特許第6619574号(P6619574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6619574アムラ果実成分を含有する果汁含有発泡性飲料の果汁感増強方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619574
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】アムラ果実成分を含有する果汁含有発泡性飲料の果汁感増強方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20191202BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   A23L2/00 B
   A23L2/00 T
   A23L2/02 B
   A23L2/02 C
   A23L2/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-137447(P2015-137447)
(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公開番号】特開2017-18022(P2017-18022A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(72)【発明者】
【氏名】久保田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】瀧原 孝宣
【審査官】 中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/118391(WO,A1)
【文献】 Sparkling Fruits Drink,Mintel GNPD[online],2014年,検索日2019.2.20,URL,https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2763195/from_search/gttX4Z1JyA/?page=1
【文献】 Sparkling Fruits Drink,Mintel GNPD[online],2014年,検索日2019.2.20,URL,https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2763193/from_search/gttX4Z1JyA/?page=1
【文献】 ”甘くない”すっきり炭酸「スーパーフルーツC」,伊藤園[online],2015年 7月 8日,検索日2019.2.20,URL,https://www.itoen.co.jp/news/detail/id=24433
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/84
A23L 33/00−33/29
FSTA/CAplus/WPIDS(STN)
Mintel GNPD
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アムラ由来のポリフェノール類を有効成分とする果汁含有発泡性飲料の果汁感増強方法であって、果汁含有量が1.0重量%〜30.0重量%であり、かつアムラ果実粉末、アムラ果実又はアムラエキスより選択される1以上を添加すると共に、前記アムラ果実粉末、アムラ果実又はアムラエキスに由来するポリフェノール類の含有量A(mg/100g)が0.63mg/100g≦A≦25.00mg/100gとなるように調整されることを特徴とする果汁含有発泡性飲料の果汁感増強方法。
【請求項2】
果汁が、リンゴ、オレンジ、ブドウから選択される1又は2以上の果汁であることを特徴とする請求項に記載の果汁含有発泡性飲料の果汁感増強方法。
【請求項3】
容器詰飲料であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の果汁含有発泡性飲料の果実感増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アムラ果実成分を含有する果汁含有発泡性飲料の果汁感増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
清涼飲料市場は近年拡大の一途をたどっており、果汁飲料、茶系飲料、コーヒー飲料、及び乳性飲料等、原料素材によって多岐に分類されている。
また、上述の飲料においては、飲料液中に炭酸ガスを含んだ発泡性飲料の形態でも多種多様な商品が流通している。
さらに近年では、単なる止渇目的や嗜好目的ではなく、各原料素材が有している所謂機能性成分に着目した飲料も開発されており、機能に応じた特定保健用食品としても提供されている。
また、昨今新たに導入された「機能性表示食品」制度もあって、生理活性機能を有する新たな原料開発競争が激しくなっている。
【0003】
果汁含有飲料においても、有効な生理活性機能を有する素材が多数使用された実績があり、生理活性機能を有する果実原料の一つとして、アムラが挙げられる。
アムラは、学名をフィランサス エンブリカ(Phyllanthus embilica)、別名をエンブリカ オフィシナリス(Emblica officinalis Gaertn)、英名をエンブリックミロバラン(Emblicmyrobalan)、インディアン グースベリー(Indiangooseberry)であって、和名としては、コミカソウ、ユカンまたはアンマロクなどと称され、トウダイグサ科エンブリカ属の落葉亜高木(中低木)である。
【0004】
アムラは、インドなどで薬草として用いられている。例えば、アーユルヴェーダでは重要な薬用植物とされ、その果実は、眼病、肺炎、貧血および細菌性赤痢などの処方に用いられている。アムラはさらに、その果汁および果実が滋養強壮に用いられており、また便秘、排尿障害、頭痛、不安、嘔吐、灼熱感などにも良いとされ、さらに記憶力や知性を向上させるとも言われている。また、このアムラの果汁および果実は、血清コレステロール低下作用、抗ウイルス作用、染色体異常防護作用、肝庇護作用、血糖低下作用、免疫調節作用、抗酸化作用(活性酸素消去作用)、抗菌作用、抗炎症作用、ヒアルロニダーゼ阻害作用、コラゲナーゼ阻害作用、チロシナーゼ阻害作用、メラニン生成抑制作用、エラスターゼ阻害作用、メイラード反応抑制作用などを有することも知られている。このように様々な効能を有するアムラ果汁およびアムラ果実抽出物は、有用性が非常に高い。
【0005】
しかし、アムラ果実の果汁(アムラ果汁)または果実抽出物を食品に応用する場合においては、これらが有する独特の強い渋味に起因する不快感が伴うことから、経口で直接有効量を摂取することは極めて困難であった。
【0006】
アムラの渋味を軽減する方法としては、例えば、アムラ果汁およびアムラ果実抽出物からなる群から選択される1種以上とコラーゲンペプチドを混合することによってアムラの渋味を低減する方法が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、特許文献1におけるコラーゲンペプチドとは、豚、牛、鶏などの骨または皮、あるいは魚の骨、皮または鱗に含まれるコラーゲンを、熱水抽出や加圧抽出などの抽出方法によって取り出し、次いで酸処理、アルカリ処理または酵素処理によって、加水分解して得られるコラーゲンペプチドが挙げられるが、特許文献1に係るコラーゲンペプチドは動物由来であるため、独特の臭気や、飲料に添加した場合の性状不安定等といった問題が生じる。
【0007】
また、アムラ以外の果汁を含有する飲料、特に、炭酸ガスを含む発泡性飲料にアムラ果実成分を、アムラ果実粉末やアムラエキス粉末等の形態で添加した場合、前記のように単純な苦渋味の問題のみならず、ベースとなる果汁の果汁感が弱くなるという別途の問題をも有していた。
【0008】
【特許文献1】特開2011−177119
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、アムラ果実成分を含有する果汁含有発泡性飲料において、アムラ由来の苦渋味を抑制して官能評価を良好にしつつ、飲用時における果汁感を増強しうる果汁含有発泡性飲料の果汁感増強方法を提供することにある。
【0010】
本発明者らは、飲料液中に含まれる、アムラ果実由来のポリフェノール量に着目し、該ポリフェノールの量を所定範囲に調整することによって、前記課題が解決され、果汁感を強く感じることができるという知見を得た。
更に、前記構成とすることによって果汁含有量が比較的低比率であっても、前記効果が顕著に得られるという別途の知見をも見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、
(1)
アムラ由来のポリフェノール類を有効成分とする果汁含有発泡性飲料の果汁感増強方法であって、前記アムラ由来のポリフェノール類の含有量A(mg/100g)が0.00mg/100g<A<60.00mg/100gとなるように調整されることを特徴とする果汁含有発泡性飲料の果汁感増強方法。
(2)
アムラ由来のポリフェノール類の含有量Aが0.32mg/100g≦A≦34.70mg/100gとなるように調整されることを特徴とする、1の果汁含有発泡性飲料の果汁感増強方法。
(3)
前記発泡性飲料における果汁含有量が1.0重量%〜45.0重量%であることを特徴とする、1又は2の果汁含有発泡性飲料の果汁感増強方法。
(4)
果汁が、リンゴ、オレンジ、ブドウから選択される1又は2以上の果汁であることを特徴とする1〜3いずれか1の果汁含有発泡性飲料の果汁感増強方法。
(5)
容器詰飲料であることを特徴とする1〜4いずれか1の果汁含有発泡性飲料の果汁感増強方法。
に関する。
【発明の効果】
【0012】
前記構成とすることにより、アムラ果実成分を含有する果汁含有発泡性飲料において、飲用時における果汁感を増強しうる果汁含有発泡性飲料の果汁感増強方法を提供すること可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の実施形態につき説明する。なお、本発明の範囲を逸脱しない範囲で実施形態を変更することも可能である。
【0014】
(アムラ果実成分)
前述の通り、アムラは、コミカソウ、ユカンまたはアンマロクなどとも称されるトウダイグサ科エンブリカ属の落葉亜高木(中低木)である。
本実施形態にあっては、アムラ果実成分は、アムラ果実ペースト、若しくは搾汁液、該搾汁液の乾燥物等、任意の形態とすることができる。
【0015】
(アムラ由来ポリフェノール)
アムラ由来のポリフェノールとしては、β‐グルカゴリン等が挙げられるが、本実施形態では、一般的なポリフェノールの定義に合致する成分(複数のフェノール性ヒドロキシ基を有する成分)の総量とする。
なお、本実施形態において使用するアムラは粉砕果実、果汁、粉末果実及び抽出エキス等の形態を選択することができる。
前述のアムラ由来のポリフェノール量は、例えば粉末形態の場合粉末果実重量に対し、約15重量%として計算した。
本実施形態にあっては、飲料液中の前記アムラ由来のポリフェノール類の含有量Aは、0.00mg/100g<A<60.00mg/100gであって、0.32mg/100g≦A≦34.70mg/100gであることがより望ましく。3.50mg/100g≦A≦25.00mg/100gであることが更に望ましい。
【0016】
(果汁)
本実施形態に係る果汁含有発泡性飲料には、任意の果汁を含むことができる。
配合し得る果汁の果実としては、例えば柑橘類果実(オレンジ、温州ミカン、レモン、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、ユズ、タンジェリン、テンプルオレンジ、タンジェロ、カラマンシー等)、リンゴ、ブドウ、モモ、パイナップル、グアバ、バナナ、マンゴー、カシス、ブルーベリー、アセロラ、プルーン、パパイヤ、パッションフルーツ、ウメ、ナシ、アンズ、ライチ、メロン、西洋ナシ、スモモ類等が挙げられる。
使用する果実の種類は1種類でもよいが、2種以上の果実から得た搾汁液を混合して用いてもよい。
本実施形態にあっては、果汁はリンゴ、オレンジ、ブドウから選択される1又は2以上の果汁であることが望ましく、特にリンゴ果汁が含まれることが好ましい。
また、飲料液中の果汁含有量は1.0〜45.0重量%であることが望ましく、1.0〜35.0重量%であることがより望ましく、5.0〜30.0重量%であることが更に望ましい。
【0017】
(甘味料)
甘味料としては、例えば砂糖、蔗糖、果糖ぶどう糖液糖、果糖、異性化糖、グルコース、フラクトース、トレハロース、ラクトース、キシロース、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムカリウム、キシリトール、D−ソルビトール、D−マンニトール等を挙げることができる。
【0018】
(その他の成分)
本実施形態に係る果汁含有発泡性飲料には、消費者の嗜好などに合せて各種添加物などの添加を排除するものではない。特に、果汁含有発泡性飲料が通常含有し得る成分、例えば、食塩、香辛料、酸味料、調味料、着色料などを適宜加えることを排除するものではない。また、各種食物繊維、各種甘味料、その他の成分を添加することもできる。
【0019】
食物繊維としては、例えば難消化性デキストリン、ペクチン、グアー豆酵素分解物、グアーガム、アガロース、グルコマンナン、ポリデキストロース、アルギン酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。また、不溶性食物繊維としては、例えばセルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサンなどが挙げられる。なかでも、製品の粘性や粒度、さらには透明性の観点から、難消化性デキストリン、ペクチンが好ましい。具体的には、難消化性デキストリンについてはその機能性を特に期待することができる。
前記食物繊維から選ばれる1種又は2種以上の食物繊維、特に添加型食物繊維は飲料全体に対して0.01〜4.0重量%、好ましくは0.01〜2.5重量%、さらに好ましくは0.03〜2.5重量%含有することができる。
【0020】
また、添加成分としては、飲料の呈味性に影響を与えない範囲で、前記難消化性デキストリンの他にも各種機能性原料を配合することができる。
機能性原料としては、原料由来として前述したものの他、モノグルコシルヘスペリジン、カテキン類、テアニン、リコピン等が挙げられる。
【0021】
その他の成分としては、本発明の効果を阻害するものでない限りにおいて添加することができる。例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料;酸化防止剤;炭酸水素ナトリウム(重曹)等のpH調整剤;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤;食物繊維、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナイアシン、パントテン酸等の強化剤;各種乳酸菌やこれを含む発酵乳等をさらに含有していてもよい。
【0022】
さらに、本実施形態に係る果汁含有発泡性飲料はアルコールを含まない非アルコール性飲料であるのが好ましいが、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、アルコール性飲料として提供することもでき。
また、ガスボリュームについても、通常流通している炭酸飲料のガスボリュームの範囲内であれば、任意に調整することが可能である。
【0023】
(容器)
本実施形態に係る果汁含有発泡性飲料は容器詰の形態で提供されることが望ましい。
容器形態は特に限定するものではなく、例えば金属缶(スチール缶、アルミニウム缶など)、PET容器、紙容器、壜等を挙げることができる。特に発泡性飲料であるという性質上、金属缶もしくはPET容器であることが望ましい。
【0024】
(RTD)
本実施形態に係る果汁含有発泡性飲料は、購入後にそのまま飲用することができるRTD(Ready To Drink)であることが、ユーザーの簡便性の観点から優れている。
【0025】
(糖度)
本実施形態に係る果汁含有発泡性飲料の糖度は、3.0以上が好ましく、3.0〜12.0がより好ましく、3.5〜11.0がさらに好ましく、3.5〜10.0が最も好ましい。
Brixの測定方法は、公知の方法を用いればよく、例えば光学屈折率計(アタゴ社製、Digital Refractometers、RX5000α−Bev)を用いることができる。
【0026】
(ビタミン類)
本実施形態に係る果汁含有発泡性飲料は、抗酸化作用を有するといわれるビタミンCを多く含むことが好ましい。
ビタミンC含有量は、飲料100mLあたり300mg以上であることが好ましく、300〜700mgであるのがより好ましく、300〜650mgであるのが特に好ましい。
【0027】
(ミネラル分)
本実施形態に係る果汁含有発泡性飲料は呈味性に影響を与えない範囲で、各種ミネラルを含有することができる。ミネラル分としてはナトリウム、カリウム、マグネシウム等を例示することができる。
【0028】
(pH)
本実施形態に係る果汁含有発泡性飲料のpHは、3.0〜4.0であるのが好ましく、3.0〜3.5であるのがより好ましく、3.1〜3.3であるのがさらに好ましい。pHの調整はアスコルビン酸類や重炭酸ナトリウムなどを用いる方法により調整することができる。
【実施例】
【0029】
以下、具体的事例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
1.実施例1(アムラ果実粉末添加量と果汁感増強効果の関係性試験)
最終濃度が表1に示す濃度になるように、アムラ果実粉末(サンアムラ100、太陽化学社製)及び、果汁、ビタミンCを添加した後、98℃40秒間の殺菌を行い、その後5℃まで冷却した果汁含有発泡性飲料を得た。得られた飲料原液に対して、ガスボリュームが2.5になるよう、純水と無添加炭酸水とによって規定量にメスアップした後、洗浄殺菌済みのPETボトルに充填した。
その後、コールドスポットで65℃10分が確保できる後殺菌を行い、容器詰発泡性飲料を得た(実施例試料1〜9、比較例試料1〜3)。それぞれの試料に官能評価した結果について、合わせて表1下段部に示した。
なお、果汁とは果実を洗浄後加熱処理し、種を除去した後遠心分離を行い得られた果汁を適宜濾過や濃縮等の処理を行ったものであり、果汁については、ストレート換算した値を記載した。
本実施例1及び後述の実施例2、及び3において、4種類の果実混合果汁とは、リンゴ、マンゴー、パッションフルーツ、カムカムの4種類の果実の果汁を17:5:2:1の割合で混合したものであって、これらの果汁の合計含有量を表1に示す割合に調整した。
【0031】
また、ビタミンC、ポリフェノール量、pH、糖度(Bx)、酸度、VC酸度、ガスボリュームを下記方法により分析、評価した結果を合わせて表1に記載した。
【0032】
本試験において分析する成分の分析方法は以下のとおりである。
<ビタミンC>
ビタミンC配合量は、飲料原料を配合した段階において測定した値であり、ビタミンCに包含されるL−アスコルビン酸、及びデヒドロアスコルビン酸の含有量をL−アスコルビン酸含有量に換算し、合計した値(総アスコルビン酸含有量)である。具体的には、DDT還元法によりサンプル中のデヒドロアスコルビン酸を還元処理してL−アスコルビン酸とし、高速液体クロマトグラフィー分析を行い、得られた値を総アスコルビン酸含有量とした。試験方法及び分析条件は以下の通りである。
分析条件
カラム:HITACHI LaChrom C18−PM(5μm)
(4.6mmI.D.×250mm)
溶離液:リン酸緩衝液(pH5.2)/CH3CN=90/10(v/v)
流量:0.8mL/min
カラム温度:40℃
検出:DAD260nm
注入量:10μL
【0033】
<ポリフェノール量>
タンニン酸を標準物質としてフォリン−デニス法を用いて求められる量をポリフェノール量とした。また、ポリフェノール量の測定は5℃で1週間保管後のサンプルを用いた。
【0034】
<pH>
堀場製作所F−52型・卓上pHメーターにて品温20度にて測定した。
【0035】
<糖度>
光学屈折率計(アタゴ社製、Digital Refractometers、RX5000α−Bev)を用いて、糖度を測定した。
【0036】
<酸度>
自動滴定装置(平沼産業株式会社製、COM−1750)を用い、0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液を使用した電位差滴定法に基づいて、クエン酸換算で算出した。
【0037】
<VC酸度/酸度>
酸度全体に対する、ビタミンCのみの酸度の割合比率である。VC酸度はビタミンCのクエン酸換算係数を0.365として算出した。
【0038】
<炭酸ガスボリューム>
JAS法に基づく検査方法に準拠し、以下のようにして炭酸ガス量を測定した。実施例試料1〜9、及び、比較例試料1〜3を恒温水槽に30分以上入れて静置して20℃に調整した後、サンプルを静かに取り出し、ガス内圧計を取り付けて、針先でキャップを穿孔し、一度活栓を開いてガス抜き(以下「スニフト」という。)し、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、ゲージの指針が一定の位置に達したときの値(MPa)を読み取り記録した。
【0039】
スニフトした後ガス内圧計を取り外し、開栓して温度計で液温を測定し記録した。測定して得たガス内圧力と液温を炭酸ガス吸収係数表に当てはめ、必要なガス内圧力の温度補正を行い、炭酸ガスボリュームを導いた。結果を表1に示す。
【0040】
<官能評価>
実施例試料1〜9、及び、比較例試料1〜3について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された7人のパネラーにより、5℃に冷却し1週間保管されたサンプル30mLを試飲することにより行った。
なお、評価は次に示す基準で、果汁風味、ボディ感・味の厚み、果汁感の違和感、後味の金属様風味の5項目に関し、5段階にて評価した。最も多かった評価を表1に示す。
【0041】
=果汁風味の評価=
5:非常に強く感じる
4:強く感じる
3:やや弱い
2:弱い
1:非常に弱く物足りない
【0042】
=ボディ感・味の厚みの評価=
5:非常に強く感じる
4:強く感じる
3:やや弱い
2:弱い
1:非常に弱く物足りない
【0043】
=果汁感の違和感の評価=
5:非常に弱い
4:弱い
3:やや感じる
2:強く感じる
1:非常に強く感じる
【0044】
=後味の金属様風味の評価=
5:非常に弱い
4:弱い
3:やや感じる
2:強く感じる
1:非常に強く感じる
【0045】
前記各項目についての評点合計値に基づき、総合評価を算出した。
=総合評価=
◎:合計値が18以上
○:合計値が14〜17
△:合計値が10〜13
×:合計値が9以下
【0046】
【表1】
【0047】
(結果)
アムラ由来ポリフェノールを0.32mg/100g〜34.7mg/100gに調整すると、果汁含有発泡性飲料における果汁の味の厚み(ボディ感)が増強されるとともに、果実感の違和感と後味の金属様風味があまりなかった。とりわけアムラ由来のポリフェノール量を3.5mg/100g〜25mg/100gに調整した実施例試料1〜6は極めて良好な風味を有する容器詰果汁含有発泡飲料であった。
【0048】
2.実施例2(各ポリフェノール含有素材の果汁感増強効果の評価)
容器詰発泡性飲料における最終濃度が表2に示す濃度になるように、4種類の果実混合果汁及び、ビタミンCを添加し、更にポリフェノール量が17〜18mg/100gになるようにアムラ果実粉末(サンアムラ100、太陽化学社製)または、アムラ以外の各素材由来のポリフェノールを添加した。その後、98℃40秒間の殺菌を行い、その後5℃まで冷却した。得られた飲料原液に対して、ガスボリュームが2.5になるよう、純水と無添加炭酸水とによって規定量にメスアップした後、洗浄殺菌済みのPETボトルに充填した。その後、コールドスポットで65℃10分が確保できる後殺菌を行い、容器詰炭酸飲料を得た(実施例試料10、比較例試料4、5)。下記方法により評価した結果を合わせて表2に示す。なお、果汁とは果実を洗浄後加熱処理し、種を除去した後遠心分離を行い得られた果汁を適宜濾過や濃縮等の処理を行ったものであり、果汁については、ストレート換算した値を記載する。
【0049】
また、表2に示す通りの配合割合にて調整した前記試作品における、ビタミンC、ガスボリューム、ポリフェノール量を下記方法により分析、評価した結果を合わせて表2に示す。
【0050】
本試験において分析する成分の分析方法は実施例1と同様である。
【0051】
<官能評価>
実施例試料10及び比較例試料4、5について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された7人のパネラーにより、5℃に冷却し1週間保管されたサンプル30mLを試飲することにより行った。次に示す基準で、5段階にて評価した。最も多かった評価を表2に示す。
【0052】
=果汁風味の評価=
◎:果汁感・ボディ感があり、後味の違和感・苦味がなく、極めて良好。
○:果汁感・ボディ感がややあり、後味の違和感・苦味があまりなく、良好。
△:果汁感・ボディ感がやや弱く、後味の違和感・苦味もややあり、あまり良くない。
×:果汁感・ボディ感が弱く、後味の違和感・苦味もあり、問題あり。
【0053】
【表2】
【0054】
(結果)
飲料液中のポリフェノールは、アムラ以外の果実などに由来するポリフェノールを含有させた場合、他の違和感や苦味が残るものであった。アムラ由来ポリフェノールを添加した実施例試料10は色調の変化がなく、香味も極めて良好なものであった。
【0055】
3.実施例3(ベース果汁の種類及び配合量による果汁感増強効果の評価)
容器詰発泡性飲料における最終濃度が表3に示す濃度になるように、果汁及び、ビタミンC、アムラ果実粉末(サンアムラ100、太陽化学社製)を添加した後、98℃40秒間の殺菌を行い、その後5℃まで冷却した。得られた飲料原液に対して、ガスボリュームが2.5になるよう、純水と無添加炭酸水とによって規定量にメスアップした後、洗浄殺菌済みのPETボトルに充填した。その後、コールドスポットで65℃10分が確保できる後殺菌を行い、容器詰発泡性飲料を得た(実施例試料11〜18、比較例試料6)。下記方法により評価した結果を合わせて表3に示す。なお、果汁とは果実を洗浄後加熱処理し、種を除去した後遠心分離を行い得られた果汁を適宜濾過や濃縮等の処理を行ったものであり、果汁については、ストレート換算した値を記載する。
【0056】
また、表3に示す通りの配合割合にて調整した前記試作品における、pH、糖度(Bx)、酸度、VC酸度、ガスボリュームを下記方法により分析、評価した結果を合わせて表3に示す。
【0057】
本試験において分析する成分の分析方法は実施例1と同様である。
【0058】
<官能評価>
実施例試料11〜18、及び比較例試料6について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された7人のパネラーにより、5℃に冷却し1週間保管されたサンプル30mLを試飲することにより行った。次に示す基準で、5段階にて評価した。最も多かった評価を表3に示す。
【0059】
=果汁風味の評価=
◎:果汁感・ボディ感があり、後味の違和感・苦味がなく、極めて良好。
○:果汁感・ボディ感がややあり、後味の違和感・苦味があまりなく、良好。
△:果汁感・ボディ感がやや弱く、後味の違和感・苦味もややあり、あまり良くない。
×:果汁感・ボディ感が弱く、後味の違和感・苦味もあり、問題あり。
【0060】
【表3】
【0061】
(結果)
果汁の種類に限らず、適性量のアムラ由来ポリフェノールを添加することで、果汁含有発泡性飲料における果汁感が増強されるとともに、果実感の違和感や、後味の金属様風味をあまり感じなかった。また、その効果は果汁配合量が1〜45重量%であり、とりわけ、果汁にリンゴ果汁を使用し、配合量を15重量%前後にした場合に効果が大きく、無果汁の場合は果汁感の増強効果は見られなかった。
【0062】
4.実施例4(アムラ素材の形態による果汁感増強効果の確認)
容器詰発泡性飲料における最終濃度が表4に示す濃度になるように、4種類の果実混合果汁及び、ビタミンCを添加し、更にアムラ由来ポリフェノール量が3.5mg/100gになるように各形態のアムラ素材を添加した。その後、98℃40秒間の殺菌を行い、その後5℃まで冷却した。得られた飲料原液に対して、ガスボリュームが2.5になるよう、純水と無添加炭酸水とによって規定量にメスアップした後、洗浄殺菌済みのPETボトルに充填した。その後、コールドスポットで65℃10分が確保できる後殺菌を行い、容器詰発泡性飲料を得た(実施例試料19、20、比較例試料7)。下記方法により評価した結果を合わせて表4に示す。なお、果汁とは果実を洗浄後加熱処理し、種を除去した後遠心分離を行い得られた果汁を適宜濾過や濃縮等の処理を行ったものであり、果汁については、ストレート換算した値を記載する。
【0063】
また、表4に示す通りの配合割合にて調整した前記試作品における、ビタミンC、ガスボリューム、ポリフェノール量を下記方法により分析、評価した結果を合わせて表4に示す。
【0064】
本試験において分析する成分の分析方法は実施例1と同様である。
【0065】
<官能評価>
実施例試料19、20及び比較例試料7について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された7人のパネラーにより、5℃に冷却し1週間保管されたサンプル30mLを試飲することにより行った。次に示す基準で、2段階にて評価した。最も多かった評価を表4に示す。
【0066】
=果汁風味の評価=
○:果汁感・ボディ感があり、後味の違和感・苦味がなく、良好。
×:果汁感・ボディ感が弱く、後味の違和感・苦味もあり、問題あり。
【0067】
【表4】
【0068】
(結果)
アムラ素材の形態に関係なく、アムラ由来のポリフェノールを含有する素材を添加することで果汁感が増強されるとともに、果実感の違和感と後味の金属様風味があまりない良好な香味を有する容器詰果汁含有発泡飲料が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明はアムラ果実成分を含有する果汁含有発泡性飲料において、飲用時における果汁感を増強し、且つ後味の果実感の違和感や金属風味を低減した果汁含有発泡性飲料の果汁感増強方法に利用することができる。