(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キッチン等の警報システムの設置領域では、調理器による正常な加熱調理時に発生する煙及び熱やタバコの煙などのように、火災などの異常状態が発生していない通常時でも煙や熱などの環境状態が変化する場合がある。そのため、警報システムにおいて、異常判定部による異常状態に対する判定態様は、通常、異常状態以外の要因での環境状態の変化に対しては異常状態が発生したとの誤判定を回避しつつ、異常状態を正確に判定できるものに設定されている。
例えば、異常判定部において、火災センサ部の出力に対する異常状態が発生したか否かの閾値である火災判定閾値は、通常時に発生する煙や熱に対応する領域に対し、誤判定回避のための余裕を見込んだ高い値に設定されている。これにより、調理器の状態に起因して火災等の異常状態が実際に発生した場合には、その異常状態の発生を判定するまでに時間遅れが生じるという問題がある。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、調理器に対して設置される警報システムにおいて、調理器に起因する異常状態の発生を迅速且つ正確に判定することができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、調理器の外部環境状態を検知するセンサ部と、
前記センサ部の出力に基づいて異常状態の発生を判定する異常判定部と、を備え、
前記異常判定部の判定結果に基づいて警報を出力する警報システムであって、
前記調理器との間で通信可能な通信部と、
前記通信部を介して前記調理器の状態に関する情報を調理器状態情報として取得する情報取得部と、
前記情報取得部で取得した前記調理器状態情報に基づいて前記異常判定部における前記異常状態に対する判定態様を変更する判定態様変更部と、を備え
、
前記情報取得部は、前記通信部を介して前記調理器で計測された加熱温度を前記調理器状態情報として取得し、
前記判定態様変更部は、前記加熱温度が所定の変更用温度未満の場合には前記異常状態の発生に対する判定感度を低温時感度に設定し、前記加熱温度が前記変更用温度以上の場合には前記異常状態の発生に対する判定感度を前記低温時感度よりも高感度側の高温時感度に設定する形態で、前記情報取得部で取得した前記加熱温度に基づいて前記異常判定部における前記異常状態に対する判定態様を変更する点にある。
【0007】
本構成によれば、調理器の状態に合わせた判定を行うことで、調理器に起因する異常状態の発生を迅速且つ正確に判定することができる。
即ち、上記通信部及び上記情報取得部を備えることで、調理器との間で通信を行って、当該調理器の状態に関する上記調理器状態情報を取得することができる。そして、上記判定態様変更部は、このように取得された調理器状態情報に基づいて異常判定部における異常状態に対する判定態様を変更することで、当該異常判定部の異常状態に対する判定態様を調理器の状態に合った適切なものとすることができ、結果、調理器に起因するもの以外については誤判定を適切に回避しながら、調理器に起因する異常状態の発生を迅速且つ正確に判定することができる。
更に、本構成によれば、上記情報取得部により調理器状態情報として調理器で計測された加熱温度を取得するので、当該取得した加熱温度により調理器の状態が異常状態である火災等を発生させ易い状態であるか否かを把握することができる。よって、上記判定態様変更部により調理器の加熱温度に基づいて異常判定部における火災等に対する判定態様を変更することで、上記異常判定部は、調理器の状態が火災等を発生させ易い状態であるか否かに応じて変更される判定態様で、火災等の発生を判定することができ、結果、調理器に起因する火災等の発生を迅速且つ正確に判定することができる。
更に、本構成によれば、前述のように上記情報取得部により調理器状態情報として調理器で計測された加熱温度を取得する場合には、上記判定態様変更部は、異常判定部における異常状態である火災等の発生に対する判定感度を、調理器の状態が火災等を発生させ易い状態であるか否かを示す加熱温度に基づいて変更して、上記異常判定部により、調理器に起因する火災等の発生を一層迅速且つ正確に判定させることができる。
具体的に、上記判定態様変更部は、調理器の加熱温度が、例えば火災等を発生させ易い状態の下限限界値に相当する所定の変更用温度未満の場合には、上記異常判定部における異常状態の発生に対する判定感度を通常時の低温側感度に設定する。すると、上記異常判定部は、通常時の低温時感度で適切に火災等を判定することができる。
一方、上記判定態様変更部は、調理器の加熱温度が、上記変更用温度以上となって、調理器の状態が火災等を発生させ易い状態となった場合には、上記異常判定部における異常状態の発生に対する判定感度を上記低温側感度よりも高感度側の高温時感度に設定変更する。すると、上記異常判定部は、調理器が変更用温度以上の高温で加熱調理を行っている高温加熱調理時において、通常時よりも高感度の高温時感度で迅速且つ正確に火災等を判定することができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記センサ部として、前記調理器の設置領域中の煙又は熱を検知する火災センサ部を備えた点にある。
【0009】
本構成によれば、センサ部として上記火災センサを備えることで、異常判定部は、当該火災センサの出力に基づいて火災の発生を判定することができる。よって、上記情報取得部により、調理器が火災の発生し易い状態であるか否かを認識できる調理器状態情報を取得すれば、上記判定態様変更部により、この調理器状態情報に基づいて異常判定部における異常状態に対する判定態様を変更することができる。これにより、上記異常判定部は、調理器が火災の発生し易い状態であるか否かに応じて変更される判定態様で、火災の発生を判定することができ、結果、調理器に起因するもの以外については誤判定を適切に回避しながら、調理器に起因する火災の発生を迅速且つ正確に判定することができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記異常判定部は、前記センサ部の出力が所定の異常判定閾値よりも異常側に変移した場合に前記異常状態であると判定し、
前記判定態様変更部は、前記異常判定閾値を変更する形態で前記異常状態に対する判定態様を変更する点にある。
【0011】
本構成によれば、上記判定態様変更部は、上記異常判定部における異常状態の発生の判定のための異常判定閾値を変更する形態で、異常状態に対する判定態様を変更することができ、これにより、異常判定部における異常状態の発生に対する判定感度を変更することができる。即ち、上記異常判定閾値を異常側とは反対側の安全側に変更すれば、センサ部の出力が安全域から異常側に少し変移した早い段階で、その異常判定閾値に到達することになるので、上記異常判定部の判定感度が高感度側に変化することになる。逆に、上記異常判定閾値を異常側に変更すれば、センサ部の出力が安全域から異常側に大きく変移した遅い段階で、その異常判定閾値に到達することになるので、上記異常判定部の判定感度が低感度側に変化することになる。そして、上記判定態様変更部は、このように異常判定閾値を変更する形態で、上記異常判定部の判定感度を変更することができるので、上記異常判定部により、調理器の状態に合わせた感度で異常状態の発生を判定させることができ、例えば、調理器の状態が異常状態を発生させ易い状態である場合には、判定感度を高感度側に変更して、当該異常状態の発生を迅速且つ正確に判定させることができる。
【0017】
本発明の第
4特徴構成は、前記調理器は、前記加熱温度が所定の出力低下温度を超えた場合に加熱出力を低下させる出力低下機能を有し、
前記変更用温度は、前記出力低下温度よりも低い温度に設定されている点にある。
【0018】
本構成によれば、上記異常判定部における異常状態に対する判定感度を変更する起点となる変更用温度を、調理器が上記出力低下機能において加熱出力を低下させる起点となる出力低下温度よりも低い温度に設定する。これにより、加熱温度が上昇している状態において出力低下温度よりも先に変更用温度を超えることになるので、出力低下機能が作動するよりも先に、上記異常判定部における異常状態に対する判定感度を高感度側の高温時感度に変更することができる。よって、調理器における加熱温度が出力低下温度近傍で維持されている状態では、調理器は異常状態である火災等を発生させ易い状態であるとして、異常判定部によりその火災等を迅速且つ正確に判定することができる。
尚、本願において、加熱出力の低下とは、加熱出力を0とする所謂停止を含む概念である。
【0019】
本発明の第
5特徴構成は、前記異常判定部で異常状態が発生したと判定された場合に、前記通信部を介して、前記調理器に運転停止信号を送信して当該調理器の運転を停止させる運転停止指令部を備えた点にある。
【0020】
本構成によれば、調理器状態情報の取得のために設けた通信部を有効利用して、センサ部の出力に基づいて異常判定部で異常状態が発生したと判定された場合に、運転停止指令部により調理器に運転停止信号を送信して当該調理器の運転を自動的に停止させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る警報システムの実施形態について図面に基づいて説明する。
図1には、住宅内において警報システム100及びガスコンロ50(調理器の一例)が設置された様子が示されている。また、本実施形態の警報システム100は、ガスコンロ50の設置領域であるキッチンの壁面に設置された警報器10で構成されている。尚、上記実施形態では、調理器としてガスコンロ50を設けた例を説明するが、当該ガスコンロ50の代わりに、IHコンロなどの別の調理器を設けても構わない。尚、本実施形態では、警報器10は、ガスコンロ50の設置領域であるキッチンに設けた例を説明するが、警報器10は、ガスコンロ50とは別の設置領域に設置されたものでも構わない。
以下、ガスコンロ50及び警報器10の基本構成について順に説明を加える。
【0023】
〔ガスコンロ〕
ガスコンロ50は、
図1及び
図2に示すように、ガスを燃焼させて加熱調理を行う加熱部51として、標準的な火力で天板上に載置された鍋などの加熱対象物N(
図2参照)を加熱が可能な標準バーナー部52と、強い火力で加熱対象物Nの加熱が可能な強火力バーナー部53と、前面に開口部を有する庫内で焼き魚などのグリル調理が可能なグリルバーナー部54とを備えた公知の2口式のガスコンロとして構成されている。
また、標準バーナー部52と強火力バーナー部53には夫々、加熱対象物Nの温度を加熱温度として計測する温度センサ52a,53aが設けられている。
【0024】
ガスコンロ50には、これら加熱部51以外に、運転を制御するマイコンからなる制御装置55や、ブザー音を出力するブザー60が設けられている。制御装置55は、夫々の加熱部51を制御すると共に、ブザー60を作動させてブザー音である所定の案内音を出力したり、LEDなどの表示部(図示省略)に所定の案内表示を出力したりするように構成されている。
ガスコンロ50の前面には操作部56が設けられており、制御装置55は、利用者による操作部56の操作等に基づいて、夫々の加熱部51を制御する。
【0025】
この種のガスコンロ50は、出力低下機能などの各種安全機能を有する。
出力低下機能は、標準バーナー部52と強火力バーナー部53とにおいて、温度センサ52a,53aで測定された加熱温度が所定の出力低下温度(例えば250℃)を超えた場合に、加熱対象物Nの過昇温による油火災等の異常状態の発生を抑制するために、ガス供給量を絞って加熱出力としての火力を自動的に低下させる機能である。具体的に、この出力低下機能では、加熱温度が出力低下温度を超えた場合に、一旦ガス供給量を少量に絞って火力を弱火に変更し、更にその状態が30分間継続された場合には、ガスの供給を停止して消火する。
更に、出力低下機能以外の安全機能としては、コンロ消し忘れ消火機能、失火検知機能、鍋無し検知機能、感震機能などを有するが、何れも公知の機能のため詳細な説明は割愛する。
【0026】
制御装置55は、これら安全機能が作動した状態をエラーの発生と判断して、ブザー60によりエラーの内容に対応付けた所定回数のブザー音を出力するなどの形態で、そのエラーの内容に関するエラー情報を、ガスコンロ50の状態に関するガスコンロ状態情報(調理器状態情報の一例)として出力する。
【0027】
この種のガスコンロ50は、あぶり・高温炒めモードなどの各種運転モードを有する。
このあぶり・高温炒めモードは、中華鍋による高温での加熱調理や焼き網による高温でのあぶり調理を許容するべく、上述した出力低下機能における出力低下温度を所定時間の間一時的に通常時よりも高い温度(例えば290℃)に変更する運転モードである。
更に、あぶり・高温炒めモード以外の運転モードとしては、湯沸かしモード、炊飯モード、タイマーモードなどを有するが、何れも公知の運転モードのため詳細な説明は割愛する。
【0028】
制御装置55は、これら運転モードでの運転が終了したときに、利用者に対して運転終了を知らしめるために、ブザー60により運転モードでの運転終了に対応付けた所定回数のブザー音を出力するなどの形態で、その運転モードでの運転終了に関するモード運転終了情報をガスコンロ状態情報として出力する。
【0029】
〔警報器〕
図1及び
図2に示す警報器10は、火災警報器、ガス警報器などのように、単一の警報機能を有する警報器として構成することができるが、本実施形態では、これら火災警報機能やガス警報機能などの複数の警報機能を併せ持つ複合型の警報器として構成されている。
【0030】
警報器10には、ガスコンロ50の設置領域の空気の状態(外部環境状態の一例)を検知するセンサ部11が設けられている。具体的に、この種のセンサ部11としては、
図2に示すように、当該周辺空気中の煙や熱を検知する火災センサ部12、当該周辺空気中の可燃性ガスを検知するガスセンサ部13、及び、当該周辺空気中の一酸化炭素を検知するCOセンサ部14が設けられている。
【0031】
火災センサ部12は、異常状態としての火災が発生した場合に増加する周辺空気中の煙濃度や熱を検知する公知のセンサ素子を利用したものである。
ガスセンサ部13は、異常状態としてのガス漏れが発生した場合に増加する周辺空気中の可燃性ガス濃度を検知する公知のセンサ素子を利用したものである。
COセンサ部14は、異常状態としての不完全燃焼が発生した場合に増加する周辺空気中の一酸化炭素濃度を検知する公知のセンサ素子を利用したものである。
【0032】
警報器10には、
図2に示すように、このようなセンサ部11以外に、運転を制御するマイコンからなる制御装置20や音声を出力するスピーカ30等が設けられている。この制御装置20は、所定のプログラムを実行することにより、後述する異常判定部21及び音声出力部22などの各種機能部として機能する。
【0033】
制御装置20が機能する異常判定部21は、センサ部11の出力に基づいて火災やガス漏れや不完全燃焼などの異常状態の発生を判定するように構成されている。即ち、異常判定部21では、火災センサ部12の出力が所定の火災判定閾値(異常判定閾値の一例)を超えて火災が発生した場合に取り得る異常側の領域に変移したときには、異常状態の一例としての火災が発生したと判定される。また、ガスセンサ部13の出力が所定のガス漏れ判定閾値(異常判定閾値の一例)を超えてガス漏れが発生した場合に取り得る異常側の領域に変移したときには、異常状態の一例としてのガス漏れが発生したと判定される。更にCOセンサ部14の出力が所定の不完全燃焼判定閾値(異常判定閾値の一例)を超えて不完全燃焼が発生した場合に取り得る異常側の領域に変移したときには、異常状態の一例としての不完全燃焼が発生したと判定される。
【0034】
制御装置20が機能する音声出力部22は、異常判定部21の判定結果に基づいて音声信号を生成し、当該生成した音声信号をスピーカ30に出力することにより、当該スピーカ30から所定の警報音声を出力するように構成されている。具体的に、異常判定部21で火災が発生したと判定された場合には、音声出力部22は、「火災が発生しています。」などの警報音声をスピーカ30から出力する。また、異常判定部21でガス漏れが発生したと判定された場合には、音声出力部22は、「ガス漏れが発生しています。」などの警報音声をスピーカ30から出力する。更に、異常判定部21で不完全燃焼が発生したと判定された場合には、音声出力部22は、「空気が汚れて危険です。換気して下さい。」などの警報音声をスピーカ30から出力する。
【0035】
以上がガスコンロ50及びその設置領域に設置された警報器10の基本構成であるが、以下に、警報システム100が備える特徴構成の詳細について説明を加える。
【0036】
(通信部)
本実施形態の警報システム100では、
図1及び
図2に示すように、ガスコンロ50との間で通信可能な通信部として、警報器10とガスコンロ50との間で有線通信を行うための通信線70(有線通信部の一例)が設けられている。
即ち、警報器10及びガスコンロ50の夫々には、夫々、双方向の通信を行うためのRxD端子、TxD端子、及びGND端子を有する有線通信用端子35,65が設けられている。そして、これら有線通信用端子35,65は、単一の通信線70で接続されている。これにより、警報器10側の制御装置20とガスコンロ50側の制御装置55との間で、通信線70を介したシリアル形式の有線通信が可能となる。
【0037】
尚、ガスコンロ50において、有線通信用端子65並びに有線通信のための構成は、新品時に標準的に装備されたものであっても良いが、既存品に対して改造を行って付加されたものであっても良い。また、通信線70による有線通信用の有線通信部の代わりに、無線通信用の無線通信部を設けても構わないが、有線通信部の方が、小型で安価であることから、特にガスコンロ50に改造で付加する場合に好適である。即ち、ガスコンロ50としては、音声出力部を備えることなく廉価なブザー60を備えたものが広く普及しているが、このようなガスコンロ50に対しては、有線通信を行うための有線通信用端子65等を追加するという簡単な改造を行うだけで、本発明に係る警報システム100にガスコンロ50を構築することができる。
【0038】
(情報取得部)
警報器10の制御装置20は、
図2に示すように、通信線70を介してガスコンロ50の状態に関する情報をガスコンロ状態情報として取得する情報取得部24として機能する。以下、この情報取得部24によるガスコンロ状態情報の取得の流れの詳細について、
図3に基づいて説明する。
尚、
図3において、警報器10の列に記載されている各処理は、警報器10の情報取得部24で実行される処理であり、ガスコンロ50の列に記載されている各処理は、ガスコンロ50の制御装置55で実行される処理であり、これらの間の信号の送受信は全て通信線70を介して行われる。
【0039】
ここで、本実施形態において、ガスコンロ状態情報は、運転状態情報と加熱温度情報とを含む。更に、運転状態情報は、ガスコンロ50の各加熱部51における運転状態を把握可能な情報であり、上述したように、ガスコンロ50で出力されたエラーの内容に関するエラー情報や、運転モードでの運転終了に関するモード運転終了情報を含む。一方、加熱温度情報は、標準バーナー部52と強火力バーナー部53の夫々に設けられた温度センサ52a,53aで計測された加熱温度に関する情報である。
尚、本実施形態では、ガスコンロ状態情報をこれらの情報を含むものとするが、ガスコンロ50の状態を示すものであれば、別の情報を含むものとしても構わない。
【0040】
情報取得部24は、ガスコンロ50に対し、電源状態を確認するための情報発信指令を送信する(ステップ#10)。すると、ガスコンロ50の制御装置20は、電源がON状態となって情報発信指令を受信(ステップ#21)した時点で、電源がON状態となった旨を伝えるための電源ON状態情報を警報器10に返信する(ステップ#22)。このことで、当該電源ON状態情報を受信(ステップ#11)した警報器10の情報取得部24は、ガスコンロ50の電源がON状態となったことを把握することができ、それに続いて、ガスコンロ状態情報の取得を開始する。
【0041】
情報取得部24は、ガスコンロ50側との間の通信線70を介した通信がシリアル形式であることから、複数の加熱部51の夫々についてのガスコンロ状態情報を、同時に取得するのではなく、一つずつ取得する。即ち、情報取得部24は、加熱部51の夫々を指定加熱部として順次指定し、当該指定加熱部についての情報発信指令をガスコンロ50側に送信し、当該情報発信指令を受信したガスコンロ50の制御装置55に、当該指定加熱部のガスコンロ状態情報を返信させる。
【0042】
具体的に、情報取得部24は、標準バーナー部52、強火力バーナー部53、及びグリルバーナー部54の複数の加熱部51のうちの一つを指定加熱部に指定する(ステップ#12)。
そして、情報取得部24は、指定加熱部のエラー情報やモード運転終了情報などの運転状態情報をガスコンロ状態情報としてガスコンロ50側から取得するべく、当該指定加熱部についての運転状態情報を取得するための情報発信指令をガスコンロ50側に送信する(ステップ#13)。すると、この情報発信指令を受信(ステップ#23)したガスコンロ50の制御装置55は、指定された指定加熱部についての運転状態情報を、警報器10側に返信する(ステップ#24)。このことで、当該運転状態情報を受信(ステップ#14)した警報器10の情報取得部24は、加熱部51のうちの指定加熱部についての運転状態を把握することができる。
【0043】
次に、情報取得部24は、指定加熱部の加熱温度情報をガスコンロ状態情報としてガスコンロ50側から取得するべく、当該指定加熱部についての加熱温度情報を取得するための情報発信指令をガスコンロ50側に送信する(ステップ#15)。すると、この情報発信指令を受信(ステップ#25)したガスコンロ50の制御装置55は、指定された指定加熱部についての加熱温度情報を、警報器10側に返信する(ステップ#26)。このことで、当該加熱温度情報を受信(ステップ#16)した警報器10の情報取得部24は、加熱部51のうちの指定加熱部についての加熱温度を把握することができる。
【0044】
更に、情報取得部24は、一の指定加熱部についての運転状態情報及び加熱温度情報の取得が完了すると、標準バーナー部52、強火力バーナー部53、及びグリルバーナー部54において指定加熱部を変更しながら(ステップ#12)、運転状態情報及び加熱温度情報を取得するための処理(ステップ#13〜#16,ステップ#23〜#26)を繰り返し実行する。このことで、標準バーナー部52、強火力バーナー部53、及びグリルバーナー部54の夫々についての運転状態情報及び加熱温度情報を取得することができる。
ちなみに、グリルバーナー部54を指定加熱部として指定した場合には、本実施形態では、グリルバーナー部54は温度センサを備えておらず加熱温度が計測されていないため、加熱温度情報の取得のための処理(ステップ#15,#16,#25,#26)はスキップされる。
【0045】
(音声出力部)
警報器10の制御装置20が機能する音声出力部22は、
図2に示すように、情報取得部24で取得したガスコンロ状態情報に基づいて音声信号を生成し、当該生成した音声信号をスピーカ30に出力することにより、当該スピーカ30から当該ガスコンロ状態情報をガスコンロ状態案内音声(調理器状態案内音声の一例)として出力するように構成されている。具体的に、情報取得部24で取得した運転状態情報に含まれるエラー情報に基づいてガスコンロ50で安全機能が作動して自動消火等が行われたことを把握した場合には、音声出力部22は、「安全装置が働き、消火しました。」などのガスコンロ状態案内音声をスピーカ30から出力する。また、情報取得部24で取得した運転状態情報に含まれるモード運転終了情報に基づいてガスコンロ50において湯沸かしモードや炊飯モード等の所定の運転モードでの運転終了を把握した場合には、音声出力部22は、「お湯が沸きました。」や「ご飯が炊けました。」などのガスコンロ状態案内音声をスピーカ30から出力する。更に、情報取得部24で取得した運転状態情報に含まれるエラー情報に基づいてガスコンロ50が故障したことを把握した場合には、音声出力部22は、「コンロ故障です。販売店に連絡して下さい。」などのガスコンロ状態案内音声をスピーカ30から出力する。
【0046】
このように警報器10側の音声出力部22が、ガスコンロ50側から取得したガスコンロ状態情報をガスコンロ状態案内音声として出力することで、警報システム100側においてガスコンロ50の機能を補完して、利用者に対しガスコンロ50の状態を明確に認識させることができる。この場合、ガスコンロ50側では、音声出力部を設ける必要がないので、当該ガスコンロ50の構成を、例えばブザー60のみを設けるといった簡素で廉価なものとすることができる。
【0047】
(判定態様変更部)
警報器10は、異常判定部21において、火災、ガス漏れ、不完全燃焼等の異常状態に対する判定態様を常にガスコンロ50の状態に合った適切なものとして、ガスコンロ50などに起因する異常状態の発生を迅速且つ正確に判定する。警報器10の制御装置20は、
図2に示すように、情報取得部24で取得したガスコンロ状態情報に基づいて異常判定部21における異常状態に対する判定態様を変更する判定態様変更部23として機能する。即ち、判定態様変更部23は、異常判定部21においてセンサ部11の出力に対する異常状態が発生したか否かの閾値である異常判定閾値を変更する形態で、異常状態に対する判定態様を変更することで、異常判定部21における異常状態の発生に対する判定感度を変更することができる。
【0048】
具体的に、判定態様変更部23は、情報取得部24で取得したガスコンロ状態情報に含まれる各加熱部51の加熱温度に基づいて、異常判定部21における異常状態に対する判定態様(判定感度)を変更するように構成されている。より具体的には、判定態様変更部23は、ガスコンロ50側から取得した加熱温度が所定の変更用温度(例えば230℃)未満の比較的低温である場合には、異常状態の発生に対する判定感度を通常時の低温時感度に設定するべく、上記異常判定閾値を通常時における通常時判定閾値に設定する。一方、判定態様変更部23は、ガスコンロ50側から取得した加熱温度が上記変更用温度以上の比較的高温である場合には、ガスコンロ50の状態が火災等の異常状態を発生し易い状態であるとして、異常状態の発生に対する判定感度を上記低温時感度よりも高感度側の高温時感度に設定するべく、上記異常判定閾値を上記通常時判定閾値よりも低く設定する。
【0049】
このことで、異常判定部21は、通常時には低温時感度で適切に火災等の異常状態を判定することができ、一方、ガスコンロ50が変更用温度以上の高温で加熱調理を行っている高温加熱調理時において、通常時よりも高感度の高温時感度で迅速且つ正確に火災等の異常状態の発生を判定することができる。
【0050】
更に、この判定態様変更部23による判定態様の変更は、異常判定部21による火災センサ部12の出力による火災の発生の判定、ガスセンサ部13の出力によるガス漏れの発生の判定、COセンサ部14の出力による不完全燃焼の発生の判定のうち、一部又は全部の異常判定閾値を変更することにより行っても良いが、本実施形態では、火災の発生の判定に対して行われる。
即ち、判定態様変更部23は、ガスコンロ50の加熱温度が上記変更用温度未満である場合には、火災センサ部12の出力に対する火災が発生したか否かの閾値である火災判定閾値を通常時火災判定閾値に設定し、ガスコンロ50の加熱温度が上記変更用温度以上となって、ガスコンロ50の状態が火災を発生し易い状態である場合には、同火災判定閾値を通常時火災判定閾値よりも低い高感度時火災判定閾値に設定する。例えば、火災センサ部12が煙濃度を検出するセンサである場合には、上記通常時火災判定閾値は10%の煙濃度に相当するものに設定され、上記高感度時火災判定閾値は5%の煙濃度に相当するものに設定される。
このことで、ガスコンロ50において、変更用温度以上の加熱温度で加熱調理が行われている際には、それに起因する火災の発生を迅速且つ正確に判定することができるようになる。
【0051】
更に、この異常判定部21の判定感度を変更するために加熱温度に対して定められた変更用加熱温度(例えば230℃)は、ガスコンロ50における出力低下機能において定められた出力低下温度(例えば通常時では250℃、あぶり・高温炒めモードでの運転時では290℃)よりも低く設定されている。このことで、ガスコンロ50における加熱温度が出力低下温度近傍で維持されている場合であっても、ガスコンロ50は火災を発生させ易い状態であるとして、異常判定部21の火災に対する判定感度を高感度側に変更して、その火災を迅速且つ正確に判定することができる。
【0052】
尚、本実施形態では、異常判定部21の判定感度を変更するための閾値である変更用加熱温度を、ガスコンロ50の状態に関係なく一定とするが、運転モード毎に変更用加熱温度を設定しても構わない。例えば、ガスコンロ50があぶり・高温炒めモードでの運転時では変更用加熱温度を通常時の温度(例えば230℃)よりも高い温度(例えば270℃)に設定することができる。
【0053】
また、本実施形態では、異常判定部21の異常状態に対する判定態様をガスコンロ50の加熱温度に基づいて変更するように構成したが、ガスコンロ50の加熱温度以外の状態に応じて変更しても構わない。例えば、ガスコンロ50があぶり・高温炒めモードでの運転時では、異常状態が発生し易い状態であることから、異常判定部21における異常状態の発生に対する判定感度を通常時よりも高感度側に変更することができる。
【0054】
(運転停止指令部)
警報器10は、上述したようなガスコンロ状態情報の取得のために設けた通信線70を有効利用するべく、
図2に示すように、異常判定部21で火災等の異常状態であると判定された場合に、通信線70を介して、ガスコンロ50に運転停止信号を送信して当該ガスコンロ50の運転を停止させる運転停止指令部25として機能する。
具体的に、運転停止指令部25は、上述した情報取得部24によりガスコンロ状態情報の取得のためにガスコンロ50側に送信する情報発信指令(
図3参照)に代えて、各加熱部51を停止させるための運転停止信号を割り込ませて、ガスコンロ50の各加熱部51へのガスの供給を遮断して運転を停止(消火)させることができる。
【0055】
更に、この運転停止指令部25は、通常時には作動せず、上述した判定態様変更部23により異常判定部21の判定感度を高感度側に変更したときのみ作動して、ガスコンロ50の運転を停止するように構成することもできる。即ち、異常判定部21の判定感度を高感度側に変更しているときのガスコンロ50は異常状態を発生させ易い状態であることから、異常判定部21で火災等の異常状態の発生が判定された場合には、ガスコンロ50の運転を自動的に停止させて、当該火災等の異常状態の要因を排除することができる。
【0056】
上記実施形態では、温度センサ52a,53aは標準バーナー部52と強火力バーナー部53のみに設けられる例を示したが、それに限らず、グリルバーナー部54にも温度センサを設けても良い。この場合、情報取得部24は、グリルバーナー部54の加熱温度情報の取得のための処理を実施しても構わない。
【0057】
また、上記実施形態のガスコンロ50では、ブザー60で利用者に運転モードなどを通知する例を示したが、それに限らず、ブザー60に代えて又は加えて、運転モードやエラー状態を、コード表示等で通知する表示部を備えるようにしても構わない。このようなコード表示を行う簡易な表示部を備えるガスコンロに対しても、上記実施形態と同様に、ガスコンロの機能を警報システム側で補完することができる。
【0058】
また、上記実施形態では、異常判定部21により火災等の異常状態であると判定された場合に、ガスコンロ50へのガスの供給を遮断して運転を停止(消火)させる例を示したが、これに限らず、異常状態であると判定されて場合に、ガスコンロ50の電源をオフにするようにしても構わない。