特許第6619792号(P6619792)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619792
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】改善されたガス流量制御
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/26 20060101AFI20191202BHJP
   H01J 49/10 20060101ALI20191202BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20191202BHJP
   G05D 7/06 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   H01J49/26
   H01J49/10
   G01N1/00 101T
   G01N1/00 101R
   G05D7/06 B
【請求項の数】33
【外国語出願】
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-237343(P2017-237343)
(22)【出願日】2017年12月12日
(65)【公開番号】特開2018-98208(P2018-98208A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2018年2月23日
(31)【優先権主張番号】1621328.2
(32)【優先日】2016年12月15日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508306565
【氏名又は名称】サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】トルベン シュエテ
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/111391(WO,A1)
【文献】 特開2012−038483(JP,A)
【文献】 特開昭56−166422(JP,A)
【文献】 特開平06−068841(JP,A)
【文献】 特開平10−009996(JP,A)
【文献】 特開2004−265674(JP,A)
【文献】 特開2012−141254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/26
G01N 1/00
G05D 7/06
H01J 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの流れを分析装置に提供するためのガス導入システムであって、
前記分析装置にガスを送達するためのガス導入ラインであって、前記分析装置にガスを導入するように前記分析装置に連結可能であり、且つ、前記ガス導入ラインにガスを送達するように少なくとも1つのガス供給部に連結可能である、ガス導入ラインと、
前記ガス導入ライン上に配置されるか、又は、前記ガス導入ラインに流体連結された、少なくとも1つのガス流量制限アセンブリであって、ガスが1つ又は複数の固定流量制限部を介して選択的に導かれるように、並列ガスラインに配置された少なくとも2つの切り替え可能な固定流量制限部を備える、少なくとも1つのガス流量制限アセンブリと、
前記少なくとも1つのガス流量制限アセンブリの下流にある制御ライン接合部で、前記ガス導入ラインに流体連結された少なくとも1つの制御ラインであって、少なくとも1つの背圧調整器、前記制御ラインへのガス流量を調整するための少なくとも1つの弁、及び前記背圧調整器の下流に配置された少なくとも1つの真空ポンプ、を備えた、少なくとも1つの制御ラインと、
前記制御ライン接合部と前記分析装置との間の前記ガス導入ライン上に配置された少なくとも1つの導入ガス流量制限部と、を備える、ガス導入システム。
【請求項2】
前記ガス流量制限アセンブリは、固定流量制限部の並列配置として設けられ、
前記固定流量制限部は、別個の流量制限ガスライン上に配置され、別個の前記流量制限ガスラインは、前記ガス導入ラインにおいて、前記固定流量制限部の上流にある第1の制限接合部と、前記固定流量制限部の下流にあり且つ前記制御ライン接合部の上流にある第2の制限接合部とで合流する、請求項1に記載のガス導入システム。
【請求項3】
前記ガス流量制限アセンブリは、2つの固定流量制限部の並列配置として設けられ、
前記固定流量制限部のうちの第1の固定流量制限部は、前記ガス導入ライン上に配置され、
前記固定流量制限部のうちの第2の固定流量制限部は、バイパスガスライン上に設けられ、前記バイパスガスラインは、前記ガス導入ラインに並列に配置され、前記固定流量制限部の上流にある第1の制限接合部と、前記固定流量制限部の下流にあり且つ前記制御ライン接合部の上流にある第2の制限接合部とで前記ガス導入ラインと合流する、請求項2に記載のガス導入システム。
【請求項4】
前記ガス流量制限アセンブリは、2つの固定流量制限部の並列配置として設けられ、
前記固定流量制限部のうちの第1の固定流量制限部は、前記ガス導入ライン上に配置され、
前記固定流量制限部のうちの第2の固定流量制限部は、バイパスガスライン上に設けられ、前記バイパスガスラインは、前記ガス導入ラインに並列に配置され、前記固定流量制限部の上流にある第1の制限接合部と、マスフロー調整器と前記制御ライン接合部との間の前記制御ライン上の第2の制限接合部で前記ガス導入ラインと合流する、請求項1に記載のガス導入システム。
【請求項5】
少なくとも1つのさらなる固定流量制限部をさらに備え、
さらなる固定流量制限部の各々は、前記ガス流量制限アセンブリの第1の固定流量制限部及び第2の固定流量制限部に並列に配置された別個のさらなるガスライン上に配置される、請求項2〜4のいずれか一項に記載のガス導入システム。
【請求項6】
前記ガス流量制限アセンブリは、複数の並列ガスラインを備え、前記複数の並列ガスラインは、それぞれが固定流量制限部を備え、且つ、前記固定流量制限部の上流にある第1の制限接合部、及び、前記固定流量制限部の下流にある第2の制限接合部で合流する、請求項5に記載のガス導入システム。
【請求項7】
前記ガス流量制限アセンブリは、2つ又はそれ以上の並列な固定流量制限部を備え、前記2つ又はそれ以上の並列な固定流量制限部は、前記固定流量制限部の任意の2つを通るガス流量の割合が、制限部を横切る同じ圧力差に関して、1:20〜1:1.5の範囲内になるように適合されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のガス導入システム。
【請求項8】
前記分析装置は質量分析計である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のガス導入システム。
【請求項9】
前記ガス導入ラインは、質量分析計の衝突セルに流体連結される、請求項8に記載のガス導入システム。
【請求項10】
前記制御ラインに連結された前記真空ポンプは、質量分析計の真空ポンプシステムの一部である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のガス導入システム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のガス導入システムを備えた、分析装置。
【請求項12】
分析装置用のガス導入システム内のガス流量を較正するためのシステムであって、
分析装置にガスを提供するためのガス導入ラインと、
第1の較正接合部を介して前記ガス導入ラインに流体連結されたガス流量較正ラインであって、少なくとも1つのガス流量計を備える、ガス流量較正ラインと、
前記ガス導入ラインを介して前記分析装置、又は、前記第1の較正接合部を介して前記ガス流量較正ラインのいずれかにガス流を選択的に導くための少なくとも1つの弁と、を備え、
前記システム内のガス流は、前記少なくとも1つの弁の第1のガス流設定において、前記ガス流量較正ラインをバイパスし、前記ガス導入ラインを介して前記分析装置に導かれ、前記少なくとも1つの弁の第2のガス流設定において、前記ガス流量較正ラインを介して前記分析装置に導かれ、
前記第2のガス流設定において前記ガス流量較正ライン内で測定されるガス流量は、前記ガス導入ラインにおいて前記較正接合部に向かう一定のガス流量を前提として、前記第1のガス流設定における前記分析装置へのガス流量の測定値である、システム。
【請求項13】
前記システムは、前記ガス導入ライン内のガス流量を制御するガス流量調整器の下流に配置されるように適合されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記ガス流量較正ラインは、第2の較正接合部で前記ガス導入ラインにさらに連結され、前記システム内のガス流は、前記第2のガス流設定において、前記ガス流量較正ラインを通って、前記第1の較正接合部から前記第2の較正接合部へ導かれ、前記ガス導入ラインを前記第2の較正接合部の下流にある前記分析装置に連結するガス導入接合部を介して、前記分析装置に導かれる、請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項15】
前記ガス流量較正ラインは、前記ガス導入ラインと前記分析装置との間のガス導入接合部から流体的に分離された較正導入接合部を通って前記分析装置に連結され、前記システム内のガス流は、前記第2の設定において、前記ガス流量較正ラインを通って、前記第1の較正接合部から前記較正導入接合部へ及び前記分析装置へ導かれる、請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項16】
前記システムを囲むように適合された筐体をさらに備え、
前記システムを一定温度に維持するための手段をさらに備える、請求項12〜15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記筐体は、前記ガス流量較正ラインと、前記第1の較正接合部から前記分析装置まで伸びる前記ガス導入ラインの部分と、を少なくとも囲む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記システムは、請求項1〜11のいずれか一項に記載のガス導入システムの構成要素であって、前記導入ガス流量制限部と前記分析装置との間に配置される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記分析装置は質量分析計である、請求項12〜18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記ガス導入ライン及び前記ガス流量較正ラインは、質量分析計の衝突セルに流体連結される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
分析装置のガス導入システム内のガス流量を調節する方法であって、
ガスを分析装置に提供するガス導入ラインに少なくとも1つのガス供給部から導入圧力(Pin)でガスを流すステップと、
前記ガス導入ラインのガス流の一部がガス制御ラインを通って流れるように、前記ガス導入ライン内のガス流の一部を前記ガス制御ラインに分離することによって、前記ガス導入ライン内の流量を調整するステップであって、前記ガス制御ラインは、前記ガス導入ラインに配置されて前記ガス導入ラインと制御ライン接合部で合流し、前記ガス制御ライン内のガス流量が背圧調整器によって制御されることにより、ガス流量コントローラの第1の設定において、前記ガス導入ライン内のガス流量及び/または前記制御ライン接合部での圧力(PA)が、第1の一定値に到達する、前記調整するステップと、
前記ガス流量コントローラを第2の設定に調節し、前記ガス流量コントローラが第2の設定にある間に、少なくとも1つ又はそれ以上のバイパスガスラインに前記ガス供給部からガスを流すステップであって、前記1つ又はそれ以上のバイパスガスラインは、前記ガス供給部と前記制御ライン接合部との間の前記ガス導入ラインに流体連結されている、調整し及びガスを流すステップと、
ガス流量及び/又は前記制御ライン接合部の圧力(PA)が第2の一定値に達するまで、前記バイパスガスラインを通るガス流量を維持するステップと、を含む、方法。
【請求項22】
前記バイパスガスラインは、前記制御ライン接合部の上流にある、第1のバイパス接合部及び第2のバイパス接合部で前記ガス導入ラインに連結されている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記バイパスガスラインは、前記ガス供給部と前記制御ライン接合部との間の一端で前記ガス導入ラインに連結され、前記ガス流量コントローラの下流の他端で前記ガス制御ラインに連結されている、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記ガス流量及び/又は前記制御ライン接合部の圧力(PA)が第2の一定値に達した後、前記バイパスガスラインを通る前記ガス流を停止するステップをさらに含む、請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ガス導入ラインを通るガス流量を維持しながら、少なくとも1つのバイパスガスラインを通ってガスが流れることが許容される、請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ガス導入ラインから前記バイパスガスラインに分離されたガス流の部分は、総ガス流の50%〜98%の範囲内である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記バイパスガスラインを通るガス流量に対する前記ガス導入ラインを通るガス流量の比が、制限部を横切る同じ圧力差に関して、1:20〜1:1.5の範囲内である、請求項21〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
第1の期間にわたり第1のバイパスガスラインを通るガス流を迂回させて、前記制御ライン接合部での第1のガス流量を達成するステップと、
第2の期間にわたり前記第1のバイパスガスラインと並列に配置された第2のバイパスガスラインを通るガス流を迂回させて、前記制御ライン接合部での第2のガス流量を達成するステップと、をさらに含み、
前記第1のバイパスガスライン及び第2のバイパスガスラインは、2つの前記バイパスガスラインを通るガス流が、前記バイパスガスラインを横切る所与の固定のガス圧力差において異なるように、異なる流量制限部を含み、前記第1のバイパスガスラインを通るガス流を選択的に許容することにより、前記制御ライン接合部のガス流量が、第1の流量から第2の流量に調節され、前記第2のバイパスガスラインを通るガス流を選択的に許容することにより、前記制御ライン接合部のガス流量が、第3の流量に調節される、請求項21〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記分析装置は質量分析計である、請求項21〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
分析装置のガス導入システム内のガス流量を較正する方法であって、
前記ガス導入システムが、
少なくとも1つのガス供給部から前記分析装置にガスを提供するための、少なくとも1つのガス流量コントローラを含む、少なくとも1つのガス導入ラインと、
前記少なくとも1つのガス流量コントローラの下流にある、較正ライン接合部で前記ガス導入ラインに流体連結された少なくとも1つのガス較正ラインであって、前記ガス較正ラインは少なくとも1つのガス流量計を含む、少なくとも1つのガス較正ラインと、を備え、
前記方法は、
前記少なくとも1つのガス流量コントローラによって前記分析装置へのガス流量を設定するステップと、
第1の期間にわたって、前記ガス較正ラインを通してガスを流し、それと同時に、前記較正ライン接合部の下流にある、前記ガス導入ラインを通ってガスが流れるのを防止するステップと、
前記第1の期間のうちの少なくとも一部分の間に、前記ガス較正ラインのガス流量を決定するステップと、
前記第1の期間に続く第2の期間にわたって、前記ガス導入ラインを通して前記分析装置へとガスを流し、それと同時に、前記ガス較正ラインを通ってガスが流れるのを防止するステップと、を含み、
前記第1の期間及び第2の期間中に、前記ガス流量コントローラのガス流設定は、一定の値に維持され、前記ガス較正ライン及び前記較正ライン接合部と前記分析装置との間に位置する前記ガス導入ラインの少なくとも一部は、一定温度に維持され、
前記第1の期間中に決定される前記ガス較正ラインのガス流量は、前記第2の期間中の前記ガス導入ライン内及び前記分析装置へのガス流量の測定値である、方法。
【請求項31】
前記ガス導入ライン上の前記ガス流量コントローラは、ガス流量制御ライン上に設けられ、前記ガス流量制御ラインは、前記較正ライン接合部の上流において、制御ライン接合部で前記ガス導入ラインに連結される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ガス導入ラインは、請求項1〜11のいずれか一項に記載のガス導入システムの一部である、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記ガス較正ライン及び制御ライン接合部と前記分析装置との間に位置する前記ガス導入ラインの少なくとも一部は、同じ温度で維持される、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空下で動作する分析器を含む分析器等の分析装置用のガス導入システムに関する。本発明はさらに、分析器へのガス圧力及び/またはガス流量の急速な変化を達成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)は、金属及び特定の非金属を、非干渉の低バックグラウンド同位体で、1015の一部と同等に低い(1000兆分の1、ppq)非常に低い濃度の濃度で検出することができる分析手法である。この方法は、分析すべき試料を誘導結合プラズマでイオン化し、次いで質量分析計を使用して生成したイオンを分離して定量化することを要する。
【0003】
プラズマは、アルゴン原子、自由電子及びアルゴンイオンの高エネルギー化された混合物を生成するために、電磁コイル内のガス、普通はアルゴンをイオン化することによって生成される。
【0004】
特定の要素は、ICP−MSによる検出限界が比較的低いことが知られている。これらは、主に、プラズマガス、マトリックス成分または試料を可溶化するために使用される溶媒から誘導されるイオンによって生成されるスペクトル干渉に悩まされるものである。例としては、56Feの決定のための40Ar16O、39Kの決定のための38ArH、40Caの決定のための40Ar、80Seの決定のための40Ar40Ar、75Asの決定のための40Ar35Cl、52Crの決定のための40Ar12C及び51Vの決定のための35Cl16Oを含む。
【0005】
この問題の1つの解決法は、分析器の前に位置付けされた衝突/反応セルを含む衝突セル技術(ICP−CCT)によって提供される。一般には、イオンを収束するために高周波モードで動作する多重極を含むこのセルに、ヘリウムまたは水素のような衝突ガスが導入される。衝突ガスは、細胞内のイオンと衝突して反応し、妨害イオンを無害な非妨害種または妨害を引き起こさない他のイオンに変換する。
【0006】
存在し得る妨害種の範囲内に起因して、場合によっては、複数の衝突ガスを使用することが有用であり得る。これは、大抵、あるタイプのガスを衝突セルに流し、得られたデータを収集し、その後、別の衝突ガスに切り替えることを意味する。衝突ガスの流れは、普通約0.2〜10mL/分の範囲内であり、通常は、マスフローコントローラによって制御される。
【0007】
原理的には、使用される異なるタイプの衝突ガスの流れを制御するために、単一のマスフローコントローラを使用することが有用である。しかし、マスフローコントローラのデッドボリュームが大きいため、データを収集する前に衝突ガスを切り替える際に10分を超えるガス置換が必要である。したがって、現在のシステムでは、使用される各衝突ガスに対して別個のマスフローコントローラが使用される。マスフローコントローラはかなり高価であるため、これは各器具の大幅な追加コストを招く。
【0008】
単一のフローコントローラしか必要としないが、理想的には、ガスのより迅速な切り替えを単純で費用効果の高い方法で可能にするガス制御システムを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ガス圧力の急速な変化を可能にする改良されたガス導入システム及び方法を提供する。本発明はまた、ガス流量を較正するための手段を含むガス導入システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様では、本発明は、ガスの流れを分析装置に供給するためのガス導入システムを提供する。このシステムは、(i)分析装置にガスを送達するためのガス導入ラインであって、この装置にガスを導入するように分析装置に、かつガス導入ラインにガスを送達するように少なくとも1つのガス供給部に連結可能である、ガス導入ラインと、(ii)ガス導入ライン上に配置されるか、またはガス導入ラインに流体連結された、少なくとも1つのガス流量制限アセンブリであって、少なくとも2つの切り替え可能な流量制限を備える、少なくとも1つのガス流量制限アセンブリと、(iii)少なくとも1つのガス流量制限アセンブリの下流にある制御ライン接合部で、ガス導入ラインに流体連結された少なくとも1つの制御ラインであって、少なくとも1つのガス流量コントローラと、制御ラインへのガス流量を調整するための少なくとも1つの弁と、を備えた少なくとも1つの制御ラインと、(iv)制御ライン接合部と分析装置との間のガス導入ライン上に配置された少なくとも1つの導入ガス流量制限部と、を備える。
【0011】
一般に、ガス導入システムは、ガスを分析装置または分析機器に送達するのに有用であり得る。本発明は、例えば、質量分析計、特に質量分析計の衝突セル、または光学分光計内の、または質量分析計、特に質量分析計の衝突セル、または光学分光計と組み合わせて、ガス導入システム等を提供するように拡張することができる。本発明は、質量分析計の衝突セルにガスを導入するためのガス導入システムを有する質量分析計にさらに拡張することができる。あるいは、このシステムは、ガスを分光計に導入するためのガス導入システムを有する光学分光計に拡張することができる。
【0012】
また、分析装置のガス導入システム内のガス流量を調節する方法であって、この方法は、(i)少なくとも1つのガス供給部からのガスを、分析装置にガスを供給するガス導入ラインに、入口圧力(Pin)で流すステップと、(ii)ガス導入ライン内のガス流の一部がガス制御ラインを通って流れるように、ガス導入ライン内のガス流の一部を、ガス導入ライン上に配置されて制御ライン接合部のガス導入ラインと合致するガス制御ラインに分離することによってガス導入ライン内の流量を調節するステップと、ガス制御ライン内のガス流量は、ガス流量コントローラによって制御され、ガス流量コントローラの第1の設定では、ガス導入ライン内のガス流量及び/または制御ライン接合部での圧力(PA)は、第1の一定値に達し、(iii)フローコントローラを第2の設定値に調整して、フローコントローラが第2の設定値にある間に、ガス供給部と制御ライン接合部との間のガス導入ラインに流体連結された1つ以上のバイパスガスラインに少なくとも供給するガスからのガスを流すステップと、(iv)制御ライン接合部のガス流量及び/または圧力(PA)が第2の一定値に達するまで、バイパスガスラインを通るガス流量を維持するステップと、を含む。
【0013】
本文脈において、「一定値」という用語は、実際の値がその設定値から1%未満逸脱することを意味することを意図している。例えば、100mbarのガス圧力設定の場合、「一定値」という用語は、測定された圧力が設定値から1mbar未満で逸脱することを意味することを意図している。
【0014】
ガス導入ラインからバイパスガスラインに分離されるガス流量の部分は、例えば約0.0001%〜約99.9%、約0.001%〜約99.9%、約0.01%〜約99.9%、または約0.1%〜約99.9%など、総ガス流量の約0.00001%〜約99.99%の範囲内であり得る。分離される下方範囲は、約0.00001%、約0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約0.5%または約1%であり得る。分離される上方範囲は、約99.999%、約99.99%、約99.9%、約99.5%、約99%、約98%、約97%、約96%または約95%であり得る。複数のバイパスガスラインとして設けられる場合、ガス導入ラインからバイパスガスラインに分離されるガス流量の部分は、約0.0001%〜約99.9%、約0.001%〜約99.9%、約0.01%〜約99.9%、または約0.1%〜約99.9%など、総ガス流量の約0.00001%〜約99.99%の範囲内であり得る。
【0015】
ガス導入ラインを通るガス流量と、バイパスガスラインを通るガス流量との比は、制限部を横切る同じ圧力差に関して、約1:20〜1:1.5の範囲、好ましくは約1:15〜約1:1.5の範囲、より好ましくは約1:10〜約1:1.5の範囲、さらにより好ましくは約1:7〜約1:2の範囲、最も好ましくは約1:5〜約1:2の範囲であり得る。
【0016】
複数のバイパスガスラインとして設けられる場合、ガス導入ラインを通るガス流量と、バイパスガスラインを通る総ガス流量との比は、制限部を横切る同じ圧力差に関して、約1:15〜約1:1.5の範囲、より好ましくは約1:10〜約1:1.5の範囲、さらにより好ましくは約1:7〜約1:2の範囲、最も好ましくは約1:5〜約1:2の範囲であり得る。
【0017】
流量制限アセンブリは、流量制限部の並列配置として提供され得、この流量制限部は、流量制限部の上流にある、第1の制限接合部と、制御ライン接合部の上流のガス導入ライン上の流量制限部から下流にある、第2の制限接合部とで、ガス導入ラインと合流する別個の流量制限ガスライン上に配置されている。「上流」は、分析装置に向かって流れるガスの方向という文脈において言及される。
【0018】
第2の制限接合部は、ガス制御ライン上に配置されたガス流量コントローラの上流にある、ガス制御ライン上に(すなわち、制御ライン接合部により近くに)設けられてもよい。このような構成では、好ましくは、第2の制限接合部と制御ライン接合部との間の制御ライン上には流量制限部がないので、制御ライン接合部(PA)の圧力及び第2の制限接合部(PR2)の圧力は、任意の所与の時間において実質的に同様である。
【0019】
ガス導入ラインを流れるガス用の複数の経路を有することにより、より高い制限からより低い制限に切り替えることによって、ガス導入ラインの圧力/ガス流量を迅速に変更することができる。この目的のために、流量制限ガスラインの下流連結部(第2の制限接合部)は、ガス制御ライン上のガス流量コントローラの上流にあるべきであるが、(i)ガス制御ライン上のそのようなガス流量コントローラの上流、(ii)制御ライン接合部、または(iii)ガス導入ライン上の制御ライン接合部の上流であるが、ガス供給部とガス制御ライン接合部との間のガス導入ライン上に配置された流量制限の下流のいずれかに適切に配置され得る。
【0020】
流量制限アセンブリはまた、あるいは別法として、2つ以上の流量制限部の並列配置として設けられ得、流量制限部の1つがガス導入ライン上に配置され、流量制限部の第2の制限部が、ガス導入ラインに並列に配置されて、流量制限部の上流にある、第1の制限接合部及び制御ライン接合部の上流の流量制限部にある、第2の制限接合部で、ガス導入ラインと合流するバイパスガスライン上に設けられる。
【0021】
追加の流量制限部を含む配列として、流量制限アセンブリを設けることも可能である。したがって、このシステムは、少なくとも1つのさらなる流量制限部を含むことができ、このようなさらなる流量制限部の各々は、流量制限アセンブリ内の第1の流量制限部及び第2の流量制限部と並列に配置された別個のさらなるガスライン上に配置される。
【0022】
流量制限アセンブリは、各々が1つ以上の流量制限部を含み、ガス流量制限部の上流にある、第1の制限接合部及びガス流量制限部の下流にある、第2の制限接合部で合流する複数の並列ガスラインを含むことができる。
【0023】
ガスライン及び/または流量制限部を通るガス流量は、一般に、ガスラインまたは流量制限部の圧力差によって決定される。例えば、ガス導入ライン及び/またはガス流量制限アセンブリ上の第1の流量制限部を通るガス流量は、入口圧力、例えば、ガス導入ライン(Pin)に搬送されるガス供給部からの圧力と、制御ライン接合部(PA)における圧力との間の圧力差によって決定される。したがって、複数の切り替え可能な流量制限部をガス導入ライン上に配置することにより、ガス流量制御が改善される。したがって、複数のこのような流量制限部を配置することが適切であり得る。このような複数の制限部を、制限部の並列配置として、ガス導入ライン上に配置することが特に好ましい。複数の制限部は、切り換え可能であり、すなわちガスは、適切な1つまたは複数の制限部を介して、選択的に導かれ得る。
【0024】
ガス導入ライン及び/または制限ガスライン上に1つまたは複数の弁を配置して、ガス導入ライン及び並列制限部を通るガスの流れを選択的に導くことができる。例えば、システムに、複数の並列流量制限部を設けることができる。このようにして提供された流量制限部は、第1の制限接合部でガス導入ラインに、第2の下流制限接合部でガス導入ラインに流体連結することができる。あるいは、流量制限ラインは、制御ライン上のガス流量コントローラの下流にある制御ラインに連結することができる。制限ガスラインは、複数のガスラインとして設けられる場合、好ましくは、ガス導入ライン及び/またはガス制御ラインとのそれらの接合部の上流の制限部から下流に併合することができる。
【0025】
弁は、各流量制限部を通るガス流量を選択的に方向付け及び/または制御できるように、流量制限部の上流または下流のいずれかに適切に配置することができる。弁は、制限ガスライン上の各々上に弁として配置することができる。あるいは、1つまたは複数の制限部を通るガス流量を選択的に方向付けるために、複数の流量制限部の上流に配置された少なくとも1つの切替弁を設けることができる。したがって、適切に配置された弁の位置を調整することによって、流量制限部を通るガス流量を選択的に制御することができる。
【0026】
幾つかの実施形態では、制限アセンブリは、2つの流量制限部を通るガス流量の比が、制限部を横切る同じ圧力差に関して、約1:20〜1:1.5の範囲内、好ましくは約1:15〜約1:1.5の範囲内、より好ましくは約1:10〜約1:1.5の範囲内、さらにより好ましくは約1:7〜約1:2の範囲内、最も好ましくは約1:5〜約1:2の範囲内になるように構成された2つの並列な流量制限を含むことができる。
【0027】
制限アセンブリはまた、流量制限部のうちの任意の2つを通るガス流量の比が、制限部を横切る同じ圧力差に関して、約1:20〜1:1.5の範囲内、好ましくは約1:15〜約1:1.5の範囲内、より好ましくは約1:10〜約1:1.5の範囲内、さらにより好ましくは約1:7〜約1:1.5の範囲内、最も好ましくは約1:5〜約1:2の範囲内になるように適合された複数の並列流量制限部として設けられ得る。
【0028】
本明細書に記載の流量制限部は、ガスラインにおける流量を制限するための当該技術分野において既知である任意の適切な制限から選択することができる。幾つかの実施形態では、流量制限部は固定流量制限部であってもよい。例えば、流量制限部としては、内径が適切に小さいキャピラリーを用いることができる。
【0029】
一般に、ガス導入ライン及びガス制御ラインは、ガスを輸送するための任意のチャネル、チューブ、導管、キャピラリーなどとすることができる。さらに、これらのガスラインのいずれかまたは両方に、接合部、弁、流量制限部、流量制御部、ゲージなどのような追加の構成要素を配置することができることは当業者には明らかであろう。これらの構成要素は、ガス導入ライン及び/またはガス制御ラインと流体連結していてもよい。本明細書では連結されていると記載されているガスラインは直接連結することができ、または当業者に既知である適切な手段を介して流体連結することができる。
【0030】
ガス制御ライン上のガス流量コントローラは、好ましくは、ガス制御ライン内のガス流量を制御する弁の下流に設けられ得る。ガス流量コントローラは、大気に開放されていてもよく、好ましくは、大気圧における、または大気圧に近い別のガスラインもしくはガス供給部に連結されていてもよい。
【0031】
ガス制御ライン上のガス流量コントローラは、任意の適切なガス流量コントローラであってもよい。幾つかの実施形態では、コントローラは、背圧レギュレータ、マスフローコントローラまたは体積流量コントローラである。好ましい実施形態では、コントローラは背圧調整器である。
【0032】
このシステムの幾つかの実施形態では、少なくとも1つの真空ポンプがガス流量コントローラの下流にあるガス制御ラインに流体連結されている。この真空ポンプは、単一のポンプとして設けられ得る。この真空ポンプはまた、順次配置された複数の真空ポンプとして設けられ得る。真空ポンプの排気は、大気に開放することができる。真空ポンプは、質量分析計の真空ポンプシステムの一部であってもよい。分析装置は、好ましくは真空下であり、例えば、同一の真空ポンプまたは真空ポンプの配列を使用して行われる。
【0033】
本発明によるガス導入システムはまた、複数のガス制御ラインを含むシステムとして設けられ得る。複数のガス制御ラインとして設けられる場合、ガス制御ラインは、単一のガス流量コントローラに連結されることが好ましい。結果として、単一のガス流量コントローラを使用して、衝突ガスなどの複数のガスタイプの流れを調整することができる。別個のマスフローコントローラは、各ガス導入ラインに必要とされないので、費用を節約する。さらに、ガス流量コントローラを、分析装置に搬送するガスライン上に直接位置付けしないことが有用である。これは、マスフローコントローラなどのガス流量コントローラが、通常はあまりよく置換されず、さらにガス交換後に置換するのに長い時間がかかる、かなり大きなデッドボリュームを有しているからである。本発明によるガス導入システムは、直列ではなくむしろ別個のライン上の単一のフローコントローラを使用して、ガス導入ラインの背圧を制御するシステムを提供し、結果として、従来の直列での解決策と比較して、ガスを切り替えた後にシステムが平衡に達するのに必要な時間が最小限に抑えられる。
【0034】
1つの配列では、本発明によるガス導入システムは、質量分析計の衝突セルのような低圧で動作する装置と組み合わせて提供される。したがって、ガス導入ラインは、質量分析計の衝突セルに流体連結され得る。
【0035】
ガス導入ライン及びガス制御ライン上の弁がどちらも開いている場合、ガスは、ガス導入ライン及びガス制御ラインを通って流れることができる。ガス供給部(Pin)からの入口側圧力は、外部の減圧弁によって、例えばガスフラスコで定義され得る。制御ライン上のガス流量コントローラは、ライン内のガスの流量を調整する。ガス流量コントローラは、背圧調整器であり得る。このような構成では、ガス制御接合部(PA)の圧力は、背圧調整器によって決定される。ガス導入ラインを通ってガス制御接合部に向かうガスの流量は、ガス供給部(Pin)からの圧力と、ガス導入ライン上に配置されたガス制御接合部(PA)及び制限部での圧力との差によって決定される。システムは、例えば、ガス導入ライン上に比較的大きな制限部が存在して、増加した圧力に変化がある場合には、背圧調整器の設定変更に、より緩やかに応答する。背圧調整器による圧力設定の変更に続いて、システム(すなわち、圧力PA)は、ゆっくりと応答する。ガス導入ライン上のより小さな制限部への切り替え、例えば、より小さな制限部(例えば、より大きい内径キャピラリ)を有する制限ラインにガス流量を切り替えることによって、制御ライン接合部Aに向かってガス流量が増加することになる。その結果、システムは、より速く平衡に達する(すなわち、圧力PAは、ガスが下部制限部を通って流れるときにより速く安定する)。背圧調整器による新しい設定に基づいてシステムが平衡に達すると、システム内のガス消費量を最小にするために、ガス流量をより大きな制限(ガス流量の減少)に切り替えることができる。
【0036】
一般に、ガス制御ライン接合部Aの圧力は、分析器の圧力(通常は非常に低く、特に、分析器が質量分析計の場合には非常に低い)から、ガス供給部(Pin)の圧力と同程度に高い範囲に調節することができる。背圧調整器及びガス導入ライン上の並列制限部を使用して、圧力を調節することにより、分析器へのガス流量(これはA(PA)及び分析器の圧力差によって決定される(非常に低い))を信頼性の高い効率的な方法で調整することができる。
【0037】
制御ライン上のガス流量コントローラ、例えば背圧調整器が大気に開放されている配列では、ガス制御ライン接合部の最低圧力は、約1bar(周囲圧力)である。しかしながら、システム内の流量範囲においてより大きいダイナミックレンジを達成するためには、例えば、弁定格に起因して、より低い圧力でシステムを作動させること、及びより高い流量範囲を達成するためにも有利であり得る。
【0038】
したがって、システムの幾つかの実施形態では、少なくとも1つの真空ポンプが、ガス流量コントローラの下流にあるガス制御ラインに流体連結される。真空ポンプは、単一のポンプとして設けられ得る。真空ポンプはまた、順次配置された複数の真空ポンプとしても設けられ得る。真空ポンプの排気は、大気に開放することができる。真空ポンプはまた、質量分析計の真空ポンプシステムの一部でもあり得る。分析装置は、例えば、同一の真空ポンプを使用する、好ましくは真空下である。
【0039】
制御ライン接合部の調節可能な圧力と組み合わされた、このシステムにおける流量制限部は、制御ライン接合部の下流にある、任意の望ましいガス流量を、分析装置に提供するように、選択することができる。したがって、分析装置へのガス流量は、一般に、約0.1〜約100mL/分、または約0.2〜約50mL/分、または約0.3〜約30mL/分の範囲であり得る。さらに、ガス導入ラインへのガス圧力及びガス制御ライン接合部におけるガス圧力に依存して、存在する場合には、ガス導入ライン(好ましくは、制御ライン接合部の上流及び下流にそれぞれ配置される)上の第1の流量制限部及び第2の流量制限部を通るガス流量の比(例えば、制御ライン接合部と分析装置との間の導入ガス流量制限部)は、任意の所望の値をとることができる。この文脈では、第1の流量制限部は、(2つ以上の制限部がガス流量に対して開いているとき)、流量制限アセンブリの流量制限部のいずれか、またはそれらの組合せであってもよい。幾つかの実施形態では、第1の流量制限部及び第2の流量制限部を通るガス流量の、ガス入口での固定ガス圧力での比は、フローコントローラによって設定される背圧に依存して、約1:1〜約1000:1、約1:1〜約500:1、約1:1〜約100:1、約1:1〜約50:1または約1:1〜約20:1の範囲内であり得る。幾つかの実施形態では、第1の流量制限部及び第2の流量制限部を通るガス流量の比は、1:1〜1000:1の範囲、1:1〜500:1の範囲、1:1〜100の範囲、1:1〜50:1の範囲、または1:1〜20:1の範囲であり得る。幾つかの実施形態では、制限部は、第1の流量制限部及び第2の流量制限部を通るガス流量の比が、両方の制限部を横切る同じ圧力差に対して、1:10〜10:1の範囲、1:8〜8:1の範囲、1:5〜5:1の範囲、または1:3〜3:1の範囲内にあるように構成される。
【0040】
また、システムが異なるガスと共に使用される場合、各ガスは異なるガス導入ラインに連結され得ることにも留意されたい。異なるラインに異なる制限部を取り付けることができるので、ガス供給圧力が一定に維持される場合でも、異なるガスについて異なる流量を達成することができる。このような各ガス導入ラインは、存在する場合、制御ライン接合部Aにおけるガス流量の急激な変化を可能にするために、本明細書に記載されているような切り替え可能な流量制限部を備えることができる。
【0041】
ガス制御ライン上のフローコントローラは、ガス導入ライン、特に制御ライン接合部の圧力を設定する。ガス制御ライン接合部の下流にある、ガス導入ライン上に存在し得る第2の流量制限部を通るガス流量は、この圧力(PA)と分析装置内の圧力との間の差に比例する。分析装置内の圧力は、200mbar未満、100mbar未満、50mbar未満、40mbar未満、30mbar未満、20mbar未満、10mbar未満、5mbar未満、1mbar未満、0.05mbar未満、0.01mbar未満、0.005mbar未満または0.001mbar未満であり得る。第1のタイプの装置のための分析装置内の圧力は、約5〜200mbar、約10〜100mbar、約1〜0.001mbar、約0.1〜0.001mbarまたは約0.01〜0.001mbarの範囲内であり得る。第2のタイプの分析装置については、装置内の圧力は、約0.1〜約10-4mbar、約0.01〜約10-4mbar、または約0.001〜約10-4mbarであり得る。このように、システム内の流量制限部の任意の所与の構成に対して、ガス流量コントローラを使用して、ガス制御ラインの背圧を設定し、それによって分析装置への流量を設定することができる。
【0042】
ガス流量コントローラの設定を調節することによって、ガス制御ライン内の第2の背圧を第1の背圧とは異なるように設定することができ、分析装置への第2の流量をもたらす。ガス制御ライン接合部の上流にある、ガス導入ラインの代替及び/または追加の制限部を通るガス流量を可能にすることにより、システムは、制御ライン接合部での圧力が増加した場合、急速な平衡(制御ライン接合部での一定の圧力及び/またはガス流量)を達成することができる。システムが平衡に達した場合(すなわち、制御ライン接合部の圧力が新しいより高い値で安定した場合)、システムのガス流量を最小にするより高い制限に切り替えるスイッチ(制御ラインを通って排出されるガスの量を最小限に抑えることによって)を作ることができる。ガス流量コントローラの設定を変更することによって、分析装置への異なる流量を達成するように、背圧のさらなる調整を行うことができる。このようなさらなる調節の各々について、ガス導入ライン上の切り替え可能な流量制限部を使用して、ガス流量コントローラ設定の各変化に続いて、急速な平衡に達することができる。
【0043】
ガス流量コントローラの設定間の変更は、制御ライン接合部で第1のガス流量を達成するために、第1の期間の間、第1のバイパスガスラインを通るガス流を迂回させることと、制御ライン接合部で第2のガス流量を達成するために、第2の期間の間、第1のバイパスガスラインと並列に配置された第2のバイパスガスラインを通るガス流を迂回させることと、を含み、第1のバイパスガスライン及び第2のバイパスガスラインは、2つのバイパスガスラインを通る流量がバイパスラインを横切る所与の固定されたガス圧力差に対して異なるように、異なる流量制限部を含む。その結果、第1のバイパスガスラインを通るガス流量を選択的に許容することによって、制御ライン接合部のガス流量を第1の流量から第2の流量に調節することができ、第2のバイパスガスラインを通るガス流量を選択的に許容することによって、制御ライン接合部のガス流量を第3の流量に調節することができる。同様の方法で、2つ以上の並列なバイパスガスラインを介して、ガス流を迂回させて、ガス流量をさらなるガス流量設定に調節することができる。
【0044】
ガス制御ラインの背圧は、一般に、Pinよりも小さい値の、ガス導入ラインへの圧力(ガス供給部における圧力)とすることができる。この文脈では、「bar(g)」は、大気圧を超える圧力である「bar(gauge)」を示し、「bar(a)」は、絶対圧力である「bar(absolute)」を示す。幾つかの実施形態では、背圧は、5bar(g)未満、1.5bar(g)未満、1bar(a)未満、500mbar(a)未満、200mbar(a)未満または100mbar(a)未満である。ガス制御ラインの背圧は、1mbar(a)超、または10mbar(a)超、または50mbar(a)超、または100mbar(a)超であり得る。ガス制御ラインにおける好ましい範囲の背圧は、1.5bar(a)〜100mbar(a)、または1.5bar(a)〜50mbar(a)、または1.5bar(a)〜10mbar(a)、または1bar(a)〜100mbar(a)、または1bar(a)〜50mbar(a)、または1bar(a)〜10mbar(a)であり得る。このようにして、最大10倍、最大50倍、最大100倍、最大150倍、最大200倍、最大250倍などの広い流量の範囲を達成することができる。
【0045】
ガス制御ライン内のガス流量を制御する弁は、ガス制御ライン上の弁として、またはガス制御ラインと流体連通するように、適切に設けることができる。ガス導入システム内に複数のガス制御ラインを設けることができ、複数のライン内のガス流量を制御するための少なくとも1つの弁を設けることも可能である。複数のガス制御ラインは各々、それぞれのガス導入ラインに連結することができる。そのようなガス導入ラインの各々は、本明細書に記載されるような切り替え可能な流量制限部を備えることができる。複数のガス制御ラインはまた、1つ以上のガス制御ライン接合部で合併することもできる。制御ラインは、1つの接合部ですべて合併することができる、または複数の接合部で合併することができる。制御ラインは、1つ以上のガス制御ライン接合部を介して、ガス制御ライン上のガス流量コントローラの上流にある、単一のガス制御ラインに合併することが好ましい。このようにして、単一のガス流量コントローラを使用して、ガス制御ライン内のガス流量を調整することができる。複数のガス制御ライン内のガス流量を選択的に制御するために、ガス制御ライン上に1つ以上の弁を設けることができる。この弁は、個々のライン上及び/または1つ以上のガス制御ライン接合部に設けることができる。
【0046】
したがって、さらなる実施形態では、本発明によるガス導入システムを設けることができ、このシステムは、
− 各々が分析装置に流体連結された、複数のガス導入ラインと、
− ガス導入ライン上に配置された、またはガス導入ラインに流体連結され、少なくとも2つの切り替え可能な流量制限部を備えた、少なくとも1つのガス流量制限アセンブリと、
− それぞれのガス導入ラインに流体連結された複数のガス制御ラインと、を備え、
− ガス制御ラインは、前記ガス流量コントローラの下流にある、1つ以上のガス制御ライン接合部で合併する。
【0047】
一実施形態では、複数のガス導入ラインの各々に配置される、またはそれらに連結されるガスフロー制限アセンブリが存在し得る。このように配置されたガス流量制限アセンブリは、上述したように、2つ以上の並列流量制限を含むことができる。
【0048】
ガス導入システムは、制御ライン接合部と分析装置との間のガス導入ライン上に配置された少なくとも1つの導入ガス流量制限部(「第2のガス流量制限部」)をさらに含むことができる。
【0049】
本発明によるガス導入システムが複数のガス導入ラインを含むシステムとして設けられる場合、各ガス導入ラインのガス流量は、ガス導入ラインの各々のガス流量の一部を分離することによって、制御することができる。ガス入口ラインの各々におけるガスの流れは、少なくとも1つのガス供給部によって提供することができる。複数のガス供給部が使用される場合、複数のガス導入ラインは、分析装置内のガス組成に関して均等に達するのに必要な最小の切り替え時間で、分析装置内に流入するガス間で切り替えることができる。
【0050】
複数のガス制御ラインとして設けられる場合、ガス制御ラインは、単一のガス流量コントローラに連結されることが好ましい。そのような設定の1つの利点は、単一のガス流量コントローラを使用して、衝突ガスなどの複数のガスタイプの流量を調整できることである。別個のマスフローコントローラは、従来技術と比較して、各ガス導入ラインに対して必要とされないので、コストを削減する。さらに、ガス流量コントローラを、分析装置に搬送するガスライン上に直接位置付けしないことが有利である。これは、マスフローコントローラなどのガス流量コントローラが、非常に大きなデッドボリュームを有し、ガス交換後に置換するのに長い時間を要するためである。
【0051】
ガス導入ライン上の切り替え可能な流量制限部と組み合わせることにより、直列ではなくむしろ別個のライン上の単一のフローコントローラを使用して、ガス導入ラインの背圧を制御する解決策が提供され、切り替え可能な流量制限部の使用により、ガス交換後及び/または圧力設定変更後に、システムが平衡に達するのに必要な時間は、従来の直列での解決策と比較して、最小限に抑えられる。
【0052】
また、少なくとも1つの流量制限部を、ガス制御ライン上に、または複数のガス制御ラインとして設けられた場合には、したがって設けられた制御ラインの内の1つ以上の上に設けることもできる。このような流量制限部によって、ガス制御ライン内のガス流量をさらに制御して、例えば、ガス制御ラインの逆拡散の危険を防止または最小限に抑えることができる。
【0053】
システムが実際に適切なガス流量でガスを送達することを確実にするためには、ガス導入システム内のガス流量の正確な較正が重要である。ガス導入システムは、それらの物理的特性に重大な影響を及ぼし得る外部条件、特に温度の変化に敏感であり得る。例えば、ガスラインを通る質量流量は、温度がガス密度及びガス粘度に及ぼす影響により温度に依存する。結果として、温度変動は、実際のガス流量に重大な影響を及ぼす可能性がある。例えば、システム内のガス流量を調整するために使用されるガス流量コントローラ(またはコントローラ)の下流にある、流量制限部を包含するガス導入システムでは、温度変動の重要な影響があり、その結果、システムが連結されている分析装置へのガスの実際の流量は、ガス流量コントローラでのガス流量とは異なる場合がある。
【0054】
ガス導入システム内のガス流量の正確な較正は、問題となり得る。これは、部分的には、一般に使用されるキャピラリーの機械的公差のために、制御圧力に対する質量流量の依存性の正確な較正が不可能であるという事実による。さらに、高精度な較正を達成するためには、温度を含むシステムの様々な特性を高精度で知る必要がある。
【0055】
一般に、ガス密度は、以下のように任意の所与の温度で圧力の一次関数である。
【数1】
【0056】
結果として、密度は圧力によって直線的に変化する。質量流量は、次式により決定することができる。ここでa1とa0は密度と圧力の線形関係を表す係数である。
【数2】
【数3】
【0057】
さらに、衝突セルへの質量流量は、ガス密度及び粘度に対する温度の影響により、温度に依存する。その結果、制御ライン接合部の下流にある、ガス導入ラインの少なくとも一部を、一定温度に維持することが望ましい。
【0058】
したがって、一方では、ガス導入システム(または少なくともその一部)を一定温度に保ち、他方では、ライン上の任意のガス流量コントローラの下流にあるガス流量及び/または流量に影響を及ぼし、例えば温度変動に敏感であるシステム内の他の物理的構成要素を決定することが望ましい。
【0059】
本発明はこれを達成するための手段を提供する。したがって、本発明のさらなる態様では、分析装置のガス導入システム内のガス流量を較正するためのシステムが設けられ、このシステムは、(i)分析装置にガスを供給するためのガス導入ラインと、(ii)第1の較正接合部を介して、ガス導入ラインに流体連結されたガスフロー較正ラインであって、少なくとも1つのガス流量計を含むガスフロー較正ラインと、(iii)ガス導入ラインを介して分析装置に、または第1の較正接合部を介してガス流量較正ラインに、ガス流を選択的に導くための少なくとも1つの弁と、を備える。これにより、システム内のガス流は、少なくとも1つの弁の第1のガス流設定において、ガス導入ラインを介して、分析装置に導かれ、ガスフロー較正ラインをバイパスし、少なくとも1つの弁は、ガスフロー較正ラインを介して、分析装置に導かれる。結果として、第2のガス流設定におけるガスフロー較正ラインで測定されるガス流量は、較正接合部に向かうガス導入ラインに一定のガス流量が与えられた場合、第1のガス流設定における分析装置へのガス流量の測定値である。
【0060】
関連するさらなる態様では、分析装置のガス導入システムでのガス流量を較正する方法が提供され、このガス導入システムは、少なくとも1つのガス供給部からのガスを分析装置に提供するための少なくとも1つのガス流量コントローラと、少なくとも1つのガス流量コントローラの下流にある、較正ライン接合部でガス導入ラインに流体連結された少なくとも1つのガス較正ラインと、を備え、この較正ラインは、少なくとも1つの較正ガス流量計を備える。
【0061】
この方法は、(a)少なくとも1つのガス流量コントローラによって分析装置にガス流量を設定するステップと、(b)第1の期間に、較正ガス流量コントローラによって決定された第1の流量でガス較正ラインを通ってガスを流し、同時に、ガスが較正ライン接合部の下流にある、ガス導入ラインを通って流れるのを防止するステップと、(c)第1の期間のうちの少なくとも一部の間、ガス流量計によって、ガス較正ライン内のガス流量を決定するステップと、(d)第1の期間に続いて第2の期間に、ガス導入ラインを通してガスを分析装置に流し、同時に、ガス較正ラインを通るガス流量を防止するステップと、を備え、第1の期間及び第2の期間中、ガス流量コントローラのガス流量設定は、一定値に維持され、ガス較正ライン及び較正ライン接合部と分析装置との間に位置するガス導入ラインの少なくとも一部は、一定の温度に維持される。その結果、第1の期間中にガス較正ラインで決定されるガス流量は、第2の期間中のガス導入ライン及び分析装置へのガス流量の測定値である。
【0062】
較正システムは、一般に、システムによって較正されたガス流量、すなわち、較正ラインを通過しない流量が、分析装置への通常のガス流の流量制御パラメータの設定に依存しないように、ガス導入システム内の流量制御手段の下流に取り付けられるべきである。
【0063】
幾つかの実施形態では、較正は、一端が、ガス導入ライン上において、ガス流量コントローラなどのガス流量制御手段の下流でガス導入ラインに連結される。較正ラインは、他端が、ガス導入ラインと分析装置との接合部に近接し得る下流位置で、ガス導入ラインに連結され得る。このような実施形態の1つでは、較正ラインは、システム内のガス制御手段の下流にある、第1の位置と、ガス導入ラインの接合部及び質量分析計の衝突セルのすぐ上流にある、第2の下流位置で、ガス導入ラインに連結される。
【0064】
したがって、一実施形態では、ガス流量較正ラインは、第2の較正接合部でガス導入ラインにさらに連結され、システム内のガス流は、第2の設定において、ガス流量較正ラインを通って、第1の較正接合部から、第2の較正接合部へ導かれ、第2の較正接合部及び分析装置を連結するガス導入ラインの一部を介して、分析装置に導かれる。
【0065】
あるいは、較正ガスラインは、ガス導入ラインと分析装置との接続部とは別の接続部を介して、分析装置に連結されてもよい。言い換えれば、較正ガスラインは、ガス導入システムのガスコントローラの下流にある、その端部の一方で、及びガス導入ライン及び分析装置の接続部から物理的に分離された接続部を通る分析装置の下流端部で、ガス導入ラインに連結され得る。
【0066】
したがって、幾つかの実施形態では、ガス流量較正ラインは、ガス導入接合部から流体的に分離された較正導入接合部を介して、分析装置にさらに連結され、システム内のガス流は、第2の設定において、ガス流較正ラインを通って、第1の較正接合部から、較正導入接合部まで、及び分析装置内へと流れる。
【0067】
一般に、較正ガス流量システムは、ガス流量、特に本明細書に記載のガス流量システムを較正できることが望ましい任意のガス流量システムと組み合わせることができることを理解されたい。
【0068】
システム内のガス流が、システムの較正中にガス流から逸脱しないことを確実にするために、較正ライン及びガス導入ラインの少なくとも一部を一定温度に保つことが好ましい。一般に、温度の変化に敏感であり、システム内のガス流量コントローラの下流に一定温度で設置されたガス導入システムの較正ラインと任意の構成要素を維持することが有用である。
【0069】
したがって、第1の較正接合部の下流にあるガス導入ラインの少なくとも一部を、一定温度に維持することが好ましい場合がある。幾つかの実施形態では、一定温度でガス導入ライン上のガス流量制御手段から分析機器まで伸びるガス導入システムの部分を維持することが好ましい場合がある。本明細書で説明されるように、ガス導入ラインのガス流量が、ガス制御ライン上に位置付けされたガス流量コントローラによって制御される場合、ガス制御ライン接合部と分析装置との間に一定温度で位置するガス導入ラインの部分を維持することが有用な場合がある。
【0070】
好ましくは、温度は、その設定値の10%未満(℃で)、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは4%未満、その設定値の3%未満または2%未満まで一定である。あるいは、温度は、+/−5℃未満、より好ましくは+/−4℃未満、さらにより好ましくは+/−3℃未満、+/−2℃未満、+/−1℃、または+/−0.5℃未満まで一定であり得る。
【0071】
したがって、システムは、システムを囲むように適合されたハウジングをさらに備えることができ、ハウジングと、一定温度でハウジング内の構成要素を維持するための手段をさらに備えることができる。一般に、ハウジングは、較正ラインと、ガス流の温度変化の影響を受けやすく、システム内のガス流量コントローラの下流に設置されたガス導入システムの構成要素を囲むことができる。ハウジングは、少なくともガス流較正ラインと、第1の較正接合部から分析装置に延びるガス導入ラインの部分とを囲むことができる。あるいは、ハウジングは、ガス制御ライン接合部と分析装置との間に位置する、ガス導入ラインの部分を囲むことができる。
【0072】
ガス流量を較正するためのシステムは、一般に、本明細書に一般的に記載されているようなガス導入システムの構成要素であり、較正システムは、通常、導入ガス流量制限部と分析装置との間に配置することができる。一実施形態では、較正システムは、導入ガス流量制限部の下流にある、ガス導入ラインに、上流端で連結され、分析装置の上流にある、ガス導入ラインに下流端で連結されるように配置される。あるいは、ガス流量較正システムは、その下流端において、ガス導入ラインをバイパスして、分析機器に直接連結することができる。
【0073】
本発明によるガス導入システムは、少なくとも1つのガス供給部と組み合わせて提供され得ることを理解されたい。好ましくは、システム内のガス供給部からガス導入ラインへのガス流量を制御するための少なくとも1つの弁も設けられる。このシステムはまた、複数のガス供給部と共に使用するように構成することもできる。そのような配列では、各ガス供給部は、それぞれのガス導入ラインに連結することができる。さらに、存在する場合、複数のガス導入ラインに、上述のようなガス流量較正ラインを設けることができる。
【0074】
本明細書に記載のガス導入システムは、少なくとも1つの弁の弁位置を制御するための少なくとも1つのコントローラを含むように構成することができる。コントローラは、少なくとも1つのシステムパラメータ、例えば、システム内のガスの存在及び/または不在、濃度、ガス流量及び/または圧力(システム内の1つ以上の地点)を反映するパラメータについての入力を受け取り、かつパラメータ情報に基づいて、少なくとも1つの弁に信号を提供することができるように、好ましくは適合され得る。システムパラメータはまた、ガス導入システムが連結されている衝突セル内のガス組成及び/または濃度及び/または圧力に関するデータを含むことができる。幾つかの実施形態では、コントローラは、少なくとも1つのガスの濃度または圧力または流量に関する入力を受信するように適合され、コントローラは、入力パラメータに基づいて、システム内の弁のうちの少なくとも1つの位置を調節することができる。幾つかの構成では、コントローラは、少なくとも1つの切替弁などの少なくとも1つの弁の位置を調節するように適合される。したがって、弁はまた、コントローラからの信号に応じてそれらの位置を変更するために、コントローラからの入力を受信することができるように適合される。コントローラはまた、システムの1つまたは複数の段階の間に経過した時間、例えば、システム内の衝突ガスのタイプが変更されてから過ぎた時間に関する入力を受信するように適合され得る。したがって、コントローラは、サンプルガス濃度、サンプルガスの存在またはサンプルガス不在、または時間パラメータに基づいて、1つまたは複数の弁の位置を調整するように適合され得る。コントローラによって制御される1つまたは複数の弁は、本明細書に記載される任意のガスライン(例えば、ガス導入ライン、ガス制御ラインなどの弁)上のいずれか1つまたは複数の弁を備えることができる。コントローラはまた、マスフローコントローラまたは背圧調整器等の、システム内の少なくとも1つのフローコントローラの位置を調整するように構成され得る。
【0075】
本発明の特定の実施形態では、システムの1つ以上の接合部がT字接合部として設けられる。この文脈において、T字接合部は、3つの流路、すなわち3つのアームを包含する接合部の任意の接合部を意味する。T字接合部は、T字型、Y字型、または3つの直交チャネルの接合部として設けられ得る。接合部は、3つのチャネルがすべて同じ平面内に位置する2次元接合部としてさらに設けられ得る、あるいは接合部は、3つのチャネルがすべて同じ平面内に位置しない(すなわち、三次元の「三脚」として)設けられ得る。
【0076】
本発明によるシステムの構成要素、例えばガス導入ライン、流量制限アセンブリ、較正ライン及びガス制御ライン、また本明細書に記載されている接合部を含む構成要素は、機械加工されたブロック、すなわち1つの機械的部品内に設けられ得る。これは、システムの製造またはシステムの一部分を、金属ブロックなどの大量の材料から機械加工することによって行うことができることを意味する。さらに、機械加工されたブロック内に製造されているか否かにかかわらず、T字接合部を使用することにより、接合部の開口部を通る流量が完全な機械的制御下にあることが確実にされる。T字接合部の設計は、拡散経路が十分に分離されていることを確実にし、その流量特性が十分に決定され、予測可能であるため、システムのセットアップ及び較正を容易にする。
【0077】
さらに、本発明は、例えば、分析システムにおいてガスを輸送するためのガス流を提供するキャリアガス導入システムを含む、当技術分野で既知のガス導入システムと組み合わせられ得ることを理解されたい。
【0078】
上記の特徴及び本発明のさらなる詳細は、本発明をさらに説明することを意図しているが、決してその範囲を限定するものではない、以下の実施例においてさらに説明される。
【0079】
当業者であれば、以下に説明する図面は説明のためのものに過ぎないことを理解するであろう。図面は、本教示の範囲を決して限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】ガス流量コントローラが配置されたガス制御ラインを含むガス導入システムを示す。
図2A】本発明のガス導入システムの実施形態を示し、下流端がガス制御ラインに連結されたバイパスガスラインを含む。
図2B】本発明のガス導入システムの実施形態を示し、下流端がガス導入ラインに連結されたバイパスガスラインを含む。
図3】圧力設定の変化に続く時間の関数として、バイパス接合部を通るガス流量の不在(A)または存在(B)における制御ライン接合部Aでの圧力の変化を示す。
図4】衝突セル内にガスを送達するガス導入ラインの図3に示す、圧力変化に対する質量分析計の衝突セルでの質量流量の変化を示す。
図5】較正ガスライン、サーモスタッドチャンバ内にあるガス導入ライン及びガス較正ラインの一部を包含する質量分析計の衝突セルにガスを送達するためのガス導入ラインを示す。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下、図面を参照しながら本発明の例示的な実施形態を説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明のさらなる理解を提供するために設けられる。
【0082】
以下の説明では、一連のステップについて説明する。当業者であれば、文脈によって必要とされない限り、ステップの順序は、結果として得られる構成及びその効果にとって決定的ではないことを理解するであろう。さらに、ステップの順序にかかわらず、記述されたステップの幾つかまたはすべての間に、ステップ間の時間遅延の有無が存在し得ることは、当業者には明らかであろう。
【0083】
本発明は、同位体分析、光学分光法によるガスの一般的な分析、質量分析技法または他のタイプの分光法技法測定法を含む、分析方法に適用可能であることを理解されたい。したがって、一般に、システム内で分析されているガスは可変である。さらに、本発明によるシステム及び方法は、光学分光計の好ましい実施形態に続く実施形態で説明されるが、本発明はまた、質量分析計を含む他の分光計にも適用可能であることを理解されたい。
【0084】
図1を参照すると、ガス供給部10から質量分析計の衝突セル16にガスを送達するためのガス導入システムが示されている。衝突セルは、真空ポンプによって送り出され、結果として、システムは、高圧力から低圧へとガスを衝突セルに送達する。単一のガス供給部10が示されているが、他の実施形態では、ガス供給部10は、選択されたガスを衝突セルに供給するために、切り替え可能な複数の異なるガス源であってもよい。このシステムは、ガスライン接合部Aのガス導入ライン1に連結されたガス制御ライン2を有する。第1の流量制限部12及び第2の流量制限部13が、ガス導入ライン上に配置されている。ガス導入ライン上に配置された弁11、14及びガス制御ライン2上の弁19も存在する。フローコントローラとして機能する背圧調整器20が、弁19の下流のガス制御ライン上に配置されている。背圧調整器20の下流には、真空ポンプ21が設けられている。他の実施形態では、背圧調整器はポンプ輸送されず、代わりに排気ラインを介して単に大気に排気されてもよい。
【0085】
ガスが衝突セル内に送達されない場合、弁14及び場合によって弁19(または弁11)は閉じたままである。弁を開くと、ガスが制限部12を通って制御ライン接合部Aに向かって流れる。システム(PA)におけるこの点の圧力は、背圧調整器20によって調整される。したがって、制限部12を通るガス流は、Pin、ガス供給部からの圧力、及び制御ライン接合部Aの圧力PAによって決定される。ガス流は、制御ライン接合部から、第2の流量制限部13を通り、衝突セル16へと続く。衝突セル内の圧力は非常に低く、例えば、0.01mbar以下であるため、第2の制限部を通る流量は、ポアズイユの式に従ってPAによって制御される。
【0086】
一般に、ガス導入システム内の質量流量は、以下の式によって計算することができる。
【数4】
【0087】
図1に示すように、それぞれ
が制限12、13及び19の質量流量である場合、G1及びG2は、それぞれ接合部Aの上流及び下流のガス導入ラインのコンダクタンスであり、Pin、PA及びPOは、それぞれガス源、制御ライン接合部及び衝突セルでの圧力であり、Tは温度であり、Rはガス定数である。
【0088】
システム内の流量は、Pin及び/またはPAを変えることによって、及び/または流量制限部12、13を変更することによって調節することができる。例えば、PAを2倍にすると、第2の流量制限部13を通る流量の約4倍の増加、PAの5倍の増加は流量の20倍超の増加などをもたらす。
【0089】
制御ライン2を通る流量がガス導入ラインへの逆拡散が起こらないように常に十分に高くシステムを構成するときは注意が必要である。しかしながら、これは、システム内の圧力と制限を調節し、ガス制御ラインの制限部を調整することによって達成可能である。
【0090】
真空ポンプ21は、大気に開放された排気を有することができる。しかしながら、複数の真空ポンプ、例えば連続的に配置されたポンプをシステムと共に使用することもでき、シーケンスの最終ポンプは大気への排気を有する。真空ポンプ21はまた、質量分析計の真空ポンプシステムの一部であってもよく、または質量分析計の真空ポンプシステムに連結されていてもよい。真空ポンプ21及び16は、幾つかの実施形態では、同じポンプまたは同じポンプシステムの一部であってもよい。
【0091】
複数のガスのガス流量を単一のフローコントローラを用いて個別に制御できるように、システムをセットアップすることができる。一例として、ガス制御ライン2は、第1のガスを運ぶ第1のガスラインを備えた第1の接合部を有し、第2のガスを運ぶ第2のガスラインを備えた第2の接合部を有する第1の分岐を有するように、分岐され得る。各分岐は、各ガスラインからの流れを制御するための弁を有する(例えば、一方のガスラインから一方の分岐へのガス流を流すが、他方のガスラインから他方の分岐には流入させない)。当業者であれば、このような設定は、追加のガスラインを介して任意の数のガスに対して等しく適用できることを理解するであろう。
【0092】
図1の設定では、衝突セル内の低ガス圧から高ガス圧への移行(すなわち、セルへの低ガス流量からセルへの高ガス流量への移行)が、所望の時間より長くかかる場合がある。本発明の目的は、この問題に取り組むことである。
【0093】
図2Aでは、図1のシステムと同様のガス導入システムが示されており、したがって、同様の部品は同様の参照番号を有する。ガス導入システムは、第1の接合部4で導入ガスライン1に連結され、接合部5で制御ラインに連結されるバイパスガスライン3を含む。バイパスガスラインは、バイパスライン内のガス流量を調整するための制限部18及び弁17を包含する。このようにして、追加の制限部18が、ガス導入ライン上の制限部12と並列にバイパスライン上に設けられていることが分かる。制限部18は、好ましくは、ガス導入ライン1上の制限部12よりも制御ライン接合部Aでの所与の圧力に対してより大きいガス流量を許容するように設けられる。しかしながら、制限部12と比較して同量のまたは少ない流量を提供する制限部18でさえ、弁11と17の両方が開いている場合、総ガスコンダクタンスが制限部12と18を通るコンダクタンスの和であるので、ガス供給部10からの増加した流量を制御ライン接合部Aにさらに提供する。
【0094】
図2Bに示すシステムは、制御ライン接合部Aの上流にある、ガス導入ライン上に接合部5(第2の制限接合部)が設置されている場合のみ、図2Aに示されるそれと異なる。2つの構成は、制御ライン接合部での流量/圧力の調整に関して同一の結果を提供することが理解されるであろう。図示されたシステムでは、他の部品及びその機能は同一である。以下の説明は、図2A及び図2B両方の図に示されるようなシステムに適用される。
【0095】
供給部10からバイパスライン3を通って(弁17を開くことによって)ガス流量を許容することにより、必要に応じて、制御ライン2(及び、それにより制御ライン接合部A)へのガス流量を増加させることができる。その結果、背圧調整器20の設定値が制御ライン接合部Aの圧力を増加させるように(及び、それにより衝突セルへの流量を増加させるように)増加した圧力設定値に変更されると、システム内の流量は、ガス導入ライン1及び制限部12のみを通る流量を許容するのと比較して、バイパスラインが開いている場合、より速く新しい平衡に達する。これは、全体のコンダクタンスが増加するという事実の結果である、すなわち、ガス源G1(ガス導入ライン)及びGbp(ガスバイパスライン)から離れる2つのガスラインの総コンダクタンスGTは、代数的2つのコンダクタンスの合計である。
【数5】
【0096】
追加の並列バイパスラインがシステム内に設けられている場合、ガスコンダクタンス全体は、ガス流量に対して開いている各ガスラインの個々のコンダクタンスの合計である。ここで、Gnは個々のガスラインのガスコンダクタンスである。
【数6】
【0097】
システム内のガス消費量を最小にするために、バイパスラインは、A(PA)のガス圧が一定値に達するか、または実質的に一定値(平衡)に達するまでガス流量に開放されたままにすることができる。この時点で、弁17を閉じ、ガスタンク10から制御接合部Aへのガス流量を制限部12によって決定することができる。
【0098】
設定の利点は、図3に示すデータによって示される。ガス制御ライン接合部A(PA)でのガス圧力は、0.2bar〜0.6barに設定された背圧調整器のスイッチに続いて、時間の関数として示される。下側の曲線(A)は、図1に示すようなガス導入システム、すなわち、バイパス接合部を包含しないシステムの圧力変化を示す。明らかに、この挙動は、図2のシステムのバイパスガスラインを通るガス流がない場合にも観察されるであろう。背圧調整器の設定値が変更された後、制御ライン接合部Aに向かうガス流量が制限部12によって決定されるため、システムは、(A)に示すように、かなりゆっくりと応答する。上側の曲線(B)は、図2に示すシステムの利点を示す。バイパスガスラインを通るガス流量を許容することにより、システムは、4以上の因数によって図示された場合では、圧力設定値の変化に非常に迅速に応答する。図示の例では、ガス導入ラインとバイパスライン両方の内径は、それぞれ0.1mm、長さは10cmと5cmである。あるいは、バイパスライン上の制限部がガス導入ライン上の制限部よりも大きい内径を有する場合、平衡にさらに早く到達することができる。本明細書に記載のガスライン上の制限部は、各ライン上に存在する最小内径によって効果的に提供される。ガスラインの一部またはガスライン全体に、制限部を提供する内径を設けることができる。
【0099】
制御接合部Aの圧力が一定値(平衡)に達すると(図示の場合、5秒より僅かに少なく)、弁17を閉鎖することができ、それにより、ガス流を減少させて市システム内のガス消費量を最小にする。バイパスガスラインを通る流量がない場合(またはシステム内にバイパスガスラインがない場合)の平衡までの対応する時間は、比較して約16秒である。分析測定を行うことができる場合、衝突セル内の新しい平衡圧力に達するために必要な時間が大幅に短くなるため、装置は異なる衝突セル圧力間で調節する時間が少なくなるので、装置をより効率的に使用することができる。
【0100】
制御ライン接合部Aの圧力を急速に低下させるために、ガスポンプを使用して余分なガスを吸い取ることができる。これは、ポンプが制御ラインを介して、過剰のガスを除去して減少した定常状態の圧力に達する間、バイパスガスラインが閉じたままにされ、それによって、制御ライン接合部に向かう質量流量を最小化する場合に最も効率的である。
【0101】
図4では、対応するデータが示され、衝突セルのすぐ上流、すなわちガス導入システムの下流にある、質量流量計(MFM)を用いて質量流量を監視する。測定は制御ライン接合部Aの下流で行われるため、図3のデータと比較して図4に示すデータには僅かな時間遅延がある。それにもかかわらず、バイパスラインを使用する利点は明らかであり、衝突セルへの質量流量は、圧力設定値の変更後約6秒にほぼ一定値に達し、バイパスラインがない場合、システムは平衡に達するまで約17秒かかる。したがって、バイパスラインを使用する利点は、非常に明確である。
【0102】
このシステムは、ガス消費量を最小限に抑えながら、同時に広範囲内で流量を変化させることができる。例えば、1〜10mL/分の流量を衝突セル16に調整できることが望ましい場合を考える。これを単一のガス導入ライン(バイパスガスラインなし)で達成するには、ガス源から少なくとも10mL/分のガス流量が必要である。低ガス流量設定値、例えば、1mL/分では、ガスのほとんど(9mL/分)は、ガス制御ラインに送り込まれ、ガスの1/10しか実際に衝突セルに入ることがない。衝突セルへのガス流量を10mL/minに設定すると、制御ラインにガスが流れない。実際には、ガス流量制御ラインには、約1mL/分の最小ガス流量が維持され、ガス供給部からの総流量10mL/分に対して、衝突セルへの最大ガス流量が約9mL/分を達成することができることを意味する。それにもかかわらず、システムが衝突セルへの低ガス流量でかなりの時間使用されると、かなりの不必要なガス消費量が生じる。
【0103】
システム内のガス消費量は、1つ(または複数の)のバイパスガスラインを使用することによって、低減することができる。例えば、2つの並列ガスライン(そのうちの1つはバイパスガスライン)があり、1つはガス流量を最大5mL/分まで、そして最大10mL/分まで許容することができる。衝突セルへのガス流量が低い場合(例えば、1〜5mL/分の流量)、第1のガスラインを排他的に使用することができる。より高い流量が必要な場合、ガス流量は、最大10mL/分までの流量を許容する他のガスライン(例えば、バイパスガスライン)に迂回され得る。これにより、システムに送達されるガスの使用量が増加し、(ガス制御ライン上のガスポンプを介して)廃棄されるガスの量が最小限に抑えられる。あるいは、並列ガスラインの各々は、最大5mL/分までのガス流量を許容することができ、これは、第1の設定値では、衝突セルへのガス流量を最大5mL/分に調整するために、ガスをラインの1つを通って流すことができ、第2の設定値では、衝突セルへのガス流量を5mL/minから最大10mL/minに調整するため、ガスは両方のライン(ガス導入ラインとバイパスライン)を通って流れることが意味する。
【0104】
明らかに、個々のガスラインのうちの1つまたは任意の組み合わせを通ってガス流を導くことによって、任意の所望の流量を達成するために、追加の制御ラインを設けることができる。この利点は、システムへの余分なガス流量を最小限に抑える可能性にあり、それによって、ガス制御ライン上の背圧調整器を介して送り出されるガスの量を最小限に抑えることによって、ガス消費量を低減することができる。
【0105】
図5では、ガス流量用の較正ラインを含むガス導入システムが示される。図示されたガス導入システムは、追加の較正ライン26を備えた図1に示されるようなガス導入システムを含む。ガス較正ラインには、2つの弁23、25だけでなく、ガス較正ライン上のガス流量コントローラ24がある。ガス較正ラインは、第1の較正接合部C1及び第2の較正接合部C2でガス導入ラインと合流する。第1の較正接合部C1は、ガス導入ライン上の流量制限部13の下流に設置される。第1の較正接合部C1と第2の較正接合部C2との間には、ガス導入ライン上の弁22がある。好ましくは、ガス較正ラインは、ガス導入ライン上の任意のガス流量コントローラ(図1または図2の背圧調整器など)の下流に、すなわちこの例では、制御ライン接合部Aの下流に設置され、それによって、ライン内のガス流量に基づくガス流量較正は、ガス導入ライン内のガス流量を表し、衝突セルに流入する。
【0106】
ガス較正ラインと、第1の較正接合部から第2の較正接合部(C1、C2)に伸びるガス導入ラインの部分は、断熱チャンバ30内に取り付けられる。制御ライン接合部Aの下流にある、ガス導入ライン上の流量制限部13もまた、断熱チャンバ内に取り付けられる。チャンバ内の温度は、追加の加熱または冷却手段及び/またはサーモスタットハウジングの手段など他の従来の手段を使用して調節することができる。好ましくは、制限部13及び弁14は、図示のように、断熱チャンバ30内に取り付けられる。このようにして、制御ライン接合部の下流にある質量流量率に対する温度変動の影響を最小限に抑えることができ、それにより、正確な較正を提供することができる。
【0107】
示された例では、較正ラインは、ガス入口27から衝突セル16のすぐ上流にある、第2の較正接合部C2で、ガス導入ラインと合流する。あるいは、較正ガスラインは、衝突セルに、すなわち、図5に破線で示すように、ガス入口27から流体的に分離されたガス接続部/ガス入口28を介して、別個に連結され得る。
【0108】
したがって、較正ライン及び制御ライン接合部の下流にあるガス導入ラインの部分(例えば、ガス導入ライン上の流量制限部13を含む)を一定温度に保つことによって、質量流量に対する温度変動の影響は、最小限に抑えられ得る。結果として、ガス導入ラインのガス流量は、ガス流量をガス較正ラインに搬送し、ガス導入ライン上の弁22を閉じ、弁23(及び、前に閉じた場合は弁25)を開くことによって決定され得、較正ライン上の質量流量計(MFM 24)を使用して流量を測定する。流量の較正に続いて、弁23及び弁25を閉じ、弁22を開けて、較正された衝突セルに、ガス導入ラインに沿ってガスが流れることを許容する。較正ライン上の質量流量計を使用して測定される圧力対ガス流量の関係は、恒温ハウジング30内のガス導入ラインが一定温度に保たれた状態で、衝突セルへの流量を正確に設定するために使用され得る。別の較正ライン上の質量流量計を用いたこの設定のさらなる利点は、使用時に、ガスがガスフローラインを通って衝突セルに流入する際に、衝突セルに通じるガス流に大きなデッドボリュームがないことである。図5に示す較正システムは、図2の「制限バイパスアセンブリ」システムと組み合わせて使用することができることが理解されよう。
【0109】
図1及び図2の実施形態は、較正目的のために修正することができ、制御ライン接合部と衝突セルとの間のガス導入ライン自体の質量流量計MFMに沿って、流量制限部13を含む制御ライン接合部Aの下流にある、ガス導入ライン1を恒温ハウジングの内部に設ける。しかしながら、この設定は、MFMの存在によって引き起こされるデッドボリュームを回避する利点を有さない。
【0110】
明らかに、例えばガス制御ラインのようなガス導入システムの追加構成要素は、例えば、構成要素を熱制御されたハウジング内に取り付けることによって、温度制御することができる。ハウジングは、例えば、断熱壁を含み、ハウジングを一定温度に維持する1つ以上の空気サーモスタットを含むことができる。
【0111】
さらに、上記で説明した較正機能は、較正ラインがガス導入ライン内の任意のガス流量コントローラの下流に、及びガス導入ライン上の流量制限部の下流に取り付けられている限り、一般にガス導入ライン上で実装することができる。例えば、較正ラインは、本明細書に記載されているような任意のガス導入システム、例えば、ガス流量設定値の変化に続いて急速な定常状態のガス流を達成するための少なくとも1つのバイパスラインを包含するガス導入システムで実施され得る。しかしながら、当業者は、較正機能が分析システムの他のガスラインでも実施できることを理解するであろう。
【0112】
本発明のガス導入システムは、例えば、質量分析計の衝突セルへのガス流量を提供するという文脈において上記で説明したが、本発明は、他のタイプの分析装置、特にガスが多数の異なる選択された圧力で供給される真空ポンプ装置にガスを供給するために使用できることが理解されよう。
【0113】
特許請求の範囲を含む本明細書で使用するように、単数形の用語は、文脈がそうでないことを示さない限り、複数形を含むと解釈され、逆もまた同様であると解釈される。したがって、本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の参考文献を含むことに留意すべきである。
【0114】
「備える」、「含む」、「有する」及び「包含する」という用語及びそれらの変形は、「含むがこれに限定されない」を意味すると理解すべきであり、他の構成要素を排除することを意図するものではない。
【0115】
なお、本発明の範囲内に入るものであれば、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の前述の実施形態の変形を行うことができることが理解されよう。本明細書に開示された特徴は、他に言及しない限り、同じ、同等または類似の目的を果たす代替の特徴によって置き換えることができる。したがって、他に述べられていない限り、開示された各特徴は、同等または類似の特徴の包括的な一連の一例を表す。
【0116】
「例えば」「のような」「例えば」などの例示的な言語の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図しており、請求されていない限り、本発明の範囲を限定するものではない。文脈上特に明記しない限り、明細書に記載されているステップは、任意の順序で、または同時に実行することができる。
【0117】
本明細書で開示される特徴及び/またはステップのすべては、少なくとも幾つかの特徴及び/またはステップが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。特に、本発明の好ましい特徴は、本発明のすべての態様に適用可能であり、任意の組み合わせで使用することができる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5