(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ワイヤ芯が、表面を有し、前記表面が、外表面または前記ワイヤ芯と前記ワイヤ芯に重ね合わされた被覆層との間の界面領域である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の銀合金ワイヤ。
前記銀合金ワイヤが前記ワイヤ芯上に重ね合わされた被覆層を有し、前記被覆層が、貴金属元素で作られている単層であるか、または複数の重なり合わさった隣接する副層からなる多層であり、それぞれの副層は異なる貴金属元素で作られている、請求項8に記載の銀合金ワイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
第1の態様において、本発明は、ワイヤ芯(下文で略して「芯」とも呼ばれる)自体が、
(a)0.1から3wt.%(重量%、重量での%)、好ましくは0.5から1.5wt.%の範囲の量のパラジウムと、
(b)0.1から3wt.%、好ましくは0.2から1.5wt.%の範囲の量の金と、
(c)20から700wt.ppm(重量ppm、重量でのppm)、好ましくは275から325wt.ppmの範囲の量のニッケルと、
(d)20から200wt.ppm、好ましくは20から50wt.ppmの範囲の量のカルシウムと、
(e)93.91から99.786wt.%、好ましくは96.9625から99.2595wt.%の範囲の量の銀と、
(f)0から100wt.ppmのさらなる成分(パラジウム、金、ニッケル、カルシウムおよび銀以外の成分)と
からなり、
ここで、wt.%およびwt.ppmの全ての量が芯の総重量に基づき、
銀合金ワイヤが、8から80μmの範囲またはさらには12から55μmの範囲の平均直径を有する、ワイヤ芯を含むまたはワイヤ芯からなる銀合金ワイヤに関する。
【0008】
銀合金ワイヤは、好ましくは超小形電子工学におけるボンディングのためのボンディングワイヤである。銀合金ワイヤは、好ましくは一体型の物体である。非常に多くの形状が既知でありかつ本発明の銀合金ワイヤのために有用であると思われる。好ましい形状は、断面図において、円形、楕円形および矩形形状である。
【0009】
ワイヤまたはワイヤ芯の平均直径または、単純に言えば、直径は、「サイジング法」によって取得され得る。本方法に従って画定された長さの銀合金ワイヤの物理的な重量が決定される。この重量に基づいて、ワイヤまたはワイヤ芯の直径が、ワイヤ材料の密度を用いて計算される。直径は、特定のワイヤの5つの切片の5つの測定値の算術平均として計算される。
【0010】
本発明に関して、「ボンディングワイヤ」と言う語は、断面の全ての形状および全ての通常のワイヤ径を含むが、円形断面および細径を有するボンディングワイヤは好ましい。
【0011】
前述に沿って、ワイヤ芯は、前述の開示された釣り合った比率で(a)パラジウム、(b)金、(c)ニッケル、(d)カルシウム、および(e)銀を含む。しかしながら、本発明の銀合金ワイヤの芯は、(f)0から100wt.ppmの総量のさらなる成分を含み得る。本文脈において、しばしば「不可避の不純物」とも呼ばれる、さらなる成分は、使用された原料内に存在するまたはワイヤ製造プロセスからの不純物に由来する少量の化学元素および/または化合物であり、すなわち、(f)タイプのさらなる成分の存在は、例えば銀、パラジウム、金、ニッケルおよびカルシウムのうちの1種または複数内に存在する不純物に由来し得る。こうしたさらなる成分の例は、Cu、Fe、Si、Mn、Cr、Ce、Mg、La、Al、B、Zr、Ti、S、などである。さらなる成分(f)の0から100wt.ppmの低い総量は、ワイヤ特性の良好な再現性を確保する。芯内に存在するさらなる成分(f)は、通常は別個に追加されない。
【0012】
一実施形態において、本発明の銀合金ワイヤの芯は、以下のさらなる成分(f)の量未満を含む:
(i)30wt.ppm未満のCu、
(ii)それぞれ2wt.ppm未満のCr、Ce、Mg、La、Al、Be、In、Mn、Tiのうちのいずれか1種、
(iii)それぞれ15wt.ppm未満のSi、Fe、Sのうちのいずれか1種。
【0013】
本文脈において銀合金ワイヤの芯は、バルク材料の均一領域として定義される。いかなるバルク材料も常に、ある程度まで異なる特性を示し得る表面領域を有するので、ワイヤの芯の特性は、バルク材料の均一領域の特性として理解される。バルク材料領域の表面は、モフォロジー、組成(例えば硫黄、塩素および/または酸素含有量)および他の特徴の観点から様々で有り得る。表面は、ワイヤ芯の外表面であってよく、こうした実施形態において、本発明の銀合金ワイヤは、ワイヤ芯からなる。他の選択可能な方法において、表面は、ワイヤ芯とワイヤ芯に重ね合わされた被覆層との間の界面領域で有り得る。
【0014】
本発明との関連で「重ね合わされた」と言う語は、第2の部材、例えば被覆層に関して第1の部材、例えばワイヤ芯の相対位置を述べるために用いられる。「重ね合わされた」は、中間層などの、さらなる部材が、第1の部材と第2の部材との間に配置され得る(が必要ではない)ことを特徴付ける。好ましくは、第2の部材は、例えばそれぞれ第1の部材の総表面に関して、少なくとも30%、50%、70%または少なくとも90%、第1の部材上に少なくとも部分的に重ね合わされている。最も好ましくは、第2の部材は、第1の部材上に完全に重ね合わされている。
【0015】
本発明との関連で「中間層」と言う語は、その芯とその上に重ね合わされた被覆層との間の銀合金ワイヤの領域を指す。本領域において、芯および被覆層の、両方の材料の組み合わせが存在する。
【0016】
本発明との関連で「厚さ」と言う語は、層が、芯の表面上に少なくとも部分的に重ね合わされている、芯の縦軸に直交する方向の層のサイズを定義するために用いられる。
【0017】
一実施形態において、芯は、被覆層が芯の表面上に重ね合わされている、表面を有する。
【0018】
一実施形態において、被覆層の質量は、それぞれ芯の総質量に関して5wt.%以下、好ましくは2wt.%以下である。被覆層が存在する場合、被覆層はしばしば、それぞれ芯の総質量に関して、0.1wt.%以上または0.5wt.%以上の最小質量を有する。被覆層として少量の材料を適用することは、ワイヤの芯の材料によって定義される性質を維持する。一方で、被覆層は、例えば環境に対して不活性であること、腐食に対する耐性、改善された接合性などの特定の性質をワイヤ表面に与える。例えば、被覆層の厚さは、直径18μmのワイヤの場合20から120nmの範囲である。25μmの直径を有するワイヤの場合、被覆層は、例えば、30から150nmの範囲の厚さを有してよい。
【0019】
一実施形態において、被覆層は、貴金属元素で作られていてもよい。被覆層は、前記元素のうちの1つの単層であってよい。別の実施形態において、被覆層は、いくつかの重なり合わさった隣接する副層からなる多層であってもよく、それぞれの副層は異なる貴金属元素で作られている。芯上のこうした貴金属元素の堆積のための一般的な技術は、電気めっきおよび無電解めっきなどのめっき、スパッタリングなどの気相からの材料の堆積、イオンめっき、真空蒸着および物理蒸着、ならびに溶融物からの材料の堆積である。
【0020】
一実施形態において、本発明の銀合金ワイヤまたはその芯は、
(1)平均ワイヤ粒径(平均粒径)が、10μm未満、例えば2から6μmの範囲、好ましくは2から4μmの範囲である、
(2)ワイヤ粒子[100]または[101]または[111]配向の面が、7%未満、例えば1から5%の範囲、好ましくは2から3.5%の範囲である、
(3)ワイヤ双晶境界率が、60%未満、例えば30から50%の範囲、好ましくは40%から45%の範囲である、
(4)FABが、柱状粒子を示す(粒子が引き延ばされている)、
(5)FAB平均粒径が、18μm以下、例えば6から14μmの範囲、好ましくは8から12μmの範囲である、
(6)FAB粒子[101]配向の面が、45%未満、例えば30から40%の範囲、好ましくは32から36%の範囲である、
(7)FAB双晶境界率が、70%未満、例えば30から65%の範囲、好ましくは60%から65%の範囲である、
固有特性のうちの少なくとも1つによって(下述のような「試験法A」を参照)、
および/または
(α)耐腐食性が、5%以下、例えば0から5%の範囲のボンディングされたボールリフトの値を有する(下述のような「試験法B」を参照)、
(β)耐湿性が、5%以下、例えば0から5%の範囲のボンディングされたボールリフトの値を有する(下述のような「試験法C」を参照)、
(γ)ワイヤ芯の硬度が、85HV以下、例えば50から85HVの範囲、好ましくは65から75HVの範囲である(下述のような「試験法D」を参照)、
(δ)スティッチボンディングのためのプロセスウィンドウ領域が、少なくとも12000mA・g、例えば直径18μmのワイヤの場合13000から14400mA・gの値を有する(下述のような詳細な開示および「試験法E」を参照)、
(ε)ワイヤの抵抗率が、2.5μΩ・cm未満、例えば1.7から2.4μΩ・cmの範囲、好ましくは2.2から2.4μΩ・cmの範囲である(下述のような「試験法F」を参照)、
(ζ)ワイヤの降伏強度が、170MPa以下、例えば140から170MPaの範囲である(下述のような「試験法G」を参照)、
(η)ワイヤの銀樹枝状成長が、4μm/s以下、例えば2から4μm/sの範囲、好ましくは2から3μm/sの範囲である(下述のような「試験法H」を参照)、
外因的特性のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。
【0021】
「固有特性」および「外因的特性」という語は、本明細書においてワイヤ芯またはFABに関して用いられる。固有特性は、ワイヤ芯またはFABが(他の因子とは独立に)それ自体有する特性を意味し、一方外因的特性は、ワイヤ芯またはFABの用いられた測定方法および/または測定条件のような他の因子との関係に依存する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態の場合、ワイヤ芯の硬度(すなわちボンディングの前の硬度)は、85HV未満、好ましくは65から75HVの範囲である。さらに、ボンディングより前の本発明のワイヤを用いて処理されたFABの硬度は、80HV未満、好ましくは60から70HVの範囲である。こうした硬度または、より正確には、ワイヤ芯およびFABの軟度は、ボンディングの過程における繊細な基板の損傷の予防を助ける。実験も、本発明によるこうした軟性ワイヤが、非常に柔軟なFAB特性を示すことを示している。こうしたFAB硬度の制限は、具体的には機械的に繊細な構造がボンドパッドの下に並んでいる場合に役立つ。これは、具体的にはボンドパッドが、アルミニウムまたは金のような軟性材料からなる場合に当てはまる。繊細な構造は、例えば、具体的には2.5未満の誘電率を有する、多孔質の二酸化ケイ素の1つまたはいくつかの層を含んでいてもよい。こうした多孔質のかつしたがって軟弱な材料は、デバイス性能を増加するために役立ち得るので次第に一般的になっている。したがって、本発明のボンディングワイヤの機械的特性は、こうした軟弱な層の亀裂または他の損傷を防止するために最適化され得る。
【0023】
特定の実施形態において、本発明の銀合金ワイヤは、4μm/s未満、例えば2から4μm/s未満の範囲、好ましくは2から3μm/sの範囲の速度で銀樹枝状成長を示し、これは4N純銀ワイヤの約25μm/sの成長速度の約1/10から1/7である。
【0024】
別の有利な実施形態において、ワイヤの抵抗率は、3.2μΩ・cm未満、例えば2.0から2.4μΩ・cmの範囲、好ましくは2.2から2.4μΩ・cmの範囲であり、すなわち多くの用途に対する適応性を意味する。
【0025】
別の態様において、本発明は、上に開示されたその実施形態のいずれかにおける銀合金ワイヤの製造のためのプロセスにも関する。プロセスは、
(1)wt.%およびwt.ppmの全ての量が、前駆物質部材の総重量に基づく、
(a)0.1から3wt.%、好ましくは0.5から1.5wt.%の範囲の量のパラジウム、
(b)0.1から3wt.%、好ましくは0.2から1.5wt.%の範囲の量の金、
(c)20から700wt.ppm、好ましくは275から325wt.ppmの範囲の量のニッケル、
(d)20から200wt.ppm、好ましくは20から50wt.ppmの範囲の量のカルシウム、
(e)93.91から99.786wt.%、好ましくは96.9625から99.2595wt.%の範囲の量の銀、および
(f)0から100wt.ppmのさらなる成分
からなる前駆物質部材を提供するステップと、
(2)ワイヤ芯の所望の最終直径が得られるまで、ワイヤ前駆物質を形成するために前駆物質部材を引き延ばすステップと、
(3)最後に銀合金ワイヤを形成するために0.4から0.8秒からの範囲の暴露時間の間、400から600℃の範囲の炉設定温度でプロセスステップ(2)の完了後に得られるワイヤ前駆物質をストランド焼鈍するステップと
を少なくとも含み、ステップ(2)が、50から150分の範囲の暴露時間の間、400から800℃の炉設定温度での引き延ばされた前駆物質部材の中間バッチ焼鈍の1つもしくは複数のサブステップおよび/または0.4秒から1.2秒の範囲の暴露時間の間、400から800℃の炉設定温度での引き延ばされた前駆物質部材の中間ストランド焼鈍の1つもしくは複数のサブステップを含む。
【0026】
「ストランド焼鈍」と言う語が、本明細書において用いられる。これは、高い再現性でワイヤの最初の生成を可能にする連続的なプロセスである。ストランド焼鈍は、焼鈍が、焼鈍される引き延ばされたワイヤ前駆物質部材またはワイヤ前駆物質が焼鈍炉を通って移動されかつ焼鈍炉を離れた後にリール上に巻かれる間に動的になされることを意味する。
【0027】
「炉設定温度」と言う語が、本明細書において用いられる。これは、焼鈍炉の温度調節器における一定の温度を意味する。焼鈍炉は、チャンバー溶鉱炉型の炉(バッチ焼鈍の場合)または管状焼鈍炉(ストランド焼鈍の場合)であってよい。
【0028】
本開示は、前駆物質部材、ワイヤ前駆物質および銀合金ワイヤを区別する。「前駆物質部材」と言う語は、ワイヤ芯の所望の最終直径に達していないそれらのワイヤの前段について用いられる一方で、「ワイヤ前駆物質」と言う語は、所望の最終直径のワイヤの前段について用いられる。プロセスステップ(3)の完了後、すなわち所望の最終直径のワイヤ前駆物質の最終ストランド焼鈍後に本発明の意味における銀合金ワイヤが取得される。
【0029】
プロセスステップ(1)において提供されたような前駆物質部材は、所望の量のパラジウム、金、ニッケルおよびカルシウムで銀を合金/ドーピングすることによって取得され得る。銀合金自体は、金属合金の当業者に既知の従来型のプロセスによって、例えば、所望の比率で銀、パラジウム、金、ニッケルおよびカルシウムを一緒に溶融することによって調製され得る。そうする場合、1種または複数の従来型のマスター合金を利用することが可能である。溶融プロセスは、例えば誘導炉を利用して実行してよくかつ真空下または不活性ガス雰囲気下で作業することは適切である。用いられる材料は、例えば、99.99wt.%以上の純度等級を有してよい。そのように生成された溶融物は、銀系前駆物質部材の均一な部分を形成するために冷却してよい。典型的には、こうした前駆物質部材は、例えば、2から25mmの直径および例えば、5から100mの長さを有するロッドの形状である。こうしたロッドは、室温の適切な鋳型において前記銀合金溶融物を鋳造すること、その後冷却することおよび固化することによって作られ得る。
【0030】
単層または多層の形状の被覆層が、本発明の第1の態様の実施形態のいくつかについて開示されたような銀合金ワイヤの芯上に存在する場合、この被覆層は、好ましくはまだ引き延ばされていなくてもよく、最終的に引き延ばされていなくてもよくまたは所望の最終直径に十分に引き延ばされていてさえもよい、ワイヤ前駆物質部材に適用される。当業者は、ワイヤの実施形態について開示された厚さの被覆層を取得するために、すなわちワイヤ前駆物質を形成するために被覆層を有する前駆物質部材を引き延ばした後に、前駆物質部材上のこうした被覆層の厚さを計算する方法を知っている。上記で既に開示されたように、銀合金表面上に実施形態による材料の被覆層を形成するための非常に多くの技法が既知である。好ましい技法は、電気めっきおよび無電解めっきなどのめっき、スパッタリングなどの気相からの材料の堆積、イオンめっき、真空蒸着および物理蒸着、ならびに溶融物からの材料の堆積である。
【0031】
単層または多層として金属被覆を本発明の第1の態様の実施形態のいくつかについて開示されたようなワイヤ芯へ重ね合わせるために、前駆物質部材の所望の直径が一旦達成されたらプロセスステップ(2)を中断することは適切である。こうした直径は、例えば、80から200μmの範囲であってよい。次いで単層または多層金属被覆は、例えば、1種または複数の電気めっきプロセスステップによって、適用され得る。その後プロセスステップ(2)は、ワイヤ芯の所望の最終直径が得られるまで継続される。
【0032】
プロセスステップ(2)において前駆物質部材は、ワイヤ芯の所望の最終直径が得られるまで、ワイヤ前駆物質を形成するために引き延ばされる。ワイヤ前駆物質を形成するために前駆物質部材を引き延ばすための技法は、既知でありかつ本発明との関連で有用と思われる。好ましい技法は、圧延、スエージ加工、ダイ延伸などであり、その中でダイ延伸は、特に好ましい。後者において前駆物質部材は、いくつかのプロセスステップにおいてワイヤ芯の所望のおよび最終の直径が達成されるまで延伸される。
【0033】
ワイヤ芯の所望のおよび最終直径は、8から80μmの範囲または、好ましくは、12から55μmの範囲であってよい。こうしたワイヤダイ延伸プロセスは、当業者に良く知られている。従来型のタングステンカーバイドおよびダイヤモンド延伸ダイは、採用してよくかつ従来型の延伸潤滑剤は、延伸を助けるために採用してよい。
【0034】
本発明のプロセスのステップ(2)は、50から150分の範囲の暴露時間の400から800℃の炉設定温度での引き延ばされた前駆物質部材の中間バッチ焼鈍の1つもしくは複数のサブステップおよび/または0.4秒から1.2秒の範囲の暴露時間の400から800℃の炉設定温度での引き延ばされた前駆物質部材の中間ストランド焼鈍の1つもしくは複数のサブステップを含む。引き延ばされた前駆物質部材の中間焼鈍の1つまたは複数のステップは、複数の伸長または延伸ステップのうちの2つ以上の間に実行され得る。実施例によってこれを例示するために、延伸中の3つの異なる段階での3つの中間焼鈍ステップ、例えば、50から150分の暴露時間の400から800℃の範囲の炉設定温度での2mmの直径まで延伸されかつドラム上に巻き付けられたロッドの第1の中間バッチ焼鈍、0.4から1.2秒の暴露時間の400から800℃の範囲の炉設定温度での47μmの直径まで延伸された前駆物質部材の第2の中間ストランド焼鈍および0.4から1.2秒の暴露時間の400から800℃の範囲の炉設定温度での27μmの直径までさらに延伸された前駆物質部材の第3の中間ストランド焼鈍が実行され得る。
【0035】
プロセスステップ(3)においてプロセスステップ(2)の完了後に得られた引き延ばされたワイヤ前駆物質は、最終的にストランド焼鈍される。最終ストランド焼鈍は、例えば、400から600℃の範囲の炉設定温度で0.4から0.8秒の暴露時間、または、好ましい実施形態においては、400から500℃で0.5から0.7秒間実行される。
【0036】
最終ストランド焼鈍は、典型的には引き延ばされたワイヤ前駆物質を典型的には所与の長さの円筒形管の形状の、従来型の焼鈍炉によって、かつ例えば、10から60メートル/分の範囲で選択され得る所与の焼鈍速度の確定された温度プロファイルで引っ張ることによって実行される。その際焼鈍時間/炉温度パラメーターは、確定および設定してよい。
【0037】
好ましい実施形態において、最終的にストランド焼鈍された銀合金ワイヤは、一実施形態において、1種または複数の添加剤、例えば、0.01から0.07体積%の添加剤(1種または複数)を含有してよい、水中でクエンチされる。水中のクエンチングは、直ちにまたは急速に、すなわち0.2から0.6秒以内に、例えば浸漬または滴下によって、最終的にストランド焼鈍された銀合金ワイヤをプロセスステップ(3)においてそれが経験した温度から室温まで冷却することを意味する。
【0038】
本発明の実施形態に関して、最大伸び率の温度未満の温度での最終ストランド焼鈍は、ワイヤモフォロジーが良い方向に影響され得るので有益なワイヤ特性をもたらし得ることが分かった。この調整によって、例えばワイヤ硬度、ボールボンディング挙動などのような他の特性は、良い方向に影響され得る。
【0039】
一実施形態において、最終ストランド焼鈍は、焼鈍によって最大伸び率値が達成される温度よりも少なくとも150℃低い、例えば210から240℃低い温度で実行されてよく、これは最大伸び率値の70%以下、例えば最大伸び率値の30から60%である焼鈍後のワイヤの伸び率値をもたらし得る。例えば、プロセスステップ(3)は、最大伸び率T
ΔL(max)の温度よりも少なくとも150℃、好ましくは少なくとも180℃、または少なくとも200℃低い温度で実行され得る。しばしば、プロセスステップ(3)における温度は、T
ΔL(max)よりも250℃以上低い。最大伸び率T
ΔL(max)の温度は、異なる温度における試験片(ワイヤ)の破断伸びを試験することによって決定される。データ点は、伸び率(%)を温度(℃)の関数として示す、グラフに集約される。得られるグラフは、しばしば「焼鈍曲線」と呼ばれる。銀系ワイヤの場合は、伸び率(%)が最大に達する温度が観察される。これが、最大伸び率T
ΔL(max)の温度である。一例が
図1に示され、これは試料1による18μm銀合金ワイヤの例示的な焼鈍曲線を示す(表1)。焼鈍温度は、X軸の可変パラメーターである。グラフは、ワイヤの破断荷重(BL、グラム)および伸び率(EL、%)の測定値を示す。伸び率は、引張試験によって決定された。伸び率測定は、約700℃の焼鈍温度で達成された、示された実施例において約19%の典型的な極大値を示した。試料1によるワイヤが、この最大伸び率の温度ではされないが、最大伸び率の温度を220℃下回った、480℃で最終ストランド焼鈍された場合、結果は、最大伸び率値を40%以上下回る約8%の伸び率値である。
【0040】
プロセスステップ(2)の中間焼鈍ならびにプロセスステップ(3)の最終ストランド焼鈍は、不活性または還元性雰囲気において実行され得る。非常に多くの種類の不活性雰囲気ならびに還元性雰囲気が、当技術分野において既知でありかつ焼鈍炉をパージするために用いられる。既知の不活性雰囲気の中で、窒素またはアルゴンは、好ましい。既知の還元性雰囲気の中で、水素は、好ましい。別の好ましい還元性雰囲気は、水素と窒素との混合物である。水素と窒素との好ましい混合物は、総体積%が100体積%である、90から98体積%の窒素および、したがって、2から10体積%の水素である。窒素/水素の好ましい混合物は、それぞれが混合物の総体積に基づく、93/7、95/5および97/3体積%/体積%に等しい。焼鈍において還元性雰囲気を適用することは、銀合金ワイヤの表面のいくつかの部分が空気の酸素による酸化に感受性である場合、特に好ましい。前記種類の不活性または還元性ガスを用いたパージングは、好ましくは10から125min
−1、より好ましくは15から90min
−1、最も好ましくは20から50min
−1の範囲のガス交換速度(=ガス流速[リットル/分]:内部炉容積[リットル])で実行される。
【0041】
前駆物質部材材料(完成した銀合金ワイヤ芯の材料と同じ)の組成ならびにプロセスステップ(2)および(3)の間に広く使われている焼鈍パラメーターの固有の組み合わせは、上記に開示された固有および/または外因的特性のうちの少なくとも1つを示す本発明のワイヤを取得するために必須であると考えられる。中間および最終ストランド焼鈍ステップの温度/時間条件は、銀合金ワイヤ芯の固有および外因的特性を達成するまたは調整することを可能にする。
【0042】
プロセスステップ(3)の完了後に本発明の銀合金ワイヤが完成する。その特性から十分に恩恵を受けるために、ワイヤボンディング用途のために直ちに、すなわち遅延なく、例えば、プロセスステップ(3)の完了後10日以内にそれを使用することも適切である。あるいは、銀合金ワイヤの広いワイヤボンディングプロセスウィンドウ特性を維持するためにおよびそれを酸化性のまたは他の化学攻撃から防ぐために、完成したワイヤは、典型的にはプロセスステップ(3)の完了後直ちに、すなわち遅延なく、例えば、プロセスステップ(3)の完了後1から5時間未満で巻かれおよび真空密封され次いでボンディングワイヤとしてのさらなる使用のために保管される。真空密封条件における保管は、6か月を超えてはならない。真空密封の開封後銀合金ワイヤは、10日以内にワイヤボンディングのために使用されるべきである。
【0043】
全てのプロセスステップ(1)から(3)ならびに巻き付けおよび真空密封は、クリーンルーム条件(米国FED STD 209Eクリーンルーム規格、1k規格)下で実行されることが好ましい。
【0044】
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様またはその実施形態による前述の開示されたプロセスによって得ることができる銀合金ワイヤである。前記銀合金ワイヤは、ワイヤボンディング用途におけるボンディングワイヤとしての使用に十分に適することが分かっている。ワイヤボンディング技法は、当業者に良く知られている。ワイヤボンディングの過程においてはボールボンド(ファーストボンド)およびステッチボンド(セカンドボンド、ウェッジボンド)が形成されることが典型的である。ボンド形成中、超音波エネルギーの印加(典型的にはmAで測定される)によって支持される、ある種の力(典型的にはグラムで測定される)が加えられる。加えられた力の上限と下限との間の差およびワイヤボンディングプロセスにおいて加えられ超音波エネルギーの上限と下限との間の差の相乗積が、ワイヤボンディングプロセスウィンドウを確定する:
(加えられた力の上限−加えられた力の下限)・(加えられた超音波エネルギーの上限−加えられた超音波エネルギーの下限)=ワイヤボンディングプロセスウィンドウ。
【0045】
ワイヤボンディングプロセスウィンドウは、規格に適合する、すなわち少数の例を挙げれば従来型の引張試験、ボールせん断試験およびボール引張試験のような従来型の試験に合格するワイヤボンドの形成を可能にする力/超音波エネルギーの組み合わせの領域を確定する。
【0046】
言い換えれば、得られるボンドがある種のボールせん断試験規格、例えば0.0085グラム/μm
2のボールせん断、ボンドパッド非粘着性がない(no non−stick on bond pad)、などに適合しなければならない、ファーストボンド(ボールボンド)プロセスウィンドウ領域は、ボンディングにおいて用いられる力の上限と下限との間の差および加えられる超音波エネルギーの上限と下限との間の差の積であり、一方得られるボンドがある種の引張試験規格、例えば2.5グラムの引張力、リード非粘着性がない(no non−stick on lead)、などに適合しなければならない、セカンドボンド(ステッチボンド)プロセスウィンドウ領域は、ボンディングにおいて用いられる力の上限と下限との間の差および加えられる超音波エネルギーの上限と下限との間の差の積である。
【0047】
産業用途の場合、ワイヤボンディングプロセス堅牢性の理由のために広いワイヤボンディングプロセスウィンドウ(gでの力対mAでの超音波エネルギー)を有することは望ましい。本発明のワイヤは、相当に広いワイヤボンディングプロセスウィンドウを示す。
【0048】
以下の非限定的な実施例は、本発明を例示する。これらの実施例は、本発明の例示的な説明のために役立つものでありかついかなる方法においても本発明の範囲または特許請求の範囲を限定することは意図されない。
【実施例】
【0049】
FABの調製:
KNS Process User Guide for Free Air Ball(Kulicke & Soffa Industries Inc、米国、ペンシルベニア州、フォートワシントン、2002、2009年5月31日)に記載されている手順に従って作業した。FABを、標準の点火による従来型の電気トーチ(EFO)点火を実行することによって調製した(単一ステップ、18mAのEFO電流、EFO時間455μs)。
【0050】
試験法AからJ
全ての試験および測定は、T=20℃および相対湿度RH=50%において実施した。
【0051】
A.ワイヤおよびFABの電子線後方散乱回折(EBSD)パターン解析:
ワイヤおよびFAB組織を測定するために採用された主要ステップは、試料調製、良好な菊池パターンの取得および成分計算であった。
【0052】
FABを有するまたは有さないワイヤを、最初にエポキシ樹脂を用いて埋め込んで標準の金属組織学的技法によって研磨した。イオンミリングを、ワイヤ表面、汚染物および酸化層のいかなる機械的変形も除去するために最終試料調製ステップにおいて適用した。イオンミリングした試料断面を、金でスパッタリングした。次いでイオンミリングおよび金スパッタリングを、さらに二回実行した。化学エッチングまたはイオンエッチングは行わなかった。
【0053】
試料を、通常のFESEM試料保持テーブル表面に対して70°の角度を付けたホルダーを備えたFESEM(電界放出型走査型電子顕微鏡)内に充填した。FESEMは、さらにEBSD検出器を備えていた。ワイヤ結晶学的情報を含む電子後方散乱パターン(EBSP)を取得した。
【0054】
これらのパターンを、粒子配向率、平均粒径、などについて(Brukerによって開発されたQUANTAX EBSDプログラムと呼ばれるソフトウェアを用いて)さらに解析した。類似した配向の点を、組織成分を形成するために共にグループ化した。
【0055】
異なる組織成分を区別するために、15°の最大公差角度を用いた。ワイヤ延伸方向を基準配向として設定した。[100]、[101]および[111]組織割合を、基準配向に平行した[100]、[101]および[111]配向の面を有する結晶の割合の測定によって計算した。
【0056】
粒界の位置を決定するために、平均粒径を、本明細書において10°の、最小より大きい隣接した格子点間の結晶学的配向を確定して解析した。EBSDソフトウェアは、それぞれの粒子の面積を計算しそれを「平均結晶粒径」として定義される、相当する円直径に変換した。約100μm以内の長さのワイヤの縦方向に沿った全ての粒子を、平均結晶粒径の平均および標準偏差を決定するために計数した。
【0057】
双晶境界(Σ3 CSL双晶境界とも呼ばれる)は、平均粒径計算から除外した。双晶境界を、隣接する結晶学的ドメイン間の<111>配向の面周りの60°回転によって描写した。点の数は、ステップサイズに依存し、平均結晶粒径の1/5未満であった。
【0058】
B.ボンディングされたボールの塩溶液浸水試験:
ワイヤを、Al−0.5wt.%Cuボンドパッドにボールボンドした。そのようにボンディングされたワイヤを備えた試験デバイスを、25℃で10分間塩溶液に浸水し、脱イオン(DI)水および後にアセトンで洗った。塩溶液は、脱イオン水中に20wt.ppmのNaClを含有した。リフトされたボールの数を、低倍率の顕微鏡(Nikonmm−40)下で100X倍率で検査した。リフトされたボールのより大きい数の観測は、激しい界面の電解腐食を示した。
【0059】
C.ボンディングされたボールの耐湿性試験:
ワイヤを、Al−0.5wt.%Cuボンドパッドにボールボンドした。そのようにボンディングされたワイヤを備えた試験デバイスを、高度加速ストレス試験(HAST)チャンバーにおいて温度130℃、相対湿度(RH)85%で8時間保管し後にリフトされたボールの数について低倍率の顕微鏡(Nikonmm−40)下で100X倍率で検査した。リフトされたボールのより大きい数の観測は、激しい界面の電解腐食を示した。
【0060】
D.Vickers微小硬度:
硬度を、Vickers圧子を備えたMitutoyo HM−200試験装置を用いて測定した。10mN押し込み荷重の力を、12秒の滞留時間の間ワイヤの試験片に加えた。試験は、ワイヤ芯およびFABの中心で実行した。
【0061】
E.スティッチボンディングプロセスウィンドウ領域:
ボンディングプロセスウィンドウ領域の測定を、標準的な手順によって行った。試験ワイヤを、KNS−iConnボンディングツール(Kulicke & Soffa Industries Inc.、米国、ペンシルベニア州、フォートワシントン)を用いてボンディングした。プロセスウィンドウ値は、ワイヤがボンディングされたリードフィンガーが銀からなる、18μmの平均直径を有するワイヤに基づいた。
【0062】
プロセスウィンドウの4つの角は、2つの主要な故障モード、
(1)ワイヤのリードフィンガー非粘着性(NSOL)に繋がる低すぎる力および超音波エネルギーの供給、および
(2)短いワイヤテール(SHTL)に繋がる高すぎる力および超音波エネルギーの供給
を克服することによって導かれた。
【0063】
F.電気抵抗率:
試験片の両端部、すなわち長さ1.0メートルのワイヤを、一定電流/電圧を提供している電源に接続した。抵抗を、供給電圧についてデバイスで記録した。測定デバイスは、HIOKIモデル3280−10であり、かつ試験は、少なくとも10個の試験片で繰り返した。測定値の算術平均を、下に示す計算のために用いた。
【0064】
抵抗Rを、R=V/Iに従って計算した。
【0065】
特有の抵抗率ρを、ρ=(R×A)/Lに従って計算した(式中、Aはワイヤの平均断面積およびLは電圧を測定するためのデバイスの2つの測定点間のワイヤの長さである)。
【0066】
特有の伝導率σを、σ=1/ρに従って計算した。
【0067】
G.伸び率(EL):
ワイヤの引っ張り特性を、Instron−5564計器を用いて試験した。ワイヤを、2.54cm/分の速度で、254mmゲージ長(L)について試験した。破壊(破断)荷重および伸び率を、ASTM規格F219−96により取得した。伸び率は、記録された荷重対引張伸びのプロットから計算された、通常(100・ΔL/L)として百分率で報告される、引張試験の最初と最後とのワイヤのゲージ長(ΔL)における差であった。引張強度および降伏強度を、ワイヤ面積で割った破断および降伏荷重から計算した。ワイヤの実際の直径を、サイジング法、標準の長さのワイヤの秤量およびその密度を用いることによって測定した。
【0068】
H.ワイヤのエレクトロマイグレーション試験:
2本のワイヤを、50倍の倍率の低倍率の顕微鏡Nikon MM40モデルの対物レンズの下のPTFEプレート上で1ミリメートル以内の距離に平行に維持した。電気的に接続される2本のワイヤ間にマイクロピペットによって水滴を形成した。1本のワイヤを陽極にもう一方を陰極に接続して5Vをワイヤに与えた。2本のワイヤを、10Ω抵抗と直列に接続し、閉回路内で5V直流でバイアスした。回路を、電解液として数滴の脱イオン水を用いて2本のワイヤを湿らせることによって閉じた。銀は、電解液中で陰極から陽極へエレクトロマイグレーションして銀樹枝状結晶を形成し、時には2本のワイヤがブリッジを形成した。銀樹枝状結晶の成長の速度は、合金添加に強く依存する。試験したワイヤの直径は、75μmであった。
【0069】
実施例1
いずれの場合にも少なくとも99.99%純度(「4N」)の銀(Ag)、パラジウム(Pd)および金(Au)の分量を、坩堝において溶融した。少量の銀−ニッケルおよび銀−カルシウムマスター合金を溶融物に加え撹拌することによって加えた成分の均一な分散を確実にした。以下の銀−ニッケルおよび銀−白金マスター合金を用いた。
【0070】
【表1】
【0071】
表1の合金については対応するマスター合金Ag−0.5wt.%NiおよびAg−0.5wt.%Caの組み合わせを加えた。
【0072】
次いで8mmロッドの形状のワイヤ芯前駆物質部材を、溶融物から連続鋳造した。ワイヤ芯前駆物質部材を、次いで18±0.5μmの特定の直径を有するワイヤ芯前駆物質を形成するためにいくつかの延伸ステップにおいて延伸した。ワイヤ芯の断面は、実質上円形形状であった。
【0073】
2mmの直径に延伸しドラム上に巻き付けたロッドを、500℃の炉設定温度で60分の暴露時間中間バッチ焼鈍した。600℃の炉設定温度での0.8秒の暴露時間の47μmの直径に延伸した前駆物質部材の第2の中間ストランド焼鈍および600℃の炉設定温度での0.6秒の暴露時間の27μmの直径に延伸した前駆物質部材の第3の中間ストランド焼鈍を実行した。480℃の炉設定温度での0.6秒の暴露時間の18μmワイヤ芯前駆物質の最終ストランド焼鈍を実行した後そのようにして得られたワイヤを0.05体積%の界面活性剤を含有する水中でクエンチした。中間バッチ焼鈍は、アルゴンパージングガスを用いて実行し、一方ストランド焼鈍は、95体積%窒素:5体積%窒素パージングガス混合物を用いて実行した。
【0074】
本手順によって、本発明による銀合金ワイヤのいくつかの異なる試料1から5および4N純度の比較の銀ワイヤ(基準)を製造した。
【0075】
【表2】
【0076】
表1は、本発明による異なるワイヤ、試料1から5の組成を示す。パラジウム含有量は、1から3wt.%の範囲であった。金含有量は、1から1.5wt.%の範囲であった。ニッケル添加は、30から300wt.ppmまで異なった。カルシウム含有量は、それぞれ、30および50wt.ppmに維持した。
【0077】
ワイヤ試料1から5の粒径を測定して平均粒径を報告した。結果は、いずれの場合にも2から5μmの範囲であった。試料1については、平均粒径は2.91μmであった。
【0078】
下表2は、ボンディングされたワイヤの耐腐食性および耐湿性、セカンドボンドプロセスウィンドウの挙動およびFAB形成の性能の評価の結果を示す。上記で定義したワイヤ試料1から5ならびに4N純銀の比較ワイヤを、Al−0.5wt.%Cuボンドパッドにボンディングし上記で開示した試験法に従って試験した。75μmワイヤで実行したエレクトロマイグレーション試験を除いて全ての試験を18μmワイヤで実行した。
【0079】
【表3】
【0080】
ワイヤ試料の全ては、産業用途に十分に適したプロセスウィンドウを生じた。ボンディングされたボールの耐腐食性および耐湿性の著しい改善が観察された。具体的には、ワイヤ試料1は、4N純銀ワイヤ(基準)と比較して特定の改善である、ゼロに近い値、すなわち2ボールリフトを示した。
【0081】
さらに、ワイヤ試料1から5の銀樹枝状成長は、4N純銀ワイヤの銀樹枝状成長よりもずっと低かった。
【0082】
表3は、ワイヤ試料1の平均粒径および組織成分を示す(ワイヤ、FABおよび熱影響部(HAZ))。
【表4】