(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619504
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】インクジェット印刷ラミネート加工インラインシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B41J 29/00 20060101AFI20191202BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20191202BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20191202BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20191202BHJP
B05C 1/08 20060101ALI20191202BHJP
B05C 9/14 20060101ALI20191202BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20191202BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20191202BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20191202BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20191202BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20191202BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20191202BHJP
B05D 3/04 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
B41J29/00 H
B41J2/01 209
B41J2/01 125
B41M5/00 100
B41M5/00 134
B41M5/00 112
B05C5/00 101
B05C1/08
B05C9/14
B05D1/26 Z
B05D7/24 301M
B05D7/24 301P
B05D1/36 Z
B05D7/00 A
B05D3/02 B
B05D3/12 C
B05D3/04 Z
B05D7/00 K
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-510547(P2018-510547)
(86)(22)【出願日】2017年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2017012531
(87)【国際公開番号】WO2017175621
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2018年9月14日
(31)【優先権主張番号】特願2016-77553(P2016-77553)
(32)【優先日】2016年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000131625
【氏名又は名称】株式会社シンク・ラボラトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】重田 龍男
【審査官】
小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−224778(JP,A)
【文献】
特開2013−082885(JP,A)
【文献】
特開2014−233887(JP,A)
【文献】
特開2012−179872(JP,A)
【文献】
特開2000−103088(JP,A)
【文献】
特開2002−052850(JP,A)
【文献】
特開2005−161690(JP,A)
【文献】
米国特許第08096719(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C1/00−21/00
B05D1/00−7/26
B41J2/01−2/215
B41J29/00−29/70
B41M5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ状第1基材を供給するウェブ状第1基材供給部と、
前記ウェブ状第1基材に水性インクジェット印刷するシングルパス方式のインクジェットプリンタと、
前記水性インクジェット印刷されたウェブ状第1基材に接着剤を塗布する接着剤塗布部と、
前記ウェブ状第1基材と貼り合わされるようにウェブ状第2基材を供給するウェブ状第2基材供給部と、
前記ウェブ状第1基材と前記ウェブ状第2基材とをラミネート加工するラミネート加工部と、
前記ラミネート加工されたラミネートフィルムをエージングするエージングボックスと、を有する、印刷ラミネート加工インラインシステムであって、
前記インクジェットプリンタが、
前記ウェブ状第1基材に対して水性インクを吐出することにより画像形成を行なう水性インク用のインクジェットプリンタであって、
前記ウェブ状第1基材の連続的な搬送を行なう搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送されるウェブ状第1基材の表面に対してシングルパス方式で水性インクを吐出する各色のシングルパス方式インクジェットヘッドと、
前記各色のインクジェットヘッドよりも搬送の上流側に設けられ、前記ウェブ状第1基材の少なくとも表面を加温する各色毎の表面事前加温部と、
を有し、
前記表面事前加温部で加温されたウェブ状第1基材に前記インクジェットヘッドによる画像形成が行われるようにしたインクジェットプリンタである、印刷ラミネート加工インラインシステム。
【請求項2】
前記ラミネート加工がノンソルベントラミネーション加工である、請求項1記載の印刷ラミネート加工インラインシステム。
【請求項3】
前記インクジェットプリンタの前記表面事前加温部による加温が、前記ウェブ状第1基材の表面に温風を当てる温風吹き付け手段によって加温されてなる、請求項1又は2記載の印刷ラミネート加工インラインシステム。
【請求項4】
前記インクジェットプリンタの前記温風吹き付け手段が、前記ウェブ状第1基材の幅方向に亘るスリット状の温風吹き出し口を有するスリット状温風吹き付けノズルが複数個互いに隙間を形成して設けられたノズル群本体と、前記ノズル群本体の前記形成された隙間の雰囲気を吸引する吸引機構と、を有する構成とされてなる、請求項3記載の印刷ラミネート加工インラインシステム。
【請求項5】
前記インクジェットプリンタが、前記ウェブ状第1基材の裏面を加温する裏面加温部をさらに設けてなる、請求項1〜4いずれか1項記載の印刷ラミネート加工インラインシステム。
【請求項6】
前記インクジェットプリンタの前記裏面加温部による加温が、温風吹き付け手段又はホットプレートによって加温されてなる、請求項5記載の印刷ラミネート加工インラインシステム。
【請求項7】
前記ウェブ状第1基材及び/又はウェブ状第2基材が透明なフィルムである、請求項1〜6いずれか1項記載の印刷ラミネート加工インラインシステム。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項記載の印刷ラミネート加工インラインシステムを用いた印刷ラミネート加工方法であり、
前記インクジェットプリンタでウェブ状第1基材に水性インクジェット印刷し、
前記水性インクジェット印刷されたウェブ状第1基材に接着剤塗布部で接着剤を塗布し、前記ウェブ状第1基材と前記ウェブ状第2基材とを貼り合わせてラミネート加工し、
前記エージングボックスでエージングするようにした、印刷ラミネート加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブ状基材に対して水性インクでインクジェット印刷し、ラミネート加工を行うようにしたインクジェット印刷ラミネート加工インラインシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックフィルムなどのウェブ状基材に水性インクを用いてインクジェットプリンタでインクジェット印刷を行うことは行われている(特許文献1)。
【0003】
また、物品や食品などのパッケージに使用する場合、かかるウェブ状基材はラミネート加工したものが一般的に使用される(特許文献2)。
【0004】
従来は、ウェブ状基材に印刷機で印刷する印刷ラインでは印刷だけを行い、ラミネート加工を行うラミネート加工ラインではラミネート加工だけを行う、というやり方であったため、パッケージを製造するにあたって、製造ラインを移す必要があった。
【0005】
近年では、地域限定や期間限定といった、様々な限定商品が発売されることが多くなってきており、少量で多品種のパッケージデザインの付されたパッケージを製造する必要がある。このような少量で多品種のパッケージデザインの付されたパッケージを製造するにあたって、製造ラインを移してそれぞれのラインを稼働させた製造すると、商品に対する製造コストや設備コストなどの原価率が上昇してしまうという問題があった。
【0006】
さらに、印刷基材を連続的に搬送しながら印刷するにあたっては、スキャン方式とシングルパス方式とがあり、スキャンする必要がないためシングルパス方式の方が高速印刷に向いている。シングルパス方式のインクジェットプリンタは、例えば特許文献3に記載されている。しかしながら、15m/分ぐらいの印刷速度になってくると、インクの乾燥不足などによるインク流れや色のにじみ、また、多色印刷の際の色の混色などが発生するという問題があり、なかなか印刷速度が上げられないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−214160号公報
【特許文献2】特開平9−40008号公報
【特許文献3】特開2010−142966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、少量で多品種のパッケージデザインの付されたパッケージを製造するのに適しており、インクジェット印刷とラミネート加工とをインラインで製造できるようにした印刷ラミネート加工インラインシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の印刷ラミネート加工インラインシステムは、ウェブ状第1基材を供給するウェブ状第1基材供給部と、前記ウェブ状第1基材に水性インクジェット印刷するシングルパス方式のインクジェットプリンタと、前記水性インクジェット印刷されたウェブ状第1基材に接着剤を塗布する接着剤塗布部と、前記ウェブ状第1基材と貼り合わされるようにウェブ状第2基材を供給するウェブ状第2基材供給部と、前記ウェブ状第1基材と前記ウェブ状第2基材とをラミネート加工するラミネート加工部と、前記ラミネート加工されたラミネートフィルムをエージングするエージングボックスと、を有する、印刷ラミネート加工インラインシステムである。
【0010】
前記ラミネート加工がノンソルベントラミネーション加工であるのが好適である。ノンソルベントラミネーション法(無溶剤型ラミネーション法)によるラミネート加工の場合、接着剤に有機溶剤などの溶剤を使用しないため、環境にやさしいという利点がある。ノンソルベントラミネーション法では、接着剤塗布部に多段ロールを使い、ホットメルトタイプの接着剤を加熱溶融して薄く引き伸ばし、フィルムなどのウェブ状基材に塗布し、もう一方のウェブ状基材と圧着して貼り合わせることでラミネート加工が行われる。そして、ノンソルベントラミネーション法では、例えば35℃〜60℃程度の温度に保たれた保温室で1日〜2日程度保管してエージングすることにより、接着剤を硬化させることが必要となってくる。本発明の印刷ラミネート加工インラインシステムでは、このエージングをエージングボックスで行う。したがって、本発明の印刷ラミネート加工インラインシステムにおける前記エージングボックスは、ボックス内を例えば35℃〜60℃程度の温度に保つ温度調節機能を有している。
【0011】
前記インクジェットプリンタが、前記ウェブ状第1基材に対して水性インクを吐出することにより画像形成を行なう水性インク用のインクジェットプリンタであって、前記ウェブ状第1基材の連続的な搬送を行なう搬送機構と、前記搬送機構によって搬送されるウェブ状第1基材の表面に対してシングルパス方式で水性インクを吐出するシングルパス方式インクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドよりも搬送の上流側に設けられ、前記ウェブ状第1基材の少なくとも表面を加温する表面事前加温部と、を有し、前記表面事前加温部で加温されたウェブ状第1基材に前記インクジェットヘッドによる画像形成が行われるようにしたインクジェットプリンタであるのが好適である。
【0012】
前記表面事前加温部による加温としては、前記表面事前加温部による加温が、前記ウェブ状第1基材の表面に温風を当てる温風吹き付け手段によって加温されてなるのが好適である。前記ウェブ状第1基材の表面に温風を当てる以外の加温としては、ウェブ状第1基材の吸収波長と同じ波長のレーザーを照射することによって加温したりすることができる。なお、赤外線照射による加温も考えられるが、ウェブ状第1基材が透明フィルムの場合、赤外線が透過してしまい加温されないので、赤外線照射による加温の場合は、ウェブ状第1基材が黒色である場合や赤外線を吸収する波長を有する基材であることを要する。なお、上記した温風吹き付け手段による加温、レーザー照射による加温、赤外線照射による加温を組み合わせて適用することもできる。
【0013】
例えば、温風吹き付け手段によって40℃〜80℃の温風を前記ウェブ状第1基材の表面に当てるのが好ましい。
【0014】
前記インクジェットプリンタの前記温風吹き付け手段が、前記ウェブ状第1基材の幅方向に亘るスリット状の温風吹き出し口を有するスリット状温風吹き付けノズルが複数個互いに隙間を形成して設けられたノズル群本体と、前記ノズル群本体の前記形成された隙間の雰囲気を吸引する吸引機構と、を有する構成とされてなるのが好適である。
【0015】
前記インクジェットプリンタが、前記ウェブ状第1基材の裏面を加温する裏面加温部をさらに設けてなるのが好適である。
【0016】
前記インクジェットプリンタの前記裏面加温部による加温が、温風吹き付け手段又はホットプレートによって加温されてなるのが好適である。前記裏面加温部による加温としては、温風吹き付け手段又はホットプレートによる加温が好適である。
【0017】
また、上述した表面事前加温部と同様の加温手段を、表面事後加温部として前記インクジェットヘッドよりも前記ウェブ状第1基材の搬送の下流側に設けるように構成してもよい。
【0018】
前記ウェブ状第1基材及び/又はウェブ状第2基材が透明なフィルムであるのが好適である。透明なフィルムのウェブ状第1基材及び/又はウェブ状第2基材としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)やPP(ポリプロピレン)などを用いた透明な合成樹脂製フィルムが好適に使用できる。
【0019】
本発明の印刷ラミネート加工方法は、前記印刷ラミネート加工インラインシステムを用いた印刷ラミネート加工方法であり、前記インクジェットプリンタでウェブ状第1基材に水性インクジェット印刷し、前記水性インクジェット印刷されたウェブ状第1基材に接着剤塗布部で接着剤を塗布し、前記塗布された接着剤を前記乾燥部で乾燥せしめ、前記ウェブ状第1基材と前記ウェブ状第2基材とを貼り合わせてラミネート加工するようにした、印刷ラミネート加工方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、少量で多品種のパッケージデザインの付されたパッケージを製造するのに適した印刷ラミネート加工インラインシステム及び方法を提供することができるという著大な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の印刷ラミネート加工インラインシステムの一つの実施の形態を示す模式図である。
【
図2】本発明の印刷ラミネート加工インラインシステムに用いられるインクジェットプリンタの一つの実施の形態を示す断面構造図である。
【
図3】本発明の印刷ラミネート加工インラインシステムに用いられるインクジェットプリンタに用いられる温風吹き付け手段の一つの実施の形態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の印刷ラミネート加工インラインシステムに用いられるインクジェットプリンタの別の実施の形態を示す要部拡大図である。
【
図6】本発明の印刷ラミネート加工インラインシステムに用いられるインクジェットプリンタの他の実施の形態を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。なお、同一部材は同一符号で表される。
【0023】
図1は本発明の印刷ラミネート加工インラインシステムの一つの実施の形態を示す模式図である。本発明では、インクジェット印刷とラミネート加工とをインライン化、即ち一本化しており、同一ラインで製造できるようにしたシステムである。
【0024】
図1において、符号60は本発明の印刷ラミネート加工インラインシステムを示す。印刷ラミネート加工インラインシステム60は、ウェブ状第1基材12を供給するウェブ状第1基材供給部64と、前記ウェブ状第1基材12に水性インクジェット印刷するシングルパス方式のインクジェットプリンタ10Aと、前記水性インクジェット印刷されたウェブ状第1基材12に接着剤68を塗布する接着剤塗布部70と、前記ウェブ状第1基材12と貼り合わされるようにウェブ状第2基材74を供給するウェブ状第2基材供給部76と、前記ウェブ状第1基材12と前記ウェブ状第2基材74とをラミネート加工するラミネート加工部78と、前記ラミネート加工されたラミネートフィルムをエージングするエージングボックス72と、を有する、印刷ラミネート加工インラインシステムである。
【0025】
ウェブ状第1基材供給部64は、巻回ロール80にウェブ状第1基材12が巻回されており、ウェブ状第1基材12が繰り出されることでウェブ状第1基材12がインクジェットプリンタ10Aへと供給される。82a,82b,82cは送りロールである。
【0026】
水性インクIで印刷されたウェブ状第1基材12は、接着剤塗布部70へと送られる。接着剤塗布部70は、多段ロールを構成するロール84、ロール86、及び塗布ロール88と、塗布ロール88に対向して設けられた加圧ローラ90を有している。ホットメルト型の接着剤68は加熱溶融されて、ロール84とロール86を介して塗布ロール88へと送られ加圧ローラ90の間を通るウェブ状第1基材12の印刷面に薄塗り塗布される構成とされている。
【0027】
接着剤68が塗布されたウェブ状第1基材12は、ウェブ状第2基材供給部76から供給されるウェブ状第2基材74とラミネート加工部78で貼り合わされてラミネート加工される。ウェブ状第2基材供給部76は、巻回ロール94にウェブ状第2基材74が巻回されており、ウェブ状第2基材74が繰り出されることで圧着ロール96a,96bが配置されたラミネート加工部78へと供給される。圧着ロール96aは加熱金属ロールであり、圧着ロール96bはゴムロールである。92a,92bは送りロールである。
【0028】
このようにして、ラミネート加工されてラミネートフィルム98が製造される。ラミネートフィルム98は、巻回ロール100に巻回されて巻き取られる。前記巻回ロール100は、エージングボックス72に設置されており、前記エージングボックス72内は温度調節機能によって例えば35℃〜60℃程度の温度に保たれる。そして、製造されたラミネートフィルム98は、かかるエージングボックス72内で、例えば1日〜2日程度保管し、エージングを行う。このようにして、本発明の印刷ラミネート加工インラインシステムを用いた印刷ラミネート加工方法が行われる。
【0029】
次に、本発明の印刷ラミネート加工インラインシステムに用いられるインクジェットプリンタの実施の形態を
図2〜
図6に基づいて説明する。
【0030】
図2は本発明の印刷ラミネート加工インラインシステムに用いられるインクジェットプリンタの一つの実施の形態を示す断面構造図である。
【0031】
図2において、インクジェットプリンタ10Aは、ウェブ状第1基材12に対して水性インクを吐出することにより画像形成を行なう水性インク用のインクジェットプリンタであって、前記ウェブ状第1基材12の連続的な搬送を行なう搬送機構14(図示例では搬送機構14a及び14b)と、前記搬送機構14によって搬送される前記ウェブ状第1基材12の表面に対しシングルパス方式で水性インクを吐出するシングルパス方式インクジェットヘッド16a〜16eと、前記インクジェットヘッド16a〜16eよりも搬送の上流側に設けられ、前記ウェブ状第1基材12の少なくとも表面を加温する表面事前加温部18a〜18eと、を有し、前記表面事前加温部18a〜18eで加温されたウェブ状第1基材12に前記インクジェットヘッド16a〜16eによるインク吐出が行われるようにした、インクジェットプリンタである。また、前記インクジェットヘッド16a〜16eよりも搬送の下流側には表面事後加温部18b〜18fが設けられており、前記インクジェットヘッド16a〜16eによって吐出された水性インクの乾燥をさらに促進させる構成となっている。
【0032】
なお、上記した表面事前加温部18b〜18eは、表面事後加温部の役目も果たしており、表面事後加温部18b〜18eでもある。
【0033】
前記インクジェットヘッド16a〜16eとしては、公知の種々のシングルパス方式インクジェット吐出装置が適用可能である。
【0034】
搬送機構14もウェブ状第1基材12が搬送できるものであれば公知の機構がいずれも適用できるが、図示したように、駆動ベルト20,34と、ウェブ状第1基材12を巻いておく原反ローラ22と、ウェブ状第1基材12を搬送するための種々のローラ24,26,28,30と、印刷されたウェブ状第1基材12を巻き取る巻き取りローラ32と、を含む構成が採用できる。なお、符号Oは、インクジェットプリンタのオペレータである。
【0035】
また、ウェブ状第1基材12を巻いておく原反ローラ22は、加温ボックス36内に入れられており、ここで60℃〜70℃に予め加温(プレヒーティング)されている。加温ボックス36内での加温の仕方としては、温風で加温したりしてもよいし、種々の公知のヒータによる加温でもよい。図示の例では、加温ボックス36内を温風で加温する構成を示した。
【0036】
このように予め加温されたウェブ状第1基材12は、前記インクジェットヘッド16a〜16eよりも搬送の上流側に設けられた表面事前加温部18a〜18eによって、前記ウェブ状第1基材12の少なくとも表面が加温される。表面事前加温部18a〜18eとしては温風吹き付け手段の例を示した。温風吹き付け手段では、40℃〜80℃程度、例えば70℃の温風が前記ウェブ状第1基材12の表面に当てられる。温風を当てる時間としては、印刷速度が15m/分の場合、2秒〜3秒程度であるが、温風の温度にもよって適宜変更する。
【0037】
表面事前加温部18a〜18eに用いられる温風吹き付け手段の一つの実施の形態を
図3に示す。
図3によく示されるように、表面事前加温部18aである温風吹き付け手段42としては、ウェブ状第1基材12の幅方向に亘るスリット状の温風吹き出し口44を有するスリット状温風吹き付けノズル46が複数個互いに隙間48を形成して設けられたノズル群本体50と、前記ノズル群本体50の前記形成された隙間48の雰囲気を吸引する吸引機構(図示せず)と、を有する構成を採用することができる。前記隙間48の雰囲気は、図示しない吸引機構によって温風Hの吹き出しとは逆方向(
図3の矢印の逆方向)に吸引される。なお、かかる吸引機構については、公知の種々の吸引装置を適用することができるため、図示は省略する。このように、前記隙間48の雰囲気を吸引することで、水性インクによる色のにじみなどが減少する効果がある。
【0038】
また、
図2の例では、
図4によく示されるように、上述した表面事前加温部18aとしての温風吹き付け手段と同様の温風吹き付け手段を、表面事後加温部18bとしても用いて前記インクジェットヘッド16aよりも搬送の下流側に設けた例を示した。
図2及び3によく示される如く、前記インクジェットヘッド16a〜16eとしては、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、B(ブラック)、W(ホワイト)のインク貯留タンク(図示は省略)を各々有するインクジェットヘッドを示し、各インクジェットヘッド16a〜16eから各色の水性インクIが吐出される構成となっている。
【0039】
さらに、
図2の例では、ウェブ状第1基材12を裏面から加温するための、裏面加温部38を設けた例を示した。裏面加温部38としては、公知のホットプレートを用いることができ、例えば、セラミック板にフィラメントを配設した電熱ヒータなどを使用することができる。裏面加温部38としてホットプレートを用いる場合、例えば40℃〜65℃に加温して使用すると好適である。裏面加温部38は、前記インクジェットヘッド16a〜16eに対応して設ければよいもので、
図2に示すように、前記インクジェットヘッド16a〜16eの設置位置に亘って設けるようにしてもよいし、前記インクジェットヘッド16a〜16eの設置位置に夫々応じて設けるようにすることもできる。
【0040】
また、裏面加温部38として、表面事前加温部18aと同様の温風吹き付け手段も使用することもできる。また、裏面加温部38として温風吹き付け手段を用いる場合、例えば40℃〜80℃の温風をウェブ状第1基材12の裏面に当てると好適である。
【0041】
図5に、裏面加温部38として温風吹き付け手段を用いた例を示す。
図5において、符号52は、裏面加温部38としての温風吹き付け手段を示す。裏面加温部38として温風吹き付け手段52を設けた以外の構成は上記と同様である。
【0042】
次に本発明の印刷ラミネート加工インラインシステムに用いられるインクジェットプリンタの他の実施の形態を
図6に示す。
【0043】
図6において、符号10Bは本発明の印刷ラミネート加工インラインシステムに用いられるインクジェットプリンタの他の実施の形態である。インクジェットプリンタ10Bは、さらなる表面事後加温部として、レーザー照射装置40a〜40eが、前記インクジェットヘッド16a〜16eよりも搬送の下流側に設けられている。かかるレーザー照射装置40a〜40eが設けられている以外は、上述したインクジェットプリンタ10Aと同様の構成である。
【0044】
このように構成されたインクジェットプリンタ10A,10Bを用い、前記インクジェットプリンタ10A,10Bの前記表面事前加温部18a〜18eで加温されたウェブ状第1基材12に対して、水性インクを用いて前記インクジェットヘッド16a〜16eによるインク吐出を行うようにすれば、ウェブ状第1基材として透明なPETフィルムに対して15m/分の印刷速度でもインク流れや色のにじみ、及び多色印刷の際の色の混色などがなく好適に印刷ができる。また、インクジェットプリンタ10A,10Bで示したように、表面事後加温部や裏面加温部と組み合わせることでインク流れや色のにじみ、及び多色印刷の際の色の混色などがさらになくなり好適に印刷できる。
【符号の説明】
【0045】
10A,10B:インクジェットプリンタ、12:ウェブ状第1基材、14,14a,14b:搬送機構、16a〜16e:シングルパス方式インクジェットヘッド、18a〜18e:表面事前加温部、18b〜18f:表面事後加温部、20,34:駆動ベルト、22:原反ローラ、24,26,28,30:ローラ、32:巻取りローラ、36:加温ボックス、38:裏面加温部、40a〜40e:レーザー照射装置、42,52:温風吹き付け手段、44:スリット状の温風吹き出し口、46:スリット状温風吹き付けノズル、48:隙間、50:ノズル群本体、60:印刷ラミネート加工インラインシステム、64:ウェブ状第1基材供給部、68:接着剤、70:接着剤塗布部、72:エージングボックス、74:ウェブ状第2基材、76:ウェブ状第2基材供給部、78:ラミネート加工部、80,94,100:巻回ロール、82a,82b:送りロール、84,86:ロール、88:塗布ロール、90:加圧ローラ、92a,92b:送りロール、96a,96b:圧着ロール、98:ラミネートフィルム、H:温風、I:水性インク、O:オペレータ。