(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
誘電体基板と、前記誘電体基板の第1主面に形成された第1広壁と、前記誘電体基板の第2主面に形成された第2広壁と、前記誘電体基板の内部に形成されたポスト壁と、を備え、前記第1広壁、前記第2広壁、及び前記ポスト壁によって、前記誘電体基板の内部に複数の共振領域を含む導波領域が形成されたバンドパスフィルタにおいて、
前記ポスト壁は、前記導波領域の一方の端面を構成する第1ショート壁、および、前記導波領域の他方の端面を構成する第2ショート壁を含み、
前記第1ショート壁の近傍に設けられた、前記導波領域に電磁波を入力するための入力部と、
前記第2ショート壁の近傍に設けられた、前記導波領域から電磁波を出力するための出力部と、を更に備え、
前記第1広壁の縁のうち前記第1ショート壁に沿った部分を第1端部として、
前記第1端部の両端部の各々には、それぞれ、前記導波領域から遠ざかる方向に向かって延伸された第1帯状導体及び第2帯状導体が設けられている、
ことを特徴とするバンドパスフィルタ。
前記第1端部、前記第1帯状導体、及び前記第2帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第1の被覆層であって、前記誘電体基板よりも導電率が高く、且つ、前記第1広壁よりも導電率が低い材料からなる第1の被覆層を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバンドパスフィルタ。
前記第1端部、前記第1帯状導体、前記第2帯状導体、及び前記第3帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第1の被覆層であって、前記誘電体基板よりも導電率が高く、且つ、前記第1広壁よりも導電率が低い材料からなる第1の被覆層を更に備えている、
ことを特徴とする請求項4に記載のバンドパスフィルタ。
前記第2端部、前記第4帯状導体、及び前記第5帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第2の被覆層であって、前記誘電体基板よりも導電率が高く、且つ、前記第1広壁よりも導電率が低い材料からなる第2の被覆層を更に備えている、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載のバンドパスフィルタ。
前記第2端部、前記第4帯状導体、前記第5帯状導体、及び前記第6帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第2の被覆層であって、前記誘電体基板よりも導電率が高く、且つ、前記第1広壁よりも導電率が低い材料からなる第2の被覆層を更に備えている、
ことを特徴とする請求項9に記載のバンドパスフィルタ。
(1)前記第3端部、前記第7帯状導体、及び前記第8帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第3の被覆層であって、前記誘電体基板よりも導電率が高く、且つ、前記第2広壁よりも導電率が低い材料からなる第3の被覆層、及び、(2)前記第4端部、前記第9帯状導体、及び前記第10帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第4の被覆層であって、前記誘電体基板よりも導電率が高く、且つ、前記第2広壁よりも導電率が低い材料からなる第4の被覆層のうち、少なくとも何れか一方を更に備えている、
ことを特徴とする請求項11又は12に記載のバンドパスフィルタ。
(1)前記第3端部、前記第7帯状導体、前記第8帯状導体、及び前記第11帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第3の被覆層であって、前記誘電体基板よりも導電率が高く、且つ、前記第2広壁よりも導電率が低い材料からなる第3の被覆層、及び、(2)前記第4端部、前記第9帯状導体、前記第10帯状導体、及び前記第12帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第4の被覆層であって、前記誘電体基板よりも導電率が高く、且つ、前記第2広壁よりも導電率が低い材料からなる第4の被覆層のうち、少なくとも何れか一方を更に備えている、
ことを特徴とする請求項14に記載のバンドパスフィルタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポスト壁導波路型のバンドパスフィルタにおいては、後述するエッジ領域がバイパス導波路として機能することによって、通過帯域外の電磁波がバンドパスフィルタを通過するバイパス現象が起こり得ることを、本願発明者らは発見した。このようなバイパス現象が起こると、バンドパスフィルタのアイソレーション性能が劣化する。
【0006】
ポスト壁導波路型のバンドパスフィルタにおいて起こり得るバイパス現象について、
図5及び
図6を参照してより具体的に説明すれば、以下のとおりである。なお、以下の説明においては、図示した座標系において、x軸正方向を「右」、x軸負方向を「左」、y軸正方向を「前」、y軸負方向を「後」、z軸正方向を「上」、z軸負方向を「下」と呼ぶ。
【0007】
図5は、バンドパスフィルタ9の分解斜視図である。
図5に示すように、バンドパスフィルタ9は、誘電体基板91と、誘電体基板91の上面に形成された上広壁92aと、誘電体基板91の下面に形成された下広壁92bと、誘電体基板91の内部に形成されたポスト壁93と、を備えている。ポスト壁93は、柵状に並べられた導体ポストP1,P2,…の集合である。
【0008】
図6は、バンドパスフィルタ9の平面図である。
図6に示すように、ポスト壁93は、右狭壁930a、左狭壁930b、前狭壁930c、及び後狭壁930dに加えて、6組の隔壁対931〜936を含んでいる。上下を広壁92a,92b(
図6には不図示)で挟まれ、前後左右を狭壁930a〜930dに囲まれた直方体状の領域D1は、電磁波を導波する方形導波路として機能する。以下、この領域D1のことを、「導波領域」と呼ぶ。
【0009】
導波領域D1は、6組の隔壁対931〜936によって7つの小領域D11〜D17に区画されている。小領域D11には、電磁波を第1マイクロストリップ線路5から導波領域D1に入力するための入力部90aが形成されている。以下、この小領域D11のことを、「入力領域」と呼ぶ。また、5個の小領域D12〜D16の各々は、共振器として機能する。以下、これらの小領域D12〜D16の各々のことを、「共振領域」と呼ぶ。また、小領域D17には、電磁波を導波領域D1から第2マイクロストリップ線路6に出力するための出力部90bが形成されている。以下、この小領域D17のことを、「出力領域」と呼ぶ。
【0010】
バンドパスフィルタ9においては、直列結合された5個の共振領域D12〜D16が、特定の通過帯域内の電磁波を選択的に通過させるチェビシェフ型のバンドパスフィルタとして機能する。このため、入力部90aを介して第1マイクロストリップ線路5から入力領域D11へと入力された電磁波のうち、特定の通過帯域内の電磁波のみが、出力部90bを介して出力領域D17から第2マイクロストリップ線路6へと出力される。
【0011】
ところが、このようなバンドパスフィルタ9においては、バイパス現象、すなわち、導波領域D1を介して第1マイクロストリップ線路5から第2マイクロストリップ線路6へと導波されるべき電磁波の一部が、導波領域D1の外部に存在するエッジ領域D2を介して第1マイクロストリップ線路5から第2マイクロストリップ線路6へと導波される現象が生じ得る。ここで、エッジ領域D2とは、
図6に示すように、誘電体基板91において、上広壁92aの外縁と下広壁92bの外縁とに挟まれた領域近傍のことを指す。
【0012】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、バイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタは、誘電体基板と、前記誘電体基板の第1主面に形成された第1広壁と、前記誘電体基板の第2主面に形成された第2広壁と、前記誘電体基板の内部に形成されたポスト壁と、を備え、前記第1広壁、前記第2広壁、及び前記ポスト壁によって、前記誘電体基板の内部に複数の共振領域を含む導波領域が形成されたバンドパスフィルタにおいて、前記導波領域の一方の端面を構成する第1ショート壁の近傍に設けられた、前記導波領域に電磁波を入力するための入力部と、前記導波領域の他方の端面を構成する第2ショート壁の近傍に設けられた、前記導波領域から電磁波を出力するための出力部と、を更に備え、前記第1広壁の縁のうち前記第1ショート壁に沿った部分を第1端部として、前記第1端部の両端部の各々には、それぞれ、前記導波領域から遠ざかる方向に向かって延伸された第1帯状導体及び第2帯状導体が設けられている、ことを特徴とする。
【0014】
本バンドパスフィルタの通過帯域外の電磁波を含む電磁波が入力部に入力された場合に、第1端部の両端部に設けられた第1,第2帯状導体の各々は、共振現象を起こす。この共振現象は、上記通過帯域外の電磁波(すなわち本バンドパスフィルタが遮断すべき帯域に含まれる電磁波)のエネルギーに損失を生じさせることができる。したがって、上記の構成によれば、外部から入力部に入力された電磁波の一部がエッジ領域に結合し得る場合であっても、本バンドパスフィルタは、入力部からエッジ領域へ結合される電磁波を抑制することができる。したがって、本バンドパスフィルタは、バイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタにおいて、前記第1帯状導体及び前記第2帯状導体の各々は、それぞれの途中において、互いの先端の各々が近づく方向に折り曲げられている、ことが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、第1帯状導体の先端と第2帯状導体の先端との距離の各々を設計パラメータとして、上述した共振現象の共振周波数を制御することができる。したがって、本バンドパスフィルタは、バイパス現象を効果的に抑制することができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタは、前記第1端部、前記第1帯状導体、及び前記第2帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第1の被覆層であって、前記誘電体基板よりも導電率が高く、且つ、前記第1広壁よりも導電率が低い材料からなる第1の被覆層を更に備えていてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、第1の被覆層が、第1端部、前記第1帯状導体、及び前記第2帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部の近傍において、共振現象を起こしている電磁波を損失させることができる。このため、本バンドパスフィルタは、バイパス現象をより効果的に抑制することができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタは、前記第1帯状導体及び前記第2帯状導体の各々の先端部同士を接続する第3帯状導体を更に備えていてもよい。
【0020】
第1〜第3帯状導体は、上広壁の第1端部の近傍領域とともに環状の導体パターンを構成する。上記の構成によれば、環状の導体パターンにより取り囲まれた開口のサイズを設計パラメータとして、上述した共振現象の共振周波数を制御することができる。したがって、本バンドパスフィルタは、バイパス現象を効果的に抑制することができる。
【0021】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタは、前記第1端部、前記第1帯状導体、前記第2帯状導体、及び前記第3帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第1の被覆層であって、前記誘電体基板よりも導電率が高く、且つ、前記第1広壁よりも導電率が低い材料からなる第1の被覆層を更に備えていてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、第1の被覆層が、第1端部、前記第1帯状導体、前記第2帯状導体、及び第3帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部の近傍において、共振現象を起こしている電磁波を損失させることができる。このため、本バンドパスフィルタは、バイパス現象をより効果的に抑制することができる。
【0023】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタにおいて、記第1広壁の縁のうち前記第2ショート壁に沿った部分を第2端部として、前記第2端部の両端部の各々には、それぞれ、前記導波領域から遠ざかる方向に向かって延伸された第4帯状導体及び第5帯状導体が設けられている、ことが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、第1ショート壁近傍のエッジ領域に加えて、第2ショート壁近傍のエッジ領域においても上記通過帯域外の電磁波のエネルギーに損失を生じさせることができる。したがって、上記の構成によれば、出力部から外部に出力された電磁波の一部がエッジ領域に結合し得る場合であっても、本バンドパスフィルタは、出力部からエッジ領域へ結合される電磁波を抑制することができる。したがって、本バンドパスフィルタは、バイパス現象が更に生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【0025】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタにおいて、前記第4帯状導体及び前記第5帯状導体の各々は、それぞれの途中において、互いの先端の各々が近づく方向に折り曲げられている、ことが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、第4帯状導体の先端と第5帯状導体の先端との距離の各々を設計パラメータとして、上述した共振現象の共振周波数を制御することができる。したがって、本バンドパスフィルタは、バイパス現象を効果的に抑制することができる。
【0027】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタは、前記第2端部、前記第4帯状導体、及び前記第5帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第2の被覆層であって、前記誘電体基板よりも導電率が高く、且つ、前記第1広壁よりも導電率が低い材料からなる第2の被覆層を更に備えていてもよい。
【0028】
上記の構成によれば、第2の被覆層が、第2端部、前記第4帯状導体、及び前記第5帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部の近傍において、共振現象を起こしている電磁波を損失させることができる。このため、本バンドパスフィルタは、バイパス現象をより効果的に抑制することができる。
【0029】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタは、前記第4帯状導体及び前記第5帯状導体の各々の先端部同士を接続する第6帯状導体と、を更に備えていてもよい。
【0030】
第4〜第6帯状導体は、上広壁の第2端部の近傍領域とともに環状の導体パターンを構成する。上記の構成によれば、環状の導体パターンにより取り囲まれた各開口のサイズを設計パラメータとして、上述した共振現象の共振周波数を制御することができる。したがって、本バンドパスフィルタは、バイパス現象を効果的に抑制することができる。
【0031】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタは、前記第2端部、前記第4帯状導体、前記第5帯状導体、及び前記第6帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第2の被覆層であって、前記誘電体基板よりも導電率が高く、且つ、前記第1広壁よりも導電率が低い材料からなる第2の被覆層を更に備えていてもよい。
【0032】
上記の構成によれば、第2の被覆層が、第2端部、前記第4帯状導体、前記第5帯状導体、及び前記第6帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部の近傍において、共振現象を起こしている電磁波を損失させることができる。このため、本バンドパスフィルタは、バイパス現象をより効果的に抑制することができる。
【0033】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタにおいて、前記第2広壁の縁のうち前記第1ショート壁に沿った部分を第3端部とし、前記第2広壁の縁のうち前記第2ショート壁に沿った部分を第4端部として、前記第3端部の両端部の各々には、それぞれ、前記導波領域から遠ざかる方向に向かって延伸された第7帯状導体及び第8帯状導体が設けられており、前記第4端部の両端部の各々には、それぞれ、前記導波領域から遠ざかる方向に向かって延伸された第9帯状導体及び第10帯状導体が設けられている、構成であってもよい。
【0034】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタにおいて、前記第7帯状導体及び前記第8帯状導体の各々は、それぞれの途中において、互いの先端の各々が近づく方向に折り曲げられており、前記第9帯状導体及び前記第10帯状導体の各々は、それぞれの途中において、互いの先端の各々が近づく方向に折り曲げられている、構成であってもよい。
【0035】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタは、(1)前記第3端部、前記第7帯状導体、及び前記第8帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第3の被覆層であって、前記誘電体基板よりも導電率が高く、且つ、前記第2広壁よりも導電率が低い材料からなる第3の被覆層、及び、(2)前記第4端部、前記第9帯状導体、及び前記第10帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第4の被覆層であって、前記誘電体基板よりも導電率が高く、且つ、前記第2広壁よりも導電率が低い材料からなる第4の被覆層のうち、少なくとも何れか一方を更に備えていてもよい。
【0036】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタは、前記第7帯状導体及び前記第8帯状導体の各々の先端部同士を接続する第11帯状導体と、前記第9帯状導体及び前記第10帯状導体の各々の先端部同士を接続する第12帯状導体と、を更に備えていてもよい。
【0037】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタは、(1)前記第3端部、前記第7帯状導体、前記第8帯状導体、及び前記第11帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第3の被覆層であって、前記誘電体基板よりも導電率が高く、且つ、前記第2広壁よりも導電率が低い材料からなる第3の被覆層、及び、(2)前記第4端部、前記第9帯状導体、前記第10帯状導体、及び前記第12帯状導体のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第4の被覆層であって、前記誘電体基板よりも導電率が高く、且つ、前記第2広壁よりも導電率が低い材料からなる第4の被覆層のうち、少なくとも何れか一方を更に備えていてもよい。
【0038】
本発明のこれらの各態様に係るバンドパスフィルタは、上述した本発明の各態様に係るバンドパスフィルタと同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0039】
本発明の一態様によれば、バイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することにある。
【発明を実施するための形態】
【0041】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るバンドパスフィルタ1の構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、バンドパスフィルタ1の分解斜視図である。
図2の(a)は、バンドパスフィルタ1の平面図であり、
図2の(b)は、バンドパスフィルタ1の断面図である。なお、
図1においては、バンドパスフィルタ1に接続されるマイクロストリップ線路5,6を併せて示している。また、
図2の(b)に示す断面は、
図2の(a)に示すA−A’線におけるバンドパスフィルタ1の断面である。
【0042】
バンドパスフィルタ1は、
図1に示すように、誘電体基板11と、誘電体基板11の上面に形成された上広壁12aと、誘電体基板11の下面に形成された下広壁12bと、誘電体基板11の内部に形成されたポスト壁13と、を備えている。誘電体基板11の上面及び下面の各々は、それぞれ、請求の範囲に記載の第1主面及び第2主面の一態様である。
【0043】
誘電体基板11は、誘電体により構成された板状部材である。本実施形態においては、誘電体基板11として、石英基板を用いている。ただし、誘電体基板11の材料は、誘電体であればよく、石英に限定されない。例えば、誘電体基板11の材料は、樹脂(例えば、テフロン(登録商標)系樹脂や液晶ポリマー樹脂など)であっても構わない。
【0044】
なお、以下の説明においては、誘電体基板11の表面を構成する6つの面のうち、面積が最も大きな2つの面を「主面」と呼ぶ。特に、これら2つの主面を区別する必要がある場合は、第1の主面を「上面」と呼び、第1の主面に対向する第2の主面を「下面」と呼ぶ。また、誘電体基板11の表面を構成する6つの面のうち、主面以外の4つの面を「側面」と呼ぶ。特に、これら4つの側面を区別する必要がある場合には、第1の側面を「右側面」と呼び、第1の側面に対向する第2の側面を「左側面」と呼び、第1の側面及び第2の側面に直交する第3の側面を「前側面」と呼び、第3の側面に対向する第4の側面を「後側面」と呼ぶ。ただし、これらの呼称は、説明の便宜上のものであり、バンドパスフィルタ1の配置に制約を課すものではない。また、以下の説明においては、誘電体基板11の左側面から右側面に向かう方向をx軸正方向とし、誘電体基板11の後側面から前側面に向かう方向をy軸正方向とし、誘電体基板11の下面から上面に向かう方向をz軸正方向とする直交座標系を利用する。
【0045】
上広壁12aは、誘電体基板11の上面に形成された長方形の膜状導体であり、下広壁12bは、上広壁12aと対向するように、誘電体基板11の下面に形成された長方形の膜状導体である。
図1に示すように、上広壁12aの外縁を構成する4つの辺のうち前方(y軸正方向側)の短辺を短辺12a1と称し、後方(y軸負方向側)の短辺を短辺12a2と称し、下広壁12bの外縁を構成する4つの辺のうち前方(y軸正方向側)の短辺を短辺12b1と称し、後方(y軸負方向側)の短辺を短辺12b2と称する。
【0046】
上広壁12a及び下広壁12bの各々は、それぞれ、請求の範囲に記載の第1広壁及び第2広壁の一態様である。上広壁12aの外縁及び下広壁12bの外縁の各々は、それぞれ、請求の範囲に記載の第1広壁の縁及び第2広壁の縁の一態様である。また、短辺12a1,12a2,12b1,12b2の各々は、それぞれ、請求の範囲に記載の第1端部、第2端部、第3端部、及び第4端部の一態様である。
【0047】
上広壁12aの短辺12a1の近傍領域には、帯状導体12a3〜12a5が設けられている。同様に、短辺12a2の近傍領域には、帯状導体12a6〜12a8が設けられている。また、下広壁12bの短辺12b1の近傍領域には、帯状導体12b3〜12b5が設けられている。同様に、短辺12b2の近傍領域には、帯状導体12b6〜12b8が設けられている。上広壁12aは、短辺12a1と短辺12a2とから等距離に位置するzx平面を対称面として、鏡映対称になるように構成されている。同様に、下広壁12bは、短辺12b1と短辺12b2とから等距離に位置するzx平面を対称面として、鏡映対称になるように構成されている。
【0048】
したがって、短辺12a1と短辺12a2とから等距離に位置するzx平面を対称面として、帯状導体12a3〜12a5と帯状導体12a6〜12a8とは、鏡映対称である。同様に、短辺12b1と短辺12b2とから等距離に位置するzx平面を対称面として、帯状導体12b3〜12b5と帯状導体12b6〜12b8とは、鏡映対称である。帯状導体12a3〜12a8,12b3〜12b8については、
図3の(a)を参照して後述する。
【0049】
本実施形態においては、上広壁12a、帯状導体12a3〜12a5、及び帯状導体12a6〜12a8、並びに、下広壁12b、帯状導体12b3〜12b5、及び帯状導体12b6〜12b8として、銅膜を所定の形状に成形した導体パターン用いる。ただし、これらの導体パターンの材料は、導体であればよく、銅に限定されない。例えば、これらの導体パターンの材料は、銅以外の金属(例えば、アルミニウムや金など)であっても構わない。また、上広壁12a、帯状導体12a3〜12a5、及び帯状導体12a6〜12a8、並びに、下広壁12b、帯状導体12b3〜12b5、及び帯状導体12b6〜12b8は、導体膜の代わりに、導体板を所定の形状に成型した導体パターンにより構成されていてもよい。
【0050】
以下、ポスト壁13の構成について、
図2の(a)を参照して説明する。ポスト壁13は、誘電体基板11の内部に形成された複数の導体ポストP1,P2,…の集合である。各導体ポストPi(i=1,2,…)は、
図2の(b)に示すように、誘電体基板11を上下に貫通する貫通孔の内壁を覆う膜状(円筒状)導体である(
図2の(b)においては、導体ポストPiの一態様である導体ポストP133a1〜P133a3,P133b1〜P133b3を例示している)。各導体ポストPiの上端及び下端は、それぞれ、上広壁12a及び下広壁12bに接触しており、各導体ポストPiは、上広壁12aと下広壁12bとを短絡している。本実施形態においては、各導体ポストPiの材料として、銅を用いている。ただし、各導体ポストPiの材料は、導体であればよく、銅に限定されない。例えば、各導体ポストPiの材料は、銅以外の金属(例えば、アルミニウムや金など)であっても構わない。また、各導体ポストPiは、誘電体基板11を上下に貫通する貫通孔に充填された塊状(円柱状)の導体であっても構わない。これらの導体ポストP1,P2,…は、柵状に並べられており、これらの導体ポストP1,P2,…により構成されるポスト壁13は、ポスト間隔よりも十分に長い波長を有する電磁波を反射する導体壁として機能する。
【0051】
ポスト壁13は、
図2の(a)に示すように、右狭壁130a、左狭壁130b、前狭壁130c、及び後狭壁130dに加えて、6組の隔壁対131〜136を含んでいる。なお、前狭壁130c及び後狭壁130dは、ショート壁と呼ばれることもある。前狭壁130c及び後狭壁130dの各々は、それぞれ、請求の範囲に記載の第1ショート壁及び第2ショート壁の一態様である。
【0052】
右狭壁130a及び左狭壁130bは、それぞれ、導体ポストP1,P2,…の部分集合であって、y軸に沿って柵状に並べられた複数の導体ポストからなる。右狭壁130aは、yz面と平行に、誘電体基板11の中心よりも右側(x軸正方向側)に配置されている。一方、左狭壁130bは、yz面と平行に、誘電体基板11の中心よりも左側(x軸負方向側)に配置されている。
【0053】
前狭壁130c及び後狭壁130dは、それぞれ、導体ポストP1,P2,…の部分集合であって、x軸に沿って柵状に並べられた複数の導体ポストからなる。前狭壁130cは、zx面と平行に、誘電体基板11の中心よりも前側(y軸正方向側)に配置されている。一方、後狭壁130dは、zx面と平行に、誘電体基板11の中心よりも後側(y軸負方向側)に配置されている。
【0054】
上下を広壁12a,12bで挟まれ、前後左右を狭壁130a〜130dに囲まれた直方体状の領域D1は、後述する入力部10aを介して入力された電磁波を導波する方形導波路として機能する。以下、この領域D1のことを、「導波領域」と呼ぶ。
【0055】
第1隔壁対131は、第1右隔壁131a及び第1左隔壁131bにより構成される。第1右隔壁131a及び第1左隔壁131bは、それぞれ、導体ポストP1,P2,…の部分集合であって、x軸に沿って柵状に並べられた複数(本実施形態においては2つ)の導体ポストからなる。第1右隔壁131aは、前狭壁130cの後方において、zx面と平行に、誘電体基板11の中心よりも右側(x軸正方向側)に配置されている。一方、第1左隔壁131bは、前狭壁130cの後方において、zx面と平行に、誘電体基板11の中心よりも左側(x軸負方向側)に配置されている。前狭壁130cから第1右隔壁131aまでの距離と前狭壁130cから第1左隔壁131bまでの距離とは、互いに一致している。また、第1右隔壁131aの左端(x軸負方向側の端部)と第1左隔壁131bの右端(x軸正方向側の端部)とは、互いに離間している。
【0056】
第2隔壁対132は、第2右隔壁132a及び第2左隔壁132bにより構成される。第2右隔壁132a及び第2左隔壁132bは、それぞれ、導体ポストP1,P2,…の部分集合であって、x軸に沿って柵状に並べられた複数(本実施形態においては3つ)の導体ポストからなる。第2右隔壁132aは、第1右隔壁131aの後方において、zx面と平行に、誘電体基板11の中心よりも右側(x軸正方向側)に配置されている。一方、第2左隔壁132bは、第1左隔壁131bの後方において、zx面と平行に、誘電体基板11の中心よりも左側(x軸負方向側)に配置されている。前狭壁130cから第2右隔壁132aまでの距離と前狭壁130cからから第2左隔壁132bまでの距離とは、互いに一致している。また、第2右隔壁132aの左端(x軸負方向側の端部)と第2左隔壁132bの右端(x軸正方向側の端部)とは、互いに離間している。
【0057】
第3隔壁対133は、第2隔壁対132の後方において、第2隔壁対132と同様に構成されている。第4隔壁対134は、第3隔壁対133の後方において、第2隔壁対132と同様に構成されている。第5隔壁対135は、第4隔壁対134の後方において、第2隔壁対132と同様に構成されている。第6隔壁対136は、第5隔壁対135の後方において、第1隔壁対131と同様に構成されている。これら6組の隔壁対131〜136は、y軸に沿って等間隔に並べられている。
【0058】
上述した導波領域D1は、これら6組の隔壁対131〜136によって、7つの小領域D11〜D17に区画される。
【0059】
導波領域D1のうち、前後を前狭壁130cと第1隔壁対131とで挟まれた小領域D11には、入力部10aが形成されている。入力部10aは、上広壁12aに形成された開口10a1と、開口10a1を通って誘電体基板11に挿入されたブラインドビア10a2と、により構成されている。ブラインドビア10a2は、上広壁12aからも下広壁12bからも絶縁されている。ブラインドビア10a2は、
図1に示すように、第1マイクロストリップ線路5の誘電体層51を貫通して、第1マイクロストリップ線路5の信号ライン52と接続される。この場合、第1マイクロストリップ線路5を導波された電磁波は、入力部10aを介して小領域D11に入力される。以下、この小領域D11のことを、「入力領域」と呼ぶ。ブラインドビア10a2は、誘電体基板11を貫通しておらず、その一方の端部(z軸負方向側の端部)が誘電体基板11の内部に位置することを除いて、各導体ポストPiと同様に構成されている。
【0060】
導波領域D1のうち、前後を第1隔壁対131と第2隔壁対132とで挟まれた小領域D12は、第1共振器として機能する。以下、この小領域D12のことを、「第1共振領域」と呼ぶ。第1共振領域D12は、第1右隔壁131aと第1左隔壁131bとの間の隙間を結合窓として、上述した入力領域D11と結合している。
【0061】
導波領域D1のうち、前後を第2隔壁対132と第3隔壁対133とで挟まれた小領域D13は、第2共振器として機能する。以下、この小領域D13のことを、「第2共振領域」と呼ぶ。第2共振領域D13は、第2右隔壁132aと第2左隔壁132bとの間の隙間を結合窓として、上述した第1共振領域D12と結合している。
【0062】
導波領域D1のうち、前後を第3隔壁対133と第4隔壁対134とで挟まれた小領域D14は、第3共振器として機能する。以下、この小領域D14のことを、「第3共振領域」と呼ぶ。第3共振領域D14は、第3右隔壁133aと第3左隔壁133bとの間の隙間を結合窓として、上述した第2共振領域D13と結合している。
【0063】
導波領域D1のうち、前後を第4隔壁対134と第5隔壁対135とで挟まれた小領域D15は、第4共振器として機能する。以下、この小領域D15のことを、「第4共振領域」と呼ぶ。第4共振領域D15は、第4右隔壁134aと第4左隔壁134bとの間の隙間を結合窓として、上述した第3共振領域D14と結合している。
【0064】
導波領域D1のうち、前後を第5隔壁対135と第6隔壁対136とで挟まれた小領域D16は、第5共振器として機能する。以下、この小領域D16のことを、「第5共振領域」と呼ぶ。第5共振領域D16は、第5右隔壁135aと第5左隔壁135bとの間の隙間を結合窓として、上述した第4共振領域D15と結合している。
【0065】
導波領域D1のうち、前後を第6隔壁対136と後狭壁130dとで挟まれた小領域D17には、出力部10bが形成されている。出力部10bは、上広壁12aに形成された開口10b1と、開口10b1を通って誘電体基板11に挿入されたブラインドビア10b2と、により構成されている。ブラインドビア10b2は、上広壁12aからも下広壁12bからも絶縁されている。ブラインドビア10b2は、
図1に示すように、第2マイクロストリップ線路6の誘電体層61を貫通して、第2マイクロストリップ線路6の信号ライン62と接続される。この場合、小領域D17を導波された電磁波は、出力部10bを介して第2マイクロストリップ線路6に出力される。以下、この小領域D17のことを、「出力領域」と呼ぶ。出力領域D17は、第6右隔壁136aと第6左隔壁136bとの間の隙間を結合窓として、上述した第5共振領域D16と結合している。ブラインドビア10b2は、ブラインドビア10a2と同一に構成されている。
【0066】
バンドパスフィルタ1においては、直列結合された5個の共振領域D12〜D16が、特定の通過帯域内の電磁波を選択的に通過させるチェビシェフ型のバンドパスフィルタとして機能する。このため、入力部10aを介して第1マイクロストリップ線路5から入力領域D11へと入力された電磁波のうち、特定の通過帯域内の電磁波のみが、出力部10bを介して出力領域D17から第2マイクロストリップ線路6へと出力される。
【0067】
なお、本実施形態においては、導波領域D1を6組の隔壁対131〜136で区画することによって、5個の共振領域D12〜D15を含むバンドパスフィルタを実現しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、nを3以上の任意の自然数として、導波領域D1をn組の隔壁対で区画することによって、n−1個の共振領域を含むバンドパスフィルタを実現することができる。例えば、(1)導波領域D1を3組の隔壁対で区画することによって、2個の共振領域を含むバンドパスフィルタを実現してもよいし、(2)導波領域D1を4組の隔壁対で区画することによって、3個の共振領域を含むバンドパスフィルタを実現してもよいし、(3)導波領域D1を5組の隔壁対で区画することによって、4個の共振領域を含むバンドパスフィルタを実現してもよい。
【0068】
また、本実施形態においては、第1マイクロストリップ線路5を導波された電磁波をバンドパスフィルタ1に入力するために、入力部10aを開口10a1とブラインドビア10a2とにより実現しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、導波管を導波された電磁波をバンドパスフィルタ1に入力するために、入力部10aを開口10a1のみにより実現しても構わない。この場合、開口10a1の形状及びサイズは、導波管の出力開口の形状及びサイズに応じて決められる。なお、コプレーナ線路を導波された電磁波をバンドパスフィルタ1に入力する場合には、本実施形態と同様、入力部10aを開口10a1とブラインドビア10a2とにより構成すればよい。
【0069】
同様に、本実施形態においては、バンドパスフィルタ1を通過した電磁波を第2マイクロストリップ線路6に出力するために、出力部10bを開口10b1とブラインドビア10b2とにより実現しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、バンドパスフィルタ1を通過した電磁波を導波管に出力するために、出力部10bを開口10b1のみにより実現しても構わない。この場合、開口10b1の形状及びサイズは、導波管の入力開口の形状及びサイズに応じて決められる。なお、バンドパスフィルタ1を通過した電磁波をコプレーナ線路に入力する場合には、本実施形態と同様、出力部10bを開口10b1とブラインドビア10b2とにより構成すればよい。
【0070】
また、バンドパスフィルタ1は、第3共振領域D14の中央を通り、且つ、zx面に平行な面を対称面として、鏡映対称な構造を有する。したがって、(1)入力部10aを含む入力領域D11と出力部10bを含む出力領域D17とは同じ構造であり、(2)共振領域D12と共振領域D16とは同じ構造であり、(3)共振領域D13と共振領域D15とは同じ構造であり、共振領域D14は、上記対称面に対して鏡映対称な構造を有する。
【0071】
このように、バンドパスフィルタ1は、入力部10aからみた場合の構造と、出力部10bからみた場合の構造とが等価である。したがって、バンドパスフィルタ1においては、入力ポートとして入力部10a及び出力部10bの何れを採用した場合であっても同じ機能を発揮する。
【0072】
(バンドパスフィルタの特徴)
バンドパスフィルタ1について、
図3を用いて説明する。
図3の(a)は、バンドパスフィルタ1の上広壁12aの短辺12a1近傍を拡大した拡大平面図である。なお、
図3の(b)は、バンドパスフィルタの変形例であるバンドパスフィルタ1Aの上広壁12aAの短辺12a1A近傍を拡大した拡大平面図である。バンドパスフィルタ1Aについては、バンドパスフィルタ1の後に説明する。
【0073】
本実施形態に係るバンドパスフィルタ1において注目すべきは、
図1及び
図3の(a)に示すように、短辺12a1の両端部(x軸正方向側の端部及びx軸負方向側の端部)の各々には、それぞれ、導波領域D1から遠ざかる方向(y軸正方向)に向かって延伸された帯状導体12a3及び帯状導体12a4が設けられていることである。ここで、短辺12a1は、特許請求の範囲に記載の第1端部の一例である。また、帯状導体12a3及び帯状導体12a4の各々は、それぞれ、特許請求の範囲に記載の第1帯状導体及び第2帯状導体の一例である。
【0074】
また、
図3の(a)には図示されていないものの、短辺12b1の両端部(x軸正方向側の端部及びx軸負方向側の端部)の各々には、それぞれ、導波領域D1から遠ざかる方向(y軸正方向)に向かって延伸された帯状導体12b3及び帯状導体12b4が設けられている(
図1参照)。帯状導体12b3及び帯状導体12b4の各々は、それぞれ、特許請求の範囲に記載の第7帯状導体及び第8帯状導体の一例である。
【0075】
バンドパスフィルタ1の通過帯域外の電磁波を含む電磁波が入力部10aに入力された場合に、短辺12a1の両端部に設けられた帯状導体12a3,12a4、及び、短辺12b1の両端部に設けられた帯状導体12b3,12b4の各々は、共振現象を起こす。この共振現象は、上記通過帯域外の電磁波(すなわち本バンドパスフィルタが遮断すべき帯域に含まれる電磁波)のエネルギーに損失を生じさせることができる。したがって、上記の構成によれば、外部から入力部10aに入力された電磁波の一部がエッジ領域に結合し得る場合であっても、バンドパスフィルタ1は、入力部10aからエッジ領域へ結合される電磁波を抑制することができる。したがって、バンドパスフィルタ1は、バイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。なお、バンドパスフィルタ1は、誘電体基板11において、上広壁12aの外縁と下広壁12bの外縁とに挟まれた領域近傍であるエッジ領域のうち、短辺12a1と短辺12b1とに挟まれた近傍領域において、上記通過帯域外の電磁波のエネルギーに損失を生じさせていると考えられる。
【0076】
また、本実施形態においては、帯状導体12a5が更に設けられており(
図3の(a)参照)、下広壁12bに帯状導体12b5が更に設けられている(
図3の(a)には不図示、
図1参照)。帯状導体12a5は、短辺12a1の方向(x軸方向)に沿って配置されており、帯状導体12a3の先端(y軸正方向側の先端)と、帯状導体12a4の先端(y軸正方向側の先端)とを接続する。同様に、帯状導体12b5は、短辺12b1の方向(x軸方向)に沿って配置されており、帯状導体12b3の先端(y軸正方向側の先端)と、帯状導体12b4の先端(y軸正方向側の先端)とを接続する。帯状導体12a5及び帯状導体12b5の各々は、それぞれ、特許請求の範囲に記載の第3帯状導体及び第11帯状導体の一例である。
【0077】
このように構成された帯状導体12a3〜12a5は、上広壁12aの短辺12a1近傍領域とともに、環状の導体パターンを構成する。帯状導体12b3〜12b5についても同様である。すなわち、帯状導体12b3〜12b5は、下広壁12bの短辺12b1近傍領域とともに、環状の導体パターンを構成する。本実施形態において、上広壁12aと下広壁12bとは合同であり、帯状導体12a3〜12a5と帯状導体12b3〜12b5とは、合同である。したがって、バンドパスフィルタ1を平面視した場合、
図3の(a)に示した上広壁12a及び帯状導体12a3〜12a5が形成されている領域と、
図3の(a)には図示されていないものの下広壁12b及び帯状導体12b3〜12b5が形成されている領域とは、重なっている。なお、本実施形態においては、帯状導体12a5,12b5のy軸正方向側の長辺は、誘電体基板11の端面111と一致するように形成されている。
【0078】
以下において、帯状導体12a3〜12a5と、短辺12a1の近傍領域とにより取り囲まれた開口AP1の、x軸方向に沿った長さを長さXAP1とし、y軸方向に沿った長さを長さYAP1とする。また、
図3の(a)には図示されていないものの、帯状導体12b3〜12b5と、短辺12b1の近傍領域とにより取り囲まれた開口AP2の、x軸方向に沿った長さを長さXAP2とし、y軸方向に沿った長さを長さYAP2とする。これらの長さXAP1,XAP2及び長さYAP1,YAP2を設計パラメータとして変化させることによって、上述した共振現象の共振周波数を制御することができる。したがって、バンドパスフィルタ1は、バイパス現象を効果的に抑制することができる。
【0079】
また、バンドパスフィルタ1は、短辺12a1及び帯状導体12a3〜12a5のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第1の被覆層であって、誘電体基板11よりも導電率が高く、且つ、上広壁12aよりも導電率が低い材料からなる第1の被覆層を更に備えていてもよい(
図3の(a)には不図示)。
【0080】
第1の被覆層の材料としては、シリコンなどの半導体、グラファイトなどの半金属、及びフェライトなどの磁性体が挙げられる。フェライトは、電磁波に対する高い吸収係数を有しているため、第1の被覆層を構成する材料として好ましい。特に、フェライトの中でもε−M
xFe
2−xO
3の組成式で表されるε型−酸化鉄は、Mを構成する元素及びMの組成比を設計パラメータとして、吸収係数がピークを示す周波数(吸収周波数)を設計することができるため、より好ましい。例えば、64GHz〜70GHzの周波数帯域に含まれる電磁波を損失させたい場合、第1の被覆層の材料としてε−Ga
0.6Fe
1.4O
3の組成式で表されるε型−酸化鉄を採用することが好ましい。また、銀ペーストなどの導電性ペーストや、カーボンブラッグ含有ゴムなどの導電性ゴムといった導電性樹脂も、導電率を上記の条件を満たすように調整したうえで、第1の被覆層を構成する材料として利用することができる。
【0081】
第1の被覆層は、短辺12a1及び帯状導体12a3〜12a5のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部の近傍において、共振現象を起こしている電磁波を損失させることができる。このため、第1の被覆層を備えたバンドパスフィルタ1は、バイパス現象をより効果的に抑制することができる。
【0082】
図3の(a)に示すように、第1ショート壁の一態様である前狭壁130cの壁芯(
図3の(a)に示すB−B’線の位置)から、短辺12a1(
図3の(a)に示すC−C’線の位置)までの距離を第1距離Y31とする。また、
図3の(a)には図示されていないものの、前狭壁130cの壁芯から短辺12b1までの距離を第2距離Y32とする。
【0083】
なお、ここでは、短辺12a1の近傍領域に設けられた帯状導体12a3〜12a5と、短辺12b1の近傍領域に設けられた帯状導体12b3〜12b5について説明した。しかし、帯状導体12a3〜12a5と同様に、短辺12a2の近傍領域には、帯状導体12a6〜12a8が設けられている。また、帯状導体12b3〜12b5と同様に、短辺12b2の近傍領域には、帯状導体12b6〜12b8が設けられている。
【0084】
上述した第1の被覆層と同様に、バンドパスフィルタ1は、(1)短辺12a2及び帯状導体12a6〜12a8のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第2の被覆層であって、誘電体基板11よりも導電率が高く、且つ、上広壁12aよりも導電率が低い材料からなる第2の被覆層を更に備えていてもよいし、(2)短辺12b1及び帯状導体12b3〜12b5のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第3の被覆層であって、誘電体基板11よりも導電率が高く、且つ、下広壁12bよりも導電率が低い材料からなる第3の被覆層を更に備えていてもよいし、(3)短辺12b2及び帯状導体12b6〜12b8のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第4の被覆層であって、誘電体基板11よりも導電率が高く、且つ、下広壁12bよりも導電率が低い材料からなる第4の被覆層を更に備えていてもよい。なお、第2被覆層、第3被覆層、及び第4被覆層の各々は、
図3の(a)には図示していない。
【0085】
上述したように、短辺12a1と短辺12a2とから等距離に位置するzx平面を対称面として、帯状導体12a3〜12a5と帯状導体12a6〜12a8とは鏡映対称である。同様に、短辺12b1と短辺12b2とから等距離に位置するzx平面を対称面として、帯状導体12b3〜12b5と帯状導体12b6〜12b8とは、鏡映対称である。したがって、第2ショート壁の一態様である後狭壁130dの壁芯(
図2の(a)参照)から、短辺12a2(
図2の(a)参照)までの距離を第3距離Y33とする。また、後狭壁130dの壁芯から短辺12b2までの距離を第4距離Y34とする。
【0086】
また、図示していないものの、帯状導体12a6〜12a8と、短辺12a2の近傍領域とにより取り囲まれた開口を開口AP3とし、帯状導体12b6〜12b8と、短辺12b2の近傍領域とにより取り囲まれた開口を開口AP4とする。開口AP1の場合と同様に、開口AP2〜4の、x軸方向に沿った長さを各々長さXAP2〜XAP4とし、y軸方向に沿った長さを各々長さYAP2〜YAP4とする。
【0087】
なお、帯状導体12a6及び帯状導体12a7の各々は、特許請求の範囲に記載の第4帯状導体及び第5帯状導体の一例である。帯状導体12b6及び帯状導体12b7の各々は、特許請求の範囲に記載の第9帯状導体及び第10帯状導体の一例である。帯状導体12a8及び帯状導体12b8の各々は、特許請求の範囲に記載の第6帯状導体及び第12帯状導体の一例である。
【0088】
帯状導体12a6〜12a8,12b6〜12b8の各々は、それぞれ、帯状導体12a3〜12a5,12b3〜12b5と同じ構成を有する。したがって、ここでは、帯状導体12a6〜12a8,12b6〜12b8の詳しい説明を省略する。
【0089】
また、
図1には図示していないものの、バンドパスフィルタ1は、短辺12a2及び帯状導体12a6〜12a8のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第2の被覆層であって、誘電体基板11よりも導電率が高く、且つ、上広壁12aよりも導電率が低い材料からなる第2の被覆層を更に備えていてもよい。
【0090】
また、
図1には図示していないものの、バンドパスフィルタ1は、(1)短辺12b1及び帯状導体12b3〜12b5のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第3の被覆層であって、誘電体基板11よりも導電率が高く、且つ、下広壁12bよりも導電率が低い材料からなる第3の被覆層、及び、(2)短辺12b2及び帯状導体12b6〜12b8のうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第4の被覆層であって、誘電体基板11よりも導電率が高く、且つ、下広壁12bよりも導電率が低い材料からなる第4の被覆層のうち、少なくとも何れか一方を更に備えていてもよい。
【0091】
第2の被覆層、第3の被覆層、及び第4の被覆層の各々を構成する材料としては、第1の被覆層を構成する材料と同じ材料を採用することができる。また、第2の被覆層、第3の被覆層、及び第4の被覆層の各々は、第1の被覆層と同様の効果を奏する。したがって、ここでは、これらの説明を省略する。
【0092】
なお、バンドパスフィルタ1において、帯状導体12b3〜12b8の各々を省略することもできるし、帯状導体12a6〜12a8,12b6〜12b8の各々を省略することもできる。バンドパスフィルタ1の一態様は、少なくとも、帯状導体12a3〜12a5を備えていればよく、帯状導体12a6〜12a8を更に備えていることが好ましい。
【0093】
また、バンドパスフィルタ1において、説明の便宜上、入力部10a及び出力部10bという名前を付している。入力部10a及び出力部10bの各々は、同じ構成を有するため、入力部10aを入力ポートとし、且つ、出力部10bを出力ポートとして使用することもできるし、その逆に、出力部10bを入力ポートとし、入力部10aを出力ポートとして使用することもできる。
【0094】
(変形例)
バンドパスフィルタ1の変形例であるバンドパスフィルタ1Aについて、
図3の(b)を参照して説明する。
【0095】
図3の(b)に示すように、バンドパスフィルタ1Aの上広壁12aには、第1帯状導体の一例である帯状導体12a3Aと、第2帯状導体の一例である帯状導体12a4Aとが設けられている。帯状導体12a3A及び帯状導体12a4Aの各々は、それぞれの途中において、互いの先端である先端12a3Ae及び先端12a4Aeの各々が互いに近づく方向に折り曲げられている。具体的には、帯状導体12a3Aは、その途中において、x軸負方向に向かって直角に曲がっており、帯状導体12a4Aは、その途中において、x軸正方向に向かって直角に曲がっている。
【0096】
バンドパスフィルタ1Aにおいては、先端12a3Aeと先端12a4Aeとが互いに離間している。したがって、バンドパスフィルタ1において開口AP1だった部分は、バンドパスフィルタ1Aにおいて切り欠きHO1となる。切り欠きHO1は、略長方形の形状を有するが、先端12a3Aeと先端12a4Aeとが互いに離間していることに伴い、略長方形の形状のy軸正方向側の長辺は、破断されている。以下において、切り欠きHO1の、x軸方向に沿った長さを長さXHO1とし、y軸方向に沿った長さ(破断されている部分を除く)を長さYHO1とする。
【0097】
また、バンドパスフィルタ1において開口AP2〜AP4だった各部分は、バンドパスフィルタ1Aにおいて切り欠きHO2〜HO4となる。切り欠きHO2〜HO4の、x軸方向に沿った長さを長さXHO2〜XHO4とし、y軸方向に沿った長さ(破断されている部分を除く)を長さYHO2〜YHO4とする。
【0098】
以下において、先端12a3Aeと先端12a4Aeとの間の間隔を第1間隔dg1とする。また、
図3の(b)には図示されていないものの、帯状導体12b3Aの先端である先端12b3Aeと、帯状導体12b4Aの先端である先端12b4Aeとの間の間隔を第2間隔dg2とする。これらの間隔dg1,dg2を設計パラメータとして変化させることによって、上述した共振現象の共振周波数を制御することができる。したがって、バンドパスフィルタ1Aは、バイパス現象を効果的に抑制することができる。
【0099】
本変形例では、第1帯状導体の一例である帯状導体12a3Aと、第2帯状導体の一例である帯状導体12a4Aとについて説明し、第4帯状導体の一例である帯状導体12a6Aと、第5帯状導体の一例である帯状導体12a7Aと、第7帯状導体の一例である帯状導体12b3Aと、第8帯状導体の一例である帯状導体12b4Aと、第9帯状導体の一例である帯状導体12b6Aと、第10帯状導体の一例である帯状導体12b7Aと、に関する説明を省略する。
【0100】
なお、短辺12a1と短辺12a2とから等距離に位置するzx平面を対称面として、帯状導体12a3A,12a4Aと帯状導体12a6A,12a7Aとは、鏡映対称である。同様に、短辺12b1と短辺12b2とから等距離に位置するzx平面を対称面として、帯状導体12b3A,12b4Aと帯状導体12b6A,12b7Aとは、鏡映対称である。したがって、図示は省略するものの、先端12a6Aeと先端12a7Aeとの間の間隔を第3間隔dg3とし、先端12b6Aeと先端12b7Aeとの間の間隔を第4間隔dg4とした場合、第1間隔dg1、第2間隔dg2、第3間隔dg3、及び第4間隔dg4の各々は、何れも等しい。
【0101】
また、バンドパスフィルタ1Aは、バンドパスフィルタ1と同様に、短辺12a1及び帯状導体12a3A〜12a4Aのうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第1の被覆層であって、誘電体基板11よりも導電率が高く、且つ、上広壁12aよりも導電率が低い材料からなる第1の被覆層を更に備えていてもよい(
図3の(b)には不図示)。
【0102】
また、
図3の(b)には図示していないものの、バンドパスフィルタ1Aは、短辺12a2及び帯状導体12a6A〜12a7Aのうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第2の被覆層であって、誘電体基板11よりも導電率が高く、且つ、上広壁12aよりも導電率が低い材料からなる第2の被覆層を更に備えていてもよい。
【0103】
また、
図3の(b)には図示していないものの、バンドパスフィルタ1Aは、(1)短辺12b1及び帯状導体12b3A〜12b4Aのうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第3の被覆層であって、誘電体基板11よりも導電率が高く、且つ、下広壁12bよりも導電率が低い材料からなる第3の被覆層、及び、(2)短辺12b2及び帯状導体12b6A〜12b7Aのうち少なくとも何れか1つの一部又は全部を覆う第4の被覆層であって、誘電体基板11よりも導電率が高く、且つ、下広壁12bよりも導電率が低い材料からなる第4の被覆層のうち、少なくとも何れか一方を更に備えていてもよい。
【0104】
バンドパスフィルタ1Aの第1の被覆層、第2の被覆層、第3の被覆層、及び第4の被覆層の各々を構成する材料としては、バンドパスフィルタ1の第1の被覆層を構成する材料と同じ材料を採用することができる。また、バンドパスフィルタ1Aの第1の被覆層、第2の被覆層、第3の被覆層、及び第4の被覆層の各々は、バンドパスフィルタ1の第1の被覆層と同様の効果を奏する。したがって、ここでは、これらの説明を省略する。
【0105】
なお、バンドパスフィルタ1Aにおいて、帯状導体12a6A,12a7A,12b6A,12b7Aの各々は、省略することもできる。
【0106】
また、バンドパスフィルタ1Aにおいて、説明の便宜上、入力部10a及び出力部10bという名前を付している。入力部10a及び出力部10bの各々は、同じ構成を有するため、入力部10aを入力ポートとし、且つ、出力部10bを出力ポートとして使用することもできるし、その逆に、出力部10bを入力ポートとし、入力部10aを出力ポートとして使用することもできる。
【0107】
〔実施例〕
次に、
図3の(a)に示したバンドパスフィルタ1の構成、及び、
図3の(b)に示したバンドパスフィルタ1Aの構成の各々をモデルとして用いそれぞれの構成における透過特性をシミュレーションした。以下において、透過係数(S21ともいう)の周波数依存性のことを透過特性と称する。なお、本実施例においては、
図1に示したバンドパスフィルタ1が備えていた帯状導体12b3〜12b8を省略している。すなわち、本実施例におけるバンドパスフィルタ1は、上広壁12aに設けられた帯状導体12a3〜12a8のみを備えている。また、本実施例におけるバンドパスフィルタ1Aは、上広壁12aに設けられた帯状導体12a3A,12a4A,12a6A,12a7Aのみを備えている。
【0108】
バンドパスフィルタ1において、距離Y31及びY33=200μmを採用したモデルを第1の実施例とし、距離Y31及びY33=235μmを採用したモデルを第2の実施例とし、距離Y31及びY33=300μmを採用したモデルを第3の実施例とし、距離Y31及びY33=400μmを採用したモデルを第4の実施例とし、距離Y31及びY33=600μmを採用したモデルを第5の実施例とする。また、バンドパスフィルタ1Aにおいて、距離Y31及びY33=300μmを採用し、間隔dg1及びdg3=1000μmを採用したモデルを第6の実施例とする。
【0109】
開口AP1及びAP2に関して、第1〜第5の実施例の各々は、長さXAP1及びXAP2=2500μmを採用し,長さYAP1及びYAP2=1131μmを採用している。また、第6の実施例においても、長さXHO1及びXHO2=2500μmを採用し、長さYHO1及びYHO2=1131μmを採用している。
【0110】
第1〜第6の各実施例は、Eバンドに含まれるローバンド(71GHz以上76GHz以下の帯域)を通過帯域とするように設計されている。また、各実施例において、低周波側の遮断帯域(71GHz未満の帯域)に含まれる所定の周波数を65GHzに定める。65GHzは、低周波側の遮断帯域の上限周波数(動作帯域の下限周波数とも言える)の凡そ90%に相当する。周波数が65GHzである電磁波の自由空間波長λ
0は、4.62mm(有効数字3桁の場合)である。したがって、自由空間波長λ
0の1/4は、1.15mm(有効数字3桁の場合)である。
【0111】
各実施例は、誘電体基板11として厚さが520μmである石英基板を採用している。誘電体基板11の2つの主面上には、厚さが10μmである銅製の導体膜を所定の形状に成形することによって得られた導体パターンが設けられている。これらの導体パターンの各々は、第1〜第5の実施例の場合であれば、上広壁12a、下広壁12b、帯状導体12a3,12a4,12a5,12a6,12a7,12a8として機能し、第6の実施例の場合であれば、上広壁12a、下広壁12b、帯状導体12a3A,12a4A,12a6A,12a7Aとして機能する。
【0112】
また、各実施例において、ポスト壁を構成する右狭壁130a、左狭壁130b、前狭壁130c、後狭壁130d、及び6組の隔壁対131〜136における導体ポストの各々は、誘電体基板11を貫通する貫通ビアの内壁に銅製の導体膜を形成することによって構成されている。また、これらの導体ポストの直径は100μmであり、ポスト間隔dpは200μmである。上述したように、ポスト間隔dpは、隣接する導体ポスト同士の中心間距離である(例えば
図3の(a)参照)。
【0113】
また、各実施例において、第1マイクロストリップ線路5を構成する誘電体層51、及び、第2マイクロストリップ線路6を構成する誘電体層61として、厚さが17.5μmであるポリイミド系の樹脂を採用している。
【0114】
また、各実施例において、入力部10aを構成する開口10a1は、直径340μmの円形である。また、ブラインドビア10a2は、誘電体基板11に形成されたブラインドビアの内壁に銅製の導体膜を形成することによって構成されている。また、出力部10bを構成する開口10b1は、直径340μmの円形である。また、ブラインドビア10b2は、誘電体基板11に形成されたブラインドビアの内壁に銅製の導体膜を形成することによって構成されている。
【0115】
また、各実施例において、誘電体層51の上側の表面上には、銅製の帯状薄膜からなる信号ライン52が形成されている。信号ライン52の端部のうちブラインドビア10a2に接する端部には、直径200μmであり、円形のランドが形成されている。このランドは、開口10a1の内部であって、且つ、平面視したときにブラインドビア10a2と重なる位置に形成されている。また、誘電体層61の上側の表面上には、銅製の帯状薄膜からなる信号ライン62が形成されている。信号ライン62の端部のうちブラインドビア10b2に接する端部には、直径200μmであり、円形のランドが形成されている。このランドは、開口10b1の内部であって、平面視したときにブラインドビア10b2と重なる位置に形成されている。
【0116】
(比較例)
上述した各実施例に対する比較例として、
図5及び
図6に示したバンドパスフィルタ9の構成をシミュレーションのためのモデルとして用いた。
図5は、バンドパスフィルタ9の分解斜視図である。
図6は、バンドパスフィルタ9の平面図である。
【0117】
本比較例では、第1の実施例のバンドパスフィルタ1における距離Y31及びY33に対応する距離として235μmを採用し、且つ、第1の実施例のバンドパスフィルタ1が備えている帯状導体12a3〜12a8を省略した点を除いて、第1の実施例のバンドパスフィルタ1と同一の設計パラメータを採用した。
【0118】
(透過特性)
図4は、上述した各実施例及び比較例の透過特性を示すグラフである。なお、
図4に図示した細い二点鎖線は、通過帯域の下限周波数である71GHzを示す。
【0119】
図4に示すように、比較例の透過特性は、遮断帯域内の65.5GHz近傍においてピークを有することが分かった。65.5GHz近傍における透過係数は、およそ−53dBであった。
【0120】
これに対して、第1〜第6の各実施例は、65.5GHz近傍における透過係数を抑制可能であることが分かった。具体的には、比較例と比較した場合に、第1〜第6の各実施例においては、65.5GHz近傍における透過係数が−65dBを下回るレベルに抑制可能であることが分かった。この65.5GHz近傍における透過係数は、第1の実施例から第6の実施例へ変化するにしたがって、−65dBを下回るレベルから−80dBを下回るレベルにまで抑制されることが分かった。
【0121】
以上のように、比較例と比較して、第1〜第6の各実施例は、上広壁12aのサイズを単純に大きくするという解決手段に依らずに、バイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができた。
【0122】
各実施例の何れの構成を採用するかは、バンドパスフィルタ1,1Aを実装する場合の都合や、バンドパスフィルタ1,1Aがクリアすべき仕様などに応じて適宜定めることができる。
【0123】
なお、各実施例においては、Eバンドのうちローバンド(71GHz以上76GHz以下の帯域)を通過帯域とするようにバンドパスフィルタ1,1Aを設計した。しかし、これらのバンドパスフィルタ1,1Aは、本発明の一例に過ぎず、他の帯域を通過帯域とするバンドパスフィルタにも本発明の構成を適用可能である。たとえば、Eバンドのうちハイバンド(81GHz以上86GHz以下の帯域)を通過帯域とするバンドパスフィルタにも本発明の構成を適用可能である。
【0124】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。