(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
接近及び離反可能な第1成形型及び第2成形型と、前記第1成形型及び前記第2成形型にそれぞれ設けられ、かつ、ワークをせん断して製品と不要部とに分離する成形カッタと、を有するプレス加工機であって、
前記第1成形型に動力を伝達することにより、前記前記第1成形型を前記第2成形型に対して接近及び離反させる駆動機構と、
前記第1成形型に設けた複数の第1スクラップカッタと、
前記第2成形型に設けられ、前記第1成形型と前記第2成形型とが接近する行程で、複数の前記第1スクラップカッタと協働して前記不要部を複数のピースに分断する複数の第2スクラップカッタと、
前記第1成形型と前記第2成形型とが離反する行程で、前記第2スクラップカッタに載っている前記ピースに接触し、かつ、前記ピースを前記第2スクラップカッタから落下させる除去機構と、
を有し、
前記除去機構は、前記駆動機構から前記第1成形型に伝達される動力で、前記第1成形型と共に上下方向に移動し、
前記除去機構は、支持軸を中心として回動可能なアームを有し、
前記アームは、前記第1成形型が前記第2成形型に対して接近する行程で回動して前記ワークの下方に進入し、
前記アームは、前記第1成形型が前記第2成形型から離反する行程で前記ピースに接触し、かつ、前記ピースを持ち上げて前記第2スクラップカッタから落下させ、
前記第1成形型が前記第2成形型に対して接近する行程で、前記アームを前記ワークの側方から前記ワークの下方へ移動させる移動機構を備え、
前記移動機構は、前記アームを前記支持軸を中心として回動させ、かつ、前記アームを前記ワークの側方から前記ワークの下方へ移動させるカム機構を含む、プレス加工機。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1(A)に示すプレス加工機10は、鋼鈑等のワーク11を仮想線S1に沿って切断、具体的にはせん断して製品12を得るとともに、仮想線S1の外側に位置する不要部、すなわち、スクラップ13を除去するトリミング工程と、スクラップ13を複数個のピースに分断する分断工程と、を実施する金型である。プレス加工機10の平面視で、仮想線S1は環状である。製品12は、車体を構成する部品、例えば、フード、ラッケージドア、ドアパネル、フェンダ等が挙げられ、特に限定されない。除去されるスクラップ13は環状である。
【0024】
プレス加工機10は、
図1(B)のように上型14及び下型15を有する。上型14は垂直方向、つまり上下方向で下型15の上方に配置されており、上型14と下型15とは、互いに上下方向に相対移動可能、具体的には、接近及び離反可能である。上型14は、上ホルダを介してスライドにより支持されている。また、下型は、下ホルダを介してボルスタに固定されている。
【0025】
そして、スライド及び上ホルダを介して、上型14を上下方向に動作させる駆動機構57が設けられている。駆動機構57は、モータと、モータの回転力を上型14の下降力及び上昇力に変換するクランク機構と、を備えている。また、駆動機構57は、上型14を上下方向に動作させる油圧シリンダであってもよい。なお、上ホルダには、スプリングを介してワーク固定用のパッドが設けられている。上型14が駆動機構57から伝達される動力で下降すると、上型14は下型15に接近し、上型14が駆動機構57から伝達される動力で上昇すると、上型14は下型15から離反する。
【0026】
上型14には、ワーク11をせん断する第1成形カッタ16が複数固定されている。複数の第1成形カッタ16はそれぞれ長尺形状であり、複数の第1成形カッタ16は、長手方向に沿ってエッジ16Aをそれぞれ有する。プレス加工機10の平面視で、複数の第1成形カッタ16におけるエッジ16Aの全体形状は、得ようとする製品12の外周形状に沿っている。また、複数の第1成形カッタ16は、長手方向の両端に第1エッジ18をそれぞれ有する。
【0027】
さらに、上型14に第1スクラップカッタ17が固定されている。第1スクラップカッタ17は、第1成形カッタ16よりも外側に突出している。第1スクラップカッタ17は、
図1(A)のように、得ようとする製品12の外周形状に沿って、間隔をおいて複数配置されている。第1スクラップカッタ17は、
図3のように、第2エッジ19及び第3エッジ20を有する。第1スクラップカッタ17が上型14から側方に突出した方向、つまり、上型14の内外方向で、第2エッジ19は第1エッジ18と第3エッジ20との間に配置されている。上型14の内外方向で、第1エッジ18は第2エッジ19よりも内側に配置されている。第1エッジ18は、第2エッジ19及び第3エッジ20よりも上に配置されている。
図3では、第1エッジ18及び第2エッジ19が直線状である例を示す。
【0028】
下型15は、ブロック37と、ブロック37の上部に形成した支持面21と、ブロック37に設けられて支持面21に連続する外周面22と、ブロック37に設けた第2成形カッタ23と、ブロック37の周りに設けた排出面40と、を有する。外周面22は垂直であり、排出面40は水平面に対して傾斜している。第2成形カッタ23は、得ようとする製品12の外周形状に沿って環状に配置されている。第2成形カッタ23は、支持面21と外周面22との境界に位置するエッジである。プレス加工機10の平面視で、第2成形カッタ23は、第1成形カッタ16と近似する形状を有する。プレス加工機10の平面視で、第2成形カッタ23は、第1成形カッタ16よりも内側に配置されている。
【0029】
また、下型15の外周面22に第2スクラップカッタ24が固定されている。第2スクラップカッタ24は金属製であり、第2スクラップカッタ24は、外周面22に間隔をおいて複数配置されている。第1スクラップカッタ17の数と、第2スクラップカッタ24の数とは同じである。1個の第1スクラップカッタ17と、1個の第2スクラップカッタ24とが協働して、環状のスクラップ13を内外方向にせん断する。
【0030】
第2スクラップカッタ24の上部に、第4エッジ25〜第6エッジ27が設けられている。下型15の内外方向、つまり、ブロック37に対して第2スクラップカッタ24が突出した方向で、第5エッジ26は第4エッジ25と第6エッジ27との間に配置されている。下型15の内外方向で、第4エッジ25は第5エッジ26よりも内側に配置されている。第4エッジ25は第5エッジ26よりも上に配置されており、第6エッジ27は第5エッジ26よりも下に配置されている。第4エッジ25は、支持面21に連続しており、かつ、同一平面を構成する。第4エッジ25は、第5エッジ26に近づくほど低くなる向きで傾斜している。第4エッジ25〜第6エッジ27は共に直線状であり、第4エッジ25及び第6エッジ27は、下型15の外周面22に対する鋭角側の傾斜角度が同じである。
【0031】
第2スクラップカッタ24は、
図4のように、互いに平行な2つの側面28,29を有する。2つの側面28,29は共に垂直であり、第2スクラップカッタ24の上端と、側面28とを連続する傾斜面30が設けられている。側面29の最大高さは、側面28の最大高さよりも大きい。下型15の側面視で、傾斜面30は、側面28,29に対して傾斜している。複数の第2スクラップカッタ24のうち、得ようとする製品12の外周形状に沿った方向で、隣に位置する2個、つまり、1組の第2スクラップカッタ24は、互いに側面28同士が向き合っている。1組の第2スクラップカッタ24においては、プレス加工機10の平面視で、2つの側面29の間に2つの側面28が配置されている。このため、2つの傾斜面30同士の間隔は、第2スクラップカッタ24の下方であるほど、狭くなっている。このように、第2成形カッタ23の周方向で、1組の第2スクラップカッタ24は、2個の第1スクラップカッタ17の間に配置されている。
【0032】
そして、
図1(A)のように、プレス加工機10の平面視で、下型15に載せるワーク11の外側に、2つの除去機構31が設けられている。
図1(B)のように、プレス加工機10の正面視で、第2スクラップカッタ24の間に、2つの除去機構31が設けられている。上型14は、下型15に向けて突出したマウント15Aを有する。マウント15Aは、プレス加工機10の平面視でワーク11の外側に配置されている。また、マウント15Aは、プレス加工機10の正面視で、2つの側面28の間に配置されている。2つの除去機構31は、共にマウント15Aに取り付けられている。
【0033】
2つの除去機構31は、第1スクラップカッタ17の下方に配置されている。2つの除去機構31の構成は同じであり、2つ除去機構31は、上型14と共に上昇、下降及び停止する。以下、除去機構31の実施の形態を順次説明する。
【0034】
(実施の形態1)
除去機構31の実施の形態1を、
図1〜
図11を参照して説明する。なお、
図2〜
図11では、マウント15Aの図示を省略してある。2つの除去機構31は、側面28同士が対向して配置されている1組の第2スクラップカッタ24の間に設けられている。除去機構31は、マウント15Aに固定された支持部32と、支持部32に支持軸33を介して回動可能に取り付けたアーム34と、アーム34の回動範囲を規制するストッパ36と、を有する。アーム34は金属製であり、スクラップ13を切断したピースを支持する剛性を備えている。
【0035】
支持部32は、マウント15Aに固定されている。支持部32は、プレス加工機10の平面視で、第1スクラップカッタ17が上型14から突出した方向において、ワーク11が下型15に載せられる領域の外に配置されている。第1スクラップカッタ17が上型14から突出した方向において、ストッパ36は支持軸33と第1成形カッタ16との間に配置されている。
【0036】
また、アーム34はワーク11に接触する支持面41と、支持面41と平行な下面(倣い面)34Aと、を有する。支持面41は平坦であり、アーム34の上方に向けられている。下面34Aは平坦であり、アーム34の下方に向けられている。第1スクラップカッタ17が上型14に対して突出した方向において、支持面41の端部42は、上型14と支持軸33との間に配置されている。ストッパ36はアーム34よりも下方に配置され、アーム34の一部がストッパ36に接触する。
【0037】
プレス加工機10の平面視で、アーム34の一部は、第1スクラップカッタ17が上型14から側方へ突出した方向において、ワーク11が下型15に載せられる領域内に配置され、アーム34の一部は、ワーク11が下型15に載せられる領域外に配置されている。アーム34が支持軸33に取り付けられた状態で、アーム34の重心G1が示されている。重心G1は、第1スクラップカッタ17が上型14に対して突出した方向において、第1成形カッタ16と支持軸33との間、具体的には、第1成形カッタ16と支持軸33の中心線Q1との間に配置されている。
【0038】
次に、プレス加工機10でワーク11を打ち抜き、製品12を得る工程を説明する。ワーク11を下型15の支持面21に載せる前の段階では、
図3及び
図4のように、アーム34は第2スクラップカッタ24の上端よりも上に位置する。また、アーム34は自重により支持軸33を中心として時計回りに付勢され、アーム34はストッパ36に接触して停止している。
【0039】
そして、ワーク11が、下型15の支持面21及び第2スクラップカッタ24の上に載せられた後、上型14及び除去機構31が上死点から下降すると、
図5ように、アーム34の下面34Aがワーク11の外周端に接触する。さらに、上型14及び除去機構31が下降すると、アーム34は支持軸33を中心として、
図5で反時計回りに回動し、アーム34はストッパ36から離れる。上型14及び除去機構31が下降中、アーム34の重心G1は、第1成形カッタ16と支持軸33の中心線Q1との間にある。このため、アーム34の下面34Aは、ワーク11の外周端に接触した状態で擦れる。
【0040】
さらに、上型14及び除去機構31が下降して、アーム34の端部42がワーク11の外周端よりも下に移動すると、アーム34は、自重で支持軸33を中心として
図5で時計回りに回動し、
図6で二点鎖線で示すように、端部42がワーク11の真下へ進入する。そして、アーム34は、
図6に実線で示すようにストッパ36に接触して停止する。
【0041】
また、端部42がワーク11の真下へ進入する動作と同時、または、端部42がワーク11の真下へ進入した後に、
図6及び
図7のように、第1成形カッタ16及び第2成形カッタ23からワーク11の仮想線S1にせん断力が加わる。このようにして、ワーク11から製品12が打ち抜かれ、かつ、環状のスクラップ13がトリミングされる。また、環状のスクラップ13は、第1スクラップカッタ17及び第2スクラップカッタ24から加わるせん断力により、周方向の複数箇所でせん断され、複数のピース38,39に分離される。なお、ワーク11から製品12が打ち抜かれ、かつ、スクラップ13をピース38,39に分離する工程が完了すると、上型14及び除去機構31は、
図3に示す下死点で停止する。
【0042】
スクラップ13を複数のピース38,39に分断した時点において、1組の第2スクラップカッタ24の上に載っていないピース38は、
図7のように自重で落下する。自重で落下したピース38は、排出面40上を滑って排出れる。一方、
図7のように、傾斜面30が対向している1組の第2スクラップカッタ24により、両端が支持されているピース39は、自重で落下しない可能性がある。
【0043】
製品12を得た後、上型14及び除去機構31が下死点から上昇すると、
図8及び
図9のように、1組の第2スクラップカッタ24に載っているピース39の下面に、アーム34が接触する。つまり、アーム34は、ストッパ36に接触して停止している状態で、ピース38を支持する。また、アーム34の支持面41は水平面に対して傾斜している。支持面41は、端部42から支持軸33に近づくことに伴い、低くなる向きで傾斜している。また、
図8のように、ピース38の重心G1は、支持面41に沿った方向で、端部42と中心線Q1との間に位置する。
【0044】
このため、上型14及び除去機構31が更に上昇して、ピース39の両端が1組の第2スクラップカッタ24の上端から離れると、ピース38は端部42を支点としてシーソー状に反時計回りに回動し、支持面41に密着する。そして、
図10及び
図11のように、ピース38はアーム34の支持面41に沿って自重で滑り、ピース38は排出面40に落下する。つまり、支持面41は滑り台の役割を果たす。その後、上型14及び除去機構31は、元の位置、つまり、
図3及び
図4で示す上死点に戻り停止する。
【0045】
本実施形態のプレス加工機10は、傾斜面30が対向するように1組の第2スクラップカッタ24が配置されていても、スクラップ13をピース38,39に分断する工程が完了した後、上型14及び除去機構31が上昇する行程、つまり、上型14が下型15から離反する行程で、アーム34がピース39を1組の第2スクラップカッタ24から持ち上げ、ピース39が自重でアーム34から落下する。このため、傾斜面30が対向するように配置されている1組の第2スクラップカッタ24に載っているピース39を落下させることができる。したがって、ピース39を1組の第2スクラップカッタ24から落下させる専用の工程は不要であり、工数増加を抑制できる。
【0046】
また、除去機構31は、駆動機構57から上型14に伝達される動力で下降及び上昇し、ピース39を1組の第2スクラップカッタ24から持ち上げ、かつ、落下させる。したがって、除去機構31を上昇及び下降するために専用のアクチュエータもしくは動力源を設けずに済む。さらに、ピース39は自重でアーム34の支持面41に沿って滑り落ちるため、ピース39をアーム34から落下させるためのタイミングを制御せずに済む。
【0047】
次に、実施の形態1の除去機構31の変更例を、
図12を参照して説明する。
図12に示す除去機構31は、弾性部材43を有する。弾性部材43は、金属製の引っ張りバネであり、アーム34に支持ピン44が設けられ、支持部32に支持ピン45が設けられている。弾性部材43の第1端部は支持ピン44に取り付けられ、弾性部材43の第2端部は支持ピン45に取り付けられている。弾性部材43は、弾性力でアーム34を時計回りに付勢する。
【0048】
アーム34がストッパ36に接触して停止した状態で、支持ピン44は、第2スクラップカッタ24の突出方向で、支持軸33の中心線Q1と第1スクラップカッタ17との間に位置する。
図12に示すその他の構成は、
図1〜
図11に示す構成と同じである。
図12の除去機構31を有するプレス加工機10は、ワーク11をせん断する工程で、上型14と共に除去機構31が下降して、アーム34の下面34Aがワーク11の外周部に接触すると、アーム34は、弾性部材43の力に抗して
図12で反時計回りに回動する。
【0049】
アーム34が
図12で反時計回りに回動した場合も、支持ピン44は、第2スクラップカッタ24の突出方向で、支持軸33の中心線Q1と第1スクラップカッタ17との間に位置する。このため、弾性部材43は、アーム34に時計回りの回動力を常に与える。上型14及び除去機構31が、
図3と同様に上死点で停止していると、アーム34はワーク11に接触しない。
【0050】
上型14及び除去機構31が上死点から下降すると、アーム34がワーク11の外周部に接触し、かつ、アーム34は弾性部材43の弾性力に抗して
図12で反時計回りに回動する。上型14及び除去機構31が更に下降して、アーム34がワーク11の外周部から離れると、アーム34は弾性部材43の付勢力で時計回りに回動し、アーム34の端部42は、
図12に二点鎖線で示すように、ワーク11の真下へ進入し、アーム34はストッパ36に接触して停止する。その後、ワーク11がせん断されて製品12とスクラップ13とが分離され、かつ、スクラップ13がピース38とピース39とに分離され、上型14及び除去機構31が下死点で停止する。
【0051】
なお、
図12に示す除去機構31が上死点から上昇する行程で、アーム34がピース39を第2スクラップカッタ24から落下させる作用は、前述と同じである。したがって、
図12の除去機構31を有するプレス加工機10は、前述と同じ効果を得ることができる。
【0052】
(実施の形態2)
次に、除去機構31の実施の形態2を、
図13〜
図17を参照して説明する。
図13〜17において、
図1〜
図11と同じ構成については、
図1〜
図11と同じ符号を付してある。
図13及び
図14において、アーム34の重心G1は、第1スクラップカッタ17の突出方向で、常に、中心線Q1と第1スクラップカッタ17との間にある。つまり、アーム34は、
図13及び
図14において支持軸33を中心として自重で時計回りに付勢される。
【0053】
除去機構31は、アーム34に設けたピン46と、下型15に設けたガイド部材47と、を有する。ピン46及びガイド部材47は、共に金属製である。ガイド部材47は、2つの除去機構31に対応してそれぞれ設けられている。ガイド部材47は、プレス加工機10の平面視で、第1スクラップカッタ17同士の間に配置されている。
【0054】
ピン46及びガイド部材47は、除去機構31が上昇する行程及び下降する行程で、アーム34を支持軸33を中心として回動させる機構である。言い換えると、ピン46及びガイド部材47は、アーム34の端部42を、除去機構31の高さの変位に応じて、第1スクラップカッタ17の突出方向に変位させる機構である。
【0055】
アーム34は、
図15のようにガイド孔48を有する。ガイド孔48は長孔であり、水平方向が長軸となっている。ピン46はガイド孔48内で水平方向にスライド可能である。つまり、ピン46は、支持軸33の中心線Q1方向にスライド可能である。また、ピン46の先端に球状の接触子49が設けられている。
【0056】
ガイド部材47は、高さ方向に長尺状に設けられている。ガイド部材47は、プレス加工機10の平面視で、支持部32とブロック37との間に設けられている。ガイド部材47は、
図16(A),(B)のように、互いに間隔をおいて配置したレール50,51と、レール50とレール51との間に設けた溝52と、を有する。レール50,51及び溝52は、上下方向に沿って配置されており、レール50,51は、中心線Q1方向に間隔をおいて配置されている。溝52の深さ方向は、第2スクラップカッタ24が下型15に対して突出する方向と同じである。つまり、溝52の深さ方向は、
図13の左右方向である。
【0057】
レール50は、直線部50A,50B及び傾斜部50Cを有する。直線部50Aは直線部50Bよりも長く、直線部50Aと直線部50Bとは、中心線Q1方向で異なる位置に配置されている。直線部50Aは直線部50Bよりも上に配置され、傾斜部50Cは、直線部50Aと直線部50Bとを接続している。傾斜部50Cは垂直方向に対して傾斜している。
【0058】
レール51は、直線部51A,51B及び傾斜部51Cを有する。直線部51Aは直線部51Bよりも短く、直線部51Aと直線部51Bとは、中心線Q1方向で異なる位置に配置されている。直線部51Aは直線部51Bよりも上に配置され、傾斜部51Cは、直線部51Aと直線部51Bとを接続している。傾斜部51Cは垂直方向に対して傾斜している。
【0059】
また、溝52に上下方向の壁53が設けられ、溝52内を第1通路54と第2通路55とに区画している。壁53は、直線部50Aと直線部51Bとの間に配置されている。壁53は、高さ方向で傾斜部50Cと傾斜部51Cとの間に配置されている。つまり、壁53は、溝52の長手方向で中央部分に配置されている。第1通路54及び第2通路55は、中心線Q1方向に並べて配置されている。ガイド部材47は、高さ方向の全域に亘って溝52を形成する底面56を有する。
【0060】
溝52は、
図17(A)のように、直線部50Aと直線部51Aとの間の上部領域M1が浅く、上部領域M1の下方に第1通路54がつながる。溝52は、直線部50Bと直線部51Bとの間に形成された下部領域M2を有し、第1通路54の下に下部領域M2がつながっている。第1通路54の下方部分と、下部領域M2とは、同じ深さである。第1通路54は、下部領域M2に近づくことに伴い、徐々に深くなっている。
【0061】
第2通路55は、下部領域M2につながっており、第2通路55の下方部分の深さは、下部領域M2と同じである。第2通路55の上方部分は、
図17(B)のように、上部領域M1に近くことに伴い、徐々に浅くなっている。
【0062】
このように、溝52の底面56は、第2スクラップカッタ24が下型15に対して突出する方向に変位している。また、アーム34は、
図13において自重で時計回りに付勢されているため、除去機構31の高さ方向の位置に関わりなく、アーム34の接触子49は、
図17のように、ガイド部材47の底面56に常時接触する。
【0063】
次に、実施の形態2の除去機構31を有するプレス加工機10の動作を説明する。上型14及び除去機構31が、
図13(A)のように上死点で停止していると、ピン46の接触子49は、
図16(A)及び
図17(A)のように、上部領域M1で底面56に接触する。上型14及び除去機構31が上死点から下降すると、接触子49は底面56に沿って滑りながら下降する。上部領域M1は深さが一定であるため、接触子49が上部領域M1を移動している間、アーム34はストッパ36に接触して停止している。つまり、上型14及び除去機構31の下降中、
図13(B)に二点鎖線で示すように、アーム34がワーク11の外周部から離れている。
【0064】
上型14及び除去機構31がさらに下降すると、接触子49が第1通路54に至る。第1通路54から下部領域M2に近づくことに伴い、溝52は、
図17(A)のように徐々に深くなっている。このため、アーム34は、
図13で時計回りに自重で回動し、アーム34の端部42が、ワーク11の真下へ進入する。そして、上型14及び除去機構31がさらに下降してワーク11がせん断されて製品12とスクラップ13とに分離され、かつ、スクラップ13がピース38とピース39とに分断される。
【0065】
その後、上型14及び除去機構31が、
図13(B)に実線で示すように下死点で停止すると、接触子49は
図17(A)のように下部領域M2で底面56に接触し、かつ、アーム34は停止する。
【0066】
一方、上型14及び除去機構31が下死点から上昇すると、
図14(A)のように、アーム34の端部42がピース39の下面に接触するとともに、接触子49は、下部領域M2から第2通路55に移動する。
図17(B)のように、第2通路55は上部領域M1に近づくほど徐々に浅くなっている。このため、アーム34は、
図14(A)で反時計回りに回動し、かつ、
図14(B)のように、ピース39はアーム34の支持面41に沿って自重で滑り、アーム34から落下する。そして、上型14及び除去機構31が、
図13(A)のように上死点に到達して停止すると、接触子49は、
図17(B)のように上部領域M1で底面56に接触した状態になり、アーム34が停止する。
【0067】
このように、実施の形態2の除去機構31を有するプレス加工機10においても、第2スクラップカッタ24に載っているピース39は、上型14が下型15から離反する行程でアーム34により持ち上げられ、かつ、自重でアーム34の支持面41に沿って滑り落ちる。したがって、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、アーム34の回動作用は、ガイド部材47及びピン46によって規制される。つまり、ガイド部材47の底面56は、カム機構の役割を果たす。このため、上型14の下降中にアーム34がワーク11の外周部に接触することを、確実に防止できる。
【0068】
本実施形態で説明した事項と、本発明の構成との対応関係を説明すると、上型14が、本発明の第1成形型に相当し、下型15が、本発明の第2成形型に相当し、第1成形カッタ16及び第2成形カッタ23が、本発明の成形カッタに相当し、第1スクラップカッタ17が、本発明の第1スクラップカッタに相当し、第2スクラップカッタ24が、本発明の第2スクラップカッタに相当する。
【0069】
また、除去機構31が、本発明の除去機構に相当し、傾斜面30が、本発明の傾斜面に相当し、駆動機構57が、本発明の駆動機構に相当し、アーム34が、本発明のアームに相当する。さらに、支持軸33及び自重で回動するアーム34が、本発明の移動機構に相当し、弾性部材43が、本発明の移動機構及び弾性部材に相当し、ガイド部材47が、本発明の移動機構及びカム機構に相当する。
【0070】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、2つの除去機構31は、1組の第2スクラップカッタ24の片側に設ける構造、または、2つの除去機構31は、1組の第2スクラップカッタ24の両側にそれぞれ設ける構造でもよい。つまり、1つの除去機構31を、第2スクラップカッタ24の側面28及び側面29の両側に設けることである。
【0071】
また、本発明の弾性部材は、金属製の引っ張りバネに代えて、金属製の渦巻きコイルバネを用いることも可能である。また、アームに設ける支持面は、平坦面、湾曲面の他、凹凸があってもよい。また、支持部は、ピースに対して点接触する構造、または面接触する構造の何れでもよい。さらに、接触子は、ガイド部材に沿って滑る構造の他、ガイド部材に沿って転動する構造を含む。さらに、本発明のプレス加工機は、製品の外周部全体に沿って環状のスクラップをトリミングするものの他、製品の外周部の一部から、長尺状のスクラップをトリミングするものを含む。
【0072】
さらに、本発明のプレス加工機は、第1成形型及び第2成形型が、駆動機構の動力で共に上下方向に移動可能な構造を含む。本発明のプレス加工機は、第2成形型が、駆動機構の動力で上下方向に移動可能であり、かつ、第1成形型が上下方向に動かない構造を含む。さらに、実施の形態2の除去機構の変更例において、アームに設けたピンを中心線方向に移動しない構造とし、ガイド部材を中心線方向に移動する構造としてもよい。
【0073】
また、実施形態に記載されたプレス加工機により、ワークをせん断して製品を得るとともに、スクラップを分断する工程は、プレス加工方法として把握することもできる。つまり、各請求項に記載されたプレス加工機は、それぞれプレス加工方法に置き換えることも可能である。