタ12内に設けられるものである。
【0017】
さらに詳細に説明すると、機器側コネクタ11は、スマートフォンなどの機器に挿入されるアップル社製のLightningコネクタのタブに相当するタブ部材10と、タブ部材10を介して機器に対し信号の送受信および/または電力の供給をする電線20と、タブ部材10と電線20の一端とを接続する機器側接続部30と、を有する。
【0018】
装置側コネクタ12は、電線20の他端に接続され、機器に対し、タブ部材10と電線20とを介して信号の送受信および/または電力の供給をする元となる充電器およびパーソナル・コンピュータなどの装置に接続されるコネクタ部材50としてのUSBコネクタと、コネクタ部材50と電線20の他端とを接続する装置側接続部60と、機器との間で通信手順を実行する電子回路80と、を有する。
【0019】
このようなケーブル1は、充電器やスマートフォンやタブレット端末などの機器と、この機器に接続される装置との間で、信号の送受信(データ、音声、画像など)および充電などのための電力供給が可能である。ここで装置とは、たとえば、他のスマートフォンやタブレット端末またはパーソナル・コンピュータもしくは充電器などである。なお、機器側接続部30は、たとえば、機器側基板40上に配設され、半田付けによって、タブ部材10と電線20の一端とを接続する。同様に、装置側接続部60は、たとえば、装置側基板70上に配設され、半田付けによって、装置側コネクタ12と電線20の他端とを接続する。また、電子回路80は、たとえば、装置側基板70上に配設され、装置に機器の識別情報を伝達するために、機器との間で通信手順を実行する。電子回路80の実装スペースとしての装置側基板70は、仮に電子回路80を機器側基板40に実装する場合と比べてより広い実装スペースとすることができる。なお、
図1に示す機器側接続部30および装置側接続部60の内部結線については一例であって、どのような結線でもあってもよい。
【0020】
このようなケーブル1において、電子回路80は、装置側コネクタ12内に設けられる。また、タブ部材10の一部と電線20の一端と機器側接続部30とを内包する保持部材90を有し、タブ部材10が機器に挿入される方向を前方向とし、その反対方向を後方向とするとき、タブ部材10の後方向に保持部材90が設けられ、タブ部材10の最前端から保持部材90の最後端までの長さは18ミリメートル以内(L1)である。
【0021】
図1の例では、コネクタ部材50の一例としてUSBコネクタのタイプAを想定した図を描いたが、コネクタ部材50をUSBコネクタのタイプAに限定するものではない。たとえば、コネクタ部材50は、USBコネクタのタイプC、HDMI(登録商標)、MicroUSB(登録商標)など、どのようであってもよい。
【0022】
また、タブ部材10は、アップル社製のLightningコネクタのタブに相当するものであるが、Lightningコネクタのタブとタブ部材10との差異は、その構成にある。Lightningコネクタのタブは、
図15の中段に示すように、プリント回路板(PCB)304によって配線が構成され、プリント回路板(PCB)304の一方の端部に配置される導体ボンディングパッド310のセットと、反対側の端部に配置される接点ボンディングパッド312(1)〜312(8)のセットで構成されている。
【0023】
これに対し、タブ部材10は、本願出願人が特開2017−107866号公報に開示した構成のように、プリント回路板(PCB)を用いることなく、複数の接触子を合成樹脂製の絶縁体と金属ケースによって挟み込むようにして構成されている。すなわち、タブ部材10は、
図2〜
図5に示すように、互いに平行となるように一列に配置される複数の接触子となるリード130(リード130a、130b,130c,130d,130e,130f)と、リード130が配置される方向に対して平行な1つの面および配置される方向に対して垂直かつリード130の配置両端を挟む2つの面を有しリード130と非接触に配置される金属ケース132と、リード130と金属ケース132を内包して形成されリード130の一部および金属ケース132の一部が外部に露出する合成樹脂製の絶縁体131と、を有する。さらに、リード130の露出部分を有する側の絶縁体131の表面には、隣り合うリード130の間に相当する位置に所定の深さの溝133d,133e,133f,133g,133h,133i,133j、133k、133l溝を有する。
【0024】
さらにタブ部材10の製造工程を説明すると、
図2に示すように、接触子となるリード130(リード130a、130b,130c,130d,130e,130f)に、
図3に示すように、専用の金型を用いて一体成形により絶縁体131が製造される。そして、一体成形により製造されたリード130を含む絶縁体131は、
図4に示すように、底面に金属ケース132が取り付けられる。さらに、
図5に示すように、金属ケース132が取り付けられた絶縁体131を専用の金型を用いて一体成形により絶縁体133を製造すると共に、凸部134で固定する。なお、絶縁体133の表面には、溝133d,133e,133f,133g,133h,133i,133j、133k、133lが形成される。また、上述したリード130(リード130a,130b,130c,130d,130e,130f)の一部が絶縁体133の表面より露出すると共に、金属ケース132の一部分(133a,133b,133cおよび図示されていないが133bとは反対側に相当する箇所)も絶縁体133より露出するように成形される。
【0025】
図6は、スマートフォンやタブレット端末などの機器100にタブ部材10が挿入された状態を示している。機器100の内部コネクタ101にタブ部材10が嵌合している状態である。比較例として、
図7は、機器100にアップル社製のLightningコネクタのタブ111が挿入された状態を示している。機器100の内部コネクタ101にタブ111が嵌合している状態である。
【0026】
図7に示すアップル社製のLightningコネクタでは、
図15の中段に示すように、プリント回路板(PCB)304によって配線が構成され、プリント回路板(PCB)304の一方の端部に配置される導体ボンディングパッド310のセットと、反対側の端部に配置される接点ボンディングパッド312(1)〜312(8)のセットで構成されている。また、
図17および
図18に示すように、アップル社製のLightningケーブルは、導電金属シールド345a、345bと、保持部材110(特許文献1では本体)に相当するエンクロージャ349とを有する。このようなアップル社製のLightningケーブルでは、Lightningコネクタのプリント回路板(PCB)304にエポキシ樹脂等の保護封入材を塗布し、その部分を導電金属シールド345a、345bやエンクロージャ349で覆うことによって、絶縁性や強度を確保している。特に、
図15の下段および
図16に示すように、保持部材110内に高密度の電子回路である電子構成要素308a,308bを有するため、エポキシ樹脂等の保護封入材を塗布し、その部分を導電金属シールド345a、345bやエンクロージャ349で覆うことによって、絶縁性や強度を確保することは必須である。
【0027】
これに対し、ケーブル1は、保持部材90内に電子回路80を有しておらず、さらに、本願出願人が特開2017−107866号公報に開示した構成のように、プリント回路板(PCB)を用いることなく、複数の接触子を合成樹脂製の絶縁体と金属ケースによって挟み込むようにして構成することができる。これにより、機器側コネクタ11は、そのままで十分な絶縁性と強度を有するので、保持部材90内には、絶縁性や強度を確保するためのエポキシ樹脂等による保護封入材の塗布や導電金属シールドなどを施す必要はなく、保持部材90を保持部材110と比較して小型化することができる。
【0028】
このように、アップル社製のLightningケーブルは、保持部材110(エンクロージャ349に相当)内に高密度の電子回路(電子構成要素308a,309b)を有すると共に、Lightningコネクタのプリント回路板(PCB)304にエポキシ樹脂等を保護封入材として塗布し、その部分を導電金属シールド345a、345bやエンクロージャ349で覆うことによって、絶縁性や強度を確保している。このため、アップル社製のLightningケーブルの保持部材110の長さd2は、ケーブル1の保持部材90の長さd1に比べて長くならざるを得ない。これにより、保持部材90を有するケーブル1では、機器100から突出する保持部材90に外部から力が加えられても、従来例と比較して、テコの原理が大きく働くことがなく、ケーブル1のタブ部材10および機器100の内部コネクタ101が変形することを避けることができる。
【0029】
すなわち、
図6に示すように、機器100の内部コネクタ101にケーブル1のタブ部材10を挿入した状態において、保持部材90が機器100の筐体から突出する距離はd1である。これに対し、
図7に示すように、機器100の内部コネクタ101にタブ111を挿入した状態において、保持部材110が機器100の筐体から突出する距離はd2である。
【0030】
ここで、
図6の保持部材90における矢示Fの部位に大きさFの力が加えられ、黒丸F×d1を支点として、テコの原理が働いたと仮定する。このとき、当該テコの作用点(不図示)となる箇所はタブ部材10上のいずれかの箇所に生じる。ここで、力のモーメントの概念を導入すると、支点となる黒丸F×d1は、タブ部材10上の不図示の作用点にF×d1のトルクを発生させる回転軸となる。
【0031】
同様に、
図7の保持部材110における矢示Fの部位に大きさFの力が加えられ、黒丸F×d2を支点として、テコの原理が働いたと仮定する。このとき、当該テコの作用点(不図示)となる箇所はタブ111上のいずれかの箇所に生じる。ここで、力のモーメントの概念を導入すると、支点となる黒丸F×d2は、タブ111上の不図示の作用点にF×d2のトルクを発生させる回転軸となる。
【0032】
このようにして、大きさFの力によって生じるタブ部材10およびタブ111上の作用点に働く力は、タブ部材10自身、タブ111自身、および内部コネクタ101を変形させる力になる。ここで、d1<d2であるので、タブ部材10およびタブ111上の作用点に働く力は、保持部材90および保持部材110に加えられる力Fが同じであるとすれば、タブ部材10の方が小さくなる。これにより、保持部材90および保持部材110に外部から大きさFの力が加えられたときに、タブ部材10および内部コネクタ101を変形させる力はタブ111および内部コネクタ101を変形させる力より小さくなる。これにより、ケーブル1の突出する部分(保持部材90)に外部から力が加えられても、テコの原理が大きく働くことがなく、ケーブル1のタブ部材10および機器100の内部コネクタ101が変形することを避けることができる。
【0033】
なお、上述した支点の位置は、説明を分かり易くするために便宜上仮定するものであり、実際の支点の位置とは異なる場合もあるが、仮定した支点の位置と実際の支点の位置とが異なっていても当該説明の主旨を逸脱するものではない。また、力Fの加わる方向についても
図6および
図7に示す方向と異なる方向であっても加わる位置が同じであれば当該説明の主旨を逸脱するものではない。たとえば、力Fの加わる方向は、
図6および
図7に示す方向と直交する方向などであってもよい。
【0034】
また、
図17および
図18に示すように、アップル社製のLightningケーブルは、保持部材110に相当するエンクロージャ349の後端に、歪み解放スリーブ348を有する。したがって、上述したモーメントの説明における距離d2は、エンクロージャ349の長さに、歪み解放スリーブ348の長さを加えた長さと考えることができる。これによれば、距離d2は、距離d1に比べて著しく長い距離となるので、ケーブル1とアップル社製のLightningケーブルとの比較において、外部からの力Fによって、ケーブル1のタブ部材10および機器100のコネクタ101が変形することを避ける効果は大きなものであるといえる。
【0035】
なお、実測した結果では、ケーブル1における距離d1は約11ミリメートルであったのに対し、アップル社製のLightningケーブルにおけるエンクロージャ349のみを保持部材110と考えた場合の距離d2は約13ミリメートルであり、さらに、エンクロージャ349と歪み解放スリーブ348を含めたものを保持部材110と考えた場合の距離d2は約23ミリメートルである。
【0036】
また、アップル社製のLightningケーブルの現行品では、
図1のケーブル1における距離L1に相当する距離は約20ミリメートルである。これに対し、ケーブル1における距離L1は18ミリメートル以下と説明したが、機器側コネクタ11には電子回路80を有しないため、機器側コネクタ11を小型化することが可能であり、距離L1は、タブ部材10自体の長さ付近を下限として12ミリメートル〜18ミリメートルの範囲で適宜設定することができる。
【0037】
また、アップル社製のLightningケーブルは、電子回路80が機器100の近傍となる保持部材110内に設けられているので、ユーザの誤操作による過大な電圧の印加などにより電子回路80が発熱または短絡したときに、タブが挿入されている機器100の一部が熱によって破損することもあり得る。
【0038】
ここで、ユーザの誤操作とは、たとえば、車載用の充電器の場合、充電器をシガーソケットに挿入したままエンジンを始動すると、異常電圧が発生する場合があり、これはユーザの誤操作の一例である。もしくは、ユーザがメーカが指定した充電器以外の充電器を使用した場合も異常電圧が発生する場合があり、これもユーザの誤操作の一例である。また、ユーザの直接の誤操作ではないが、ユーザが金属粉などのゴミが多い環境で機器を使用している場合、金属粉の堆積物によるコネクタの端子間の短絡などが発生する可能性がある。
【0039】
これに対し、ケーブル1では、電子回路80が機器100の近傍に設置されていないので、ユーザの誤操作による過大な電圧の印加などにより電子回路80が発熱または短絡しても機器100に熱などによる悪影響が及ぶことが無く、電子回路80に起因する不測の事態から機器100を守ることができる。さらに、電子回路80は、機器側コネクタ11よりも広い実装スペース(装置側基板70)を有する装置側コネクタ12内に設けられるので、電子回路80を高密度化する必要がない。これにより、電子回路80は、アップル社製のLightningコネクタ内に実装されている高密度の電子回路よりも大きな電圧および電流にも耐え得るように、回路のパターンなどを低密度化して大きく構成することができる。これによれば、ユーザの誤操作による過大な電圧の印加などにより電子回路80が発熱または短絡すること自体を低減させることができる。
【0040】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態は、その要旨を逸脱しない限りにおいて、様々に変更が可能である。たとえば、タブ部材の構成は、アップル社のLightningコネクタと同じように、プリント回路板(PCB)を用いて構成したとしても保持部材内に電子回路80を有しない分、タブ部材の最前端から保持部材の最後端までの長さを短くすることができる。
【0041】
たとえば、
図8の中段に示すように、機器側コネクタ11a(
図9参照)は、プリント回路板(PCB)210によって配線を構成し、プリント回路板(PCB)210の一方の端部に配置される導体ボンディングパッド211のセットと、反対側の端部に配置される接点ボンディングパッド212(1)〜212(10)のセットで構成することもできる。Lightningコネクタでは、
図15の上段に示す導電性フレームとしての接地リング305が接地の役割を有するが、
図8の上段の金属ケース213は、接地の役割を有しないため、
図8の下段の円内に示すように、接点215(1)〜215(10)となる10個の端子の両脇の2個の端子が接地の役割を有する接点215(1),215(10)として使用される。プリント回路板(PCB)210には、
図8の上段に示す金属ケース213が被せられ、
図8の下段に示すように、接点アッセンブリ214a,214bによる10個の接点215(1)〜215(10)が設けられた成形フレーム216が配設される。プリント回路板(PCB)210には、Lightningコネクタとは異なり高密度の電子回路である電子構成要素は有しない。
図9は、
図8の下段に示す状態から合成樹脂による一体成形により機器側コネクタ11aを成形した完成品の状態を示す。
図9に示すように、10個の接点215(1)〜215(10)を有するタブ部材217が成形される。すなわち、タブ部材217は、プリント回路板210と、プリント回路板210上に配設される端子である接点215(1)〜215(10)と、を包含し、合成樹脂によって一体成形される。
【0042】
このようにしてタブ部材217その他を構成してもプリント回路板(PCB)210上に高密度の電子回路を有しないため、プリント回路板(PCB)210自体を小型化することができる。その結果、タブ部材217の最前端から保持部材の最後端までの長さを18ミリメートル以内(L1)とすることができる。さらに具体的には、長さL1を12ミリメートル〜18ミリメートルの範囲で適宜設定することができる。
【0043】
たとえば、
図9に示す機器側コネクタ11aでは、プリント回路板(PCB)210上に電子回路を有しないため、
図8の下段に示す状態から合成樹脂による一体成形により機器側コネクタ11aを小型に成形しているが、アップル社製のLightningコネクタのように、プリント回路板上に高密度の電子回路を有していれば、高温による加工を伴う一体成形を行うことができない。このため、プリント回路板(PCB)上にエポキシ樹脂等の保護封入材を塗布することなどが必要となり、プリント回路板(PCB)を小型化することができない。
【0044】
また、その他の実施の形態のさらにその他の例として、
図10に示すように、ケーブル1aは、保持部材90aからみてタブ部材10が外部に延伸される方向と、保持部材90aからみて電線20が外部に引き出される方向と、が同一方向であり、タブ部材10が外部に延伸される部分と電線20が外部に引き出される部分とは所定の距離をおいてほぼ平行となる部分を含む位置であるようにしてもよい。
【0045】
このようなケーブル1aは、機器に接続されるタブ部材10と、タブ部材10を介して機器に対し信号の送受信および/または電力を供給する電線20と、タブ部材10の端子10aと電線20の端部21とが内部で機器側接続部30により接続され、タブ部材10および電線20を保持する保持部材90aと、を有する。
【0046】
ケーブル1aにおいても電子回路80(不図示)は、装置側コネクタ12(不図示)内に設けられており、ケーブル1の説明と同様の理由により、保持部材90aを小型化することができる。
図10の紙面の上方向を
図1で説明した前方向Xとし、
図10の紙面の下方向を
図1で説明した後方向Yとすれば、タブ部材10の最前端から保持部材90aの最後端までの長さが18ミリメートル以内(L1)である。さらに具体的には、長さL1を12ミリメートル〜18ミリメートルの範囲で適宜設定することができる。また、ケーブル1aにおいても電子回路80が機器の近傍に設置されていないので、ユーザの誤操作による過大な電圧の印加などにより電子回路80が発熱または短絡しても機器に熱などによる悪影響が及ぶことが無く、電子回路80に起因する不測の事態から機器を守ることができる。
【0047】
また、上述したように、
図17および
図18に示すように、アップル社製のLightningケーブルは、保持部材110に相当するエンクロージャ349の後端に、歪み解放スリーブ348を有する。したがって、上述したモーメントの説明における距離d2は、エンクロージャ349の長さに、歪み解放スリーブ348の長さを加えた長さと考えることができる。これに対し、ケーブル1aは、保持部材90aの最後端から電線20が引き出されていないため、電線20が上述したモーメントの説明の距離d1に全く係ることがない。
【0048】
たとえば、ケーブル1は、保持部材90の最後端から電線20が引き出されているため、電線20に加わる力が保持部材90に伝わると、タブ部材10および機器100のコネクタ101を変形させる力に加算される可能性は否めない。これに対し、ケーブル1aは、保持部材90aの最後端から電線20が引き出されていないため、電線20に加わる力が保持部材90aに伝わったとしても、タブ部材10および機器100のコネクタ101を変形させる力に加算されることはない。これによれば、ケーブル1aは、ケーブル1に比べ、さらに、外部からの力Fによって、ケーブル1aのタブ部材10および機器100のコネクタ101が変形することを避ける効果は大きなものであるといえる。
【0049】
次に、ケーブル1aのタブ部材10を機器100の一例として、スマートフォンに接続した状態を
図11を参照して説明する。ここで機器100はスマートフォンを想定しているがタブレット端末であってもよい。
図11に示すように、スマートフォンである機器100はケースCAに収納されている。
図11は、ケースCAを開いた状態であり、機器100は背面をケースCAに接するようにして収納され、機器100の画面(不図示)側のカバーCA1は開放されている。
【0050】
図11に示すように、電線20が保護部材90aからの延伸方向に引っ張られたとしても保持部材90aには、
図6を参照しながら説明したような力Fが加わらないことがわかる。
【0051】
また、
図10に示す実施の形態の変形例として、
図12に示すような形状のケーブル1bとすることもできる。
図13は、ケーブル1bを機器100の一例としてスマートフォンに接続した状態を示している。
図12に示す形状では、保持部材90bにおける距離L2よりも距離L3が短くなり、段差が形成されている。このような段差により
図14に示すように、機器200と保持部材90bとの間に、電線20を引き出す隙間が形成される。これによれば、機器200がスマートフォンよりも大きなパーソナル・コンピュータやタブレット端末であってもケーブル1bを使用することができる。
【0052】
上述したその他の実施の形態で説明したケーブル1a,1bの形状は、U字形のケーブルであったが、機器側コネクタ11側に電子回路80を有しないため、L字形その他の様々な形状に加工することが容易である。